(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5759904
(24)【登録日】2015年6月12日
(45)【発行日】2015年8月5日
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの再生方法及び研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20150716BHJP
【FI】
H01L21/304 621D
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-551831(P2011-551831)
(86)(22)【出願日】2011年1月21日
(86)【国際出願番号】JP2011051090
(87)【国際公開番号】WO2011093223
(87)【国際公開日】20110804
【審査請求日】2013年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-17742(P2010-17742)
(32)【優先日】2010年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】森永 均
(72)【発明者】
【氏名】浅井 舞子
【審査官】
岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−138192(JP,A)
【文献】
特開2010−283184(JP,A)
【文献】
特開2009−272418(JP,A)
【文献】
特開2009−094233(JP,A)
【文献】
特開2009−054629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段差を有する半導体ウェーハの表面を平坦化して該ウェーハを再生する方法であって、
前記平坦化が、半導体ウェーハの表面に吸着して同表面の前記段差の底部が研磨中にエッチングされるのを抑制する働きをする段差解消剤を少なくとも含有した研磨用組成物を用いて半導体ウェーハの表面を研磨することにより行われ、
前記段差解消剤は、水溶性高分子及びノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種であり、
前記水溶性高分子は、平均分子量が5,000以上且つ1,000,000以下のポリビニルアルコール、平均分子量が5,000以上且つ2,000,000未満のポリビニルピロリドン、及び平均分子量が100,000以上且つ2,000,000未満のヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記段差解消剤は、オキシアルキレン系重合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記段差解消剤は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記研磨用組成物中の段差解消剤の含有量は0.001〜5g/Lである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記研磨用組成物は塩基性化合物をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基性化合物は、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム又はピペラジンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記研磨用組成物は砥粒をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記研磨用組成物のpHが9.0〜12.0である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記研磨用組成物はpH調整剤をさらに含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記段差は100〜2000nmの大きさである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記段差の大きさの20倍以下の量の研磨取り代で半導体ウェーハの表面を平坦化する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記半導体ウェーハはシリコンウェーハである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記研磨用組成物は第1剤と第2剤を混合することにより調製され、前記第1剤は、段差解消剤、塩基性化合物及び砥粒のうちの少なくとも一つと水とを含有し、前記第2剤は、段差解消剤、塩基性化合物及び砥粒のうち第1剤に含まれていない成分と水とを少なくとも含有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1剤は、塩基性化合物及び砥粒のうちの少なくとも一つと水とを含有し、前記第2剤は、段差解消剤と水とを含有し、前記研磨用組成物の調製は、第1剤と第2剤を同じ研磨装置に別々に供給して当該研磨装置において第1剤と第2剤が混合することにより行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記研磨用組成物は循環して繰り返し使用される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記研磨用組成物を循環して繰り返し使用するに際し、pH調整剤を研磨用組成物に補充して研磨用組成物のpHを9.0〜12.0の範囲内に調整する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記研磨用組成物を循環して繰り返し使用するに際し、段差解消剤、塩基性化合物及び砥粒のうちの少なくとも一つを研磨用組成物に補充する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
