(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記参照光反射手段から反射する参照光の強度を、前記各測定ポイントで反射された光の強度に近づけるように減衰させるための光減衰手段をさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載の温度測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、温度測定の対象として半導体ウエハを例に説明するが、温度測定の対象は、半導体ウエハに限られず、種々の物体の温度測定が可能である。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、複数の処理チャンバ内の半導体ウエハの複数ポイントの温度を一度に測定する実施形態について説明する。この第1の実施形態では、光源として多波長光源を使用し、この多波長光をWDM(wavelength division multiplexing)カプラにより複数(m個:mは1以上の整数)の波長帯域λ
1〜λ
mに分波して、さらに波長帯域λ
1〜λ
m毎に複数(n個:nは1以上の整数)の光に分岐することにより、より多くの測定ポイントの温度測定を実現している。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る温度測定装置100の構成図である。温度測定装置100は、複数(m個)の波長帯域の光(以下、測定光と称する)を照射する多波長光源110と、光サーキュレータ120と、測定光をm個の波長帯域λ
1〜λ
mに分波する分波器130(第1の分波手段)と、分波器130で各波長帯域λ
1〜λ
mに分波された測定光をn個の第1〜第n測定光に分岐するスプリッタ140(第1の分岐手段)と、光サーキュレータ120から出力される反射光から各測定ポイントの温度を算出する信号処理装置150とを備えている。
【0014】
多波長光源110からは、所定の時間間隔、すなわち所定のタイムスロットで測定光が照射される。
【0015】
多波長光源110は、任意の光を使用することが可能であるが、この第1の実施形態のように半導体ウエハWの温度測定を行う場合には、少なくとも半導体ウエハWの表面Hと裏面Rとの間の距離(通常は800〜1500μm程度)からの反射光が干渉を生じない程度の光が好ましく、具体的には、低コヒーレンス光を用いることが好ましい。
【0016】
低コヒーレンス光とは、コヒーレンス長の短い光をいう。なお、低コヒーレンス光の中心波長は、測定対象物が半導体ウエハ(Si)であることから、Siを透過する波長、具体的には1000nm以上であることが好ましい。また、コヒーレンス長としては、例えば0.1〜100μmが好ましく、更に3μm以下がより好ましい。このような低コヒーレンス光を多波長光源110として使用することにより、余計な干渉による障害を回避でき、半導体ウエハの表面H、裏面R及び内部層からの反射光に基づく測定の干渉を容易に測定することができる。
【0017】
低コヒーレンス光を使用した光源としては、例えばSLD(Super Luminescent Diode)、LED、高輝度ランプ(タングステンランプ、キセノンランプなど)、超広帯域波長光源等を使用することができる。これらの低コヒーレンス光源の中でも、輝度の高いSLD(波長、例えば1300nm)を多波長光源110として用いることが好ましい。
【0018】
光サーキュレータ120は、3つのポートA〜Cを備える、ポートAに入力した光はポートBから出力され、ポートBから入力した光はポートCから出力され、ポートCに入力した光はポートAから出力される特性を有する。すなわち、多波長光源110からの測定光は分波器130へ出力され、分波器130から測定対象物からの反射光は信号処理装置150へ入力される。
【0019】
分波器130は、光サーキュレータ120から入力される測定光をm個の波長帯域λ
1〜λ
mに分波して出力する。分波器130は、例えば、WDMカプラである。分波された各波長帯域λ
1〜λ
mの測定光は、各々異なる処理チャンバPC
1〜PC
mへ入力される。以下、処理チャンバPC
1〜PC
m内の構成について説明するが、各処理チャンバPC
1〜PC
mの構成は、入力される測定光の波長帯域が異なるのみであるため、処理チャンバPC
1についてのみ説明し、他の処理チャンバPC
2〜PC
mについては説明を省略する。
【0020】
処理チャンバPC
