(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、液晶ディスプレイ(LCD)パネルやプラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELパネルなどの表示パネルの薄型化、軽量化が進行しており、表示パネルに用いられるガラス基板の薄板化が進行している。薄板化によりガラス基板の強度が不足すると、表示パネルの製造工程において、ガラス基板のハンドリング性が悪くなる。
【0008】
そこで、最終厚さより厚いガラス基板を、対向基板と貼り合わせた後、エッチング処理などの研磨処理によってガラス基板の少なくとも一部の板厚を薄くする方法が広く採用されている。ガラス基板の対向基板側の面にはTFT(薄膜トランジスタ)またはCF(カラーフィルター)などの部材が予め形成されており、ガラス基板の対向基板と反対側の面に研磨処理が施される。
【0009】
このような、研磨処理が施される場合においては、フュージョン法で成形されるガラス板は従来と異なるものとする必要がある。ここで、研磨処理とは、板厚を薄くするための処理をいい、物理研磨処理の他、化学研磨処理を含む。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、
薄板化に適した、ガラス板の研磨方法、ガラス板の製造方法、およびガラス板の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、第1の態様によれば、
成形体の左右両側面に沿って流下させた同一組成の溶融ガラスを、前記成形体の下縁付近で合わせて成形されたガラス板の表面または裏面の少なくとも一部に研磨処理を施す、ガラス板の研磨方法であって、
前記研磨処理では、前記ガラス板の合わせ面が前記ガラス板の表面と裏面との間の中心面から片側にずれ且つ前記ガラス板の表面および裏面のうち前記合わせ面から近い面と前記合わせ面との間の間隔が0.1mm以上である前記ガラス板に対して、前記合わせ面が除去されないように、前記ガラス板の表面および裏面のうち前記合わせ面から遠い面の少なくとも一部に、前記研磨処理を施した面
が前記合わせ面から前記ガラス板の厚さ方向に
0.1mm以上離れ
、且つ前記研磨処理の後の前記ガラス板の少なくとも一部の板厚が0.2〜0.5mmとなるように、前記研磨処理を施すガラス板の研磨方法
が提供される。
【0016】
また、第2の態様によれば、
成形体の左右両側面に沿って流下させた同一組成の溶融ガラスを、前記成形体の下縁付近で合わせて成形されたガラス板の表面または裏面の少なくとも一部に研磨処理を施す、ガラス板の研磨方法であって、
前記研磨処理では、前記ガラス板の合わせ面が前記ガラス板の表面と裏面との間の中心面から片側にずれ且つ前記ガラス板の表面および裏面のうち前記合わせ面から近い面と前記合わせ面との間の間隔が0.1mm以上である前記ガラス板に対して、前記合わせ面の少なくとも一部が除去されるように、前記ガラス板の表面および裏面のう
ち前記合わせ面に近い面の少なくとも一部に
、前記研磨処理を施した面が前記合わせ面から前記ガラス板の厚さ方向に0.1mm以上離れるように、研磨量が0.2mm以上である前記研磨処理を施すガラス板の研磨方法
が提供される。
【0018】
第2の態様において、前記研磨処理
の後の前記ガラス板の少なくとも一部の板厚を0.2mm未満とすることが好ましい。
【0019】
また、本発明のガラス板の製造方法は、
成形体の左右両側面に沿って流下させた同一組成の溶融ガラスを、前記成形体の下縁付近で合わせて板状ガラスに成形する成形工程を有するガラス板の製造方法において、
前記成形工程において、前記溶融ガラスの合わせ面が、前記板状ガラスの表面と裏面との間の中心面から片側にずれているガラス板の製造方法である。
【0020】
本発明のガラス板の製造方法において、前記成形体の左右両側面に沿って流下させる同一組成の溶融ガラスは、前記成形体の上部に設けた凹部から左右両側に溢れ出したものであって、
前記成形工程において、前記成形体を前記板状ガラスに対して左右に傾斜して、前記中心面に対する前記合わせ面の位置を調整することが好ましい。
【0021】
本発明のガラス板の製造方法において、前記成形体の左右両側面に沿って流下させる同一組成の溶融ガラスは、前記成形体の上部に設けた凹部から左右両側に溢れ出したものであって、
