(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0028】
また本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0029】
<感光性樹脂組成物>
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する重合性化合物と、(C)成分:光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物であって、上記(B)成分が、下記一般式(I)で表される化合物、又は、下記一般式(III)で表される化合物及び下記一般式(IV)で表される化合物のウレタン化反応の反応生成物を含む、感光性樹脂組成物である。
【0031】
一般式(I)及び一般式(II)中、R
1は2価の有機基を示し、R
2は上記一般式(II)で表される基を示す。R
3は水素原子又はメチル基を示し、Xはアルキレン基を示し、nは10〜25の整数を示す。
【0033】
一般式(III)及び一般式(IV)中、R
3、X及びnは、上記一般式(II)中のR
3、X及びnとそれぞれ同義であり、R
1は、一般式(I)中のR
1と同義である。
重合性化合物として上記特定の化合物を含むことで、テント信頼性及び解像性に優れる感光性樹脂組成物を構成することができる。従って、前記感光性樹脂組成物は微細な回路層を有する多層プリント配線板の製造に好適に用いることができ、特にテンティング用として好適に用いることができる。
【0034】
[(B)成分:エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する重合性化合物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(B)成分として、上記一般式(I)で表される化合物、又は、上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物とのウレタン化反応の反応生成物を必須成分として含有する。
【0035】
上記一般式(I)及び一般式(IV)中、R
1は2価の有機基を示す。
R
1で表される2価の有機基としては、炭素原子を含みイソシアヌレート環とアミド基とを連結可能であれば特に制限はない。例えば、炭素数1〜10のアルキレン基及び炭素数6〜10のアリーレン基を挙げることができる。なお、上記炭素数1〜10のアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また一般式(I)及び一般式(IV)における3つのR
1は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0036】
上記炭素数1〜10のアルキレン基として具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2−エチル−ヘキシレン基、ノニレン基及びデシレン基が挙げられる。炭素数6〜10のアリーレン基としてはフェニレン基等が挙げられる。
【0037】
本発明においてR
1は、テント信頼性と解像性の観点から、炭素数2〜10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数3〜8のアルキレン基であることがより好ましい。
【0038】
上記一般式(I)における3つのR
2は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
【0039】
上記一般式(II)及び一般式(III)中、Xはアルキレン基を示す。アルキレン基の炭素数としては特に制限はないが、テント信頼性と解像性の観点から、炭素数2〜7のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがより好ましい。
【0040】
Xにおけるアルキレン基として具体的には例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基及びヘキシレン基が挙げられる。また上記アルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、一般式(II)における10個以上のXは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
さらに、nは10〜25の整数を表わすが、テント信頼性と強度の観点から、15〜25であることが好ましい。
【0041】
上記一般式(I)で表される化合物は、例えば、下記一般式(III)で表される化合物と、下記一般式(IV)で表される化合物とのウレタン化反応によって製造することができる。該反応条件としては、通常のウレタン結合を生成する反応条件であれば特に制限はなく、また適宜触媒等を用いて反応を行なってもよい。
【0043】
R
3、X及びnは、上記一般式(II)中のR
3、X及びnとそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。またR
1は、一般式(I)中のR
1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0044】
一般式(I)で表される化合物は、一般式(IV)で表される化合物の3つのイソシアネート基に、3分子の一般式(III)で表される化合物がそれぞれ付加反応することで生成する化合物である。
上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物には、一般式(I)で表される化合物に加えて、1分子の一般式(IV)で表される化合物に対して、1分子又は2分子の一般式(III)で表される化合物が付加反応して生成する化合物を含んでいてもよい。またこれら以外の反応生成物を含んでいてもよい。
