特許第5758558号(P5758558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5758558
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】有機溶剤精製器およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/36 20060101AFI20150716BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20150716BHJP
   B01D 61/16 20060101ALI20150716BHJP
   B01D 15/04 20060101ALI20150716BHJP
   C08J 5/22 20060101ALI20150716BHJP
   B01D 63/14 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   B01D71/36
   B01D61/14 500
   B01D61/16
   B01D15/04
   C08J5/22
   B01D63/14
   C08J5/22 101
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-510275(P2015-510275)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公表番号】特表2015-521101(P2015-521101A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】US2013031877
(87)【国際公開番号】WO2013165602
(87)【国際公開日】20131107
【審査請求日】2014年12月18日
(31)【優先権主張番号】61/640,869
(32)【優先日】2012年5月1日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,サクサタ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ワイ・ミン
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−204472(JP,A)
【文献】 特表2003−535836(JP,A)
【文献】 特表2003−519561(JP,A)
【文献】 特開2004−330056(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/053826(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B01D53/22,B01D61/00−71/82
C02F1/44
DB Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤からクロムを除去するための精製器であって、
流体入口、および前記流体入口と流体連通している流体出口を有するハウジング;
前記ハウジング内において前記流体入口の下流に配置された、ある量のイオン交換樹脂;ならびに
前記ある量のイオン交換樹脂の下流に配置された濾過部材であって、
性面を有しかつアミドで改質された少なくとも1つの微多孔性ポリテトラフルオロエチレン;および
アミドで改質された前記少なくとも1つの微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜の下流における微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換
を含む濾過部材
を含み、
アミドで改質された前記少なくとも1つの微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜の、イソプロパノール泡立ち点もしくはハイドロフルオロエーテル泡立ち点による細孔径定格は、前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜の細孔径定格よりも大きく、および10μm以下であり、かつ
前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜のイソプロパノール泡立ち点もしくはハイドロフルオロエーテル泡立ち点による細孔径定格が1ナノメートル〜100ナノメートルである
ことを特徴とする、精製器。
【請求項2】
有機溶剤からクロムを除去するための精製器であって、
縦軸、流体入口、および前記流体入口と流体連通している流体出口を有するシリンダー状ハウジング;
前記シリンダー状ハウジング内において前記流体入口の下流に配置された、ある量のイオン交換樹脂であって、前記有機溶剤からクロム種を除去するように適合されている、イオン交換樹脂;および
前記シリンダー状ハウジング内において前記縦軸の周りに同心状に、および前記ある量のイオン交換樹脂の下流に配置されたひだ状濾過部材であって、
性面を有しかつアミドで改質された少なくとも1つの微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜;および
アミドで改質された前記少なくとも1つの微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜の下流における微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換
を含むひだ状濾過部材
を含み、
アミドで改質された前記少なくとも1つの微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜の、イソプロパノール泡立ち点もしくはハイドロフルオロエーテル泡立ち点による細孔径定格が、前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜の細孔径定格よりも大きく、および10μm以下であり、かつ
