特許第5757631号(P5757631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5757631無線通信システム、無線通信装置及び無線通信制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5757631
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信装置及び無線通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/08 20090101AFI20150709BHJP
   H04W 8/00 20090101ALI20150709BHJP
   H04W 80/06 20090101ALI20150709BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20150709BHJP
【FI】
   H04W74/08
   H04W8/00 110
   H04W80/06
   H04W84/12
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-101205(P2012-101205)
(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公開番号】特開2013-229798(P2013-229798A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2014年8月4日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 特許法第30条第項適用、平成24年1月19、20日に開催された社団法人電子情報通信学会アドホックネットワーク研究会で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大槻 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】布 房夫
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆利
(72)【発明者】
【氏名】守倉 正博
(72)【発明者】
【氏名】三軒谷 勇貴
【審査官】 桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−196985(JP,A)
【文献】 Chun-Hsiang HUANG et al.,Enhancement of CSMA/CA and Network Coding in Single-Relay. Multi-User Wireless Networks,IEICE TRANS. COMMUN., VOL.E93-B, NO.12,IEICE,2010年
【文献】 三軒谷勇貴,守倉正博,梅原大祐,大槻暢朗,杉山隆利,隠れ端末存在下における中継CSMA/CAのCW最適化,信学技報,電子情報通信学会,2012年 1月,vol. 111, no. 385, AN2011-66,pp. 65-70
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と、該基地局に接続する中継局と、該中継局に接続し該中継局を介して前記基地局と通信する複数の無線端末により構成される無線通信システムであって、
前記基地局と前記無線端末との間において隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出する隠れ端末検出手段と、
前記基地局及び中継局が使用する第1のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっている無線端末が使用する第2のコンテンションウィンドウよりも小さく、かつ、前記第2のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっていない無線端末が使用する第3のコンテンションウィンドウよりも小さくなるように設定する制御手段と
を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記隠れ端末検出手段は、
隠れ端末を特定するために前記無線端末から送信した信号を前記基地局において受信した結果に基づいて前記基地局が認識できた前記無線端末を記載した認識端末リスト情報と、前記中継局の配下に所属する前記無線端末を記載した所属端末リスト情報とを比較した結果に基づき前記隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
基地局と、該基地局に接続する中継局と、該中継局に接続し該中継局を介して前記基地局と通信する複数の無線端末により構成される無線通信システムにおいて、前記中継局として動作する無線通信装置であって、
前記基地局と前記無線端末との間において隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出する隠れ端末検出手段と、
前記基地局及び中継局が使用する第1のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっている無線端末が使用する第2のコンテンションウィンドウよりも小さく、かつ、前記第2のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっていない無線端末が使用する第3のコンテンションウィンドウよりも小さくなるように設定する制御手段と
