特許第5759718号(P5759718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759718
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20150716BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20150716BHJP
【FI】
   H01L21/302 101B
   H05H1/46 M
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-290508(P2010-290508)
(22)【出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-138497(P2012-138497A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 秀敏
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−175163(JP,A)
【文献】 特開2009−239222(JP,A)
【文献】 特開2006−186323(JP,A)
【文献】 特開2010−238980(JP,A)
【文献】 特開2007−048826(JP,A)
【文献】 特開2006−135081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に処理空間を形成する処理チャンバーと、
前記処理チャンバー内に配設され、被処理基板が載置される載置台を兼ねた下部電極と、
前記処理チャンバー内に、前記下部電極と対向するように配設された上部電極と、
前記下部電極に高周波電力を印加するための高周波電源と、
前記上部電極に直流電圧を印加するための直流電源と、
前記処理空間にプラズマ化される処理ガスを供給するための処理ガス供給機構と、
導電性材料から全体形状がリング状に形成され、少なくとも一部が前記処理空間に露出するように前記処理チャンバー内に配設され前記上部電極に印加される直流電圧に対する接地電位を形成するための直流電圧用グランド部材と、
前記直流電圧用グランド部材を上下動させて当該直流電圧用グランド部材の接地状態を調整可能とされた複数の上下動機構と
前記下部電極上に配置された前記被処理基板の周囲を囲むように配設されたフォーカスリングと、
前記フォーカスリングの外周を囲むように配設されたカバーリングと、
を具備し、
前記直流電圧用グランド部材は、前記カバーリングより低い位置で前記下部電極の周囲を囲むように当該下部電極の側面に配置され、上昇時に電気的にフローティング状態、若しくは接地状態をとる
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記直流電圧用グランド部材が、シリコンから形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1記載のプラズマ処理装置であって、
前記直流電圧用グランド部材が、アルミニウムの無垢材から形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記複数の上下動機構が夫々独立に上下動可能とされていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載のプラズマ処理装置であって、
前記直流電圧用グランド部材が、複数の円弧状部材から全体形状がリング状となるように形成され、前記上下動機構が前記円弧状部材毎に配設されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
請求項5記載のプラズマ処理装置であって、
前記直流電圧用グランド部材が、少なくとも4つ以上の前記円弧状部材から構成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造工程においては、処理チャンバー内の載置台に配置した基板(例えば、半導体ウエハ)に、プラズマを作用させて各種の処理、例えば、エッチングや成膜を行うプラズマ処理装置が使用されている。また、このようなプラズマ処理装置として、基板を載置する載置台に対向して処理チャンバーの天井部等に上部電極を配設し、下部電極としての載置台と一対の対向電極を構成した容量結合型のプラズマ処理装置が知られている。
【0003】