前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜のイソプロパノール泡立ち点もしくはハイドロフルオロエーテル泡立ち点による細孔径定格が1ナノメートル〜100ナノメートルである、精製器。
【請求項3】
前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜の表面がスルホン酸で改質されている、請求項1または2に記載の精製器。
【請求項4】
前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜の細孔径定格が1ナノメートル〜50ナノメートルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の精製器。
【請求項5】
前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜の細孔径定格が1ナノメートル〜25ナノメートルである、請求項4に記載の精製器。
【請求項6】
アミドで改質された前記少なくとも1つの微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜および前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜が、前記濾過部材において互いに結合されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の精製器。
【請求項7】
アミドで改質された前記少なくとも1つの微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜および前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜が、前記濾過部材において互いに隣接して配置される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の精製器。
【請求項8】
アミドで改質された前記少なくとも1つの微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜および前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜がそれぞれひだ状である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の精製器。
【請求項9】
前記ある量のイオン交換樹脂を入れられるイオン交換樹脂容器をさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の精製器。
【請求項10】
前記イオン交換樹脂容器が網材またはフリットを含む、請求項9に記載の精製器。
【請求項11】
前記ある量のイオン交換樹脂の下流および前記濾過部材の上流に液体分配器をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の精製器。
【請求項12】
前記有機溶剤がアルコールである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の精製器。
【請求項13】
前記アルコールがイソプロパノールである、請求項12に記載の精製器。
【請求項14】
前記濾過部材が、アミドで改質された微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜を少なくとも3つ含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の精製器。
【請求項15】
有機溶剤からクロムを除去するための精製器であって、
縦軸、流体入口、および前記流体入口と流体連通している流体出口を有するシリンダー状ハウジング;
前記シリンダー状ハウジング内において前記流体入口の下流に配置された、ある量のイオン交換樹脂であって、前記有機溶剤からクロム種を除去するように適合されているイオン交換樹脂;ならびに
前記シリンダー状ハウジング内において前記縦軸の周りに同心状に、および前記ある量のイオン交換樹脂の下流に配置されたひだ状濾過部材であって、
性面をそれぞれ有する少なくとも3つの微多孔性膜;および
前記少なくとも3つの微多孔性膜の下流に微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜
を含むひだ状濾過部材
を含み、
各微多孔性膜が、アミドで改質された微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜であり、かつ前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜のイソプロパノール泡立ち点もしくはハイドロフルオロエーテル泡立ち点による細孔径定格よりも大きく、10μm以下である細孔径定格を有し;および前記微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜が、スルホン酸で改質された表面を有し、および1ナノメートル〜25ナノメートルのイソプロパノール泡立ち点もしくはハイドロフルオロエーテル泡立ち点による細孔径定格を有する、精製器。
【請求項16】
有機溶剤からクロムを除去するための方法であって、前記有機溶剤の流れを、請求項1〜15のいずれか一項に記載の精製器に通過させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年5月1日出願の米国仮特許出願第61/640,869号明細書の利益を主張する。上記出願の教示全体を、参照することにより本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
今日のウェットステーションおよびスプレー処理装置は、ウエハからフォトレジストを除去するためにいくつかの工程を必要とする。標準的なウェットベンチ構成は、1組のイソプロピルアルコール(IPA)リンス工程を含むが、IPA乾燥工程と呼ばれることが多い最終的なリンス工程は、重要な工程である。バッチ適用では、最終的なリンスは、IPA液の上方にある蒸気からウエハ表面上に凝結する清浄な蒸留IPAの薄膜によってもたらされる。単一のウエハ適用では、IPAは、液体としてウエハ上に直接スプレーされ得る。この薄層のIPA溶剤は、ウエハを、最終的な乾燥に対応できるように準備する。
