特許第5761027号(P5761027)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761027
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/42 20060101AFI20150723BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20150723BHJP
   C09K 19/10 20060101ALI20150723BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20150723BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20150723BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20150723BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20150723BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   C09K19/42
   C09K19/30
   C09K19/10
   C09K19/12
   C09K19/20
   C09K19/34
   C09K19/14
   G02F1/13 500
【請求項の数】21
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2011-541869(P2011-541869)
(86)(22)【出願日】2010年11月1日
(86)【国際出願番号】JP2010069404
(87)【国際公開番号】WO2011062049
(87)【国際公開日】20110526
【審査請求日】2013年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2009-262107(P2009-262107)
(32)【優先日】2009年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 憲和
(72)【発明者】
【氏名】平岡 隆志
(72)【発明者】
【氏名】前田 健永
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 将之
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−037918(JP,A)
【文献】 特開2001−302568(JP,A)
【文献】 特開2006−249425(JP,A)
【文献】 特開2001−139511(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/007775(WO,A1)
【文献】 特開2008−111113(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/028367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00−19/60
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、その他の液晶性化合物の中でシアノ化合物は含有せず、そしてネマチック相を有する液晶組成物。ただし、第二成分の少なくとも1つは−CFO−基を有する化合物である。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルであり;Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数1から12のアルコキシであり;Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;R、およびRは独立して炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から4のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から4のアルケニルであり;環A1,4−シクロへキシレンあり;環Bは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ピリミジン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環C、および環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレンであり;、およびXは独立して、水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;Zは独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;は独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;mは、1または2であり;nは1、2、3、または4であり;pは、1、2、または3である。
【請求項2】
第一成分が式(1−1)または(1−2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1に記載の液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルであり;Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数1から12のアルコキシである。
【請求項3】
第一成分が式(1−2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
第二成分が式(2−1)から式(2−27)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項1に記載の液晶組成物。




ここで、Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;X、X、X、X、X、X、X、X、およびXは独立して、水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
【請求項5】
第二成分が式(2−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項4に記載の液晶組成物。
【請求項6】
第二成分が式(2−15)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項4に記載の液晶組成物。
【請求項7】
第二成分が式(2−20)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項4に記載の液晶組成物。
【請求項8】
第二成分が式(2−21)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項4に記載の液晶組成物。
【請求項9】
第三成分が式(3−1)から式(3−15)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項に記載の液晶組成物。


ここで、R、およびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から4のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から4のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシであり;Rは、炭素数1から12のアルキルである。
【請求項10】
第三成分が式(3−1)から式(3−10)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項に記載の液晶組成物。
【請求項11】
第三成分が、式(3−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項に記載の液晶組成物。
【請求項12】
第三成分が、式(3−2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である請求項に記載の液晶組成物。
【請求項13】
液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から50重量%の範囲であり、そして第二成分の割合が10重量%から95重量%の範囲であり、第三成分の割合が15重量%から70重量%の範囲である請求項1から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項14】
第四成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシであり;環Eは1,4−シクロへキシレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。
【請求項15】
第四成分が式(4−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である請求項14に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシである。
【請求項16】
液晶組成物の全重量に基づいて、第四成分の割合が5重量%から40重量%の範囲である請求項14または15のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項17】
ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が2以上である請求項1から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項18】
25℃における弾性定数(K)が12pN以上である請求項1から17のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【請求項20】
液晶表示素子の動作モードが、TNモード、OCBモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項19に記載の液晶表示素子。
【請求項21】
液晶表示素子の動作モードが、IPSモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である請求項19に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてAM(active matrix)素子などに適する液晶組成物およびこの組成物を含有するAM素子などに関する。特に、誘電率異方性が正の液晶組成物に関し、この組成物を含有するTN(twisted nematic)モード、OCB(optically compensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モード、またはPSA(polymer sustained alignment)モードの素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、PSA(polymer sustained alignment)モードなどである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMはスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0003】