上記の容量結合型のプラズマ処理装置としては、上部電極と下部電極との間に印加する高周波電力として、比較的に周波数の高いプラズマ生成用の第1の高周波電力と第1の高周波電力より周波数の低いイオン引き込み用の第2の高周波電力を、下部電極としての載置台に印加する構成のものが知られている。
【0004】
さらに、下部電極に高周波電力を印加するとともに、上部電極に直流電圧を印加するよう構成されたプラズマ処理装置も知られている。また、このように上部電極に直流電圧を印加するプラズマ処理装置において、高周波に対するグランドにセラミックコーティング等がなされている場合、直流電圧に対するグランド(接地電極)を構成するための直流電圧用グランド部材を別に設ける必要がある。このため、直流電圧用グランド部材として、載置台の周囲を囲むように導電性のリング状部材、例えば、シリコン製のリング状部材を、このリング状部材が処理チャンバー内に露出するよう設置することが知られている。さらに、このシリコン製のリング状部材を、複数の円弧状部材を溶融接合等で融着して構成することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−114313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、下部電極に高周波電力を印加するとともに、上部電極に直流電圧を印加するよう構成されたプラズマ処理装置では、直流電圧に対するグランドとして作用する直流電圧用グランド部材が、処理チャンバー内に露出するように設置される。このように構成されたプラズマ処理装置において、本発明者等が詳査したところ、直流電圧用グランド部材としての導電性のリング状部材等の設置状態によって、基板の周方向の処理の均一性が悪化し、処理に偏りが発生する場合があることが判明した。このような導電性のリング状部材の設置状態による処理の偏りは、処理チャンバーを一旦大気開放し、導電性のリング状部材の設置状態を調節して修正しなければならず、その修正に時間と労力を要し、生産性の低下を招くという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、上部電極に印加される直流電圧に対するグランドとなる直流電圧用グランド部材の設置状態による処理の偏りを容易に修正することができ、均一な処理を効率良く実施することのできるプラズマ処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプラズマ処理装置の一態様は、内部に処理空間を形成する処理チャンバーと、前記処理チャンバー内に配設され、被処理基板が載置される載置台を兼ねた下部電極と、前記処理チャンバー内に、前記下部電極と対向するように配設された上部電極と、前記下部電極に高周波電力を印加するための高周波電源と、前記上部電極に直流電圧を印加するための直流電源と、前記処理空間にプラズマ化される処理ガスを供給するための処理ガス供給機構と、導電性材料から全体形状がリング状に形成され、少なくとも一部が前記処理空間に露出するように前記処理チャンバー内に配設され前記上部電極に印加される直流電圧に対する接地電位を形成するための直流電圧用グランド部材と、前記直流電圧用グランド部材を上下動させて当該直流電圧用グランド部材の接地状態を調整可能とされた複数の上下動機構と、前記下部電極上に配置された前記被処理基板の周囲を囲むように配設されたフォーカスリングと、前記フォーカスリングの外周を囲むように配設されたカバーリングと、を具備し、前記直流電圧用グランド部材は、前記カバーリングより低い位置で前記下部電極の周囲を囲むように当該下部電極の側面に配置され、上昇時に電気的にフローティング状態、若しくは接地状態をとることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上部電極に印加される直流電圧に対するグランドとなる直流電圧用グランド部材の設置状態による処理の偏りを容易に修正することができ、均一な処理を効率良く実施することのできるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング装置の概略構成を模式的に示す図。
図2図1のプラズマエッチング装置の要部構成を模式的に示す図。
図3図1のプラズマエッチング装置の要部構成を模式的に示す図。
図4】直流電圧用グランド部材の接地状態が処理の均一性へ与える影響を調べた結果を示すグラフ。