【0003】
幾何学的にウエハがますます小さくなるにつれ、IPA乾燥工程はさらにより重要となる。特に金属汚染が極めて重要でありかつ許されないゲートレベルでの適用においては、ピッチ(線間隔)が極小のウエハに対する損傷を減少させるために、限界設計はIPAリンスのみの方へ進んでいる。それゆえ、IPAの純度はさらに大きな役割を担い、およびIPAからウエハへ移される不純物がないようにすることは、極めて重要なものとなる。
【0004】
IPAで清浄された標準的な表面改質微多孔性膜を使用する低容量バージョンのIPA精製器は、低温および高温での適用で知られているが、イオン交換容量が非常に低い。深刻な金属スパイクが発生した場合、このフィルタは、適正能力に問題を有し得る。
【0005】
半導体製造業者は非常に清浄なIPAを購入するが、その後それを、ステンレス鋼のラインを介して製造工場(fab)および用具を通して移動させる。このことは、IPAが、ステンレス鋼から鉄、ニッケルおよび他の微量金属を捕らえる原因となる可能性があり、これらは、除去されない限り、スプレーでの適用中にウエハに堆積する。これらの金属は微量レベルで存在するため、流体流中の汚染物の量を測定することは困難である;その代わりに、汚染物の量は、ゲートおよび収率の性能に既に悪影響を与えているとき、一般にTXRF走査によって、ウエハ上の金属汚染として決定される。
【0006】
いくつかの微多孔性フィルタは、イオン交換材料で改質されており、かつ脱イオン(DI)水から金属汚染物を除去するために使用されている。これらのフィルタは、任意の1種の金属を選択することなく、金属の高い除去性を示す。この技術は、時間が経つにつれてイオン交換(IEC)媒体の劣化に起因してスルホン酸官能性がある程度破壊され、かつ流され得るため、限界がある。この破壊は、ペレット媒体でも観察されたことがあり、不揮発性残留物(NVR)およびスルホン酸イオンを媒体の下流に流すことになる。その後、流された残留物がウエハに堆積し、半導体製造業者または最終使用者にとって問題となり得る。
【0007】
Bortnikへ2007年2月6日に発行された米国特許第7,172,694号明細書には、ターボ機械中で流体流の濾過に使用するように適合されたフィルタアセンブリが開示されている。フィルタアセンブリは、シリンダー状ハウジングと、ハウジング内に配置されたフィルタエレメントとを含む。ハウジングは、ターボ機械に流体接続するように適合されている。フィルタエレメントは、ターボ機械に移動する流体を濾過するように適合されている。フィルタエレメントは、フィルタエレメントを通る中心コアエレメント流路を画成する流体透過性コアエレメントと、コアエレメントの周りに配置されかつフィルタエレメントを通過する流体から鉱物および有機酸を除去するように適合された流体透過性イオン交換樹脂層と、イオン交換樹脂層およびコアエレメントの周りに配置されたひだ状濾材とを含む。別の実施形態では、フィルタエレメントは、コアエレメントの周りに配置されたひだ状濾材と、コアエレメントおよびひだ状濾材の周りに配置された流体透過性イオン交換樹脂層とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,172,694号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ウエハスプレー処理用具のためにより高い純度の溶剤を提供し、それにより、より良好な半導体素子の性能および加工収率をもたらす、ポイントオブユース型(point−of−use)アルコール精製器が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、有機溶剤、例えばイソプロパノールから金属、特にクロムを、1回の通過で除去するための、ポイントオブユース型精製器に関する。本発明の精製器は、ウエハスプレー処理用具のために、より高い純度のイソプロパノールを提供し、それにより、半導体素子の性能および処理の収率全体を高める。
【0011】
一実施形態では、精製器は、流体入口、および流体入口と流体連通している流体出口を有するハウジングを含む。ある量のイオン交換樹脂が、ハウジング内において流体入口の下流に配置されている。ある量のイオン交換樹脂の下流には濾過部材が配置され、および濾過部材は、実質的な中性面を有する少なくとも1つの微多孔性膜と、少なくとも1つの微多孔性膜の下流にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜とを含む。
【0012】
別の実施形態では、精製器は、縦軸、流体入口、および流体入口と流体連通している流体出口を有するシリンダー状ハウジングを含む。ある量のイオン交換樹脂が、シリンダー状ハウジング内において流体入口の下流に配置されている。イオン交換樹脂は、有機溶剤から金属種を除去するように適合されている。ひだ状濾過部材が、シリンダー状ハウジング内において縦軸の周りに同心状に、およびある量のイオン交換樹脂の下流に配置されている。ひだ状濾過部材は、実質的な中性面を有しかつ有機溶剤からクロムを除去するように適合された少なくとも1つの微多孔性膜と、少なくとも1つの微多孔性膜の下流に微多孔性PTFE膜とを含む。
【0013】
