【実施例】
【0072】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、核磁気共鳴(NMR)は核磁気共鳴装置(バリアン社製、400MR)で測定し、マススペクトル(MS)は二重収束質量分析装置(日本電子社製、SX102型)で測定した。
【0073】
(実施例1)
4,4’−ジブロモ−2−ニトロフェニル1.00g(2.80mmol)、4−ピリジンボロン酸0.342g(2.80mmol)及びテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウムPd(PPh
3)
4 0.226g (0.196mmol)を三口フラスコに投入し、アルゴン雰囲気下にジメチルホルムアミド9ml、1M炭酸ナトリウム水溶液2.5mlを添加した後、100℃で6時間加熱撹拌して反応した。
反応終了後、過剰のジクロロメタンと水を添加し、ジクロロメタン層を抽出し濃縮した。
ジクロロメタン層を濃縮・乾燥後、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ジクロロメタン:酢酸エチル=3:1(体積比))により精製することにより、薄く黄色かかった白色固体0.539gを得た。
得られた薄く黄色かかった白色固体は化合物(41)であり、収率は54.0%であった。
【0074】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=7.40(2H,dd,J
1=2.10Hz,J
2=6.65Hz)、7.96(2H,dd,J
1=2.10Hz,J
2=6.65Hz)、7.74(1H,d,J=8.02Hz)、7.83(2H,dd,J
1=2.10Hz,J
2=4.35Hz)、8.02(1H,dd,J
1=1.96Hz,J
2=8.02Hz)、8.37(2H,d,J=1.66Hz)、8.74(1H,dd,J
1=1.66Hz,J
2=4.45Hz)ppm
MS(ESI):m/z=355(M+H)
+;calcd.for C
17H
11BrN
2O
2:355.19
【0075】
得られた化合物(41)1.38g(3.89mmol)、ジフェニルアミン1.31g(7.77mmol)、酢酸パラジウムPd(OAc)
2 34.8mg(0.155mmol)、トリ−t−ブチルホスフィン(t−Bu)
3P31.4mg(0.155mmol)及びt−ブトキシナトリウムNaO(t−Bu)1.12g(11.7mmol)を三口フラスコに投入し、アルゴン雰囲気下にトルエン85mlを添加した後、100℃で4時間加熱撹拌して反応した。
反応終了後、乾燥し、過剰のジクロロメタンと水を添加し、ジクロロメタン層を抽出し濃縮した。
得られた濃縮物をカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ジクロロメタン:酢酸エチル=3:1(体積比))により精製することにより、橙色の固体1.191gを得た。
得られた橙色の固体は化合物(42)であり、収率は69.0%であった。
【0076】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=7.08−7.16(m、8H)、7.32−7.38(m、6H)、7.74(1H,d,J=8.08)、7.81(2H,dd,J
1=1.72Hz,J
2=4.56Hz)、8.15(1H,dd,J
1=2.00Hz,J
2=8.12Hz)、8.29(1H,d,J=1.72Hz)、8.72(2H,dd,J
1=1.72Hz,J
2=4.46Hz)ppm
MS(ESI):m/z=444(M+H)
+;calcd.for C
29H
21N
3O
2:443.50
【0077】
得られた化合物(42)1.10g(2.48mmol)及びトリフェニルホスフィンPPh
3 1.63g(6.20mmol)を三口フラスコに投入し、アルゴン雰囲気下にオルトジクロロベンゼン5mlを添加した後、160℃で16時間加熱撹拌して反応した。
反応終了後、過剰のオルトジクロロベンゼンと水を添加し、ジクロロメタン層を抽出し濃縮した。
得られた濃縮物を乾燥し、カラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ジクロロメタン:酢酸エチル=3:1(体積比))により精製することにより、黄色の固体0.925gを得た。
得られた黄色の固体は化合物(4)であり、収率は90.0%であった。
