(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリシロキサンが、さらに、下記式(4)で表されるアルコキシシランを含有するアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサンである、請求項1〜3のいずれかに記載の液晶配向剤。
(R5)nSi(OR6)4−n (4)
(R5は、水素原子、又はヘテロ原子、ハロゲン原子、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、イソシアネート基若しくはウレイド基で置換されていてもよい、炭素原子数1〜6の炭化水素基であり、R6は炭素原子数1〜5のアルキル基であり、nは0〜3の整数を表す。)
前記ポリシロキサンが、式(1)で表されるアルコキシシランを全アルコキシシラン中、0.1〜30モル%含み、かつ前記式(2)で表されるアルコキシシランを全アルコキシシラン中、3〜70モル%含むアルコキシシランを重縮合して得られる請求項1〜5のいずれかに記載の液晶配向剤。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明について詳細に説明する。
[ポリシロキサン]
本発明は、式(1)で表されるアルコキシシラン及び式(2)で表されるアルコキシシランを含むアルコキシシランを重縮合して得られるポリシロキサンを含有するPSA方式用液晶配向剤である。
R
1Si(OR
2)
3 (1)
R
1はフッ素原子で置換されていてもよい炭素原子数8〜30の炭化水素基であり、R
2は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。なお、本明細書において「置換されていてもよい」とは、「置換された又は置換されていない」を意味する。
【0017】
【化3】
R
3は、炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、R
4は炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【0018】
式(1)で表されるアルコキシシランのR
1(以下、特定有機基ともいう)は、フッ素で置換されていてもよい炭素原子数が8〜30、好ましくは8〜22の炭化水素基であって、液晶を垂直に配向させる効果を有するものであれば特に限定されない。それらの例としては、アルキル基、フルオロアルキル基、アルケニル基、フェネチル基、スチリルアルキル基、ナフチル基、フルオロフェニルアルキル基等が挙げられる。これらの中でも、R
1がアルキル基、又はフルオロアルキル基であるアルコキシシランは比較的安価で市販品として入手が容易であるため好ましい。特に、R
1がアルキル基であるアルコキシシランが好ましい。本発明に用いるポリシロキサンは、これらの特定有機基を複数種有していてもよい。
【0019】
式(1)で表されるアルコキシシランのR
2は、炭素原子数1〜5、好ましくは1〜3のアルキル基である。より好ましくは、R
2がメチル基又はエチル基である。
かかる式(1)で表されるアルコキシシランの具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
【0020】
例えば、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ノナデシルトリメトキシシラン、ノナデシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、21−ドコセニルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、m−スチリルエチルトリメトキシシラン、p−スチリルエチルトリメトキシシラン、(1−ナフチル)トリエトキシシラン、(1−ナフチル)トリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ノナデシルトリメトキシシラン、ノナデシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、又はウンデシルトリメトキシシランが好ましい。
【0021】
上述した特定有機基を有する式(1)で表されるアルコキシシランは、ポリシロキサンを得るために用いる全アルコキシシラン中において、良好な液晶配向性を得るため、0.1モル%以上が好ましい。より好ましくは0.5モル%以上である。更に好ましくは1モル%以上である。また、形成される液晶配向膜の充分な硬化特性を得るためには、30モル%以下が好ましい。より好ましくは22モル%以下である。
【0022】
式(2)で表されるアルコキシシランのR
3(以下、第二の特定有機基ともいう)は、炭素原子数1〜18、好ましくは1〜12の炭化水素基であって、脂肪族炭化水素;脂肪族環、芳香族環及びヘテロ環のような環構造;及び酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子等を含んでいてもよい。好ましくはアルキレン基、フェニレン基である。アルキレン基の炭素原子数は1〜18であり、より好ましくは1〜12である。フェニレン基は、下記(3)式で表され、m、nはそれぞれ0〜6の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。
