特許第5761108号(P5761108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761108
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】固体絶縁母線の終端接続部
(51)【国際特許分類】
   H02G 5/06 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   H02G5/06 321
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-87191(P2012-87191)
(22)【出願日】2012年4月6日
(65)【公開番号】特開2013-219887(P2013-219887A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】田野井 智
(72)【発明者】
【氏名】松栄 豊和
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−113380(JP,U)
【文献】 特開2002−247719(JP,A)
【文献】 特開2009−261215(JP,A)
【文献】 特開平06−269115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 5/00−5/10
H02B 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に開口部が形成された母線導体と外周を被覆する絶縁層とを有する絶縁母線、前記開口部に挿入される挿入部と該挿入部を前記開口部に挿入した状態で前記絶縁母線の端部から突出する突出部とを有する接続導体、及び前記挿入部の外周面に周方向に設けられて該挿入部を前記開口部に挿入した状態で該開口部の内周面と接触するバネ性端子を備える固体絶縁母線と、
水平方向、及び垂直方向に互いに交差する貫通孔を有するアダプタと、
前記アダプタの外周を覆う成形体と、を備え、
前記成形体には、少なくとも前記アダプタの水平方向の貫通孔に対応する位置に前記固体絶縁母線を挿入するための挿入孔が形成され、
前記固体絶縁母線を前記挿入孔に挿入して前記突出部を前記アダプタの水平方向の貫通孔に固定することを特徴とする固体絶縁母線の終端接続部。
【請求項2】
前記固体絶縁母線の端面と、前記挿入孔の内部において前記端面と対向する前記成形体との間に空隙部を設けたことを特徴とする請求項に記載の固体絶縁母線の終端接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キュービクル型のガス絶縁開閉装置(GIS)や真空絶縁開閉装置等の受電盤間の連絡用として使用される固体絶縁母線、及び固体絶縁母線の終端接続部に関し、特に、護衛艦等の船舶に搭載される受電盤に使用される固体絶縁母線、及び固体絶縁母線の終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の真空絶縁開閉装置は、外部からの高圧電流をケーブルにより供給し、複数の受電盤を並列に設置する列盤構造からなる。各受電盤間は水平方向に開口を有するT字型のクロスアダプタを介して盤間連絡用の固体絶縁母線で相互に電気的に接続されている。かかる固体絶縁母線は、三相(w相、v相、u相)に用いられ、それぞれのクロスアダプタの位置を斜めにずらしながら各受電盤内に配設されている。なお、両端に位置する受電盤にはクロスアダプタではなく、逆L字型のエンドアダプタを用いて電気的な接続を行う。
【0003】
図5は、従来の固体絶縁母線の終端接続部を示す部分断面図である。
【0004】
終端接続部は、主として上下に二分割された構造のクロスアダプタ接続導体110と、導体111の上に絶縁層112を被覆した固体絶縁母線113と、ブッシング側接続導体120と、その外周を覆うブッシング側モールド260と、モールド121と、スタッドボルト122とを備えている。また、クロスアダプタ接続導体110は水平方向及び垂直方向に互いに交差する貫通孔を備えており、垂直方向の貫通孔にはスタッドボルト122を挿入してブッシング側接続導体120の凹部(ネジ穴)と螺合させると共に、水平方向の貫通孔には固体絶縁母線113の導体部分がそれぞれ挿入されている。そして、この導体部分は挿入されたスタッドボルト122を挟むように対向配置され、上側からスタッドボルト122にナット123を螺合することで、二分割構造のクロスアダプタ接続導体110を介して導体部分を挟み込んで固定されている。