図5】直流電圧用グランド部材の接地状態が処理の均一性へ与える影響を調べた結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るプラズマ処理装置としてのプラズマエッチング装置10の概略構成を示す縦断面図である。
【0012】
プラズマエッチング装置10は、気密に構成され、内部に処理空間PSを形成する処理チャンバー11を有している。この処理チャンバー11は、円筒状とされ、例えば表面に陽極酸化被膜を形成されたアルミニウム等から構成されている。この処理チャンバー11内には、被処理基板である半導体ウエハWを水平に支持する円柱状の載置台12が設けられている。
【0013】
処理チャンバー11の内壁側面は、側壁部材13で覆われ、処理チャンバー11の内壁上面は上壁部材14で覆われている。側壁部材13及び上壁部材14は、例えば、アルミニウムからなり、その処理空間PSに面する面はイットリアや所定の厚さを有する陽極酸化被膜でコーティングされている。処理チャンバー11は電気的に接地されているため、側壁部材13及び上壁部材14の電位は接地電位である。
【0014】
また、載置台12は、導電性材料、例えば、アルミニウムからなる導電体部15と、該導電体部15の側面を覆う、絶縁性材料からなる側面被覆部材16と、側面被覆部材16の上に載置される、石英(Qz)からなるエンクロージャー部材17と、絶縁性材料からなり、導電体部15の下部に位置する載置台基部15aとを有する。
【0015】
処理チャンバー11の内部には、処理チャンバー11の内壁と載置台12の側面との間に、処理空間PS内に導入された処理ガスを、処理チャンバー11の外へ排気する流路として機能する排気流路18が形成されている。この排気流路18には、多数の通気穴を有する板状部材である排気プレート19が配置されている。この排気プレート19によって、排気流路18と、処理チャンバー11の下部空間である排気空間ESとが仕切られている。排気空間ESには粗引き排気管20及び本排気管21が開口しており、粗引き排気管20には図示しないドライポンプが接続され、本排気管21には図示しないターボ分子ポンプが接続されている。これらのドライポンプ及びターボ分子ポンプによって、処理空間PSを所定の圧力の減圧雰囲気に設定可能とされている。
【0016】
一方、処理チャンバー11の側壁には、半導体ウエハWの搬入出口44が設けられている。この搬入出口44には、当該搬入出口44を開閉するゲートバルブ46が設けられている。
【0017】
載置台12の導電体部15には、第1の高周波電源22が第1の整合器23を介して接続されている。第1の高周波電源22は、プラズマ発生用のものであり、比較的高い所定周波数(27MHz以上例えば40MHz)の高周波電力を導電体部15に供給する。なお、第1の整合器23は、導電体部15からの高周波電力の反射を低減して高周波電力の導電体部15への供給効率を高める。
【0018】
また、導電体部15には、さらに第2の高周波電源24が第2の整合器25を介して接続されている。第2の高周波電源24は、イオン引き込み用(バイアス用)のものであり、第1の高周波電源22が供給する高周波電力より低い所定周波数(13.56MHz以下、例えば3.2MHz)の高周波電力を導電体部15に供給する。
【0019】
載置台12の上部には、誘電体内に電極板26を収容した構造の静電チャック27が配設されている。静電チャック27の電極板26には静電チャック用直流電源28が電気的に接続されている。この静電チャック用直流電源28から電極板26に直流電圧が印加されることによって、半導体ウエハWは、クーロン力又はジョンソン・ラーベック力によって静電チャック27の上面に吸着保持されるようになっている。
【0020】
また、載置台12の上部には、載置台12の上面に吸着保持された半導体ウエハWの周りを囲うように環状のフォーカスリング29が配設されている。このフォーカスリング29は、シリコン(Si)、シリカ(SiO)、炭化ケイ素(SiC)などからなる。また、フォーカスリング29の周囲には、フォーカスリング29の側面を保護する、石英からなる環状のカバーリング30が配設されている。
【0021】
載置台12の内部には、例えば、円周方向に延在する環状の冷媒室31が設けられている。この冷媒室31には、チラーユニット(図示せず)から冷媒用配管32を介して所定温度の冷媒、例えば、冷却水やガルデン(登録商標)液が循環供給され、当該冷媒によって載置台12の上面に吸着保持された半導体ウエハWの処理温度が制御される。
【0022】