【0023】
【化4】
式(2)で表されるアルコキシシランのR
4は、上記した式(1)におけるR
2の定義と同じであり、また、R
4の好ましい基もR
2の場合と同じである。
【0024】
式(2)で表されるアルコキシシランの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではでない。例えば、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ブテニルトリメトキシシラン、ブテニルトリエトキシシラン、ペンテニルトリメトキシシラン、ペンテニルトリエトキシシラン、ヘキシニルトリメトキシシラン、ヘキシニルトリエトキシシラン、ヘプテニルトリメトキシシラン、ヘプテニルトリエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、オクテニルトリエトキシシラン、ウンデシニルトリメトキシシラン、ウンデシニルトリエトキシシラン、アリロキシウンデシルトリメトキシシラン、アリロキシウンデシルトリエトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリエトキシシラン、ビニルフェニルエチルトリメトキシシラン、ビニルフェニルエチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
PSA方式において液晶に添加される重合性化合物の量が少ない場合、及び、重合性化合物を添加していない液晶が使用される場合においても、液晶表示素子の応答速度を向上するためには、第二の特定有機基を有する式(2)で表されるアルコキシシランは、ポリシロキサンを得るために用いる全アルコキシシラン中において、3モル%以上が好ましい。より好ましくは5モル%以上である。更に好ましくは10モル%以上である。また、形成される液晶配向膜を充分に硬化させるためには、70モル%以下が好ましい。
本発明では、式(1)で表されるアルコキシシランが、使用される全アルコキシシラン中、好ましくは0.1〜30モル%、特に好ましくは2〜20モル%含まれ、かつ式(2)で表されるアルコキシシランが使用される全アルコキシシラン中、3〜70モル%、特に好ましくは5〜30モル%含まれるのが好ましい。
【0026】
本発明では、ポリシロキサンを得る場合、式(1)及び式(2)で表されるアルコキシシラン以外に、下記式(4)で表されるアルコキシシランを使用することもできる。式(4)で表されるアルコキシシランは、ポリシロキサンに種々の特性を付与させることが可能であるため、必要特性に応じて一種又は複数種を選択して用いることができる。
(R
5)
nSi(OR
6)
4−n (4)
R
5は、水素原子、又はヘテロ原子、ハロゲン原子、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、イソシアネート基若しくはウレイド基で置換されていてもよい、炭素原子数1〜6の炭化水素基である。R
6は炭素原子数1〜5、好ましくは1〜3のアルキル基であり、nは0〜3、好ましくは0〜2の整数を表す。
【0027】
式(4)で表されるアルコキシシランのR
5は水素原子、又は炭素原子数が1〜6の有機基(以下、第三の有機基ともいう)である。第三の有機基の例としては、脂肪族炭化水素;脂肪族環、芳香族環、ヘテロ環のような環構造;不飽和結合;酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子等を含んでいてもよく、分岐構造を有していてもよい、炭素原子数が1〜6の有機基である。この有機基はハロゲン原子、アミノ基、グリシドキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、ウレイド基などで置換されていてもよい。
【0028】
式(4)で表されるアルコキシシランの具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
式(4)のアルコキシシランにおいて、R
5が水素原子である場合のアルコキシシランの具体例としては、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリブトキシシラン等が挙げられる。
【0029】
また、式(4)のアルコキシシランにおいて、R
5が第三の有機基である場合のアルコキシシランの具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、2−アミノエチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、ブロモプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3―アミノプロピルジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン及びγ-ウレイドプロピルトリプロポキシシラン等が挙げられる。
【0030】
