特許第5757106号(P5757106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757106
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20150709BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   C08L71/02
   C08G65/336
【請求項の数】6
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2011-42167(P2011-42167)
(22)【出願日】2011年2月28日
(65)【公開番号】特開2011-202157(P2011-202157A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2013年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2010-46784(P2010-46784)
(32)【優先日】2010年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】二見 龍寛
(72)【発明者】
【氏名】田中 英明
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−313302(JP,A)
【文献】 特開平05−059267(JP,A)
【文献】 特開平03−072527(JP,A)
【文献】 特開2006−063335(JP,A)
【文献】 特開2006−161010(JP,A)
【文献】 特開2007−023255(JP,A)
【文献】 特開2007−169441(JP,A)
【文献】 特開2008−308521(JP,A)
【文献】 特開平09−095619(JP,A)
【文献】 特開平04−057850(JP,A)
【文献】 特開2011−178955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/02
C08G 65/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全主鎖末端に、反応性ケイ素基を導入可能な官能基を有し、該官能基が、活性水素を有する基および不飽和基からなる群より選択される1種以上であり、主鎖末端の平均官能基数が2.0を超え、3.0以下である前駆重合体(A’)に、
下式(1)で表される反応性ケイ素基を導入してなる重合体であって、数平均分子量が2万5千以上、5万以下であり、かつ分子量分布が1.01〜1.20、である重合体(A)、および
直鎖状で、片末端に反応性ケイ素基を導入可能な前駆重合体(B’)に、下式(1)で表される反応性ケイ素基を導入して得られる重合体であって、数平均分子量が5,000以上、2万以下である重合体(B)を含有し、
前記前駆重合体(A’)が、1分子当たりの主鎖末端の官能基数が3個である前駆重合体(A’11)を含み、
前記前駆重合体(A’11)が、触媒の存在下で、活性水素を3個有する開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造した前駆重合体(A’11−a)であり、
前記重合体(A)の含有量と前記重合体(B)の含有量の質量比(A/B)が、90/10〜40/60であることを特徴とする硬化性組成物。
−SiX・・・(1)
[式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基(加水分解性基を除く。)を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。2個のXは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
全主鎖末端に、反応性ケイ素基を導入可能な官能基を有し、該官能基が、活性水素を有する基および不飽和基からなる群より選択される1種以上であり、主鎖末端の平均官能基数が2.0を超え、3.0以下である前駆重合体(A’)に、
下式(1)で表される反応性ケイ素基を導入してなる重合体であって、数平均分子量が2万5千以上、5万以下であり、かつ分子量分布が1.01〜1.20である重合体(A)、および
直鎖状で、片末端に反応性ケイ素基を導入可能な前駆重合体(B’)に、下式(1)で表される反応性ケイ素基を導入して得られる重合体であって、数平均分子量が5,000以上、2万以下である重合体(B)を含有し、
前記前駆重合体(A’)が、1分子当たりの主鎖末端の官能基数が3個である前駆重合体(A’11)を含み、
前記前駆重合体(A’11)が、触媒の存在下で、活性水素を3個有する開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合した、主鎖末端が水酸基である重合体の水酸基をアルコラート化して−OM(Mはアルカリ金属)とした後、不飽和基含有ハロゲン化炭化水素と反応させる方法で製造した前駆重合体(A’11−b)であり、
前記重合体(A)の含有量と前記重合体(B)の含有量の質量比(A/B)が、90/10〜40/60であることを特徴とする硬化性組成物。
−SiX・・・(1)
[式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基(加水分解性基を除く。)を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。2個のXは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項3】
前記前駆重合体(A’)が、1分子当たりの主鎖末端の官能基数が2個である前駆重合体(A’12)をさらに含む、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記重合体(B)の分子量分布が1.01〜1.30である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記重合体(A)において、前記前駆重合体(A’)の反応性ケイ素基を導入可能な主鎖末端の官能基のうち前記反応性ケイ素基を含む基に置換された官能基の割合が、45〜100モル%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
シーリング材用または接着剤用である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性ケイ素基を有する重合体を含有し、空気中の湿分により室温で硬化可能な硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
反応性ケイ素基を有する重合体は、反応性ケイ素基が加水分解、縮合反応してシロキサン結合を形成することによって架橋する。したがって、室温下で空気中の湿分により硬化可能であり、硬化後はゴム弾性を有する硬化物となる。得られる硬化物は様々な被着体に対して優れた特性を有していることから、シーリング材、接着剤、被覆または密封用組成物の主剤等として広く用いられている。
【0003】
一般にシーリング材、接着剤等に用いられる硬化性組成物は、その硬化物が柔軟であり、かつよく伸びることが好ましく、そのために硬化性組成物に可塑剤が配合されている。
該可塑剤としては、芳香族カルボン酸エステル類、脂肪族カルボン酸エステル類、グリコールエステル類、リン酸エステル類、エポキシ系可塑剤、塩素化パラフィン等が一般的に使用される。
また可塑剤として、アクリル系重合体、ポリエーテル系重合体を用いることも知られている(特許文献1)。
しかしながら、これらの可塑剤は移行性があるため硬化物から流出しやすく、シーリング部周辺の汚染、接着性への悪影響、表面塗装への汚染や密着性低下、等の問題がある。
【0004】
これに対して、移行性が低い可塑剤として反応性ケイ素基を有する低分子量の重合体を用いることが提案されている。
例えば特許文献2には、1分子に平均1〜1.5個の反応性ケイ素基を有する分子量8,000〜5万の高分子量重合体(I)と、1分子に平均0.5〜1.5個の反応性ケイ素基を有する分子量300〜8,000の低分子量重合体(II)とを組み合わせた硬化性組成物が記載されている。
また、特許文献2の例18(比較例)には、1分子に平均2.4個のメチルジメトキシシリルプロピル基を有する分子量約3万の高分子量重合体Eと、モノオールの末端水酸基の95%をアリルオキシ基とし、これに80%当量のメチルジメトキシシランを反応させた分子量約5,000の低分子量重合体aとを組み合わせた硬化性組成物が記載されている。この硬化性組成物の25℃における粘度は28000cP(=28Pa・s)である。しかしながら、特許文献2には分子量3万を超える高分子量重合体は開示されておらず、重量平均分子量や分子量分布も開示されていない。開示されている粘度から予測すると、分子量約3万の高分子重合体Eよりも粘度が増加すると製造困難になるため、特許文献2の技術で分子量3万を超える高分子量重合体を製造することはおそらく困難であったと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−60253号公報
【特許文献2】特開平9−95619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、優れた伸び物性を発現させるには、反応性ケイ素基を有する高分子量重合体として、高分子量であるものが好ましい。しかし、高分子量化した高分子量重合体は粘度が高く、その硬化物をシーリング材や接着剤として用いる場合に作業性が損なわれる。そのため、高分子量化した高分子量重合体を用いた、シーリング材や接着剤用の硬化性組成物にあっては、より多くの可塑剤を必要とするが、前述の通り、移行性がある可塑剤ではシーリング部周辺の汚染、接着性への悪影響、表面塗装への汚染や密着性低下、等の問題が顕著に現れてしまうため、特に改良が求められていた。
また本発明者等の知見によると、移行性が低い可塑剤として反応性ケイ素基を有する低分子量重合体を用いる方法においても、硬化物の伸び、塗膜汚染性、または耐久性に劣る場合があり、改善が必要であることが判明した。
なお、特許文献2の例18(比較例)では、分子量約3万の高分子量重合体を用いているが、柔軟性が悪い。本発明者等の知見によれば、該高分子量重合体は分子量分布が広く、低分子量重合体成分を多く含んでいるためと考えられる。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、硬化物の柔軟性、伸び及び耐久性が良好で、かつ塗膜汚染性を低減できる硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記[1]〜[6]の発明である。
[1]全主鎖末端に、反応性ケイ素基を導入可能な官能基を有し、該官能基が、活性水素を有する基および不飽和基からなる群より選択される1種以上であり、主鎖末端の平均官能基数が2.0を超え、3.0以下である前駆重合体(A’)に、下式(1)で表される反応性ケイ素基を導入してなる重合体であって、数平均分子量が2万5千以上、5万以下であり、かつ分子量分布が1.01〜1.20である重合体(A)、および直鎖状で、片末端に反応性ケイ素基を導入可能な前駆重合体(B’)に、下式(1)で表される反応性ケイ素基を導入して得られる重合体であって、数平均分子量が5,000以上、2万以下である重合体(B)を含有し、前記前駆重合体(A’)が、1分子当たりの主鎖末端の官能基数が3個である前駆重合体(A’11)を含み、前記前駆重合体(A’11)が、触媒の存在下で、活性水素を3個有する開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造した前駆重合体(A’11−a)であり、前記重合体(A)の含有量と前記重合体(B)の含有量の質量比(A/B)が、90/10〜40/60であることを特徴とする硬化性組成物。
−SiX・・・(1)
