(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0007】
従って、本発明の目的は、耐熱性、低熱膨張性、透明性、耐候性に優れ、ソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、液晶のカラーフィルター等に有用なエポキシアクリレート、アクリル系組成物及び硬化物を提供することである。特に、光学材料として有用なアクリル樹脂組成物及び硬化物を提供することである。
【0008】
本発明者等は、上述した従来技術における実状に鑑みて、耐熱性、低熱膨張性、高屈折率、透明性、耐候性に優れ、ソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、液晶のカラーフィルター等に有用なアクリル樹脂を得るべく鋭意研究した結果、エポキシアクリレートとして、エポキシシクロヘキサン化合物と不飽和カルボン酸とを反応させて得られるエポキシアクリレートを用いることにより、上記の課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるエポキシアクリレートに関する。
(但し、Xは水素原子又はメチル基を表す。ZはC1〜C6のアルキル基を表し、全てが同一でも異なっていてもよい。nは2〜3の数を示す。aは0〜4の数を示す。)
【0010】
また、本発明は、上記一般式(1)で表されるエポキシアクリレートを主成分として含み、下記一般式(2)で表わされるエポキシアクリレートを副成分として含むエポキシアクリレートに関する。
【0011】
但し、Aは式(3)で表されるエステル結合含有基であり、Bは式(3)又は式(4)で表されるエステル結合含有基である。bは1〜2の整数を示す。Z、X、aは一般式(1)と同じ意味である。
【0012】
また、本発明は、上記エポキシアクリレートと、重合開始剤を含有することを特徴とするアクリル系硬化性組成物に関する。また、本発明は、このアクリル系硬化性組成物を成形硬化させてなることを特徴とするアクリル樹脂硬化物に関する。
【0013】
また、本発明は、一般式(5)で表されるエポキシシクロヘキサン化合物とアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させることを特徴とする上記エポキシアクリレートの製造方法に関する。
【0014】
(但し、Z、a及びnは、一般式(1)と同じ意味を有する。)
【0015】
また、本発明は上記アクリル系硬化性組成物又はアクリル樹脂硬化物が、光学材料用であることを特徴とするアクリル系硬化性組成物又はアクリル樹脂硬化物である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明のエポキシアクリレートについて説明する。
【0018】
本発明のエポキシアクリレートは、上記一般式(1)で表される。ここで、Xは水素原子又はメチル基を表す。ZはC1〜C6のアルキル基を表し、全てが同一でも異なっていてもよい。nは2〜3の整数を示す。aは0〜4の整数を示す。但し、n+aは6を超えることはない。
【0019】
上記一般式(1)で表されるエポキシアクリレートは上記一般式(5)で表されるエポキシシクロヘキサン化合物と不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタアクリル酸、又は両者を含む意味である)を反応させアクリレート化を行うことで製造することができる。従って、Zの種類は、原料として使用されるエポキシシクロヘキサン化合物の構造に由来することになる。エポキシシクロヘキサン化合物の入手の容易さや得られるエポキシアクリレートの特性の点から、ZはC1〜C6のアルキル基であり、aは0〜4、好ましくは0〜1の整数である。
【0020】
上記一般式(5)で表されるエポキシシクロヘキサン化合物は、シクロヘキサン骨格にエポキシエチル基が2個置換された構造(ジ置換体)又は3個置換された構造(トリ置換体)を取り得る。ジ置換体の異性体としては、1,2−ジ置換体(o−体)、1,3−ジ置換体(m−体)及び1,4−ジ置換体(p−体)があり、トリ置換体の異性体としては、1,2,3−トリ置換体、1,2,4−トリ置換体、1,3,5−トリ置換体がある。本発明の製造方法で使用するエポキシシクロヘキサン化合物としては、これら異性体の混合物(ジ置換体同士、トリ置換体同士又はジ置換体とトリ置換体の混合物であっても良い。)が、ジ置換体同士の混合物の場合は、m−体及びp−体の含有率が高いものが耐熱性及び低粘度性両立の観点で好ましく、90重量%以上、好ましくは95重量%以上m−体及びp−体を含有するものが好適に使用される。また、アクリル樹脂硬化物の耐熱性の点から、トリ置換体が好ましく、1,2,4−トリ置換体が特に好ましい。
【0021】