これらの素子は適切な特性を有する液晶組成物を含有する。この液晶組成物はネマチック相を有する。良好な一般的特性を有するAM素子を得るには組成物の一般的特性を向上させる。2つの一般的特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の一般的特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約−10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。組成物の弾性定数は素子のコントラストに関連する。素子においてコントラストを上げるためには、組成物における大きな弾性定数がより好ましい。
【0004】
【0005】
組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。TNのようなモードの素子では、適切な値は約0.45μmである。この場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、液晶表示素子の寿命に関連する。これらの安定性が高いとき、この素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。組成物における大きな弾性定数は素子における大きなコントラスト比と短い応答時間に寄与する。したがって、大きな弾性定数が好ましい。
【0006】
TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。一方、VAモードを有するAM素子においては負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。IPSモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。PSAモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。正の誘電率異方性を有する液晶組成物の例は次の特許文献1から5に開示されている。しかし、これらで開示されている液晶組成物はシアノ化合物を含むため電圧保持率が低い。そのためAM素子に使用した場合は、これらの液晶組成物は適さない。特に、紫外線に対する組成物の安定性が著しく低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−098394号公報
【特許文献2】特開平10−245560号公報
【特許文献3】特開平6−025667号公報
【特許文献4】特開平5−311172号公報
【特許文献5】特開平5−125363号公報
【0008】
望ましいAM素子は、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、しきい値電圧が低い、電圧保持率が大きい、寿命が長い、などの特性を有する。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物の望ましい特性は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。他の目的は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の目的は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。別の目的は、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性、大きな弾性定数などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、その他の液晶性化合物の中でシアノ化合物は含有せず、そしてネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子である


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルであり;Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数1から12のアルコキシであり;Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環Bは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ピリミジン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;X、およびXは独立して、水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;Zは独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;mは、1または2であり;nは1、2、3、または4である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する液晶組成物である。本発明の1つの側面は、少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。別の側面は、このような組成物を含有する液晶表示素子である。他の側面は、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、紫外線に対する高い安定性、大きな弾性定数などを有する組成物であり、そして短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。本発明の液晶組成物または本発明の液晶表示素子をそれぞれ「組成物」または「素子」と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物または液晶相を有さないが組成物の成分として有用な化合物を意味する。この有用な化合物は例えば1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。光学活性な化合物または重合可能な化合物は組成物に添加されることがある。これらの化合物が液晶性化合物であったとしても、ここでは添加物として分類される。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を「化合物(1)」と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物または2つ以上の化合物を意味する。他の式で表される化合物についても同様である。「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。
【0013】
ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。光学異方性などの特性を説明するときは、実施例に記載した測定方法で得られた値を用いる。第一成分は、1つの化合物または2つ以上の化合物である。「第一成分の割合」は、液晶組成物の全重量に基づいた第一成分の重量百分率(重量%)で表す。第二成分の割合などにおいても同様である。組成物に混合される添加物の割合は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)または重量百万分率(ppm)で表す。
【0014】
成分化合物の化学式において、Rの記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのRの意味は同じであっても、異なってもよい。例えば、化合物(1)のRがエチルであり、化合物(1−1)のRがエチルであるケースがある。化合物(1)のRがエチルであり、化合物(1−1)のRがプロピルであるケースもある。このルールは、X、Yなどにも適用される。
【0015】
本発明は、下記の項などである。
1. 第一成分として式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および第二成分として式(2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、その他の液晶性化合物の中でシアノ化合物は含有せず、そしてネマチック相を有する液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルであり;Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数1から12のアルコキシであり;Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;環Bは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ピリミジン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり;X、およびXは独立して、水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシであり;Zは独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;mは、1または2であり;nは1、2、3、または4である。
【0016】
2. 第一成分が式(1−1)または(1−2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1に記載の液晶組成物。


ここで、Rは炭素数1から12のアルキルであり;Rは炭素数1から12のアルキルまたは炭素数1から12のアルコキシである。
【0017】
3. 第一成分が式(1−2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項2に記載の液晶組成物。
【0018】
4. 第二成分が式(2−1)から式(2−27)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項1に記載の液晶組成物。




ここで、Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;X、X、X、X、X、X、X、X、およびXは独立して、水素またはフッ素であり;Yは、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。
【0019】
5. 第二成分が式(2−6)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項4に記載の液晶組成物。
【0020】
6. 第二成分が式(2−14)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項4に記載の液晶組成物。
