(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
<イオン液体>
本実施形態に係るイオン液体は、下記一般式で表されるホルムアミジニウム系カチオンと
、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンXとから構成されている。式中、R
1はC
nH
2n+1又は(CH
2)
nOMe、R
2はMe又はEtを表す。R
1のnは0〜20の整数である。
【0019】
アニオンX
、すなわち、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(N(SO
2CF
3)
2−)を以下では「NTf
2」と略記する
。
【0020】
本発明者は、以上のような構造のイオン液体が、比較的低粘度であり、高温安定性が高く、しかも、有機化合物を溶解する能力に優れる、という特性を有することを確認している。このイオン液体は、キャパシタや二次電池といった蓄電装置用の電解液として好適に使用することができる。
【0021】
<実施例>
上記イオン液体の具体例を説明する。
【0022】
−イオン液体の製造−
N,N-ジアルキルカルバモイルクロリド、N-アルコキシアルキル-N-アルキルカルバモイルクロリド、N-メトキシ-N-アルキルカルバモイルクロリド又はN-メチルカルバモイルクロリドと、N,N-ジメチルホルムアミド(以下「DMF」と略記する。)又はN,N-ジエチルホルムアミドとを、溶媒中で混合し加熱することにより、ホルムアミジニウム塩化物(中間体)を合成する。次いで、上記アニオンXをカウンターイオンとして含むアルカリ塩とイオン交換水とを用い、イオン交換反応によって、上記塩化物から上記一般式で表されるホルムアミジニウム塩よりなるイオン液体を生成する。溶媒としてトルエンを用い、アルカリ塩として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiNTf
2)を用いる場合の、イオン液体の合成スキームを次に示す。なお、Cl
−は、ジクロロメタン(100ml)で抽出後、イオン交換水(50ml)で3回洗浄することで除去する。
【0023】
(DMFを反応させるケース)
【化2】
【0024】
(N,N-ジエチルホルムアミドを反応させるケース)
【化3】
【0025】
以下の各実施例において、化合物の同定には、
1H-NMR(Varian 400 MHz)を用いた。
【0026】
(実施例1)
イオン液体としての、N
1,N
1,N
3,N
3-テトラメチルホルムアミジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩を以下の方法によって合成した。
【0027】
窒素雰囲気下、300mLの三ッ口フラスコに、N,N-ジメチルカルバモイルクロリド (7.36 g,68.4 mmol)、DMF(5.0 g, 68.4 mmol)及びトルエン(120mL)を入れ、6時間加熱還流させた。放冷後、真空下で溶媒を留去することにより、N
1,N
1,N
3,N
3-テトラメチルホルムアミジニウム塩化物(黄色固体 6.7 g (72%),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3)・9.25 (s, 1H), 3.45 (s, 6H), 3.40 (s, 6H))を得た。
【0028】
次に、N
1,N
1,N
3,N
3-テトラメチルホルムアミジニウム塩化物(1.1mmol)とイオン交換水(5mL)をTFAボトル(20mL)に入れた。これに、LiNTf
2(1.2mmol)を数回にわけて加え、室温で一晩攪拌した。得られた反応溶液を塩化メチレンで抽出し、(乾燥させずに)減圧下で濃縮した。その後、カラムクロマトグラフィー(6%含水アルミナ、塩化メチレン:酢酸エチル=2:1)で高極性成分を分取することにより、N
1,N
1,N
3,N
3-テトラメチルホルムアミジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(淡黄色液体 11.2 g (80%),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.55 (s, 1H), 3.35 (s, 6H), 3.29 (s, 6H))を得た。R
1及びR
2はMeである。
【0029】
(実施例2)
N-エチル-N-メチルカルバモイルクロリド(550 mg, 4.53 mmol)とDMF(0.35 mL, 4.53 mmol)とを用い、実施例1と同じ方法にて、N
1-エチル-N
1,N
3,N
3-トリメチルホルムアミジニウム塩化物(黄色固体 354 mg (51%),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3)・10.13 (s, 1H), 3.63 (s, 2H), 3.50 (s, 3H), 3.31 (s, 3H), 3.29 (s, 6H), 1.28 (s, 3H))を合成した。そして、実施例1と同様のイオン交換によって、イオン液体N
1-エチル-N
1,N
3,N
3-トリメチルホルムアミジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(淡黄色液体 10.15 g (91%),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.56 (s, 1H), 3.62 (t, 3H), 3.52 (s, 3H), 3.31 (s, 3H), 3.30 (s, 3H), 1.35 (t, 3H))を得た。R
1はEt、R
2はMeである。
【0030】
(実施例3)
N-メチル-N-プロピルカルバモイルクロリド(882 mg, 6.51 mmol)とDMF(0.604 mL, 6.51 mmol)とを用い、実施例1と同じ方法にて、N
1,N
3,N
3-トリメチル-N
