特許第5761208号(P5761208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5761208太陽電池用スクリーン製版及び太陽電池の電極の印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761208
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】太陽電池用スクリーン製版及び太陽電池の電極の印刷方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20150723BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20150723BHJP
   B41N 1/24 20060101ALI20150723BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   H01L31/04 264
   H01L31/04 422
   B41N1/24
   H05K3/12 610P
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-555815(P2012-555815)
(86)(22)【出願日】2012年1月25日
(86)【国際出願番号】JP2012051488
(87)【国際公開番号】WO2012105381
(87)【国際公開日】20120809
【審査請求日】2013年7月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-17886(P2011-17886)
(32)【優先日】2011年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】遠洞 陽子
(72)【発明者】
【氏名】三田 怜
(72)【発明者】
【氏名】渡部 武紀
(72)【発明者】
【氏名】大塚 寛之
【審査官】 森江 健蔵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−116559(JP,A)
【文献】 特開2005−101426(JP,A)
【文献】 特開2009−016713(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/109524(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/0224
H01L 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバー電極開口部と該バスバー電極開口部に接続する複数本のフィンガー電極開口部とを有し、導電性ペーストを用いて、バスバー電極とフィンガー電極を同時に印刷する太陽電池用のスクリーン製版であって、上記スクリーン製版のフィンガー電極開口部の開口幅が80μm未満であって、該スクリーン製版のバスバー電極開口部がその開口部内で上記フィンガー電極開口部ごとに該フィンガー電極開口部に対応する位置のみに形成された複数の閉口部を有することを特徴とするスクリーン製版。
【請求項2】
上記スクリーン製版のバスバー電極開口部の輪郭から算出されるバスバー面積のうち、60%以下を閉口部とすることを特徴とする請求項1記載のスクリーン製版。
【請求項3】
上記バスバー電極開口部の中の閉口部と、フィンガー電極開口部とバスバー電極開口部が接する辺との間は50μm以上700μm以下の間隔があることを特徴とする請求項1又は2記載のスクリーン製版。
【請求項4】
上記閉口部は、上記フィンガー電極開口部の長手方向に一致する位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のスクリーン製版。
【請求項5】
上記閉口部同士は100μm以上2000μm以下の間隔があることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のスクリーン製版。
【請求項6】
