【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0126】
実施例1 3’−H−ホスホン酸 RNA合成用モノマーの一般的合成
(1−1) 5’−O−TBDMS−リボヌクレオシドの合成
4種のリボヌクレオシド(100mmol)の無水ピリジン溶液(200mL)に対して、塩化t−ブチルジメチルシリル(14.3g,95mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いて0℃でゆっくりと加えた。得られた反応混合液の温度を室温まで昇温したのち、4時間撹拌した。エバポレータを用いて反応混合液を濃縮した後、濃縮物を塩化メチレン(200mL)に溶解または懸濁した。得られた溶液または懸濁液を、撹拌した蒸留水(500mL)に滴下した。有機相を分離した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、さらにエバポレータを用いて濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物は蒸留水−メタノールで再結晶することにより精製した。得られた結晶をアセトニトリルあるいはアセトンで洗浄することにより、目的の5’−O−TBDMS体を得た(収率:83〜88%)。
【0127】
(1−2) 5’−O−TBDMS アデノシンの合成
アデノシン(100mmol)の無水ピリジン溶液(400mL)に対して、塩化t−ブチルジメチルシリル(14.3g,95mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いて0℃でゆっくりと加えた。得られた反応混合液の温度を室温まで昇温したのち、4時間撹拌した。エバポレータを用いて反応混合液を濃縮した後、濃縮物を塩化メチレン(200mL)に溶解した。得られた溶液を、撹拌した蒸留水(500mL)に滴下した。有機相を分離した後、エバポレータを用いて濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物はアセトニトリルで再結晶することにより精製した。得られた結晶をアセトニトリルで洗浄することにより、目的の5’−O−TBDMS体を得た(収率:85%)。
【0128】
(1−3) 5’−O−TBDMS シチジンの合成
シチジン(100mmol)の無水ピリジン溶液(400mL)に対して、塩化t−ブチルジメチルシリル(14.3g,95mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いて0℃でゆっくりと加えた。得られた反応混合液の温度を室温まで昇温したのち、4時間撹拌した。エバポレータを用いて反応混合液を濃縮した後、濃縮物を塩化メチレン(200mL)に溶解または懸濁した。得られた溶液または懸濁液を、撹拌した蒸留水(500mL)に滴下した。有機相を分離した後、酢酸エチルを加えて粗生成物を結晶として得た。さらに酢酸エチル−塩化メチレンで再結晶することにより目的の5’−O−TBDMS体を得た(収率:88%)。
【0129】
(1−4) 5’−O−TBDMS ウリジンの合成
ウリジン(100mmol)の無水ピリジン溶液(200mL)に対して、塩化t−ブチルジメチルシリル(14.3g,95mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いて0℃でゆっくりと加えた。得られた反応混合液の温度を室温まで昇温したのち、4時間撹拌した。エバポレータを用いて反応混合液を濃縮した後、濃縮物を塩化メチレン(200mL)に溶解した。得られた溶液を、撹拌した蒸留水(500mL)に滴下した。有機相を分離した後、エバポレータを用いて濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物を中圧クロマト装置(山善社製,製品名「YFLC AI−580」)とHigh−Flash 40μmsize4Lカラムを用いて、塩化メチレン−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的の5’−O−TBDMS体を得た(収率:83%)。
【0130】
(1−5) 5’−O−TBDMS−N
3−ジメチルアミノメチニル グアノシンの合成