本発明に用いるポリシロキサンは、基板との密着性、液晶分子との親和性改善等を目的として、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記した式(4)で表されるアルコキシシランを一種又は複数種有していてもよい。
式(4)で表されるアルコキシシランにおいて、nが0であるアルコキシシランは、テトラアルコキシシランである。テトラアルコキシシランは、式(1)及び式(2)で表されるアルコキシシランと縮合し易いので、本発明のポリシロキサンを得るために好ましい。
このような式(4)においてnが0であるアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン又はテトラブトキシシランがより好ましく、特に、テトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが好ましい。
【0031】
式(4)で表されるアルコキシシランを併用する場合、式(4)で表されるアルコキシシランの使用量は、ポリシロキサンを得るために用いる全アルコキシシラン中において、10〜96.9モル%であることが好ましい。より好ましくは、35〜99.8モル%である。
【0032】
[ポリシロキサンの製造方法]
本発明に用いるポリシロキサンを得る方法は特に限定されない。本発明においては、上記した式(1)及び式(2)を必須成分とするアルコキシシランを有機溶媒中で縮合させて得られる。通常、ポリシロキサンは、このようなアルコキシシランを重縮合して、有機溶媒に均一に溶解した溶液として得られる。
ポリシロキサンを重縮合する方法として、例えば、アルコキシシランをアルコール又はグリコールなどの溶媒中で加水分解・縮合する方法が挙げられる。その際、加水分解・縮合反応は、部分加水分解及び完全加水分解のいずれであってもよい。完全加水分解の場合は、理論上、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.5倍モルの水を加えればよいが、通常は0.5倍モルより過剰量の水を加えるのが好ましい。
本発明においては、上記反応に用いる水の量は、所望により適宜選択することができるが、通常、アルコキシシラン中の全アルコキシ基の0.5〜2.5倍モルであるのが好ましい。
【0033】
また、通常、加水分解・縮合反応を促進する目的で、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、蟻酸、蓚酸、マレイン酸、フマル酸などの酸;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、トリエチルアミンなどのアルカリ;塩酸、硫酸、硝酸などの金属塩;などの触媒が用いられる。加えて、アルコキシシランが溶解した溶液を加熱することで、更に、加水分解・縮合反応を促進させることも一般的である。その際、加熱温度及び加熱時間は所望により適宜選択できる。例えば、50℃で24時間加熱・撹拌、還流下で1時間加熱・撹拌するなどの方法が挙げられる。
【0034】
また、別法として、例えば、アルコキシシラン、溶媒及び蓚酸の混合物を加熱して重縮合する方法が挙げられる。具体的には、あらかじめアルコールに蓚酸を加えて蓚酸のアルコール溶液とした後、該溶液を加熱した状態で、アルコキシシランを混合する方法である。その際、用いる蓚酸の量は、アルコキシシランが有する全アルコキシ基の1モルに対して0.2〜2モルとすることが好ましい。この方法における加熱は、液温50〜180℃で行うことができる。好ましくは、液の蒸発、揮散などが起こらないように、還流下で数十分から十数時間加熱する方法である。
【0035】
ポリシロキサンを得る際に、アルコキシシランを複数種用いる場合は、アルコキシシランをあらかじめ混合した混合物として使用してもよいし、複数種のアルコキシシランを順次混合してもよい。
アルコキシシランを重縮合する際に用いられる溶媒(以下、重合溶媒ともいう)は、アルコキシシランを溶解するものであれば特に限定されない。また、アルコキシシランが溶解しない場合でも、アルコキシシランの重縮合反応の進行とともに溶解するものであればよい。一般的には、アルコキシシランの重縮合反応によりアルコールが生成するため、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、又はアルコール類と相溶性の良好な有機溶媒が用いられる。
【0036】
このような重合溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール,ジアセトンアルコール等のアルコール類:エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、へキシレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のグリコールエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホトリアミド、m−クレゾール等が挙げられる。
【0037】
本発明においては、上記の重合溶媒を複数種混合して用いてもよい。
上記の方法で得られたポリシロキサンの重合溶液(以下、重合溶液ともいう。)は、原料として仕込んだ全アルコキシシランの有するケイ素原子をSiO