上記バスバー電極開口部の幅が0.5mm以上3mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のスクリーン製版。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載のスクリーン製版を用い、バスバー電極の長手方向に対してスキージの進行方向が垂直方向となるように導電性ペーストを印刷することを特徴とする太陽電池の電極の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期信頼性の高い太陽電池を生産性よく作製する方法を可能とするスクリーン製版に関し、更に詳しくは、バスバー電極のマスクパターンを変更することによって、高い変換効率を維持したまま、低コストで電極を形成することができるスクリーン製版、及びそのスクリーン製版を用いた太陽電池の電極の印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術を用いて作製された、太陽電池の断面図(図1)と、表面の構造(図2)、裏面の構造(図3)を説明する。一般的な太陽電池セルは、シリコン等のp型半導体基板100に、n型となるドーパントを拡散して、n型拡散層101を形成することによりpn接合が形成されている。n型拡散層101の上には、SiNx膜のような反射防止膜102が形成されている。p型半導体基板100の裏面側には、ほぼ全面にアルミニウムペーストが塗布され、焼結することによりBSF層103とアルミニウム電極104が形成される。また、裏面には集電用としてバスバー電極とよばれる太い電極106が、銀等を含む導電性ペーストが塗布され、焼成することで形成される。一方、受光面側には集電用のフィンガー電極107と、フィンガー電極から電流を集めるために形成されたバスバー電極105とよばれる太い電極が、略直角に交わるように櫛形状に配置される。
【0003】
そして、この種の太陽電池を製造する際、電極形成の方法としては、蒸着法、メッキ法、印刷法等が挙げられるが、表面フィンガー電極107は、形成が容易で低コストである等の理由のため、一般的には、以下に示すような印刷・焼成法で形成される。すなわち、表面電極材料には、一般に銀粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、有機溶媒とを主成分として配合した導電性ペーストが用いられ、スクリーン印刷法等によりこの導電性ペーストを塗布した後、焼成炉中で高温焼結して表面電極を形成するものである。
【0004】
スクリーン印刷とは以下のような方法である。
まず、スクリーン印刷法で用いられているスクリーン製版は、互いに直交する縦糸と横糸とを編み込んだメッシュ材110を、感光性の乳剤111で被覆すると共に、この乳剤を露光により一部除去することによって略長方形のパターン孔を形成して形成される(図4)。このスクリーン製版を被印刷物上に配置させ、スクリーン製版上に載せた印刷ペースト(インク)をパターン上に塗り広げ、印刷スキージ112とよばれる柔軟性を有するヘラを適切なスキージ硬度(60〜80度)、スキージ角度(60〜80度)、圧力(印圧)(0.2〜0.5MPa)、印刷速度(20〜100mm/sec)で移動させることによって、パターン孔を介して被印刷物に付着させ、更に被印刷物に付着させた印刷ペーストを乾燥し、印刷パターンを形成させる方法である。
【0005】
このとき、印刷ペーストがパターン孔内のメッシュ材が存在しない開口部を通って落下し、被印刷物に付着させた直後は、パターン孔内の縦糸と横糸に相当する部分には印刷ペーストは付着しないが、この後開口部に相当する部分に付着した印刷ペーストの流動が生じるため、均一な厚みの連続的な印刷パターンとなる。
【0006】
このように、スクリーン印刷法は、スクリーン製版上のパターン開口へ充填された印刷ペーストが、印刷スキージ(ヘラ)の移動により被印刷物に転写されることによって、スクリーン製版に形成したパターン孔と同じパターンを被印刷物上に形成する手法である。
【0007】
このような方法により形成された表面フィンガー電極107とSi基板100とのコンタクト抵抗(接触抵抗)と電極の配線抵抗は、太陽電池の変換効率に大きな影響を及ぼし、高効率(低セル直列抵抗、高フィルファクター(FF、曲線因子))を得るためには、コンタクト抵抗と表面フィンガー電極107の配線抵抗の値が十分に低いことが要求される。
【0008】
また、受光面においてはできるだけ多くの光を取り込めるように電極面積を小さくしなければならない。前記FFを維持したまま短絡電流(Jsc)を向上させるために、フィンガー電極は細く、断面積は大きく、つまり高アスペクト比のフィンガー電極を形成しなくてはならない。
【0009】
