【文献】
セメント化学専門委員会報告 C−8 セメント中の微量成分の定量方法の検討 : B、Co、Se、Sn、Sb、Te、Tlの定量方法,社団法人セメント協会・研究所,2004年 3月15日,1−36頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、セメントクリンカおよび石膏を含むセメント組成物であって、セメントクリンカは、セメント組成物の質量に対して、62〜74質量%の3CaO・SiO
2および7〜12質量%の3CaO・Al
2O
3を含み、セメント組成物の質量に対する石膏の割合は、SO
3換算で0.4〜3.0質量%であり、石膏は半水石膏を含み、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は65〜115であり、セメント組成物は、スズ換算で、セメントクリンカ1kgに対して40〜250mgのスズまたはスズ化合物を含み、セメント組成物のブレーン比表面積は4000〜5000cm
2/gである。なお、セメントクリンカは、セメント組成物の質量に対して、62〜74質量%の3CaO・SiO
2および7〜12質量%の3CaO・Al
2O
3を含んでいれば、2CaO・SiO
2および4CaO・Al
2O
3・FeO
3などの他のセメントクリンカ成分を含んでもよい。以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
(セメントクリンカ)
本発明のセメント組成物に使用されるセメントクリンカは、セメント組成物を構成する主要組成物であり、石灰石(CaO成分)、粘土(Al
2O
3成分、SiO
2成分)、ケイ石(SiO
2成分)および酸化鉄原料(Fe
2O
3成分)などを適量ずつ配合し、1450℃前後の高温で焼成して製造される。セメントクリンカは、3CaO・SiO
2(略号:C
3S)および3CaO・Al
2O
3(略号:C
3A)を含み、2CaO・SiO
2(略号:C
2S)および4CaO・Al
2O
3・FeO
3(略号:C
4AF)をさらに含んでもよい。セメントクリンカは、エーライト(C
3S)の主要鉱物と、その主要鉱物の結晶間に存在するアルミネート相(C
3A)の間隙相などとから構成される。セメントクリンカは、主要鉱物としてビーライト(C
2S)および間隙相としてフェライト相(C
4AF)をさらに含んでもよい。
【0012】
なお、セメントクリンカにおける3CaO・SiO
2(略号:C
3S)、2CaO・SiO
2(略号:C
2S)、3CaO・Al
2O
3(略号:C
3A)および4CaO・Al
2O
3・FeO
3(略号:C
4AF)の含有量は、JIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」により測定したセメントクリンカにおけるCaO、SiO
2、Al
2O
3およびFe
2O
3の割合から、セメント化学の分野でボーグ式と呼ばれる計算式により求められる(たとえば、大門正機編訳「セメントの化学」、内田老鶴圃(1989)、p.11を参照)。
【0013】
(セメントクリンカの製造)
次に、セメントクリンカの製造の一例について説明する。セメントクリンカ原料としては、Ca、Si、Alなどを含み、所望によりFeを含むものであれば、元素単体物、酸化物、炭酸化物などの形態を問わず用いることができ、また、それらの混合物を用いることができる。天然原料の例として、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料が挙げられ、工業的な原料の例として、上記元素を含む廃棄物原料、高炉スラグ、フライアッシュなどが挙げられる。また、かかるセメントクリンカ原料の混合割合に関しては、とくに限定されるものではなく、目的とする鉱物組成に対応した成分組成となるように原料配合を定めることができる。
【0014】
そして、目的とするセメントクリンカが得られるような組成で混合されたセメントクリンカ原料を、下記の焼成条件で焼成し、冷却する。焼成は、通常、電気炉やロータリーキルンなどを用いて行われる。焼成方法としては、たとえば、セメントクリンカ原料を、所定の第1焼成温度および第1焼成時間で加熱して焼成を行う第1焼成工程と、該第1焼成工程後、第1焼成温度から所定の第2焼成温度まで所定の昇温時間をかけて昇温させる昇温工程と、該昇温工程後、第2焼成温度および所定の第2焼成時間で加熱して焼成を行う第2焼成工程と、を含む方法が挙げられる。たとえば、電気炉を用いた場合、セメントクリンカ原料を、1000℃の焼成温度(第1焼成温度)で30分間(第1焼成時間)加熱して焼成を行った後(第1焼成工程)、1450℃(第2焼成温度)まで30分間(昇温時間)かけて昇温させ(昇温工程)、さらに1450℃で15分間(第2焼成時間)加熱して焼成を行った後(第2焼成工程)、焼成物を急冷することにより、セメントクリンカを製造することができる。
【0015】
(3CaO・SiO
2)
本発明のセメント組成物の成分の一つである3CaO・SiO
2は、上述のセメントクリンカのエーライトの主成分として、セメント組成物中に存在する。セメント組成物の質量に対する3CaO・SiO
2の割合は62〜74質量%であり、好ましくは62〜71質量%である。3CaO・SiO
2の割合は62〜74質量%であると、セメント組成物が発現する強度が高くなる。なお、3CaO・SiO
2の割合は、上述のボーグ式から算出した値である。
【0016】
(3CaO・Al
2O
3)
本発明のセメント組成物の成分の一つである3CaO・Al
2O
3は、上述のセメントクリンカのアルミネート相の主成分として、セメント組成物中に存在する。セメント組成物の質量に対する3CaO・Al
2O
3の割合は7〜12質量%である。3CaO・Al
2O