グアノシン(100mmol)の塩化メチレン(200mL)懸濁液に対してジメチルホルムアミドジメチルアセタール(500mmol)を加え、室温で8時間撹拌した。反応液をろ過し、得られた固体を乾燥した後、無水ピリジン溶液(200mL)に溶解した。この溶液に塩化t−ブチルジメチルシリル(14.3g,95mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いて0℃でゆっくりと加えた。得られた反応混合液の温度を室温まで昇温したのち、4時間撹拌した。エバポレータを用いて反応混合液を濃縮した後、濃縮物を塩化メチレン(200mL)に溶解した。得られた溶液を撹拌した蒸留水(500mL)に滴下し、有機相を分離した後、エバポレータを用いて濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物をアセトニトリルで再結晶することにより、目的の5’−O−TBDMS体を得た(収率:83〜88%)。
【0131】
(2−1) 5’−O−TBDMS−リボヌクレオシド 2’−または3’−H−ホスホン酸エステル混合物の一般的合成
上記で得られた4種の5’−O−TBDMS−リボヌクレオシド(80mmol)、1,2,4−トリアゾール(16.6g,240mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(35.6mL,240mmol)の無水ピリジン溶液(160mL)に対して、蒸留した三塩化リン(7.0mL,80mmol)を、カニュラーを用いて−78℃でゆっくりと滴下し、30分撹拌した。反応液を、0℃に冷却した5%炭酸水素ナトリウム水溶液(200mL)に滴下し、10分撹拌した。反応液を、排除限界分子量100の透析膜(Cellulose Ester(CE) Dialysis Membranes,Spectrum製)に封入し、メタノールに対して15時間透析し、反応試薬由来の不純物と溶媒を交換した。得られた溶液を濃縮し、粗生成物を得た。得られた粗生成物を下記条件のクロマトグラフィに付し、目的化合物であるホスホン酸エステル混合物を得た(収率:65〜77%)。
【0132】
クロマトグラフィ条件
カラム担体: ODSシリカ担体(60μm)
装置: 中圧逆相クロマトグラフ装置(昭光サイエンティフィック社製,Purif−compact)
溶離液: 0〜50%アセトニトリル水溶液
(2−2) 5’−O−TBDMS アデノシン 2’−または3’−H−ホスホン酸エステル混合物の合成
イミダゾール(49g,720mmol)の塩化メチレン(200mL)溶液に対して、蒸留した三塩化リン(10mL,120mmol)を−50℃下でゆっくりと滴下した。当該溶液に5’−O−TBDMSアデノシン(22.9mmol,60mmol)の無水ピリジン溶液(200mL)を、カニュラーを用いてゆっくりと滴下し、30分以上かけて0℃まで昇温し、そのまま30分撹拌した。反応液に28%アンモニア水(100mL)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液を濃縮して粗生成物を得たのち、中圧クロマト装置(山善社製,製品名「YFLC AI−580」)とHigh−Flash 40μmsize4Lカラムを用いて、塩化メチレン−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物であるホスホン酸エステル混合物を得た(収率:77%)。
【0133】
(2−3) 5’−O−TBDMS シチジン 2’−または3’−H−ホスホン酸エステル混合物の合成
イミダゾール(25g,360mmol)の塩化メチレン(100mL)溶液に対して、蒸留した三塩化リン(5.0mL,60mmol)を−50℃下でゆっくりと滴下した。当該溶液に5’−O−TBDMSシチジン(10.8g,60mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いてゆっくりと滴下し、30分以上かけて0℃まで昇温し、そのまま30分撹拌した。反応液に28%アンモニア水(100mL)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液を濃縮して粗生成物を得たのち、粗生成物を中圧クロマト装置(山善社製,製品名「YFLC AI−580」)とHigh−Flash 40μmsize4Lカラムを用いて、塩化メチレン−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物であるホスホン酸エステル混合物を得た(収率:75%)。
【0134】
(2−4) 5’−O−TBDMS ウリジン 2’−または3’−H−ホスホン酸エステル混合物の合成