太陽電池の電極を形成する手法のうち、高アスペクト比、超細線を形成する手法としては、セルに溝を作ってペーストを充填する方法(特開2006−54374号公報)や、インクジェット法による印刷手法等が開示されている。しかし、前者は基板に溝を作る工程を含むために基板にダメージを与える可能性があるため好ましくない。後者のインクジェット法は圧力をかけて細いノズルから液滴を噴射する仕組みのため、細線を形成するには適した手法であるが、高さを稼ぐことは難しい。
【0010】
一方、スクリーン印刷法は、印刷パターンの作製が容易なこと、印圧の調節により基板に与えるダメージを最小限にできること、セル1枚あたりの作業速度も早く、低コストで生産性に優れた手法である。そしてチクソ性の高い導電性ペーストを用いることで、転写されたあとも形状を保ち、高アスペクト比の電極を形成することができる。
【0011】
以上より、スクリーン印刷は他の印刷手法に比べ安価で、高アスペクト比の電極を形成するのに適した手法である。
【0012】
しかしながら、上記の方法を用いて細線の印刷を行った場合、バスバー電極とフィンガー電極の接続部が非常に細くなったり、ひどい場合には断線してしまうという問題が起こった。受光面の電極において、部分的にフィンガー電極が細くなったり、断線が起こったりすると、その部分が抵抗の律速となり、曲線因子が低下してしまう。
【0013】
断線の原因は、バスバー電極とフィンガー電極の接続部の膜厚の差である。スクリーン印刷において、ペースト塗布量は、開口部の大きさに比例する。つまり、開口部が大きいバスバー電極のペースト塗布量は多いのに対して、開口部が小さいフィンガー電極のペースト塗布量は少ないために、バスバー電極とフィンガー電極の膜厚には差が生じる。この状態で電極を焼結させると、塗布量の多いバスバー電極の方が収縮量が大きいため、バスバー電極とフィンガー電極の境界で断線してしまう。また、これが軽度の場合には、バスバー電極とフィンガー電極の接続部は非常に細くなるという現象が起こる。
【0014】
また、スクリーン印刷の場合には、印刷方向(印刷スキージの進行方向)も断線を助長させる要素となる。スクリーン製版1において、一般的にはフィンガー電極の断線を防ぐために、印刷方向とフィンガー電極開口部2はほぼ平行に、一方、印刷方向とバスバー電極開口部3はほぼ垂直となっている(図8)。このとき、印刷後の電極は、フィンガー電極12に対し印刷開始側の、バスバー電極13とフィンガー電極12の接続部の幅が、非常に狭くなってしまう(図9)。特に細線印刷の場合には顕著に見られる。これは、フィンガー電極開口部2とバスバー電極開口部3の接続部では、バスバー電極開口部3に印刷スキージが落ち込み、接続部のペースト塗布量が減るためである。一方で、印刷終了側のバスバー電極13とフィンガー電極12の接続部の幅は、ペースト塗布量が多いために太くなる傾向がある(図9)。なお、図中5は閉口部である。
【0015】
加えて、バスバー電極開口部3はフィンガー電極開口部2に比べて幅が大きく、更に、上記のように、スキージ112はバスバー電極開口部3に対して垂直となることにより、サドル現象が起こりやすくなる。サドル現象とは、バスバーのように開口が広い部分を印刷するとき、開口部がスキージ112により押しつけられ(図5)、バスバー電極の幅方向における端部よりも中央部が凹む現象113のことである(図6)。サドル現象が発生すると、バスバー電極幅方向における端部の高さと、フィンガー電極の高さに差が生じる。上記のように、塗布量の多いバスバー電極端部の方が、電極焼成時の収縮率が大きいため、バスバー電極13とフィンガー電極12の接続部が断線114してしまう(図10)。なお、図10中、鎖線はバスバー電極13とフィンガー電極12との接続部である。
【0016】
また、フィンガー電極とバスバー電極を別々に印刷した場合にも、バスバー電極でサドル現象が起こるため、バスバー電極とフィンガー電極の接続部の断線を防ぐことができない。
【0017】
上記問題を解決するために、バスバー電極とフィンガー電極の接続部の幅を広くする方法が開示されている(特開2009−272405号公報)。しかしながら、この手法を用いると、バスバー電極とフィンガー電極の接続部が過剰に太いためににじんだり、だまになったりする。そのためにシャドーロスが増加してしまい、特性が低くなってしまうという問題があった。また、太陽電池は当然のことながら太陽光の下で使用されるデバイスであり、他の半導体デバイスと異なって、公衆の目に触れる機会が多い。従って、太陽電池には特性だけでなく、見た目も非常に重要な要素となる。前記発明は、バスバー電極とフィンガー電極の接続部が太くなってしまうことにより、フィンガー電極太さが不連続となり、美観を損ねてしまうという問題があった。