前記成形工程において、前記成形体の上部に接触する前記溶融ガラスの左右方向の温度分布を調整して、前記中心面に対する前記合わせ面の位置を調整することが好ましい。
【0022】
本発明のガラス板の製造方法において、前記成形体の左右両側面に沿って流下させる同一組成の溶融ガラスは、前記成形体の上部に設けた凹部から左右両側に溢れ出したものであって、
前記凹部の左側壁および右側壁の高さが異なることが好ましい。
【0023】
本発明のガラス板の製造方法において、前記成形体の左右両側面に沿って流下させる同一組成の溶融ガラスは、前記成形体の上部に設けた凹部から左右両側に溢れ出したものであって、
前記凹部の左側壁または右側壁の上部には、前記成形体の左右両側面に沿って流下される溶融ガラスの流量を低減する低減部材が、前記成形体の左側面または右側面の片側または両側に設けてあることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明のガラス板の製造装置は、
成形体の左右両側面に沿って流下させた同一組成の溶融ガラスを、前記成形体の下縁付近で合わせて板状ガラスに成形する成形装置を有するガラス板の製造装置であって、
前記成形装置は、前記溶融ガラスの合わせ面が前記板状ガラスの表面と裏面との間の中心面から片側にずれるように構成されているガラス板の製造装置である。
【0025】
本発明のガラス板の製造装置において、前記成形体の左右両側面に沿って流下させる同一組成の溶融ガラスは、前記成形体の上部に設けた凹部から左右両側に溢れ出したものであって、
前記成形装置は、前記溶融ガラスの合わせ面を前記板状ガラスの表面と裏面との間の中心面から片側にずらす構成として、前記成形体の上部に接触する前記溶融ガラスの左右方向の温度分布を調整する温度調整装置を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、
薄板化に適した、ガラス板の研磨方法、ガラス板の製造方法、およびガラス板の製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、同一構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態におけるガラス板の製造装置の要部の斜視図である。
図2は、
図1のA−A線に沿った断面図であって、成形体30の左右両側面32、33に沿って溶融ガラス2を流下させている状態の図である。
図1および
図2において、X1−X2方向は板状ガラス3の厚さ方向を、Y1−Y2方向は板状ガラス3の幅方向を、Z1−Z2方向は板状ガラス3の長手方向を表す。
【0030】
本実施形態によるガラス板の製造装置は、溶融ガラス2を板状ガラス3に成形する成形装置20を有する。成形装置20は、成形体30と、成形体30が内部に配置される成形室40とを有する。
【0031】
成形体30は、例えばアルミナ質やジルコニア質等の耐火物で構成されている。成形体30は、下方に向けて収斂する断面くさび状の形状を有する。成形体30の上部には、凹部31が形成されている。凹部31には、不図示の溶融ガラス供給管を介して、溶融ガラス2が供給される。溶融ガラス2は、成形体30の上部に設けた凹部31から左右両側(X1側、X2側)に溢れ出し、成形体30の左右両側面32、33に沿って流下する。
【0032】
成形体30の左右両側面32、33に沿って流下させた溶融ガラス2は、成形体30の下縁34付近で合わされ(合流され)、一体化する。合流した溶融ガラス2は、板状ガラス(「ガラスリボン」とも呼ばれる)3となる。
【0033】
板状ガラス3は、成形室40から下方(Z2方向)に鉛直状態で引き出される。その後、板状ガラス3は、切断機によって所定寸法に切断され、製品であるガラス板となる。
【0034】
本実施形態の成形装置20は、溶融ガラス2の合わせ面4を、板状ガラス3の表面5と裏面6との間の中心面7から片側(表面5側または裏面6側)にずらす構成(言い換えると、合わせ面4を挟んだ両側のガラスの厚さに差をつける構成)として、傾斜機構50を有する。傾斜機構50は、成形体30を板状ガラス3に対して左右に傾斜可能とする機構である。
【0035】
