(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るガス供給装置及び熱処理装置の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明の係る熱処理装置の一例を示す縦断面構成図、
図2は熱処理装置(加熱手段は省略)を示す横断面構成図、
図3は原料ガス供給系の原料貯留槽の部分を示す拡大図であり、
図3(A)は全体の拡大断面図、
図3(B)はガス供給部の拡大断面図である。
【0016】
図示するように、この熱処理装置2は、平板状の天井を有する筒体状の内筒4とその外側に同心円状に配置されたドーム状の天井を有する筒体状の外筒6とよりなる2重筒構造の処理容器8を有している。この内筒4と外筒6は共に耐熱性の材料、例えば石英により形成されている。上記処理容器8の下端は、Oリング等のシール部材9を介して例えばステンレススチール製の筒体状のマニホールド10に連結されて、これに支持されている。上記内筒4の下端部は、上記マニホールド10の内壁に取り付けた支持リン
グ11上に支持されている。尚、ステンレス製のマニホールド10を設けないで、全体を円筒体状の石英製の処理容器で構成した装置もある。
【0017】
上記マニホールド10は円筒体状に成形されており、このマニホールド10の下方より多数枚の被処理体としての半導体ウエハWを多段に載置した保持手段としての石英製のウエハボート12が昇降可能に挿脱自在になされている。本実施例の場合において、このウエハボート12の支柱12Aには、例えば50〜150枚程度の直径が300mmのウエハWを略等ピッチで多段に支持できるようになっている。
【0018】
このウエハボート12は、石英製の保温筒14を介してテーブル16上に載置されており、このテーブル16は、マニホールド10の下端開口部を開閉する例えばステンレススチール製の蓋部18を貫通する回転軸20上に支持される。そして、この回転軸20の貫通部には、例えば磁性流体シール22が介設され、この回転軸20を気密にシールしつつ回転可能に支持している。また、蓋部18の周辺部とマニホールド10の下端部には、例えばOリング等よりなるシール部材24が介設されており、処理容器8内のシール性を保持している。
【0019】
上記した回転軸20は、例えばボートエレベータ等の昇降機構(図示せず)に支持されたアーム26の先端に取り付けられており、ウエハボート12及び蓋部18等を一体的に昇降して処理容器8内へ挿脱できるようになされている。尚、上記テーブル16を上記蓋部18側へ固定して設け、ウエハボート12を回転させることなくウエハWの処理を行うようにしてもよい。この処理容器8には、ガス導入部28が設けられる。
【0020】
具体的には、このガス導入部28は、上記マニホールド10の側壁を内側へ貫通して上方向へ屈曲されて延びる石英管よりなる複数、ここでは3本のガス分散ノズル30、32、33を有している。各ガス分散ノズル30、32、33には、その長さ方向に沿って複数(多数)のガス噴射孔30A、32A、33Aが所定の間隔を隔てて形成されており、各ガス噴射孔30A、32A、33Aから水平方向に向けてほぼ均一にガスを噴射できるようになっている。
【0021】
一方、上記処理容器8の内筒4の側壁の一部には、その高さ方向に沿ってノズル収容凹部34(
図2参照)が形成されると共に、このノズル収容凹部34に対向する処理容器8の反対側には、この内部雰囲気を真空排気するために側壁を、例えば上下方向へ削り取ることによって形成した細長い排気口36が設けられている。具体的には、上記ノズル収容凹部34は、上記処理容器8の側壁を上下方向に沿って所定の幅で削りとることによって上下に細長い開口38を形成し、この開口38をその外側より覆うようにして断面凹部状になされた上下に細長い例えば石英製の区画壁40を内筒4の外壁に気密に溶接接合することにより形成されている。そして、
図2に示すように、上記ノズル収容凹部34内に上記各ガス分散ノズル30、32、33が並んで設けられている。
【0022】
また、上記マニホールド10の支持リン
グ11の上方の側壁には、上記排気口36に連通するガス出口44が形成されており、上記内筒4内の雰囲気は、上記排気口36を介して内筒4と外筒6との間の間隙内へ排出され、上記ガス出口44に至るようになっている。そして、このガス出口44には、真空排気系46が設けられている。この真空排気系46は、上記ガス出口44に接続された排気通路48を有しており、この排気通路48には、圧力調整弁50や真空ポンプ52が介設されて、処理容器8内を所定の圧力に維持しつつ真空引きするようになっている。そして、この処理容器8の外周を囲むようにしてこの処理容器8及びこの内部のウエハWを加熱する筒体状の加熱手段54が設けられている。