2に換算した濃度(以下、SiO
2換算濃度と称す。)が好ましくは20質量%以下、さらには5〜15質量%とすることがより好ましい。この濃度範囲において任意の濃度を選択することにより、ゲルの生成を抑え、均質な溶液を得ることができる。
【0038】
[ポリシロキサンの溶液]
本発明においては、上記の方法で得られた重合溶液をそのままポリシロキサンの溶液としてもよいし、必要に応じて、上記の方法で得られた溶液を、濃縮したり、溶媒を加えて希釈したり又は他の溶媒に置換して、ポリシロキサンの溶液としてもよい。
その際、用いる溶媒(以下、添加溶媒ともいう)は、重合溶媒と同じでもよいし、別の溶媒でもよい。この添加溶媒は、ポリシロキサンが均一に溶解している限りにおいて特に限定されず、一種でも複数種でも任意に選択して用いることができる。
【0039】
このような添加溶媒の具体例としては、上記した重合溶媒の例として挙げた溶媒のほかに、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類が挙げられる。
これらの溶媒は、液晶配向剤の粘度の調整、又はスピンコート、フレキソ印刷、インクジェット等で液晶配向剤を基板上に塗布する際の塗布性を向上できる。
【0040】
[その他の成分]
本発明においては、本発明の効果を損なわない限りにおいて、ポリシロキサン以外のその他の成分、例えば、無機微粒子、メタロキサンオリゴマー、メタロキサンポリマー、レベリング剤、更に界面活性剤等の成分が含まれていてもよい。
無機微粒子としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、又はフッ化マグネシウム微粒子等の微粒子が好ましく、特にコロイド溶液の状態であるものが好ましい。このコロイド溶液は、無機微粒子を分散媒に分散したものでもよいし、市販品のコロイド溶液であってもよい。本発明においては、無機微粒子を含有させることにより、形成される硬化被膜の表面形状を変更したり、その他の機能を付与することが可能となる。無機微粒子としては、その平均粒子径が0.001〜0.2μmであることが好ましく、更に好ましくは0.001〜0.1μmである。無機微粒子の平均粒子径が0.2μmを超える場合には、調製される塗布液を用いて形成される硬化被膜の透明性が低下する場合がある。
無機微粒子の分散媒としては、水及び有機溶剤を挙げることができる。コロイド溶液としては、被膜形成用塗布液の安定性の観点から、pH又はpKaが1〜10に調整されていることが好ましい。より好ましくは2〜7である。
【0041】
コロイド溶液の分散媒に用いる有機溶剤としては、メタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類を挙げることができる。これらの中で、アルコール類又はケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独で又は2種以上を混合して分散媒として使用することができる。
【0042】
メタロキサンオリゴマー、メタロキサンポリマーとしては、ケイ素、チタン、アルミニウム、タンタル、アンチモン、ビスマス、錫、インジウム、亜鉛等の単独又は複合酸化物前駆体が用いられる。メタロキサンオリゴマー、メタロキサンポリマーとしては、市販品であっても、金属アルコキシド、硝酸塩、塩酸塩、カルボン酸塩等のモノマーから、加水分解等の常法により得られたものであってもよい。
市販品のメタロキサンオリゴマー、メタロキサンポリマーの具体例としては、コルコート社製の、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、エチルシリケート48、EMS−485、SS−101等のシロキサンオリゴマー又はシロキサンポリマー、関東化学社製のチタニウム−n−ブトキシドテトラマー等のチタノキサンオリゴマーが挙げられる。これらは単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0043】
また、レベリング剤及び界面活性剤等は、公知のものを用いることができ、特に市販品は入手が容易なので好ましい。
また、ポリシロキサンに、上記したその他の成分を混合する方法は、ポリシロキサンと同時でも、後であってもよく、特に限定されない。
【0044】
[液晶配向剤]
本発明の液晶配向剤は、上述したポリシロキサン、必要に応じてその他の成分を含有する溶液である。その際、溶媒としては、上述したポリシロキサンの重合溶媒および添加溶媒からなる群から選ばれる溶媒が用いられる。液晶配向剤におけるポリシロキサンの含有量は、SiO
2換算濃度が好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜6質量%である。このようなSiO
2換算濃度の範囲であれば、一回の塗布で所望の膜厚を得やすく、充分な溶液のポットライフが得られ易い。
【0045】
本発明の液晶配向剤を調製する方法は特に限定されない。本発明に用いるポリシロキサン、必要に応じて加えられるその他の成分が均一に混合した状態であればよい。通常、ポリシロキサンは、溶媒中で重縮合されるので、ポリシロキサンの溶液をそのまま用いるか、ポリシロキサンの溶液に必要に応じてその他の成分を添加することが簡便である。更に、ポリシロキサンの重合溶液をそのまま用いる方法が最も簡便である。