1には、分波器130でm個の波長帯域λ
1〜λ
mに分波された測定光のうち波長帯域λ
1の測定光だけが入力される。このため、処理チャンバPC
1には、波長帯域λ
1の測定光が所定の時間間隔(タイムスロット)で入力される。
【0021】
スプリッタ140は、分波器130で分けられた波長帯域λ
1の測定光を第1〜第n測定光に分岐する。スプリッタ140は、例えば、光ファイバカプラである。但し、これに限定されるものではなく測定光を分岐することが可能なものであればよく、例えば光導波路型分波器、半透鏡などを用いてもよい。
【0022】
スプリッタ140からの第1〜第n測定光は夫々コリメートファイバF
1〜F
nを介して、半導体ウエハWの測定ポイントまで伝送される。
図1に示すように、この第1の実施形態では、コリメートファイバF
1〜F
nの長さを変えることにより、第1〜第n測定光におけるスプリッタ140から半導体ウエハWまでの各光路長が異なるようして、各測定ポイントP
1〜P
nからの反射光が互いに重ならないように構成されている。
【0023】
処理チャンバPC
1のスプリッタ140からは、測定対象物である半導体ウエハWの各測定ポイントP
1〜P
nの表面H及び裏面Rで反射した第1〜第n測定光(以下、半導体ウエハWの測定ポイントで反射した第1〜第n測定光を第1〜第n反射光と称する)が出力されるが、上述したように、各コリメートファイバF
1〜F
nは、長さが互いに異なるように構成されているため、第1〜第n反射光は、互いに異なるタイミングでスプリッタ140から出力される。
【0024】
なお、第1〜第n測定光を伝送する手段としては、コリメートファイバF
1〜F
nに限られるものではなく、例えば光ファイバの先端にコリメータを取り付けたコリメータ付光ファイバであってもよい。また、各処理チャンバPC
1〜PC
mからの反射光は、分波器130で合波された後、光サーキュレータ120を介して、信号処理装置150へ入力される。
【0025】
図2は、信号処理装置150の構成図である。
信号処理装置150は、分波器151(第2の分波手段)と、マルチプレクサ152(入力手段)と、スプリッタ153と、タイミング生成手段154と、受光手段155と、温度算出手段156とを備える。
【0026】
分波器151は、光サーキュレータ120からの反射光をm個の波長帯域λ
1〜λ
mの反射光に分波して出力する。各処理チャンバPC
1〜PC
mからの反射光は、分波器130で多重化される。このため、分波器151には、処理チャンバPC
1〜PC
mからの反射光が合波された状態で入力され、m個の波長帯域λ
1〜λ
m毎に、第1〜第n反射光が互いに異なるタイミングで入力されることになる。なお、分波器151は、例えば、WDMカプラである。
【0027】
マルチプレクサ152は、光通信用マルチプレクサであり、分波器151でm個の波長帯域λ
1〜λ
mに分波された反射光のいずれかを選択して出力する。マルチプレクサ152は、所定の時間間隔で選択先を変更する。つまり、マルチプレクサ152により、各波長帯域λ
1〜λ
mの反射光が所定の時間間隔で切り替えて出力される。
【0028】
分波器151に入力された反射光は、分波器151により各波長帯域λ
1〜λ
mに分波され、さらにマルチプレクサ152により波長帯域λ
1〜λ
mの反射光が切り替えて出力される。このため、マルチプレクサ152から出力される反射光は、選択された波長帯域の反射光が出力される。
【0029】
スプリッタ153は、マルチプレクサ152からの反射光を2つに分岐する。スプリッタ153は、例えば、光ファイバカプラである。但し、これに限定されるものではなく反射光を分岐することが可能なものであればよく、例えば光導波路型分波器、半透鏡などを用いてもよい。
【0030】
タイミング生成手段154は、スプリッタ153から入力される測定光のタイムスロットに基づいてタイミング信号を生成して温度算出手段156へ入力する。
【0031】
図3は、受光手段155の構成図である。受光手段155は、スプリッタ153からの反射光を波長分解する回折格子155aと、波長分解された反射光を電気信号に変換する光電変換素子155bとを備える。
【0032】
受光手段155は、タイミング信号に基づいて、マルチプレクサ152からの反射光を取り込んで、複数の波長に離散化した離散化信号を生成して出力する。
【0033】