載置台12の上面の半導体ウエハWが吸着保持される吸着面には、複数の伝熱ガス供給孔33が開口している。これら複数の伝熱ガス供給孔33は、載置台12内部に配置された伝熱ガス供給ライン34を介して図示しない伝熱ガス供給部に接続され、この伝熱ガス供給部は、伝熱ガスとして例えばヘリウム(He)ガスを、伝熱ガス供給孔33を介して吸着面とウエハWの裏面との間隙に供給する。
【0023】
また、載置台12には、載置台12の上面から突出自在なリフトピンとしての複数のプッシャーピン35が配置されている。これらのプッシャーピン35は、半導体ウエハWを吸着面に吸着保持してエッチング処理を施す際には、載置台12内に収容される。そして、半導体ウエハWを載置台12に搬入・搬出する際には、プッシャーピン35は吸着面から突出して半導体ウエハWを載置台12上に支持する。
【0024】
処理チャンバー11の天井部には、載置台12と対向するように上部電極としての機能を有するシャワーヘッド36が配設されている。このシャワーヘッド36と載置台12は、一対の電極(上部電極と下部電極)として機能するようになっている。シャワーヘッド36はバッファ室37が内部に形成された、絶縁性材料からなる円板状のクーリングプレート38と、このクーリングプレート38に支持された上部電極板39と、クーリングプレート38を覆う蓋体40とを備えている。
【0025】
上部電極板39は、処理空間PSにその下面が露出し、導電性材料、例えば、シリコンからなる円板状に形成されている。上部電極板39の周縁部は絶縁性材料からなる環状のシールドリング41によって覆われている。すなわち、上部電極板39は、接地電位である処理チャンバー11の壁部からクーリングプレート38及びシールドリング41によって電気的に絶縁されている。
【0026】
また、上部電極板39は、上部直流電源42と電気的に接続されている。この上部直流電源42から上部電極板39に、負の直流電圧を印加することよって、処理空間PSに直流電圧が印加される。
【0027】
クーリングプレート38のバッファ室37には、処理ガス導入管43が接続されている。この処理ガス導入管43は、図示しない処理ガス供給部に接続されている。また、シャワーヘッド36には、バッファ室37を処理空間PSに連通させる複数の貫通ガス孔48が配設されている。シャワーヘッド36は、処理ガス導入管43からバッファ室37へ供給された処理ガスを、貫通ガス孔48を介して処理空間PSへ供給する。
【0028】
図2にも示すように、処理チャンバー11内には、断面形状がL字状で、全体形状が環状とされた直流電圧用グランド部材としての接地リング45(グランド電極)が配設されている。接地リング45は、導電性材料、例えば、シリコン又はアルミニウムの無垢材からなり、その外側面が、処理空間PSに露出するよう配設されている。この接地リング45は、上部電極板39に印加される直流電圧のグランド電極として機能する。
【0029】
上記接地リング45は、載置台12の側面被覆部材16の下方において載置台基部15aの側面を覆うように配置されている。したがって、少なくとも接地リング45の外側部分は、処理空間PS中の排気流路18部分に露出した状態となっている。この接地リング45には、上部電極板39から放出された電子が到達し、これによって、処理空間PS内に直流電流が流れるようになっている。この接地リング45の詳細な構成については、後述する。
【0030】
上記構成のプラズマエッチング装置10では、処理空間PSに高周波電力を供給することにより、該処理空間PSにおいてシャワーヘッド36から供給された処理ガスから高密度のプラズマを生成し、さらに、処理空間PSの直流電流によって、生成されたプラズマを所望の状態に保ち、該プラズマによってウエハWにエッチング処理を施す。
【0031】
図3に示すように、本実施形態において、接地リング45は、6つの円弧状部材45a〜45fから構成され、全体がリング状となるように構成されている。6つの円弧状部材45a〜45fは、それぞれ等しい大きさとされている。すなわち、1つのリング状部材を6等分したように構成されている。なお、このように、接地リング45を複数の円弧状部材から構成する場合、少なくとも4つ以上とすることが好ましい。
【0032】
図2に示すように、円弧状部材45a〜45fの裏面側には、夫々上下動機構50が配設されている。なお、図2には、各円弧状部材45a〜45fに対応して合計6つ配設された上下動機構50のうちの1つのみが図示されている。
【0033】