[式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基(加水分解性基を除く。)を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。2個のXは互いに同一でも異なっていてもよい。]
[2]全主鎖末端に、反応性ケイ素基を導入可能な官能基を有し、該官能基が、活性水素を有する基および不飽和基からなる群より選択される1種以上であり、主鎖末端の平均官能基数が2.0を超え、3.0以下である前駆重合体(A’)に、下式(1)で表される反応性ケイ素基を導入してなる重合体であって、数平均分子量が2万5千以上、5万以下であり、かつ分子量分布が1.01〜1.20である重合体(A)、および直鎖状で、片末端に反応性ケイ素基を導入可能な前駆重合体(B’)に、下式(1)で表される反応性ケイ素基を導入して得られる重合体であって、数平均分子量が5,000以上、2万以下である重合体(B)を含有し、前記前駆重合体(A’)が、1分子当たりの主鎖末端の官能基数が3個である前駆重合体(A’11)を含み、前記前駆重合体(A’11)が、触媒の存在下で、活性水素を3個有する開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合した、主鎖末端が水酸基である重合体の水酸基をアルコラート化して−OM(Mはアルカリ金属)とした後、不飽和基含有ハロゲン化炭化水素と反応させる方法で製造した前駆重合体(A’11−b)であり、前記重合体(A)の含有量と前記重合体(B)の含有量の質量比(A/B)が、90/10〜40/60であることを特徴とする硬化性組成物。
−SiX・・・(1)
[式中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基(加水分解性基を除く。)を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。2個のXは互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0009】
[3]前記前駆重合体(A’)が、1分子当たりの主鎖末端の官能基数が2個である前駆重合体(A’12)をさらに含む、[1]または[2]の硬化性組成物。
]前記重合体(B)の分子量分布が1.01〜1.30である、[1]〜[3]のいずれかの硬化性組成物
]前記重合体(A)において、前記前駆重合体(A’)の反応性ケイ素基を導入可能な主鎖末端の官能基のうち前記反応性ケイ素基を含む基に置換された官能基の割合が、45〜100モル%である、[1]〜[]のいずれかの硬化性組成物。
]シーリング材用または接着剤用である、[1]〜[]のいずれかの硬化性組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性組成物によれば、硬化物において良好な柔軟性、伸び及び耐久性で、かつ塗膜汚染性を低減できる硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書における、重合体の「主鎖」とは、2以上の単量体の連結により形成された重合鎖をいう。主鎖末端とは、各主鎖の末端であり、主鎖が直鎖状の重合体における主鎖末端は2つである。重合体の「全主鎖末端」とは、重合体の主鎖末端の全てをいう。また、重合体の「直鎖状で、片末端」とは、重合体が直鎖状であって、2つある主鎖末端のうちの片方の末端をいう。
本明細書において、前駆重合体(A’)の主鎖末端の平均官能基数は、前駆重合体(A’)の全主鎖末端の、反応性ケイ素基を導入可能な官能基の数の、1分子当たりの平均値である。
本明細書において、重合体(A)における主鎖末端の官能基の数は、前駆重合体(A’)の主鎖末端に導入された反応性ケイ素基と、反応性ケイ素基が導入されなかった主鎖末端の官能基の合計数とし、重合体(A)の主鎖末端の平均官能基数は、該合計数の、1分子当たりの平均値とする。
したがって、前駆重合体(A’)の主鎖末端の平均官能基数と、重合体(A)の主鎖末端の平均官能基数とは等しい。
なお前駆重合体(A’)または重合体(A)が混合物である場合は、混合後における主鎖末端の官能基数の、1分子当たりの平均を、前駆重合体(A’)または重合体(A)の、主鎖末端の平均官能基数(以下、単に「平均官能基数」ということもある。)とする。
【0012】
本明細書における質量平均分子量(Mw、以下「Mw」とも記す。)および数平均分子量(Mn、以下「Mn」とも記す。)は、ゲル浸透クロマトグラフィ−(GPC)によって測定したポリスチレン換算分子量である。また本明細書における分子量分布(以下、「Mw/Mn」とも記す。)は、前記方法で測定したMw、Mnより算出した値であり、数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率(Mw/Mn)である。
本明細書において、水酸基価から換算した分子量を「水酸基換算分子量MW(OH)」と記す。すなわち、水酸基価と水酸基換算分子量MW(OH)の関係は以下の式で表わされる。
水酸基換算分子量MW(OH)=水酸基数×56,100/水酸基価
本明細書における水酸基価は、JIS K 1557−1に準拠した方法で測定した値である。
本明細書における粘度の値(単位:mPa・s、またはPa・s)は、E型粘度計を用い25℃、No.4ローター(コーンロータ:3°×R14)、若しくはNo.1ローター(コーンロータ:1°34′×R24)を用いて測定した値である。
【0013】
<重合体(A)>
本発明で用いられる重合体(A)は、上式(1)で表される反応性ケイ素基を有する。
式(1)において、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の1価の有機基(加水分解性基を除く。)を示す。Rは、炭素数8以下の炭化水素基が好ましい。具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。メチル基、フェニル基がより好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0014】
式(1)において、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。1分子中に存在する2個のXは互いに同一でも異なっていてもよい。
加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び/又は縮合反応によってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。該加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基が挙げられる。加水分解性基が炭素原子を有する場合、その炭素数は6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。Xとしては、特に、炭素数4以下のアルコキシ基又は炭素数4以下のアルケニルオキシ基が好ましい。より具体的には、Xはメトキシ基又はエトキシ基であることが特に好ましい。
【0015】
重合体(A)は、全主鎖末端に、反応性ケイ素基を導入可能な官能基を有し、主鎖末端の平均官能基数が2.0を超え、3.0以下である前駆重合体(A’)に、反応性ケイ素基を導入してなる重合体である。前駆重合体(A’)の1個の主鎖末端には、反応性ケイ素基を導入可能な官能基が1個存在する。反応性ケイ素基を導入可能な官能基は、活性水素を有する基または不飽和基から選択される1種以上である。活性水素を有する基は、好ましくは水酸基である。不飽和基とは、不飽和性の二重結合を含む1価基である。不飽和基の具体例としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基が挙げられる。
重合体(A)の主鎖末端に反応性ケイ素基があると、硬化物の伸び物性、内部硬化性、表面硬化性が良好となりやすい。
【0016】
本発明において、重合体(A)の平均官能基数は2.0超〜3.0である。重合体(A)の平均官能基数が2.0超であると、重合体(A)の平均官能基数が2.0である場合、すなわち重合体(A)の主鎖が直鎖状である場合に比べて、反応性ケイ素基をより多く導入できるため、より高い強度を発現させる硬化性組成物が得られる点で好ましい。また、反応性ケイ素基の導入率が低くても、高い強度を発現させる硬化性組成物を得ることができる。
一方、重合体(A)の平均官能基数が3.0以下であると、硬化物の柔軟性が良好になる。
重合体(A)の平均官能基数が3.0である場合、重合体(A)は、主鎖末端の官能基数が3個である重合体(A11)の1種以上からなることが好ましい。主鎖末端の官能基数が3個の重合体(A11)は、1分子当たりの主鎖末端の官能基数が3個である、分岐状の前駆重合体(A’11)の全主鎖末端の官能基の一部または全部が反応性ケイ素基を含む基で置換された重合体である。
【0017】
重合体(A)が混合物である場合、(i)主鎖末端の官能基数が互いに異なる重合体を混合してもよく、(ii)主鎖末端の官能基数が互いに異なる前駆重合体の混合物を用いて重合体(A)を製造しても構わない。
(i)の場合、重合体(A)は、主鎖末端の官能基数が2個〜4個である重合体を、主鎖末端の官能基数の平均が上記の範囲内となるように混合した混合物が好ましい。(i)の場合、重合体(A)は、主鎖末端の官能基数が2個〜3個である重合体を、主鎖末端の官能基数の平均が上記の範囲内となるように混合した混合物がより好ましい。特に、重合体(A)が、少なくとも主鎖末端の官能基数が3個である重合体(A11)を含むことが好ましく、主鎖末端の官能基数が3個である重合体(A11)の2種以上の混合物、または主鎖末端の官能基数が2個である重合体(A12)と主鎖末端の官能基数が3個である重合体(A11)の混合物がより好ましい。
なお、主鎖末端の官能基数が2個の重合体(A12)は、1分子当たりの主鎖末端の官能基の数が2個である、直鎖状の前駆重合体(A’12)の全主鎖末端の官能基の一部または全部が反応性ケイ素基を含む基で置換された重合体である。
【0018】
(ii)の場合、重合体(A)は、1分子当たりの主鎖末端基の数が2個〜4個である前駆重合体を、主鎖末端の官能基数の平均が2.0超〜3.0となるように混合した混合物からなる前駆重合体(A’)に、反応性ケイ素基を導入したものが好ましい。(ii)の場合、重合体(A)は、1分子当たりの主鎖末端基の数が2個〜3個である前駆重合体を、主鎖末端の官能基数の平均が2.0超〜3.0となるように混合した混合物からなる前駆重合体(A’)に、反応性ケイ素基を導入したものがより好ましい。特に、前駆重合体(A’)が、少なくとも、1分子当たりの主鎖末端の官能基数が3個である前駆重合体(A’11)を含むことが好ましく、主鎖末端の官能基数が3個である前駆重合体(A’11)の2種以上の混合物、または主鎖末端の官能基数が2個である前駆重合体(A’12)と主鎖末端の官能基数が3個である前駆重合体(A’11)の混合物がより好ましい。
【0019】
重合体(A)は、前駆重合体(A’)の全主鎖末端の官能基と反応する基および反応性ケイ素基の両方を有する化合物(以下、「シリル化剤」ともいう。)と、前駆重合体(A’)とを反応させて反応性ケイ素基を導入する方法で得ることができる。
【0020】
重合体(A)は、1分子当たりの末端の官能基数が2または3であり、全末端基が反応性を有する官能基である開始剤に、アルキレンオキシド単量体および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を付加重合させる工程を経て得られるものが好ましい。
すなわち、前駆重合体(A’)および重合体(A)における繰り返し単位は、アルキレンオキシド単量体単位および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含むことが好ましい。少なくともアルキレンオキシド単量体単位の連鎖、すなわちポリオキシアルキレン鎖を有することが好ましい。
重合体(A)がポリオキシアルキレン鎖を有すると温度依存性が小さい、硬化物の柔軟性が良好となりやすい、価格面で優れる等の利点がある。