例えば、傾斜機構50は、支持台51、連結部材52、および支持部材54などにより構成される。支持台51は、連結部材52を介して、成形体30を支持する部材である。支持部材54は、支持台51を鉛直方向に対して左右に傾斜可能に支持する部材である。
【0036】
支持部材54は、例えば
図1に示すように、成形室40の側壁46に挿通される棒状部56と、支持台51の外縁53に接触する傾斜面部58とが一体的に形成された構成であって良い。支持部材54は、支持台51の外縁53の左右両側にそれぞれ2つずつ設けられている。棒状部56は、軸方向である左右方向(X1−X2方向)に移動可能に側壁46に軸支されている。傾斜面部58は、棒状部56の軸方向に対して傾斜している。
【0037】
この傾斜機構50では、手動でまたは適当な駆動装置で、支持台51の片側に設けた2つの棒状部56を側壁46に対して左右方向(X1−X2方向)に移動させると、傾斜面部58が支持台51の片側を上下方向(Z1−Z2方向)に移動させる。その結果、成形体30が板状ガラス3に対して左右に傾斜される。
【0038】
このように、板状ガラス3に対して成形体30が左右に傾斜されると、重力の影響によって、成形体30の上部に設けた凹部31から左右両側に溢れ出す溶融ガラス2の流出量が変わる。よって、成形体30の左右両側面32、33に沿って流下する溶融ガラス2の流量が変わる。その結果、合わせ面4を挟んだ両側のガラスの厚さが変わり、中心面7に対する合わせ面4の位置が変わる。
【0039】
従って、本実施形態では、傾斜機構50を用いて、板状ガラス3に対して成形体30を左または右に傾斜させることで、合わせ面4を中心面7から片側に平行にずらすことができる。また、板状ガラス3に対する成形体30の傾斜角θを調整することで、中心面7に対する合わせ面4の位置を調整することができる。傾斜角θは0.02〜5度の範囲に調整することが好ましい。また、0.04〜2度の範囲に調整することがより好ましく、0.1〜1度の範囲に調整することがさらに好ましい。傾斜角θが0.02度より小さい場合は、合わせ面4の中心面7からのずれ量が十分でない場合がある。また、傾斜角θが5度より大きい場合、安定的にガラス板を成形できない場合がある。
【0040】
次に、上記製造装置を用いた、ガラス板の製造方法について説明する。
【0041】
ガラス板の組成は、ガラス板の用途などに応じて適宜選定される。例えば、ガラス板の用途がプラズマパネルの場合、歪み点の温度が高く、熱膨張係数が大きいソーダライムガラスが用いられる。また、ガラス板の用途が液晶パネルの場合、アルカリ金属が液晶パネルの品質に悪影響を及ぼすので、アルカリ金属を実質的に含まない無アルカリガラスが用いられる。
【0042】
無アルカリガラスとしては、例えば、酸化物基準の質量%表示で、SiO
2:50〜66%、Al
2O
3:10.5〜22%、B
2O
3:0〜12%、MgO:0〜8%、CaO:0〜14.5%、SrO:0〜24%、BaO:0〜13.5%を含有し、MgO+CaO+SrO+BaO:9〜29.5質量%である無アルカリガラスが用いられる。
【0043】
溶融ガラス2は、ガラス板の組成に対応する複数種類の原料を溶解槽内に投入し、溶解して作製される。この溶融ガラス2は、溶融ガラス供給管を介して、成形体30の上部に設けた凹部31内に供給される。凹部31内に供給される前に、溶融ガラス2の内部に含まれる泡が脱泡されていることが望ましい。
【0044】
本実施形態によるガラス板の製造方法は、溶融ガラス2を板状ガラス3に成形する成形工程を有する。具体的には、成形体30の上部に設けた凹部31から左右両側に溢れ出し、成形体30の左右両側面32、33に沿って流下した同一組成の溶融ガラス2を、成形体30の下縁34付近で合流させて板状ガラス3に成形する。
【0045】
板状ガラス3は、成形室40から下方に鉛直状態で引き出される。その後、板状ガラス3は、切断機によって所定寸法に切断され、製品であるガラス板となる。
【0046】
本実施形態では、傾斜機構50を用いて、成形体30を板状ガラス3に対して左または右に傾斜させることで、上述の如く、合わせ面4を中心面7から片側に平行にずらすことができる。よって、後述のガラス板10(