イミダゾール(25g,360mmol)の塩化メチレン(100mL)溶液に対して、蒸留した三塩化リン(5.0mL,60mmol)を−50℃下でゆっくりと滴下した。当該溶液に5’−O−TBDMSウリジン(10.8g,30mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いてゆっくりと滴下し、30分以上かけて0℃まで昇温し、そのまま30分撹拌した。反応液に28%アンモニア水(100mL)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液を濃縮して粗生成物を得たのち、粗生成物を中圧クロマト装置(山善社製,製品名「YFLC AI−580」)とHigh−Flash 40μmsize4Lカラムを用いて、塩化メチレン−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物であるホスホン酸エステル混合物を得た(収率:75%)。
【0135】
(2−5) 5’−O−TBDMS グアノシン 2’−または3’−H−ホスホン酸エステル混合物の合成
イミダゾール(25g,360mmol)の塩化メチレン(100mL)溶液に対して、蒸留した三塩化リン(5.0mL,60mmol)を−50℃下でゆっくりと滴下した。当該溶液に5’−O−TBDMSグアノシン(13.6g,30mmol)の無水ピリジン溶液(100mL)を、カニュラーを用いてゆっくりと滴下し、30分以上かけて0℃まで昇温し、そのまま30分撹拌した。反応液に28%アンモニア水(100mL)を加え、室温で一晩撹拌した。得られた溶液を濃縮して粗生成物を得た後、中圧クロマト装置(昭光サイエンティフィック社製,製品名「PrifCompact」)とPrifPack ODS 30μmsize200カラムを用いて、塩化メチレン−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物であるホスホン酸エステル混合物を得た(収率:75%)。
【0136】
(3−1) 2’−O−アセチル−5’−O−TBDMS−リボヌクレオシド 3’−H−ホスホン酸エステルの一般的合成
上記(2)で得られた4種の5’−O−TBDMS−リボヌクレオシド H−ホスホン酸エステル混合物(50mmol)の無水DMF溶液(250mL)に対して、酢酸ビニル(23.4mL,250mmol)とCandida Cyclindracea(Candida rugosa)由来のリパーゼ(1.0g)を加え、55℃で24時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。得られた粗生成物を、溶離液を5〜25%アセトニトリル水溶液に変更した以外は上記(2)と同様の条件のクロマトグラフィに付し、目的化合物である3’−H−ホスホン酸エステルを得た(収率:55〜81%)。
【0137】
(3−2) 2’−O−アセチル−5’−O−TBDMS−アデノシン 3’−H−ホスホン酸エステルモノマーの合成
上記(2)で得られた5’−O−TBDMSアデノシン H−ホスホン酸エステル混合物(17g,25mmol)のt−ブタノール溶液(125mL)に対して、無水酢酸(7.1mL,75mmol)とブタ膵臓由来のリパーゼ(1.0g)を加え、37℃で8時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物は昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、PrifPack ODS30μm size200カラムを用いて、脱気した水−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である3’−H−ホスホン酸エステルを得た(13.2g,収率:76%)。
1H NMR(500 MHz,CD
3OD):δ8.74(1H,s),8.51(1H,s), 8.11-8.17(2H,br S),6.93(1H,d,J = 588 Hz),6.58-6.71(1H,m),6.17-6.24(1H,m),5.09-5.47(1H,m),4.42-4.55(5H,m),3.49-3.66(2H,m),2.36(3H,s),0.82(9H,s),0.02(3H,s),-0.06(3H,s)
31P NMR(202.5 MHz,CD
3OD):δ2.0
ESI-TOF MS:calcd for C
18H
29N
5O
7PSi,[M-H]
-m/z:486.16,Found m/z:486.36
得られた目的化合物を、逆相カラムを用いた下記条件のHPLCで分析した。得られたHPLCチャートを
図1に示す。
【0138】
高圧グラジエントユニット:日本分光社製「HG−980−31」
ポンプ:日本分光社製「PU−980」
サンプリングユニット:日本分光社製「AS−2057plus」
UV−VIS検出器:日本分光社製「UV−970」
カラムオーブン:日本分光社製「860−CO」
カラム:ナカライテスク社製「5C18 COSMOSIL−AR−II 4.6×250mm」
溶出液:0.1M TEAA buffer(pH7.0)/CH
3CN aq (CH