【0023】
そして、上記処理容器8に対して熱処理に必要なガスを供給するために本発明に係るガス供給装置60が設けられる。ここではガス供給装置60として原料ガスを供給するための本発明の特徴とする原料ガス供給系62と、その他に上記原料ガスと反応する反応ガスを供給する反応ガス供給系64とパージガスを供給するパージガス供給系65とが含まれている。具体的には、上記原料ガス供給系62は、有機金属材料よりなる液状の原料66を貯留する原料貯留槽68を有している。この原料貯留槽68は、アンプル或いはリザーバとも称される。
【0024】
上記原料66としては、ここではジルコニウムの有機化合物である液体状のZrCp(NMe
2 )
3 [シクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウムが用いられているが、その他にZr(MeCp)(NMe
2 )
3 [メチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、Ti(MeCp)(NMe
2 )
3 [メチルシクロペンタジエニル・トリス(ジメチルアミノ)チタニウム、テトラキシ(ジメチルアミノ)ハフニウム等を用いることができる。この原料貯留槽68には、上記原料66を熱分解しない範囲で加熱して気化させることにより原料ガスを形成する原料加熱ヒータ69が設けられており、ここでは例えば70〜100℃程度に加熱されている。
【0025】
また、この原料貯留槽68には、原料ガスを搬送するキャリアガスを供給するガス供給部74と、キャリアガスに伴って原料ガスを流出させるガス流出部76とが設けられている。ここでは、上記ガス供給部74とガス流出部76は、共に原料貯留槽68の天井に設けられている。
【0026】
そして、上記原料貯留槽68のガス流出部76と上記処理容器8に設けたガス導入部28の3本のガス分散ノズル30、32、33の内の1本のガス分散ノズル30とを連結して原料ガス通路70が設けられている。そして、この原料ガス通路70の途中には開閉弁72が介設されており、原料ガスの流れを制御するようになっている。
【0027】
そして、この原料ガス通路70の上流側のガス流出口77は、上記原料貯留槽68内の上部空間部68Aを臨むように位置されており、ここで発生した原料ガスをキャリアガスと共に流出させることができるようになっている。この原料ガス通路70には、これに沿って例えばテープヒータ等の通路ヒータ(図示せず)が設けられており、原料ガス通路70を例えば70〜100℃程度に加熱して原料ガスが液化することを防止している。
【0028】
また上記原料貯留槽68のガス供給部74には、上記原料貯留槽68内へキャリアガスを導入するためのキャリアガス通路78が接続されている。そして、上記ガス供給部74には、このガス供給部74から噴射するキャリアガスを上記原料66の液面に直接的に当たることを阻止するための本発明の特徴とするバッフル板80が設けられている。
【0029】
具体的には、上記ガス供給部74は、上記原料貯留槽68の天井71に設けた挿通孔81に貫通して取り付けられたガスノズル82を有している。このガスノズル82には、フランジ部83が設けられており、このフランジ部83と天井71との間にOリング等よりなるシール部材85を介在させて気密に着脱自在に取り付けられている。そして、このガスノズル82の先端である下端部がガス供給口84となっている。このガス供給口84は、原料貯留槽68の上部空間部68Aを臨むように位置されている。
【0030】
そして、上記バッフル板80は、例えば円板状になされており、上記ガス供給口84と上記バッフル板80との間を囲むようにして連結して通気性のある網目状のメッシュ部材86(
図3参照)が設けられている。上記メッシュ部材86は、環状に、或いは管状に成形されている。すなわち、このバッフル板80は、上記メッシュ部材86によりガス噴射方向に、ここではガス供給口84の直下に設置されるように支持されている状態となっている。
【0031】
そして、このバッフル板80は、ここでは上記ガス噴射方向に対して直交するように設置されており、原料66の液面に対して平行になされている。従って、上記ガス供給口84から真下へ噴射されたキャリアガスは、上記バッフル板80に直接当たり、原料66の液面に直接当たることなく、そのガスの流れ方向が変えられてメッシュ部材86を通過して原料貯留槽68内の上部空間部68Aへ供給されるようになっている。上記ガスノズル82、バッフル板80及びメッシュ部材86は、共に耐腐食性材料、例えばステンレススチール等により形成されている。
