【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、
NH3冷媒を用いて、50〜100℃の高温水を製造するために、高圧側ヒートポンプ装置と低圧側ヒートポンプ装置とを組み合わせ、
前記
前者の高圧側ヒートポンプ装置はNH3冷媒を用い、該NH
3冷媒が循環する第1の冷媒循環路に、複数の気筒のピストンを駆動する駆動モータと、該駆動モータによって駆動される潤滑油ポンプとを備えた
多気筒型往復動圧縮機と、第1の凝縮器と、第1の膨張弁と、第1の蒸発器とが設けられて構成され、
一方前記低圧側ヒートポンプ装置は他の冷媒が循環する第2の冷媒循環路に、圧縮機と、第2の凝縮器と、レシーバと、第2の膨張弁と、サージドラムとが設けられて構成され、
前記
高圧側ヒートポンプ装置側の前記第1の蒸発器は、前記
低圧側ヒートポンプ装置の高圧側冷媒経路に組み込
んで、低圧側ヒートポンプ装置の他の冷媒の保有熱を熱源とするカスケードコンデンサとして構成して、
該カスケードコンデンサで他の冷媒ガスと熱交換し気化したNH
3冷媒ガスは、前記
高圧側ヒートポンプ装置の多気筒型往復動圧縮機に送られ、ここで圧縮された後、前記第1の凝縮器で凝縮されるとともに該第1の凝縮器には、高温水の循環路が接続され、高温水が供給先から前記第1の凝縮器に連続的に循環
されているとともに、前記往復動圧縮機の冷媒吸入路に加熱機構を設け、該冷媒吸入路に流入するNH
3冷媒を飽和温度以上に保持するようにして
運転制御し、
該運転制御を、前記多気筒型往復動圧縮機の許容最大負荷から潤滑油ポンプの流量が該往復動圧縮機の潤滑状態を保持し得る潤滑下限負荷までの間の負荷運転は、該多気筒型往復動圧縮機を全気筒運転しながら該多気筒型往復動圧縮機を駆動する駆動モータの回転数制御で行い、一方前記潤滑下限負荷以下では、前記駆動モータの回転数制御と前記多気筒型往復動圧縮機の気筒数制御とを組み合わせて行なうことを特徴とする。
【0010】
又本発
明では、圧縮機として、比較的低コストでかつ容量制御が容易な往復動圧縮機を用いている。そして、
前記往復動圧縮機は、許容最大負荷から潤滑油ポンプの流量が往復動圧縮機の潤滑状態を保持し得る潤滑下限負荷までの間の前記往復動圧縮機の容量制御を、往復動圧縮機を駆動する駆動モータの回転数制御で行うと共に、潤滑下限負荷以下の往復動圧縮機の容量制御を、前記駆動モータの回転数制御と気筒数制御とを組み合わせて行ない、熱交換流体の凝縮器又は蒸発器での出口温度を設定範囲に保持する。これにより、許容最大負荷から潤滑油ポンプの流量を確保し得る潤滑下限負荷までの間の往復動圧縮機の容量制御を、全気筒運転しながら駆動モータの回転数制御によって行なう。また、それ以下の負荷では、気筒数制御と駆動モータの回転数制御とを組み合わせて行なうようにしたものである。
【0011】
これによって、高いCOPを維持しながら、負荷に対する比例制御を可能にしている。また、負荷に対する比例制御を可能にすることによって、圧縮機吸入配管での冷媒の液化を防止するようにしている。さらに、熱交換流体の凝縮器又は蒸発器での出口温度を設定範囲に保持することで、高低所望温度の熱交換流体を製造可能になる。
【0012】
圧縮機の容量を減少させると、冷媒循環量が減少するので、蒸発器の蒸発能力に余裕が生じることから、蒸発温度が上昇し、それにより吸入圧力が上昇する。そのため、過度的に吸入配管の温度がNH
3冷媒の飽和温度を下回り、NH
3冷媒ガスの凝縮液化が生じる可能性がある。
本発明方法において、往復動圧縮機の冷媒吸入路に設けられた加熱機構によって、該冷媒吸入路に流入するNH
3冷媒を飽和温度以上に保持し、NH
3冷媒の往復動圧縮機への液バックを防止す
る。
【0013】
この場合、圧縮機の容量減の制御を行なう前に、予め加熱機構を作動させておくとよい。これによって、ヒートポンプ装置の運転中又は停止中に、NH
3冷媒の圧縮機への液バックを確実に防止できる。そのため、圧縮機を構成する機器、部品の潤滑性を良好に保持できるので、圧縮機摺動部の異常摩耗を防止できる。
【0014】
本発
明において、往復動圧縮機の吸入路に設けられた遮断弁によって、ヒートポンプ装置の停止時該吸入路を遮断し、