本発明のエポキシアクリレートは、エポキシシクロヘキサン化合物と不飽和カルボン酸を反応させることで製造することができる。この反応では、エポキシシクロヘキサン化合物のエポキシ基が開環して不飽和カルボン酸とエステル結合を生じて結合する。この開環はα位とβ位のいずれからでも起こるが、α位で開環した上記一般式(1)のエポキシアクリレート(α付加体)が主成分となり、β位で開環した上記一般式(2)のエポキシアクリレート(β付加体)が副成分となる。一般式(2)のエポキシアクリレートには2種類がある。すなわち、一般式(2)中のA及びBの両方が式(3)で表されるエステル結合含有基(β付加体)である場合と、一般式(2)中のAが式(3)で表されるエステル結合含有基(β付加体)で、Bの一部又は全てが式(4)で表されるエステル結合含有基(α付加体)である場合がある。前者を全β付加体といい、後者を半β付加体といい、両者をまとめてβ付加体という。全β付加体の生成割合は、半β付加体のそれより十分に低い。なお、一般式(2)中のA及びBの両方が式(3)で表されるエステル結合含有基(α付加体)である場合は、一般式(1)と同じとなる。
【0022】
上記の製造方法では、通常α付加体とβ付加体の生成割合は、モル比で100/0.01〜100/70であり、好ましくは100/0.1〜100/50である。したがって、上記の製造方法では、通常本発明のα付加体とβ付加体の両者を含むエポキシアクリレートが得られる。α付加体とβ付加体の両者を含むエポキシアクリレートを、一般式(1)のエポキシアクリレートのみからなるエポキシアクリレートと区別する場合は、前者をエポキシアクリレート組成物といい、後者を一般式(1)のエポキシアクリレートという。特に、区別する必要がない場合は、両者をエポキシアクリレートという。
エポキシアクリレート組成物から一般式(1)のエポキシアクリレートの分離は公知の方法に分離することができる。なお、主成分として含みとは、60%以上、好ましくは70%以上含むことをいい、副成分は、40%以下、好ましくは30%以下含むことがよい。
【0023】
上記の製造方法では、一般式(1)及び(2)で表されるエポキシアクリレートを含むエポキシアクリレートが得られる。これらのエポキシアクリレートは、いずれもがシクロヘキサン環化合物であることから、椅子型、船型の異性体があり、また、シス、トランス異性体、又は光学異性体があるので、主成分及び副成分は、これらの異性体を含む混合物であってもよい。上記の製造方法で得られる、一般式(1)及び(2)で表されるエポキシアクリレートは、いずれもエポキシアクリレートであるので、一般式(1)及び(2)で表されるエポキシアクリレートを含む組成物であっても、エポキシアクリレートともいう。
【0024】
本発明のエポキシアクリレートは、エポキシシクロヘキサン化合物と不飽和カルボン酸とを必要に応じて触媒、重合禁止剤の存在下、50〜200℃で1〜50時間反応することで製造することができる。
【0025】
エポキシシクロヘキサン化合物と不飽和カルボン酸の原料仕込み割合は、エポキシシクロヘキサン化合物と不飽和カルボン酸のモル比で100/5〜5/100、好ましくは、100/10〜10/100となる反応割合が好ましい。
【0026】
この際に使用できる触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の第三級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、イミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラ−n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート等のホスホニウム塩等が挙げられる。これらの触媒は単独でも2種以上の併用でもよい。触媒使用量としては、用いる触媒により異なるが、エポキシシクロヘキサン化合物の100モルに対して、0.01〜100モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜80モルである。
【0027】
反応を行うに際に使用できる重合禁止剤としては、ビニル化合物の重合禁止剤として公知の重合禁止剤で良く、例えばフェノチアジン、メトキシフェノチアジン、ヒンダードアミン等のアミン類、フェノール、メトキシフェノール、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ブチルヒドロキシトルエン、クレゾール等のフェノール類等が挙げられるが、好ましくはフェノール類である。これらの重合禁止剤は単独でも2種以上の併用でもよい。重合禁止剤使用量としては、用いる触媒により異なるが、エポキシシクロヘキサン化合物の100モルに対して、0.001〜10モルであることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜1モルである。
【0028】
反応を行うに際しては、必要に応じて有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、MIBK、MEK等のケトン系溶媒等が挙げられる。溶媒の使用量としては、エポキシシクロヘキサン化合物及び不飽和カルボン酸の合計重量100重量部に対して通常50〜5000重量部、好ましくは100〜2000重量部である。
【0029】
反応を行うに際しては、必要に応じて空気又は酸素を導入してもよい。反応の制御の点から、好ましくは空気を導入するとよい。
【0030】