【0032】
ここで上記ガス供給口84の直径Dは、1〜5mm程度の範囲内で例えば3.2mm程度、バッフル板80の直径Lは、1〜25mm程度の範囲内で例えば3.2mm程度であり、両者の寸法関係は”D/2≦L≦2・D”である。ここで”D/2>L”の場合には、バッフル板80の直径が小さ過ぎてしまい、バッフル板80を設けた効果が消失してしまう。また、”L>2・D”の場合には、バッフル板80を設けた効果が飽和するのでバッフル板80の直径の上限は”2D”で十分である。また、”D/2≦L<D”に設定すれば、バッフル板80の直径は、ガス供給口84(ガスノズル82の径)よりも小さくなるので、このガスノズル82と共にバッフル板80を原料貯留槽68の天井の取付口に対して着脱させることができ、メンテナンス作業を容易にすることができる。
【0033】
また、”L≧D”のように設定した場合には、その分、挿通孔81及びフランジ部83を大きく設定して、ガスノズル82の着脱が可能となるようにしている。また、上記メッシュ部材86の粗さは、0.1〜1.0μm程度の範囲内であり、例えば0.4μmであって、キャリアガスの流れの勢いを十分に弱めることができるように設定されている。また、このメッシュ部材86の上下方向の長さは、10〜50mm程度である。
【0034】
図1に戻って、上記キャリアガス通路78の途中には、その上流側から下流側に向けてガス流量を制御するためのマスフローコントローラのような流量制御器90及び開閉弁92が順次介設されている。このキャリアガスは、例えば2.5kg/cm
2 程度の高い圧力で供給される。ここでは上記キャリアガスとしては、アルゴンガスが用いられているが、これに限定されず、他の希ガス、例えばHe等を用いてもよい。
【0035】
一方、上記反応ガス供給系64は、残りの2本のガス分散ノズルの内の一方のガス分散ノズル32に接続された反応ガス通路102を有している。この反応ガス通路102の途中には、マスフローコントローラのような流量制御器104及び開閉弁106が順次介設されており、必要に応じて上記反応ガスを流量制御しつつ供給できるようになっている。
【0036】
ここで上記反応ガスとしては、酸化ガス、例えばオゾン(O
3 )が用いられ、Zrを含む原料を酸化して酸化ジルコニウムを成膜できるようになっている。また、上記パージガス供給系65は、残りの
1本のガス分散ノズル33に接続されたパージガス通路108を有している。このパージガス通路108の途中には、マスフローコントローラのような流量制御器110及び開閉弁112が順次介設されており、必要に応じて上記パージガスを流量制御しつつ供給できるようになっている。上記パージガスとしては、例えばN
2 ガス等の不活性ガスが用いられている。
【0037】
以上のように構成された熱処理装置2の全体の動作は、例えばコンピュータ等よりなる装置制御部116により制御されるようになっており、この動作を行うコンピュータのプログラムは、記憶媒体118に記憶されている。この記憶媒体118は、例えばフレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、ハードディスク、フラッシュメモリ或いはDVD等よりなる。具体的には、この装置制御部116からの指令により、各ガスの供給の開始、停止や流量制御、プロセス温度やプロセス圧力の制御等が行われる。
【0038】
次に、以上のように構成された熱処理装置2を用いて行われる成膜方法について説明する。ここでは原料としてトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム[C
11H
23N
3 Zr]を用い、反応ガスとして酸化ガスであるオゾンを用いて酸化ジルコニウムの薄膜を形成する場合を例にとって説明する。
【0039】
具体的には、上記原料ガスと反応ガス(オゾン)とをそれぞれ一定の供給期間で交互にパルス状に供給する供給工程と供給を停止する停止工程とよりなる1サイクルを複数回繰り返し実行して上記薄膜を形成するようにしている。
【0040】
上記原料ガスを供給する場合には、上記原料ガス供給系62において、原料貯留槽68内で加熱により原料66が気化されて飽和状態になっており、この原料貯留槽68内へガス供給部74を介して流量制御されたキャリアガスを供給することにより、上記飽和状態の原料ガスはキャリアガスに伴われてガス流出部76から原料ガス通路70側へ流出する。そして、キャリアガスと共に搬送された原料ガスは、処理容器8内に設けたガス分散ノズル30から噴射されて処理容器8内へ供給される。
