(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る欠陥検査装置の実施形態の一例について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1および
図2で示す欠陥検査装置は、照明光学系101、検出光学系102a〜102f、試料ステージ103および信号処理部104とを有して構成される。
図1は検査装置の平面図(上面図)、
図2は照明光学系101、検出光学系102a、および、試料ステージ103の側面図を示している。
【0021】
照明光学系101はレーザ光源2、ビームエキスパンダ3、偏光素子4、ミラーm、集光レンズ5を有して構成される。レーザ光源2から射出されたレーザビーム200はビームエキスパンダ3でビーム径を所望の大きさに調整され、偏光素子4で所望の偏光状態へ変換され、反射ミラーmを介し、集光レンズ5で試料1の被検査領域に仰角θiで照射される。
【0022】
ここで、レーザ光源2は、波長355nmのレーザビームを発振するレーザ光源であり、照明仰角θiは、試料表面から10度の角度である。また、照明領域20は試料面上で概略楕円形状をしており、長軸方向には概略1000μm、短軸方向には概略20μm程度の大きさである。
【0023】
ビームエキスパンダ3はアナモフィック光学系であり、複数のプリズムから構成される。光軸に互いに垂直な平面内における一方向のみに関してビーム径を変化させ、集光レンズ5を使って試料1にスポット照明、または線状照明を行う。
【0024】
検出光学系102a〜102fは、複数の異なる方位角方向φに配置され、試料上の照明領域20より発生する散乱光を検出する。検出光学系102a〜102fは方位角方向に関して、概略60度間隔で配置されており、検出光学系102a〜102fの配置方位角φは、それぞれ30・90・150・210・270・330度である。
【0025】
検出光学系102aは試料表面に対して仰角θsの方向に配置されている。検出仰角θsは試料表面から30度の角度であり、開口数は0.3である。検出光学系102b〜102fに関しても同様であり、それぞれ試料表面から30度の検出仰角に配置され、開口数は0.3である。
【0026】
検出光学系102a〜102fは概略同様の構成をしており、詳細に示したものを
図3に示す。検出光学系102a〜102fは対物レンズ10、偏光素子11、結像レンズ12、ラインセンサ(検出器)13を有して構成される。対物レンズ10の光学倍率は0.1倍の縮小系である。
【0027】
偏光素子11は例えば偏光フィルタやPBS(Polarized Beam Splitter:偏光ビームスプリッタ)などであり、偏光検出することにより試料表面の微小凹凸から発生する散乱光(「ラフネス散乱光」と表記する。)を低減させ、より微細な欠陥を検出可能とする。また偏光素子11は検出光学系の光軸を中心に回転可能であり、また抜き差しも可能である。偏光フィルタはシグマ光機社のNSPFU−30C、PBSはシグマ光機社PBSW−10−350などを使用すればよい。
【0028】
ラインセンサ13は、複数画素の散乱光を検出可能であり、浜松ホトニクス社の25S3923256Qなどを使用すればよい。25S3924−256Qの画素数は256、画素ピッチは25μm、画素の高さは0.5mmである。
【0029】
照明領域20とラインセンサ13は共役な位置関係にあり、照明領域20からの散乱光をラインセンサ13の各画素に結像する。検出光学系102a・102dのラインセンサは照明領域20の長手方向210と概略平行となるように配置すれば、ラインセンサと照明領域20と共役な位置関係となる。検出光学系102bは方位角30度、仰角30度の方向に配置されているため、光学倍率1倍の条件で結像した場合には、
図4のように、光軸に対し30度傾いた像面15に像が形成される。像の傾きを補正し、光軸212に対し概略垂直な面に結像するためには、検出光学系を縮小倍率にすればよい。対物レンズ10は光学倍率0.1の縮小系であるため、像の傾きが補正され、光軸212と概略垂直な像面16に像が形成される。結像レンズ12の倍率により全体の光学倍率は決定され、検出光学系102a〜102fの全体での光学倍率は10倍である。
【0030】
検出光学系102bのラインセンサ13を光軸に垂直な面16内で、かつ試料1に平行な位置に配置した場合には、試料1面上での照明領域20とラインセンサ13の検出範囲17は