【0078】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=6.96(1H,dd,J
1=2.00Hz,J
2=8.48Hz)、7.05(2H,t,J=7.28Hz)、7.12(4H,d,J=7.48Hz)、7.18(1H,d,J=1.96Hz)、7.31(4H,t,J=7.32Hz)、7.61(1H,dd,J
1=1.64Hz,J
2=8.16Hz)、7.73(2H,dd,J
1=1.68Hz,J
2=4.48Hz)、7.88(1H,d,J=1.60Hz)、8.06(1H,d,J=8.44Hz)、8.17(1H,d,J=8.20Hz)、8.63(2H,dd,J
1=1.60Hz,J
2=4.40Hz)、10.30(s,1H,−NH)ppm
MS(ESI):m/z=412(M+H)
+;calcd.for C
29H
21N
3:411.50
【0079】
得られた化合物(4)0.35g(0.85mmol)をジメチルホルムアミド130mlに溶解し、水素化ナトリウム0.06g(2.55mmol)を少量ずつ添加した。25℃で1時間攪拌した後、エチル−7−ブロモヘプタネイト1.01g(4.25mmol)を添加し、更に1時間攪拌して反応した。
反応終了後、ジメチルホルムアミドをロータリーエバポレーターで除去した。
その後、過剰の水とジクロロメタンを添加・洗浄し、ジクロロメタン層を抽出した。
ジクロロメタン層を濃縮・乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:酢酸エチル=3:1(体積比))により分離精製することにより黄色の粘性固体0.331gを得た。
得られた粘性固体は、下記化合物(43)であり、収率は68.5%であった。
【0080】
【化17】
【0081】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=1.17(3H,t,J=7.12Hz)、1.31(2H,t,J=3.76Hz)、1.51(2H,t,J=6.96Hz)、1.84(2H,t,J=7.44Hz)、2.05(2H,t)(overlap with peak of residual acetone in aceton−d
6)、2.12(2H,t,J=7.44Hz)、4.04(q,2H)、4.40(2H,t,J=7.08Hz)、6.95(1H,dd,J
1=1.88Hz,J
2=8.40Hz)、7.05(2H,t,J=7.28Hz)、7.13(4H,d,J=7.52Hz)、7.26(1H,d,J=1.68Hz)、7.31(4H,t,J=6.64Hz)、7.61(1H,dd,J
1=1.56Hz,J
2=8.08Hz)、7.78(2H,dd,J
1=1.72Hz,J
2=4.48Hz)、7.96(1H,d,J=0.96Hz)、8.08(1H,d,J=8.40Hz)、8.18(1H,d,J=8.20Hz)、8.64(2H,dd,J
1=1.68Hz,J
2=4.44Hz)ppm
MS(ESI):m/z=568(M+H)
+;calcd.for C
38H
37N
3O
2:567.72
【0082】
得られた化合物(43)0.33g(0.58mmol)をエタノール300mlに溶解した後、水酸化ナトリウム190mgを溶解した水酸化ナトリウム水溶液100mlを少量ずつ添加し、75℃で8時間攪拌して反応した。
反応終了後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。
その後、過剰の水とジクロロメタンを添加・洗浄し、ジクロロメタン層を抽出し濃縮した。抽出の際、水層に少量の塩酸を供給して、pHを3〜5に調節した。
次に、濃縮液をジクロロメタン−ヘキサン混合液に供給し、再沈殿して黄色の固体0.235gを得た。
得られた固体は、化合物(5)であり、収率は74.8%であった。
【0083】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=1.33(4H,t,J=3.64Hz)、1.51(2H,t,J=7.40Hz)、1.84(2H,t,J=7.28Hz)、2.21(2H,t,J=7.44Hz)、4.40(2H,t,J=7.20Hz)、6.95(1H,dd,J
1=1.92Hz,J
2=8.40Hz)、7.05(2H,t,J=7.28Hz)、7.13(4H,d,J=7.60Hz)、7.26(1H,d,J=1.68Hz)、7.32(4H,t,J=6.44Hz)、7.62(1H,dd,J
1=1.56Hz,J