【0041】
また、反応ガスを供給する場合には、上記反応ガス供給系64において反応ガスが流量制御されつつ反応ガス通路102内を流され、この反応ガスがガス分散ノズル32のガス噴射孔32Aから噴射されて処理容器8内へ供給される。更に、パージガスを供給する場合には、上記パージガス供給系65においてパージガスが流量制御されつつパージガス通路108内を流され、このパージガスがガス分散ノズル33のガス噴射孔33Aから噴射されて処理容器8内へ供給される。
【0042】
上記処理容器8内へ供給されたガスは、各ウエハWと接触しつつウエハ間を横方向(水平方向)へ流れて排気口36を介して内筒4と外筒6との間の間隙へ流入し、更にこのガスは上記間隙内を流下してガス出口44より真空排
気系46により容器外へ排出されて行くことになる。
【0043】
実際の手順では、まず、常温の多数枚、例えば50〜150枚の300mmサイズのウエハWが載置された状態のウエハボート12を予め所定の温度になされた処理容器8内にその下方より上昇させてロードし、蓋部18でマニホールド10の下端開口部を閉じることにより容器内を密閉する。
【0044】
そして処理容器8内を真空引きして0.1〜3torr程度に維持すると共に、加熱手段54への供給電力を増大させることにより、ウエハ温度を上昇させてプロセス温度、例えば250℃程度を維持する。そして、ガス供給装置60の原料ガス供給系62及び反応ガス供給系64を駆動することにより、前述したように原料ガスとオゾンとを交互に処理容器8内へ供給し、ウエハWの表面に酸化ジルコニウムの薄膜を積層することになる。具体的には、原料ガス供給系62の原料貯留槽68では、原料加熱ヒータ69により原料66が加熱されて、この原料貯留槽68内の原料ガスが発生して飽和状態になっている。
【0045】
成膜処理(熱処理)を開始すると、まず、Arよりなるキャリアガスを原料貯留槽68内へ流し、上記原料貯留槽68内の原料ガスをキャリアガスと共に処理容器8内へ流す原料ガス供給工程を行う。これにより、ウエハWの表面に原料ガスを付着させる。
【0046】
この時の流量は、キャリアガスが2〜15slmの範囲内であり、例えば7slmであり、ガスを流す時間は、例えば1〜10秒の範囲内のほんの僅かな時間である。ここでは例えば5秒程度である。
【0047】
次に、キャリアガス及び原料ガスの供給を停止した状態で処理容器8内の残留ガスを排除するパージ工程を行う。このパージ工程では全てのガスの供給を停止して処理容器8内の残留ガスを排除したり、或いは不活性ガスよりなるパージガスであるN
2 を処理容器8内へ供給して残留ガスと置換したりしてもよく、更には両者を組み合わせてもよい。この時のN
2 ガスの流量は0.5〜15slmの範囲内であり、ここでは10slmである。このパージ工程は4〜120秒の範囲内であり、ここでは60秒程度行っている。
【0048】
上述のようにパージ工程が終了したならば、次に反応ガス供給工程を行う。ここでは反応ガス供給系64を用いてオゾンよりなる反応ガスを処理容器8内へ供給する。これにより、ウエハWの表面に付着していた原料ガスとオゾンとが反応して酸化ジルコニアの薄膜が形成されることになる。この成膜を行う反応ガス供給工程のプロセス時間は、50〜200秒の範囲内、ここでは例えば100秒程度である。
【0049】
この反応ガス供給工程が終了したならば、処理容器8内の残留ガスを排除するパージ工程を行う。このようにして、上記した各工程を所定の回数だけ繰り返し行なって酸化ジルコニウムの薄膜を積層することになる。
【0050】
上述したような成膜処理を行うに際して、上記原料ガス供給系62においては、原料ガスを多量に処理容器8内へ導入する必要から、キャリアガスを上述のように多量に流して原料貯留槽68内へ供給する必要がある。この場合、従来の原料ガス供給系(ガス供給装置)にあっては、原料貯留槽68内へ例えば2.5kg/cm
2 程度の高い圧力で供給したキャリアガスが原料66の液面に激しく打ち付けられるので、液面に変動や気泡の混入を誘発し、パーティクルの発生の危惧が生じていた。
【0051】
しかしながら、本発明のガス供給装置60の場合には、原料ガス供給系62のガス供給部74にバッフル板80を設けているので、ガス供給口84から噴射されるキャリアガスが原料66の液面に直接的に当たることが阻止されることになり、結果的に液面変動や気泡の混入の誘発を阻止することができる。
【0052】