段差を有する半導体ウェーハの表面を平坦化して半導体ウェーハを再生する目的のために半導体ウェーハの表面を研磨する用途で使用される研磨用組成物であって、半導体ウェーハの表面に吸着して同表面の前記段差の底部が研磨中にエッチングされるのを抑制する働きをする段差解消剤を少なくとも含有し、
前記段差解消剤は、水溶性高分子及びノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種であり、
前記水溶性高分子は、平均分子量が5,000以上且つ1,000,000以下のポリビニルアルコール、平均分子量が5,000以上且つ2,000,000未満のポリビニルピロリドン、及び平均分子量が100,000以上且つ2,000,000未満のヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする研磨用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みのテストウェーハ、表面に傷のあるウェーハなどの半導体ウェーハを再使用するために行われるウェーハの再生方法、及びその方法で使用される研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、成膜、露光、エッチング、研磨、洗浄などの多数の工程をシリコンウェーハなどの基板となるウェーハに施すことで製造される。半導体デバイスの製造では、これらの各工程の状態をモニタしたり各工程の条件を検討したりするのに、多数のテストウェーハが使用されている。使用済みのテストウェーハは通常、再使用するために再生処理に供される。
【0003】
また半導体デバイス製造工程において、表面に傷がある等の理由で不良品となったウェーハも再生処理に供される場合がある。
使用済みの半導体ウェーハを再生するにあたっては従来、使用済みの半導体ウェーハをエッチングしてその上に存在する膜を除去した後、半導体ウェーハの表面をラッピング及び/又は研削してから化学機械研磨して、あるいは直接、化学機械研磨して平坦化することが行われる(例えば、特許文献1参照)。半導体ウェーハは所定の厚さ以下になるまで繰り返し再生して使用することができる。したがって、一枚の半導体ウェーハを繰り返し再生して使用できる回数を増やすためには、再生時のウェーハの取り代をできるだけ少なくすることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−138192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、より少ない研磨取り代で半導体ウェーハの表面を平坦化して該ウェーハを再生することができる半導体ウェーハの再生方法、及びその方法で使用される研磨用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様では、例えば100〜2000nmの大きさの段差を有する半導体ウェーハの表面を平坦化して半導体ウェーハを再生する方法が提供される。前記平坦化は、半導体ウェーハの表面に吸着して同表面の前記段差の底部が研磨中にエッチングされるのを抑制する働きをする段差解消剤を少なくとも含有した研磨用組成物を用いて半導体ウェーハの表面を研磨することにより行われ
、前記段差解消剤は、水溶性高分子及びノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種であり、前記水溶性高分子は、平均分子量が5,000以上且つ1,000,000以下のポリビニルアルコール、平均分子量が5,000以上且つ2,000,000未満のポリビニルピロリドン、及び平均分子量が100,000以上且つ2,000,000未満のヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも一種である。
【0007】
前記段差解消剤は、半導体表面の段差底部の研磨用組成物によるエッチングを抑制する働きを持つものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリエチレングリコール類、セルロース類などの水溶性高分子、又はカルボン酸型、スルホン酸型、リン酸エステル型などの界面活性剤であり、好ましくはポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールである。
【0008】
前記研磨用組成物は、塩基性化合物、砥粒又はpH調整剤をさらに含有してもよい。好ましい塩基性化合物は、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム又はピペラジンである。