3CN aqの割合を、30分間かけて2%から60%とした)
溶出速度:0.5mL/min
分析温度:40℃
検出波長:260nm
図1のとおり、酵素を用いたアセチル化により、高い立体選択性をもって2’位をアセチル化できることが実証された。
【0139】
(3−3) 2’−O−アセチル−5’−O−TBDMS−シチジン 3’−H−ホスホン酸エステルモノマーの合成
上記(2)で得られた5’−O−TBDMSシチジン H−ホスホン酸エステル混合物(6.6g,10mmol)のt−ブタノール溶液(25mL)に対して、無水酢酸(2.8mL,30mmol)とブタ膵臓(0.4g)を加え、37℃で24時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、PrifPack ODS30μm size200カラムを用いて、脱気した水−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である3’−H−ホスホン酸エステルを得た(5.54g,収率:80%)。
1H NMR(500 MHz,CD
3OD):7.95-8.20(2H,br S),δ7.73(1H,d,J = 17.3),6.63(1H,d,J = 593 Hz),6.32-6.65(1H,m),6.05-6.37(1H,m),5.94(1H,d,J = 17.3),5.09-5.40(2H,m),4.18-4.63(5H,m),3.63-3.72(2H,m),2.45(3H,s),0.81(9H,s),0.04(3H,s),-0.02(3H,s)
31P NMR(202.5 MHz,CD
3OD):δ2.2
ESI-TOF MS:calcd for C
17H
29N
3O
8PSi,[M-H]
-m/z:462.15,Found m/z:462.23
(3−4) 2’−O−アセチル−5’−O−TBDMS−ウリジン 3’−H−ホスホン酸エステルモノマーの合成
上記(2)で得られた5’−O−TBDMSウリジン H−ホスホン酸エステル混合物(6.6g,10mmol)のt−ブタノール溶液(25mL)に対して、無水酢酸(2.8mL,30mmol)とブタ膵臓由来のリパーゼ(0.4g)を加え、37℃で24時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、PrifPack ODS30μm size200カラムを用いて、脱気した水−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である3’−H−ホスホン酸エステルヌクレオシドモノマーを得た(5.61g,収率:81%)。
1H NMR(500 MHz,CD
3OD):δ7.88(1H,d,J = 17.2),6.63(1H,d,J = 579 Hz),6.21-6.59(1H,m),5.58-6.07(1H,m),5.79(1H,d,J = 17.3),4.99-5.28(2H,m),4.10-4.73(5H,m),3.73-3.88(2H,m),2.27(3H,s),0.82(9H,s),0.01(3H,s),-0.06(3H,s)
31P NMR(202.5 MHz,CD
3OD):δ2.1
ESI-TOF MS:calcd for C
17H
28N
2O
9PSi,[M-H]
-m/z:463.13,Found m/z:463.51
得られた目的化合物を、上記実施例1(3−2)と同様の条件のHPLCで分析した。得られたHPLCチャートを
図2に示す。
図2のとおり、酵素を用いたアセチル化により、ウリジンでも、高い立体選択性をもって2’位をアセチル化できることが実証された。
【0140】
(3−5) 2’−O−アセチル−5’−O−TBDMS−グアノシン 3’−H−ホスホン酸エステルの合成
上記(2)で得られた5’−O−TBDMSグアノシン H−ホスホン酸エステル混合物(7.03g,10mmol)のt−ブタノール溶液(25mL)に対して、無水酢酸(2.8mL,30mmol)とブタ膵臓由来のリパーゼ(0.4g)を加え、37℃で24時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、PrifPack ODS30μm size200カラムを用いて、脱気した水−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である3’−H−ホスホン酸エステルヌクレオシドモノマーを得た(4.8g,収率:55%)。
1H NMR(500 MHz,DMSO-D
6):δ10.46-10.64(1H,br s),8.07(1H,s),7.23-7.56(2H,br S),6.54(1H,d,J = 592 Hz),5.28-6.59(3H,m),4.45-4.98(5H,m),3.63-3.79(2H,m),2.34(3H,s),0.77(9H,s),-0.03(3H,s),-0.12(3H,s)