【0021】
7. 第二成分が式(2−15)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項4に記載の液晶組成物。
【0022】
8. 第二成分が式(2−20)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項4に記載の液晶組成物。
【0023】
9. 第二成分が式(2−21)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項4に記載の液晶組成物。
【0024】
10. 液晶組成物の全重量に基づいて、第一成分の割合が5重量%から50重量%の範囲であり、そして第二成分の割合が10重量%から95重量%の範囲である項1から9のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0025】
11. 第三成分として式(3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項1から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、R、およびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から4のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から4のアルケニルであり;環C、および環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレンであり;Zは独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり;pは、1、2、または3である。
【0026】
12 第三成分が式(3−1)から式(3−15)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項11に記載の液晶組成物。


ここで、R、およびRは独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から4のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から4のアルケニルであり;Rは、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシであり;Rは、炭素数1から12のアルキルである。
【0027】
13. 第三成分が式(3−1)から式(3−10)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項12に記載の液晶組成物。
【0028】
14. 第三成分が、式(3−3)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項12に記載の液晶組成物。
【0029】
15. 第三成分が、式(3−2)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物、および式(3−9)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物の混合物である項12に記載の液晶組成物。
【0030】
16. 液晶組成物の全重量に基づいて、第三成分の割合が10重量%から70重量%の範囲である項11から15のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0031】
17. 第四成分として式(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項1から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシであり;環Eは1,4−シクロへキシレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。
【0032】
18. 第四成分が式(4−1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である項17に記載の液晶組成物。


ここで、Rは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシである。
【0033】
19. 液晶組成物の全重量に基づいて、第四成分の割合が5重量%から40重量%の範囲である項17または18のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0034】
20. ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃)が2以上である項1から19のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0035】
21. 25℃における弾性定数(K)が12pN以上である項1から20のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0036】
22. 項1から21のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0037】
23. 液晶表示素子の動作モードが、TNモード、OCBモード、またはPSAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である項22に記載の液晶表示素子。
【0038】
24. 液晶表示素子の動作モードが、IPSモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である項22に記載の液晶表示素子。
【0039】
本発明は、次の項も含む。1)光学活性な化合物をさらに含有する上記の組成物、2)酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などの添加物をさらに含有する上記の組成物。3)上記の組成物を含有するAM素子、4)上記の組成物を含有し、そしてTN、ECB、OCB、IPS、またはPSAのモードを有する素子、5)上記の組成物を含有する透過型の素子、6)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物としての使用、7)上記の組成物に光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0040】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、成分化合物の具体的な例を示す。第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0041】
第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。本発明の組成物は組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aはその他の液晶性化合物、添加物、不純物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などである。不純物は成分化合物の合成などの工程において混入した化合物などである。この化合物が液晶性化合物であったとしても、ここでは不純物として分類される。
【0042】
組成物Bは、実質的に化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)から選択された化合物のみからなる。「実質的に」は、組成物が添加物および不純物を含有してもよいが、これらの化合物と異なる液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって物性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0043】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、値がほぼゼロであることを意味する。
【0044】
【0045】
成分化合物を組成物に混合したとき、成分化合物が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は上限温度を上げ、そして弾性定数を上げる。化合物(2)は光学異方性を上げ、そして誘電率異方性を上げる。化合物(3)は上限温度を上げ、下限温度を下げ、そして粘度を下げる。化合物(4)は粘度を下げ、そして弾性定数を上げる。
【0046】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の組み合わせは、第一成分+第二成分、第一成分+第二成分+第三成分、第一成分+第二成分+第四成分、および第一成分+第二成分+第三成分+第四成分である。組成物における成分の好ましい組み合わせは、第一成分+第二成分+第三成分および第一成分+第二成分+第三成分+第四成分である。
【0047】
第一成分の好ましい割合は、上限温度を上げるため、および弾性定数を上げるために約5重量%以上であり、下限温度を下げるために約50重量%以下である。さらに好ましい割合は約8重量%から約40重量%の範囲である。特に好ましい割合は約10重量%から約30重量%の範囲である。
【0048】
第二成分の好ましい割合は、誘電率異方性を上げるために約10重量%以上であり、下限温度を下げるために約95重量%以下である。さらに好ましい割合は約15重量%から約70重量%の範囲である。特に好ましい割合は約20重量%から約40重量%の範囲である。
【0049】
第三成分の好ましい割合は、上限温度を上げるため、または粘度を下げるために約15重量%以上であり、誘電率異方性を上げるために約70重量%以下である。さらに好ましい割合は約30重量%から約65重量%の範囲である。特に好ましい割合は約45重量%から約60重量%の範囲である。
【0050】
第四成分は、特に大きな弾性定数を有する組成物の調製に適している。この成分の好ましい割合は約5重量%から約40重量%の範囲である。さらに好ましい割合は約8重量%から約35重量%の範囲である。特に好ましい割合は約10重量%から約30重量%の範囲である。
【0051】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。Rは炭素数1から12のアルキルである。好ましいRは粘度を下げるために炭素数1から5のアルキルである。Rは炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシである。好ましいRは粘度を下げるために炭素数1から12のアルキルである。Rは炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいRは紫外線または熱に対する安定性などを上げるために炭素数1から12のアルキルである。R、およびRは、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から4のアルケニル、または任意の水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から4のアルケニルである。好ましいR、およびRは、粘度を下げるために炭素数2から4のアルケニルであり、紫外線または熱に対する安定性などを上げるために炭素数1から12のアルキルである。Rは、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシである。好ましいRは、粘度を下げるため、および弾性定数を上げるために炭素数1から12のアルキルである。Rは、炭素数1から12のアルキルである。好ましいRは、炭素数1から5のアルキルである。Rは、炭素数1から12のアルキル、または炭素数1から12のアルコキシである。好ましいRは、粘度を下げるためアルキルである。