NH3冷媒の往復動圧縮機の起動時の液バックを防止するとよい。ヒートポンプ装置の熱源が多種多様に異なる場合、ヒートポンプ装置の停止時に、圧縮機の温度が低いとき、前記遮断弁で吸入路を遮断することにより、吸入路から圧縮機への液バックを防ぎ、圧縮機起動時の潤滑油フォーミング及び圧縮機摺動部の異常摩耗を確実に防止できる。
【0015】
本発
明において、往復動圧縮機の停止時に、往復動圧縮機の吐出路の高圧冷媒ガスを吸入遮断弁のある蒸発器側(低圧部)へ逃がすことにより、往復動圧縮機の高低圧力差を最少にし、往復動圧縮機の高圧部での液化を防止するようにするとよい。往復動圧縮機の停止直後に、吐出路の高圧冷媒ガスを低圧の蒸発器側に逃がすことにより、圧縮機吐出路側が周囲温度により冷却され、圧縮室内部のNH
3冷媒が液凝縮し、次の起動時に往復動圧縮機の内部機器に損傷を与える危険性を軽減することができる。
【0016】
また、本発
明において、往復動圧縮機の起動時に、往復動圧縮機の吐出路の高圧冷媒ガスを吸入遮断弁のある蒸発器側(低圧部)へ逃がすことにより、往復動圧縮機の高低圧力差を最少にし、該往復動圧縮機の起動トルクを低減させるようにするとよい。圧縮機の起動時に、吸入路と吐出路との圧力差が少ないほど、圧縮機の駆動モータの起動トルクが小さくて済む。そのため、圧縮機の起動時に、圧縮機の吐出路の高圧を低圧の蒸発器側に均圧させることで、駆動モータの起動トルクを低減できる。
【0017】
前記本発明は、許容最大負荷から潤滑油ポンプの流量が往復動圧縮機の潤滑状態を保持し得る潤滑下限負荷までの間の往復動圧縮機の容量制御を、往復動圧縮機を駆動する駆動モータの回転数制御によって行うと共に、潤滑下限負荷以下の往復動圧縮機の容量制御を、前記駆動モータの回転数制御と気筒数制御とを組み合わせて行ない、熱交換流体の凝縮器又は蒸発器での出口温度を設定範囲に保持す
る。
【0018】
本発
明では、圧縮機として、比較的低コストでかつ容量制御が容易な往復動圧縮機を用いている。熱交換流体の凝縮器又は蒸発器での出口温度を検出しながら、許容最大負荷から潤滑油ポンプの流量を確保し得る潤滑下限負荷までの間の往復動圧縮機の容量制御を、全気筒運転しながら駆動モータの回転数制御によって行なう。また、それ以下の負荷では、気筒数制御と駆動モータの回転数制御とを組み合わせて行なうようにしたものである。
【0019】
これによって、高いCOPを維持しながら、負荷に対する比例制御を可能にしている。また、負荷に対する比例制御を可能にすることによって、圧縮機吸入配管での冷媒の液化を防止するようにしている。また、熱交換流体の凝縮器又は蒸発器での出口温度を設定範囲に保持することで、所望温度の熱媒体を製造可能になる。
【0020】
本発
明において、往復動圧縮機の冷媒吸入路に加熱機構を設け、該冷媒吸入路に流入するNH
3冷媒を飽和温度以上に保持し、NH
3冷媒の往復動圧縮機への液バックを防止するようにす
る。このように、NH
3冷媒を飽和温度以上に保持することで、NH
3冷媒の液化を防止し、これによって、ヒートポンプ装置の運転中又は停止中に、NH
3冷媒の圧縮機への液バックを確実に防止できる。そのため、圧縮機を構成する機器、部品の潤滑性を良好に保持できるので、圧縮機摺動部の異常摩耗を防止できる。
【0021】
本発
明において、前記加熱機構が、往復動圧縮機の吸入路に設けられた加熱ヒータであるとよい。これによって、簡素かつ低コストな構成で、NH
3冷媒の圧縮機への液バックを確実に防止できる。
【0022】
前記加熱機構は、圧縮機の吸入路を二重管構造にし、往復動圧縮機から吐出した冷媒ガス又は凝縮器出口側の冷媒液を該二重管構造の外側管に導入し、該冷媒ガス又は冷媒液の保有熱で吸入路を加熱するようにするとよい。これによって、冷媒の保有熱を利用するので、特別なエネルギー源を必要としない利点がある。
【0023】
前記加熱機構は、圧縮機から吐出した冷媒ガスの一部を分岐させ、吸入路に注入させて、該冷媒ガスの保有熱で吸入路を加熱するようにしたものでもよい。冷媒ガスの顕熱分を吸入路の加熱に利用できるので、加熱効率を向上できる。
【0024】
前記加熱機構は、圧縮機を着脱型の保温ジャケットで覆うものであるとよい。これによって、設備工事を簡素化かつ低コストにできる。
【0025】
本発
明において、往復動圧縮機の停止時又は起動時に、往復動圧縮機の吐出路の高圧ガスを吸入遮断弁の蒸発器側(低圧部)へ逃がす均圧機構を設けるようにするとよい。往復動圧縮機の停止直後に、吐出路の高圧ガスを低圧の蒸発器側に逃がすことにより、圧縮機高圧側が周囲温度により冷却され、内部のNH