2=8.12Hz)、7.79(2H,dd,J
1=1.72Hz,J
2=4.48Hz)、7.98(1H,d,J=1.00Hz)、8.08(1H,d,J=8.80Hz)、8.19(1H,d,J=8.12Hz)、8.64(2H,dd,J
1=1.56Hz,J
2=4.56Hz)ppm
MS(ESI):m/z=540(M+H)
+;calcd.for C
36H
37N
3O
2:539.67
【0084】
得られた化合物(4)0.250g(0.608mmol)をジメチルホルムアミド130mlに25℃で溶解させた後、水素化ナトリウム(NaH)0.044g(1.82mmol)を少量ずつ加えた。
次いで、1−ヨードブタン0.559g(3.04mmol)をゆっくり滴下した。
滴下終了後、反応溶液を濃縮・乾燥し、過剰の水とジクロロメタンを添加・洗浄し、ジクロロメタン層を抽出し濃縮した。
ジクロロメタン層を濃縮・乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:酢酸エチル=3:1(体積比))により分離精製することにより薄黄色の固体0.285gを得た。
得られた固体は、化合物(6)であり、収率は76.8%であった。
【0085】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=0.86(3H,t,J=7.44Hz)、1.31(2H,q,J=7.72Hz)、1.80(2H,t,J=7.48Hz)、4.39(2H,t,J=7.08Hz)、6.95(1H,dd,J
1=1.88Hz,J
2=8.40Hz)、7.05(2H,t,J=7.28Hz)、7.13(4H,d,J=7.52Hz)、7.25(1H,d,J=1.68Hz)、7.31(4H,t,J=6.64Hz)、7.62(1H,dd,J
1=1.56Hz,J
2=8.08Hz)、7.79(2H,dd,J
1=1.72Hz,J
2=4.48Hz)、7.97(1H,d,J=0.96Hz)、8.08(1H,d,J=8.40Hz)、8.18(1H,d,J=8.20Hz)、8.65(2H,dd,J
1=1.68Hz,J
2=4.44Hz)ppm
MS(ESI):m/z=468(M+H)
+;calcd.for C
33H
29N
3:467.60
【0086】
得られた化合物(4)、(5)及び(6)を1,4−ジオキサンに溶解して濃度:2×10
−5Mの吸光度測定用試料を得た。得られた試料を紫外可視分光光度計(島津製作所社製、UV−3150)に供給して吸光スペクトルを測定した。
また、得られた化合物(4)、(5)及び(6)を1,4−ジオキサンに溶解して濃度2×10
−6Mの蛍光測定用試料を得た。得られた試料を蛍光分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、F−4500)に供給し、蛍光スペクトルを測定した。
得られた結果を
図3に示した。
【0087】
また、得られた蛍光測定用試料を蛍光量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C−9920−01)に供給して蛍光量子収率を測定した。得られた蛍光量子収率と上記吸収スペクトル及び蛍光から読み取った吸収極大波長(モル吸収係数)及び蛍光極大波長を表1に示した。
【0088】
【表1】
【0089】
得られた化合物(4)、(5)及び(6)をテトラヒドロフランに溶解して濃度:1×10
−4Mの溶液を作製した。得られた溶液に酸化チタンを添加し、25℃で16時間浸漬した後、酸化チタンを取り出し乾燥して赤外線スペクトル(IR)測定用試料を得た。得られた化合物(4)、(5)及び(6)と得られた試料を用いて、フーリエ変換赤外分光光度計(パーキンエルマー社製、Spectrum−One)で赤外線(IR)スペクトルを測定して結果を
図4〜6に示した。
図4〜6のIRスペクトルに示されているように、化合物(4)、(5)及び(6)が酸化チタンに吸着すると、1600cm
−1付近の吸収が高波数側にシフトしており、これはピリジン環の窒素原子と酸化チタンのチタン原子の間で強固な配位結合を形成していることを示している。従って、このIRスペクトルから、化合物(4)、(5)及び(6)が酸化チタンに対し略垂直且つ強固に吸着していることを示している。
【0090】
FTOガラス板(日本板硝子社製、13Ω/□)の一面にドクターブレードを用いて酸化チタンペースト(日揮触媒化成社製、PST−18NR)を塗布し、450℃で50分間焼成して厚さ9μmの酸化チタン層を形成した。次に、上記(4)及び(5)を、濃度:1×10