図3参照)を得ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、傾斜機構50を用いて、成形体30を板状ガラス3に対して左または右に傾斜させることで、上述の如く、中心面7に対する合わせ面4の位置を調整することができる。これにより、成形条件の変化(例えば、成形体30の経時劣化)や変更(例えば、ガラス板の用途の変更)に容易に対応することができる。
【0048】
次に、
図3に基づいて、上記製造方法により得られる、ガラス板について説明する。
【0049】
ガラス板10は、基本的に板状ガラス3と同じものであるので、溶融ガラス2の合わせ面4を挟んだ両側のガラスの組成が同じである。また、ガラス板10は、合わせ面4を挟んだ両側のガラスの厚さが異なり、合わせ面4がガラス板10の表面15と裏面16との間の中心面7から片側(表面15側または裏面16側)に平行にずれている。ガラス板10の表面15および裏面16は、成形工程後に、研磨処理が施されていない。
【0050】
なお、ガラス板10の切断面を光学顕微鏡で観察すれば、合わせ面4を検知することが可能である。
【0051】
合わせ面4やその近傍には、成形体30の下部表面から流出する異物19が含まれていることがある。研磨処理が施されていない場合、この異物19は、ガラス板10の表面15や裏面16から露出し難いので、ガラス板10の品質に悪影響を及ぼし難い。特に、0.1mmよりも小さい異物19は、悪影響がほとんどない。そのため、異物19を含んだガラス板10を製品として使用することが可能である。
【0052】
本実施形態のガラス板10は、合わせ面4が中心面7から片側にずれており、合わせ面4を挟んだ両側のガラスの厚さが異なるので、詳しくは後述するが、研磨処理に適しており、研磨処理が施されている場合であっても、異物19が外部に露出し難い。
【0053】
合わせ面4の中心面7からのずれ量T(
図3参照)は、ガラス板10の用途などに応じて決定されるが、例えば0.1mm以上であって良い。
【0054】
また、ずれ量Tは、
図3に示す例では、ガラス板10の表面15および裏面16のうち、合わせ面4から近い裏面16と、合わせ面4との間の間隔が0.1mm以上となるように設定されて良い。0.1mm未満であると、研磨処理前の状態で、異物19が露出することがあり、好ましくない。
【0055】
次に、
図4および
図5に基づいて、上記ガラス板10の表面15または裏面16の少なくとも一部に研磨処理を施す、ガラス板10の研磨方法について説明する。
【0056】
研磨処理としては、例えば化学研磨処理、物理研磨処理などがある。化学研磨処理には、エッチング処理が含まれる。以下、エッチング処理を用いる場合について説明するが、他の化学処理や物理研磨についても同様である。
【0057】
エッチング処理の方法としては、ウエットエッチング法やドライエッチング法が挙げられる。ウエットエッチング法では、ガラス板10をエッチング液に浸漬して薄板化する。エッチング液としては、酸性水溶液などが用いられる。
【0058】
エッチング処理を行う前に、ガラス板10の一部を耐エッチング材で被覆しても良い。耐エッチング材で覆われた部分は、エッチングされない。耐エッチング材としては、テフロン(登録商標)などの高分子材料が用いられる。耐エッチング材は、エッチング処理後に、例えば有機溶剤などによって除去される。
【0059】
エッチング処理は、特に限定されないが、例えば液晶パネル(LCD)やプラズマパネル(PDP)、有機ELパネルなどの表示パネルの製造工程の途中で行われて良い。また、エッチング処理は、照明パネルの製造工程の途中で行われても良い。
【0060】
エッチング処理は、表示パネルの製造工程の途中で行われる場合、特に限定されないが、例えばガラス板10と対向基板とを貼り合わせた後に行われて良い。例えば、エッチング処理は、液晶パネルの製造工程の途中で行われる場合、ガラス板10と対向基板とをスペーサを介して貼り合わせた後に行われて良い。この場合、ガラス板10の対向基板側の面にはTFT(薄膜トランジスタ)またはCF(カラーフィルター)などの部材が予め形成されており、ガラス板10の対向基板と反対側の面がエッチング処理される。
【0061】
本実施形態では、エッチング処理後に、エッチング処理を施した面17(
図4参照)、面18(
図5参照)が、合わせ面4からガラス板10の厚さ方向に所定距離以上離れている。よって、エッチング処理後に、合わせ面4またはその近傍に含まれる異物19が、外部に露出し難く、表示パネルなどの品質に悪影響を及ぼし難い。