3冷媒が液凝縮し、次の起動時に往復動圧縮機の内部機器に損傷を与える危険性を軽減することができる。
また、往復動圧縮機の起動時に、吐出路の高圧を蒸発器側低圧に均圧させることで、起動時の駆動モータの起動トルクを低減できる。
【0026】
前記均圧機構が、往復動圧縮機の吐出路又は凝縮器に熱交換器を設け、ヒートポンプ装置の停止時に該熱交換器に冷却媒体を流し、冷媒ガスを凝縮液化して吐出路の冷媒ガス圧を低減するものであるとよい。これによって、圧縮機の吸入路と吐出路との圧力差を小さくでき、圧縮機駆動モータの起動トルクを低減できる。なお、前記冷却媒体の温度又は流量を調整することで、吐出路の冷媒圧力を精度良く調整でき、そのため、吸入路と吐出路との圧力差を精度良く調整できる。
【0027】
本発
明において、
他の冷媒が循環する第2の冷媒循環路に、圧縮機と、凝縮器と、レシーバと、膨張弁と、サージドラムとが設けられて構成されている低圧側ヒートポンプ装置
より成り、
前記高圧側ヒートポンプ装置側の前記蒸発器は、前記低圧側ヒートポンプ装置の高圧側冷媒経路に組み込まれ、該低圧側ヒートポンプ装置の高圧側冷媒経路に組み込まれ、低圧側ヒートポンプ装置の冷媒の保有熱を熱源とするカスケードコンデンサとして構成され、該低圧側ヒートポンプ装置の高圧側冷媒経路の圧力調整を行なって、熱交換流体の凝縮器出口温度を設定範囲に保持するようにする。これによって、熱交換流体を高温化でき、高い温度の熱交換流体を必要とする需要先の要求に応じることができる。
【0028】
また、低圧側ヒートポンプ装置の保有熱を熱源として利用するとき、低圧側ヒートポンプ装置の凝縮温度が、例えば季節により、夏期は凝縮温度が40℃となり、冬期は凝縮温度が15℃となり、熱源温度が大きく変動する。凝縮温度が15℃となれば、COPは低減すると共に汲み上げる熱量が減少して、熱交換流体を要求温度にできない場合がある。これに対し、低圧側ヒートポンプ装置の高圧側冷媒経路の圧力調整を行なうことにより、熱交換流体を設定温度に調整できる。
【0029】
なお、低圧側ヒートポンプ装置を設けた前記構成において、低圧側ヒートポンプ装置の凝縮後の冷媒液をカスケードコンデンサで過冷却させ、過冷却した冷媒液を低圧側ヒートポンプ装置の低圧側冷媒循環路に戻すように構成するとよい。これによって、低圧側ヒートポンプ装置の冷凍効果を向上できる。
【0030】
また、カスケードコンデンサが低圧側ヒートポンプ装置の凝縮器と並列に配置され、該凝縮器の冷媒流量を調整して該凝縮器の凝縮圧力を調整するように構成するとよい。これによって、カスケードコンデンサの熱源を確保しながら、夏期においては、低圧側ヒートポンプ装置の凝縮負荷の一部をカスケードコンデンサで分担軽減し、低圧側ヒートポンプ装置の凝縮器の冷媒凝縮温度を低減することにより、COPを向上させた高効率運転が可能になる。冬期においては、低圧側ヒートポンプ装置の凝縮負荷を低減させ、カスケードコンデンサの熱源に供する側の比率を増加させることにより、ヒートポンプ装置の高効率運転が可能となる。
【0031】
従って、ヒートポンプ装置の熱交換流体の凝縮器出口温度を高い方向に可変制御運転する場合、低圧側ヒートポンプ装置と
並行して凝縮負荷を制御することにより、カスケードコンデンサと熱交換する凝縮液の温度を上げて高効率運転が容易となる。これらの夏期及び冬期の運転条件を計画制御することにより、ヒートポンプ装置及び低圧側ヒートポンプ装置の通年の総合運転効率を最適化できる。これによって、ヒートポンプ装置の所期凝縮圧力相当の熱源温度が確保できるので、熱交換流体を所期温度まで高温化できる。
【0032】
前記構成において、カスケードコンデンサが低圧側ヒートポンプ装置の凝縮器と圧縮機との間に直列に配置され、該凝縮器の冷媒流量を調整するか、又はカスケードコンデンサと凝縮器との間に設けた吐出圧力調整弁により該凝縮器の凝縮圧力を調整するように構成するとよい。これによって、低圧側ヒートポンプ装置の冷媒の過熱分を含め顕熱分を有効に利用できるため、第2ヒートポンプ装置の容量が小さい場合でも、カスケードコンデンサの熱源を確保できる。また、吐出圧力調整弁で
低圧側ヒートポンプ装置の冷媒ガスの凝縮圧力を制御することで、凝縮温度を低減し、これによって、
低圧側ヒートポンプ装置の運転効率を向上できる。