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項4】
基地局と、該基地局に接続する中継局と、該中継局に接続し該中継局を介して前記基地局と通信する複数の無線端末により構成される無線通信システムにおいて、前記基地局として動作する無線通信装置であって、
前記基地局と前記無線端末との間において隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出する隠れ端末検出手段と、
前記基地局及び中継局が使用する第1のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっている無線端末が使用する第2のコンテンションウィンドウよりも小さく、かつ、前記第2のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっていない無線端末が使用する第3のコンテンションウィンドウよりも小さくなるように設定する制御手段と
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項5】
基地局と、該基地局に接続する中継局と、該中継局に接続し該中継局を介して前記基地局と通信する複数の無線端末により構成される無線通信システムが行う無線通信制御方法であって、
前記中継局が、前記基地局と前記無線端末との間において隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出する隠れ端末検出ステップと、
前記中継局が、前記基地局及び中継局が使用する第1のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっている無線端末が使用する第2のコンテンションウィンドウよりも小さく、かつ、前記第2のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっていない無線端末が使用する第3のコンテンションウィンドウよりも小さくなるように設定する制御ステップと
を有することを特徴とする無線通信制御方法。
【請求項6】
基地局と、該基地局に接続する中継局と、該中継局に接続し該中継局を介して前記基地局と通信する複数の無線端末により構成される無線通信システムが行う無線通信制御方法であって、
前記基地局が、前記基地局と前記無線端末との間において隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出する隠れ端末検出ステップと、
前記基地局が、前記基地局及び中継局が使用する第1のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっている無線端末が使用する第2のコンテンションウィンドウよりも小さく、かつ、前記第2のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっていない無線端末が使用する第3のコンテンションウィンドウよりも小さくなるように設定する制御ステップと
を有することを特徴とする無線通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と複数の無線端末との間の無線通信を中継局により中継する無線通信システム、無線通信装置及び無線通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基地局(アクセスポイント)と無線端末の間に中継局を介在することで、エリアカバー率を向上させる無線LAN中継システムが注目されている。この無線LAN中継システムは、通常の使用環境において発生しうる、無線端末が複数台でかつ基地局と中継局とが1台のみという状況では、従来のCSMA/CAでは全ての無線機器(基地局,中継局、無線端末)は公平に送信権を獲得できるため、複数端末をまとめた無線端末群に比較して基地局と中継局の送信機会が小さくなってしまい、中継局がシステムスループットのボトルネックとなってしまうとともに、下りのトラヒックが上りと比較して極端に小さくなってしまうという問題がある。この問題を解決するために、基地局、中継局及び無線端末のCSMA/CAのバックオフ機能におけるミニマムコンテンションウィンドウ(CWmin)を無線端末の台数に応じて適応的に制御し、無線端末の送信確率を基地局、中継局に比べて相対的に下げ、無線端末群の送信確率と、基地局、中継局の送信確率とを近づけることで、システムスループットの劣化を抑制する技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Chun-Hsiang HUANG, Daisuke UMEHARA, Satoshi DENNO, Masahiro MORIKURA and Takatoshi SUGIYAMA, “Enhancement of CSMA/CA and Network Coding in Single-Relay Multi-User Wireless Networks", IEICE Trans. Commun., Vol. E93.B, No. 12, pp.3371-3380, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一部の無線端末が基地局と隠れ端末の関係(中継局の位置関係や障害などによって電波が到達できない状態のこと)にある場合には、隠れ端末の送信パケットと、基地局の送信パケットが頻繁にパケット衝突を起こす。