上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物に含まれる一般式(I)で表される化合物の含有率は特に制限されない。テント信頼性と強度の観点から、15質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。
【0045】
上記感光性樹脂組成物において、上記一般式(I)で表される化合物、又は上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物の含有率としては特に制限はない。テント信頼性、硬化膜の機械強度及び柔軟性の観点から、感光性樹脂組成物中において1質量%〜25質量%であることが好ましく、5質量%〜20質量%であることが好ましい。
【0046】
上記感光性樹脂組成物は、(B)成分として、上記一般式(I)で表される化合物、又は上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物として、R
1が炭素数1〜10のアルキレン基であって、Xが炭素数2〜4のアルキレン基であって、nが10〜25である化合物を1質量%〜25質量%含むことが好ましく、上記一般式(I)で表される化合物、又は上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物として、R
1のXが炭素数2〜4のアルキレン基であって、nが15〜25である化合物を5質量%〜20質量%含むことがより好ましい。
【0047】
また、本発明における(B)成分は、必須成分である上記一般式(I)で表される化合物、又は上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物の反応生成物以外のエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」ということがある)を含んでいてもよい。
【0048】
その他の重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を縮合反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸誘導体のフタル酸エステル、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物及びビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。
【0049】
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を縮合反応させて得られる化合物として、例えば、エチレンオキシ基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシ基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシ基の数が2〜14であり、プロピレンオキシ基の数が2〜14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエチレンオキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエチレンオキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエチレンオキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエチレンオキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
上記グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物としては、例えば、ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールAポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート付加物及びビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート付加物を挙げることができる。
【0051】
上記(メタ)アクリル酸のアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
【0052】
上記(メタ)アクリル酸誘導体のフタル酸エステルとしては、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート及びβ−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート等が挙げられる。
【0053】
上記ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物としては、β位にOH基を有する(メタ)アクリル酸誘導体と、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート及びEO、PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、EOはエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキシ基のブロック構造を有する。また、POはプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキシ基のブロック構造を有する。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業(株)製、製品名UA−11等が挙げられる。また、EO、PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業(株)製及び製品名UA−13が挙げられる。
【0054】