光電変換素子155bとしては、種々のイメージセンサを使用することができるが、この実施形態では、測定光として波長が1000nm以上の光を使用することから、波長が800〜1700nmの光に感度を有するInGaAs素子カメラを使用することが好ましい。
【0034】
温度算出手段156は、例えば、コンピュータ(電算機)等であり、受光手段155からの信号を取り込み、該信号に基づいて半導体ウエハWの温度を算出する。
【0035】
図4は、温度算出手段156の機能を示す図である。温度算出手段156は、信号取得手段201と、離散フーリエ変換手段202と、光路長算出手段203と、記憶手段204と、温度演算手段205とを備える。なお、
図4に示す機能は、温度算出手段156が備えるハードウェア(例えば、HDD、CPU、メモリ等)により実現される。具体的には、CPUが、HDDもしくはメモリに記録されているプログラムを実行することで実現される。
【0036】
信号取得手段201は、受光手段155からの離散化信号を取り込む。
【0037】
離散フーリエ変換手段202は、信号取得手段201が取得した離散化信号に対してDFT(discrete fourier transform)処理を行う。このDFT処理により、受光手段155からの離散化信号を振幅と距離との情報に変換する。
図5は、DFT処理後の信号を示す図である。
図5の縦軸は振幅、横軸は距離である。
【0038】
光路長算出手段203は、離散フーリエ変換手段202により変換された振幅と距離との情報に基づいて光路長を算出する。具体的には、
図5に示すピークAからピークBまでの光路長を算出する。
図5に示すピークAとピークBは、測定対象物である半導体ウエハWの表面Hからの反射光と裏面Rからの反射光との干渉により生じ、この光路長の差は、半導体ウエハWの温度に依存する。半導体ウエハWの温度が変化すると、半導体ウエハWの熱膨張及び屈折率の変化により、半導体ウエハWの表面Hと裏面Rとの光路長が変化するためである。
【0039】
記憶手段204には、
図6に示す光路長と温度との関係が記憶されている。上述したように
図5に示すピークAからピークBの光路長は、半導体ウエハWの温度に依存する。そこで、予め、ピークAからピークBの光路長と半導体ウエハWの温度との関係を記憶手段204に記憶しておくことで、光路長算出手段203で算出された光路長から半導体ウエハWの温度を算出することができる。
【0040】
なお、
図6に示す光路長と温度との関係は、実際に実験等で測定したものを記憶手段204へ記憶してもよいし、半導体ウエハ(Si)の物性値から計算したものを記憶手段204へ記憶してもよい。記憶手段204は、例えば、flash memory(フラッシュメモリ)やFeRAM(強誘電体メモリ)等の不揮発性メモリである。
【0041】
温度演算手段205は、記憶手段204を参照して、光路長算出手段203で算出された光路長から測定対象物である半導体ウエハWの温度を算出する。
【0042】
(温度測定装置100の動作)
次に、第1の実施形態に係る温度測定装置100の動作について説明する。
多波長光源110は、所定の時間間隔(タイムスロット)で測定光を照射する。
【0043】
図7は、多波長光源110から照射される測定光の波長と時間との関係を示す図である。
図7の縦軸は波長(nm)、横軸は時間(s)である。
図7に示すように、多波長光源110からは、所定の時間間隔で測定光が照射されるため、m個の波長帯域λ
1〜λ
mの測定光が所定の時間間隔で照射される。
【0044】
多波長光源110から照射された測定光は、光サーキュレータ120を介して分波器130へ入力される。
【0045】
分波器130は、光サーキュレータ120から入力される多波長光をm個の波長帯域λ
1〜λ
mに分波して出力する。各波長帯域λ
1〜λ
mの測定光は、各々異なる処理チャンバPC
1〜PC
mへ入力される。
【0046】
図8は、処理チャンバPC
1に入力される測定光の波長と時間との関係を示す図である。
図8の縦軸は波長(nm)、横軸は時間(s)である。処理チャンバPC
1には、分波器130でm個の波長帯域λ
1〜λ
mに分波された測定光のうち波長帯域λ
1の測定光だけが入力される。このため、
図8に示すように、処理チャンバPC
1には、波長帯域λ
1の測定光が所定の時間間隔で繰り返し入力される。
【0047】
スプリッタ140は、波長帯域λ
1の測定光を第1〜第n測定光に分岐する。スプリッタ140からの第1〜第n測定光は夫々コリメートファイバF
1〜F
nを介して、半導体ウエハWの測定ポイントまで伝送される。
【0048】