−4Mのテトラヒドロフラン溶液に25℃で16時間浸漬した後、取り出し、乾燥して第1電極を得た。第1電極の酸化チタン層に電解質溶液(0.1Mヨウ化リチウム、0.05Mヨウ素及び0.6M1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨードジドのアセトニトリル溶液)を数滴たらし、パラフィルムスペーサーを介して第2電極である白金蒸着ガラス板を積層し、両端をクリップで固定して、第1電極と第2電極の間に電解質溶液層を形成して色素増感太陽電池セルを得た。
【0091】
得られた色素増感太陽電池セルにソーラーシミレータ(旭スペクトラ社製、HAL−302)でAM1.5、100mWcm
−2の疑似太陽光を照射(照射面積0.25cm
2)し、ポテンシオスタガット/ガルバノスタット(北斗電工社製、HA−501G)で電流―電圧曲線を測定した。得られた電流―電圧曲線から短絡電流及び開放光起電圧を読み取り、結果を表2に示した。また、短絡電流及び開放光起電圧からフィルファクター及び光電変換効率を計算して結果を表2に示した。
【0092】
【表2】
【0093】
カルボキシル基(吸着基)を有する化合物(5)では、光電変換効率が1.56と、良好な結果を示した。また、吸着基のない化合物(4)、(6)についても、光電変換効率が1.05、0.36と、電子が移動していることがわかる。カルボキシル基等の吸着基がなくても、ピリジン環が酸化チタン層に吸着し、電子を移動させることが可能なことを示している。なお、上記実施例では、カルボキシル基が酸化チタン層に良好に吸着し得る操作をしているため、他の条件、ピリジン環と酸化チタンとの吸着が良好に行われる条件であれば、化合物(4)、(6)の光電変換効率をより高めることが可能である。
【0094】
(実施例2)
4−ブロモピリジンハイドロブロミド19.12g(80mmol)、2−チオフェンボロン酸11.26g(80mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Ph
3P)
4Pd2.78g(2.4mmol)をジメチルホルムアミド240mlに溶解し、90℃、アルゴン雰囲気下で12時間攪拌して反応させた。
反応終了後、25℃まで冷却し、ロータリーエバポレーターでジメチルホルムアミドを除去し、過剰の水とジクロロメタンを添加・洗浄し、ジクロロメタン溶液を抽出した。得られたジクロロメタン溶液を濃縮乾燥した後昇華精製して白色の結晶10.92gを得た。
得られた結晶は、化合物(51)であり、収率は84.7%であった。
【0095】
得られた結晶のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=7.21(1H,dd,J=5.00Hz,3.65Hz)、7.62(2H,dd,J=4.50Hz,1.60Hz)、7.64(1H,dd,J=5.10Hz,1.10Hz)、7.74(1H,dd,J=3.65Hz,1.10Hz)、8.58(2H,dd,J=4.55Hz,1.65Hz)ppm
MS(APCL):m/z=162.034(M+H)
+;calcd.for C
9H
7NS:161.22
【0096】
得られた化合物(51)6.00g(37.2mmol)を300mlのテトラヒドロフランに溶解した後、−78℃に冷却し、アルゴン雰囲気下でn−ブチルリチウム5.01molをヘキサン60mlに溶解して添加し1時間攪拌した。
次に、塩化トリブチル錫18.15g(74.4mmol)を添加し、2時間に25℃に戻し、その後、12時間攪拌して反応させた。
【0097】
次いで、反応液を2M炭酸ナトリウム水溶液600mlに注入して反応を停止させた。
これにジクロロメタンを添加・洗浄し、ジクロロメタン層を抽出した。
抽出したジクロロメタン溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、硫酸ナトリウムをろ過し、ろ過液を濃縮し、その残留物をクーゲロー蒸留装置、次いでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:酢酸エチル=3:1(体積比))により精製することにより褐色の液体11.46gを得た。
得られた液体は化合物(52)であり、収率は68.5%であった。
【0098】