【0062】
上記所定距離は、ガラス板10の用途などに応じて決定される。ガラス板10の用途などに応じて、許容される異物19の大きさが異なるからである。0.1mmよりも小さい異物19は、外部に露出していない限り、ほとんどの用途において許容される。上記所定距離が0.1mmであると、0.1mmよりも小さい異物19が外部に露出するのを抑制することができる。上記所定距離は、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。また、上記所定距離は、0.2mm以上であってもよく、0.3mm以上、0.4mm以上であってもよい。
【0063】
図4に示す例では、エッチング処理によって合わせ面4が除去されないように、ガラス板10の表面15および裏面16のうち、合わせ面4から遠い表面15の少なくとも一部にエッチング処理を施してある。よって、エッチング処理の際に、合わせ面4またはその近傍に含まれる異物19が外部に露出し難く、異物19によるエッチング異方性が生じ難い。従って、エッチング処理後に、エッチング処理が施された面が平滑になりやすい。
【0064】
この方法は、エッチング処理によって、ガラス板10の少なくとも一部の板厚Dを0.2〜0.5mmとする場合に適している。板厚Dが0.2mm未満の場合、合わせ面4を残しつつ、異物19の露出を防止するのが難しい。板厚Dが0.5mm超の場合、板厚Dを薄くした効果が十分に得られない。
【0065】
図5に示す例では、エッチング処理によって合わせ面4の少なくとも一部が除去されるように、ガラス板10の表面15および裏面16のうち、合わせ面4から近い裏面16の少なくとも一部にエッチング処理を施してある。この場合、合わせ面4の両側近傍を除去するので、エッチング処理後に異物19が外部に露出し難く、表示パネルなどの品質に悪影響を及ぼし難い。また、合わせ面4を挟んだ両側のうちガラスの薄い側を除去するので、比較的早く異物19を除去することができる。
【0066】
この方法では、エッチング処理後に、エッチング処理を施した面18(
図5参照)が、合わせ面4からガラス板10の厚さ方向に0.1mm以上離れていることが望ましい。エッチング処理終了時点よりも早い段階で異物19が除去されるので、異物19によるエッチング異方性の影響を低減できるからである。また、合わせ面4をエッチング処理して除去し,さらに異物19も除去するためには,合わせ面4から近い側の表面からガラス板10の厚さ方向に0.2mm以上研磨することが望ましい。
【0067】
この方法は、エッチング処理によって、ガラス板10の少なくとも一部の板厚Dを0.2mm未満とする場合に適している。上述の如く、板厚Dが0.2mm未満の場合、
図4に示すように、合わせ面4を残しつつ、異物19の露出を防止するのが難しいからである。
【0068】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態におけるガラス板の製造装置の要部の断面図であって、
図2に相当する断面図である。
【0069】
本実施形態によるガラス板の製造装置は、成形装置20Aの構成が異なる。成形装置20Aは、溶融ガラス2の合わせ面4を、板状ガラス3の表面5と裏面6との間の中心面7から片側にずらす構成として、温度調整装置60を有する。温度調整装置60は、成形体30の上部に接触する溶融ガラス2の左右方向(X1−X2方向)の温度分布を調整する装置である。
【0070】
例えば、温度調整装置60は、
図6に示すように、発熱体62、64などにより構成される。発熱体62、64は、成形体30の上方に配置され、左右に配列される。これらの発熱体62、64は、それぞれ、溶融ガラス2の幅方向(Y1−Y2方向)に分割されても良く、その場合、溶融ガラス2の幅方向の温度分布が均一になるように制御されて良い。
【0071】
この温度調整装置60では、発熱体62、64の発熱量を独立に制御することで、成形体30の上部に接触する溶融ガラス2の左右方向の温度分布を調整することができる。この温度分布が変わると、成形体30の上部に設けた凹部31から左右両側に溢れ出す溶融ガラス2の粘性が同じでは無くなり、相対的に粘性の低いガラスは相対的に粘性の高いガラスより流出量が多くなり、溢れ出す溶融ガラス2の左右の流出量が変わるので、成形体30の左右両側面32、33に沿って流下する溶融ガラス2の流量が変わる。その結果、合わせ面4を挟んだ両側のガラスの厚さが変わり、中心面7に対する合わせ面4の位置が変わる。