上記ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエチレンオキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリプロピレンオキシ)フェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシポリエチレンオキシポリプロピレンオキシ)フェニル)プロパン等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種類以上を組合わせて使用することができる。
【0055】
これらのなかでも、耐薬品性の観点から、ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物及び(メタ)アクリル酸誘導体のフタル酸エステルの少なくとも1種を含むことが好ましく、双方を含むことがより好ましい。
【0056】
上記その他の重合性化合物の含有率としては特に制限はないが、テント信頼性及び解像性の観点から、上記(B)成分の総量100質量%中において50質量%〜90質量%であることが好ましく、60質量%〜80質量%であることが好ましい。
【0057】
また、上記(B)エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する重合性化合物の含有率は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量%中において、20質量%〜60質量%とすることが好ましく、30質量%〜55質量%とすることがより好ましい。この含有率が20質量%以上であることで光感度が高くなる傾向があり、60質量%以下であることで硬化膜の柔軟性がより向上する傾向がある。
【0058】
[(A)成分:バインダーポリマー]
本発明で用いることのできる(A)成分:バインダーポリマーとしては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂及びフェノール系樹脂等が挙げられる。アルカリ現像性の見地からは、アクリル系樹脂が好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
上記(A)バインダーポリマーは、例えば、重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。上記重合性単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン及びα−メチルスチレン等のα−位若しくは芳香族環において置換されている重合可能なスチレン誘導体、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド、アクリロニトリル及びビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモアクリル酸、α−クロルアクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸及びプロピオール酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、下記一般式(V)
【0060】
H
2C=C(R
6)−COOR
7 (V)
【0061】
〔式(V)中、R
6は水素原子又はメチル基を示し、R
7は炭素数1〜12のアルキル基を示す〕で表される化合物、これらの化合物のアルキル基が水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等で置換された化合物などが挙げられる。
上記一般式(V)中のR
7で示される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基及びこれらの構造異性体が挙げられる。
【0062】
上記一般式(V)で表される単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル及び(メタ)アクリル酸ドデシルエステルが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
また本発明における(A)成分であるバインダーポリマーは、アルカリ現像性の見地から、カルボキシ基を含むことが好ましい。カルボキシ基を含むバインダーポリマーは、例えば、カルボキシ基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させることにより製造することができる。
上記カルボキシ基を有する重合性単量体としては、アクリル酸及びメタクリル酸等が挙げられ、メタクリル酸が好ましい。
【0064】
上記(A)バインダーポリマーのカルボキシ基を有する重合性単量体に由来する構造単位の含有率(使用する全重合性単量体に対するカルボキシ基を有する重合性単量体の割合)は、アルカリ現像性とアルカリ耐性のバランスの見地から、12質量%〜50質量%であることが好ましく、12質量%〜40質量%であることがより好ましく、15質量%〜30質量%であることがさらに好ましく、15質量%〜25質量%であることが特に好ましい。
この含有率が12質量%以上であることで、アルカリ現像性が向上する傾向がある。また、50質量%以下であることでアルカリ耐性に優れる傾向がある。
【0065】
さらに本発明における(A)成分であるバインダーポリマーは、可とう性の見地から、スチレン又はスチレン誘導体に由来する構造単位を含むことが好ましい。
上記スチレン又はスチレン誘導体に由来する構造単位の含有率としては特に制限はないが、密着性及び剥離特性を共に良好にする観点から、バインダーポリマー中に、0.1質量%〜30質量%含むことが好ましく、1質量%〜28質量%含むことがより好ましく、1.5質量%〜27質量%含むことが特に好ましい。