得られた液体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=0.89−0.92(9H,m)、1.19−1.22(6H,m)、1.34−1.42(6H,m)、1.61−1.67(6H,m)、7.30(1H,d,J=3.50Hz)、7.60(2H,dd,J=4.55Hz,1.65Hz)、7.82(1H,d,J=3.45Hz)、8.56(2H,dd,J=4.55Hz,1.70Hz)ppm
MS(ESI):m/z=452.14(M+H)
+;calcd.for C
21H
33NSSn:450.27
【0099】
得られた化合物(52)8.00g(17.8mmol)、4,4’−ジブロモー2−ニトロビフェニル6.98g(19.6mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウ(Ph
3P)
4Pd1.02g(0.88mmol)をトルエン40mlに溶解し、90℃、アルゴン雰囲気下で12時間攪拌して反応させた。
反応終了後、25℃まで冷却し、ヘキサン400mlに注入し、析出した黄色の固体をろ過した。
ろ物を乾燥した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=40:1(体積比))により分離精製することにより褐色の固体4.52gを得た。
得られた固体は、化合物(53)であり、収率は58.2%であった。
【0100】
【化18】
【0101】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=7.39(2H,dd,J=6.55Hz,1.95Hz)、7.66−7.70(5H,m)、7.84(2H,d,J=3.90Hz)、8.11(1H,dd,J=8.10Hz,2.00Hz)、8.30(1H,d,J=1.95Hz)、8.63(2H,dd,J=4.45Hz,1.65Hz)ppm。
MS(ESI):m/z=438.99(M+H)
+;calcd.for C
21H
13BrN
2O
2S:437.31
【0102】
得られた化合物(53)3.00g(6.9mmol)、ジフェニルアミン2.32g(13.7mmol)、酢酸パラジウムPd(OAc)
20.062g(0.27mmol)、トリ−t−ブチルホスフィン(t−Bu)
3P0.055g(0.27mmol)及びt−ブトキシナトリウムt−BuONa1.98g(20.6mmol)をトルエン200mlに溶解し、100℃、アルゴン雰囲気下で5時間攪拌して反応させた。
反応終了後、25℃まで冷却し、トルエンをロータリーエバポレーターで除去した。
その後、過剰の水とジクロロメタンを添加・混合し、ジクロロメタン層を抽出した。
ジクロロメタン層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:酢酸エチル=3:1(体積比))により分離精製することにより橙色の固体2.38gを得た。
得られた固体は、化合物(54)であり、収率は66.1%であった。
【0103】
【化19】
【0104】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=7.07(2H,dd,J=6.75Hz,2.05Hz)、7.11−7.15(6H,m)、7.31(2H,dd,J=6.60Hz,2.05Hz)、7.36(4H,t,J=7.35Hz)、7.65−7.69(3H,m)、7.79(1H,d,J=3.90Hz)、7.83(1H,d,J=3.90Hz)、8.05(1H,dd,J=8.05Hz,1.95Hz)、8.22(1H,d,J=1.95Hz)、8.62(2H,dd,J=4.50Hz,1.65Hz)ppm
MAS(ESI):m/z=526.16(M+H)
+;calcd.for C
33H
23N
3O
2S:525.62
【0105】
得られた化合物(54)1.00g(1.9mmol)とトリフェニルホスフィンPPh
31.25g(4.8mmol)をo−ジクロロベンゼン4mlに溶解し、170℃、アルゴン雰囲気下で12時間攪拌して反応させた。
反応終了後、25℃まで冷却し、高真空下で減圧乾燥して固体を得た。
得られた固体をジクロロメタン−ヘキサン混合液で再沈殿して黄色の固体0.76gを得た。
得られた固体は、化合物(7)であり、収率は80.5%であった。