測定ポイントまで伝送された測定光は、各測定ポイントP
1〜P
nの表面H及び裏面Rで反射され、この反射光は、スプリッタ140を介して分波器130へ出力される。なお、上述したように、測定光が各測定ポイントP
1〜P
nの表面H及び裏面Rで反射される際に干渉が生じる。
【0049】
図9は、処理チャンバPC
1のスプリッタ140から分波器130へ入力される反射光の波長と時間との関係を示す図である。
図9の縦軸は波長(nm)、横軸は時間(s)である。上述したように、各コリメートファイバF
1〜F
nは、長さが互いに異なるように構成されているため、各コリメートファイバF
1〜F
nからの反射光は、
図9に示すように互いに異なるタイミングでスプリッタ140から出力される。
【0050】
分波器130には、各処理チャンバかPC
1〜PC
mからの反射光が入力されて合波された後、光サーキュレータ120を介して、信号処理装置150へ入力される。
【0051】
図10は、光サーキュレータ120から信号処理装置150へ入力される反射光の波長と時間との関係を示す図である。
図10の縦軸は波長(nm)、横軸は時間(s)である。信号処理装置150には、処理チャンバPC
1〜PC
mからの反射光が合波された状態で入力され、
図10に示すように、m個の波長帯域λ
1〜λ
m毎に、第1〜第n反射光が互いに異なるタイミングで入力される。
【0052】
信号処理装置150の分波器151に入力された反射光は、分波器151により各波長帯域λ
1〜λ
mに分波され、さらにマルチプレクサ152により波長帯域λ
1〜λ
mの反射光が切り替えて出力される。
【0053】
図11は、マルチプレクサ152から出力される反射光の波長と時間との関係を示す図である。
図11の縦軸は波長(nm)、横軸は時間(s)である。マルチプレクサ152から出力される反射光は、
図11に示すように、選択された波長帯域の反射光が出力される。なお、
図11では、マルチプレクサ152の選択先が波長帯域λ
1である場合を示している。
【0054】
マルチプレクサ152から出力された反射光は、スプリッタ153に入力される。スプリッタ153に入力された反射光は、2つに分岐され、一方は、タイミング生成手段154に入力され、他方は、受光手段155に入力される。
【0055】
タイミング生成手段154は、スプリッタ153から入力される測定光に基づいてタイミング信号を生成して温度算出手段156へ入力する。
【0056】
受光手段155は、スプリッタ153からの反射光を取り込む。
図12に波長帯域λ
1の信号を取り込んだ例を示す。
【0057】
受光手段155は、取り込んだ反射光を所定の波長に離散化した信号に変換し出力する。
図13は、受光手段155による離散化を説明する図である。受光手段155に入力される反射光(
図13(a)参照)は、受光手段155により、複数の波長に離散化された離散化信号(
図13(b)参照)として出力される。
【0058】
信号取得手段201は、受光手段155からの離散化信号を取り込む。
【0059】
離散フーリエ変換手段202は、信号取得手段201で取得した信号に対してDFT処理を行う。
【0060】
光路長算出手段203は、離散フーリエ変換手段202により変換された振幅と距離との情報に基づいて光路長を算出する。
【0061】
温度演算手段205は、記憶手段204を参照して、光路長算出手段203で算出された光路長から測定対象物である半導体ウエハWの温度を算出する。
【0062】
以上のように、この第1の実施形態に係る温度測定装置100は、光源に多波長光源110を使用し、この多波長光源110からの測定光を分波器130で複数(m個)の波長帯域λ
1〜λ
mに分波し、この分波された各波長帯域λ
1〜λ
mの測定光を、さらにスプリッタ130により複数(n個)に分岐しているので、より多くの測定ポイントの温度を簡易に測定することができる。また、各測定ポイントからの反射光を、受光手段155により離散化信号に変換し、この離散化信号をDFT処理して光路長を算出しているので、参照ミラーからの反射光との干渉により光路長を算出する場合と異なり、参照ミラーを機械的に動作させる必要がないので測定ポイントの温度測定が非常に早くなり、効率的に温度測定を行うことができる。
【0063】
(第1の実施形態の変形例)
図14は、第1の実施形態の変形例に係る温度測定装置100Aの構成図である。この第1の実施形態の変形例に係る温度測定装置100Aでは、光源として多波長光源110ではなく、単波長光源110Aを使用する点、及び信号処理装置150Aが分波器151とマルチプレクサ152を備えていない点が、第1の実施形態に係る温度測定装置100と異なる。