この含有率が0.1質量%以上であることで、密着性が向上する傾向がある。また30質量%以下であることで、剥離片が大きくなることを抑制し、剥離時間が長くなることを抑制できる。
【0066】
これらのバインダーポリマーは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。2種類以上を組み合わせて使用する場合のバインダーポリマーとしては、例えば、異なる共重合成分からなる2種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の2種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の2種類以上のバインダーポリマーなどが挙げられる。
【0067】
上記(A)バインダーポリマーの重量平均分子量は、機械強度及びアルカリ現像性のバランスの見地から、20,000〜300,000であることが好ましく、30,000〜150,000であることがより好ましく、40,000〜110,000であることがさらに好ましい。
重量平均分子量が、20,000以上であることで耐現像液性がより向上する傾向がある。また300,000以下であることで現像時間が長くなることを抑制できる。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値である。
【0068】
上記(A)バインダーポリマーの含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量%に対して、30質量%〜80質量%とすることが好ましく、50質量%〜70質量%とすることがより好ましい。
(A)成分の含有量が30質量%以上であることで硬化膜の柔軟性がより向上する。また80質量%以下であることでより良好な光感度を示す傾向がある。
【0069】
[(C)成分:光重合開始剤]
(C)成分である光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン類;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体;クマリン系化合物;オキサゾール系化合物などが挙げられる。
これらは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0070】
また、上記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、互いに同一であって対称な化合物であってもよいし、相違して非対称な化合物であってもよい。
また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。
【0071】
上記感光性樹脂組成物においては、密着性及び感度の見地から、光重合開始剤として2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体の少なくとも1種を含むことが好ましく、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体の少なくとも1種と芳香族ケトン類の少なくとも1種とを含むことがより好ましい。
【0072】
上記(C)光重合開始剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量%に対して、0.01質量%〜20質量%であることが好ましく、0.2質量%〜5質量%であることがより好ましい。
この含有量が0.01質量%以上であることで光感度がより良好になる傾向があり、20質量%以下であることで露光の際に感光性樹脂層の表面での吸収が増大することを抑制して内部の光硬化がより良好となる傾向がある。
【0073】
[その他の成分]
また、上記感光性樹脂組成物には、必要に応じてその他の成分をさらに含むことができる。その他の成分としては、クマリン、ピラゾリン等の増感色素、マラカイトグリーン等の染料、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット等の光発色剤、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤及び熱架橋剤などを挙げることができる。
その他の成分の含有量としては、(A)成分及び(B)成分の総量100質量%に対して各々0.01質量%〜20質量%程度含有することができる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0074】
上記感光性樹脂組成物は、必要に応じて有機溶剤の少なくとも1種を含むことができる。上記有機溶剤としては通常用いられる有機溶剤を特に制限はなく用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤並びにこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0075】
例えば、上記(A)バインダーポリマーと、(B)重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を上記有機溶剤に溶解して固形分30質量%〜60質量%程度の溶液(以下、「塗布液」という)として用いることができる。
尚、固形分とは、上記溶液(感光性樹脂組成物)から揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。
【0076】
上記塗布液は、例えば以下のようにして感光性樹脂層の形成に用いることができる。上記塗布液を後述する支持フィルム、金属板などの支持体の表面上に塗布し、乾燥させることにより、上記感光性樹脂組成物に由来する感光性樹脂層を支持体上に形成することができる。
金属板としては、例えば、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金及び鉄系合金などが挙げられる。