31P NMR(202.5 MHz,DMSO-D
6):δ1.7
ESI-TOF MS:calcd for C
18H
29N
5O
7PSi,[M-H]
-m/z:502.51,Found m/z:502.77
【0141】
実施例2 2’−H−ホスホン酸 RNA合成用モノマーの製造
(1) 3’−O−アセチル−5’−O−TBDMS−リボヌクレオシド 2’−H−ホスホン酸エステルの合成
上記実施例1(2)で得た4種の5’−O−TBDMS−リボヌクレオシド H−ホスホン酸エステル混合物(50mmol)の無水ピリジン溶液(250mL)に対して、酢酸ビニル(23.4mL,250mmol)とブタ膵臓由来リパーゼ(2.0g)を加え、55℃で24時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。得られた粗生成物を上記実施例1(3)と同様の条件のクロマトグラフィに付し、目的化合物である2’−H−ホスホン酸エステルモノマーを得た(収率:52〜80%)。
【0142】
(2) 3’−O−アセチル−5’−O−TBDMS−アデノシン 2’−H−ホスホン酸エステルの合成
上記実施例1(2)で得た5’−O−TBDMSアデノシン H−ホスホン酸エステル混合物(6.7g,10mmol)の無水DMF溶液(25mL)に対して、無水酢酸(2.8mL,30mmol)とLipasePS AmanoSD(0.4g)を加え、37℃で8時間振とうした。リパーゼを濾別し、濾液をエバポレータで濃縮することにより粗生成物を得た。粗生成物は昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、PrifPack ODS30μm size200カラムを用いて、脱気した水−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である2’−H−ホスホン酸エステルモノマーを得た(5.35g,収率:80%)。
H NMR(500 MHz,CD
3OD):δ8.72(1H,s),8.48(1H,s),8.03-12(2H,br S),6.58(
1H,d,J = 573 Hz),6.62-6.73(1H,m),5.57-6.19(2H,m),4.68-5.01(4H,m),3.49-3.66(2H,m),2.41(3H,s),0.81(9H,s),0.03(3H,s),-0.05(3H,s)
31P NMR(202.5 MHz,CD
3OD):δ2.4
ESI-TOF MS:calcd for C
18H
29N
5O
7PSi,[M-H]
-m/z:486.16,Found m/z:486.41
得られた目的化合物を、上記実施例1(3−2)と同様の条件のHPLCで分析した。得られたHPLCチャートを
図2に示す。
図2のとおり、酵素を用いたアセチル化により、高い立体選択性をもって3’位もアセチル化できることが実証された。
【0143】
以上に加えて、リパーゼ反応の条件を種々検討した。結果を表1および表2にまとめる。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
実施例3 RNA2量体の製造
(1) 5’−O−TBDMS−ウリジン 2’−アセチル−3’−酒石酸エステルおよび3’−アセチル2’−酒石酸エステル混合物の合成
5’−O−TBDMSウリジン(1.08g,3.0mmol)の無水ピリジン溶液(10mL)に対して、無水酒石酸(300mg,3.0mmol)を0℃下で加え、そのまま1時間撹拌した。反応液に無水酢酸(570μL,6.0mmol)を加え、0℃で30分撹拌した。反応液にメタノールを加え、得られた溶液を濃縮して粗生成物を得た後、中圧クロマト装置(昭光サイエンティフィック社製,PrifCompact)と分離精製用カラム(昭光サイエンティフィック社製,PurifPack ODS30μm size60)を用いて、脱気した水−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的化合物である5’−O−TBDMS−ウリジン アセチル−酒石酸エステル混合物を得た(1.2g,収率:73%)。
【0147】
(2) 5’−O−TBDMS ウリジン 2’−アセチル−3’−酒石酸担持ポリエチレングリコールおよび5’−O−TBDMS ウリジン 3’−アセチル−2’−酒石酸担持ポリエチレングリコールの混合物の合成