【0005】
かかる固体絶縁母線の終端接続部の構造は、簡易に高電圧電流を供給する構造として優れたものであるが、特に受電盤の使用環境に応じて終端接続部の構造を改善する必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】nkt cable GmbH、製品カタログ、Sammelschienensystem 24 kV Busbar-System 24 kV、Edition 01.05.2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
護衛艦等の艦船は動力源のハイブリッド化が急速に進み、近年では大電流の受電盤を搭載することが要求されている。
【0008】
かかる用途に使用される電気機器は、防衛省規格に記載の基準に合格する必要がある。具体的には、艦船の振動や外部からの攻撃を受けた場合等の衝撃に耐え得る耐久性を有する必要がある。特に固体絶縁母線の終端接続部には、振動や衝撃に起因して過大な応力が加わることで接続不良を起こし、電圧が上昇するおそれがある。
【0009】
また、受電盤の発熱等の影響により隣接する受電盤同士が変位したり、また受電盤を搭載する艦船の床面の高さが変位することで、各受電盤のクロスアダプタにおける水平方向の貫通孔の中心軸がずれてしまう。その結果、貫通孔の中心軸と固体絶縁母線の中心軸との間に角度変位が生じて、固体絶縁母線の導体部分とクロスアダプタ接続導体との接触不良を起こし、終端接続部の電圧を上昇させる要因となる。
【0010】
また、仮に固体絶縁母線が損傷を受けた場合に、この部分だけを容易に交換できる終端接続部の構造が望まれている。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたもので、その目的は、従来構造に比してクロスアダプタの貫通孔の中心軸と固体絶縁母線の中心軸との間の角度変位を低減することができ、かつ、簡易な手法により交換が可能な固体絶縁母線、及び固体絶縁母線の終端接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明の固体絶縁母線の終端接続部は、端部に開口部が形成された母線導体と外周を被覆する絶縁層とを有する絶縁母線、前記開口部に挿入される挿入部と該挿入部を前記開口部に挿入した状態で前記絶縁母線の端部から突出する突出部とを有する接続導体、及び前記挿入部の外周面に周方向に設けられて該挿入部を前記開口部に挿入した状態で該開口部の内周面と接触するバネ性端子を備える固体絶縁母線と、水平方向、及び垂直方向に互いに交差する貫通孔を有するアダプタと、前記アダプタの外周を覆う成形体とを備え、前記成形体には、少なくとも前記アダプタの水平方向の貫通孔に対応する位置に前記固体絶縁母線を挿入するための挿入孔が形成され、前記固体絶縁母線を前記挿入孔に挿入して前記突出部を前記アダプタの水平方向の貫通孔に固定することを特徴とする。
【0013】
また、前記固体絶縁母線の端面と、前記挿入孔の内部において前記端面と対向する前記成形体との間に空隙部を設けることが好ましい。
【0014】
上述した従来例においては、母線導体とアダプタとの接続が、スタッドボルトとナットとを用いた螺合により固定されたものであるため、アダプタと固体絶縁母線との角度変位、及び振動や衝撃を吸収する機構を備えていない。そのため、従来例は振動試験や衝撃試験等に対する十分な耐久性を備えているとはいえず、振動や衝撃に対する長期信頼性には限界があった。
【0015】
一方、本発明の固体絶縁母線は、端部に開口部が形成された母線導体を有する絶縁母線と、前記開口部に挿入される挿入部を有する接続導体と、前記挿入部の外周面に周方向に設けられて該挿入部を前記開口部に挿入した状態で該開口部の内周面と接触するバネ性端子とを備える構造であるため、外部からの振動や衝撃により生じた力はバネ性端子の変形により吸収される。これにより、アダプタの貫通孔の中心軸と母線導体の中心軸との間に角度変位が生じた場合においても、バネ性端子が摺動変形することで良好な接触状態を維持することができる。
【0016】
また、従来例の終端接続部は、母線導体がアダプタによって挟持されて固定されるため、スタッドボルトに螺合したボルトを緩めないと固体絶縁母線を接続部から取り外すことができない構造である。
【0017】