開始剤における、反応性を有する官能基とは、活性水素を有する基であり、好ましくは水酸基である。開始剤の平均官能基数と、前駆重合体(A’)の主鎖末端の平均官能基数と、重合体(A)の主鎖末端の平均官能基数とは同じである。
【0021】
または重合体(A)の一部または全部として、前駆重合体(A’)および重合体(A)における繰り返し単位が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含み、ポリオキシアルキレン鎖を有しないアクリル系重合体を用いてもよい。かかる重合体は硬化物の機械強度向上、ならびに硬化性組成物及び硬化物の耐候性向上に寄与する。
本明細書において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから誘導される繰り返し単位を意味する。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルまたは両者の混合物を意味する。
【0022】
前駆重合体(A’)としては、ポリオキシアルキレン鎖を有し、全主鎖末端が水酸基である、直鎖状または分岐状の前駆重合体(A’−a);またはポリオキシアルキレン鎖を有し、全主鎖末端が不飽和基である、直鎖状または分岐状の前駆重合体(A’−b)が好ましい。
前駆重合体(A’−a)は、触媒の存在下で、活性水素を2個または3個有する開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造するのが好ましい。
開始剤としては、水酸基を2個または3個有する化合物が好ましい。水酸基を2個有する化合物の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。これらのうちでプロピレングリコール、ジプロピレングリコールがより好ましい。水酸基を3個有する開始剤の具体例としてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等が挙げられる。これらのうちで特にグリセリンが好ましい。
また、これらの、水酸基を2個または3個有する化合物にアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基換算分子量MW(OH)が190〜20,000の、ポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオールを開始剤として用いるのも好ましい。開始剤は1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0023】
前駆重合体(A’−a)または開始剤の合成に用いられるアルキレンオキシドは、炭素数が2〜20であることが好ましく、具体的にはプロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エチレンオキシド等が挙げられる。プロピレンオキシドが特に好ましい。アルキレンオキシドは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。ポリオキシアルキレン鎖が2種以上のオキシアルキレン単量体単位からなる場合、該単量体単位の並び方は、ブロック状でもよくランダム状でもよい。
触媒としては、アルカリ金属触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、金属ポルフィリン等が挙げられる。特に重合体(A)の分子量分布が小さくなりやすい点で複合金属シアン化物錯体触媒が好ましい。
【0024】
複合金属シアン化物触媒としては、下式(i)で表わされる化合物が挙げられる。
[M(CN)e(M)h(HO)i(L) …… (i)
(式(i)中、M〜Mは金属を、Xはハロゲン原子を、Lは有機配位子を、a、b、c、d、e、f、g、h、iは金属の原子価や有機配位子の配位数などにより変わり得る数を、それぞれ示す。MとMは同じであるのが好ましい。)
【0025】
上記式(i)中、MまたはMで表わされる金属としては、Zn(II)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Ni(II)、Mo(IV)、Mo(VI)、Al(III)、V(V)、Sr(II)、W(IV)、W(VI)、Mn(II)、Cr(III)、Cu(II)、Sn(II)およびPb(II)からなる群から選ばれる金属が好ましく、Zn(II)またはFe(II)がより好ましい。分子量分布をより狭くできる点で、Zn(II)が特に好ましい。
【0026】
上記式(1)中、Mで表わされる金属としては、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Cr(II)、Cr(III)、Mn(II)、Mn(III)、Ni(II)、V(IV)およびV(V)からなる群から選ばれる金属が好ましく、Co(III)またはFe(III)がより好ましい。なお、金属の元素記号の後に続く括弧内のII、III、IV、V等のローマ数字はその金属の原子価を示す。分子量分布をより狭くできる点で、Co(III)が特に好ましい。
【0027】
上記式(1)中、有機配位子を表すLとしては、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、アミンおよびアミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましい。本発明の製造方法においては、これらのうちでも有機配位子Lとして水溶性のものが好ましく、その具体例としては、tert−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、iso−ペンチルアルコール、N,N−ジメチルアセトアミド、グライム(エチレングリコールジメチルエーテル)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、iso−プロピルアルコールおよびジオキサンから選ばれる1種または2種以上の化合物が挙げられる。ジオキサンとしては、1,4−ジオキサンでも1,3−ジオキサンでもよく、1,4−ジオキサンが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法に用いる複合金属シアン化物錯体触媒において、より好ましい有機配位子Lは、tert−ブチルアルコール単独か、またはtert−ブチルアルコールと上記例示した化合物との組み合わせである。また、これらのなかでも、tert−ブチルアルコール単独か、tert−ブチルアルコールとエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルの組み合わせが分子量分布をより狭くできる点で特に好ましい。
【0029】
ポリオキシアルキレン鎖を有し、全末端が不飽和基である、直鎖状または分岐状の前駆重合体(A’−b)は、全末端が水酸基である前駆重合体(A’−a)の水酸基(−OH)をアルコラート化して−OM(Mはアルカリ金属)とした後、塩化アリル等の不飽和基含有ハロゲン化炭化水素と反応させる方法で製造できる。この方法は、一般的であり原料の入手のし易さや反応収率が高い点で好ましい。
または水酸基と反応しうる官能基および不飽和基を有する化合物を、前駆重合体(A’−a)と反応させて、エステル結合、ウレタン結合、カーボネート結合などを介して不飽和基を導入する方法でも得られる。
【0030】
前述したように、前駆重合体(A’)が、少なくとも、1分子当たりの主鎖末端の官能基数が3個である前駆重合体(A’11)を含むことが好ましい。したがって、前駆重合体(A’)として、前駆重合体(A’−a)のうちでも、触媒の存在下で、活性水素を3個有する開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造した前駆重合体(A’11−a)を用いることが好ましい。または、前駆重合体(A’−b)のうちでも、触媒の存在下で、活性水素を3個有する開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合した、主鎖末端が水酸基である重合体の水酸基をアルコラート化して−OM(Mはアルカリ金属)とした後、不飽和基含有ハロゲン化炭化水素と反応させる方法で製造した前駆重合体(A’11−b)を用いることが好ましい。
【0031】
前駆重合体(A’−b)の末端の不飽和基に反応性ケイ素基を導入して重合体(A)を得る方法は公知の方法を用いることができる。例えば下記[1]または[2]の方法を用いることができる。
[1]末端の不飽和基と下式(2)で表される水素化ケイ素化合物を触媒の存在下で反応させる方法。ただし、式(2)中のX、Rは上式(1)と同じである。
HSiX・・・(2)
[2]末端の不飽和基と下式(3)で表されるケイ素化合物のメルカプト基とを反応させる方法。
−SiX …(3)
式(3)中のX、Rは上式(1)と同じである。Rは2価の有機基であり、Wはメルカプト基である。
【0032】
前駆重合体(A’−b)を経由せずに、前駆重合体(A’−a)の末端の水酸基に反応性ケイ素基を導入して重合体(A)を得る方法は公知の方法を用いることができる。例えば下記[3]または[4]の方法を用いることができる。
[3]末端の水酸基と、下式(4)で表されるイソシアネートシラン化合物(U)とをウレタン化反応させる方法。この反応はウレタン化触媒の存在下に行ってもよい。
NCO−(CH−SiX …(4)
式(4)中のX、Rは上式(1)と同じである。nは1〜8の整数であり、好ましくは1〜3である。
イソシアネートシラン化合物(U)の好ましい例として、1−イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、1−イソシアネートメチルジエトキシエチルシラン、1−イソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、3−イソシアネートプロピルジメトキシメチルシラン、3−イソシアネートプロピルジエトキシエチルシラン等が挙げられる。
用いるウレタン化触媒は、特に限定されず、公知のウレタン化触媒を適宜用いることができる。例えば、有機錫化合物(ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等。)、ビスマス化合物等の金属触媒、有機アミン等の塩基触媒が用いられる。反応温度は、20〜200℃が好ましく、50〜150℃が特に好ましい。また、ウレタン化反応は、不活性ガス(窒素ガスが好ましい。)雰囲気下に行うのが好ましい。
【0033】
[4]末端の水酸基と、トリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物を反応させて末端をイソシアネート基とした後、該イソシアネート基に下式(5)で表されるケイ素化合物のWで表わされる基を反応させる方法。
−SiX …(5)
式(5)中のX、Rは上式(1)と同じである。Rは2価の有機基であり、Wは水酸基、カルボキシル基、メルカプト基およびアミノ基(1級または2級)から選ばれる活性水素含有基である。
【0034】
重合体(A)において、前駆重合体(A’)の、反応性ケイ素基を導入可能な主鎖末端の官能基のうち反応性ケイ素基を含む基に置換された主鎖末端の官能基の割合(以下、「シリル化率」ということもある。)は45〜100モル%が好ましく、50〜84モル%がより好ましく、63〜84モル%がさらに好ましい。
本明細書におけるシリル化率の値は、NMR分析によって測定できる。または、通常、塩化メタリルを用いて製造した前駆重合体(A’)とシリル化剤との反応率はほぼ100%とみなすことができるため、前駆重合体(A’)の仕込量に対するシリル化剤の仕込量から計算される値を用いてもよい。塩化アリルを用いて製造した前駆重合体(A’)とシリル化剤の反応においては、副反応が起こる。塩化アリルを用いて製造した前駆重合体(A’)のおよそ10モル%のアリル基は、異性化し、シリル化されないため、100%のシリル化は困難である。しかしながら、およそシリル化率が90%までのシリル化においては、その反応率もほぼ100%とみなすことができる。よって、塩化アリルを用いて製造した前駆重合体(A’)とシリル化剤との反応により得ようとする重合体(A)のシリル化率が90%未満である場合には、重合体(A)におけるシリル化率の値として、前駆重合体(A’)の仕込量に対するシリル化剤の仕込量から計算される値を用いてもよい。