また、液晶配向剤中におけるポリシロキサンの含有量を調整する際には、上述したポリシロキサンの重合溶媒及び添加溶媒からなる群から選ばれる溶媒を用いることができる。
【0046】
[液晶配向膜]
本発明の液晶配向膜は、本発明の液晶配向剤を用いて得られる。例えば、本発明の液晶配向剤を、基板に塗布した後、乾燥・焼成を行うことで得られる硬化膜を、そのまま液晶配向膜として用いることもできる。また、この硬化膜をラビングしたり、偏光又は特定の波長の光等を照射したり、イオンビーム等の処理をしたり、液晶充填後の液晶表示素子に電圧を印加した状態でUVを照射することも可能である。本発明の液晶配向剤は、液晶に重合性化合物が添加されるPSA方式の場合でも、液晶に重合性化合物が添加されない場合でも有用である。
液晶配向剤を塗布する基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されないが、基板上に液晶を駆動するための透明電極が形成された基板が好ましい。
【0047】
基板の具体例を挙げると、ガラス板、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリサルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、トリメチルペンテン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、(メタ)アクリロニトリル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロースなどのプラスチック板などに透明電極が形成された基板を挙げることができる。
液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法、スプレー法、ロールコート法などが挙げられるが、生産性の面から工業的には転写印刷法が広く用いられており、本発明でも好適に用いられる。
【0048】
液晶配向剤を塗布した後の乾燥の工程は、必ずしも必要とされないが、塗布後から焼成までの時間が基板ごとに一定していない場合、又は塗布後ただちに焼成されない場合には、乾燥工程を含める方が好ましい。この乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が除去されていればよく、その乾燥手段については特に限定されない。例えば、温度40℃〜150℃、好ましくは60℃〜100℃のホットプレート上で、0.5〜30分、好ましくは1〜5分乾燥させる方法が挙げられる。
上記の方法で液晶配向剤を塗布して形成される塗膜は、焼成して硬化膜とすることができる。その際、焼成温度は、100℃〜350℃の任意の温度で行うことができるが、好ましくは140℃〜300℃であり、より好ましくは150℃〜230℃、更に好ましくは160℃〜220℃である。焼成時間は5分〜240分の任意の時間で焼成を行うことができる。好ましくは10〜90分であり、より好ましくは20〜90分である。加熱は、通常公知の方法、例えば、ホットプレート、熱風循環オーブン、IR(赤外線)オーブン、ベルト炉などを用いることができる。
【0049】
液晶配向膜中のポリシロキサンは、焼成工程において、重縮合が進行する。しかし、本発明においては、本発明の効果を損なわない限り、完全に重縮合させる必要はない。但し、液晶セル製造行程で必要とされる、シール剤硬化などの熱処理温度より、10℃以上高い温度で焼成することが好ましい。
この硬化膜の厚みは必要に応じて選択することができるが、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上の場合、液晶表示素子の信頼性が得られ易いので好適である。また、硬化膜の厚みが好ましくは300nm以下、より好ましくは150nm以下の場合は、液晶表示素子の消費電力が極端に大きくならないので好適である。
【0050】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記の方法により、基板に液晶配向膜を形成した後、公知の方法で液晶セルを作製して得ることができる。液晶セル作製の一例を挙げると、液晶配向膜が形成された1対の基板を、スペーサーを挟んで、シール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。その際、用いるスペーサーの大きさは1〜30μmであるが、好ましくは2〜10μmである。
液晶を注入する方法は特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後、液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後に封止を行う滴下法などを挙げることができる。
【0051】