図5に示すような位置関係になり、照明領域20の長手方向210とラインセンサの画素が並んでいる方向213のなす角度が30度になる。この状態では照明領域20から発生する散乱光を全て補足できないため、ラインセンサを光軸212を中心に回転させる必要がある。照明領域20の長手方向210とラインセンサの画素が並んでいる方向213のなす角度が30度であるため、それと同じ大きさの30度だけ回転させることにより、照明領域20の長手方向210とラインセンサの画素が並んでいる方向213のなす角度が概略0度になり、照明領域20から発生する散乱光を全て補足し、ラインセンサ上に結像することができる。検出光学系102b・102c・102e・102fに関して、検出方位角によって照明領域20の長手方向210とラインセンサの画素が並んでいる方向213のなす角度が異なる。よって、検出方位角に応じてラインセンサを光軸を中心として回転させ、照明領域20から発生する散乱光を全て補足し、ラインセンサ上に結像させる。
【0031】
図2の試料ステージ103は試料1を保持するチャックおよび高さ制御を行うZステージ(図示せず)、試料を回転させるための回転ステージ6および試料1をR方向に移動させるための併進ステージ7から構成される。試料ステージ103は回転走査および併進走査を行うことによって、照明領域20が試料1の全面をスパイラル状に照明するように走査を行う。ここで、静止時の試料表面の高さをz=0とし、鉛直上方を正の方向と定義する。
【0032】
図1の信号処理部104は、アナログ回路150、A/D変換部151、隣接画素統合部(画素ずれ補正部)152、信号加算・欠陥判定部153、CPU154、マップ出力部155、入力部156を備えて構成される。
【0033】
次に、
図6と
図7を用いて、試料高さ変動により画素ずれが発生する理由の説明を行う。
【0034】
図6は検出光学系102aの配置された検出方位角から見た場合の試料1面上でのラインセンサの検出範囲21aと照明領域20の位置関係を示しており、
図7は検出光学系102bの配置された検出方位角から見た場合の試料1面上でのラインセンサの検出範囲21bと照明領域20の位置関係を示している。ここで、ラインセンサの画素が並んでいる方向をR1方向、画素の高さ方向をR2と定義する。R1とR2は互いに直交の関係である。
【0035】
試料高さ変動が起こっていない場合では、
図6、
図7ともに照明領域20と検出範囲21a・21bの位置関係は同じであり、この状態において初期調整で2つのラインセンサの検出範囲を概略同一の領域に調整しておく。つまり初期調整において、概略同一の領域から発生する散乱光を検出する画素の対応関係は決められており、検査中はその対応関係に従い、散乱光信号を加算すればよい。
【0036】
次に試料高さ変動が起こった場合の説明を行う。試料表面高さがz=0の高さにあった時には、照明領域20とラインセンサ13はピントがあっている状態に調整されているが、試料表面の高さが変動した場合にはピントがずれるため、照明領域20から発生する散乱光のラインセンサへの結像位置が変化する。「h」を任意の定数とする。試料1が高速回転することにより、試料表面の高さがz方向に+h μmだけずれた場合、照明領域20は照明領域20’の位置にずれ、試料表面の高さがz方向に−h μmだけずれた場合、照明領域20は照明領域20’’の位置にずれることを示している。
【0037】
図6の例では照明領域20のずれる方向25は、画素高さ方向であるR2と平行な方向だけであり、この場合には画素ずれは発生しない。一方、
図7の例では、照明領域20のずれる方向26は、R2と平行な方向だけでなくR1と平行な方向にもずれる。照明領域20がR1方向もずれることにより、画素ずれが発生する。画素ずれが発生することにより、初期調整で設定していた、概略同一の領域から発生している散乱光を検出する画素同士の対応関係が崩れ、信号加算による信号増幅の効果が減少することになる。
【0038】
試料高さ変動により発生する照明領域20のずれる方向25・26は検出方位角φによって異なり、また照明領域20のずれる大きさは検出仰角θs、検出方位角φ、試料高さ変動の大きさによって異なることがわかっている。
【0039】
以後、照明領域20のずれる方向をベクトルと考え、R1・R2の2成分に分解した時のR1成分の符号を画素ずれ方向、R1成分の絶対値を画素ずれ大きさと定義する。
図8の場合、照明領域20のずれる方向27を想定した場合、画素ずれ方向は負(−:マイナス)であり、画素ずれ大きさは線分OAの長さとなる。
【0040】
本発明では画素ずれが発生し、概略同一の領域から発生している散乱光を検出している画素同士の対応関係が崩れた場合、下記のようにラインセンサの隣接する画素同士の信号を統合して処理することにより概略同一領域同士の信号を加算可能とする。
【0041】
ラインセンサ13は受光光量に応じた電気信号を発生させ、電気信号はアナログ回路150に導かれる。アナログ回路150で行われる処理に関して以下、説明する。
【0042】
照明領域20から発生する散乱光を検出すると、ラインセンサ13からは