反応で得られたエポキシアクリレートは、一般式(1)のエポキシアクリレートを主成分とし、一般式(2)のエポキシアクリレートのような異性体を副成分とする混合物、又はn数の異なる混合物が得られることになる。これらの混合物は、樹脂原料として使用する場合は、エポキシアクリレートとしてそのまま使用することができる。有機薬品等の原料とする場合は、再結晶等により精製又は分離することもできる。
【0031】
エポキシシクロヘキサン化合物は、ビニルシクロヘキシル化合物を過酸化物によりエポキシ化したものを使用できる。エピクロロヒドリンを用いないため、得られる化合物は、塩素含有量が少ない。過酸化物としては、通常の方法により得られる過酸、過酸化水素、又は有機過酸化物を使用することができる。
【0032】
本発明のアクリル系硬化性組成物は、上記一般式(1)のエポキシアクリレート又はこれを主成分とする上記エポキシアクリレート組成物と、重合開始剤を含む。
【0033】
重合開始剤としては、ビニル化合物の重合開始剤として公知の重合開始剤で良く、紫外線、電子線等の活性エネルギー線の照射又はラジカル重合開始剤を適用することにより硬化する。
【0034】
紫外線照射による硬化に際しては、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、紫外線の照射により励起されてラジカルを発生するタイプの通常の光重合開始剤が挙げられ、具体的には、適当な開始剤として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾイン−iso−プロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−ジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、アセトフェノン、9,10−アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のアントラキノン類、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の含イオウ化合物類等が例示される。
【0035】
これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上混合して使用され、その配合量としては、重合性化合物の合計量に対して0.1〜10重量%程度が推奨される。
【0036】
また、光重合開始剤による光重合反応を促進するために、光増感剤を添加してもよい。
【0037】
この光増感剤は、特に限定されるものではなく、具体的には、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のアルキルホスフィン類、チオジクリコール等のチオエーテル類等が例示され、その配合量としては、重合性化合物(上記エポキシアクリレート又はエポキシアクリレート組成物と、必要により加えられる他の重合性モノマーをいう)の合計量に対して0.01〜5重量%程度が推奨される。
【0038】
紫外線の光源としては、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が用いられる。
【0039】
電子線により硬化する場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いる必要はなく、汎用の電子線発生装置により、通常、1〜20メガラッド程度の線量の電子線を照射すればよい。
【0040】
本発明に係るアクリル系硬化性組成物をラジカル重合するに際して用いられるラジカル重合開始剤は、特に限定されるものではなく、具体的には、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、過酸化ラウロイル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が例示され、これらの重合開始剤は単独でも2種以上の併用でもよい。重合開始剤は、熱硬化用のものと光硬化用のものを用途に応じて使い分けることが好ましい。
【0041】
これら重合開始剤の使用量は、用いる重合禁止剤により異なるが、重合性化合物の合計量に対して0.001〜5重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜1重量部である。但し、この混合比は使用する硬化剤の種類により大きく変化するので最適条件を適宜決定することが必要である。
【0042】
本発明のアクリル系硬化性組成物には、必要に応じて一般式(1)のエポキシアクリレート又はこれを主成分とする上記エポキシアクリレート組成物の他に、熱又は光による他の重合性モノマーを添加することができる。しかし、重合性成分中には、上記一般式(1)のエポキシアクリレート又はこれを主成分とする上記エポキシアクリレート組成物を合計で50wt%以上含むことがよい。他の重合性モノマーとしては、公知の熱又は光による重合性モノマーで良く、以下に例示する各種のアクリレート系化合物を単独で又は2種以上混合し、硬化性成分として併用することができる。
【0043】