【0009】
本発明の別の態様では、段差を有する半導体ウェーハの表面を平坦化して半導体ウェーハを再生する目的のために半導体ウェーハの表面を研磨する用途で使用される研磨用組成物が提供される。研磨用組成物は、半導体ウェーハの表面に吸着して同表面の前記段差の底部が研磨中にエッチングされるのを抑制する働きをする段差解消剤を少なくとも含有
し、前記段差解消剤は、水溶性高分子及びノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種であり、前記水溶性高分子は、平均分子量が5,000以上且つ1,000,000以下のポリビニルアルコール、平均分子量が5,000以上且つ2,000,000未満のポリビニルピロリドン、及び平均分子量が100,000以上且つ2,000,000未満のヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも一種である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より少ない研磨取り代で半導体ウェーハの表面を平坦化して半導体ウェーハを再生することができる半導体ウェーハの再生方法、及びその方法で使用される研磨用組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
使用済みのテストウェーハを再使用するために行われる本実施形態の半導体ウェーハの再生方法では、使用済みのテストウェーハから半導体ウェーハ上の金属膜や絶縁膜などの膜を除去した後、研磨用組成物を用いて半導体ウェーハの表面を化学機械研磨することが行われる。半導体ウェーハ上の膜の除去は、例えば、ドライエッチング又はウエットエッチングにより半導体ウェーハの表面が露出するまで行われる。膜を除去した後の半導体ウェーハの表面は平坦ではなく、例えば100〜2000nmの大きさの段差を有している。この段差は、例えば1000μm以下の幅の凹所が半導体ウェーハの表面に存在することによるものである。段差の原因は、テストウェーハに意図的なエッチングによりパターンが形成されていることによる場合もあれば、意図しない傷の場合もある。上記の化学機械研磨は、膜を除去した後の半導体ウェーハの表面を平坦化する目的、より具体的には同表面の段差の大きさを20nm以下にまで小さくする目的で行われる。
【0012】
半導体ウェーハの再生は、ウェーハ表面上に前記のような原因で形成された段差の大きさを、半導体ウェーハを再使用することができるレベルにまで低減することで完了する。半導体ウェーハを再使用することができるレベルの段差の大きさは、再使用の用途にもよるが、例えば30nm以下であり、好ましくは20nm、さらに好ましくは10nm以下である。再生に必要な取り代は初期の段差の大きさに依存するために特に限定されないが、例えば10000nm以下であり、好ましくは5000nm以下、さらに好ましくは3000nm以下である。
【0013】
ここで使用される研磨用組成物には、半導体ウェーハの表面に吸着して同表面の段差の底部が研磨中にエッチングされるのを抑制する働きをする段差解消剤が少なくとも含まれている。段差解消剤の具体例としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリエチレングリコール類、セルロース類などの水溶性高分子、及びカルボン酸型、スルホン酸型、リン酸エステル型などの界面活性剤が挙げられる。水溶性高分子及び界面活性剤はノニオン性又はアニオン性であることが好ましい。特に好ましい段差解消剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシエチルセルロースである。単一種又は複数種のオキシアルキレン単位を有するオキシアルキレン系重合体もまた段差解消剤として使用可能であり、中でもポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールが好ましく用いられる。
【0014】
これらの水溶性高分子及び界面活性剤のうちのいくつかは、従来、シリコンウェーハの仕上げ用研磨用組成物に用いられることは知られているが、シリコンウェーハのナノメートルオーダーのごく微細な表面粗さの低減や、濡れ性の向上を目的として使用されており、段差解消の目的では使用されていない。また、仕上げ用研磨用組成物を本発明の再生方法において使用すると、シリコンウェーハの研磨レートが著しく低く、段差を解消するまでに長時間の研磨を要するため実用的ではない。一方で、シリコンウェーハの製造工程における一次研磨では高い研磨レートが要求されるため、シリコンウェーハの一次研磨用組成物には研磨レートを低下させる働きを有するこれらの水溶性高分子や界面活性剤は用いられていない。
【0015】
段差解消剤として使用されるポリビニルアルコールの平均分子量は、5,000以上であることが好ましい。平均分子量が大きくなるにつれて、半導体ウェーハ表面の段差の底部が研磨中にエッチングされるのを抑制するポリビニルアルコールの働きは強まる。この点、平均分子量が5,000以上のポリビニルアルコールを使用した場合には、そのようなエッチングを実用上特に好適なレベルにまで抑制することが容易である。
【0016】