【0052】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘプチルである。
【0053】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
【0054】
好ましいアルケニルは、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1−プロペニル、3−ブテニル、または3−ペンテニルである。これらのアルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。これらのアルケニルにおいては、分岐よりも直鎖のアルケニルが好ましい。
【0055】
任意の水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2−ジフルオロビニル、3,3−ジフルオロ−2−プロペニル、4,4−ジフルオロ−3−ブテニル、5,5−ジフルオロ−4−ペンテニル、および6,6−ジフルオロ−5−ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために2,2−ジフルオロビニル、および4,4−ジフルオロ−3−ブテニルである。
【0056】
環Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルであり、mが2であるときの任意の2つの環Aは同じであっても、異なってもよい。好ましい環Aは弾性定数を上げるために、1,4−シクロへキシレンである。環Bは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ピリミジン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。好ましい環Bは上限温度を上げるために1,4−シクロへキシレンであり、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンであり、誘電率異方性を上げるために、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。環C、および環Dは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレンであり、pが2、または3であるときの任意の2つの環Cは同じであっても、異なってもよい。好ましい環C、または環Dは、粘度を下げるために1,4−シクロへキシレンであり、光学異方性を上げるために1,4−フェニレンである。環Eは1,4−シクロへキシレン、またはテトラヒドロピラン−2,5−ジイルである。好ましい環Eは粘度を下げるために、1,4−シクロへキシレンである。
【0057】
、X、X、X、X、X、X、X、およびXは独立して、水素またはフッ素である。好ましいX、X、X、X、X、X、X、X、またはXは、誘電率異方性を上げるために、そのうちの2つ以上がフッ素である。
【0058】
は、フッ素、塩素、またはトリフルオロメトキシである。好ましいYは、粘度を下げるためにフッ素であり、下限温度を下げるために塩素である。
【0059】
は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり、nが2、3、または4であるときの任意の2つのZは同じであっても、異なってもよい。好ましいZは粘度を下げるために単結合であり、誘電率異方性を上げるためにジフルオロメチレンオキシである。Zは独立して、単結合、エチレン、またはカルボニルオキシであり、pが2、または3であるときの任意の2つのZは同じであっても、異なってもよい。
【0060】
mは、1、または2である。好ましいmは上限温度を上げるために2である。nは1、2、3、または4である。好ましいnは上限温度を上げるために4であり、粘度を下げるために2である。pは、1、2、または3である。好ましいpは粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために3である。
【0061】
第五に、成分化合物の具体的な例を示す。下記の好ましい化合物において、Rは、炭素数1から5のアルキルである。R10は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。R11は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から4のアルケニルである。これらの化合物において1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。なお、R、RおよびRは、前出の定義と同様である。
【0062】
好ましい化合物(1)は化合物(1−1−1)および化合物(1−2−1)である。さらに好ましい化合物(1)は化合物(1−2−1)である。好ましい化合物(2)は、化合物(2−1−1)から化合物(2−27−2)である。さらに好ましい化合物(2)は、化合物(2−5−1)から化合物(2−22−2)である。特に好ましい化合物(2)は、化合物(2−5−1)、化合物(2−6−1)、化合物(2−14−1)、化合物(2−15−1)、化合物(2−20−1)から化合物(2−22−2)である。好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)から化合物(3−15−1)である。
さらに好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)から化合物(3−3−1)、および化合物(3−6−1)から化合物(3−15−1)である。特に好ましい化合物(3)は、化合物(3−1−1)から化合物(3−3−1)、化合物(3−6−1)、化合物(3−9−1)から化合物(3−12−1)、および化合物(3−15−1)である。好ましい化合物(4)は、化合物(4−1−1)である。
【0063】
【0064】
【0065】

【0066】

【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
第六に、組成物に混合してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合可能な化合物、重合開始剤などである。液晶のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性な化合物が組成物に混合される。このような化合物の例は、化合物(5−1)から化合物(5−4)である。光学活性な化合物の好ましい割合は約5重量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01重量%から約2重量%の範囲である。
【0071】
【0072】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に混合される。
【0073】
酸化防止剤の好ましい例は、wが1から9の整数である化合物(6)などである。化合物(6)において、好ましいwは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいwは1または7である。wが1である化合物(6)は、揮発性が大きいので、大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するときに有効である。wが7である化合物(6)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
【0074】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0075】
GH(guest host)モードの素子に適合させるためにアゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に混合される。色素の好ましい割合は、約0.01重量%から約10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に混合される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために約1ppm以上であり、表示の不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
【0076】
PSA(polymer sustained alignment)モードの素子に適合させるために重合可能な化合物が組成物に混合される。重合可能な化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。特に好ましい例は、アクリレート、またはメタクリレートの誘導体である。重合可能な化合物の好ましい割合は、その効果を得るために、約0.05重量%以上であり、表示不良を防ぐために約10重量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1重量%から約2重量%の範囲である。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤などの適切な開始剤存在下でUV照射などにより重合する。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光開始剤であるIrgacure651(登録商標)、Irgacure184(登録商標)、またはDarocure1173(登録商標)(Ciba Japan K.K.)がラジカル重合に対して適切である。光重合開始剤の好ましい割合は、重合可能な化合物の約0.1重量%から約5重量%の範囲であり、特に好ましい割合は、約1重量%から約3重量%の範囲である。
【0077】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。化合物(1−1−1)は、特開平1−151531号公報に記載された方法で合成する。化合物(2−15−1)および化合物(2−16−1)は特開平10−251186号公報に記載された方法で合成する。化合物(3−6−1)は、特開昭57−165328号公報に記載された方法で合成する。化合物(4−1−1)は、特開昭61−027928号公報に記載された方法で合成する。酸化防止剤は市販されている。式(6)のwが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。wが7である化合物(6)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