重合体(A)に該当する重合体を2種以上混合して用いる場合、混合した後の混合物におけるシリル化率が上記の範囲内であればよく、混合する前の重合体(A)の一部としてシリル化率が70%未満のものを用いてもよい。
後述する重合体(B)についても同様である。
【0035】
本発明の硬化性組成物において、重合体(B)の配合量がより多い方が低粘度になる。一方、重合体(A)に重合体(B)を配合し硬化させると、重合体(A)同士が架橋すると共に、重合体(A)の一部が重合体(B)と反応する。重合体(B)は片末端にのみ反応性ケイ素基を有するため、重合体(A)が重合体(B)と反応することにより、重合体(A)の架橋が阻害される。よって重合体(B)の配合量が多すぎると、硬化不良となり未硬化となる場合がある。
すなわち、硬化性組成物をより低粘度にし、かつ硬化不良にしないためには、重合体(B)の配合量が多く、かつ重合体(A)のシリル化率が高い方が有利である。重合体(A)のシリル化率が高いほど、重合体(B)を多く配合しても、量比の関係から架橋が阻害されにくく、未硬化となりにくい。
よって重合体(A)のシリル化率は、重合体(B)が配合された硬化性組成物において、良好な硬化性が得られる範囲であることが必要であり、シリル化率が高い方が、重合体(B)の添加量を増やすことができる。重合体(B)の配合量が多い方が、より低粘度となるため、シーリング材や接着剤用の硬化性組成物として作業性がより良好になる。
【0036】
前駆重合体(A’)が、反応性ケイ素基を導入可能な主鎖末端の官能基として水酸基を有する場合、該水酸基の全部のうち反応性ケイ素基を含む基に置換された主鎖末端の官能基の割合(シリル化率)は、45モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。45モル%以上であると、配合にもよるが硬化しないゲル状物になることなく、シーリング材、接着剤を製造することができる。該シリル化率は100モル%でもよい。
また、前駆重合体(A’)が反応性ケイ素基を導入可能な主鎖末端の官能基として不飽和基を有する場合も、同様の理由で、シリル化率は45モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。該シリル化率は100モル%でもよい。
【0037】
重合体(A)の数平均分子量(Mn)は2万5千以上、5万以下であり、3万を超え、5万以下が好ましく、3万を超え、4万以下がより好ましい。2万5千以上であると、硬化物の伸び物性や柔軟性が良好であるのに加えて、硬化物から重合体(B)が流出するのが良好に抑制される。5万以下であると硬化性組成物が低粘度となりやすく、良好な作業性を得るうえで好ましい。特に粘度が低く、伸び物性が優れることから、31,000〜36,000が好ましい。
重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.01〜1.40である。この範囲内であると、柔軟性が良好で、低粘度となる。数平均分子量が同じである場合、分子量分布が狭い方が、低粘度となる。その理由は分子量分布が広い場合には高分子量体が多く存在するため、高粘度の要因となるためである。または、後述の実施例に示されるように、柔軟性が同等である場合には、伸び物性が良好となる。その理由は、分子量分布が1.40を超えると、低分子量の重合体成分が多くなるため、架橋点間距離が短くなり、伸びにくくなるためと考えられる。よって、分子量分布は狭い方が好ましく、1.01〜1.30がより好ましく、1.01〜1.20がさらに好ましい。重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は触媒種類や重合条件(温度、攪拌条件、圧力等)により制御できる。
本発明において、重合体(A)が混合物である場合、混合後の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)が、それぞれ上記の範囲内となるようにする。
後述する重合体(B)についても同様である。
【0038】
重合体(A)は式(1)で表わされる反応性ケイ素基以外の反応性ケイ素基を有してもよいが、貯蔵安定性や伸び物性が優れるという点から、重合体(A)の反応性ケイ素基は式(1)で表わされる反応性ケイ素基のみであることが好ましい。
重合体(A)は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体(A)に該当する2種以上の重合体が、硬化性組成物中に共存する場合、それらの反応性ケイ素基は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
<重合体(B)>
重合体(B)は、上式(1)で表される反応性ケイ素基を有する。
硬化性組成物中に共存する重合体(A)の反応性ケイ素基と、重合体(B)の反応性ケイ素基は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
重合体(B)は、直鎖状で、片末端に反応性ケイ素基を導入可能な前駆重合体(B’)に、反応性ケイ素基を導入して得られる重合体である。
具体的には、前駆重合体(B’)の主鎖の両末端のうちの一方の主鎖末端基が反応性を有する基、好ましくは水酸基または不飽和基であり、該主鎖末端基と反応する基および反応性ケイ素基を有する化合物と、前駆重合体(B’)とを反応させて反応性ケイ素基を導入することが好ましい。前駆重合体(B’)の他方の主鎖末端基は、前記反応性ケイ素基を有する化合物との反応性を有しない、不活性な有機基であることが好ましい。
【0041】
重合体(B)は、官能基数が1の開始剤に、アルキレンオキシド単量体および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を付加重合させる工程を経て得られるものが好ましい。
すなわち前駆重合体(B’)および重合体(B)における繰り返し単位は、アルキレンオキシド単量体単位および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含むことが好ましい。少なくともアルキレンオキシド単量体単位の連鎖、すなわちポリオキシアルキレン鎖を有することが好ましい。
重合体(B)がポリオキシアルキレン鎖を有すると、重合体(A)との相溶性がよく貯蔵安定性がよいので好ましい。
または重合体(B)の一部または全部として、重前駆重合体(B’)および重合体(B)における繰り返し単位が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含み、ポリオキシアルキレン鎖を有しないアクリル系重合体を用いてもよい。かかる重合体は硬化物の耐候性や、硬化物表面と塗料との密着性や汚染性低減に寄与する。
【0042】
前駆重合体(B’)としては、ポリオキシアルキレン鎖を有し、片末端が水酸基である、直鎖状の前駆重合体(B’1);ポリオキシアルキレン鎖を有し、片末端が不飽和基である、直鎖状の前駆重合体(B’2)が好ましい。
ポリオキシアルキレン鎖を有し、片末端が水酸基である、直鎖状の前駆重合体(B’1)は、触媒の存在下で、活性水素を1個有する開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させて製造できる。
開始剤の具体例としては、炭素数1〜20の脂肪族モノオール、炭素数1〜20の脂環族モノオール、炭素数1〜20の芳香族モノオール、チオール、2級アミン、カルボン酸、または前記モノオールにアルキレンオキシドを開環付加重合させて得られる、水酸基換算分子量MW(OH)が300〜5,000のポリオキシアルキレンモノオールが挙げられる。より好ましいのは水酸基換算分子量MW(OH)が300〜3,300のポリオキシアルキレンモノオールである。またアリルアルコールのような、不飽和基含有モノヒドロキシ化合物も使用できる。開始剤は1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
前駆重合体(B’1)または開始剤の合成に用いられるアルキレンオキシドおよび触媒は、上述の前駆重合体(A’−a)の合成に用いられるアルキレンオキシドおよび触媒と、好ましい態様も含めて同様である。
前駆重合体(B’1)は、好ましくはポリオキシプロピレンモノオールである。
【0043】
ポリオキシアルキレン鎖を有し、片末端が不飽和基である、直鎖状の前駆重合体(B’2)は、片末端が水酸基である前駆重合体(B’1)の水酸基(−OH)をアルコラート化して−OM(Mはアルカリ金属)とした後、塩化アリル等の不飽和基含有ハロゲン化炭化水素と反応させる方法で製造できる。この方法は、一般的であり原料の入手のし易さや反応収率が高い点で好ましい。
または水酸基と反応しうる官能基および不飽和基を有する化合物を、前駆重合体(B’1)と反応させて、エステル結合、ウレタン結合、カーボネート結合などを介して不飽和基を導入する方法でも得られる。
【0044】
前駆重合体(B’2)の末端の不飽和基に反応性ケイ素基を導入して重合体(B)を得る方法は公知の方法を用いることができる.例えば上記[1]または[2]の方法を用いることができる。
前駆重合体(B’1)の末端の水酸基に反応性ケイ素基を導入して重合体(B)を得る方法は公知の方法を用いることができる。例えば上記[3]または[4]の方法を用いることができる。
【0045】
重合体(B)において、前駆重合体(B’)の、反応性ケイ素基を導入可能な主鎖末端基のうち反応性ケイ素基を含む基に置換された主鎖末端基の割合(シリル化率)は60〜100モル%であるのが好ましい。
重合体(B)におけるシリル化率は、前駆重合体(B’)の末端の反応性を有する基と、反応性ケイ素基を有する化合物とを反応させる際の、該末端の反応性を有する基と反応性ケイ素基とモル比によって制御できる。
重合体(B)の片末端のシリル化率が60モル%以上であると可塑剤として移行性が低いものとなり、シーリング材部周辺の汚染、接着性が改善される。
特に、前駆重合体(B’)が、反応性ケイ素基を導入可能な主鎖末端基として水酸基を有する場合、該水酸基の全部のうち反応性ケイ素基を含む基に置換された主鎖末端基の割合(シリル化率)は上記の点から60モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましい。
また同様に、前駆重合体(B’)が反応性ケイ素基を導入可能な主鎖末端基として不飽和基を有する場合も、同様の理由で、シリル化率は60モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましい。該シリル化率は100モル%でもよい。
【0046】
重合体(B)の数平均分子量(Mn)は3,000以上、2万以下であり、好ましくは3,000以上、15,000以下であり、更に好ましくは、5,000以上、12,000以下である。該数平均分子量(Mn)が3,000以上であれば、重合体(B)が反応性ケイ素基を有していてもシーリング材部周辺の汚染がなく、接着性が改善され、硬化物が良好の物性を有する。2万以下であると重合体(B)の粘度が低くなり、可塑剤として有効に働く。
重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.01〜1.30が好ましい。この範囲内であると、重合体(B)の粘度がより低くなる傾向にある。Mw/Mnは、1.01〜1.20がより好ましい。
重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は触媒種類や重合条件(温度、攪拌条件、圧力等)により制御できる。
【0047】
重合体(B)は、式(1)で表わされる反応性ケイ素基以外の反応性ケイ素基を有してもよいが、貯蔵安定性や伸び物性が優れるという点から、重合体(B)の反応性ケイ素基は式(1)で表わされる反応性ケイ素基のみであることが好ましい。