上下動機構50の駆動軸の上側端部は、各円弧状部材45a〜45fの裏面に夫々接続されている。そして、この上下動機構50によって、図中矢印で示すように各円弧状部材45a〜45fを夫々独立に上下動させることができるように構成されている。これらの上下動機構50は、円弧状部材45a〜45fを上下動させることによって、円弧状部材45a〜45fの接地電位への接続状態を変更する機能を有している。
【0034】
本実施形態では、円弧状部材45a〜45fは、図2に示すように下降させた状態で排気プレート19と接触し、接地電位に接続された状態となる。そして、上下動機構50によって円弧状部材45a〜45fを上昇させると、接地電位への接続状態が弱くなり、排気プレート19と完全に非接触な状態となるまで上昇させることによって、円弧状部材45a〜45fを電気的にフローティング状態に設定できるようになっている。
【0035】
なお、上記とは逆に、円弧状部材45a〜45fを上昇させた状態で、円弧状部材45a〜45fが接地電位に接続された状態となり、下降させた状態で電気的にフローティング状態となるように構成してもよい。
【0036】
また、上記のように、接地リング45を複数の円弧状部材45a〜45fから構成した場合、各円弧状部材45a〜45fが電気的に接続された状態としてもよい。さらに、上記のように、接地リング45を複数の円弧状部材45a〜45fから構成するのではなく、一体に構成されたリング状の部材から接地リング45を構成してもよい。この場合も、上下動機構50は、周方向に沿って均一な間隔で複数、例えば少なくとも4つ以上配設し、夫々の上下動機構50によって接地リング45の各部の接地電位への接続状態を調節するよう構成する。
【0037】
図4(a)〜図4(c)のグラフは、縦軸をエッチングレート、横軸を半導体ウエハ中心からの距離として、半導体ウエハW上の直交するX軸、Y軸上のエッチングレートを測定した結果と、半導体ウエハWのエッジから3mm中に入った周囲(径方向)のエッチングレートと均一性の値を示している。この際、一体的に構成された接地リング45を使用し、この接地リング45の接地状態を変更することによって、エッチング状態に現れる影響を調査したものである。なお、エッチング処理の条件は、
処理ガス:CF/Ar=50/600sccm
圧力:5.32Pa(40mTorr)
高周波電力:500/2000W
直流電圧:300V
温度(載置台/天井部及び側壁部):20/150℃
ヘリウム圧力(センター/エッジ):1995/5320Pa(15/40Torr)
時間:60秒
である。
【0038】
図4(a)は、接地リング45の裏面側全体に、電気的接続状態を良好にするためのスパイラル状の電気的接続部材を配置した場合であり、図4(b)、図4(c)は、図4(a)に示した場合から、接地リング45の裏面側に絶縁材(カプトン製)を配置して、接地電位への接続状態を変化させた場合を示しており、図4(b)は、右側50%の部位に絶縁材を配置した場合、図4(c)は、全体に絶縁材を配置した場合を示している。図4(b)に示すように、右側50%の部位に絶縁材を配置した場合、絶縁材を配置しない場合に比べてエッチングレートの面内均一性が変化している。また、図4(c)に示すように、接地リング45全体をフローティング状態とすると、エッチングレートの面内均一性が著しく悪化し、現象としてプラズマリークが併発している。したがって、接地リング45の少なくとも一部は、接地電位に接続された状態とすることが好ましい。
【0039】
図5(a)〜図5(c)のグラフは、接地リング45を取り付ける際の取付螺子の締め付けトルクを変化させた場合のエッチング状態に現れる影響を調査した結果と、半導体ウエハWのエッジから3mm中に入った周囲(径方向)のエッチングレートと均一性の値を示すものである。図5(a)は、全ての取付螺子の締め付けトルク6kgfとした場合、図5(b)は、1つの取付螺子のみを締め付けトルク6kgfとし他は締め付け無かった場合、図5(c)は、全ての取付螺子を締め付け無かった場合を示している。
【0040】
これらの図5(a)〜図5(c)のグラフに示されるように、取付螺子の締め付けトルクによっても、エッチングの面内均一性は変化し、全ての取付螺子を締め付け無かった場合、面内均一性は明らかに悪化している。
【0041】
上記のとおり、接地リング45の一部の接地状態を部分的に変更することによって、エッチング処理の周方向の面内均一性が変化することを確認できた。したがって、上記実施形態に係るプラズマエッチング装置10において、接地リング45を構成する円弧状部材45a〜45fの接地状態を、上下動機構50で円弧状部材45a〜45fを上下動させることによって変更し、エッチング処理の周方向の均一性を制御することができる。