一方、本発明は、アダプタに固定されるのは接続導体だけであり、絶縁母線はこれに固定されていない。接続導体と絶縁母線とは、接続導体の挿入部の外周面に設けられたバネ性端子が母線導体の開口部の内周面に接触する構造であって、固定されるものではないため、バネ性端子を備えた接続導体をアダプタ側に残し、接続導体と絶縁母線とを容易に切り離すことができる。このため、絶縁母線を簡易な手法で交換することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来構造に比してクロスアダプタの貫通孔の中心軸と固体絶縁母線の中心軸との間の角度変位を低減することができ、かつ、簡易な手法により交換が可能な固体絶縁母線、及び固体絶縁母線の終端接続部を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る絶縁母線を示す部分断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る固体絶縁母線を示す部分断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る固体絶縁母線の終端接続部を示す部分断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る固体絶縁母線の終端接続部を示す部分断面図である。
図5】従来の固体絶縁母線の終端接続部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態に使用する絶縁母線5の部分断面図を示している。絶縁母線5は、中心に配置された母線導体1と、その外周を覆う絶縁体からなる絶縁層2と、絶縁層2の外周に塗布された導電層3とを備えている。
【0022】
母線導体1の両端には開口部21がそれぞれ形成されている。この開口部21は、後述する接続導体18の挿入部13を収容するためのものである。この開口部21の形成方法は特に限定されるものではなく、例えば切削加工により形成することができる。
【0023】
母線導体1の材質は特に限定されるものではなく、例えば銅、銅合金、アルミ、アルミ合金の何れであってもよい。また、その形状も限定されず、電流容量に応じた断面積があれば断面丸形や角形のものでもよい。また、母線導体1の構造も特に限定されるものではなく、中心に貫通孔が形成された構造の中空導体や、充実導体であってもよい。また、導電性を考慮すると、開口部21の内周面には銀メッキ等の貴金属メッキを被覆することが好ましい。
【0024】
絶縁層2の材質は特に限定されるものではなく、例えば母線導体1の外周面をサンドブラスト処理した後にエポキシ樹脂等が被覆される構造を採用することができる。また、導電層3はAgフィラーを混ぜ込んだエポキシ樹脂を塗布する構造や、絶縁層2の外周に金属コイルをスパイラル状に巻きまわした構造や、その他金属材料をスパッタリングするような構造であってもよい。その他必要に応じて、導電性塗料(導電層)3の外周を外被4で覆う構造にすることもできる。この外被4は外傷から絶縁母線5を保護するものであり、その限りにおいて特に材質を限定されるものではないが、例えば架橋ポリエチレン等を用いるのが好適である。この外被4の形成方法は押出法でもよく、また加熱することで収縮する加熱収縮チューブを用いるものであってよい。
【0025】
図2は、本実施形態に係る固体絶縁母線50の部分断面図を示している。
【0026】
接続導体18は、母線導体1の両端に形成された開口部21の内部に挿入される挿入部13と、絶縁母線5の端部から突出する突出部14と、これら挿入部13と突出部14とを繋ぐ中央部15とを備えている。これら挿入部13と突出部14と中央部15とは一体形成される部材であって、その材質は特に限定されるものではなく、例えば銅、アルミ等を使用することができる。また、導電性を考慮すると、銀メッキ等の貴金属をメッキ被覆する構成が好ましい。
【0027】
挿入部13の外周面には周方向に二本の環状溝16が形成されると共に、この環状溝16の内部にはバネ性端子17がそれぞれ巻き付けられている。このバネ性端子17は、バネ弾性により挿入部13の外周面と開口部21の内周面とを弾性的に接触させる構造であれば、その形状は特に限定されるものではなく、例えばステンレス素材からなる長尺のキャリアに形成された複数の開口のそれぞれに、銅素材に銀メッキを施したルーバー部を形成する連続構造を採用することができる。また、バネ性端子17は二条の構成に限定されず、接触点数が少なくてもよい場合は一条の構成であってもよく、必要に応じて三条の構成であってもよい。
【0028】