本発明の別の実施形態は、有機溶剤からクロムなどの金属を除去するための精製器である。精製器は、縦軸、流体入口、および流体入口と流体連通している流体出口を有するシリンダー状ハウジング;シリンダー状ハウジング内において流体入口の下流に配置された、ある量のイオン交換樹脂であって、有機溶剤から金属種を除去するように適合されているイオン交換樹脂;およびシリンダー状ハウジング内において縦軸の周りに同心状に、およびある量のイオン交換樹脂の下流に配置されたひだ状濾過部材を含む。ひだ状濾過部材は、実質的な中性面をそれぞれ有する少なくとも3つの微多孔性膜;および少なくとも3つの微多孔性膜の下流に微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜を含み、各微多孔性膜は、アミドで改質されており、かつ微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜の細孔径定格よりも大きい細孔径定格を有し;および微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜は、スルホン酸で改質された表面を有し、かつ約1ナノメートル〜約25ナノメートルの細孔径定格を有する。少なくとも3つの微多孔性膜は各々、微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜とし得る。
【0014】
本発明の精製器はまた、一般的に1回の通過で有機溶剤からクロムを除去できることに加え、他の微量金属を除去でき、かつ有機溶剤中の不揮発性残留物を減らし得る。それゆえ、本発明の別の実施形態は、有機溶剤から金属を除去する方法であり、この方法は、有機溶剤の流れを、本明細書で説明した精製器に通過させ、それにより、有機溶剤からクロムなどの金属を除去することを含む。
【0015】
実質的な中性面を有する少なくとも1つの微多孔性膜の下流に微多孔性PTFE膜を含む濾過部材の利点は、少なくとも1つの微多孔性膜によって流され得るまたはそれを通過し得る粒子およびイオンを全て捕捉することであり、および1回の通過で、1.5ppbのクロムを含有するIPA溶液から、クロムの約85%超を除去するために使用できる本明細書の実施例2で説明する精製器によって、実証される(本明細書の実施例2参照)。
【0016】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以下の説明および添付の図面を併せて考慮すると、よりよく認識および理解される。以下の説明は、本発明の様々な実施形態およびその具体的な詳細を多数示すが、限定のためではなく、説明のために与えられる。多くの代替形態、修正形態、追加形態または再配置形態が本発明の範囲内でなされ、本発明は、全てのそのような代替形態、修正形態、追加形態または再配置形態を含む。
【0017】
添付のおよび本明細書の一部をなす図面は、本発明のいくつかの態様を示すために含まれる。本発明、および本発明が提供される構成要素およびシステムの動作のより明確な印象は、図面に示す例示的な、それゆえ非限定的な実施形態を参照することにより、より明らかとなり、図面では、同一の参照符号は同じ構成要素を示す。図面に示す特徴は、必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】IPA乾燥処理のIPAフィルタの例示的な構成を示す。
図2】流体の流路を示す例示的なIPA精製器の断面図である。
図3】例示的なIPA精製器の断面図である。
図4】流量に応じたクロムの除去効率のグラフであり、およびスルホン酸で被覆されたPRS−45膜(Tomoegawa Inc.から入手可能)、およびアミドで被覆された4つの0.2μmPTFE膜の、IPAからのクロムの除去効率を示す。
図5】流量に応じたクロムの除去効率のグラフであり、および本明細書の実施例2で説明する本発明の例示的なIPA精製器の、IPAからのクロムの除去効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
様々な組成および方法を説明するが、本発明は、分子、組成、設計、方法論またはプロトコールが変わることがあるため、説明した特定の分子、組成、設計、方法論またはプロトコールに限定されないことを理解されたい。説明で使用された用語法は、特定のバージョンまたは実施形態を説明するためのものにすぎず、および本発明の範囲を限定するものではなく、これは、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。
【0020】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明白に他の意味を示す場合を除いて、複数形への言及を含むことも留意されたい。それゆえ、例えば、「ペレット」への言及は、1つ以上のペレット、および当業者に公知のその均等物への言及であるなどである。
【0021】
他の意味を定義する場合を除いて、本明細書において、技術用語および科学用語は全て、当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で説明したものと同様または均等の方法および材料を、本発明の実施形態の実施または試験において使用することができる。本明細書で述べた全出版物は、それら全体が、参照することにより援用される。本明細書では、本発明は、先行発明であるゆえにそのような開示に先行する権利を有しないと承認するとは、全く解釈されない。「任意選択的な」または「任意選択的に」は、それに続いて説明する事象または環境が発生しても発生しなくてもよいこと、および説明が、事象が発生する例および事象が発生しない例を含むことを意味する。本明細書では、全ての数値は、明白に示すかどうかに関わらず、用語「約」によって修飾され得る。用語「約」は、一般的に、当業者が、列挙した値に等価であると考える(すなわち、同じ機能または結果を有する)数値の範囲を指す。一部の実施形態では、用語「約」は、表示の値の±10%を指す;他の実施形態では、用語「約」は、表示の値の±2%を指す。様々な構成成分またはステップ「を含む(comprising)」(「を含む(including)が、それらに限定されない」ことを意味すると解釈される)ことに関して組成および方法を説明する場合、組成および方法はまた、様々な構成要素およびステップ「から実質的になる」または「からなる」ことができ;そのようなは、用語法は、実質的に閉じたまたは閉じた部材群を定義すると解釈される必要がある。
【0022】