【0064】
分波器151とマルチプレクサ152を備えていないのは、光源として単波長光源110Aを使用しているため、単波長光源110Aからの光を分波する必要がないからである。その他の構成は、第1の実施形態に係る温度測定装置100と同一であり、同一の構成に同一の符号を付している。
【0065】
以上のように、この第1の実施形態の変形例に係る温度測定装置100Aは、光源として単波長光源110Aを使用し、分波器とマルチプレクサを備えていないので簡易な構成で複数の測定ポイントの温度を測定することができる。また、第1の実施形態に係る温度測定装置100と同様に、各測定ポイントからの反射光を受光手段155により離散化信号に変換し、この離散化信号をDFT処理して光路長を算出しているので、参照ミラーを機械的に動作させる必要がないので測定ポイントの温度測定が非常に早くなり、効率的に温度測定を行うことができる。その他の効果は、第1の実施形態に係る温度測定装置100と同様である。
【0066】
(第2の実施形態)
図15は、第2の実施形態に係る温度測定装置200の構成図である。第1の実施形態に係る温度測定装置100では、多波長光源110から測定光を所定の時間間隔で照射することによりタイムスロットを形成していたが、この第2の実施形態に係る温度測定装置200では、多波長光を連続して照射する多波長CW光源110Bを使用し、スプリッタ140の代わりにマルチプレクサ140A(第1の分岐手段)を備え、このマルチプレクサ140Aによりタイムスロットを形成している点が異なる。温度測定装置200の他の構成については、第1の実施形態に係る温度測定装置100と同一であるため同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0067】
次に、第2の実施形態に係る温度測定装置200の動作について説明する。
多波長CW光源110Bは、複数(m個)の波長帯域λ
1〜λ
mの光が多重化された測定光を連続して照射する。
図16は、多波長CW光源110Bから照射される測定光の波長と時間との関係を示す図である。
図16の縦軸は波長(nm)、横軸は時間(s)である。
図16に示すように、多波長CW光源110Bからは、複数(m個)の波長帯域λ
1〜λ
mの測定光が連続して照射される。この時点では、タイムスロットは形成されていない。
【0068】
多波長CW光源110Bから照射された測定光は、光サーキュレータ120を介して分波器130へ入力される。
【0069】
分波器130に入力された測定光は、m個の波長帯域λ
1〜λ
mに分波されて出力される。各波長帯域λ
1〜λ
mの測定光は、それぞれ異なる処理チャンバPC
1〜PC
mへ入力される。
【0070】
図17は、処理チャンバPC
1のマルチプレクサ140Aに入力される測定光の波長と時間との関係を示す図である。
図17の縦軸は波長(nm)、横軸は時間(s)である。処理チャンバPC
1には、分波器130でm個の波長帯域λ
1〜λ
mに分波された測定光のうち波長帯域λ
1の測定光だけが入力される。このため、
図17に示すように、処理チャンバPC
1には、波長帯域λ
1の測定光が入力される。
【0071】
処理チャンバPC
1のマルチプレクサ140Aは、分波器130から入力される波長帯域λ
1の測定光を、所定の時間間隔で出力先を切り替えながらコリメートファイバF
1〜F
nに順次入力する。
【0072】
図18は、各測定ポイントP
1〜P
nに入力される測定光と時間との関係を示す図である。
図18の縦軸は測定ポイント(1〜n)、横軸は時間(s)である。マルチプレクサ140Aにより、所定の時間間隔で入力先が切り替えられるため、測定光は、
図18に示すように時分波されて各測定ポイントP
1〜P
nに入力される。すなわち、このマルチプレクサ140Aによりタイムスロットが形成される。
【0073】
測定ポイントまで伝送された測定光は、各測定ポイントP
1〜P
nの表面H及び裏面Rで反射され、この反射光は、マルチプレクサ140Aを介して分波器130へ入力される。
【0074】
図19は、処理チャンバPC
1のマルチプレクサ140Aから分波器130へ入力される反射光の波長と時間との関係を示す図である。
図19の縦軸は波長(nm)、横軸は時間(s)である。上述のように、マルチプレクサ140Aによりタイムスロットを形成しているので、各測定ポイントP