【0072】
従って、温度調整装置60を用いて、成形体30の上部に接触する溶融ガラス2の左右方向の温度分布を調整することで、合わせ面4を中心面7から片側に平行にずらすことができる。よって、第1実施形態と同様に、
図3に示すガラス板10を得ることができる。
【0073】
また、温度調整装置60を用いて、成形体30の上部に接触する溶融ガラス2の左右方向の温度分布を調整することで、中心面7に対する合わせ面4の位置を調整することができる。これにより、成形条件の変化や変更に容易に対応することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、温度調整装置60として、発熱体62、64の両方を用いたが、いずれか片方のみを用いても良い。また、発熱体62、64の代わりに、冷却体を用いても良い。冷却体の内部には、冷媒を流す流路が設けられる。なお、冷却体が熱伝導率の良い材料(例えば、金属材料)で形成されている場合、流路は無くても良い。
【0075】
また、本実施形態では、発熱体62、64は、成形体30の上方に設けられるとしたが、成形体30の内部に設けられても良い。例えば、発熱体62が凹部31の左側壁35の内部に設けられ、発熱体64が凹部31の右側壁36の内部に設けられても良い。
【0076】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態におけるガラス板の製造装置の要部の断面図であって、
図2に相当する断面図である。
【0077】
本実施形態によるガラス板の製造装置は、成形装置20Bの構成が異なる。成形装置20Bは、溶融ガラス2の合わせ面4を、板状ガラス3の表面5と裏面6との間の中心面7から片側にずらす構成として、成形体30Bを有する。この成形体30Bでは、凹部31Bの左側壁35Bおよび右側壁36Bの高さが異なり、左側壁35Bおよび右側壁36Bの一方が他方よりも上方にΔHだけ突出している。ΔHは0.1〜10mmであることが好ましく、さらに、0.2〜5mmであることが好ましく、特に、0.4〜2mmであることが好ましい。ΔHが0.1mmより小さい場合は、合わせ面4の中心面7からのずれ量が十分でない場合がある。また、ΔHが10mmより大きい場合は、安定的にガラス板を成形できない場合がある。
【0078】
溶融ガラス2は重力の影響を受けるので、成形体30Bの上部に設けた凹部31Bから左右両側に溢れ出す溶融ガラス2の流出量が異なる。その結果、成形体30Bの左右両側面32B、33Bに沿って流下する溶融ガラス2の流量が異なるので、合わせ面4が中心面7から片側にずれる。よって、第1の実施形態と同様に、
図3に示すガラス板10を得ることができる。
【0079】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態におけるガラス板の製造装置の要部の断面図であって、
図2に相当する断面図である。
【0080】
本実施形態によるガラス板の製造装置は、成形装置20Cの構成が異なる。成形装置20Cは、溶融ガラス2の合わせ面4を、板状ガラス3の表面5と裏面6との間の中心面7から片側にずらす構成として、低減部材70を有する。低減部材70は、成形体30の上部に設けた凹部31の左側壁35または右側壁36の上部に設けられ、成形体30の左側面32または右側面33に沿って流下する溶融ガラス2の流量を低減させる部材である。
【0081】
例えば、低減部材70は、
図8に示すように、左側壁35の上部に設けられ、右側壁36よりも上方に突出するように構成されている。低減部材70の材料は、特に限定されないが、成形体30と同じ材料であって良い。
【0082】
低減部材70が右側壁36よりも上方に突出するように構成されていると、溶融ガラス2は重力の影響を受けるので、成形体30の上部に設けた凹部31から左右両側に溢れ出す溶融ガラス2の流出量が異なる。その結果、成形体30の左右両側面32、33に沿って流下する溶融ガラス2の流量が異なるので、合わせ面4が中心面7から片側に平行にずれる。よって、第1の実施形態と同様に、
図3に示すガラス板10を得ることができる。
【0083】