本実施形態の固体絶縁母線50は、母線導体1の両端に形成された開口部21に接続導体18の挿入部13をそれぞれ収納することで、挿入部13の外周面(環状溝16)に巻き付けられたバネ性端子17と開口部21の内周面とが弾性的に接触すると共に、絶縁母線5の両端から接続導体18の突出部14が突出するように構成されている。このような構成により、外部からの振動や衝撃により生じた力はバネ性端子17の変形により吸収されて、後述するアダプタ11の貫通孔の中心軸と母線導体1の中心軸との間に角度変位が生じたとしても良好な接触状態を維持することができる。
【0029】
図3は、本発明の一実施形態に係る固体絶縁母線の終端接続部60の部分断面図を示している。終端接続部60は主に絶縁母線5と、接続導体18と、スタッドボルト7と、ナット8と、絶縁栓9と、遮蔽キャップ10と、アダプタ11と、ブッシング側導体12と、その外周を覆うブッシング側モールド26と、モールド(以下、成形体という)19とを備えている。
【0030】
アダプタ11としては、水平方向及び垂直方向に互いに交差する貫通孔が形成されたクロスアダプタ接続導体11を用いることができる。クロスアダプタ接続導体11の外周を覆う成形体19にも、クロスアダプタ接続導体11の貫通孔の位置と整合するように、水平方向及び垂直方向に互いに交差する貫通孔が形成されている。
【0031】
成形体19の水平方向の貫通孔は、固体絶縁母線50を挿入する挿入孔として機能する。また、成形体19の垂直方向の貫通孔は、下側の貫通孔はブッシング側導体12を挿入する挿入孔として機能し、上側の貫通孔はスタッドボルト7を挿入する挿入孔として機能する。
【0032】
クロスアダプタ接続導体11、及び成形体19の垂直方向の貫通孔に、その上側からスタッドボルト7を挿入すると共に下側からブッシング側導体12を挿入して、スタッドボルト7とブッシング側導体12の凹部(ネジ穴)とを螺合させる。
【0033】
成形体19の水平方向の貫通孔に対してその両側から固体絶縁母線50をそれぞれ挿入して、クロスアダプタ接続導体11の水平方向の貫通孔に接続導体18の突出部14を互いに対向するようにそれぞれ挿入する。クロスアダプタ接続導体11は上下に半割りされた二分割構造であり、スタッドボルト7にナット8を螺合することで、二分割構造のクロスアダプタ接続導体11の間に突出部14が挟持されて固定される。
【0034】
接続導体18の突出部14はクロスアダプタ接続導体11と固定されている一方、絶縁母線5はクロスアダプタ接続導体11側に固定されておらず、接続導体18が母線導体1の開口部21に接触する構造である。これにより、接続導体18をクロスアダプタ接続導体11側に残して、これらから絶縁母線5を容易に取り外すことが可能となり、絶縁母線5を簡易な手法で交換することができる。
【0035】
成形体19の上側の貫通孔には絶縁栓9を配置し、その上を遮蔽キャップ10で覆う。
【0036】
なお、スタッドボルト7、ナット8、絶縁栓9、遮蔽キャップ10、クロスアダプタ接続導体11、ブッシング側導体12、及び成形体19は、汎用されている公知の部品を用いることができる。
【0037】
クロスアダプタ接続導体11、及びブッシング側導体12は、その材質を特に限定されるものではなく、導電性材料であれば、例えば銅やアルミ等を用いることができる。
【0038】
成形体19は三層一体化構造の樹脂成形体であって、内部半導電層20と、絶縁性層22と、外部半導電層23とを備えている。成形体19の材質は特に限定されるものではないが、絶縁母線5の取り外しの容易性を考慮すればゴム材料を用いることが好ましく、例えばEPゴムを使用するこができる。
【0039】
また、固体絶縁母線50の端部と成形体19との間には空隙部40を形成することが好ましい。この空隙部40を形成することにより、固体絶縁母線50の長手方向における寸法誤差の部分や、通電時の熱影響により膨張した部分をこの空隙部40によって吸収することができる。
【0040】
図4は、本発明の他の実施形態に係る固体絶縁母線の終端接続部70の部分断面図を示している。この終端接続部70は固体絶縁母線50が片側からのみ挿入された構造である点で、図3に示す終端接続部60の構造と相違する。具体的には、アダプタとしてエンドアダプタ接続構造が採用されており、エンドアダプタ接続導体24の水平方向の貫通孔の一方には、スペーサ導体25を配置する点で、図3の終端接続部60の構造と相違する。かかるエンドアダプタ接続構造においても、図3の終端接続部60と同様の作用効果を奏することができる。なお、スペーサ導体25は汎用されている公知の部品を用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。直径が32mmであり、中心に直径20mmの貫通孔を有する銅からなる中空導体の上に厚さ10mmのエポキシ樹脂からなる絶縁層を形成し、その上に導電性塗料を塗布して導電層を形成し、その上に加熱収縮チューブを用いた外被を被せて直径58mmの絶縁母線を用意した。この絶縁母線の長さは360mmであった。導電性塗料はエポキシ樹脂中にAgフィラーを添加した導電材料(商品名:ドータイトD-435、藤倉化成株式会社)を使用した。この絶縁母線の両端から露出する中空導体に直径25mmの開口部を切削加工により形成した。