具体的には、ガス供給部74に設けたガスノズル82の下端のガス供給口84から直下に向けて勢いよく噴射されたキャリアガスは、下方に位置するバッフル板80に勢いよく打ち付けられてその勢いが弱められることになる。この勢いが弱められたキャリアガスは、このバッフル板80とガス供給口84との間を囲むようにして設けた微細な網目のメッシュ部材86により更にその勢いが弱められながら、且つその進行方向を斜め下方、或いは水平方向へ変えながらこのメッシュ部材86を通過して原料貯留槽68内の上部空間部68Aに供給されることになる。従って、勢いの強いキャリアガスが原料66の液面に直接的に当たることを阻止することができ、この結果、液面変動(揺動)や気泡の混入が阻止されてパーティクルの発生を防止することができる。
【0053】
以上のように、本発明によれば、有機金属材料よりなる液状の原料66から発生した原料ガスをキャリアガスを用いて被処理体Wに熱処理を施す処理容器8へ供給する原料ガス供給系62を有するガス供給装置において、液状の原料66を貯留する原料貯留槽68のガス供給部74に、このガス供給部74から噴射されるキャリアガスが原料66の液面に直接的に当たることを阻止するためのバッフル板80を設けてキャリアガスが液面に強く当たることを阻止するようにしたので、原料66の液面が大きく揺れたり、この液面に気泡が混入することを防止することができる。従って、パーティクルの発生が抑制されて被処理体の表面にパーティクルが付着することを防止することができる。
【0054】
<バッフル板の評価>
ここで、先に説明した本発明のガス供給装置60の評価実験を行ったので、その評価結果について
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は本発明のガス供給装置の評価結果を示すグラフであり、横軸にキャリアガスの流量をとり、縦軸にウエハ上に付着したパーティクル量をとっている。ここでは、ガスノズル82のガス供給口84の直径Dを3.2mm、バッフル板80の直径Lを2.0mm、ガス供給口84とバッフル板80との間の距離を32mmにそれぞれ設定した。またメッシュ部材86としては、メッシュの大きさが0.4μmのものを用いた。
【0055】
図4から明らかなように、バッフル板無しの従来のガス供給装置の場合には、キャリアガスを増加すると当初はパーティクルはほとんどゼロであったが、5リットル/minを越えてキャリアガス流量が多くなるとパーティクル量が次第に増加してきた。これに対して、バッフル板有りの本発明のガス供給装置では、キャリアガスの流量を増加してもパーティクルはほとんど発生せず、18slmを過ぎて23slmまでは、パーティクルはほとんどゼロであり、23slmを越えてキャリアガス流量が多くなるとパーティクル量が次第に増加してきた。そして、キャリアガスの流量が18slm程度までは、バッフル板無しでキャリアガスの流量が2slm程度の時の液面状態と同様で有り、ほとんど揺れ無しの状態であった。このように、ガス供給部74にバッフル板80を設けることにより、パーティクルの発生を抑制できることが理解できる。
【0056】
図5はキャリアガスの流量及びバッフル板−液面間の距離と原料液面の状態との関係を示す図である。ここではキャリアガスの流量を増加しつつその時の原料液面の状態を視認により観察した。バッフル板と液面との間の距離は1〜6cmまで変化させた。また、キャリアガスの流量は1〜18リットル/minの範囲内で変化させた。ガス供給部74及びバッフル板80の各寸法等は
図4において説明した場合と同じである。尚、バッフル板”無”は、従来のガス供給装置を示している。
【0057】
図5から明らかなように、バッフル板”無”の従来のガス供給装置にあっては、バッフル板−液面間の距離が1〜6cmの全ての範囲で且つキャリアガスの流量が1slmの時には液面の”揺れ有り”となっており、この状態でキャリアガスの流量を増加して行くと、液面の揺れは”小”から”中”及び”大”へ順に変化して行く。また、これと同時に、液面にキャリアガスの勢いに負けて”窪み有り”の状態が発生している。上記傾向は、バッフル板と液面間の距離が短くなる程、激しくなっている。特に、バッフル板と液面間の距離が1cm及び3cmの場合であってキャリアガスの流量が18slmの場合には、液面に”気泡有り”の状態が見られ、パーティクルが多量に発生することが予想され、好ましくない状態となっていることが判る。
【0058】