1-プロピルホルムアミジニウム塩化物(黄色固体 602 mg (56%),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3)・9.82 (s, 1H), 3.53(t, 2H), 3.40 (s, 3H), 3.26 (s, 3H), 3.21 (s, 6H), 1.63-1.24 (s, 3H), 0.92(t, 3H))を合成した。そして、実施例1と同様のイオン交換によって、イオン液体N
1,N
3,N
3-トリメチル-N
1-プロピルホルムアミジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(淡黄色液体 624 mg (83%);
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.56 (s, 1H), 3.40 (t, 3H), 3.53 (s, 3H), 3.31 (s, 3H), 3.28 (s, 3H), 1.73-1.68 (s, 2H), 0.95(t, 3H).)を得た。R
1はPr(プロピル基)、R
2はMeである。
【0031】
(実施例4)
N-ブチル-N-メチルカルバモイルクロリド(700 mL, 4.44 mmol)とDMF(0.41 mL, 5.33 mmol)とを用い、実施例1と同じ方法にて、N
1-ブチル-N
1,N
3,N
3-トリメチルホルムアミジニウム塩化物塩(黄色固体 645 mg (77%),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3)・9.63 (s, 1H), 3.61 (t, 2H), 3.42 (s, 3H), 3.23 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 1.63-1.24 (m, 4H), 0.95 (t, 3H))を合成した。そして、実施例1と同様のイオン交換によって、イオン液体N
1-ブチル-N
1,N
3,N
3-トリメチルホルムアミジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(淡黄色液体 10.05 g (91 %),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.48 (s, 1H), 3.40 (t, 3H), 3.33 (s, 3H), 3.30(s,3H), 3.24 (s,3H), 1.73-1.24 (m, 4H), 0.95 (t, 3H))を得た。R
1はBu(ブチル基)、R
2はMeである。
【0032】
(実施例5)
N-メチル-N-ペンチルカルバモイルクロリド(192 mL, 1.17 mmol)とDMF(0.12 mL, 1.4 mmol)と用い、実施例1と同じ方法にて、N
1,N
3,N
3-トリメチル-N
1-ペンチルホルムアミジニウム塩化物塩(黄色固体 176 mg (84 %),
1H-NMR (CDCl
3)・9.52 (s, 1H), 3.55 (t, 2H), 3.38 (s, 3H), 3.22 (s, 3H), 3.19 (s, 3H), 1.68-1.12 (m, 6H), 0.88 (t, 3H))を合成した。そして、実施例1と同様のイオン交換によって、イオン液体N
1,N
3,N
3-トリメチル-N
1-ペンチルホルムアミジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(淡黄色液体 102 mg (52%),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.52 (s, 1H), 3.42 (t, 3H), 3.35 (s, 3H), 3.32 (s, 3H), 3.26(s, 3H), 1.82-1.23 (m, 4H), 0.90(t, 3H))を得た。R
1はPe(ペンチル基)、R
2はMeである。
【0033】
(実施例6)
N-メトキシ-N-メチルカルバモイルクロリド(391 mL, 3.22 mmol)とDMF(0.32 mL, 3.83 mmol)とを用い、実施例1と同じ方法にて、N
1-メトキシ-N
1,N
3,N
3-トリメチルホルムアミジニウム塩化物塩(黄色固体 310 mg (63 %),
1H-NMR (CDCl
3)・10.13 (s, 1H), 3.38 (s, 3H), 3.l9 (s, 3H), 3.25 (s, 3H), 3.03 (s, 3H))を合成した。そして、実施例1と同様のイオン交換によって、イオン液体N
1-メトキシ-N
1,N
3,N
3-トリメチルホルムアミジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(淡黄色液体 199 mg (63 %),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.54 (s, 1H), 3.38 (s, 3H), 3.32 (s, 3H), 3.26(s, 3H))を得た。R
1はOMe(メトキシ基)、R
2はMeである。
【0034】
(実施例7)
N-メトキシエチル-N-メチルカルバモイルクロリド(1.545 g, 10.2 mmol)とDMF(0.946 mL, 12.2 mmol)と用い、実施例1と同じ方法にて、N
1-メトキシエチル-N
1,N
3,N
3-トリメチルホルムアミジニウム塩化物(黄色固体 852 mg (46 %),
1H-NMR (CDCl
3) d 9.41 (s, 1H), 3.67 (t, 2H, J = 6.8 Hz), 3.57 (s, 3H), 3.53 (s, 3H), 3.39 (s, 3H), 3.35 (s, 3H), 3.36 (t, 2H, J = 6.8 Hz))を合成した。そして、実施例1と同様のイオン交換によって、イオン液体N
1-メトキシエチル-N
1,N
3,N