本発明の一実施形態は、有機溶剤からクロムなどの金属を除去するための精製器であって、流体入口、および流体入口と流体連通する流体出口を有するハウジング;ハウジング内において流体入口の下流に配置された、ある量のイオン交換樹脂;および、ある量のイオン交換樹脂の下流にあり、かつ実質的な中性面を有する少なくとも1つの微多孔性膜を含む濾過部材を含む精製器である。本発明の一部の実施形態では、濾過部材は、さらに、少なくとも1つの微多孔性膜の下流に微多孔性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を含む。
【0023】
本発明の精製器は、ポイントオブユース(POU)適用では処理用具内に設置され得る。IPA乾燥工程に関する一般的な設定は、処理用具に、または処理用具にIPAを供給する流体供給経路に、精製器を設置することを含む。例えば、図1に示すように、本発明の精製器は、IPA槽の出口において、および/またはポイントオブユースに際してはノズルまたはスプレー先端部(図1には図示せず)の少し手前に、設置できる。本発明の精製器は、精製器に1回通すだけで、溶剤流から、金属、具体的にはクロムの汚染物を除去できるため、ポイントオブユース適用に特に有用である。
【0024】
本発明の精製器を使用して、有機溶剤、または有機溶剤の混合物からクロムなどの金属を除去できる。有機溶剤は、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチルラクテート、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノールおよびそれらの混合物)、極性非プロトン性溶剤(例えば、アセトニトリル、アセトン、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびそれらの混合物)、芳香族溶剤(例えば、ベンゼン、ポリアリールエーテル、およびそれらの混合物)および非極性溶剤(例えば、ヘキサメチルジシラザン)を含む。本発明の精製器を使用して、無水有機溶剤、または数重量パーセントの水(例えば、約1重量パーセント以下、約0.25重量パーセント以下、約0.1重量パーセント以下)を含有する有機溶剤を精製できる。本発明の一部の実施形態では、有機溶剤はアルコールである。具体的には、アルコールはイソプロパノールである。
【0025】
有機溶剤は、ステンレス鋼のラインを介して、製造工場および用具を通して移動される。この移動プロセスによって、有機溶剤に微量のクロム不純物(例えば、クロム塩、クロム錯体、クロム粒子)を生じ得る。それゆえ、一部の実施形態では、精製器のハウジングはプラスチックである。
【0026】
本発明の精製器は、イソプロパノールなどの有機溶剤からの、クロム塩およびクロム錯体を含むクロムの除去に有用である。本発明の実施形態の精製器はまた、限定されるものではないが、ナトリウム、鉄、アルミニウム、ニッケル、およびこれらの組み合わせを含むイオンおよび錯体など、他の金属イオンおよび錯体を除去できる。
【0027】
本発明の精製器のイオン交換樹脂は、粒子で構成される。粒子は、押し出すことができる熱可塑性粒子とすることができ、これは、イオン交換粒子の熱可塑性によって任意選択的に熱可塑性粒子を網または他の支持体に結合できるようにするため、好都合である。一部の実施形態では、イオン交換粒子の支持体への任意選択的な結合は、ハウジングに粒子をより均一に充填できるようにし、かつ精製中の流体のチャネリングすなわち流路形成をなくし得る。イオン交換樹脂はNAFION(登録商標)とし得る。
【0028】
イオン交換粒子は、非多孔質性とすることができ、かつ下流の濾過部材を通る流れを塞がないまたは減らさないようなサイズにする必要がある。さらに、イオン交換粒子は、少なくとも1つの微多孔性膜の下流の微多孔性PTFE膜を通過しないようなサイズにする必要がある。ペレット、ビード、これらの組み合わせなどの形態とし得る粒子のサイズは、約2ミリメートル未満とし得る。しかしながら、濾過部材の膜の細孔径に依存して、2mm〜0.1mm、または0.5ミリメートル〜0.1ミリメートルの範囲の粒子も使用できる。イオン交換粒子は粉砕され得る。粒子が小さいほど、表面積および表面容量は大きくなる。本発明のバージョンにおけるイオン交換樹脂の粒子のシェディング(shedding)は、0.05ミクロンで15粒子/mL未満である。本発明の一部の実施形態では、イオン交換樹脂は、およそ15メッシュ〜およそ40メッシュ、およそ15メッシュ〜およそ30メッシュ、またはおよそ15メッシュ〜およそ20メッシュである。これらのサイズ範囲の粒子を有するイオン交換樹脂は、有利には、ある量のイオン交換樹脂を通る流体のチャネリングを減らすまたはなくす。
【0029】
本発明の一部の実施形態では、精製器は、さらに、ある量のイオン交換樹脂が入っているイオン交換樹脂容器を含む。具体的には、イオン交換樹脂容器は、網材(例えば、網メッシュ)またはフリット(例えば、多孔性のフリット)を含み得る。この実施形態では、粒子は、網材やフリットによって保持されるのに十分な大きさである必要があり、または網材やフリットの細孔は、粒子を保持するのに十分な小ささである必要がある。網材またはフリット、ならびにある量のイオン交換樹脂は、流体透過性である必要がある。
【0030】
濾過部材は、ある量のイオン交換樹脂の下流に配置され、かつ実質的な中性面を有する少なくとも1つの微多孔性膜と、少なくとも1つの微多孔性膜の下流に微多孔性PTFE膜とを含む。一部の実施形態では、濾過部材はハウジング内に配置される。一部の実施形態では、濾過部材は、ハウジング内において流体出口の上流に配置される。
【0031】
一部の実施形態では、濾過部材は、実質的な中性面を有する2つ以上の微多孔性膜を含む。濾過部材は、実質的な中性面を有する、2つ、少なくとも2つ、3つ、少なくとも3つ、4つ、少なくとも4つ、または5つの微多孔性膜を含み得る。
【0032】
濾過部材内での微多孔性膜の配置は様々とし得る。例えば、一部の実施形態では、実質的な中性面を有する少なくとも1つの微多孔性膜と、微多孔性PTFE膜とは、互いに隣接して配置される。
【0033】
各微多孔性膜は、独立して、ひだ状平膜、中空繊維、または平膜とし得る。本発明の一部の実施形態では、実質的な中性面を有する少なくとも1つの微多孔性複合膜、および微多孔性PTFE膜は、それぞれ、ひだ状平膜である。
【0034】