そのため、非特許文献1の技術が適用されることにより送信確率が相対的に下げられている無線端末の送信確率がバックオフ制御によりさらに低下してしまい、隠れ端末の上りスループットが、他の無線端末の上りスループットと比較して大きく劣化するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、一部の無線端末が基地局と隠れ端末の関係にある場合であっても、隠れ端末状態の無線端末の上りスループットが劣化することを抑制することができる無線通信システム、無線通信装置及び無線通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基地局と、該基地局に接続する中継局と、該中継局に接続し該中継局を介して前記基地局と通信する複数の無線端末により構成される無線通信システムであって、前記基地局と前記無線端末との間において隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出する隠れ端末検出手段と、前記基地局及び中継局が使用する第1のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっている無線端末が使用する第2のコンテンションウィンドウよりも小さく、かつ、前記第2のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっていない無線端末が使用する第3のコンテンションウィンドウよりも小さくなるように設定する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明は、前記隠れ端末検出手段は、隠れ端末を特定するために前記無線端末から送信した信号を前記基地局において受信した結果に基づいて前記基地局が認識できた前記無線端末を記載した認識端末リスト情報と、前記中継局の配下に所属する前記無線端末を記載した所属端末リスト情報とを比較した結果に基づき前記隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出することを特徴とする。
【0008】
本発明は、基地局と、該基地局に接続する中継局と、該中継局に接続し該中継局を介して前記基地局と通信する複数の無線端末により構成される無線通信システムにおいて、前記中継局として動作する無線通信装置であって、前記基地局と前記無線端末との間において隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出する隠れ端末検出手段と、前記基地局及び中継局が使用する第1のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっている無線端末が使用する第2のコンテンションウィンドウよりも小さく、かつ、前記第2のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっていない無線端末が使用する第3のコンテンションウィンドウよりも小さくなるように設定する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明は、基地局と、該基地局に接続する中継局と、該中継局に接続し該中継局を介して前記基地局と通信する複数の無線端末により構成される無線通信システムにおいて、前記基地局として動作する無線通信装置であって、前記基地局と前記無線端末との間において隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出する隠れ端末検出手段と、前記基地局及び中継局が使用する第1のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっている無線端末が使用する第2のコンテンションウィンドウよりも小さく、かつ、前記第2のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっていない無線端末が使用する第3のコンテンションウィンドウよりも小さくなるように設定する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、基地局と、該基地局に接続する中継局と、該中継局に接続し該中継局を介して前記基地局と通信する複数の無線端末により構成される無線通信システムが行う無線通信制御方法であって、前記中継局が、前記基地局と前記無線端末との間において隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出する隠れ端末検出ステップと、前記中継局が、前記基地局及び中継局が使用する第1のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっている無線端末が使用する第2のコンテンションウィンドウよりも小さく、かつ、前記第2のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっていない無線端末が使用する第3のコンテンションウィンドウよりも小さくなるように設定する制御ステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明は、基地局と、該基地局に接続する中継局と、該中継局に接続し該中継局を介して前記基地局と通信する複数の無線端末により構成される無線通信システムが行う無線通信制御方法であって、前記基地局が、前記基地局と前記無線端末との間において隠れ端末の関係になっている前記無線端末を検出する隠れ端末検出ステップと、前記基地局が、前記基地局及び中継局が使用する第1のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっている無線端末が使用する第2のコンテンションウィンドウよりも小さく、かつ、前記第2のコンテンションウィンドウが前記隠れ端末の関係になっていない無線端末が使用する第3のコンテンションウィンドウよりも小さくなるように設定する制御ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、隠れ端末状態にある無線端末は、他の無線端末と比較して送信権を得やすくなるため、衝突によって送信権取得確率が減少することを相殺でき、上りのスループットが劣化することを抑制することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の構成を示す模式図である。