PSA方式の液晶表示素子では、使用される液晶として、光重合性化合物を好ましくは少量(典型的には0.2〜1重量%)添加した液晶が使用できる。液晶が導入された液晶セルの、両側基板の電極間に電圧を印加した状態で、好ましくは波長が230〜400nm,より好ましくは300〜380nmの紫外線(UV)を照射することにより、重合性化合物がその場で重合し架橋されることで、液晶ディスプレイの応答速度が速くなる。ここで、印加する電圧は5〜30Vp−pであるが、好ましくは、5〜20Vp−pである。照射するUV照射量は、1〜60Jであるが、好ましくは、40J以下であり、UV照射量が少ないほうが、液晶ディスプレイを構成する部材の破壊からなる信頼性低下を抑制でき、かつUV照射時間を減らせることで製造上のタクトが上がるので好適である。本発明の液晶配向剤は、重合性化合物が添加されない液晶表示素子でも使用される。
【0052】
液晶表示素子に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されないが、通常は、基板上に液晶を駆動するための透明電極が形成された基板である。具体例は[液晶配向膜]で記載した基板と同様である。PSA方式の液晶セルの場合、基板には、標準的なPVAやMVAといった電極パターンや突起パターンでも使用できる。しかし、PSA方式の液晶ディスプレイには、片側基板に1〜10μmのライン/スリット電極パターンを形成し、対向基板にはスリットパターンや突起パターンを形成していない構造においても動作可能であり、この構造の液晶ディスプレイによって、製造時のプロセスを簡略化でき、高い透過率を得ることができる。
【0053】
また、TFT型の素子のような高機能素子においては、液晶駆動のための電極と基板の間にトランジスタの如き素子が形成されたものが用いられる。
透過型の液晶素子の場合は、上記の如き基板を用いることが一般的であるが、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な基板も用いることが可能である。その際、基板に形成された電極には、光を反射するアルミニウムの如き材料を用いることもできる。
【実施例】
【0054】
以下本発明の実施例によりさらに具体的に説明するが、これらに限定して解釈されるものではない。
本実施例で用いた化合物における略語は以下のとおりである。
TEOS:テトラエトキシシラン
C18:オクタデシルトリエトキシシラン
VTES:ビニルトリエトキシシラン
ARMS:アリルトリメトキシシラン
OTMS:オクテニルトリメトキシシラン
STMS:スチリルトリメトキシシラン
HG:2−メチル−2,4−ペンタンジオール(別名:ヘキシレングリコール)
BCS:2−ブトキシエタノール
UPS:3−ウレイドプロピルエトキシシラン
【0055】
<合成例1>
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHG24.0g、BCS8.0g、TEOS27.9g、C18を1.7g、及びARMSを9.7g混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG12.0g、BCS4.0g、水10.8g及び触媒として蓚酸0.9gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下した。この溶液を30分間撹拌してから1時間還流させた後、予めUPS含有量92質量%のメタノール溶液0.6g、HG0.3g及びBCS0.1gの混合液を加えた。更に30分間還流させてから放冷してSiO
2換算濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0gに対し、BCS20.0gを混合し、SiO
2換算濃度が4重量%の液晶配向剤(K1)を得た。
【0056】
<合成例2>
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHG21.6g、BCS7.2g、TEOS27.5g、C18を1.7g、及びOTMSを13.9g混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG10.8g、BCS3.6g、水10.8g及び触媒として蓚酸0.9gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下した。この溶液を30分間撹拌してから1時間還流させた後、予めUPS含有量92質量%のメタノール溶液1.2g、HG0.6g及びBCS0.2gの混合液を加えた。更に30分間還流させてから放冷してSiO
2換算濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0gに対し、BCS20.0gを混合し、SiO
2換算濃度が4重量%の液晶配向剤(K2)を得た。
【0057】
<合成例3>
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHG21.8g、BCS7.3g、TEOS27.5g、C18を1.7g、及びSTMSを13.5g混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG10.9g、BCS3.6g、水10.8g及び触媒として蓚酸0.9gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下した。この溶液を30分間撹拌してから1時間還流させた後、予めUPS含有量92質量%のメタノール溶液1.2g、HG0.6g及びBCS0.2gの混合液を加えた。更に30分間還流させてから放冷してSiO