【0078】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0079】
最後に、組成物の用途を説明する。本発明の組成物は主として、約−10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物、さらには約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用、光学活性な化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0080】
この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、PSAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。TN、OCBまたはIPSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン−TFT素子または多結晶シリコン−TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
【実施例】
【0081】
組成物および組成物に含有させる化合物の特性を評価するために、組成物およびこの化合物を測定目的物とする。測定目的物が組成物のときはそのままを試料として測定し、得られた値を記載した。測定目的物が化合物のときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(測定用試料の測定値)−0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度および誘電率異方性の値を求めた。
【0082】
母液晶の成分は下記のとおりである。各成分の割合は、重量%である。
【0083】
特性の測定は下記の方法にしたがった。それらの多くは、日本電子機械工業会規格(Standard of Electric Industries Association of Japan)EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法である。
【0084】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0085】
ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを≦−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0086】
粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定にはE型回転粘度計を用いた。
【0087】
粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定はM. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995)に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文中の40頁記載の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0088】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0089】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0090】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が約0.45 / Δn (μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧である。
【0091】
電圧保持率(VHR−1;25℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0092】
電圧保持率(VHR−2;80℃;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0093】
電圧保持率(VHR−3;25℃;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。大きなVHR−3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmである。この素子に試料を注入し、光を20分間照射した。光源は超高圧水銀ランプUSH−500D(ウシオ電機製)であり、素子と光源の間隔は20cmである。VHR−3の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。大きなVHR−3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。VHR−3は90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。
【0094】
電圧保持率(VHR−4;25℃;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。VHR−4の測定では、減衰する電圧を16.7ミリ秒のあいだ測定した。大きなVHR−4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。
【0095】
応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプである。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和である。
【0096】
弾性定数(K;25℃で測定;pN):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向セルに試料を入れた。このセルに0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を『液晶デバイスハンドブック』(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に同171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数は、このようにして求めたK11、K22、およびK33の平均値である。
【0097】
比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0098】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC−14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC−R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0099】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP−1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1−M50−025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0100】
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物はガスクロマトグラフで検出することができる。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(モル数)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出する。
【0101】
実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は下記の実施例によって限定されない。比較例および実施例における化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号により表した。
表3において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。実施例において記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(−)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)であり、液晶組成物には不純物が含まれている。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0102】

【0103】
[比較例1]
特開2000−098394号公報に開示された組成物の中から実施例3の液晶組成物(LI)を選んだ。根拠は、この組成物が化合物(1−2−1)、化合物(3−2−1)、化合物(3−5−1)、化合物(3−6−1)、化合物(3−12−1)、化合物(3)、およびシアノ化合物を含有するからである。上限温度、光学異方性、誘電率異方性、しきい値電圧、粘度、電圧保持率についての記載がなかったため、本組成物を調合し、上述した方法により測定した。この組成物の成分および特性は下記のとおりである。
1V2−HHB−2 (1−2−1) 10%
5−HH−V (3−2−1) 11%
4−BB−3 (3−5−1) 11%
3−HHB−1 (3−6−1) 9%
V−HHB−1 (3−6−1) 7%
V2−HHB−1 (3−6−1) 15%
3−HHEBH−3 (3−12−1) 5%
3−HH−2V (3) 10%
V−HB−C (−) 11%
5−BEB(F)−C (−) 5%
5−PyB−C (−) 6%
NI=96.6℃;Δn=0.113;Δε=3.1;Vth=2.71V;η=13.8mPa・s;γ1=82.3mPa・s;VHR−1=95.3%;VHR−2=79.7%;VHR−3=21.7%.
【0104】
[実施例1]
1V2−HHB−1 (1−2−1) 10%
3−HHB(F,F)−F (2−5−1) 4%
3−HGB(F,F)−F (2−9−1) 7%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−15−1) 9%
2−HHBB(F,F)−F (2−18−1) 4%
3−HHBB(F,F)−F (2−18−1) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F(2−21−3) 7%
3−HHB−F (2) 4%
3−HH−V (3−2−1) 38%
3−HH−V1 (3−3−1) 10%
3−HHEBH−3 (3−12−1) 4%
NI=93.1℃;Tc≦−20℃;Δn=0.089;Δε=4.3;γ1=62.4mPa・s;K11=11.8pN;K22=8.5pN;K33=20.0pN;K=13.4pN;VHR−1=99.6%;VHR−2=99.0%;VHR−3=98.9%.