【0077】
形成される感光性樹脂層の厚みは、その用途により異なるが、乾燥後の厚みで1μm〜100μm程度であることが好ましい。感光性樹脂層の支持体に対向する面とは反対側の面(表面)を、保護フィルムで被覆してもよい。保護フィルムとしては、ポリエチレン及び、ポリプロピレン等の重合体フィルムなどが挙げられる。
【0078】
<感光性エレメント>
本発明の感光性エレメントは、支持体と、上記支持体上に形成された上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂層と、を有し、必要に応じて設けられる保護フィルム等のその他の層を有して構成される。
【0079】
[支持体]
上記支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムを用いることができる。
上記支持体(以下、「支持フィルム」ということがある)の厚みは、1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましく、1μm〜30μmであることが更に好ましい。支持体の厚みが1μm以上であることで、支持フィルムを剥離する際に支持フィルムが破れることを抑制できる。また100μm以下であることで解像度の低下が抑制される。
【0080】
[保護フィルム]
上記感光性エレメントは、必要に応じて、感光性樹脂層の支持体に対向する面とは反対側の面(表面)を被覆する保護フィルムをさらに備えてもよい。
【0081】
上記保護フィルムとしては、感光性樹脂層に対する接着力が、支持フィルムの感光性樹脂層に対する接着力よりも小さいものが好ましく、また、低フィッシュアイのフィルムが好ましい。
ここで、「フィッシュアイ」とは、保護フィルムを構成する材料を熱溶融し、混練、押し出し、2軸延伸、キャスティング法等によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものを意味する。すなわち、「低フィッシュアイ」とは、フィルム中の上記異物等が少ないことを意味する。
【0082】
保護フィルムの厚みは、1μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることがより好ましく、5μm〜30μmであることが更に好ましく、15μm〜30μmであることが特に好ましい。保護フィルムの厚みが1μm以上であることで、保護フィルムを剥がしながら、感光性樹脂層及び支持フィルムを基板上にラミネートする際、保護フィルムが破れることを抑制できる。また100μm以下であることで生産性が向上する。
【0083】
[製造方法]
本発明の感光性エレメントは、例えば以下のようにして製造することができる。(A)成分:バインダーポリマーと、(B)成分:重合性化合物と、(C)光重合開始剤と、を上記有機溶剤に溶解した塗布液を準備する工程と、上記塗布液を支持体上に塗布して塗布層を形成する工程と、上記塗布層を乾燥して感光性樹脂層を形成する工程と、を含む製造方法で製造することができる。
【0084】
上記塗布液を構成する(A)成分:バインダーポリマー、(B)成分:重合性化合物、(C)光重合開始剤及び有機溶剤の詳細、並びに塗布液の詳細については既述の通りである。また上記塗布液は市販のものを用いてもよく、また定法により調製してもよい。
上記塗布液の支持体上への塗布は、ロールコータ、コンマコータ、グラビアコータ、エアーナイフコータ、ダイコータ、バーコータ及びスプレーコータ等の公知の方法で行うことができる。
【0085】
また、上記塗布層の乾燥は、塗布層から有機溶剤の少なくとも一部を除去することができれば特に制限はない。例えば、70℃〜150℃、5分〜30分程度で行うことができる。
乾燥後、感光性樹脂層中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止する点から、2質量%以下とすることが好ましい。
【0086】
感光性エレメントにおける感光性樹脂層の厚みは、用途に応じて適宜選択することができる。感光性樹脂層の厚みは、乾燥後の厚みで1μm〜200μmであることが好ましく、5μm〜100μmであることがより好ましく、10μm〜50μmであることが特に好ましい。感光性樹脂層の厚みが1μm以上であることで、工業的な塗工が容易になり、生産性が向上する。200μm以下の場合には、本発明の効果が充分に得られて、光感度が高く、レジスト底部の光硬化性に優れる傾向がある。
【0087】
本発明の感光性エレメントは、必要に応じて、更にクッション層、接着層、光吸収層、又はガスバリア層等の中間層などを有していてもよい。
これらの中間層は、例えば、特開2006−098982号公報等に記載の中間層を本発明においても適用することができる。
【0088】
本発明の感光性エレメントの形態は特に制限されない。例えば、シート状であってもよく、又は巻芯にロール状に巻き取った形状であってもよい。
ロール状に巻き取る場合、支持フィルムが外側になるように巻き取ることが好ましい。
巻芯としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)等のプラスチックなどが挙げられる。
【0089】
このようにして得られたロール状の感光性エレメントの端面には、端面保護の見地から端面セパレータを設置することが好ましく、耐エッジフュージョンの見地から防湿端面セパレータを設置することが好ましい。また、梱包方法としては、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装することが好ましい。
【0090】
本発明の感光性エレメントは、例えば、後述するレジストパターンの製造方法に好適に用いることができる。
【0091】
<レジストパターンの製造方法>