【0042】
接続導体は長さ84.5mmであり、挿入部は長さ45mm、突出部は長さ33.5mm、中央部は長さ6mmである。挿入部は直径24mm、突出部は直径20mm、中央部は直径32mmである。挿入部には、その周方向に二本の環状溝が形成されており、それぞれの溝にマルチラムバンド(MC-Multilam、LA-CUD/0.15、マルチコンタクト社)を巻き付けた。このような構造の接続導体を二個用意した。
【0043】
上述の絶縁母線の両端にそれぞれ形成された開口部に対して、接続導体の挿入部をそれぞれ収納させて固体絶縁母線を作製した。
【0044】
台板の上に縦70cm、横60cm、高さ70cmの外枠を設置し、外枠の上面に二つの固体絶縁母線の終端接続部を固定するための開口を有する基盤を設置し、この基盤に設けた開口のそれぞれに、図4に示すエンドアダプタ接続構造を設けた。
【0045】
具体的には、所定間隔を隔てて設置された二つのエンドアダプタ接続導体の貫通孔に、接続導体を両端に取り付けた一本の固体絶縁母線の両端をそれぞれ挿入した。そして、垂直方向の貫通孔にスタッドボルトを挿入してブッシング側導体と螺合し、二分割構造のエンドアダプタ接続導体を介して接続導体を挟み込み、六角ナットを螺合してこれらを固定した。また、上述のブッシング側導体をそれぞれ引き出しケーブルに電気的に接続した。このようにして試料を作製した。
【0046】
振動試験:防衛省規格(NDS XF 8017)に準拠して試験を実施した。振動を加える前に機器の状態を確認するために、耐電圧試験と部分放電試験とを実施した。
【0047】
(1)可変周波数振動試験:5Hzないし33Hzの周波数でX軸方向、Y軸方向、Z軸方向から表1に示す振幅の振動を与えた。
【0048】
【表1】
【0049】
振動を与える時間は、各周波数・各軸ごとに5分/Hz間とし、固体絶縁母線及びエンドアダプタの「通電」・「無通電」の二状態でほぼ等分した時間を加振した。印加電圧はAC450Vとし、両引き出しケーブル端間の電圧を測定して異常がないか確かめた。
【0050】
(2)振動耐久試験:5Hzないし33Hzの周波数で0.25mmの振幅の振動を与え、機器は無通電の状態にし、振動を与える時間は約15秒/Hzとして共振周波数を求めた。ここで求めた共振周波数をそれぞれ20分間、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及び通電状態と無通電状態との合計二時間加えた。共振がみられない場合は、振動を33Hzで行った。印加電圧はAC450Vとして異常がないか確かめた。
【0051】
また、上述の(1)及び(2)の試験において、試料の外観に異常がないか確かめた。
【0052】
衝撃試験:防衛省規格(NDS F 8005B HI1A)に準拠して試験を実施した。衝撃を加える前に機器の状態を確認するため、耐電圧試験と部分放電試験とを実施した。上述の試料をアンビルプレートに取り付け、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各方向に対して総重量180kgの横打ハンマーの高さを30cm、90cm、15cmに変化させて三種類の試験衝撃をアンビルプレートに打撃を加えることで試料に衝撃を与えた。AC450Vの通電状態としてケーブル端間の電圧を測定した。
【0053】
本発明の実施例を用いた試料は、振動試験及び衝撃試験の何れにおいても、電圧及び外観に異常がないことを確認した。実施例では、外部からの衝撃や振動により発生する力をマルチラムバンドで吸収しているため、このような試験の後も電圧上昇等の異常、及び外観の異常は認められなかった。
【符号の説明】
【0054】
1 母線導体
2 絶縁層
5 絶縁母線
7 スタッドボルト
8 ナット
11 クロスアダプタ接続導体(アダプタ)
12 ブッシング側導体
13 挿入部
14 突出部
16 環状溝
17 バネ性端子
19 成形体
18 接続導体
21 開口部
50 固体絶縁母線
60 終端接続部
図1
図2
図3
図4
図5