1〜P
nからの反射光は、
図19に示すように互いに異なるタイミングで分波器130へ入力される。
【0075】
分波器130には、各処理チャンバPC
1〜PC
mからの反射光が入力されて合波された後、光サーキュレータ120を介して、信号処理装置150へ入力される。なお、信号処理装置150での動作は、第1の実施形態に係る温度測定装置100の信号処理装置150動作と同じであるため重複した説明を省略する。
【0076】
以上のように、この第2の実施形態に係る温度測定装置200は、光源に多波長CW光源110を使用し、この多波長CW光源110からの測定光を分波器130で複数(m個)の波長帯域λ
1〜λ
mに分波し、この分波された各波長帯域λ
1〜λ
mの測定光を、マルチプレクサ140Aでさらに複数(n個)に分岐しているので、より多くの測定ポイントの温度を簡易に測定することができる。また、各測定ポイントからの反射光を、受光手段155により離散化信号に変換し、この離散化信号をDFT処理して光路長を算出しているので、参照ミラーからの反射光との干渉により光路長を算出する場合と異なり、参照ミラーを機械的に動作させる必要がないので測定ポイントの温度測定が非常に早くなり、効率的に温度測定を行うことができる。その他の効果は、第1の実施形態に係る温度測定装置100と同様である。
【0077】
(第2の実施形態の変形例)
図20は、第2の実施形態の変形例に係る温度測定装置200Aの構成図である。この第2の実施形態の変形例に係る温度測定装置200Aでは、光源として多波長CW光源110Bではなく、単波長CW光源110Cを使用する点、及び、信号処理装置150Aが分波器151とマルチプレクサ152を備えていない点が、第2の実施形態に係る温度測定装置200と異なる。
【0078】
分波器151とマルチプレクサ152を備えていないのは、光源として単波長CW光源110Cを使用しているため、単波長CW光源110Cからの光を分波する必要がないからである。その他の構成は、第2の実施形態に係る温度測定装置200と同一であり、同一の構成に同一の符号を付している。
【0079】
以上のように、この第2の実施形態の変形例に係る温度測定装置200Aは、光源として単波長CW光源110Cを使用し、分波器とマルチプレクサを備えていないので簡易な構成で複数の測定ポイントの温度を測定することができる。また、第2の実施形態に係る温度測定装置200と同様に、各測定ポイントからの反射光を受光手段155により離散化信号に変換し、この離散化信号をDFT処理して光路長を算出しているので、参照ミラーを機械的に動作させる必要がないので測定ポイントの温度測定が非常に早くなり、効率的に温度測定を行うことができる。その他の効果は、第2の実施形態に係る温度測定装置200と同様である。
【0080】
(第3の実施形態)
図21は、第3の実施形態に係る温度測定装置300の構成図である。第3の実施形態に係る温度測定装置300は、光サーキュレータ120の代わりにスプリッタ160(第2の分岐手段)を備えた点、及び参照光反射手段170、光路長変化手段180を備えた点が第1の実施形態に係る温度測定装置100と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係る温度測定装置100と同一であるため同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0081】
スプリッタ160は、多波長光源110からの測定光を温度測定用の光と参照光とに分岐する。スプリッタ160は、例えば、光ファイバカプラである。但し、これに限定されるものではなく測定光を温度測定用の光と参照光とに分岐することが可能なものであればよく、例えば光導波路型分波器、半透鏡などを用いてもよい。
【0082】
参照光反射手段170は、スプリッタ160からの参照光を反射する。参照光反射手段170は、例えば参照ミラーにより構成される。参照ミラーとしては例えばコーナーキューブプリズム、平面ミラー等などが適用可能である。これらの中でも、反射光の入射光との平行性の点に鑑みれば、コーナーキューブプリズムを用いることが好ましい。但し、参照光を反射できれば、上記のものに限られず、例えばディレーライン(後述するピエゾチューブ型ディレーライン等の光路変化手段と同様)などで構成してもよい。
【0083】