図9のような信号が出力される。試料表面荒れから発生するラフネス散乱光Noはレーザ照射期間中には常に発生しており、低周波なうねりとして検出される(<数kHz)。ラフネス散乱光Noがラインセンサ13に入射し光電変換される時に、ランダムな変動であるショットノイズNoが発生し、これも同時に検出される。一方、欠陥から発生する欠陥散乱光Soは、照明幅20 μmの照明領域20が欠陥の存在する位置を通過する間の短い時間だけ、パルス状に発生するため、ラフネス散乱光と比較して高周波である(>数kHz)。つまり
図9記載の検出信号がアナログ回路150に導かれてきた時に、前記検出信号に対し、ハイパスフィルタ(通過帯域:>数kHz)を適用することで欠陥信号を抽出でき、ローパスフィルタ(通過帯域:<数kHz)を適用することでラフネス散乱光強度(以後これをHaze信号と呼ぶ)を抽出可能となる。
【0043】
以上のことより、ラインセンサ13で検出した欠陥散乱光に基づき発生した電気信号に対してはハイパスフィルタがかけられ、ラインセンサ13で検出したラフネス散乱光に基づき発生した電気信号に対してはローパスフィルタがかけられる。これにより、欠陥信号とHaze信号を分離して処理することが可能になる。
【0044】
上述のフィルタリング処理を行われた信号はA/D変換部151にて数MHz以上のサンプリングピッチでデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された欠陥信号は隣接画素統合部(画素ずれ補正部)152に導かれ、隣接画素の信号統合(画素ずれの補正)が行われる。
【0045】
図10を用いて信号統合の方法を説明する。
図10は、ラインセンサ13の各画素と欠陥散乱光33が結像される画素との位置関係を示している。検出光学系102fに使用されているラインセンサ30、検出光学系102aに使用されているラインセンサ31、検出光学系102bに使用されているラインセンサ32、それぞれの8画素(A〜H)を取り上げて、試料高さ変動が起こっていない時に、全てのラインセンサの画素Cのほぼ中心に欠陥散乱光33が結像されている場合を例に説明する。
【0046】
(1)試料高さ変動が起こっていない、または変動が非常に小さく画素ずれが起こっていない状態では、全てのラインセンサの画素Cの検出信号同士を加算すればよい。
【0047】
(2)+z方向に試料高さ変動が起こったケースにおいて、1画素程度の画素ずれが発生した場合、ラインセンサ31では欠陥散乱光33は画素Cで検出されることに変わりはないが、ラインセンサ30では欠陥散乱光33は画素Bで検出され、ラインセンサ32では画素Dで検出される。つまり、ラインセンサ30の画素B、ラインセンサ31の画素C、ラインセンサ32の画素Dでの検出信号同士を加算すればよい。
【0048】
(3)欠陥散乱光が画素Cのほぼ中心に結像されている状態であれば、各ラインセンサからの出力信号に対し、上記(1)または(2)の処理を並列で行えば、試料高さ変動が起こっても概略同一領域の検出信号を検出できるが、画素の中心以外に結像されるケースも考えられる。また画素ずれの大きさが1画素以下のケースも考えられる。よって
図11のようなケースが想定される。ラインセンサ31では画素ずれは発生しないが、画素の中心以外の場所に欠陥散乱光33が結像されている。画素ずれの大きさが1画素以下であり、ラインセンサ30では画素ずれが発生して画素Bで検出されるが、ラインセンサ32では画素ずれは発生せず、画素Cで検出される。この場合には上記(1)(2)の処理だけでは概略同一領域の信号同士の加算はできない。
【0049】
(4)(3)のケースでは、隣接する画素の検出信号を統合処理すればよい。ラインセンサ30では画素BとCの検出信号を統合し、2画素分の検出信号を1つの検出信号として処理する。ラインセンサ32では画素CとDの検出信号を統合して処理する。ラインセンサ31では画素BとCとDの検出信号を統合して処理する。ただし、画素BとDの検出信号には0.5の重みを乗算して統合する。このように隣接画素の信号を統合して処理することにより、(1)乃至(3)全てのケースにおいてが概略同一領域の散乱光を加算可能となる。
【0050】
(5)画素ずれの大きさが2画素以上のケースも考えられ、その場合には統合する画素の組合せを変更すればよい。ラインセンサ30では画素AとBの検出信号を統合し、ラインセンサ32では画素DとEの検出信号を統合する。ラインセンサ31では(4)と同様の統合を行えばよい。以上のように画素ずれの大きさに応じて統合する画素の組合せが変化するため、検査装置の性能より発生しうる試料高さ変動の大きさを把握して、予め画素ずれの変動量のパターンを準備しておく、またはセンサで試料高さ変動の大きさを実測することにより、画素ずれの変動量を決定し、それらを並列して計算することで画素ずれの影響を回避することが可能になる。予め画素ずれの変動量のパターンを準備する場合には、各パターンについてそれぞれ検出信号を統合処理し、例えば最もSNの高いパターンを選択する等することで、最適な画素ずれ量を決定することができる。