【0106】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=6.95(1H,dd,J=8.40Hz,1.95Hz)、7.05(2H,t,J=7.45Hz)、7.12(4H,dd,J=8.60Hz,2.05Hz)、7.16(1H,d,J=1.80Hz)、7.36(4H,t,J=7.45Hz)、7.58−7.59(2H,m)、7.66(2H,dd,J=4.40Hz,1.65Hz)、7.77(1H,d,J=3.90Hz)、7.83(1H,d,J=1.00Hz)、8.04(1H,d,J=8.50Hz)、8.11(1H,d,J=8.20Hz)、8.59(2H,dd,J=4.50Hz,1.65Hz)、10.30(1H,s)ppm
MS(ESI):m/z=494.17(M+H)
+;calcd.for C
33H
23N
3S:493.62
【0107】
得られた化合物(7)0.20g(0.41mmol)をジメチルホルムアミド70mlに溶解し、水素化ナトリウム0.03g(1.25mmol)を少量ずつ添加した。
25℃で1時間攪拌した後、エチル−7−ブロモヘプタネイト0.48g(1.2mmol)を添加し、更に1時間攪拌して反応した。
反応終了後、ジメチルホルムアミドをロータリーエバポレーターで除去した。
その後、過剰の0.1M水酸化ナトリウム水溶液とジクロロメタンを添加・洗浄し、ジクロロメタン層を抽出した。
ジクロロメタン層を濃縮・乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:酢酸エチル=3:1(体積比))により分離精製することにより赤色の粘性固体0.15gを得た。
得られた粘性固体は、化合物(55)であり、収率は58.3%であった。
【0108】
【化20】
【0109】
得られた粘性固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=1.17(3H,t)、1.31−1.32(2H,m)、1.50−1.53(2H,m)、1.81−1.84(2H,m)、2.04−2.06(2H,m)(overlapping peak of dissolved acetone in asetone−d
6)、2.21(2H,t)、4.02−4.06(2H,m)、4.36(6H,m)、6.94(1H,dd,J=8.40Hz,1.75Hz)、7.05(2H,t,J=7.40)、7.13(4H,dd,J=8.60Hz,1.10Hz)、7.24(1H,d,J=1.75Hz)、7.31(4H,t,J=7.45Hz)、7.58(1H,dd,J=8.15Hz,1.60Hz)、7.64−7.66(3H,m)、7.77(1H,d,J=3.85Hz)、7.90(1H,d,J=1.10Hz)、8.05(1H,d,J=8.35Hz)、8.11(1H,d,J=8.00Hz)、8.59(2H,dd,J=4.60Hz,1.70Hz)ppm
MS(ESI):m/z=650.28(M+H)
+;calcd.forC
33H
23N
3S:649.84
【0110】
得られた化合物(55)0.20g(0.41mmol)をエタノール100mlとジクロロメタン40mlの混合溶媒に溶解した後、0.05M水酸化ナトリウム水溶液40gを添加し、70℃で12時間攪拌して反応させた。
反応終了後25℃まで冷却し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去し、真空乾燥した。
その後、過剰の水及びジクロロメタンを加えた。塩酸を少量加え、水層をpH5に調整した後、ジクロロメタン層を抽出した。
抽出したジクロロメタン層を濃縮、乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:メタノール=10:1(体積比))により精製して黄色の固体0.11gを得た。
得られた固体は、化合物(8)であり、収率は75.0%であった。
【0111】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400MHz,DMSO−d
6/TMS)δ=1.19−1.21(4H,m)、1.35−1.41(2H,m)、1.64−1.70(2H,m)、4.30(2H,t)、6.87(1H,dd,J=8.40Hz,1.90Hz)、7.02−7.08(6H,m)、7.13(1H,d,J=1.75Hz)、7.31(4H,t,J=7.40Hz)、7.54(1H,dd,J=8.10Hz,1.50Hzm)、7.70(2H,dd,J=4.45Hz,1.60Hz)、7.76(1H,d,J=3.85)、7.89(1H,d,J=3.85Hz)、7.91(1H,d,J=1.10Hz)、8.06(1H,d,J=8.35Hz)、8.10(1H,d,J=8.05Hz)、8.59(2H,dd,J=4.60Hz,1.60Hzs)ppm