本発明のレジストパターンの製造方法は、(i)回路形成用基板上に上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、(ii)上記感光性樹脂層の少なくとも一部に活性光線を照射して、露光部を光硬化させる露光工程と、(iii)上記感光性樹脂層の未硬化部分を回路形成用基板上から現像により除去する現像工程と、を有し、必要に応じてその他の工程を含んで構成される。
【0092】
(i)感光性樹脂層形成工程
感光性樹脂層形成工程においては、回路形成用基板(以下「基板」と略称する場合がある)上に上記感光性樹脂組成物の塗膜である感光性樹脂層が形成される。回路形成用基板は、通常、絶縁層と絶縁層上に形成された導体層とを備える。感光性樹脂層が接する回路形成用基板の表面は、通常金属面となるが、その材質については特に制限はない。
【0093】
基板上に感光性樹脂層を形成する方法としては、例えば、上記感光性エレメントが保護フィルムを有している場合には、保護フィルムを除去した後、感光性エレメントの感光性樹脂層を、必要に応じて加熱しながら回路形成用基板に圧着することにより行うことができる。これにより、回路形成用基板と感光性樹脂層と支持体とをこの順に備える積層体が得られる。
【0094】
この感光性樹脂層形成工程は、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。圧着の際の加熱は、70℃〜130℃の温度で行うことが好ましい。また圧着は、0.1MPa〜1.0MPa程度(1kgf/cm
2〜10kgf/cm
2程度)の圧力で行うことが好ましいが、これらの条件には必要に応じて適宜選択される。
なお、必要に応じて回路形成用基板の予熱処理を行うこともできる。感光性樹脂層を70℃〜130℃に加熱すれば、予め回路形成用基板を予熱処理することは必須ではないが、回路形成用基板の予熱処理を行うことで密着性及び追従性をさらに向上させることができる。
【0095】
(ii)露光工程
露光工程においては、回路形成用基板上に形成された感光性樹脂層の少なくとも一部に活性光線を照射することで、活性光線が照射された露光部が光硬化して、潜像が形成される。
この際、感光性樹脂層上に存在する支持体(支持フィルム)が活性光線に対して透過性である場合には、支持フィルムを通して活性光線を照射することができる。一方、支持フィルムが活性光線に対して非透過性である場合には、支持フィルムを除去した後に感光性樹脂層に活性光線を照射する。
【0096】
露光方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを介して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。また、LDI(Laser Direct Imaging)露光法や、DLP(Digital Light Processing)露光法などの直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
【0097】
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ及び窒化ガリウム系青紫色レーザ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものを用いてもよい。
【0098】
(iii)現像工程
現像工程においては、上記感光性樹脂層の未硬化部分が回路形成用基板上から現像により除去されることで、上記感光性樹脂層が光硬化した硬化物からなるレジストパターンが回路形成用基板上に形成される。
感光性樹脂層上に支持フィルムが存在している場合には、支持フィルムを除去してから、上記露光部分以外の未露光部分の除去(現像)を行う。現像方法には、ウエット現像とドライ現像とがある。
【0099】
ウエット現像の場合は、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、公知の現像方法により現像する。現像方法としては、ディップ方式、
パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、
スクラッビング、揺動浸漬等を用いた方法が挙げられ、解像度向上の観点からは、高圧スプレー方式が最も適している。これら2種以上の方法を組み合わせて現像を行ってもよい。
【0100】
現像液の構成は上記感光性樹脂組成物の構成に応じて適宜選択される。例えば、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤系現像液等が挙げられる。
【0101】
アルカリ性水溶液は、現像液として用いられる場合、安全且つ安定であり、操作性が良好である。アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。
【0102】
現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1質量%〜5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1質量%〜5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等が好ましい。また、現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光性樹脂層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0103】
上記水系現像液は、例えば、水又はアルカリ性水溶液と1種以上の有機溶剤とからなる現像液である。ここで、アルカリ性水溶液の塩基としては、先に述べた物質以外に、例えば、ホウ砂やメタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2ーアミノ−2−ヒドロキシメチル−1、3−プロパンジオール、1、3−ジアミノプロパノール−2、モルホリン等が挙げられる。水系現像液のpHは、現像が充分に行われる範囲でできるだけ小さくすることが好ましく、pH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。