【0051】
(6)(1)〜(5)の項目は、+z方向に試料高さが変動したケースで説明を行ったが、試料が−z方向に高さ変動するケースも起こる。この場合には画素ずれが逆の方向に発生するため、統合する画素の組合せを変更すればよい。例えば、試料が−z方向に高さ変動し、1画素程度の画素ずれが発生した場合、ラインセンサ30では画素CとDを、ラインセンサ32では画素BとCの検出信号を統合すればよい。ラインセンサ31の処理は(4)と同様で構わない。
【0052】
(7)以上のように、複数の組合せで統合処理を行い、それぞれに対し、閾値処理を行い、欠陥が検出されたケースの信号のみを採用すればよい。
【0053】
(8)上記(1)〜(7)では欠陥信号に対してのみ説明を行ったが、Haze信号に対しても同様の処理が行われる。また、3つの検出信号の例で説明を行ったが、全ての検出器の信号に対して、上記処理は行われる。
【0054】
統合処理された信号は、信号加算・欠陥判定部153に導かれ、同一座標同士の信号が加算され、加算信号に基づき閾値処理による欠陥判定・欠陥分類・欠陥寸法算出、およびレベル判定によるHaze処理が行われる。
【0055】
そしてCPU154を介して、マップ出力部155で
図12記載の欠陥マップ160およびHazeマップ161を表示する。欠陥マップ160は検査時に取り込んだ欠陥種・欠陥サイズ・検出座標を基に表示され、Hazeマップ161は検査時に取り込んだHaze信号レベル・検出座標を基に表示される。また入力部156にはユーザインターフェースを含み、ユーザがレシピ設定などを行う。
【0056】
複数の方位角に検出光学系が存在することの利点として、信号加算による信号増幅効果を大きくする以外にも、使用する検出光学系を選択、または各検出光学系における検出信号に重み付けをして使用することにより、欠陥検出感度を向上させることができる点がある。ラフネス散乱光は、試料表面の粗さ状態に依存して、方位角依存性が存在する。例えば、Siのように表面粗さが非常にスムースな試料では、レーザビーム200が入射してきた方向、つまり検出光学系102e・102fが存在する方位角方向にラフネス散乱光が強く発生する傾向があり、Alデポ膜のように表面粗さが大きい試料では、レーザビーム200が進行していく方向、つまり検出光学系102b・102cが存在する方位角方向にラフネス散乱光が強く発生する性質がある。ラフネス散乱光が弱く発生する方位角に存在する欠陥検出光学系で検出された検出信号のみを用いる、またはラフネス散乱光の大きさに応じた重みをゲインとして検出信号に乗算して、処理することにより、欠陥検出感度を向上させることが可能となる。
【0057】
図1では照明の長手方向210と平行な方向からレーザ照明を行っているが、照明の長手方向210とレーザを照射する方向は概略同じである必要はなく、異なる方位角方向から照明を行っても構わない。異なる方向から照明する利点として、スクラッチなど欠陥形状に方向性を有する欠陥の分類性能を向上させることができる点がある。COPなど、方位角方向に対して概略対称である欠陥から発生する散乱光には方位角依存性が存在せず、全方位角方向に概略均等に発生する傾向がある。一方、スクラッチなどのように方位角方向に対して対象でない欠陥から発生する散乱光には方位角依存性が存在する。またスクラッチからの散乱光の方位角特性は照明の入射する方位角にも依存するため、照明方向を能動的に変化させ、各方位角方向に存在する検出系の信号を比較することで、欠陥分類精度や寸法算出精度を向上させることが可能となる。
【0058】
図13は
図1に示す実施例の側面図の一例である。
図13では低い仰角θiから照明を行う斜方照明光学系101、低い仰角方向θsで散乱光検出を行う低角度検出光学系102g、前記低角度検出光学系よりも高い仰角から検出を行う検出光学系102hが存在している。
【0059】
斜方照明光学系101の照明仰角θiは試料表面から10度である。斜方照明光学系に関して、試料に対し概略垂直方向から照明を行う垂直照明光学系が存在しても構わない(図示せず)。
【0060】
低角度検出光学系102gの配置される仰角は30度であり、高角度検出光学系102hの配置される仰角は60度である。また開口数は低角度検出光学系102g、高角度検出光学系102hともに0.3である。
【0061】
検出信号はアナログ回路150に入力され、ハイパスフィルタとローパスフィルタにより欠陥信号とHaze信号に分離され、A/D変換部151にて数MHz以上のサンプリングピッチでデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された信号は隣接画素統合部(画素ずれ補正部)152に導かれ、設定された複数の画素ずれの変動量の組合せ(パターン)に基づきそれぞれ補正され、複数の補正結果について閾値処理等を行い、例えば最もS/Nの高い結果を得たパターンを選択する。選択したパターンの画素ずれの変動量(画素ずれ量)に基づき検出信号を統合し、統合された信号は信号加算・欠陥判定部153において、同一座標同士の信号が加算され、該加算信号に基づき閾値処理による欠陥判定・欠陥分類・欠陥サイジング、およびレベル判定によるHaze処理が行われる。そしてCPU154を介して、マップ出力部155で