2換算濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0gに対し、BCS20.0gを混合し、SiO
2換算濃度が4重量%の液晶配向剤(K3)を得た。
【0058】
<比較合成例1>
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHG23.3g、BCS7.7g、TEOS40.8g、C18を1.7g混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG11.6g、BCS3.9g、水10.8g及び触媒として蓚酸0.2gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下した。この溶液を30分間撹拌してから1時間還流させた後に放冷してSiO
2換算固形分濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0gに対し、BCS20.0gを混合し、SiO
2換算濃度が4重量%の液晶配向剤(L1)を得た。
【0059】
<比較合成例2>
温度計、還流管を備え付けた200mLの四つ口反応フラスコ中でHG21.8g、BCS7.3g、TEOS27.5g、C18を1.7g及びVTESを13.5g混合して、アルコキシシランモノマーの溶液を調製した。この溶液に、予めHG10.9g、BCS3.6g、水10.8g及び触媒として蓚酸0.9gを混合した溶液を、室温下で30分かけて滴下した。この溶液を30分間撹拌してから1時間還流させた後、予めUPS含有量92質量%のメタノール溶液1.2g、HG0.6g及びBCS0.2gの混合液を加えた。更に30分間還流させてから放冷してSiO
2換算濃度が12重量%のポリシロキサン溶液を得た。
得られたポリシロキサン溶液10.0gに対し、BCS20.0gを混合し、SiO
2換算濃度が4重量%の液晶配向剤(L2)を得た。
【0060】
<実施例1>
合成例1で得られた液晶配向処理剤[K1]を、画素サイズが100μm×300μmで、ライン/スペースがそれぞれ5μmのITO電極パターンが形成されているITO電極基板のITO面にスピンコートした。80℃のホットプレートで5分間乾燥した後、180℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
合成例1で得られた液晶配向処理剤[K1]を、電極パターンが形成されていないITO面にスピンコートし、80℃のホットプレートで5分間乾燥した後、180℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。これらの2枚の基板を用意し、一方の基板の液晶配向膜面上に6μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷した。他方の基板を液晶配向膜面を内側にし、張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。液晶MLC−6608(メルク社製商品名)を、空セルに減圧注入法によって、前記液晶を注入した液晶セルを作製した。
【0061】
これら液晶セルの応答速度特性を、後述する方法により測定した。その後、この液晶セルに20Vp−pの電圧を印加した状態で、この液晶セルの外側からUV(波長:280〜330nm)を20J照射した。その後、再び応答速度特性を測定し、UV照射前後での応答速度を比較した。その結果を表1に示した。
【0062】
<実施例2>
液晶配向処理剤[K1]を合成例2で得られた液晶配向処理剤[K2]に変更した以外は、実施例1と同様にして液晶セルを作製し、応答速度を測定した。その結果を表1に示した。
【0063】
<実施例3>
液晶配向処理剤[K1]を合成例3で得られた液晶配向処理剤[K3]に変更した以外は、実施例4と同様にして液晶セルを作製し、応答速度を測定した。その結果を表1に示した。
【0064】
<比較例1>
液晶配向処理剤[K1]を比較合成例1で得られた液晶配向処理剤[L1]に変更した以外は、実施例1〜実施例3と同様にして液晶セルを作製し、応答速度を測定した。その結果を表1に示した。
【0065】
<比較例2>
液晶配向処理剤[K1]を比較合成例2で得られた液晶配向処理剤[L2]に変更した以外は、実施例1〜実施例3と同様にして液晶セルを作製し、応答速度を測定した。その結果を表1に示した。
【0066】
[応答速度特性]
電圧を印加していない液晶セルに、電圧 ±4V、周波数1kHzの矩形波を印加した際の、液晶パネルの輝度の時間変化をオシロスコープにて取り込んだ。電圧を印加していない時の輝度を0%、±4Vの電圧を印加し、飽和した輝度の値を100%として、輝度が10%〜90%まで変化する時間を立ち上がりの応答速度(単位:ミリセコンド)とした。
【0067】
【表1】
【0068】
表1からわかるように、実施例の液晶セルでは、重合性化合物を添加していない液晶を使用した場合でも、UV照射後に応答速度が向上した。一方、比較例では、UV照射前後で、応答速度は向上しなかった。