【0105】
[比較例2]
実施例1において化合物(1−2−1)を化合物(3−6−1)と置換え、上述した方法により測定を行った。比較例2は実施例1に比べて上限温度(NI)が低く、弾性定数が小さくなった。
V2−HHB−1 (3−6−1) 10%
3−HHB(F,F)−F (2−5−1) 4%
3−HGB(F,F)−F (2−9−1) 7%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−15−1) 9%
2−HHBB(F,F)−F (2−18−1) 4%
3−HHBB(F,F)−F (2−18−1) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F(2−21−3) 7%
3−HHB−F (2) 4%
3−HH−V (3−2−1) 38%
3−HH−V1 (3−3−1) 10%
3−HHEBH−3 (3−12−1) 4%
NI=91.4℃;Tc≦−20℃;Δn=0.088;Δε=4.3;γ1=57.7mPa・s;K11=11.2pN;K22=6.6pN;K33=17.5pN;K=11.8pN.
【0106】
[実施例2]
1V2−HHB−1 (1−2−1) 10%
2−BB(F)B(F,F)−F (2−14−1) 3%
2−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−15−1) 3%
2−HHBB(F,F)−F (2−18−1) 4%
3−HHBB(F,F)−F (2−18−1) 4%
3−HHB(F)B(F,F)−F (2−19−1) 3%
3−BB(F)B(F,F)XB(F)−OCF3
(2−21−2) 3%
3−BB(F,F)B(F,F)XB(F,F)−F
(2−21) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 9%
3−HH−5 (3−1−1) 5%
3−HH−V (3−2−1) 40%
1V2−BB−1 (3−5−1) 3%
3−HHB−O1 (3−6−1) 5%
V2−HHB−1 (3−6−1) 5%
NI=93.3℃;Tc≦−20℃;Δn=0.089;Δε=3.5;γ1=54.1mPa・s;K11=12.3pN;K22=9.0pN;K33=20.5pN;K=13.9pN;VHR−1=99.6%;VHR−2=98.9%;VHR−3=98.8%.
【0107】
[実施例3]
1V2−HB−1 (1−1−1) 5%
1V2−HHB−1 (1−2−1) 5%
3−HBBXB(F,F)−F (2−20−1) 8%
3−HBB(F,F)XB(F,F)−F (2−20−2) 5%
3−HB(F)B(F,F)XB(F,F)−F(2−20−3) 3%
V2−BB(F)B(F,F)XB(F)−OCF3
(2−21) 3%
5−HHBB(F)−F (2) 3%
3−HHB(F)−F (2) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 7%
3−HH−5 (3−1−1) 5%
3−HH−V (3−2−1) 33%
1V2−BB−1 (3−5−1) 7%
V2−HHB−1 (3−6−1) 5%
4−HHEH−5 (3−7−1) 5%
1V−HBB−2 (3−8−1) 3%
NI=93.3℃;Tc≦−20℃;Δn=0.096;Δε=3.3;γ1=55.3mPa・s;K11=12.3pN;K22=9.0pN;K33=20.5pN;K=13.9pN;VHR−1=99.2%;VHR−2=98.8%;VHR−3=98.8%.
【0108】
[実施例4]
1V2−HHB−1 (1−2−1) 5%
1V2−HHB−3 (1−2−1) 5%
2−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−15−1) 7%
3−HHBB(F,F)−F (2−18−1) 5%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(2−21−3) 5%
3−HHB(F)−F (2) 3%
3−HH−O1 (3−1−1) 3%
3−HH−V (3−2−1) 35%
3−HH−V1 (3−3−1) 7%
3−HB−O2 (3−4−1) 5%
V−HHB−1 (3−6−1) 5%
V2−HHB−1 (3−6−1) 12%
3−B(F)BB−2 (3−10−1) 3%
NI=93.6℃;Tc≦−20℃;Δn=0.093;Δε=3.2;γ1=52.2mPa・s;K11=12.4pN;K22=9.1pN;K33=20.6pN;K=14.0pN;VHR−1=99.2%;VHR−2=98.7%;VHR−3=98.6%.