上記(1)で得られた5’−O−TBDMS−ウリジン アセチル−酒石酸エステル混合物(1.1g,2.0mmol)およびモノメトキシポリエチレングリコール(平均分子量5000,5.0g,1.0mmol)の無水アセトニトリル溶液(10mL)に対して、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(810mg,6.0mmol)およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(0.93mL,6.0mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応液にTBAFのTHF溶液(1.0M,4.0mL,4.0mmol)を加え、室温で撹拌した後、CellfineGH−25(50mL,溶離液:メタノール)を用いて精製し、ウリジン担持ポリエチレングリコールを得た(1.0g,収率:95%)。
【0148】
(3) 縮合
上記(2)で得られたウリジン担持ポリエチレングリコール(1.0g,1.9mmol)と、上記実施例1(3−2)で得られた2’−O−アセチル−5’−O−TBDMS−アデノシン 3’−H−ホスホン酸エステルモノマー(2.0mmol)のアセトニトリル(4.0mL)溶液に、塩化ピバリル酸(490μL,4.0mmol)およびトリエチルアミン(560μL,4.0mmol)を加えた。モノマーの消費をYMC PakDiol60(溶離液:0.1M,NaCl)で追跡しながら1時間撹拌した。
【0149】
(4) 亜リン酸ジエステル基の酸化
上記反応溶液に、20mMヨウ素水/ピリジン/THF溶液(1.0mL,20mmol)を添加して30分撹拌した。
【0150】
(5) 5’位の脱保護
さらに、上記反応液にTBAFのTHF溶液(1.0M,4.0mL,4.0mmol)を加えて1時間撹拌した。次いで、CellfineGH−25(50mL)で精製した。
【0151】
(6) 2’位と3’位の脱保護
上記担持2量体RNAをメタノール(125mL)に溶解し、Thermomyces lanuginosus由来のリパーゼ(5.0mL)を加え、室温で48時間振とうした。リパーゼを濾別し、反応液を凍結乾燥した後、昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、YMC ODSpack 25μm 200カラムを用いて、オートクレーブおよび脱気した水−メタノールを溶出溶媒として精製し、目的のRNA2量体(1.5g)を得た。得られたRNA2量体がテトラブチルアンモニウム塩であるとして計算した通算収率は95%であった。得られたRNA2量体の分析結果を以下に示す。
ESI-TOF MS:calcd for C
19H
23N
7O
12P,[M-H]
- m/z:572.11,Found m/z:572.23
また、上記実施例1(3−2)と同様の条件で、得られた溶液をHPLCで分析した。得られたHPLCチャートを
図3に示す。
図3のとおり、本発明方法により得られたRNA2量体の純度は高いものであった。
【0152】
実施例4 RNA21量体の製造
上記実施例3と同様の条件で、さらに上記(3)〜(5)のプロセスを繰り返し、可溶化高分子に担持された5’−rGCA UUU UUA UUU UUU UUU UUU−3’の配列のRNA21量体の保護体がポリエチレングリコールに固定化された化合物を合成した。
【0153】
上記担持21量体RNAをメタノール(125mL)に溶解し、Thermomyces lanuginosus由来のリパーゼ(5.0mL)を加え、室温で48時間振とうした。リパーゼを濾別し、反応液を凍結乾燥した後、昭光サイエンティフィック社製中圧クロマト装置PrifCompact上で、YMC ODSpack 25μm 200カラムを用いて、オートクレーブおよび脱気した20mM酢酸アンモニウム−アセトニトリルを溶出溶媒として精製し、目的のRNA21量体を得た(OD
260:22500,通算収率:23%)。
【0154】
得られたRNA21量体を、下記の溶出液を用いた以外は上記実施例1(3−2)と同様の条件のHPLCで分析した。
【0155】
溶出液:0.1M TEAA buffer(pH7.0)/CH
3CN aq(CH
3CN aqの割合を、30分間かけて40%から60%とした)
得られたHPLCチャートを
図4に示す。
【0156】
得られたRNAの純度は、HPLCチャートより99%以上であることを確認した。
【0157】
以上のとおり、本発明方法によれば、固定化RNAに対してRNA合成用モノマーをほぼ化学量論量で用いた場合であっても、21量体を通算収率23%という液相法としては十分な高収率で製造することができた。
【0158】
また、最後の脱保護反応において、有機溶媒であるメタノール中、リパーゼを用いることができた。よって、最終段階におけるRNA分解酵素によるRNA鎖の切断などの副反応を回避できるといえる。