重合体(B)は1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体(B)に該当する2種以上の重合体が、硬化性組成物中に共存する場合、それらの反応性ケイ素基は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
重合体(B)において、反応性ケイ素基以外の主鎖末端基は、不活性な有機基であることが好ましい。例えばアリルアルコールのような、不飽和基含有モノヒドロキシ化合物を開始剤として用いると、一方の主鎖末端基が水酸基で、他方の主鎖末端基が不飽和基である前駆重合体(B’1)が得られる。これの末端の不飽和基に反応性ケイ素基を導入して重合体(B)を得る場合、末端の水酸基は塩化ベンゾイルと反応させるなどの方法で不活性な有機基に変換することが好ましい。
【0048】
本発明の硬化性組成物は、重合体(A)と重合体(B)を含有する。重合体(A)の含有量と重合体(B)の含有量の質量比(A/B)は90/10〜40/60である。
重合体(A)と重合体(B)の合計100質量%のうち、重合体(B)が10質量%以上であると硬化性組成物の粘度が低下して作業性が良好になり、60質量%以下であると架橋点が多くなるため硬化性組成物が硬化した硬化物が優れた柔軟性と伸びを有する。
特に、良好な粘度、柔軟性と伸びが得られやすい点で、80/20〜40/60がより好ましい。
【0049】
<その他の成分>
本発明の硬化性組成物は、重合体(A)、(B)の他に、硬化性組成物において公知の成分を含むことができる。具体的には硬化触媒、充填材、添加剤、溶剤、可塑剤等である。また、任意成分として、重合体(A)、(B)以外の重合体として、物性を損なわない範囲で、耐候性や接着性向上のために、反応性ケイ素基を有する、アクリル系、ポリイソブチレン系、シリコン系またはポリウレタン系重合体を用いることができる。
【0050】
<硬化触媒>
硬化触媒としては下記の化合物が使用できる。
アルキルチタン酸塩、有機ケイ素チタン酸塩、ビスマストリス−2−エチルヘキソエート等の金属塩;リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸等の酸性化合物;ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン等の脂肪族モノアミン;、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン等の脂肪族ジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン類;ピペリジン、ピペラジン等の複素環式アミン類;メタフェニレンジアミン等の芳香族アミン類;エタノールアミン類;トリエチルアミン、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン等のアミン化合物。
ジオクチル酸錫(ビス(2−エチルヘキサン酸)スズ)、ジナフテン酸錫、ジステアリン酸錫等の2価の錫と、助触媒としての上記アミン類の混合物。
【0051】
ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートおよび下記のカルボン酸型有機錫化合物;これらのカルボン酸型有機錫化合物と上記のアミン類との混合物。
(n−CSn(OCOCH=CHCOOCH
(n−CSn(OCOCH=CHCOOC−n)
(n−C17Sn(OCOCH=CHCOOCH
(n−C17Sn(OCOCH=CHCOOC−n)
(n−C17Sn(OCOCH=CHCOOC17−iso)
【0052】
下記の含硫黄型有機錫化合物。
(n−CSn(SCHCOO)、
(n−C17Sn(SCHCOO)、
(n−C17Sn(SCHCHCOO)、
(n−C17Sn(SCHCOOCHCHOCOCHS)、
(n−CSn(SCHCOOC17−iso)
(n−C17Sn(SCH2COOC17−iso)
(n−C17Sn(SCH2COOC17−n)
(n−CSnS。
【0053】
(n−CSnO、(n−C17SnO等の有機錫オキシド;およびこれらの有機錫オキシドとエチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル等のエステル化合物との反応生成物。
【0054】
下記のキレート錫化合物およびこれらの錫化合物とアルコキシシランとの反応生成物(ただし、acacはアセチルアセトナト配位子)。
(n−CSn(acac)
(n−C17Sn(acac)
(n−C(C17O)Sn(acac)。
【0055】
下記の錫化合物。
(n−C(CHCOO)SnOSn(OCOCH)(n−C
(n−C(CHO)SnOSn(OCH)(n−C
【0056】
<充填材>
充填材としてはたとえば下記の充填材が使用できる。
表面を脂肪酸または樹脂酸系有機物で表面処理した炭酸カルシウム、さらにこれを微粉末化した平均粒径1μm以下の膠質炭酸カルシウム、沈降法により製造した平均粒径1〜3μmの軽質炭酸カルシウム、平均粒径1〜20μmの重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、フュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、有機樹脂バルーン、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、シラスバルーン、木粉、パルプ、木綿チップ、マイカ、くるみ穀粉、もみ穀粉、グラファイト、アルミニウム微粉末、フリント粉末等の粉体状充填材。石綿、ガラス繊維、ガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバー等の繊維状充填材。
【0057】
充填材の使用量は重合体(A)と重合体(B)の合計100質量部に対して1〜1,000質量部が好ましく、50〜250質量部がより好ましい。これらの充填材は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0058】
<可塑剤>
重合体(B)のほかに可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、たとえばフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソノニル(ジイソノニルフタレート)、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸アルキルエステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸アルキルエステル類;ペンタエリスリトールエステル等のグルコールエステル類;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ可塑剤;塩素化パラフィン;等が単独または2種以上の混合物で使用できる。
しかし、このような可塑剤のうち、低分子量の可塑剤は本発明の硬化性組成物の硬化後にブリードアウトしやすいという問題があるので、低分子量の可塑剤は使用しないことが好ましい。すなわち、本発明の硬化性組成物がさらに可塑剤を含有する場合は、その可塑剤として低分子量の可塑剤を含有しないことが好ましい。低分子量の可塑剤とは化合物自体が低分子量であり、かつ反応性基を有しない可塑剤を指す。たとえばフタル酸アルキルエステル類である。
また、ポリプロピレンポリオールなどのポリオキシアルキレンポリオールも可塑剤として用いることができる。該ポリオキシアルキレンポリオールの数平均分子量(Mn)は1,000〜20,000が好ましく、3,000〜15,000がより好ましい。
【0059】
<脱水剤>
硬化性組成物は、貯蔵安定性をさらに改良するために、硬化性や柔軟性に悪影響を及ぼさない範囲で少量の脱水剤を添加することできる。脱水剤としては、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル等のオルトギ酸アルキル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル等のオルト酢酸アルキル、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の加水分解性有機シリコン化合物、加水分解性有機チタン化合物等が挙げられる。これらの中でも、ビニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシランがコスト及び効果の点から特に好ましい。特に、硬化性組成物が、硬化触媒を含有した状態で防湿容器に充填された一液型の剤を用いることが有効である。
【0060】
<接着性付与剤>
接着性付与剤の具体例としては、ビニル基を有するシラン、エポキシ基を有するシラン、アミノ基を有するシラン、カルボキシ基を有するシラン等の有機シランカップリング剤;イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)プロピルトリメトキシチタネート、3−メルカプトプロピルトリメトキチタネート等の有機金属カップリング剤;エポキシ樹脂が挙げられる。
エポキシ基を有するシランの具体例としては、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
アミノ基を有するシランの具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル) −3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−[(N−ビニルベンジル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0061】
<その他の添加剤>
本発明の硬化性組成物において、硬化物の物性や硬化性を調節する目的で分子量300未満の反応性ケイ素基含有化合物を任意に添加してもよい。そのような化合物としては具体的にはテトラメチルシリケート、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシランなどやこれらのメトキシ基がエトキシ基に置換された化合物などが例示できる。
その他の添加剤として、チクソ性付与剤;顔料;各種の安定剤;オリゴエステルアクリレートのような表面改質を目的とした光硬化性化合物等が挙げられる。また、粘度を調製する目的で溶剤を使用することもできる。
【0062】
<モジュラス調整剤>
その他の添加剤として、モジュラス調整剤を用いてもよい。モジュラス調整剤とは、加水分解によりトリメチルシラノールを発生しうる化合物を言う。例えば、トリメチルシリルオキシ基を分子内に含有する化合物である。モジュラス調整剤が加水分解することにより発生したトリメチルシラノールは、前記重合体(A)や、重合体(B)と反応するため、当該硬化性組成物の機械物性を変化させることができる。
モジュラス調整剤の具体例としては、フェノキシトリメチルシラン、2,2−ビス[(トリメチルシロキシ)メチル]−1−(トリメチルシロキシ)ブタン等が挙げられる。1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モジュラス調整剤としては、トリメチルシリルオキシ基など、トリメチルシラノールを発生しうる官能基を有していれば特に限定されないが、分子量2,000以下の化合物が好ましく、分子量500以下の化合物がより好ましい。また、トリメチルシラノールを発生しうる官能基の数が1分子中に平均0.5〜8.0個以下あるものが好ましく、平均0.9〜4.0個がより好ましい。
【0063】
モジュラス調整剤としては、メタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、フェノール等の1価のアルコール;エチレングリコール、プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール;などのアルコールの水酸基をトリメチルシリルオキシ化して得られる化合物が好ましい。トリメチルシリルオキシ化する化合物としては1 ,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシランなどがある。