【0018】
また、上記のスキージ進行方向に対してスクリーン製版を設置する場所を90°の倍数以外の角度に回転させて印刷することにより、バスバー開口にスキージが転落することを防ぐ方法もある(図7)。ただ、この場合、スキージの進行方向がフィンガー開口に対して平行ではなくなるため、フィンガー電極ににじみが生じ、精細な印刷ができなくなるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高いアスペクト比を有し抵抗が低い電極を形成することによって、変換効率の高い太陽電池を低コストで製造することを可能とする太陽電池用スクリーン製版及びそのスクリーン製版を用いる太陽電池の電極の印刷方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明に係る太陽電池では、導電性ペーストを印刷してバスバー電極とフィンガー電極を同時に印刷する太陽電池の製造方法において、スクリーン印刷による電極形成時に、スクリーン製版のバスバー電極部の開口部に、部分的に閉口部を設けることによって、開口部に充填されたペーストをスキージが押し付ける圧力を減少させることができ、断線を抑制することができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0021】
従って、本発明は下記太陽電池用スクリーン製版及び太陽電池の電極の印刷方法を提供する。
[1]:
バスバー電極開口部と該バスバー電極開口部に接続する複数本のフィンガー電極開口部とを有し、導電性ペーストを用いて、バスバー電極とフィンガー電極を同時に印刷する太陽電池用のスクリーン製版であって、上記スクリーン製版のフィンガー電極開口部の開口幅が80μm未満であって、該スクリーン製版のバスバー電極開口部がその開口部内で上記フィンガー電極開口部ごとに該フィンガー電極開口部に対応する位置のみに形成された複数の閉口部を有することを特徴とするスクリーン製版。
[2]:
上記スクリーン製版のバスバー電極開口部の輪郭から算出されるバスバー面積のうち、60%以下を閉口部とすることを特徴とする[1]記載のスクリーン製版。
[3]:
上記バスバー電極開口部の中の閉口部と、フィンガー電極開口部とバスバー電極開口部が接する辺との間は50μm以上700μm以下の間隔があることを特徴とする[1]又は[2]記載のスクリーン製版。
[4]:
上記閉口部は、上記フィンガー電極開口部の長手方向に一致する位置に配置されていることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のスクリーン製版。
[5]:
上記閉口部同士は100μm以上2000μm以下の間隔があることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のスクリーン製版。
[6]:
上記バスバー電極開口部の幅が0.5mm以上3mm以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のスクリーン製版。
[7]:
[1]〜[6]のいずれかに記載のスクリーン製版を用い、バスバー電極の長手方向に対してスキージの進行方向が垂直方向となるように導電性ペーストを印刷することを特徴とする太陽電池の電極の印刷方法。
【0022】
なお、一般的に用いられているフィンガー開口幅80〜100μmであれば、上記のような断線が発生することは稀である。本手法が効果的なのはフィンガー開口幅80μm未満の細線である。
上記のような特徴を有するスクリーン製版を用いて印刷する太陽電池の電極の印刷方法において、本発明の効果を十分得るためには、バスバー電極の長手方向に対して印刷方向がほぼ垂直であることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスクリーン製版を用いれば、太陽電池製造コストを低減でき、シャドーロスを増加させることなく、更には、太陽電池の美観を損ねることなく、バスバー電極とフィンガー電極の接続部の断線を防止することができ、信頼性の高い太陽電池を生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一般的な太陽電池の電極の断面図である。