これに対して、バッフル板”有り”の本発明のガス供給装置にあっては、バッフル板と液面間の距離が3cm及び6cmで且つキャリアガスの流量が18slmの場合及びバッフル板と液面間の距離が1cmで且つキャリアガスの流量が18slmの場合にのみ液面の”揺れ有り”が観察されるだけで、他の条件の場合には全て”揺れ無し”であり、パーティクルの発生抑制効果を十分に発揮できることが判った。
【0059】
<変形実施例>
次に、本発明のガス供給装置の変形実施例について
図6を参照して説明する。
図6は本発明のガス供給装置の原料ガス供給系におけるガス供給部の変形実施例を示す部分拡大図であり、
図6(A)は第1変形実施例を示し、
図6(B)は第2変形実施例を示し、
図6(C)は第3変形実施例を示す。尚、
図1乃至
図3に示す構成部分と同一構成部分については同一参照符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
[第1変形実施例]
先の実施例においては、バッフル板80を支持するためにメッシュ部材86を用いたが、これに限定されず、支持アームでバッフル板80を支持するようにしてもよい。このような第1変形実施例は、
図6(A)に示されており、図示するようにここではメッシュ部材86(
図3参照)を設けておらず、これに替えて支持アーム120を設けている。すなわち、ガス供給部74のガスノズル82の先端のガス供給口84とバッフル板80との間を、1本或いは複数本の細い支持アーム120で連結してこれを支持するようになっている。図示例では2本の支持アーム120でバッフル板80を支持するようになっている。この支持アーム120は、耐腐食性材料、例えばステンレススチールにより形成することができる。
【0061】
この第1変形実施例の場合には、メッシュ部材86を設けていないので、メッシュ部材86によるキャリアガスの勢いの抑制作用はなくなるが、それでもこの第1変形実施例の場合にも先の実施例と同様な作用効果を発揮することができる。尚、先に
図1乃至
図3を参照して説明した先の実施例の変形態様はここでも適用することができるのは勿論である。
【0062】
[第2変形実施例]
また、先の実施例では直線状のガスノズル82を設けたが、これに替えて、
図6(B)に示す第2変形実施例のように所定の角度、例えば直角にL字状に曲がったL字状のガスノズル82を用いてもよい。この場合には、ガスノズル82からのキャリアガスのガス噴射方向は水平方向、すなわち原料66の液面と平行となるように設定されることになる。
【0063】
この場合には、ガスノズル82のガス供給口84から水平方向へ噴射されるキャリアガスが斜め下方向へ拡散して直接的に原料66の液面に当たることを防止するために、バッフル板80Aを、ガス供給口84より前方に向けてガス噴射方向の下面側に沿って原料66の液面と平行になるように延在させて設けるようにする。
【0064】
この場合、このバッフル板80Aは方形状、例えば長方形状に成形されている。このバッフル板80Aの上方の空間は、開放状態としてもよいが、ここでは上記ガス供給口84の前方とバッフル板80Aの上方を囲むようにしてメッシュ部材86を設けている。この第2変形実施例の場合にも先の実施例と同様な作用効果を発揮することができる。
【0065】
[第3変形実施例]
上記第2変形実施例では、L字状に屈曲されたガスノズル82を用いたが、これに替えて、
図6(C)に示す第3変形実施例のように、ガスノズル82は直線状に成形され、先端のガス供給口84の近傍のバッフル板80Aやメッシュ部材86の構造が第2変形実施例と同様に構成されたガスノズル82を、原料貯留槽68の側壁122に着脱可能に取り付けるようにしてもよい。この第3変形実施例の場合にも先の実施例と同様な作用効果を発揮することができる。
【0066】
尚、上記各実施例においては、ガス供給部74にガスノズル82を設けた構造となっているが、これに限定されず、ガスノズル82自体を用いずに原料貯留槽68の天井71に直接的に孔を形成し、この孔をガス供給口84として形成してもよい。また、ここではガス供給装置60を、一度に複数枚の半導体ウエハWを処理することができる、いわゆるバッチ式の熱処理装置2に適用した場合を例にとって説明したが、これに限定されず、半導体ウエハWを1枚ずつ処理する枚葉式の熱処理装置にも本発明を適用できるのは勿論である。
【0067】
また、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、この半導体ウエハにはシリコン基板やGaAs、SiC、GaNなどの化合物半導体基板も含まれ、更にはこれらの基板に限定されず、液晶表示装置に用いるガラス基板やセラミック基板等にも本発明を適用することができる。