段差解消剤として使用されるポリビニルアルコールの平均分子量はまた、1,000,000以下であることが好ましい。使用されるポリビニルアルコールの平均分子量が小さくなるにつれて、研磨用組成物の泡立ちが起こりにくくなるのに加えて、研磨用組成物による半導体ウェーハの研磨速度がポリビニルアルコールの影響で低下するのが抑えられる。この点、平均分子量が1,000,000以下のポリビニルアルコールを使用した場合には、研磨用組成物による半導体ウェーハの研磨速度について実用上特に好適なレベルを得るうえで有利である。
【0017】
同様に、段差解消剤として使用されるポリビニルピロリドンの平均分子量は5,000以上2,000,000未満であることが好ましい。段差解消剤として使用されるヒドロキシエチルセルロースの平均分子量は100,000以上2,000,000未満であることが好ましい。段差解消剤として使用される界面活性剤の分子量は100以上500,000以下であることが好ましい。段差解消剤として使用されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールの平均分子量は300以上50,000未満であることが好ましい。
【0018】
研磨用組成物中の段差解消剤の含有量は、0.001g/L以上であることが好ましい。段差解消剤としてポリビニルアルコールが使用される場合には、研磨用組成物中の段差解消剤の含有量は0.02g/L以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.05g/L以上である。段差解消剤の含有量が多くなるにつれて、半導体ウェーハ表面の段差の底部は研磨中にエッチングを受けにくくなる。この点、段差解消剤の含有量が0.001g/L以上である場合、さらに言えば段差解消剤としてポリビニルアルコールが使用されるときにその含有量が0.02g/L以上又は0.05g/L以上である場合には、半導体ウェーハ表面の段差の底部が研磨中にエッチングされるのを実用上特に好適なレベルにまで抑制することが容易である。
【0019】
研磨用組成物中の段差解消剤の含有量はまた、5g/L以下であることが好ましく、より好ましくは1.5g/L以下である。段差解消剤としてポリビニルアルコールが使用される場合には、研磨用組成物中の段差解消剤の含有量は1.5g/L以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.5g/L以下である。段差解消剤の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物による半導体ウェーハの研磨速度が段差解消剤の影響で低下するのが抑えられる。この点、段差解消剤の含有量が5g/L以下又は1.5g/L以下である場合、さらに言えば段差解消剤としてポリビニルアルコールが使用されるときにその含有量が1.5g/L以下又は0.5g/L以下である場合には、研磨用組成物による半導体ウェーハの研磨速度について実用上特に好適なレベルを得るうえで有利である。
【0020】
研磨用組成物は、半導体ウェーハを化学的に研磨する働きをする塩基性化合物をさらに含有することが好ましい。塩基性化合物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの無機アルカリ化合物、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアミンが挙げられる。中でも好ましい塩基性化合物は、水酸化カリウム、炭酸カリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム又はピペラジンであり、特に好ましいのは、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム又はピペラジンである。
【0021】
研磨用組成物中の塩基性化合物の含有量は、0.1g/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.2g/L以上である。塩基性化合物の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物による半導体ウェーハの研磨速度は向上する。
【0022】
研磨用組成物中の塩基性化合物の含有量はまた、10g/L以下であることが好ましく、より好ましくは8g/L以下である。塩基性化合物の含有量が少なくなるにつれて、塩基性化合物による半導体ウェーハ表面のエッチングを容易にコントロールすることができる。
【0023】
研磨用組成物は、半導体ウェーハを機械的に研磨する働きをする砥粒をさらに含有することが好ましい。砥粒の具体例としては、特に限定されないが、フュームドシリカやコロイダルシリカのようなシリカが挙げられる。中でも好ましい砥粒はコロイダルシリカである。
【0024】
研磨用組成物中の砥粒の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.3質量%以上である。砥粒の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物による半導体ウェーハの研磨速度は向上する。
【0025】
研磨用組成物中の砥粒の含有量はまた、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下である。砥粒の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物の材料コストが抑えられる。
【0026】