微多孔性膜は、さらに、互いに結合され得る。それゆえ、本発明の一部の実施形態では、実質的な中性面を有する少なくとも1つの微多孔性膜と、微多孔性PTFE膜とは、互いに結合される。より具体的には、実質的な中性面を有する少なくとも1つの微多孔性膜、および微多孔性PTFE膜の各々は、実質的な中性面を有する少なくとも1つの微多孔性膜、および/または微多孔性PTFE膜の少なくとも1つに結合される。
【0035】
微多孔性膜または濾過部材の細孔径は、IPA泡立ち点またはハイドロフルオロエーテル(HFE)泡立ち点によって特徴付けることができる。本発明のいくつかのバージョンでは、微多孔性膜または濾過部材は、約70ポンド/平方インチ(psi)を超えるIPA泡立ち点を有し得る。本発明のいくつかのバージョンでは、微多孔性膜または濾過部材は、70psi以上、または100psi以上のHFE泡立ち点によって特徴付けられた細孔径を有し得る。微多孔性膜または濾過部材はまた、25ナノメートルの粒子を除去する能力によって特徴付けることができ、かつ15ナノメートルの膜または10ナノメートルの膜と呼ばれ得る。泡立ち点は、エアフローポリソメータ(air flow porisometer)を使用する平均IPA泡立ち点を指す。場合によっては、微多孔性膜の泡立ち点は、HFE−7200(3M(商標)(ミネソタ州セントポール)から入手可能)で測定された平均泡立ち点を指す。HFE−7200の泡立ち点は、HFE−7200で測定された泡立ち点に1.5、または約1.5を乗じることによって、IPA泡立ち点値に変換できる。3M(商標)のHFE−7200は、エトキシ−ノナフルオロブタンであり、かつ25℃において13.6mN/mの表面張力を有すると報告されている。
【0036】
説明および特許請求の範囲のために、用語「微多孔性膜」は、超多孔性膜、ナノ多孔性膜、および微多孔性膜などの用語によっても説明され得る多孔性膜を含むために使用される。これらの微多孔性膜は、限定されるものではないが、ゲル、粒子、コロイド、セル、およびポリ−オリゴマーなどの供給流の構成成分(保持液(retentate))を保持する一方、実質的に細孔よりも小さい構成要素は、細孔を通過して透過蒸気となる。微多孔性膜によって供給流中の構成要素を保持することは、動作条件、例えば面速度および界面活性剤の使用、pHおよびこれらの組み合わせに依存し得、微多孔性膜の細孔のサイズ、構造および分布に対する粒子のサイズおよび構造(硬質粒子またはゲル)に依存し得る。
【0037】
本発明の一部の実施形態では、微多孔性PTFE膜は、フォビック微多孔性膜(phobic microporous membrane)、例えば、Q−1500およびQ−3000を含むQC(QUICK CHANGE(登録商標)、Entegris Inc.)などの微多孔性PTFEイオン交換膜である。微多孔性PTFEイオン交換膜およびその作製方法は、Moyaへの米国特許第6,179,132号明細書、および国際公開第2010/117845号パンフレットに開示されており、これらの教示全体を、参照することにより本明細書に援用する。本発明の一部の実施形態では、微多孔性PTFE膜の泡立ち点による細孔径定格は、約1ナノメートル〜約100ナノメートル、約1ナノメートル〜約50ナノメートル、または約1ナノメートル〜約25ナノメートルである。一部の実施形態では、微多孔性PTFEイオン交換膜の表面は、スルホン酸で改質される。スルホン酸改質膜およびその作製方法は、例えば、国際公開第2010/117845号パンフレットに開示されており、これらの教示全体を、参照することにより本明細書に援用する。
【0038】
一部の実施形態では、微多孔性PTFEイオン交換膜は、約1〜約7のpHにおいて、イオン交換容量(IEC)が約60ナノモル/平方センチメートル〜約80ナノモル/平方センチメートルであり、および/またはゼータ電位が約−20ミリボルト〜約−30ミリボルトである。
【0039】
実質的な中性面を有する微多孔性膜およびその作製方法は、Steuckへの米国特許第4,618,533号明細書、および国際公開第01/51170号パンフレットに開示されており、それらの内容全体を、参照することにより本明細書に援用する。本発明の一部の実施形態では、実質的な中性面を有する微多孔性膜は、有機溶剤(例えば、IPA)からクロム(例えば、クロム塩、クロム錯体)を除去するように適合されている。本発明の一部の実施形態では、実質的な中性面を有する微多孔性膜は、実質的な中性面、例えば、アミド基またはアミド基を含むポリマーで改質された表面を有する微多孔性PTFE膜である。アミドで改質された膜およびその作製方法は、例えば、国際公開第01/51170号パンフレットに開示されており、それらの内容全体を、参照することにより本明細書に援用する。本発明の一部の実施形態では、アミド基で改質された膜の表面はまた、有利には、有機溶剤中の不揮発性残留物の量を減らす。
【0040】
実質的な中性面、または弱く帯電された表面は、0mVのまたはそれ付近の静電位を有する表面である。静電位はゼータ電位に比例する。実質的な中性面は、膜材料を適切に選択することによって、または膜の表面改質によって、形成できる。実質的な中性面、または弱く帯電された表面は、有利には、非ふるい分け(non−sieving)保持機構によって、粒子、例えば、クロム粒子を保持できる。意外にも、実質的な中性面を有する微多孔性膜を使用して、イソプロパノールからクロムを除去できる。
【0041】
非ふるい分け保持機構は、遮断、拡散および吸着などの保持機構を含み、フィルタまたは微多孔性膜の圧力低下または泡立ち点に関係なく、流体流から粒子を除去する。膜表面への粒子の吸着は、例えば、分子間のファン・デルワールス力および静電力を介して行われ得る。遮断は、蛇行性の膜を通って移動する粒子が、膜と接触しないような十分な速さで方向を変更することができないときに、発生する。拡散に起因する粒子輸送は、主に小さい粒子のランダム運動またはブラウン運動に由来し、粒子が濾材に衝突する若干の可能性を生じる。非ふるい分け保持機構は、粒子とフィルタまたは膜との間に反発力がないとき、アクティブとし得る。
【0042】