【0104】
水系現像液に用いる有機溶剤としては、例えば、3−アセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、炭素数1〜4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。水系現像液における有機溶剤の含有率は、通常、2質量%〜90質量%とすることが好ましい。またその温度は、感光性樹脂層の現像性にあわせて調整することができる。水系現像液中には、界面活性剤、消泡剤等を少量混入することもできる。
【0105】
有機溶剤系現像液としては、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶剤は、引火防止のため、1質量%〜20質量%の範囲で水を添加することが好ましい。
【0106】
本発明では、現像工程において未露光部分を除去した後、必要に応じて60℃〜250℃程度の加熱処理又は0.2mJ/cm
2〜10mJ/cm
2程度の露光処理等を行うことによりレジストパターンをさらに硬化する工程を更に含んでもよい。
【0107】
<プリント配線板の製造方法>
本発明のプリント配線板の製造方法は、上記レジストパターンの製造方法によりレジストパターンが形成された回路形成用基板をエッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を含み、必要に応じてレジスト除去工程等のその他の工程を含んで構成される。
【0108】
エッチング処理では、基板上に形成されたレジストパターンをマスクとして、レジストによって被覆されていない回路形成用基板の導体層をエッチング除去し、導体パターンを形成する。
【0109】
エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。例えば、エッチング液としては、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素系エッチング液が挙げられ、エッチファクターが良好な点から塩化第二鉄溶液を用いることが望ましい。
【0110】
一方、めっき処理では、基板上に形成されたレジストパターンをマスクとして、レジストによって被覆されていない回路形成用基板の導体層上に銅及び半田などをめっきする。
めっき処理の後、硬化レジストを除去し、更にこのレジストによって被覆されていた導体層をエッチングして、導体パターンを形成する。
【0111】
めっき処理の方法としては、電解めっき処理であっても、無電解めっき処理であってもよい。めっき処理としては、例えば、硫酸銅めっき及びピロリン酸銅めっき等の銅めっき、ハイスローはんだめっき等のはんだめっき、ワット浴(硫酸ニッケル−塩化ニッケル)めっき及びスルファミン酸ニッケルめっき等のニッケルめっき、ハード金めっき及びソフト金めっき等の金めっきなどが挙げられる。
【0112】
上記エッチング処理及びめっき処理の後、基板上のレジストパターンは除去される。レジストパターンの除去は、例えば、上記現像工程に用いたアルカリ性水溶液よりも更に強アルカリ性の水溶液により行うことができる。この強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1質量%〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1質量%〜10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。なかでも、1質量%〜10質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることが好ましく、1質量%〜5質量%水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いることがより好ましい。
【0113】
レジストパターンの除去方式としては、例えば、浸漬方式及びスプレー方式等が挙げられ、これらを単独で使用してもよいし、併用してもよい。
【0114】
めっき処理を施してからレジストパターンを除去した場合、さらにエッチング処理によってレジストで被覆されていた導体層をエッチングし、導体パターンを形成することで所望のプリント配線板を製造することができる。エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。例えば、上述のエッチング液を適用することができる。
【0115】
本発明のプリント配線板の製造方法は、単層プリント配線板のみならず多層プリント配線板の製造にも適用可能であり、また小径スルーホールを有するプリント配線板等の製造にも適用可能である。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0117】
<実施例1〜4、比較例1〜2>
表1に種類及び配合量(単位:g)を示す各成分を混合して、実施例1〜4及び比較例1〜2にかかる感光性樹脂組成物の溶液を得た。
【0118】
【表1】
【0119】
表1における各成分の略号は以下の通りである。
[A成分]
・(A−1):メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/スチレン(25/50/20/5(質量比)、重量平均分子量=80,000、50質量%メチルセルソルブ/トルエン=6/4(質量比)溶液
・(A−2):メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル(20/55/25(質量比)、重量平均分子量=80,000、50質量%メチルセルソルブ/トルエン=6/4(質量比)溶液
【0120】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより算出した。GPCの条件及び酸価測定手順を以下に示した。