砥粒のBET比表面積から算出される砥粒の平均粒子径は、15nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上である。砥粒の平均粒子径が大きくなるにつれて、研磨用組成物による半導体ウェーハの研磨速度は向上する。
【0027】
砥粒の平均粒子径はまた、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下である。砥粒の平均粒子径が小さくなるにつれて、研磨用組成物を用いて研磨した後の半導体ウェーハの表面粗度を小さくできる。
【0028】
研磨用組成物のpHは、9.0〜12.0であることが好ましく、より好ましくは10.0〜11.0である。研磨用組成物のpHを上記の範囲とした場合、実用上特に好適なレベルの研磨速度を得ることが容易である。所望とするpHを得るためにはpH調整剤を用いてもよい。先に説明した塩基性化合物をpH調整剤として使用することも可能である。
【0029】
本実施形態の再生方法で使用される半導体ウェーハは、半導体デバイスの基板となる半導体ウェーハであれば特に限定されない。半導体としては、シリコン、ゲルマニウム、化合物半導体(GaAs、InAs、GaN)が挙げられるが、中でも化学的にエッチングされやすいシリコンやゲルマニウム、GaAs、特にシリコンが好ましく用いられる。
【0030】
本実施形態の再生方法は、研磨パッドが貼り付けられた研磨定盤を有する一般的な研磨装置を用いて行うことができる。研磨用組成物は、いったん研磨に使用したら使い捨てにするいわゆるかけ流しで使用されてもよいし、あるいは循環して繰り返し使用されてもよい。研磨用組成物を循環使用する方法の一例として、研磨装置から排出される使用済みの研磨用組成物をタンク内に回収し、回収した研磨用組成物を再度研磨装置に供給する方法がある。研磨用組成物を循環使用した場合には、かけ流しで使用した場合に比べて、廃液として処理される使用済みの研磨用組成物の量が減ることにより環境負荷を低減できるのに加え、研磨用組成物の使用量が減ることにより半導体ウェーハの再生にかかるコストを抑えることができる。
【0031】
研磨用組成物を循環使用した場合、研磨用組成物中の段差解消剤の含有量は次第に減少する。研磨用組成物中の段差解消剤の含有量が減少する理由には、バッチ終了時の研磨装置の洗浄による段差解消剤の損失、洗浄水の混入による研磨用組成物の希釈、研磨使用による段差解消剤の消費、研磨装置や研磨パッド、半導体ウェーハに対する段差解消剤の吸着、フィルターによる段差解消剤の捕捉などがある。そのため、研磨用組成物を循環使用する場合には、循環使用中に適宜、段差解消剤を補充して研磨用組成物中の段差解消剤の減少した含有量を回復するようにすることが好ましい。
【0032】
また、研磨用組成物を循環使用する場合には、循環使用中に適宜、pH調整剤を補充して研磨用組成物のpHを所定の範囲内、好ましくは9.0〜12.0、より好ましくは10.0〜11.0の範囲内に保つようにしてもよい。
【0033】
本実施形態によれば以下の利点が得られる。
・ 本実施形態の半導体ウェーハの再生方法では、半導体ウェーハの表面を平坦化して半導体ウェーハを再生するべく半導体ウェーハの表面を研磨するのに、段差解消剤を少なくとも含有した研磨用組成物が用いられる。この場合、半導体ウェーハの表面に吸着して同表面の段差の底部が研磨中にエッチングされるのを抑制する段差抑制剤の働きにより、段差の底部を除いた表面の部分、すなわち段差の上部が研磨により優先的に除去されることになる。そのため、半導体ウェーハの表面を平坦化して半導体ウェーハを再生するのに要する研磨取り代を小さくすることができる。具体的には、研磨前の段差の大きさの20倍以下の量の研磨取り代で半導体ウェーハの表面を平坦化することが可能である。つまり、研磨前の段差(初期段差)の大きさが100nmのときに半導体ウェーハの表面を平坦化するのに要する研磨取り代は2000nm以下であり、研磨前の段差の大きさが2000nmのときに要する研磨取り代は40000nm以下である。
【0034】
前記実施形態は次のように変更されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、二種類以上の段差解消剤を含有してもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、二種類以上の塩基性化合物を含有してもよい。
【0035】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、二種類以上の砥粒を含有してもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、少なくとも一種類のキレート剤をさらに含有してもよい。キレート剤を含有する場合、半導体ウェーハの金属汚染を抑制することができる。キレート剤の具体例としては、アミノカルボン酸系キレート剤及び有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸及びトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤には、2−アミノエチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン−1,1,−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2−ジカルボン酸、1−ホスホノブタン−2,3,4−トリカルボン酸及びα−メチルホスホノコハク酸が含まれる。中でも好ましいキレート剤は、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)又はジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)であり、特に好ましいのは、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)又はトリエチレンテトラミン六酢酸である。