一般に、実質的な中性面を有する微多孔性膜の細孔径定格は、微多孔性PTFE膜の細孔径定格よりも大きい。実質的な中性面を有する微多孔性膜の粒径定格は、約10μm以下、約5μm以下、約1μm以下、または約0.5μm以下とし得る。一部の実施形態では、実質的な中性面を有する微多孔性膜の粒径定格は、約0.2μm以下、または約0.1μm以下とし得る。
【0043】
精製器は、さらに、ある量のイオン交換樹脂の下流および濾過部材の上流に、液体分配器を含み得る。一般に、液体分配器、イオン交換樹脂および濾過部材は、それぞれ、精製器のハウジング内に配置され得る。一部の実施形態では、液体分配器は、イオン交換樹脂からの流体の流れを収集し、かつシリンダー状ハウジングの周辺へ外側に向けて分配する。図2および図3に示すように、例示的な液体分配器11は、イオン交換樹脂9からの流体の流れを収集し、およびシリンダー状本体部分2の周辺へ外側に向けて分配する。
【0044】
図2および図3は、本発明の例示的な精製器を示す。図2および図3に示す精製器は、ハウジング1を含む。ハウジング1は、シリンダー状本体部分2、第1のハウジングエンドキャップ3、および第2のハウジングエンドキャップ4を含む。図2および図3に示す精製器では、シリンダー状本体部分2は、第1および第2のハウジングエンドキャップ3および4に結合される。図2および図3に示すハウジングエンドキャップ3および4は、処理流体または液体入口5、ドレーン6、精製済み処理流体または液体出口7およびガス通気孔8を含む。図2に示す流れの矢印で示すように、入口5と出口6は流体連通している。
【0045】
ある量のイオン交換樹脂9は、図2および図3の精製器のハウジング1のイオン交換樹脂容器10に入れられている。イオン交換樹脂容器10は底部10aを含み、その底部は、図2および図3に示す精製器では、第1のハウジングエンドキャップ3に結合されている。イオン交換樹脂容器10は上部10bも含み、この上部は、図2および図3に示す精製器では、任意選択的な液体分配器11に結合されている。イオン交換樹脂容器10はまた、シリンダー状本体部分10cを含む。イオン交換樹脂9は、入口5の下流および任意選択的な液体分配器11の上流にある。本発明の一部の実施形態では、上部10bおよび底部10aは、それぞれ、イオン交換樹脂容器10にイオン交換樹脂9を保持するためのフリットを含む。本発明の他の実施形態では、イオン交換樹脂9は、網袋によってイオン交換樹脂容器10に保持され得る。
【0046】
図2および図3に示す精製器では、フィルタカートリッジ12は、任意選択的な液体分配器11の下流にある。フィルタカートリッジ12は第1のフィルタカートリッジエンドキャップ13を含み、図2および図3に示す精製器では、第1のフィルタカートリッジエンドキャップは、第2のハウジングエンドキャップ4に結合されている。フィルタカートリッジ12は第2のフィルタカートリッジエンドキャップ14を含み、図2および図3に示す精製器では、第2のフィルタカートリッジエンドキャップは、任意選択的な液体分配器11に結合されている。図2および図3に示す精製器では、フィルタカートリッジ12は、第1のフィルタ膜15と、第1のフィルタ膜15の下流の第2のフィルタ膜16とを収容している。
【0047】
動作時、図2および図3に示す精製器は、処理用具、スプレー処理装置に供給する流体供給経路に挿入できる。入口5は、槽(図示せず)などの流体供給装置に接続でき、および出口6は、パイプなどの構成要素に接続でき、パイプは、用具内の処理室に流体を供給する。流体は、入口5を通って精製器に入り、イオン交換樹脂容器10に入っているイオン交換樹脂9を通って流れ、かつ任意選択的な液体分配器11に入る。図2および図3に示す精製器では、任意選択的な液体分配器11は、イオン交換樹脂9からの流体の流れを収集し、かつシリンダー状ハウジング1の周辺へ外側に向けて分配する。その後、流体は、フィルタカートリッジ12に入って、第1のフィルタ膜15を通過してから第2のフィルタ膜16を通過し、出口7を経由して精製器から流出する。
【0048】
図面では、同様の要素を同様の参照符号で示す。図2および図3は、本発明の例示的な精製器の具体的な構成を示すが、精製器の他の構成要素が可能である。例えば、任意選択的な液体分配器11は、流体の流れを、ハウジング1の縦軸に沿って中心に方向付けて、図2に示すものとは逆の順番で(すなわち、第2のフィルタ膜16の後、第1のフィルタ膜15)、流体がフィルタを横切るようにし得る。他の可能な修正形態が当業者に公知である。
【0049】
本発明の別の実施形態は、有機溶剤からクロムなどの金属を除去するための精製器であって、縦軸、流体入口、および流体入口と流体連通する流体出口を含むシリンダー状ハウジングを含む精製器である。ある量のイオン交換樹脂がシリンダー状ハウジング内において流体入口の下流に配置され、かつイオン交換樹脂は、有機溶剤から金属種を除去するように適合されている。ひだ状濾過部材は、シリンダー状ハウジング内において縦軸の周りに同心状に、およびある量のイオン交換樹脂の下流に配置される。ひだ状濾過部材は、実質的な中性面を含みかつ有機溶剤からクロムを除去するように適合された少なくとも1つの微多孔性膜と、少なくとも1つの微多孔性膜の下流に微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜とを含む。
【0050】
有機溶剤からクロムなどの金属を除去するための精製器のさらに別の実施形態は、縦軸、流体入口、および流体入口と流体連通している流体出口を有するシリンダー状ハウジング;シリンダー状ハウジング内において流体入口の下流に配置された、ある量のイオン交換樹脂であって、有機溶剤から金属種を除去するように適合されているイオン交換樹脂;およびシリンダー状ハウジング内において縦軸の周りに同心状に、およびある量のイオン交換樹脂の下流に配置されたひだ状濾過部材を含む。ひだ状濾過部材は、実質的な中性面をそれぞれ有する少なくとも3つの微多孔性膜;および少なくとも3つの微多孔性膜の下流に微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜を含み、各微多孔性膜は、アミドによって改質され、かつ微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜の細孔径定格よりも大きい細孔径定格を有し;および微多孔性ポリテトラフルオロエチレンイオン交換膜は、スルホン酸によって改質された表面を有し、かつ約1ナノメートル〜約25ナノメートルの細孔径定格を有する。少なくとも3つの微多孔性膜の各々は、微多孔性ポリテトラフルオロエチレン膜とし得る。