単官能性(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロムプロピル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0044】
二官能性(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(オキシメチル)トリシクロ[5.2.2.02,5 ]デカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロキシメチル]シクロヘキサン、トリメチロールプロパンとピバルアルデヒドとのアセタールのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ビスフェノールA−ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0045】
三乃至四官能性(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0046】
アクリル系重合性オリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエンオリゴマーの(メタ)アクリレート、ポリアミド型(メタ)アクリルオリゴマー、メラミン(メタ)アクリレート、シクロペンタジエンオリゴマーの(メタ)アクリレート、シリコーンオリゴマーの(メタ)アクリレート等が例示される。
【0047】
また、上記のアクリレート系モノマーに加えて、他の重合性モノマー、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルエーテル、アクロレイン等のビニル系化合物、エチレン、ブタジエン等のα−オレフィン等を適宜併用することができる。これらの熱又は光による重合性モノマーは単独でも2種以上の併用でもよい。熱又は光による重合性モノマーは、熱重合性モノマーと光重合性モノマーを用途に応じて使い分けることが好ましい。
【0048】
本発明のアクリル系硬化性組成物には、必要に応じて充填剤、繊維、カップリング剤、難燃剤、離型剤、発泡剤等のその他の成分を添加することができる。この際の充填剤としては、例えばポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末、石英、シリカ、珪酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、石膏、ベントナイト、蛍石、二酸化チタン、カーボンブラック、黒鉛、酸化鉄、アルミニウム粉末、鉄粉、タルク、マイカ、カオリンクレー等が、繊維としては、例えばセルロース繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。カップリング剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。難燃剤としては、例えば臭素化ビスフェノールA、三酸化アンチモン、燐系化合物等が挙げられる。離型剤としては、例えばステアリン酸塩、シリコーン、ワックス等が挙げられる。発泡剤としては、例えばフロン、ジクロロエタン、ブタン、ペンタン、ジニトロペンタメチレンテトラミン、パラトルエンスルホニルヒドラジッド、あるいは、フロン、ジクロロエタン、ブタン、ペンタン等が塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体やスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の殻内に充填されている膨張性熱可塑性樹脂粒子等が挙げられる。
【0049】
本発明のアクリル系硬化性組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にアクリル樹脂硬化物とすることができる。例えば本発明のエポキシアクリレート又はエポキシアクリレート組成物、重合開始剤、必要により熱又は光による重合性モノマー及びその他の添加剤とを、必要に応じて押出機,ニーダ,ロール等を用いて均一になるまで充分に混合してアクリル樹脂組成物を得て、そのアクリル樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファー成形機などを用いて成形し、さらに80〜200℃に加熱することにより硬化物を得ることができる。
【0050】
また、本発明のアクリル系硬化性組成物を溶剤に溶解させ、ガラス繊維,カーボン繊維,ポリエステル繊維,ポリアミド繊維,アルミナ繊維,紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形して硬化物を得ることなどもできる。例えば本発明のエポキシアクリレート又はエポキシアクリレート組成物、重合開始剤及びその他の添加剤などを均一になるまで加熱、撹拌し、これをガラスクロスに含浸させ加熱半乾燥して溶剤分を飛ばしたプリプレグを、必要枚数重ねて80〜200℃で1時間以上加熱プレスすることによりガラスクロス積層板を作製することができる。
【0051】