図12記載の欠陥マップ160およびHazeマップ161を表示する。欠陥マップ160は検査時に取り込んだ欠陥信号と座標を基に表示され、Hazeマップ161は検査時に取り込んだHaze信号と座標を基に表示される。また入力部156にはユーザインターフェースを含み、ユーザがレシピ設定などを行う。
【0062】
以上、異なる仰角方向に照明光学系および検出光学系が存在する実施例を説明したが、利点として、次の2点が存在する。
【0063】
試料上に付着するパーティクルに対しては、斜方照明光学系で照明を行った場合は、垂直照明光学系よりもパーティクルに対する散乱断面積を大きくすることができるため、パーティクルから発生する散乱光量が大きくなり、より微細化欠陥まで検出することが可能になる。また数十nmの大きさの欠陥からの散乱光は低仰角側に強く散乱し、百nm以上の大きさの欠陥からの散乱光は高仰角側に強く散乱するため、微細な欠陥は低仰角検出光学系で検出し、比較的大きな欠陥は高仰角検出光学系で検出することで、検出可能な欠陥サイズのレンジを大きくすることが可能となる。
【0064】
一方、COPやスクラッチのような試料に対する凹み欠陥には、垂直照明光学系で照明を行った方が、散乱断面積が大きくなるため、凹み欠陥に対する感度を向上させることが可能となる。また凹み欠陥からの散乱光は高仰角側に強く散乱するため、高仰角検出光学系を用いることで、さらに検出感度を向上させることが可能となる。
【0065】
上記説明のように、欠陥の種類(パーティクル、COP、スクラッチなど)や大きさに応じて、欠陥から発生する散乱光の強度分布や仰角特性が変化するため、照明方向・検出方向毎の信号を組み合わせて比較することで、欠陥分類精度や欠陥寸法算出精度を向上させることが可能となる。
【0066】
複数方位角、複数仰角方向にある各検出器信号の処理方法に関して、各検出信に対して加算、または平均化処理が行われる。加算することにより、検出光量が大きくなるため、検出感度向上に効果があり、平均化することにより、センサのダイナミックレンジ内で検出可能なサイズの幅が増えることになり、ダイナミックレンジ拡大に効果がある。
【0067】
次に、欠陥検出処理フローについて、
図14を用いて説明する。
【0068】
まずはステージに試料1をセットし、検査レシピを設定する(ステップ170)。検査を開始し(ステップ171)、欠陥信号・Haze信号を検出する(ステップ172)。各検出器の信号に対して、隣接する画素同士の信号に対して統合処理を行う(ステップ173)。ここでは、予め定めた複数の画素ずれ量のパターンについて検出信号をそれぞれ補正し、複数の補正結果を閾値判別して、例えば最もS/Nの高い補正結果となったパターンを画素ずれ量として決定する。信号加算・欠陥判定部153において、同一座標同士の信号を加算する(ステップ174)。加算した信号に基づき、欠陥判定・欠陥分類・寸法算出・Haze処理を行い(ステップ175)、欠陥マップとHazeマップを表示する(ステップ176)。
【0069】
レーザ光源2は355nmの波長を発振する光源で説明を行ったが、可視、紫外、または真空紫外のレーザビームを発振するレーザ光源でも構わない。
【0070】
照明領域20は試料面上で概略楕円形状をしており、長軸方向には概略1000μm、短軸方向には概略20μm程度の大きさである例で説明を行ったが、楕円形状である必要はなく、また大きさに関しても制限はない。
【0071】
図1では異なる方位角方向φに6つの検出光学系が存在する実施例を説明したが、検出光学系の数は6つに制限される必要はない。また検出方位角φ、検出仰角θsに関しても制限はない。
【0072】
対物レンズ10は倍率0.1倍の光学倍率の例で説明を行ったが、倍率に制限はない。また検出光学系102a〜102fの全体としての光学倍率10倍の例で説明を行ったが、これに関しても制限はない。
【0073】
検出光学系102a〜102fの開口数に関しても、全ての検出光学系において概略同じである必要はなく、また全てが異なっている必要もない。
【0074】
照明光学系101に関して、エキスパンダ3と集光レンズ5を組み合わせて照明を行う例で説明を行ったが、シリンドリカルレンズを用いて線状照明を行っても構わない。シリンドリカルレンズ単体を用いた場合はアナモフィック光学系を用いて光軸に互いに垂直な平面内における一方向のみにビーム径を変化させずとも、試料上に線状照明を行うことが可能となるため、ビームエキスパンダ3を省略可能となり、光学系のスリム化が図れる点で有効である。