【0051】
本発明はまた、本発明の精製器を使用する方法を含む。それゆえ、本発明の一実施形態は、本発明の精製器を使用して有機溶剤からクロムなどの金属を除去するための方法である。この方法は、有機溶剤の流れを本発明の精製器に通過させ、それにより有機溶剤から金属を除去することを含む。具体的には、この方法は、有機溶剤の流れを、本発明の精製器に一度通過させて、有機溶剤から、クロムを含む金属を除去することを含む。
【0052】
一部の実施形態では、精製器は、有機溶剤からクロムを除去し、かつクロムの除去率は、実施例2の試験条件下で確かめられるように、約20mL/分の流量で約70%超、または約75%超である。具体的には、クロムの除去率は、実施例2の試験条件下で確かめられるように、約10mL/分の流量で約80%超または約85%超である。
【0053】
本発明の一部の実施形態では、精製器の圧力低下は、約0.1kgf/cm(重量キログラム/センチメートル)〜約0.3kgf/cmである。
【実施例】
【0054】
実施例1.イオン交換膜および実質的な中性膜の、イソプロパノールからのクロム除去能力の評価
スルホン酸官能基で被覆され、かつ約1〜約7のpHにおいて約60ナノモル/平方センチメートル〜約80ナノモル/平方センチメートルのIECおよび約−20ミリボルト〜約−30ミリボルトのゼータ電位を有する微多孔性PTFEイオン交換膜(スルホン酸改質PRS−45、細孔径が約20ミクロンの不織PTFE膜)(Tomoegawa Inc.から入手可能)と、アミド官能基で被覆された4つの0.2−μmのPTFE膜(GUARDIAN(登録商標)DEV、Entegris,Inc.から入手可能)を含むクーポンとを、(硝酸中に硝酸クロムが含まれた原液からの)15ppbのクロムを有するイソプロパノール溶液によって、様々な流量で試験した。各膜の直径は47mmであった。試験は各流量でおよそ20分続けられた。その後、誘導結合プラズマ質量分析(ICPMS)によって透過流中のクロム濃度を測定して、クロムの除去効率を計算した。
【0055】
図4は、スルホン酸官能基で被覆されたスルホン酸改質PRS−45膜、およびアミドで被覆された4つの0.20−μmPTFE膜のIPAからのクロムの除去効率の、流量に応じたグラフである。図4は、GUARDIAN(登録商標)DEV膜が、試験溶液(challenge solution)からのクロムの除去率において、約8mL/分の流量でクロム除去率が約75%超であり非常に効率的であった一方、スルホン酸改質PRS−45膜は、イソプロパノールからのクロムの除去率において、試験した全流量でクロム除去率が5%未満であり、効果がなかったことを示す。
【0056】
実施例2.本発明の例示的な精製器を使用する、IPAからのクロムの除去
例示的な精製器は、1.5ppbのクロムを含有するIPA溶液からクロムを除去するように構成され、かつその能力を評価した。16メッシュに粉砕された8gのイオン交換樹脂のペレットを、直径47mmのシリンダー状ハウジングに入れた。同様にハウジング内においてイオン交換樹脂の下流に配置された濾過部材は、アミド官能基で被覆された3つの0.2−μmPTFE膜(GUARDIAN(登録商標)DEV、Entegris,Inc.から入手可能)と、GUARDIAN(登録商標)DEV膜の下流に、スルホン酸官能基で被覆された15−nmの微多孔性PTFEイオン交換膜(TORRENTO(商標)、Entegris,Inc.から入手可能)とを含んだ。
【0057】
精製器を、(硝酸中に硝酸クロムが含まれた原液からの)1.5ppbのクロムを有するイソプロパノール溶液によって、様々な流量で試験した。試験は、各流量でおよそ20分続いた。その後、ICPMSによって透過流中のクロム濃度を測定して、除去効率を計算した。図5は、精製器の、IPAからのクロムの除去効率を、流量に応じて示すグラフである。図5は、精製器に一度通すだけで、90%近くのクロム含有量がイソプロパノールから除去されたことを示す。
【0058】
1つ以上の実装形態に関して本発明を示しかつ説明したが、当業者は、本明細書および付属図面を読みかつ理解することに基づいて、均等の代替形態および修正形態を考慮する。本発明は、そのような全ての修正形態および代替形態を含み、および以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、本発明の特定の特徴または態様をいくつかの実装形態のうちの1つのみに関して開示し得るが、そのような特徴または態様は、任意の所与のまたは特定の適用に所望とし得るおよび好都合とし得るように、他の実装形態の1つ以上の他の特徴または態様と組み合わせてもよい。さらに、用語「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「と共に(with)」またはそれらの変形例が、詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかで使用されるという点において、そのような用語は、用語「含む(comprising)」と同様に包括的なものとする。また、用語「例示的な」は、最良ではなく、例を意味することを単に意味する。本明細書で説明する特徴、層および/または要素は、単純にかつ容易に理解するために、互いに対して特定の寸法および/または向きで示すこと、および実際の寸法および/または向きは、本明細書で説明したものとは実質的に異なってもよいことも理解されたい。本発明は、特定の実施形態に関してかなり詳細に説明したが、他の変更形態が可能である。それゆえ、添付の特許請求の範囲および趣旨は説明に限定されず、変更形態は本明細書内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5