図2】一般的な太陽電池の表面形状を示す平面図である。
図3】一般的な太陽電池の裏面形状を示す裏面図である。
図4】従来のスクリーン製版の印刷中の様子を示す説明図である。
図5】従来のスクリーン製版の印刷中のサドル現象の様子を示す説明図である。
図6】従来のスクリーン製版を用いて印刷した後の電極形状の断面図である。
図7】従来のスクリーン製版を用いた断線回避法の一例を示す説明図である。
図8】従来のスクリーン製版の開口部拡大図である。
図9】従来のスクリーン製版による印刷後拡大図である。
図10図9のA−A線に沿ったバスバー電極とフィンガー電極の接続部の断面図である。
図11】本発明のスクリーン製版の一例を示す開口部拡大図である。
図12】本発明の同スクリーン製版による印刷後拡大図である。
図13図12のB−B線に沿ったバスバー電極とフィンガー電極の接続部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明に係る太陽電池用スクリーン製版は、バスバー電極部が閉口部を有するもので、この場合、バスバー電極の輪郭から算出される開口面積のうち、60%以下、より好ましくは55%以下を閉口部とすることが好ましい。なお、閉口部は上記開口面積の30%以上、特に45%以上とすることで、本発明の効果をより有効に発揮させることができる。また、スクリーン製版におけるフィンガー電極の開口幅は80μm未満であり、好ましくは40〜80μm、40μm以上80μm未満、より好ましくは40〜75μm、更に好ましくは45〜70μm、特に50〜60μmである。
【0026】
図11は、本発明のスクリーン製版の一例を示すもので、図11において、スクリーン製版1の印刷方向(図中矢印方向)と平行にフィンガー電極開口部2が複数本形成されると共に、印刷方向と直交して幅広(Wb)のバスバー電極開口部3が形成されたものである。また、Wbの幅は0.5〜3mm、特に1〜2mmが好ましい。この場合、本発明に係るスクリーン製版1にあっては、バスバー電極開口部3内に複数の閉口部4が形成されたものである。これら閉口部4は、上記フィンガー電極開口部2の長手方向に対応一致する位置に形成されている。ここで、バスバー電極開口部3内の閉口部4は、フィンガー電極開口部2とバスバー電極開口部3とが接する辺から50〜700μm、好ましくは100〜300μmの間隔(Wc)があることが好ましい。50μm未満の間隔しかない場合、ペースト吐出量が減って断線を招く一方、700μmより大きくなると、スキージの押し込みによる、ペーストの押し出しが顕著になり、サドル現象が起きやすくなり、焼成時の熱収縮率の違いから断線が発生してしまうおそれがある。なお、各閉口部4間の間隔は100〜2,000μm、特に300〜1,000μmであることが好ましい。
【0027】
また、各閉口部4の合計面積は、上述したようにバスバー電極開口部3とその閉口部4との総面積(つまり、スクリーン製版のバスバー電極開口部3の輪郭から算出されるバスバー面積)の60%以下であり、更にフィンガー電極開口部2の幅Wfは80μm未満である。
上述したスクリーン製版を用いることにより、図12,13に示したように、フィンガー電極の断線、印刷時におけるバスバー電極開口部でのスキージの転落、バスバー電極からフィンガー電極にかけてのフィンガー電極の太りを抑制することができる。
【0028】
次に、上記スクリーン製版を用いた本発明の太陽電池の作製方法の一例を以下に述べる。但し、本発明はこの方法で作製された太陽電池に限られるものではない。
まず、高純度シリコンにホウ素あるいはガリウムのようなIII族元素をドープし、比抵抗0.1〜5Ω・cmとしたアズカット単結晶{100}p型シリコン基板表面のスライスダメージを、濃度5〜60質量%の水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、もしくは、フッ酸と硝酸の混酸等を用いてエッチングする。単結晶シリコン基板は、CZ法、FZ法のいずれの方法によって作製されてもよい。
【0029】
引き続き、基板表面にテクスチャとよばれる微小な凹凸形成を行う。テクスチャは太陽電池の反射率を低下させるための有効な方法である。テクスチャは、加熱した水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ溶液(濃度1〜10質量%、温度60〜100℃)中に10〜30分間程度浸漬することで容易に作製される。上記溶液中に、所定量の2−プロパノールを溶解させ、反応を促進させることが多い。