【0075】
ラインセンサ13は散乱光を受光し光電変換するために用いられるものであり、マルチアノード光電子増倍管、TVカメラ、CCDカメラ、フォトダイオードやリニアセンサ、あるいはイメージインテンシファイアをこれらと組み合わせた高感度なイメージセンサなどを使用しても構わない。例えば二次元センサを用いることで、広い領域を一度に検査することが可能となる。
【0076】
ラインセンサは256画素、画素サイズ25μmで説明を行ったが、画素数・画素サイズともに制限はない。
【0077】
低角度検出光学系102g・高角度検出光学系102hは異なる方位角方向φにも複数存在し、それらの配置される仰角は全て概略同じである必要はなく、また全てが異なっている必要もない。
【0078】
低角度検出光学系102g・高角度検出光学系102hの開口数に関しても、全ての検出光学系において概略同じである必要はなく、また全てが異なっている必要もない。
【0079】
本発明の第二の実施形態を
図15で説明する。
図15は、照明光学系101、検出光学系102、試料ステージ103、信号処理部104、正反射光観察光学系105を有して構成される。照明光学系101はレーザ光源2、ビームエキスパンダ3、偏光素子4、集光レンズ5より構成される。レーザ光源2から射出されたレーザビーム200はビームエキスパンダ3でビーム径を所望の大きさに調整され、偏光素子4で所望の偏光状態へ変換され、反射ミラーmを介し、集光レンズ5で試料1の被検査領域に照明を行う。
【0080】
ここで、レーザ光源2は、可視、紫外または真空紫外のレーザビームを発振するレーザ光源を用いればよい。斜方照明光学系101の照明仰角θiはウエハ表面から10度である。
【0081】
ビームエキスパンダ3はアナモフィック光学系であり、複数のプリズムから構成される。光軸に互いに垂直な平面内における一方向のみに関してビーム径を変化させ、集光レンズ5を使ってウエハ1にスポット照明、または線状照明を行う。
【0082】
検出光学系102の詳細構成は
図3に示すものと概略同じであり、対物レンズ10、偏光素子11、結像レンズ12、ラインセンサ13より構成され、照明領域20から発生する散乱光をラインセンサ13の各画素に結像する。
【0083】
検出光学系102は仰角θsの方向に配置されている。検出仰角θsはウエハ表面から30度の角度で検出を行い、開口数は0.3である。
【0084】
試料ステージ103は試料1を保持するチャックおよび高さ制御を行うZステージ(図示せず)、試料を回転させるための回転ステージ6および試料1をR方向に移動させるための併進ステージ7から構成される。該試料ステージは回転走査および併進走査を行うことによって、照明領域20が試料1の全面をスパイラル状に照明するように走査を行う。
【0085】
信号処理部104は、アナログ回路150、A/D変換部151、画素ずれ検出部157、座標補正部158、信号加算・欠陥判定部159、CPU154、マップ出力部155、入力部156を有して構成される。
【0086】
ラインセンサ13は受光光量に応じた電気信号を発生させ、該電気信号はアナログ回路150に導かれる。アナログ回路150ではハイパスフィルタ、またはローパスフィルタにより欠陥信号とHaze信号に分離され、A/D変換部151にて数MHz以上のサンプリングピッチでデジタル信号に変換される。
【0087】
正反射光観察光学系105は正反射光201の進行方向に配置され、集光レンズ5とPSD(センサ)52(Position Sensitive Detector)を有して構成される。PSD(センサ)52としては、浜松ホトニクス社のS3932などを使えばよい。
【0088】
第二の実施例においては、正反射光観察光学系105を用いて正反射光201の位置ずれ大きさ・方向を検出することにより試料高さ変動を検出し、画素ずれ検出部157で試料高さ変動の大きさ・方向に基づき画素ずれの大きさ・方向を算出し、座標補正部158で座標補正を行うことを特徴とする。
【0089】
図16は
図15においてレーザビーム200が仰角θiで試料1に入射し、その正反射光201がPSD(センサ)52に入射している領域側面の拡大図である。
図16では試料表面高さがz=−h μmだけ変動した場合を示している。
図16のように試料の高さが変動すると、PSD(センサ)52に入射する正反射光の位置が変化する。PSD(センサ)52からは入射した位置に応じて電気信号が出力されるため、試料表面高さがz=0の位置にあった時の正反射光201の入射位置を基準として、試料高さ変動により正反射光の入射した位置がどれだけずれたのか検出することが可能である。PSD(センサ)52から出力される正反射光検出位置のずれの大きさをXとすれば、X=2・h・cosθi ・・・(式1)
の関係がある。
【0090】