3-トリメチルホルムアミジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(淡黄色液体 880 mg (74 %),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.52 (s, 1H), 3.43 (t, 3H), 3.35 (s, 3H), 3.32 (s, 3H), 3.27 (s, 3H), 2.89(s, 2H))を得た。R
1は(CH
2)
2OMe(メトキシエチル基)、R
2はMeである。
【0035】
(実施例8)
N-メトキシプロピル-N-メチルカルバモイルクロリド(232 mg, 1.4 mmol)とDMF(0.20 mL, 1.54 mmol)とを用い、実施例1と同じ方法にて、N
1-メトキシプロピル-N
1,N
3,N
3-トリメチルホルムアミジニウム塩化物(黄色固体 226 mg(83 %),
1H-NMR (CDCl
3) d 9.43 (s, 1H), 3.89 (t, 2H, J = 7.7 Hz), 3.51 (s, 3H), 3.49 (s, 3H), 3.32 (s, 3H), 3.30 (s, 3H), 3.24 (t, 2H, J = 7.7 Hz), 1.84-1.93 (m, 2H))を合成した。そして、実施例1と同様のイオン交換によって、イオン液体N
1-メトキシプロピル-N
1,N
3,N
3-トリメチルホルムアミジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(淡黄色液体 490 mg (61 %),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.56 (s, 1H), 3.41 (t, 3H), 3.34 (s, 3H), 3.33 (s, 3H), 3.32 (s, 3H), 2.74 (s, 3H), 1.36 (m, 2H), 0.90 (t, 3H))を得た。R
1は(CH
2)
3OMe(メトキシプロピル基)、R
2はMeである。
【0036】
(実施例9)
N,N-ジメチルカルバモイルクロリド(6.8 mL, 74 mmol)とN,N-ジエチルホルムアミド(10.3 mL, 81 mmol)とを用い、実施例1と同じ方法にて、N
1,N
1-ジエチル-N
3,N
3-ジメチルホルムアミジニウム塩化物塩(黄色固体 8.0 g(65 %),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 9.36 (s, 1H), 3.16 (s, 5H), 3.06 (s, 5H), 1.37 (t, J=7 Hz, 6H))を合成した。そして、実施例1と同様のイオン交換によって、イオン液体N
1,N
1-ジエチル-N
3,N
3-ジメチルホルムアミジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(淡黄色液体 3.61g (72 %),
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 7.57(s, 1H), 3.16 (s, 5H), 3.06 (s,5H), 1.37 (t, J = 7 Hz, 6H))を得た。R
1及びR
2はEtである。
【0037】
(比較例)
窒素雰囲気下、200mLの三口フラスコにN−メチルイミダゾール(14.5g,176mmol)、テトラヒドロフラン(124mL)及び1-ブロモ-3-メトキシプロパン(27.0g,176mmol)を入れ、5時間加熱還流させた。放冷後、減圧下で溶媒を留去した。得られたN-メトキシプロピル-N-メチルイミダゾリウム臭化物塩(1.28mmol)に、LiNTf
2(1.40mmol)を数回に分けて加え、室温で一晩攪拌した。得られた反応溶液を塩化メチレンで抽出し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下で溶媒を留去した。残渣を塩化メチレンに溶解させ、活性炭を加え、2時間室温で撹拌した。この溶液を濾過して活性炭を取り除き溶媒を留去した後に、カラムクロマトグラフィー(6%含水アルミナ、塩化メチレン:酢酸エチル=2:1)で高極性成分を分取することにより、淡黄色液体のN1-(3-メトキシプロピル)-N3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩を得た。
【0038】
<実施例及び比較例に係るイオン液体の特性>
実施例1〜5,7〜9に係るイオン液体の粘度、密度、分解温度、酸化電位、還元電位及び電位窓を測定した。電位窓(酸化還元電位)は、CV(サイクリックボルタンメトリー)測定によって求めた。その測定条件は、作用電極:Pt、対極電極:Pt、参照電極:Ag/AgCl、溶媒:無し (イオン液体のみ, neat)、掃引速度:100 mV/sとし、室温で測定した。結果を表1に示す。
【0040】
実施例に係るイオン液体は、いずれも室温で35cP以下の低粘度液体であるから、イオン伝導性が良いことがわかる。また、実施例に係るイオン液体は、いずれも分解温度が280℃以上であるから、高温安定性に優れていることがわかる。また、実施例に係るイオン液体は、その電位窓からみて、電気化学的安定性の確保にも問題がないことがわかる。
【0041】
(キャパシタの放電容量の測定)
実施例4及び比較例に係るイオン液体を電解質として、正極および負極ともに活性炭(宝泉社製)から構成したキャパシタ系半開放セルを作製し、充放電測定装置(岩通計測社製)を用いて各電池のキャパシタ容量(初期放電容量)を測定した。測定に用いた宝泉社製活性炭(AG−1)は、全比表面積が約2230m
2/gである。測定条件は、電圧範囲:0V〜2.5V、定電流値:1mA,2mA,3mA,5mA,10mA、温度:25℃である。各印加電流値でのキャパシタ容量を表2及び
図1に示す。
【0043】
実施例4は、比較例に比べて、キャパシタ容量が大きく、且つ印加する電流値を高めた場合の容量低下が小さい。すなわち、出力特性が良い。これは、実施例4に係るイオン液体は、比較例のイオン液体に比べて、粘度が低く、抵抗が小さいこと、つまり、イオンの移動が容易であることによると考えられる。