(GPC条件)
ポンプ:日立 L−6000型[株式会社日立製作所製]
カラム:Gelpack GL−R420+Gelpack GL−R430+Gelpack GL−R440(計3本)[以上、日立化成工業株式会社製、製品名]
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI[株式会社日立製作所製、製品名]
【0121】
[B成分]
・BPE−500:2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)[新中村化学工業(株)製]
・FA−MECH:γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート[日立化成工業(株)製]
・サンプルA:上記一般式(I)で表される化合物であって、R
1が−C
6H
12−であり、R
2が一般式(II)においてn=10、Xがエチレン基、及びR
3がメチル基である化合物
・サンプルB:一般式(I)で表される化合物であって、R
1が−C
6H
12−であり、R
2が一般式(II)中においてn=15、Xがエチレン基、及びR
3がメチル基である化合物
・JTX0309:下記一般式(VI)で表される化合物であって、R
51及びR
52が下記一般式(VIIa)で表される基であり、R
53が下記一般式(VIIb)で表される基である化合物(日本サイテックインダストリーズ(株)製、サンプル名:JTX0309)
【0122】
【化6】
【0123】
・UA−21:トリス(メタクリロイルオキシテトラエチレングリコールイソシアネートヘキサメチレン)イソシアヌレート[新中村化学工業(株)製]
【0124】
[C成分]
・B−CIM:2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体 ・EAB:N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン
【0125】
[その他成分]
・MKG:マラカイトグリーン
・LCV:ロイコクリスタルバイオレット
【0126】
上記で得られた感光性樹脂組成物の溶液を、支持フィルムとして16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名G2−16、帝人(株)製)上に均一に塗布し、100℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥して、感光性樹脂層を形成した後、感光性樹脂層上にポリエチレン製保護フィルム(商品名:NF−13、タマポリ(株)製)を貼り付けて保護し、感光性樹脂組成物積層体を得た。感光性樹脂層の乾燥後の膜厚は、40μmであった。
【0127】
次いで、両面に35μm厚の銅箔が設けられた1.6mm厚の銅張積層板((株)アイン製)に、
図1に示すように、直径4、5、6mmの穴径で、それぞれ3つの独立した丸穴41、及び、3つの丸穴が連結し、かつ丸穴の間隔が徐々に短くなる3連穴42をそれぞれの穴径について4個ずつ型抜き機で作製した。丸穴41及び3連穴42を作製した際に生じたバリを#600相当のブラシをもつ研磨機(三啓(株)製)を使用して取り除き、これを穴破れ数測定用基板40とした。
【0128】
得られた穴破れ数測定用基板を80℃に加温し、上記で得られた感光性樹脂組成物積層体から保護フィルムを剥がして、感光性樹脂層がその銅表面に対向するように120℃、0.4MPaでラミネートして、穴破れ数測定用基板上に感光性樹脂層とポリエチレンテレフタレートフィルムとが積層されたものを得た。ラミネート後、穴破れ数測定用基板を冷却し、穴破れ数測定用基板の温度が23℃になった時点でポリエチレンテレフタレートフィルム面にストーファー21段ステップタブレットを密着させ、高圧水銀灯ランプを有する露光機HMW−201B(オーク(株)製)を用いて、8.0段が光硬化する露光量で光硬化させた。
【0129】
(テント信頼性)
露光後、室温で15分間放置し、続いて穴破れ数測定用基板からポリエチレンテレフタレートフィルムをはがし、30℃で1重量%炭酸ナトリウム水溶液を60秒間スプレーすることにより現像した。現像後、3連穴の穴破れ数を測定し、異形テント破れ率を算出して、テント信頼性を評価した。
次いで、丸穴部分を覆う硬化膜について、挿入径1.5mmの円柱を使用し、レオメーター((株)レオテック製)により破断までの強度と伸びを測定した。強度及び伸びの数値が大きいほどテント信頼性が良好である。これらの結果を表2に示す。
【0130】
(解像性)
また解像性を以下のようにして評価した。
ストーファー21段ステップタブレットを有するフォトツールと解像度評価用ネガとしてスペース幅/ライン幅が30/400〜200/400(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールを密着させ、ストーファーの21段ステップタブレットにおける現像後の残存ステップ段数が8.0となるエネルギー量で露光した。
ここで、解像性は現像処理によって光硬化されていない部分をきれいに除去することができたライン幅間のスペース幅の最も小さい値(単位:μm)により評価した。尚、解像性の評価は数値が小さいほど良好であることを意味する。
【0131】
【表2】
【0132】
表2から明らかなように、実施例1〜4は異形テント破れ率が低く、強度及び伸びの値は大きい。これに対し、比較例1は異形テント破れ率が高く、強度及び伸びの値は小さい。また比較例1、2は解像性の点で、実施例1〜4に比べて劣っている。
従って、本発明によれば、硬化膜の機械強度に優れ且つ柔軟性のある感光性樹脂組成物すなわち、テント信頼性に優れた感光性樹脂組成物及びそれを用いた感光性エレメント、レジストパターンの製造法、及びプリント配線板の製造法を提供することが可能である。