図2図1に示す中継局RSの構成を示すブロック図である。
図3図1に示す基地局AP、中継局RS及び無線端末STA1〜3の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による無線通信システムを説明する。図1は同実施形態の構成を示す模式図である。この図において、符号APは、基地局(アクセスポイント)である。符号STA1〜3は、基地局APとの間で無線通信を行う無線端末である。符号RSは、基地局APと無線端末STA1〜3との間で無線通信を中継する中継局である。基地局APは、中継局RSを介して、無線端末STA1〜3と無線通信を行う。ここで、基地局APと無線端末STA1、STA2との間は、互いにキャリアセンスをすることができる位置関係にあるが、基地局APと無線端末STA3との間は互いにキャリアセンスができない(この無線端末STA3を隠れ端末という)関係にあるものとする。したがって、基地局APと無線端末STA3は、送信前に互いの送信状況を知ることができず、よって、それぞれの送信した信号が衝突し、正しく中継局RSにおいて受信されない状況が発生する。
【0015】
次に、図2を参照して、図1に示す中継局RSの構成を説明する。図2は、図1に示す中継局RSの構成を示すブロック図である。中継局RSは、受信部1と、端末リスト管理部2と、隠れ端末検出部3と、送信パラメータ制御部4と送信部5を備える。受信部1は、基地局APより認識MACアドレスリストを受信し、受信した認識MACアドレスリストは隠れ端末検出部3に通知する。端末リスト管理部2は、無線端末が当該ネットワークに参加するためのアソシエーションの過程を通じて、中継局RS配下に所属する無線端末群(すべての無線端末を総称する)のMACアドレスを所属MACアドレスリストとして保持する。
【0016】
隠れ端末検出部3は、端末リスト管理部2において記憶されている所属MACアドレスリストと受信した認識MACアドレスリストを比較し、基地局APと隠れ端末関係にある無線端末(隠れ端末)を特定する。送信パラメータ制御部4は、特定した隠れ端末の台数に基づき、無線端末STA1〜3、中継局RS、並びに基地局APの送信パラメータを算出する。送信パラメータ制御部4は、算出したパラメータを用いて、中継局RSの送信確率を制御する。送信部5は、プローブパケットを基地局AP、無線端末群に対して送信するとともに、算出された各送信パラメータを、各無線端末STA1〜3、基地局APに対して送信する。
【0017】
なお、ここでは、中継局RSが主体として隠れ端末の関係になっている無線端末を検出し、コンテンションウィンドウの制御を行うものとして説明する。この動作は基地局APが主体となり、中継局RSを介して行うようにしてもよい。
【0018】
次に、図3を参照して、図1に示す基地局AP、中継局RS及び無線端末STA1〜3の動作を説明する。図3は、図1に示す基地局AP、中継局RS及び無線端末STA1〜3の動作を示すシーケンス図である。中継局RSは予め自身の配下に所属している無線端末STA1〜3を認識しており、端末リスト管理部2内に記憶されている所属MACアドレスリスト上に所属無線端末のMACアドレスを保持している。無線端末STA1〜3が中継局RS配下に所属する処理動作については、既存のIEEE802.11規格等に沿ったものを用いればよい。
【0019】
中継局RSは中継システム内の隠れ端末を特定するため、プローブパケットを基地局AP及び無線端末STA1〜3に対してマルチキャストする(ステップS1〜S4)。これを受信した無線端末STA1〜3は、自身のMACアドレスを情報として含んだ隠れ端末特定用のパケット(特定用パケット)を基地局APに対して送信する(ステップS5、S6)。事前に中継局RSからプローブパケットを受信することにより、隠れ端末を特定するための処理動作に移行した基地局APは、特定用パケットを受信するとACKを無線端末(ここでは、無線端末STA1、STA2が該当するものとする)に対して返送する(ステップS7、S8)と共にその特定用パケットを送信した無線端末のMACアドレスを認識MACアドレスリストに保持する。プローブパケット、特定用パケット、並びにACKはそれぞれの送信局がサポートする最低伝送レートの変調モードを用いて送信する。
【0020】
基地局APからACKを受信した無線端末STA1、STA2は自身の特定用パケットが基地局APに届いたことを確認できるため、特定用パケットの再送を停止する。特定用パケットが基地局APに届かず、基地局APからのACKを受信できない無線端末STA3は、所定回数の再送を繰り返してもACKを受信できなかった場合は特定用パケットの送信を停止する。
【0021】
また、基地局APは特定用パケットを受信したことを確認するためのACKを送信しなくてもよい。その場合,無駄なパケットが送出されるのを防ぐ観点から、無線端末の特定用パケットの送信は1回のみにするのがよい。
【0022】
基地局APは特定用パケットの受信が一定時間以上の間止まった後、認識MACアドレスリストを中継局RSに送信する(ステップS9)。中継局RSの隠れ端末検出部3は基地局APから受信した認識MACアドレスリストと、自身が端末リスト管理部2内に保持している所属MACアドレスリストとを比較し、所属MACアドレスリスト上に記載されているが、認識MACアドレスリストに記載されていないMACアドレスリストを持つ無線端末STA3を、隠れ端末として特定する。