【0030】
テクスチャ形成後、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸等、もしくはこれらの混合液の酸性水溶液中で洗浄する。経済的及び効率的見地から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上するため、塩酸溶液中に、0.5〜5質量%の過酸化水素を混合させ、60〜90℃に加温して洗浄してもよい。
【0031】
この基板上に、オキシ塩化リンを用いた気相拡散法によりエミッタ層を形成する。一般的なシリコン太陽電池は、pn接合を受光面にのみ形成する必要があり、これを達成するために基板同士を2枚重ね合わせた状態で拡散したり、拡散前に裏面にSiO2膜やSiNx膜等を拡散マスクとして形成して、裏面にpn接合ができないような工夫を施す必要がある。拡散後、表面にできたガラスをフッ酸等で除去する。
【0032】
次に、受光面の反射防止膜形成を行う。製膜にはプラズマCVD装置を用いSiNx膜を約100nm製膜する。反応ガスとして、モノシラン(SiH4)及びアンモニア(NH3)を混合して用いることが多いが、NH3の代わりに窒素を用いることも可能であり、また、プロセス圧力の調整、反応ガスの希釈、更には、基板に多結晶シリコンを用いた場合には基板のバルクパッシベーション効果を促進するため、反応ガスに水素を混合することもある。
【0033】
次いで、裏面電極をスクリーン印刷法で形成する。上記基板の裏面に、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダで混合したペーストをバスバー状にスクリーン印刷した後、アルミニウム粉末を有機物バインダで混合したペーストをバスバー以外の領域にスクリーン印刷する。印刷後、700〜800℃の温度で5〜30分間焼成して、裏面電極が形成される。裏面電極形成は印刷法による方が好ましいが、蒸着法、スパッタ法等で作製することも可能である。
【0034】
次に、表面電極を、本発明に係るスクリーン製版を用いたスクリーン印刷法で形成する。
より詳しくは、上記基板の表面に、銀粉末と、ガラスフリットと、有機物バインダを混合したペーストを、フィンガー電極幅が30〜80μm、フィンガー電極間隔0.5〜4.0mmで設計されたくし型の印刷パターンを有するスクリーン製版を用いて印刷する。
【0035】
本発明のスクリーン製版は、上記のような一般的な太陽電池のパターンは変更することなく、図11に示すようにバスバー電極内に閉口部を設けるだけでよい。
【0036】
一般的に用いられているスクリーン製版のフィンガー開口幅は80〜100μmである。この場合、フィンガー電極は十分太く、厚く印刷できるために、上記のような断線が発生することは稀である。しかし、フィンガー開口幅80μm未満の細線になると、バスバー電極とフィンガー電極の膜厚差が大きくなり、熱収縮量の違いにより断線が発生してしまう(図9)。
【0037】
そのため、本発明では、バスバー電極とフィンガー電極を同時に印刷する太陽電池の製造方法において、バスバー電極の輪郭から算出される開口面積のうち、60%以下を閉口部としたスクリーン製版を用いて印刷することで断線を回避することができる(図13)。
このような特徴を有するスクリーン製版を用いて印刷する太陽電池の製造方法において、本発明の効果を十分得るためには、バスバー電極に対して印刷方向がほぼ垂直であることが望ましい。
【0038】
本発明のスクリーン製版を用いると、上記した通りバスバー電極内の閉口部の存在により、刷り終わり側の吐出量が小さくなるために、フィンガー電極の太りを抑制する効果もある(図12)。
【0039】
バスバー開口部に部分的に閉口部を有すると、印刷後に印刷されていない部分ができる可能性がある。しかしこれは、モジュール作製時に、はんだコーティングされた銅のリード線を接着するため、外観上の問題は発生しない。また、従来のバスバー電極面積に比べて、40%以上バスバー電極面積があれば、リード線の接着強度を保つことができる。
また、バスバー電極の使用量が減少することによって、低コストの太陽電池を製造することが可能となる。
このように、スクリーン製版のバスバー電極内に閉口部を設置することで、バスバー電極とフィンガー電極の接続部の断線を回避することができる。