【0036】
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、研磨用組成物の原液を水で希釈することにより調製されてもよい。
・ 前記実施形態の研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。例えば、研磨用組成物は、段差解消剤、塩基性化合物及び砥粒のうちの少なくとも一つと水とを含有した第1剤と、段差解消剤、塩基性化合物及び砥粒のうち第1剤に含まれていない成分と水とを少なくとも含有した第2剤を混合することにより調製されてもよい。より具体的には、研磨用組成物は、段差解消剤、塩基性化合物及び水を含有した第1剤と、砥粒及び水を含有した第2剤を混合することにより調製されてもよい。あるいは、塩基性化合物及び砥粒のうちの少なくとも一つと水とを含有した第1剤と、段差解消剤と水とを含有した第2剤を混合することにより研磨用組成物を調製してもよい。研磨用組成物の調製は、第1剤と第2剤を同じ研磨装置に別々に供給して研磨装置において第1剤と第2剤が混合することにより行われてもよい。
【0037】
・ 研磨用組成物を循環して繰り返し使用する場合には、段差解消剤に代えて又は段差解消剤に加えて、研磨用組成物中の段差解消剤以外の成分、例えば、塩基性化合物、砥粒、pH調整剤及びキレート剤のうちの少なくとも一つを循環使用中の研磨用組成物に適宜補充して、研磨用組成物中のそれらの成分の減少した含有量を回復するようにしてもよい。研磨用組成物中に含まれる成分のうちの複数を補充する場合、それら複数の成分の補充は別々に行われてもよいし、それら複数の成分を任意の比率で混合した混合物の形で補充は行われてもよい。すなわち、循環使用中の研磨用組成物に対し段差解消剤とpH調整剤の混合物を適宜添加することにより、研磨用組成物中の段差解消剤の減少した含有量の回復と同時に研磨用組成物のpHを所定の範囲内に保つようにしてもよい。また、循環使用中の研磨用組成物に対する研磨用組成物中の一又は複数の成分の補充は、補充する成分を任意の濃度で含んだ希釈物を研磨用組成物に適宜追加することにより行われてもよい。希釈物中の補充する成分の濃度を高くした場合には、少量の希釈物の添加でも当該成分の補充を十分に行うことができるという利点がある。一方、希釈物中の補充する成分の濃度を低くした場合には、補充すべき当該成分の量に合わせて希釈物の添加量を容易に調整することができるという利点がある。
【0038】
・ 前記実施形態の半導体ウェーハの再生方法は、使用済みのテストウェーハを再使用する目的で行われるに限らず、不良品のプライムウェーハを再使用する目的で行われてもよい。
【0039】
次に、本発明の実施例及び比較例を説明する。
砥粒であるコロイダルシリカ、塩基性化合物及び段差解消剤のすべて又は一部を水に混合して実施例1〜18及び比較例1〜5の研磨用組成物を調製した。研磨用組成物のpHはいずれも10.5に調整した。実施例1〜18及び比較例1〜5の各研磨用組成物中のコロイダルシリカ、塩基性化合物及び段差解消剤の詳細は表1に示すとおりである。表1中に示すコロイダルシリカの平均一次粒子径の値はいずれも、Micromeritics社製の表面積測定装置である商品名FlowSorb II 2300を使って測定した。表1中に示す段差解消剤の平均分子量の値はいずれも重量平均分子量である。表1中の「塩基性化合物」欄における“PIZ”はピペラジンを、“TMAH”は水酸化テトラメチルアンモニウムを、“KOH”は水酸化カリウムを、“K
2CO
3”は炭酸カリウムをそれぞれ表す。表1中の“段差解消剤”欄における“PVA”はポリビニルアルコールを、“HEC”はヒドロキシエチルセルロースを、“POE−POP”はポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールを、“PVP”はポリビニルピロリドンをそれぞれ表す。
【0040】
実施例1〜18及び比較例1〜5の各研磨用組成物を用いて、230nmの大きさの初期段差を有するシリコンウェーハの表面を表2に記載の条件で研磨した。研磨は、ケーエルエー・テンコール社の表面欠陥検出装置である“SP2”を用いて得られる差分干渉コントラスト(DIC)マップでシリコンウェーハの表面に段差を確認することができなくなるまで行った。DICマップでは、20nmを超える大きさの段差のみを確認することができる。つまり、研磨により段差の大きさが20nm以下になると、DICマップでは段差を確認することができなくなる。段差を確認することができなくなるまでに要した研磨取り代及び研磨時間を表1の“評価”欄に示す。
【0042】
【表2】
表1に示すように、段差解消剤を含有する実施例1〜18の研磨用組成物を用いた場合には、段差解消剤を含有しない比較例1〜5の研磨用組成物を用いた場合に比べて少ない研磨取り代でシリコンウェーハの表面を平坦化することができた。