光路長変化手段180は、参照光反射手段170を参照光の入射方向に平行な一方向へ駆動するモータなどの駆動手段により構成される。このように、参照ミラーを一方向へ駆動させることにより、参照ミラーから反射する参照光の光路長を変化させることができる。この光路長変化手段180が備える駆動手段は、信号処理装置150により制御される。
【0084】
参照光反射手段170を駆動する駆動手段としては、例えば参照光の入射方向と平行な方向(
図21における矢印方向)に駆動させるステッピングモータにより構成することが好ましい。ステッピングモータを用いれば、モータの駆動パルスにより参照光反射手段170の移動距離を容易に検出することができる。
【0085】
但し、光路長変化手段180としては、参照光反射手段170から反射する光の光路長を変化させることができれば、上記モータに限られることはなく、例えばボイスコイルモータを用いたボイスコイルモータ型ディレーラインの他、ピエゾチューブ型ディレーライン、直動ステージ型ディレーライン、積層ピエゾ型ディレーラインなどで光路長変化手段を構成してもよい。
【0086】
この第3の実施形態に係る温度測定装置300では、参照光反射手段170を備えるようにしたので、信号処理装置150で検出される干渉波形のピークが大きくなり、干渉波形のピークを容易に検出することができる。その他の効果は、第1の実施形態に係る温度測定装置100と同様である。
【0087】
なお、スプリッタ160によって分けられた参照光の光路に、光減衰手段としてアッテネータを設けるように構成してもよい。このアッテネータは、参照光の反射光の強度を、第1〜第n測定光の反射光の強度に近づけるように、参照光を減衰させるためのものである。減衰率としては、通過する光のレベルを、例えば(1/n)
1/2程度に減衰させるものが好適に使用できる。
【0088】
このようなアッテネータを具備した場合、参照光の反射光のレベルと、測定光の反射光のレベルとの差が、測定対象物である半導体ウエハWの反射率の差のみとなり、実質的にスプリッタ160が無い場合、つまり、1点計測の場合と同じとすることができ、S/N比の低下を抑制することができる。
【0089】
(第3の実施形態の変形例)
図22は、第3の実施形態の変形例に係る温度測定装置300Aの構成図である。この第3の実施形態の変形例に係る温度測定装置300Aでは、光源として多波長光源ではなく、単波長光源110Aを使用する点、光サーキュレータ120を備えていない点、及び信号処理装置150Cが分波器151とマルチプレクサ152を備えていない点が、第3の実施形態に係る温度測定装置300と異なる。
【0090】
光サーキュレータ120、分波器151及びマルチプレクサ152を備えていないのは、光源として単波長光源110Aを使用しているため、単波長光源110Aからの光を分波する必要がないからである。その他の構成は、第3の実施形態に係る温度測定装置300と同一であり、同一の構成に同一の符号を付している。
【0091】
以上のように、この第3の実施形態の変形例に係る温度測定装置300Aは、光源として単波長光源110Aを使用し、分波器とマルチプレクサを備えていないので簡易な構成で複数の測定ポイントの温度を測定することができる。その他の効果は、第3の実施形態に係る温度測定装置300と同様である。
【0092】
(第4の実施形態)
図23は、第4の実施形態に係る温度測定装置400の構成図である。 第4の実施形態に係る温度測定装置400は、光サーキュレータ120の代わりにスプリッタ160を備えた点、及び参照光反射手段170、光路長変化手段180を備えた点が第2の実施形態に係る温度測定装置200と異なる。その他の構成は、第2の実施形態に係る温度測定装置200又は第3の実施形態に係る温度測定装置300の構成と同一であるため、同一の構成には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0093】
この第4の実施形態に係る温度測定装置400では、参照光反射手段170を備えるようにしたので、信号処理装置150で検出される干渉波形のピークが大きくなり、干渉波形のピークを容易に検出することができる。その他の効果は、第2の実施形態に係る温度測定装置200と同様である。なお、スプリッタ160によって分けられた参照光の光路に、光減衰手段としてアッテネータを設けるように構成してもよいのは、第3の実施形態に係る温度測定装置300と同様である。
【0094】
(第4の実施形態の変形例)