多価アルコールの全水酸基におけるトリメチルシリルオキシ化率は、任意に調整できるが、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。実質的に全ての水酸基がトリメチルシリルオキシ化されていることが最も好ましい。
モジュラス調整剤の使用量は特に限定されるものではなく、目的とする硬化物の物性にあわせて使用量を自由に設定できる。通常は重合体(A)の100質量部に対して0.1〜10.0質量部が好ましく、0.1〜5.0質量部がより好ましい。また、硬化速度調整等の目的で、数種のモジュラス調整剤を併用して用いてもよい。
またモジュラス調整剤は、重合体Aと重合体Bの一方または両方にあらかじめ添加されていてもよいし、硬化性組成物を製造するときに添加してもよい。
【0064】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製することも可能であり、重合体(A)および(B)を含む主剤とは別に、硬化剤組成物として、硬化触媒、充填材、水等の成分を配合しておき、該硬化剤組成物と主剤を使用前に混合する、2成分型として調製することもできる。
【0065】
1成分型の場合、すべての配合成分が予め配合されるため、水分を含有する配合成分は予め脱水乾燥してから使用するか、また配合混練中に減圧などにより脱水するのが好ましい。
2成分型の場合、反応性ケイ素基を有する重合体を含有する主剤中に硬化触媒を配合する必要がないので、主剤中に若干の水分が含有されていてもゲル化の心配は少ないが、長期間の貯蔵安定性を必要とする場合には脱水乾燥するのが好ましい。
脱水、乾燥方法としては粉状などの固状物の場合は加熱乾燥法、液状物の場合は減圧脱水法または合成ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲルなどを使用した脱水法が好適である。また、イソシアネート化合物を少量配合してイソシアネート基と水とを反応させて脱水してもよい。かかる脱水乾燥法に加えてメタノール、エタノールなどの低級アルコール;n−プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物を添加することにより、さらに貯蔵安定性は向上する。
脱水剤、特にビニルトリメトキシシランなどの水と反応し得るケイ素化合物の使用量は重合体(A)と重合体(B)の合計量100質量部に対して、0.1〜20.0質量部が好ましく、0.5〜10.0質量部がより好ましい。
【0066】
本発明の硬化性組成物は、シーリング材(建築用弾性シーリング材シーラント、複層ガラス用シーリング材等。)、封止剤(ガラス端部の防錆・防水用封止剤、太陽電池裏面封止剤等。)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆剤。)等の分野に用いられる接着剤として有用である。また、本発明の硬化性組成物は、粘着剤、塗料材料、フィルム材料、ガスケット材料、注型材料等の用途にも使用できる。
【実施例】
【0067】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されない。例2〜5、8〜11、21〜24、26〜29、31〜37、41〜48、51〜53が実施例、例1、6、7、25、30、38、49、50が比較例である。
【0068】
<製造例1:重合体(A−1)の製造>
グリセリンにプロピレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリオキシプロピレントリオール(水酸基換算分子量MW(OH)1,000)を開始剤(開始剤Aという)として用いた。
亜鉛ヘキサシアノコバルテートのt−ブタノール錯体触媒(0.03g)の存在下、開始剤A(64.1g)に、プロピレンオキシド(1,731g)を、120℃にて反応系の圧力が下がらなくなるまで反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端に水酸基を1分子あたり3個有する重合体(h1)を得た。重合体(h1)の、25℃における粘度は29.8Pa・sであった。GPCで測定したMnは34,000、Mwは42,000、よってMw/Mnは1.20であった。
【0069】
得られた重合体(h1)に、重合体(h1)の水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加して、重合体(h1)をアルコラート化した。つぎに、加熱減圧によりメタノールを留去した後に、重合体(h1)の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加した。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ全主鎖末端にアリル基を有する重合体(v1)を得た。
【0070】
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、得られた重合体(v1)の主鎖末端のアリル基に対して0.5倍モルのジメトキシメチルシランを添加し、70℃にて5時間反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(A−1)を得た。重合体(A−1)は、25℃における粘度が30.0Pa・sであった。GPCで測定したMnは34,000、Mwは42,000、よってMw/Mnは1.20であった。また、重合体(A−1)は、重合体(v1)の主鎖末端のアリル基の50%にジメトキシメチルシリル基が導入された重合体であった。
得られた重合体(A−1)の主鎖末端の平均官能基数、Mn、Mw/Mn、シリル化率(Si化率)、25℃における粘度を表1に示す(以下、同様。)。
【0071】
<製造例2〜7:重合体(A−2)〜(A−7)の製造>
ジメトキシメチルシランの仕込量を調整した以外は、重合体(A−1)を合成したのと同様にして、重合体(A−2)〜(A−7)を得た。
【0072】
<製造例8:重合体(A−8)の製造>
プロピレングリコールにプロピレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリオキシプロピレンジオール(水酸基換算分子量MW(OH)2,000)を開始剤(開始剤Bという)として用いた。
亜鉛ヘキサシアノコバルテートのt−ブタノール錯体触媒(0.03g)の存在下、開始剤B(64.1g)に、プロピレンオキシド(641g)を、120℃にて反応系の圧力が下がらなくなるまで反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端に水酸基を1分子あたり2個有する重合体(h1’)を得た。重合体(h1’)の、25℃における粘度は28.5Pa・sであった。GPCで測定したMnは27,000、Mwは30,000、よってMw/Mnは1.11であった。
【0073】
得られた重合体(h1’)に、重合体(h1’)の水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加して、重合体(h1’)をアルコラート化した。つぎに、加熱減圧によりメタノールを留去した後に、重合体(h1’)の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加した。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にアリル基を有する重合体(v1’)を得た。
【0074】
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、得られた重合体(v1’)の主鎖末端のアリル基に対して0.84倍モルのジメトキシメチルシランを添加し、70℃にて5時間反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端の84%にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(A−8)を得た。
【0075】
<製造例11:重合体(B−1)の製造>
t−ブタノールにプロピレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリオキシプロピレンモノオール(水酸基換算分子量MW(OH)2,000)を開始剤(開始剤Cという)として用いた。
亜鉛ヘキサシアノコバルテートのt−ブタノール錯体触媒(0.03g)の存在下、開始剤C(384g)に、プロピレンオキシド(249.6g)を、120℃にて反応系の圧力が下がらなくなるまで反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端に水酸基を1分子あたり1個有する重合体(h2)を得た。重合体(h2)は、25℃における粘度は0.45Pa・sであった。GPCで測定したMnは5,200、Mwは5,700、よってMw/Mnは1.09であった。
【0076】
得られた重合体(h2)に、重合体(h2)の水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加して、重合体(h2)をアルコラート化した。つぎに、加熱減圧によりメタノールを留去した後に、重合体(h2)の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加した。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にアリル基を1分子あたり1個有する重合体(v2)を得た。
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、得られた重合体(v2)とジメトキシメチルシランを、70℃にて5時間反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(B−1)を得た。得られた重合体(B−1)の粘度、Mn、Mw/Mn、粘度、シリル化率(Si化率)を表2に示す(以下、同様。)。
【0077】
<製造例12:重合体(B−2)の製造>
亜鉛ヘキサシアノコバルテートのt−ブタノール錯体触媒(0.05g)の存在下、開始剤C(384g)に、プロピレンオキシド(576g)を、120℃にて反応系の圧力が下がらなくなるまで反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端に水酸基を1分子あたり1個有する重合体(h3)を得た。重合体(h3)は、25℃における粘度は1.20Pa・sであった。GPCで測定したMnは7,300、Mwは8,100、よってMw/Mnは1.11であった。
【0078】
得られた重合体(h3)に、重合体(h3)の水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加して、重合体(h3)をアルコラート化した。つぎに、加熱減圧によりメタノールを留去した後に、重合体(h3)の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加した。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にアリル基を1分子あたり1個有する重合体(v3)を得た。
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、得られた重合体(v3)とジメトキシメチルシランを、70℃にて5時間反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(B−2)を得た。
【0079】
<製造例13:重合体(B−3)の製造>