MS(ESI):m/z=622.25(M+H)
+;calcd.forC
40H
35N
3O
2S:621.79
【0112】
得られた化合物(7)0.15g(0.30mmol)をジメチルホルムアミド70mlに溶解させ、水素化ナトリウム(NaH)0.02(0.91mmol)を少量ずつ加えた。
室温(25℃)で1時間攪拌した後、1−ヨードブタン0.28g(1.5mmol)を加え、更に1時間攪拌して反応した。
反応終了後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。
その後、0.1M水酸化ナトリウム水溶液及びジクロロメタンを加え、ジクロロメタン層を抽出した。
ジクロロメタン層を濃縮、乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ジクロロメタン:酢酸エチル=3:1(体積比))により精製し、黄色の固体0.10gを得た。
得られた固体は、化合物(9)であり、収率は62.0%であった。
【0113】
得られた固体のNMRとマススペクトルの測定結果は以下の通りであった。
1H−NMR(400 MHz,アセトン−d
6/TMS)δ=0.88(3H,t)、1.28−1.36(2H,m)、1.77−1.83(2H,m)、4.37(2H,t)、6.94(1H,dd,J=8.35Hz,1.90Hz)、7.06(2H,t,J=6.40Hz)、7.13(4H,d,J=7.60Hz)、7.24(1H,d,J=1.80Hz)、7.32(4H,t,J=7.45Hz)、7.59(1H,dd,J=8.15Hz,1.60Hz)、7.66−7.67(3H,m)、7.79(1H,d,J=3.85Hz)、7.90(1H,d,J=1.20Hz)、8.06(1H,d,J=8.30Hz)、8.13(1H,d,J=8.05Hz)、8.60(2H,d,J=6.05Hz)ppm
MS(ESI):m/z=550.23(M+H)
+;calcd.forC
37H
31N
3S:549.73
【0114】
得られた化合物(7)、(8)及び(9)を用いて、実施例1で行ったと同様にして吸光スペクトル及び蛍光スペクトルを測定し、得られた結果を
図7に示した。また、実施例1と同様にして蛍光量子収率を測定し、得られた蛍光量子収率と上記吸収スペクトル及び蛍光スペクトルから読み取った吸収極大波長(モル吸収係数)及び蛍光極大波長を表3に示した。
【0115】
【表3】
【0116】
得られた化合物(7)、(8)及び(9)を用い、実施例1と同様にして色素増感太陽電池セルを得て、電流―電圧曲線を測定した。得られた電流―電圧曲線から短絡電流及び開放光起電圧を読み取り、結果を表4に示した。又、短絡電流及び開放光起電圧からフィルファクター及び光電変換効率を計算して結果を表4に示した。
【0117】
【表4】
【0118】
カルバゾールイル基とピリジン環との間にチオフェン環を有することにより、化合物(7)〜(9)はいずれも良好な光電変換効率を示した。特にカルボキシル基(吸着基)を有する化合物(5)では、光電変換効率が2.27(η/%)と非常に高い。上記実施例では、カルボキシル基が酸化チタンに吸着しやすい条件で操作していることから、他の条件で化合物(7)、(9)を酸化チタンに吸着させれば、より高い光電変換効率を示すものと考えられる。
【0119】
(実施例3)
実施例1で得られた化合物(4)及び(6)を、塩化メチレン溶液を用いて再結晶させた。再結晶により得られた化合物(4)及び(6)を、瑪瑙乳鉢及び乳棒を用い、10〜100N/cm
−2の荷重で摩砕した。また、摩砕後の化合物(4)及び(6)の固体を加熱(120℃程度)した。
【0120】
摩砕前後の化合物(4)及び(6)の励起極大波長及び蛍光極大波長を表5に示す。
【0121】
【表5】
【0122】
また、化合物(4)の摩砕前後、並びに加熱後のそれぞれの固体励起スペクトルを
図6(A)に、固体蛍光発光スペクトルを
図6(B)に示す。
【0123】
また、化合物(6)の摩砕前後、並びに加熱後のそれぞれの固体励起スペクトルを
図7(A)に、固体蛍光発光スペクトルを
図7(B)に示す。
【0124】
いずれの化合物も摩砕後では、摩砕前に比べて固体励起スペクトル及び固体蛍光発光スペクトルが長波長側にシフトしており、蛍光発光色が変化していることがわかる。また、加熱後の固体励起スペクトル及び固体蛍光発光スペクトルが短波長側にシフトして摩砕前のスペクトルに戻り、摩砕前の蛍光発光色と同様の発光を呈することがわかる。