正反射光観察光学系105を用いて試料1からの正反射光201の検出位置ずれの大きさXを検出し、(式1)を用いることで、試料高さ変動大きさ:hと上下どちらの方向に変動したのかを算出することが可能になる。
【0091】
画素ずれ検出部157には、上述の正反射光検出観察光学系105より検出された試料高さ変動の大きさと変動の方向が入力される。画素ずれの大きさ・画素ずれの方向は検出光学系の配置される方位角方向φ、仰角方向θs、および試料高さ変動の大きさhの3つを用いて、三角関数より幾何学的に算出することが可能であり、画素ずれの大きさPは、
P=h・sinθs/tanφ ・・・(式2)
となる。
【0092】
画素ずれ検出部157では(式2)に基づき、方位角φ、仰角θs、および試料高さ変動の大きさhのパラメータより、検出光学系毎に画素ずれの大きさと方向を算出し、座標補正信号を生成し、座標補正部158へ出力を行う。
【0093】
座標補正信号の具体例を以下に示す。座標系を(R、θ)の2軸とする。θ=θ
0(任意の定数)において試料高さ変動が発生し、上記手法により「R方向に+5μm」の画素ずれが発生したと検出した場合を考える。この場合の座標補正信号は次のようになる:検出光学系102bの全ての画素の検出信号に対し、θ=θ
0の座標においてR方向の座標を「−5μm」だけ補正する。
【0094】
座標補正部158にはA/D変換部151より欠陥信号とHaze信号が、画素ずれ検出部157より座標補正信号が入力される。欠陥信号とHaze信号は座標補正信号に基づき、信号の座標が補正される。座標補正された信号は、信号加算・欠陥判定部159に導かれる。次に信号加算・欠陥判定部159における処理内容に関して述べる。
【0095】
本発明においては、検出領域をオーバーラップさせ検査し、同一領域からの散乱光信号を加算することでS/Nを向上させることが可能である。このとき、試料が一回転したときに半径方向に移動する距離を送りピッチと呼ぶ。この送りピッチを変えることで検出感度と検査速度を制御することが可能であり、
図17を用いて説明する。
図17は一つの検出系を対象として、試料面上でのラインセンサ13の検出位置を示しており、ここでは8画素のラインセンサを用いた場合を想定している。画素Aが1回転目に検出していた領域に注目する。送りピッチを1画素の大きさにした場合には2回転目には隣の画素Bで概略同一の領域からの散乱光を検出することになる。以後、1回転する毎に画素C→D→E→F→G→Hにおいて概略同一領域からの散乱光を検出することになり、これら概略同一領域の信号を加算することでS/Nを向上させることが可能である。また、
図18のように送りピッチの大きさを8画素にした場合では、単位時間あたりに検査可能な面積を
図17と比較して8倍に増加させることが可能であり、検査速度を短縮することが可能である。しかし、欠陥散乱光が2画素にまたがって検出される場合も発生し(画素割れ)、この場合には検出光量が低下し、S/Nが低下する。送りピッチが画素サイズの整数倍である限り、これを完全に回避することはできない。
【0096】
第二の実施例では、この送りピッチを画素数の整数倍からずらして走査を行い、信号加算・欠陥判定部159において検出領域の共有部分のある画素同士の信号を加算することで、画素割れによるS/N低下を抑制することが可能となる。以下説明を行う。
【0097】
図19では8画素のラインセンサを使用することを想定しており、送りピッチの大きさは8/3画素である。また、試料面でのR方向の画素サイズは、5μmである。
【0098】
1回転目に画素Bで検出している試料面上での領域に着目する。送りピッチが画素サイズの整数倍でないために、検出領域が完全に一致している画素の組合せは存在せず、2回転目には画素DとEで、3回転目には画素GとHにまたがって検出されていることがわかる。この場合、以下のように各画素で検出している領域の信号出力に対して加算処理すればよい。
(a)1回転目の画素Bで検出している領域の出力+2回転目の画素Eで検出している領域の出力+3回転目の画素Hで検出している領域の出力→領域80における検出信号
(b)1回転目の画素Bで検出している領域の出力+2回転目の画素Eで検出している領域の出力+3回転目の画素Gで検出している領域の出力→領域81における検出信号
(c)1回転目の画素Bで検出している領域の出力+2回転目の画素Dで検出している領域の出力+3回転目の画素Gで検出している領域の出力→領域82における検出信号
以後、送りピッチを画素サイズの整数倍からずらして走査し、検出領域の共有部分が存在する画素同士の信号を統合処理することをサブピクセル加算と表記する。
【0099】
サブピクセル加算を行うことで画素割れによるS/N低下を抑制可能である理由を以下に示す。