亜鉛ヘキサシアノコバルテートのt−ブタノール錯体触媒(0.07g)の存在下、開始剤C(384g)に、プロピレンオキシド(960g)を、120℃にて反応系の圧力が下がらなくなるまで反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端に水酸基を1分子あたり1個有する重合体(h4)を得た。重合体(h4)は、25℃における粘度は3.3Pa・sであった。GPCで測定したMnは12,900、Mwは14,400、よってMw/Mnは1.12であった。
【0080】
得られた重合体(h4)に、重合体(h4)の水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加して、重合体(h4)をアルコラート化した。つぎに、加熱減圧によりメタノールを留去した後に、重合体(h4)の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加した。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にアリル基を1分子あたり1個有する重合体(v4)を得た。
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、得られた重合体(v4)とジメトキシメチルシランを、70℃にて5時間反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(B−3)を得た。
【0081】
<製造例14:重合体(B−4)の製造>
亜鉛ヘキサシアノコバルテートのt−ブタノール錯体触媒(0.09g)の存在下、開始剤C(384g)に、プロピレンオキシド(1440g)を、120℃にて反応系の圧力が下がらなくなるまで反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端に水酸基を1分子あたり1個有する重合体(h5)を得た。重合体(h5)は、25℃における粘度は4.6Pa・sであった。GPCで測定したMnは15,300、Mwは17,400、よってMw/Mnは1.14であった。
【0082】
得られた重合体(h5)に、重合体(h5)の水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加して、重合体(h5)をアルコラート化した。つぎに、加熱減圧によりメタノールを留去した後に、重合体(h5)の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加した。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にアリル基を1分子あたり1個有する重合体(v5)を得た。
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、得られた重合体(v5)とジメトキシメチルシランを、70℃にて5時間反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(B−4)を得た。
【0083】
<比較製造例1:比較重合体(C−1)の製造>
比較重合体(C−1)は、グリセリンにプロピレンオキシドを開環付加重合させて得られたポリオキシプロピレントリオール(水酸基換算分子量MW(OH)5,000)(開始剤Dという。)を、開始剤として用いた。
亜鉛ヘキサシアノコバルテートのグライム錯体触媒(0.23g)の存在下、開始剤D(64.1g)に、プロピレンオキシド(449.1g)を、120℃にて反応系の圧力が下がらなくなるまで反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端に水酸基を1分子あたり3.0個有する重合体(h6)を得た。重合体(h6)は、25℃における粘度は37.2Pa・sであった。GPCで測定したMnは34,000、Mwは49,000、よってMw/Mnは1.45であった。
【0084】
得られた重合体(h6)に、重合体(h6)の水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加して、重合体(h6)をアルコラート化した。つぎに、加熱減圧によりメタノールを留去した後に、重合体(h6)の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加した。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ全主鎖末端にアリル基を有する重合体(v6)を得た。
次に、1,1,3,3−テトラメチルジビニルシロキサン白金錯体の存在下、得られた重合体(v6)の主鎖末端のアリル基量に対して0.84倍モルのジメトキシメチルシランを添加し、70℃にて5時間反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(C−1)を得た。得られた比較重合体(C−1)の主鎖末端の平均官能基数、Mn、Mw/Mn、シリル化率(Si化率)、25℃における粘度を表3に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
表1の重合体(A−5)と表3の比較重合体(C−1)とを比べると、主鎖末端の平均官能基数、Mn、およびシリル化率(Si化率)は同等であるのに、比較重合体(C−1)の方が分子量分布(Mw/Mn)が広く、25℃における粘度が高い。このことから、比較重合体(C−1)の方が高分子量体が多く含まれることがわかる。
両者の製造方法の違いに着目すると、重合体の製造に用いた複合金属シアン化物錯体触媒の有機配位子が、重合体(A−5)はt−ブタノールであり、比較重合体(C−1)はグライムである。かかる複合金属シアン化物錯体触媒の有機配位子の違いによって、重合体における分子量分布の差異が生じたと考えられる。
【0089】
<その他の添加剤>
下記の例で用いた添加剤は、以下の通りである。
[可塑剤(1)]ジイソノニルフタレート(略称:DINP)(花王社製、商品名:ビニサイザー90)。
[可塑剤(2)]ポリプロピレングリコール(旭硝子社製、商品名:PREMINOL S−4011、Mn=14,000)。
[充填材(1)]膠質炭酸カルシウム(白石工業社製、商品名:白艶華CCR)。
[充填材(2)]重質炭酸カルシウム(白石カルシウム工業社製、商品名:ホワイトンSB、平均粒径1.78μm)
[充填材(3)]上記充填材(1)/上記充填材(2)=1/1(質量比)で混合したもの。
[充填材(4)]有機バルーン(松本油脂社製、商品名:80−GCA)
[充填材(5)]カオリンクレー(竹原化学工業社製、商品名:グロマックスLL)
[充填材(6)]酸化チタン(石原産業社製、商品名:R820)。耐候性付与剤。
[チクソ性付与剤(1)]脂肪酸アマイド系チクソ性付与剤(楠本化成社製、商品名:ディスパロン#6500)。
[チクソ性付与剤(2)]水添ひまし油系チクソ性付与剤(楠本化成社製、商品名:ディスパロン#305)。
[モジュラス調整剤]トリメチロールプロパンのトリストリメチルシリル体。
[安定剤(1)]ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペチャルテイー・ケミカル社製、商品名:チヌビン326)/ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペチャルテイー・ケミカル社製、商品名:イルガノックス1010)=1/1(質量比)で混合したもの。
[安定剤(2)]紫外線吸収剤・ヒンダードアミン・酸化防止剤の混合品(チバ・スペチャルテイー・ケミカル社製、商品名:チヌビンB75)。
[接着性付与剤]ビニル基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM1003/アミノ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM603)/エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM403)=3/1/1(質量比)で混合したもの。
[光硬化性化合物]多官能アクリル基含有化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート、東亞合成社製、商品名:アロニックス M−309)。
[1成分型配合用硬化剤]4価の有機スズ化合物(旭硝子社製:EXCESTAR C201)
[2成分型用硬化剤組成物]下記(a)〜(d)の混合物。
(a)硬化触媒としてのビス(2−エチルヘキサン酸)スズ(エーピーアイコーポレーション社製)と、助触媒としてのラウリルアミン(和光純薬工業社製)とを質量比(硬化触媒:助触媒)6:1で混合したものの4質量部。
(b)ジイソノニルフタレート(略称:DINP、上記可塑剤(1))の6質量部。
(c)重質炭酸カルシウム(商品名:ホワイトンSB、上記充填材(2))の15質量部。
(d)カオリンクレー(商品名:グロマックスLL、上記充填材(5))の5質量部。
【0090】
[例1〜11]
上記製造例で得た重合体を用い、表4に示す配合で各成分を混合し、得られた混合物の25℃における粘度を測定した。結果を表4に示す。
なお、例7〜11における重合体(A)は混合物であり、混合後の主鎖末端の平均官能基数および数平均分子量を表4に示す。
【0091】
【表4】
【0092】
表4の結果に示されるように、重合体(A)の粘度よりも、重合体(A)と重合体(B)との混合物の方が粘度が低い。例1の粘度よりも例2〜5の粘度が、例6および7の粘度よりも例8〜11の粘度が低い。すなわち、重合体(B)が可塑剤として働いていることが確認できる。
【0093】
[例21〜30、31〜38]
上記製造例で得た重合体を用い、表5、6に示す配合で各成分を混合して、1成分型の硬化性組成物を製造し、作業性および硬化物の引張特性を下記の方法で測定した。結果を表5、6に示す。
なお、例26〜30における重合体(A)は混合物であり、混合後の主鎖末端の平均官能基数および数平均分子量を表5に示す。
【0094】
(作業性)
各硬化性組成物を用いて硬化物の試験片を作成した時のヘラ切れ性や、取り扱いやすさを評価した。ヘラ切れ性とは、ペースト状である硬化前の硬化性組成物をヘラで扱った時の性状のことを言い、硬化性組成物が糸を引きやすいと取り扱いにくく、作業性が悪いことになる。取り扱いやすさとは、ペースト状である硬化前の硬化性組成物をヘラで混練した時の取り扱いやすさのことであり、硬化性組成物の粘度やチクソ性に影響される。ヘラ切れ性および取り扱いやすさが特に良好なものを「◎(優良)」で示し、双方ともに良好なものを「○(良好)」、片方が良好なものを「△(可)」で示し、いずれも良好でないものを「×(不良)」とした。
【0095】
(引張特性)
各例で得られた硬化性組成物の硬化物からなる試験片を作製し、引張試験を行った。引張試験はJIS K 6251に準拠して行った。
具体的には、硬化性組成物を厚み2mmのシート状に成形し、23℃、湿度50%にて7日硬化養生した後、50℃、湿度65%にて7日間養生した。さらに、23℃、湿度50%にて24時間以上放置して硬化物を得た。得られたシート状の硬化物を3号ダンベル形状に打ち抜いて試験片とした。試験片の厚みを測定した後、テンシロン試験機を使用して、50%伸張した時の応力(M50、単位:N/mm)、最大引張応力(Tmax、単位:N/mm)、破断時の伸び量(E、単位:%)を測定した。
M50が低いほど柔軟性が高く、Tmaxが高いほど引張接着強さが高く、Eが高いほど伸びが良い。結果を表5、6に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
【表6】
【0098】
表5に示されるように、硬化性組成物が重合体(A)と重合体(B)とを含み、これらの質量比(A/B)が本発明の範囲内である例21〜24、および例26〜29において、硬化性組成物の作業性が良好であり、硬化性組成物が硬化した硬化物の引張特性(柔軟性(M50)および伸び(E))も良好であることが確認された。特にM50が低く、伸び(E)が高かった。一方、重合体(B)を含まない例25は、例21〜24に比べて、作業性が不充分であり、M50が高く、伸び(E)が低い。また例30も、作業性が不充分であり、例26〜29に比べて、M50が高く、伸び(E)が低い。