また、低減部材70は、右側壁36に対する突出量ΔIまたは/および低減部材70の左側面と左側壁35との間の距離ΔJが可変となるように構成されていても良い。突出量ΔIまたは/および距離ΔJが変わると、成形体30の上部に設けた凹部31から左右両側に溢れ出す溶融ガラス2の流出量が変わる。突出量ΔIが変わると、重力の影響が変化するからである。また、距離ΔJが変わると、溶融ガラス2の移動距離が変わり、摩擦抵抗の影響が変化するからである。その結果、合わせ面4を挟んだ両側のガラスの厚さが変わり、中心面7に対する合わせ面4の位置が変わる。
【0084】
従って、低減部材70を用いて、突出量ΔIまたは/および距離ΔJを調整することで、中心面7に対する合わせ面4の位置を調整することができる。よって、第1実施形態と同様に、成形条件の変化や変更に対応することができる。
【0085】
また、低減部材70は、突出量ΔIまたは/および距離ΔJを変更するため、異なる形状の部材と交換可能に構成されていても良い。
【0086】
なお、本実施形態では、低減部材70は、左側壁35の上部に設けられ、右側壁36よりも上方に突出するように構成されているとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、低減部材70は、右側壁36の上部に設けられ、左側壁35よりも上方に突出するように構成されても良い。
【0087】
(第5実施形態)
図9は、本発明の第5実施形態におけるガラス板の製造装置の要部の側面図であって、成形体30の左右両側面に沿って溶融ガラス2を流下させている状態の図である。
図10は、
図9の変形例の図である。
【0088】
本実施形態によるガラス板の製造装置は、成形装置20D、20Eの構成が異なる。成形装置20D、20Eは、成形体30の下方に、板状ガラス3の流れを制御する一対のガイド部材80を有する。一対のガイド部材80は、板状ガラス3の幅が狭まるのを抑制し、板状ガラス3の板厚が不均一になるのを抑制する。
【0089】
ガイド部材80としては、例えば、
図9に示すエッジガイド部材82、
図10に示す冷却ローラ対84などが用いられる。エッジガイド部材82は、例えば板状に形成され、その先端部が板状ガラス3の幅方向一端部に接触する。冷却ローラ対84は、一対のローラで構成され、一対のローラの間に板状ガラス3の幅方向一端部を挟んで下方に送り出す。
【0090】
これらのガイド部材80の位置は、
図2などに示す板状ガラス3の幅方向中央部における表面5および裏面6(即ち、製造されるガラス板10の表面15および裏面16)が平面になるように設定され、中心面7に対する合わせ面4の位置変化に応じて調整されて良い。例えば、
図2に示す傾斜角θの調整に合わせて、ガイド部材80の位置を左右方向(X1−X2方向)に移動させて良い。また、
図6に示す温度調整装置60を用いて成形体30の上部に接触する溶融ガラス2の左右方向の温度分布を調整する際に、ガイド部材80の位置を左右方向(X1−X2方向)に移動させて良い。さらに、
図7に示す突出量ΔI、距離ΔJの調節に応じて、ガイド部材80の位置を左右方向(X1−X2方向)に移動させて良い。これにより、平面度(JIS B0021:1998)に優れた平面ガラス板10を製造することができる。製造されるガラス板10の平面度は、1mm未満が好ましく、0.5mm未満がより好ましく、0.3mm未満が特に好ましい。
【0091】
以上、本発明の第1〜第5実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0092】
例えば、溶融ガラス2の合わせ面4を、板状ガラス3の表面5と裏面6との間の中心面7から片側にずらす構成として、傾斜機構50、温度調整装置60、成形体30B、低減部材70を組み合わせて用いても良く、その組合せの数に制限はない。
【0093】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の範囲と精神を逸脱することなく、様々な修正や変更を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2010年6月21日出願の日本特許出願2010−140253に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。