この際用いうる希釈用溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ等が好ましく、その使用量は、アクリル系硬化性組成物と該希釈用溶剤の合計重量に対し、10〜70重量%、好ましくは、15〜65重量%である。
【0052】
こうして得られる硬化物は高い耐熱性、靭性、耐薬品性及び硬度を有しているため、本発明のアクリル樹脂硬化物は、光学樹脂等広範な分野で用いることができる。具体的にはソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、さらには液晶のカラーフィルター等の保護膜としても好適に使用される。特に、レンズ、プリズム、カラーフィルター、又はこれらの保護膜等の光学材料として優れる。
【実施例】
【0053】
次に本発明の特徴を更に明確にするため実施例を挙げて具体的に説明する。なお、文中の「部」、「%」は全て重量基準を示すものである。
【0054】
実施例1
冷却管、温度計、空気吹き込み管を取り付けた300mlのガラス製三口フラスコに、1,2,4−トリエポキシエチルシクロヘキサン10.51g(50mmol)、アクリル酸 18.01g(250mmol)、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド0.23g(1mmol)、ジブチルヒドロキシトルエン0.055g(0.25mmol)、トルエン100mlを入れ、空気を装入しながら、80℃で加熱攪拌し、24時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、蒸留水100mlで3回洗浄した。トルエン層を分離し、トルエン留去後、酢酸エチル+ヘキサン(4:6)を展開液としたシリカゲルカラムにより精製した。無色透明で粘稠液体のトリエポキシアクリレートシクロヘキサン13.00g(収率61%)を得た。このトリエポキシアクリレートシクロヘキサンは一般式(1)において、aが0であり、XがHであり、nが3であるエポキシアクリレートを主成分とすることがGC分析で確認された。このトリエポキシアクリレートシクロヘキサンの
1H-NMRスペクトルを
図1に示す。
【0055】
比較例1
冷却管、温度計、空気吹き込み管を取り付けた500mlのガラス製三口フラスコに、スチレンオキサイド50.00g(416mmol)、アクリル酸29.98g(416mmol)、トリフェニルホスフィン1.09g(4.16mmol)、4−ターシャリー・ブチルカテコール0.346g(2.08mmol)、トルエン100mlを入れ、空気を装入しながら、60℃で加熱攪拌し、24時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、蒸留水100mlで3回洗浄した。トルエン層を分離し、トルエン留去後、酢酸エチル+クロロホルム(2:8)を展開液としたシリカゲルカラムにより精製した。無色透明な液体のエポキシアクリレートベンゼン54.37g(収率68%)を得た。
【0056】
実施例2
実施例1で得たトリエポキシアクリレートシクロヘキサンの100重量部と、重合開始剤であるイルガキュア184[チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製;商品名]5重量部とを、混練して、組成物を調製した。それをガラス板またはアルミ皿上に塗布し、離型PETフィルムを被せ、高圧水銀灯を用いエネルギー線量が600mJ/cm
2となるように紫外線照射することにより、硬化させ、膜状の硬化物を得た。
次に、得られた硬化物を試料とし、その鉛筆硬度、ガラス転移点、および熱膨張係数(α1)の分析を、下記の方法により行った。その結果を表1に示した。
【0057】
(鉛筆硬度)
ガラス板上に10〜20μmになるように硬化させた塗膜について、JISK5600に基づき加重1kgで測定を行い、傷の入らない最も硬い鉛筆の硬度で示した。
【0058】
(ガラス転移点;Tg、熱膨張係数;α1)
試料を長さ20mm、幅5mm、厚さ0.1mmに調整したものについて、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 熱機械的分析装置(TMA/SS)により、窒素雰囲気下、昇温速度7℃/分の条件で求めた。
【0059】
(YI値)
厚み50μmのフィルムを試料とし、JIS K7373に準拠して評価した。
【0060】
(全光線透過率;Tt)
厚み50μmのフィルムを試料とし、JIS K7361−1に準拠して評価した。
【0061】
比較例2
比較例1で得たエポキシアクリレートベンゼンを実験例2と同様の条件で膜状の硬化物を得た。
次に、得られた硬化物の鉛筆硬度、ガラス転移点、および熱膨張係数(α1)の分析を実施例2と同様の条件で行った。その結果を表1に示した。
【0062】
【表1】
【0063】
本発明のエポキシアクリレートは、従来のエポキシアクリレートと比較して、耐熱性、低熱膨張性、高屈折率、透明性、耐候性に優れ、ソルダーレジスト用樹脂又は、無電解メッキレジスト用樹脂、ハードコート材料、UV硬化塗料、ガラス代替材料、液晶のカラーフィルター等の光学樹脂に有用なエポキシアクリレート、アクリル系組成物及び硬化物を与えることができる。