上記のような手法を用いて電極を形成した後、大気下、700〜800℃の温度で5〜30分間熱処理することにより焼結させる。裏面電極及び受光面電極の焼成は一度に行うことも可能である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0041】
[実施例、比較例]
本発明の有効性を確認するため、以下の工程を半導体基板30枚について行い、太陽電池を作製した。
印刷パターンは、従来のパターンA(フィンガー電極の開口幅(Wf)60μm:比較例:図8)に対して、バスバー電極開口内に閉口部を設けたパターンB(図11)と、フィンガー開口幅が100μmのパターンCのスクリーン製版を用意した(比較例:図8)。バスバー電極の開口幅Wbはすべて1.5mmに統一した。
この場合、パターンBにおいて、フィンガー電極の開口部とバスバー電極の開口部が接する辺からバスバー電極開口部内の間隙Wcは100μmであり、また各閉口部間の間隙は1,000μmであり、閉口部の合計面積はバスバー電極開口部の輪郭から算出されるバスバー面積の55%であった。
【0042】
まず、15cm角、厚さ250μm、比抵抗2.0Ω・cmの、ホウ素ドープ{100}p型アズカットシリコン基板(100)を用意し、濃水酸化カリウム水溶液によりダメージ層を除去し、テクスチャを形成し、オキシ塩化リン雰囲気下850℃で熱処理したエミッタ層101を形成し、フッ酸にてリンガラスを除去し、洗浄、乾燥させた。次にプラズマCVD装置を用い、SiNx膜102を製膜し、裏面に、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダで混合したペーストをバスバー状にスクリーン印刷した後(106)、アルミニウム粉末を有機物バインダで混合したペーストをバスバー以外の領域にスクリーン印刷した(104)。有機溶媒を乾燥して裏面電極を形成した半導体基板を作製した。
【0043】
次に、この半導体基板上に、銀粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルと、有機溶媒とを主成分とし、添加物として金属酸化物を含有した導電性ペーストを、上記印刷パターンを有するスクリーン製版を用いて、スキージ硬度70度、スキージ角度70度、印圧0.3MPa、印刷速度50mm/secで半導体基板上に形成された反射防止膜上に塗布した。印刷後、150℃のクリーンオーブンで有機溶媒の乾燥を行った後、800℃の空気雰囲気下で焼成した。
【0044】
このように作製した太陽電池30枚について、光学顕微鏡による電極観察とソーラーシュミレーター(25℃の雰囲気の中、照射強度:1kW/m2、スペクトル:AM1.5グローバル)による評価を行った。また、光学顕微鏡にて印刷後のフィンガー幅と接続部の幅を観察し、断線の有無を確認した。実施例、比較例の結果平均を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
標準条件Aで、バスバー電極とフィンガー電極の接続部の断線が確認されたが、本発明に係る方法では確認されず、また、開口幅が大きい水準Cでも確認されなかった。
短絡電流はフィンガー電極幅が大きいCでは減少した。これは幅増加によるシャドーロスが原因である。一方、曲線因子は、断線が起きたAに比べて、断線していない水準Bのほうが約1.5%高い75.1%を示した。
従来法ではバスバー電極とフィンガー電極の接続部の断線が発生したが、本発明のスクリーン製版を用いれば工程数を増やすことなく、高アスペクト比の電極を断線なく形成することができる。
【0047】
以上のように、本発明によれば、バスバー電極とフィンガー電極の接続部を断線することなく電極を形成することによって、変換効率の高い太陽電池を、歩留りよく製造することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 スクリーン製版
2 フィンガー電極開口部
3 バスバー電極開口部
4 バスバー電極開口部内の閉口部
5 閉口部
12 フィンガー電極
13 表面バスバー電極
100 p型半導体基板
101 n型拡散層
102 反射防止膜(SiNx膜)
103 BSF層
104 アルミニウム電極
105 表面バスバー電極
106 裏面バスバー電極
107 フィンガー電極
110 メッシュ材
111 乳剤
112 スキージ
113 凹み部分
114 断線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図13