【0042】
次に、上記構成のプラズマエッチング装置で、半導体ウエハWに形成された薄膜をプラズマエッチングする手順について説明する。まず、ゲートバルブ46が開かれ、半導体ウエハWが図示しない搬送ロボット等により、図示しないロードロック室を介して搬入出口44から処理チャンバー11内に搬入され、載置台12上に載置される。この後、搬送ロボットを処理チャンバー11外に退避させ、ゲートバルブ46を閉じる。そして、図示しない真空ポンプにより粗引き排気管20及び本排気管21を介して処理チャンバー11内が排気される。
【0043】
処理チャンバー11内が所定の真空度になった後、処理チャンバー11内にはシャワーヘッド36を介して所定の処理ガス(エッチングガス)が導入され、処理チャンバー11内が所定の圧力に保持され、この状態で第1の高周波電源22から載置台12に、周波数が例えば40MHzの高周波電力が供給される。また、第2の高周波電源24からは、イオン引き込みのため、載置台12に周波数が例えば3.2MHzの高周波電力(バイアス用)が供給される。このとき、静電チャック用直流電源28から静電チャック27の電極板26に所定の直流電圧(例えば、プラス2500Vの直流電圧)が印加され、半導体ウエハWはクーロン力又はジョンソン・ラーベック力により静電チャック27に吸着される。
【0044】
上述のようにして下部電極である載置台12に高周波電力が印加されることにより、上部電極であるシャワーヘッド36と下部電極である載置台12との間には電界が形成される。この電界により、半導体ウエハWが存在する処理空間PSには放電が生じ、それによって形成された処理ガスのプラズマにより、半導体ウエハW上に形成された薄膜がエッチング処理される。
【0045】
また、プラズマ処理中に上部直流電源42からシャワーヘッド36に直流電圧を印加することができるので次のような効果がある。すなわち、プロセスによっては、高い電子密度でかつ低いイオンエネルギーであるプラズマが要求される場合がある。このような場合に直流電圧を用いれば、半導体ウエハWに打ち込まれるイオンエネルギーが抑えられつつプラズマの電子密度が増加されることにより、半導体ウエハWのエッチング対象となる膜のエッチングレートが上昇すると共にエッチング対象の上部に設けられたマスクとなる膜へのスパッタレートが低下して選択性が向上する。
【0046】
この時、シャワーヘッド36に印加される直流電圧に対する接地電極として作用する接地リング45の取り付け状態によって、エッチング処理が周方向において不均一となる場合がある。このような場合、従来は、処理チャンバー11を大気開放して、接地リング45の取り付け状態を調整して処理の不均一性を解消していた。これに対して、本実施形態では、接地リング45を構成する円弧状部材45a〜45fの接地状態を、上下動機構50によって円弧状部材45a〜45fを上下に移動させることによって変更することにより、処理チャンバー11を大気開放することなく、容易に迅速に処理の不均一性を解消することができる。これによって処理効率の大幅な向上を実現することができる。さらに、処理チャンバー11間の処理の偏り(機差)を低減するための制御や、大口径(例えば、450mm)における均一性の制御としても、適用可能である。
【0047】
そして、上記したエッチング処理が終了すると、高周波電力の供給、直流電圧の供給及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWが処理チャンバー11内から搬出される。
【0048】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、上部電極としてのシャワーヘッド36に印加される直流電圧に対するグランドとなる直流電圧用グランド部材としての接地リング45の設置状態による処理の偏りを容易に修正することができ、均一な処理を効率良く実施することができる。なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
W……半導体ウエハ、10……プラズマエッチング装置、11……処理チャンバー、12……載置台(下部電極)、36……シャワーヘッド(上部電極)、42……上部直流電源、45……接地リング、45a〜45f……円弧状部材、50……上下動機構。
図1
図2
図3
図4
図5