図24は、第4の実施形態の変形例に係る温度測定装置400Aの構成図である。この第4の実施形態の変形例に係る温度測定装置400Aでは、光源として多波長CW光源110Bではなく、単波長CW光源110Cを使用する点、及び、信号処理装置150Cが分波器151とマルチプレクサ152を備えていない点が、第4の実施形態に係る温度測定装置400と異なる。
【0095】
分波器151とマルチプレクサ152を備えていないのは、光源として単波長CW光源110Cを使用しているため、単波長CW光源110Cからの光を分波する必要がないからである。その他の構成は、第4の実施形態に係る温度測定装置400と同一であり、同一の構成に同一の符号を付している。
【0096】
以上のように、この第4の実施形態の変形例に係る温度測定装置400Aは、光源として単波長CW光源110Cを使用し、分波器とマルチプレクサを備えていないので簡易な構成で複数の測定ポイントの温度を測定することができる。その他の効果は、第4の実施形態400に係る温度測定装置400と同様である。
【0097】
(第5の実施形態)
図25は、第5の実施形態に係る温度測定装置500の構成図である。この第5の実施形態に係る温度測定装置500は、光サーキュレータ120と分波器130との間にマルチプレクサ140Aをさらに備えるようにした点が第1の実施形態に係る温度測定装置100と異なる。第5の実施形態に係る温度測定装置500では、光サーキュレータ120と分波器130との間にマルチプレクサ140Aをさらに備えるようにして、複数の処理チャンバをTree状に接続したネットワークを構築することができる。そして、マルチプレクサ140Aから出力される測定光の接続先を順次切り替えることにより、さらに多くの測定ポイントの温度を簡易に測定することができる。なお、光サーキュレータ120と分波器130との間のマルチプレクサ140Aの数は1つに限られず、2以上のマルチプレクサを備えるようにしてもよい。また、この第5の実施形態に係る温度測定装置500の構成は、第2,第3,第4の実施形態に係る温度測定装置200,300,400にも適用可能である。
【0098】
(第5の実施形態の変形例)
図26は、第5の実施形態の変形例に係る温度測定装置500Aの構成図である。この第5の実施形態の変形例に係る温度測定装置500Aは、光サーキュレータ120と各処理チャンバPC
1〜PC
mとの間にマルチプレクサ140Aをさらに備えるようにした点が第1の実施形態の変形例に係る温度測定装置100Aと異なる。第5の実施形態の変形例に係る温度測定装置500Aでは、光サーキュレータ120と光サーキュレータ120と各処理チャンバPC
1〜PC
mとの間にマルチプレクサ140Aをさらに備えるようにして、複数の処理チャンバを接続したネットワークを構築することができる。そして、マルチプレクサ140Aから出力される測定光の接続先を順次切り替えることにより、さらに多くの測定ポイントの温度を簡易に測定することができる。なお、光サーキュレータ120と各処理チャンバPC
1〜PC
mとの間のマルチプレクサ140Aの数は1つに限られず、2以上のマルチプレクサを備えるようにしてもよい。また、この第5の実施形態の変形例に係る温度測定装置500Aの構成は、第2,第3,第4の実施形態の変形例に係る温度測定装置200A,300A,400Aにも適用可能である。
【0099】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、
図27に示すように温度測定対象として、半導体ウエハW以外に、F/R(focus ring)の温度を測定するようにしてもよい。F/Rの温度は、半導体ウエハWのプロセス結果に影響を及ぼすため、F/Rの温度をリアルタイムに測定することは非常に重要である。また、半導体ウエハAを載置するステージの温度や、処理チャンバ自体の温度等を測定するようにしてもよい。
【0100】
また、
図1、15、21、23及び25に示す第1〜第5の実施形態では、多波長光源からの光をm個の波長帯域に分割して、波長帯域毎にn個に分岐しているが、例えば、波長帯域λ
1〜λ
m−1の光をそれぞれn個に分岐し、波長帯域λ
mの光をn−1個に分岐する等、波長帯域λ
1〜λ
m毎に異なる個数に分岐するように構成してもよい。
【0101】
さらに、第1〜第5の実施形態の変形例におけるスプリッタ140もしくはマルチプレクサの代わりに半導体ウエハWに対する第1〜第n測定光の照射をオンオフ可能なシャッタ手段を設けてもよい。シャッタ手段を設けることにより、所望の測定ポイントに測定光を照射して、その測定ポイントのみの温度測定を行うことができる。