上記組成物100部に化合物(5−3)(左ねじり)を0.25部添加したときのピッチは91.4μmであった。
【0109】
[実施例5]
1V2−HHB−1 (1−2−1) 10%
1V2−BB−F (2−2−1) 3%
1V2−BB−CL (2−3−1) 5%
3−HHXB(F,F)−F (2−6−1) 4%
3−HBEB(F,F)−F (2−11−1) 5%
3−HBB−F (2−12−1) 5%
2−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−15−1) 3%
3−BB(F)B(F,F)XB(F)−OCF3
(2−21−2) 3%
3−HHB(F)−F (2) 5%
3−HH−V (3−2−1) 22%
3−HH−V1 (3−3−1) 10%
1V2−BB−1 (3−5−1) 8%
V2−HHB−1 (3−6−1) 10%
5−HB(F)BH−3 (3−14−1) 4%
3−HH−VFF (3) 3%
NI=93.6℃;Tc≦−20℃;Δn=0.110;Δε=3.9;γ1=53.5mPa・s;K11=12.4pN;K22=9.1pN;K33=20.6pN;K=14.0pN;VHR−1=99.1%;VHR−2=98.3%;VHR−3=97.9%.
【0110】
[実施例6]
1V2−HHB−3 (1−2−1) 8%
3−HHXB(F,F)−F (2−6−1) 3%
5−BB(F)B(F,F)−F (2−14−1) 8%
3−HBB(F,F)XB(F,F)−F (2−20−2) 3%
3−BB(F)B(F,F)XB(F)−OCF3
(2−21−2) 3%
3−HHB(F)−F (2) 5%
3−HH−V (3−2−1) 25%
3−HH−V1 (3−3−1) 5%
V2−BB−1 (3−5−1) 8%
1V2−BB−1 (3−5−1) 8%
3−HHB−O1 (3−6−1) 2%
V2−HHB−1 (3−6−1) 10%
1−BB(F)B−2V (3−9−1) 5%
5−HBB(F)B−3 (3−15−1) 4%
3−HH−VFF (3) 3%
NI=93.2℃;Tc≦−20℃;Δn=0.124;Δε=3.4;γ1=54.8mPa・s;K11=12.3pN;K22=9.0pN;K33=20.5pN;K=13.9pN;VHR−1=99.3%;VHR−2=98.5%;VHR−3=98.7%.
【0111】
[実施例7]
1V2−HHB−1 (1−2−1) 10%
5−HHB−CL (2−4−1) 5%
3−HHXB(F,F)−F (2−6−1) 17%
5−HBB(F,F)−F (2−13−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F)−OCF3 (2−16−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F)−F (2−17−1) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 15%
3−HH−V (3−2−1) 23%
1V2−BB−2V1 (3−5) 7%
V2−HHB−1 (3−6−1) 5%
V2−BB(F)B−1 (3−9−1) 5%
3−HHEBH−3 (3−12−1) 4%
NI=94.4℃;Tc≦−20℃;Δn=0.096;Δε=3.2;γ1=54.0mPa・s;K11=12.7pN;K22=9.2pN;K33=20.8pN;K=14.2pN;VHR−1=99.2%;VHR−2=98.3%;VHR−3=98.1%.
【0112】
[実施例8]
1V2−HB−1 (1−1−1) 5%
1V2−HHB−1 (1−2−1) 10%
3−HHB−CL (2−4−1) 5%
V−HHB(F,F)−F (2−5−1) 3%
3−HHXB(F,F)−F (2−6−1) 15%
5−HB(F)B(F,F)B(F,F)XB(F,F)−F(2−24) 3%
3−HH2BB(F,F)−F (2) 3%
2−HH−5 (3−1−1) 7%
3−HH−V (3−2−1) 30%
V2−BB−1 (3−5−1) 7%
V2−HHB−1 (3−6−1) 4%
V2−B(F)BB−2 (3−10−1) 5%
5−HBBH−3 (3−13−1) 3%
NI=94.7℃;Tc≦−20℃;Δn=0.096;Δε=3.1;γ1=53.6mPa・s;K11=12.8pN;K22=9.3pN;K33=20.9pN;K=14.3pN;VHR−1=99.3%;VHR−2=98.3%;VHR−3=98.3%.
【0113】
[実施例9]
1V2−HHB−1 (1−2−1) 10%
5−HB−CL (2−1−1) 4%
3−HHB−CL (2−4−1) 5%
3−HHXB(F,F)−F (2−6−1) 7%
4−GHB(F,F)−F (2−10−1) 3%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F(2−21−3) 3%
5−HB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F
(2−26−2) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 5%
3−HH−V (3−2−1) 26%
3−HB−O2 (3−4−1) 5%
V2−BB−1 (3−5−1) 5%
V2−BB−2V (3−5) 5%
1V2−BB−2V1 (3−5) 3%
V2−HHB−1 (3−6−1) 8%
V2−BB(F)B−2 (3−9−1) 3%
3−HHEBH−3 (3−12−1) 5%
NI=93.1℃;Tc≦−20℃;Δn=0.102;Δε=3.2;γ1=55.2mPa・s;K11=12.3pN;K22=9.0pN;K33=20.5pN;K=13.9pN;VHR−1=98.9%;VHR−2=97.9%;VHR−3=97.8%.