【0023】
中継局RSは、無線端末STA3のミニマムコンテンションウィンドウを無線端末STA1、STA2に比べて小さく設定するように、基地局AP及び無線端末STA1〜3に対して制御を行うための制御パケットを送信する(ステップS10〜S13)。すなわち、中継局RS及び基地局APが送信するために用いる第1のミニマムコンテンションウィンドウ(CW1)と、隠れ端末としての無線端末STA3が送信するために用いる第2のミニマムコンテンションウィンドウ(CW2)と、他の無線端末1、2が送信するために用いる第3のミニマムコンテンションウィンドウ(CW3)が、CW1<CW2<CW3の関係になるように設定する。
【0024】
なお、本実施形態における隠れ端末を検出するための動作は、一定周期で繰り返し実行するのが望ましい。繰り返しにより、隠れ端末の検出精度を向上させると共に、ネットワークに所属する無線端末の構成に変化があった場合にも対応が可能である。
【0025】
なお、本実施形態では、中継局RSが主体として、隠れ端末を検出し、第1〜3のコンテンションウィンドウを設定することについて説明したが、基地局APが主体として動作してもよい。この場合に中継局RSは、基地局APと無線端末STA1〜3との間の通信の中継を行うのみであり、隠れ端末を特定するためのプローブパケットの送信は基地局APが行うこととなる。また、基地局APは、認識MACアドレスリストと、中継局RSから受け取った所属MACアドレスリストを比較することにより隠れ端末を特定すればよい。そして、基地局APは、中継局RS及び基地局AP自身が送信するために用いる第1のミニマムコンテンションウィンドウ(CW1)と、隠れ端末としての無線端末STA3が送信するために用いる第2のミニマムコンテンションウィンドウ(CW2)と、他の無線端末1、2が送信するために用いる第3のミニマムコンテンションウィンドウ(CW3)が、CW1<CW2<CW3の関係になるように設定する。
【0026】
このように、基地局APと隠れ端末の関係にある無線端末STA3は基地局APのRTS/CTSを用いた送信状況が認識できないため、基地局APから中継局RSへの送信と、無線端末STA3から中継局RSへの送信が衝突してしまい、他の無線端末STA1、STA2と比較して通信ができない確率が高くなる。そのため無線端末STA3のスループットは他の無線端末と比較して劣化する。これを補償するため、中継局RSは無線端末STA3のミニマムコンテンションウィンドウを無線端末STA1、STA2に比べて小さく設定するように無線端末STA1〜3に対して制御を行う。制御の方法はコマンドパケットを中継局RSから無線端末STA1〜3に対して送信することで行うことができる。これにより、無線端末間のスループットの公平性を改善することができる。
【0027】
また、上記の制御は中継自体の効率を改善するため、基地局APのコンテンションウィンドウ制御と同時に用いることも可能である。その場合は基地局APのコンテンションウィンドウを、隠れ端末関係にある無線端末のミニマムコンテンションウィンドウよりも小さく設定するよう制御を行う。
【0028】
以上説明したように、基地局、中継局、複数の無線端末により構成される無線中継システムでは、基地局と一部の無線端末とが隠れ端末の関係になってしまうことが発生する。この環境において、それぞれがキャリアセンスに従って送信を行うと、中継局でパケットが衝突し、正常に受信できなくなることから、特に隠れ端末の関係にある無線端末の上りのスループットが低下する問題がある。
【0029】
本実施形態では、基地局と隠れ端末の関係にある無線端末を検出し、この無線端末に対して小さいコンテンションウィンドウを設定するようにした。具体的には、中継局がプローブ信号を送信して、無線端末に対して応答信号を送信させ、基地局がこの応答信号を受信できた場合には、これらは隠れ端末の関係にはないと判断し、基地局がこの応答信号を受信できない場合には、これらは隠れ端末の関係にあると判断する。そして、検出した隠れ端末に対して、基地局及び中継局が使用するコンテンションウィンドウよりも大きく、かつ、他の無線端末が使用するコンテンションウィンドウよりも小さい値を設定するようにした。これにより、隠れ端末状態にある無線端末は、他の無線端末と比較して送信権を得やすくなるため、衝突により送信しにくくなることを防止でき、上りのスループットを増加させることができる。
【0030】
なお、図1に示す基地局及び中継局の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより隠れ端末検出処理及びコンテンションウィンドウ制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0031】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0032】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
基地局と複数の無線端末との間の通信を中継局により中継する無線通信システムにおいて、隠れ端末問題が発生した際に、隠れ端末状態にある無線端末のスループット低下を防止することが不可欠な用途に適用できる。
【符号の説明】
【0034】
AP・・・基地局、RS・・・中継局、STA1〜3・・・無線端末、1・・・受信部、2・・・端末リスト管理部、3・・・隠れ端末検出部、4・・・送信パラメータ制御部、5・・・送信部
図1
図2
図3