表6に示されるように、硬化性組成物が重合体(A)と重合体(B)とを含む例31〜37において、硬化性組成物の作業性が良好であり、硬化性組成物が硬化した硬化物の引張特性(柔軟性および伸び)も良好であることが確認された。
一方、重合体(B)を含まない例38は、例37とそれぞれ比べて、作業性が不充分であり、特にM50が高く、伸び(E)が低い。
【0099】
[例41〜46]
上記製造例で得た重合体を用い、表7に示す配合で各成分を混合して、2成分型の硬化性組成物(主剤)を製造した。この主剤100質量部と、2成分型用硬化剤組成物10質量部とを混合し、この混合液を硬化させた硬化物について、H型物性・引張特性、塗膜汚染性、耐久性、表面べたつき性を以下の方法で評価した。また例21〜38と同じ方法で作業性を評価した。結果を表7に示す。
(H型物性・引張特性)
被着体としてアルミニウムを使用し、JIS A 1439の建築用シーリング材の試験方法に準拠して引張特性試験を行った。
引張特性試験では、テンシロン試験機を使用して、50%伸張した時の応力(M50、単位:N/mm)、最大引張応力(Tmax、単位:N/mm)、破断時の伸び量(E、単位:%)を測定した。
【0100】
(塗膜汚染性)
本発明の硬化性組成物の硬化物をシーリング材として用いる場合、上に塗料を塗ることがある。硬化物と塗料の密着性と共に、硬化物が塗料の硬化性能を低下させないことが必要である。塗膜汚染性とは、硬化物が塗料の硬化性能に与える影響を表す。アルミニウム板の上に縦50mm、横50mm、厚さ10mmの形状に硬化性組成物を施工し、23℃、湿度50%で48時間養生し硬化させた。その上から1液水性反応硬化形シリコン樹脂塗料(日本ペイント社製、商品名:オーデフレッシュSi100II)を塗布した。その後50℃で1週間養生したのち、23℃の条件で1日置いた後、よく乾燥させた汚染粉を表面全体にふりかけ10分静置した後、付着しなかった汚染粉をふるい落とした。汚染粉の付着がほとんどなく硬化性組成物の色合いを保っているものを「◎(優良)」、汚染粉がわずかに付着しているが、硬化性組成物の色合いを保っているものを「○(良好)」、汚染粉が多く付着しており、硬化性組成物の色合いが損なわれているものを「×(不良)」とした。なお、汚染粉にはJIS試験用粉体1,8種(関東ローム)(社団法人日本粉体工業技術協会製)を使用した。
【0101】
(耐久性)
被着体としてアルミニウムを使用し、JIS A 1439の建築用シーリング材の試験方法に準拠して耐久試験を行った。伸縮試験を2,000回または4,000回行った。伸縮試験後に被着体と硬化した硬化性組成物との間に亀裂が生じたものを「×(不良)」。亀裂は生じていないが僅かにくぼみが生じているものを「○(良好)」。亀裂もくぼみも生じておらず、良好なものを「◎(優良)」とした。
【0102】
(表面べたつき性)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの上におよそ縦150mm、横50mm、厚さ5mmの形状に硬化性組成物を施工し、23℃、湿度50%で8時間養生し硬化させ、表面のべたつきを指触で評価した。べたつきがないものを「○(良好)」、べたつくものを「×(不良)」とした。
【0103】
【表7】
【0104】
表7の結果より、硬化性組成物が重合体(A)と重合体(B)とを含む例41〜48では、H型物性・引張特性、塗膜汚染性、耐久性、および表面べたつき性のいずれも良好であった。また、粘度、チクソ性が良好なため、作業性が優良であった。これらのうちで重合体(B)の分子量が高い重合体(B−3)、(B−4)を用いた例43、44は、特に塗膜に汚染粉が付着し難かった。
これに対して、重合体(A)を用いず、その代わりに分子量分布(Mw/Mn)が1.40よりも広い比較重合体(C−1)を用いた例49、50は、伸び(E)が低く、塗膜汚染性および表面べたつき性が不良であり、耐久性も劣っていた。また粘度が高くなるため、作業性が可であった。
【0105】
<製造例15:重合体(A−9)の製造>
製造例1と同じ開始剤Aを用いた。
亜鉛ヘキサシアノコバルテートのt−ブタノール錯体触媒(0.03g)の存在下、開始剤A(64.1g)に、プロピレンオキシド(1,538g)を、120℃にて反応系の圧力が下がらなくなるまで反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端に水酸基を1分子あたり3個有する重合体(h7)を得た。重合体(h7)の、25℃における粘度は24.1Pa・sであった。GPCで測定したMnは31,000、Mwは37,000、よってMw/Mnは1.19であった。
【0106】
得られた重合体(h7)に、重合体(h7)の水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加して、重合体(h7)をアルコラート化した。つぎに、加熱減圧によりメタノールを留去した後に、重合体(h7)の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加した。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ全主鎖末端にアリル基を有する重合体(v7)を得た。
【0107】
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、得られた重合体(v7)の主鎖末端のアリル基に対して0.84倍モルのジメトキシメチルシランを添加し、70℃にて5時間反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(A−9)を得た。重合体(A−9)は、25℃における粘度が24.0Pa・sであった。GPCで測定したMnは31,000、Mwは37,000、よってMw/Mnは1.19であった。また、重合体(A−9)は、重合体(v7)の主鎖末端のアリル基の75%にジメトキシメチルシリル基が導入された重合体であった。
得られた重合体(A−9)の主鎖末端の平均官能基数、Mn、Mw/Mn、シリル化率(Si化率)、25℃における粘度を表8に示す。
【0108】
<製造例16:重合体(A−10)の製造>
製造例1と同じ開始剤Aを用いた。
亜鉛ヘキサシアノコバルテートのt−ブタノール錯体触媒(0.03g)の存在下、開始剤A(64.1g)に、プロピレンオキシド(1,410g)を、120℃にて反応系の圧力が下がらなくなるまで反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端に水酸基を1分子あたり3個有する重合体(h8)を得た。重合体(h8)の、25℃における粘度は19.1Pa・sであった。GPCで測定したMnは29,000、Mwは34,000、よってMw/Mnは1.17であった。
【0109】
得られた重合体(h8)に、重合体(h8)の水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加して、重合体(h8)をアルコラート化した。つぎに、加熱減圧によりメタノールを留去した後に、重合体(h8)の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加した。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ全主鎖末端にアリル基を有する重合体(v8)を得た。
【0110】
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、得られた重合体(v8)の主鎖末端のアリル基に対して0.84倍モルのジメトキシメチルシランを添加し、70℃にて5時間反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(A−10)を得た。重合体(A−10)は、25℃における粘度が19.1Pa・sであった。GPCで測定したMnは29,000、Mwは34,000、よってMw/Mnは1.17であった。また、重合体(A−10)は、重合体(v8)の主鎖末端のアリル基の75%にジメトキシメチルシリル基が導入された重合体であった。
得られた重合体(A−10)の主鎖末端の平均官能基数、Mn、Mw/Mn、シリル化率(Si化率)、25℃における粘度を表8に示す。
【0111】
<製造例17:重合体(A−11)の製造>
製造例1と同じ開始剤Aを用いた。
亜鉛ヘキサシアノコバルテートのt−ブタノール錯体触媒(0.03g)の存在下、開始剤A(64.1g)に、プロピレンオキシド(1,218g)を、120℃にて反応系の圧力が下がらなくなるまで反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端に水酸基を1分子あたり3個有する重合体(h9)を得た。重合体(h9)の、25℃における粘度は17.1Pa・sであった。GPCで測定したMnは26,000、Mwは30,000、よってMw/Mnは1.15であった。
【0112】
得られた重合体(h9)に、重合体(h9)の水酸基量に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加して、重合体(h9)をアルコラート化した。つぎに、加熱減圧によりメタノールを留去した後に、重合体(h9)の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加した。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ全主鎖末端にアリル基を有する重合体(v9)を得た。
【0113】
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、得られた重合体(v9)の主鎖末端のアリル基に対して0.84倍モルのジメトキシメチルシランを添加し、70℃にて5時間反応させた。これにより、ポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ主鎖末端にジメトキシメチルシリル基を有する重合体(A−11)を得た。重合体(A−11)は、25℃における粘度が17.1Pa・sであった。GPCで測定したMnは26,000、Mwは30,000、よってMw/Mnは1.15であった。また、重合体(A−11)は、重合体(v9)の主鎖末端のアリル基の75%にジメトキシメチルシリル基が導入された重合体であった。
得られた重合体(A−11)の主鎖末端の平均官能基数、Mn、Mw/Mn、シリル化率(Si化率)、25℃における粘度を表8に示す。
【0114】
【表8】
【0115】
表8に示されるように、重合体(A−9)はMnが約3万であり、重合体の25℃における粘度は24.0Pa・sである。
一方、特許文献2の例18に記載されている分子量約3万の高分子量重合体Eは、該高分子量重合体Eのほかに低分子量重合体aを含む硬化性組成物の状態での粘度が、25℃で28000cP(=28Pa・s)である。低分子量重合体aを含むと組成物の粘度は下がるため、分子量約3万の高分子量重合体E自身の25℃における粘度は、少なくとも28Pa・sより高いことがわかる。
このように、特許文献2の例18に記載されている高分子量重合体Eは、重合体(A−9)とMnがほぼ同等でありながら、高分子量重合体Eよりも粘度が高い。このことから特許文献2の高分子量重合体Eは、重合体(A−9)に比べて高分子量体を多く含み、分子量分布が広いと推測される。
【0116】
[例51〜53]
上記製造例で得た重合体を用い、表9に示す配合で各成分を混合して、2成分型の硬化性組成物(主剤)を製造した。この主剤100質量部と、2成分型用硬化剤組成物10質量部とを混合し、この混合液を硬化させた硬化物について、H型物性・引張特性、塗膜汚染性、耐久性、表面べたつき性を例41〜50と同じ方法で評価した。結果を表9に示す。
【0117】
【表9】
【0118】
表9の結果より、硬化性組成物が重合体(A)と重合体(B)とを含む例51〜53では、H型物性・引張特性、塗膜汚染性、耐久性、および表面べたつき性のいずれも良好であった。