図19において、2回転目に画素Dと画素Eの間で欠陥散乱光の画素割れが発生するケースを考える。しかし、1回転目には画素Bで欠陥散乱光を補足することができ、3回転目には画素Gで欠陥散乱光を補足することができ、1回転目と3回転目には画素割れを回避することができる。これにより常に画素割れが発生するというケースは回避することができ、S/N低下を抑制することが可能になる。
【0100】
以上のように、サブピクセル加算を検出器毎に行い、次に各検出器の信号に対して、概略同一座標同士の信号の加算処理を行う。これの説明を
図20を用いて行う。
図20は検出光学系102a・102b・102fそれぞれの検出信号に対し、サブピクセル加算(送りピッチは8/3画素の場合)を行った後の概略同一領域の検出信号群を示している。
【0101】
各検出系において試料面上での本来の画素サイズは15μmであるが、サブピクセル加算を行うことにより、画素サイズ以下の分解能の座標精度を得ることができる。送りピッチが8/3画素である場合には、5μmの画素サイズを得ることができる。検出系102a・検出系102b・検出系102fにおいて、領域85の検出信号同士を加算することで、最終的な領域85における検出信号を得ることができる。領域86・87に関しても同様であり、各検出器の信号を加算することで領域86・87での最終的な検出信号を得ることができる。他の領域での検出信号に関しても同様であり、対応する領域同士の信号を加算することで最終的な検出信号を得ることができる。
【0102】
加算信号に基づき閾値処理による欠陥判定・欠陥分類・欠陥寸法算出、およびレベル判定によるHaze処理が行われる。
【0103】
そしてCPU154を介して、マップ出力部155で
図12記載の欠陥マップ160およびHazeマップ161を表示する。欠陥マップ160は検査時に取り込んだ欠陥種・欠陥サイズ・検出座標を基に表示され、Hazeマップ161は検査時に取り込んだHaze信号レベル・検出座標を基に表示される。また入力部156にはユーザインターフェースを含み、ユーザがレシピ設定などを行う。
【0104】
次に、欠陥検出処理フローについて、
図21を用いて説明する。
【0105】
まずはステージに試料1をセットし、検査レシピを設定する(ステップ180)。検査を開始し、欠陥信号・Haze信号を検出する(ステップ181)。正反射光観察光学系105にて正反射光の位置を観察することにより試料高さ変動の大きさ・方向を検出する(ステップ182)。ステップ182において検出した試料高さ変動の大きさ・方向に基づき、画素ずれ検出部157で検出器毎の画素ずれ大きさ・画素ずれ方向を算出する(ステップ183)。ステップ183で算出した信号に基づき、検出器毎の座標補正信号を生成する(ステップ184)。座標補正部158において、座標補正信号に基づき欠陥信号とHaze信号の座標を補正する(ステップ185)。信号加算・欠陥判定部159において検出器毎にサブピクセル加算を行う(ステップ186)。各検出器のサブピクセル加算された信号に対して、同一座標同士の信号を加算する(ステップ187)。加算した信号に基づき、欠陥判定・欠陥分類・寸法算出・Haze処理を行い(ステップ188)、欠陥マップとHazeマップを表示する(ステップ189)。
【0106】
図15では低仰角θiから照明を行う斜方照明と1つの検出光学系のみが存在する例で説明を行ったが、試料に対し概略垂直方向から照明を行う垂直照明光学系が存在しても構わない。
【0107】
検出仰角θsに配置された検出光学系102のみが存在する例で説明を行ったが、複数の仰角方向に複数の検出光学系が配置されていても構わない。また複数存在する検出光学系の仰角の大きさ・開口数の大きさにも制限はない。
【0108】
検出光学系102は
図1に示すように異なる方位角方向φにも複数存在し、それらの配置される仰角は全て概略同じである必要はなく、また全てが異なっている必要もない。また配置される方位角に関しても、同様に制限はない。
【0109】
PSD52は浜松ホトニクス社のS3932の例で説明を行ったが、これも使用するPSDの型番に制限はない。
【0110】
図19では送りピッチが8/3画素である例で説明を行ったが、送りピッチが画素の整数倍以外であれば構わない。また画素数・画素サイズにも制限はない。
【0111】
図20では3つの検出系の例で説明が行ったが、複数存在する全ての検出系に対して、概略同一の領域の検出信号の信号加算が行われる。
【0112】
以上の通り、本発明の実施の形態によれば、隣接する画素の検出信号を統合処理することで画素ずれが発生しても概略同一領域から発生する散乱光を加算可能になる。
【0113】
また、送りピッチを画素の整数倍からずらして走査を行い、試料に照射されたレーザビームの正反射光をモニタリングすることで試料高さ変動の大きさと方向を検出し、その信号に基づき検出信号の座標を補正し、サブピクセル加算を行うことで概略同一の領域から発生した散乱光信号を精度良く加算可能とする。