【0114】
[実施例10]
1V2−HHB−1 (1−2−1) 5%
3−HHXB(F,F)−F (2−6−1) 10%
4−HHEB(F,F)−F (2−8−1) 3%
2−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−15−1) 5%
3−HBBXB(F,F)−F (2−20−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F)B(F)−OCF3
(2−22) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 10%
3−HH−5 (3−1−1) 7%
3−HH−V (3−2−1) 22%
3−HH−V1 (3−3−1) 5%
1V2−BB−1 (3−5−1) 5%
V2−HHB−1 (3−6−1) 5%
2−BB(F)B−3 (3−9−1) 3%
3−HB(F)HH−5 (3−11−1) 3%
5−HB(F)HH−V (3−11−1) 3%
5−HBB(F)B−3 (3−15−1) 3%
1V2−HH−3 (4−1−1) 5%
NI=94.1℃;Tc≦−20℃;Δn=0.092;Δε=3.4;γ1=54.6mPa・s;K11=12.9pN;K22=9.5pN;K33=21.0pN;K=14.5pN;VHR−1=99.3%;VHR−2=98.1%;VHR−3=97.9%.
【0115】
[実施例11]
1V2−HHB−3 (1−2−1) 10%
3−HHXB(F)−OCF3 (2−7−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (2−15−1) 7%
3−HHBB(F,F)−F (2−18−1) 5%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F(2−21−3) 6%
3−HHB−F (2) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 3%
3−HH−V (3−2−1) 35%
3−HH−V1 (3−3−1) 10%
V2−BB−2V (3−5) 5%
1V2−BB−2V1 (3−5) 5%
3−HHEBH−3 (3−12−1) 5%
3−HBBH−1O1 (−) 3%
NI=94.2℃;Tc≦−20℃;Δn=0.096;Δε=3.3;γ1=52.3mPa・s;K11=12.9pN;K22=9.5pN;K33=21.1pN;K=14.5pN;VHR−1=99.3%;VHR−2=98.3%;VHR−3=98.1%
【0116】
[実施例12]
1V2−HB−1 (1−1−1) 10%
3−HHBB(F,F)−F (2−18−1) 4%
5−HB(F)B(F,F)XB(F,F)−F(2−20−3) 3%
3−BB(F,F)XB(F)B(F)−OCF3
(2−22) 3%
3−BB(F,F)XB(F)B(F,F)−F(2−22−2) 3%
5−HHBB(F,F)XB(F,F)−F (2−23−1) 3%
5−HHB(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(2−23−2) 3%
2−HH−3 (3−1−1) 7%
3−HH−V (3−2−1) 25%
3−HH−V1 (3−3−1) 6%
1V2−BB−1 (3−5−1) 6%
3−HHB−1 (3−6−1) 5%
V2−HHB−1 (3−6−1) 12%
1V−HBB−2 (3−8−1) 5%
1V2−HH−3 (4−1−1) 5%
NI=93.7℃;Tc≦−20℃;Δn=0.099;Δε=3.2;γ1=55.7mPa・s;K11=12.8pN;K22=9.4pN;K33=20.9pN;K=14.4pN;VHR−1=99.4%;VHR−2=98.3%;VHR−3=98.3%
【0117】
[実施例13]
1V2−HHB−3 (1−2−1) 10%
5−HB(F)B(F)B(F,F)XB(F,F)−F
(2−24−3) 3%
5−BB(F)B(F)B(F,F)XB(F)−F
(2−25−1) 3%
5−BB(F)B(F,F)XB(F)B(F)−OCF3
(2−27−1) 5%
5−BB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)−F
(2−27−2) 3%
3−PyBB−F (2) 4%
2−HH−3 (3−1−1) 15%
3−HH−V (3−2−1) 23%
4−HH−V1 (3−3−1) 5%
V2−BB−1 (3−5−1) 7%
3−HHB−3 (3−6−1) 5%
V−HHB−1 (3−6−1) 7%
1V2−HH−1 (4−1−1) 5%
1V2−HH−3 (4−1−1) 5%
NI=94.4℃;Tc≦−20℃;Δn=0.101;Δε=3.2;γ1=52.9mPa・s;K11=13.0pN;K22=9.5pN;K33=21.1pN;K=14.5pN;VHR−1=99.1%;VHR−2=98.2%;VHR−3=97.8%
【0118】
実施例1から実施例13の組成物は、比較例1のそれらと比べて、小さい回転粘度および大きな電圧保持率を有し、そして比較例2のそれらと比べて、小さい回転粘度および大きな弾性定数を有する。よって、本発明による液晶組成物は、特許文献1に示された液晶組成物よりも、さらに優れた特性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0119】
ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、大きな光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、大きな弾性定数、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性などの特性において、少なくとも1つの特性を充足する、または少なくとも2つの特性に関して適切なバランスを有する液晶組成物である。このような組成物を含有する液晶表示素子は、短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、長い寿命などを有するAM素子となるので、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いることができる。