3の割合が7質量%未満であると、セメント組成物の流動性が混練直後に低下し、セメント組成物が発現する強度が弱くなる場合があり、3CaO・Al
2O
3の割合が12質量%よりも大きくなると、セメント組成物の流動性が混練直後にかなり大きく低下する場合がある。なお、3CaO・Al
2O
3の割合は、上述のボーグ式から算出した値である。また、混練直後とは、セメント組成物の混練を終了してから15分までの時間である。
【0017】
(石膏)
本発明のセメント組成物は石膏を含む。石膏とは、二水石膏、半水石膏および無水石膏などの硫酸カルシウムの総称である。本発明のセメント組成物に使用される石膏は半水石膏を含む。石膏は二水石膏および/または無水石膏をさらに含んでもよい。セメント組成物の質量に対する石膏の割合は、SO
3換算で0.4〜3.0質量%であり、好ましくは0.8〜2.5質量%であり、より好ましくは1.0〜2.0質量%である。石膏の割合がSO
3換算で0.4質量%未満であると、セメント組成物の流動性が混練直後にかなり大きく低下する場合があり、石膏の割合がSO
3換算で3.0質量%よりも大きいと、セメント組成物の流動性が混練直後に低下し、セメント組成物が発現する強度が弱くなる場合がある。なお、セメント組成物中のSO
3換算の石膏の割合は、JIS R 5202:1998「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定することができる。
【0018】
石膏に含まれる半水石膏は、CaSO
4・1/2H
2Oの化学式で表され、二水石膏の結晶水の3/4相当量を脱水して得られる。半水石膏は焼石膏の主成分でもある。半水石膏に水を添加すると、針状の結晶が析出して、半水石膏は、凝結硬化した二水石膏になる。
【0019】
石膏に含まれる半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は65〜115であり、好ましくは70〜110であり、より好ましくは80〜100である。半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が65〜115であると、半水石膏の水への溶解性が良好になり、これにより、半水石膏が凝結硬化した二水石膏に変わる前に、半水石膏は水に溶解する。なお、半水石膏のX線回折のピークの強度は、3CaO・SiO
2および3CaO・Al
2O
3などの他の成分のX線回折のピークに比べて弱い。このため、半水石膏のX線回折のピークの強度を測定するときは、サリチル酸メタノール溶液を使用して、セメント組成物から3CaO・SiO
2および3CaO・Al
2O
3などの他の成分を除去してから半水石膏のX線回折のピークの強度を測定する。
【0020】
半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は、二水石膏から半水石膏を作製するときの熱処理温度を調整することにより制御することができる。
図1は、半水石膏作製温度とX線回折ピーク強度比との関係を示す図である。横軸が二水石膏から半水石膏を作製するときの熱処理温度であり、縦軸が半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比である。これより、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は、二水石膏から半水石膏を作製するときの熱処理温度に対して負相関であることわかる。半水石膏の結晶構造中では、水分子はc軸に対して直角の方向に同一結晶面に配列し、結晶水はc軸上に対して出入りしやすい状態にある。したがって、二水石膏をより高温状態で保持し、脱水させた場合、半水石膏を生成する反応において、110面および220面などのc軸に対して平行な面のX線回折強度が高い結晶が生成されやすくなり、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比はより低くなる。なお、二水石膏から半水石膏を作製するときの熱処理温度の調整は、たとえば、セメント仕上工程でセメントクリンカに二水石膏を添加して粉砕するときの温度を上記の熱処理温度に調整することにより実施することができる。
【0021】
半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比と半水石膏の水への溶解性との関係は、以下のようにして確認した。
図2は、X線回折ピーク強度比と半水石膏の溶解とを比較した図である。半水石膏の質量に対して100倍の質量の水を、半水石膏が入った容器に注入し、所定時間撹拌した後、水溶液を粉末X線回折装置で測定し、2θ=14.7°位に出現する半水石膏の200面のX線回折強度を測定した。この測定は、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が85、91および98のものについて実施した。なお、半水石膏の200面のX線回折強度は、半水石膏の200面のX線回折のピーク強度からバックグランドを引き算した強度である。
図2のグラフの横軸が撹拌時間であり、縦軸は半水石膏の200面のX線回折強度である。この図から、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が高いほど、水への溶解は急速に進行することがわかる。これは、半水石膏の114面は半水石膏の220面よりも水に対する溶解度が高いことに起因すると考えられる。
【0022】
半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比と二水石膏の析出との関係は、以下のようにして確認した。
図3は、X線回折ピーク強度比と二水石膏の析出とを比較した図である。半水石膏の質量に対して100倍の質量の水を、半水石膏が入った容器に注入し、所定時間撹拌した後、水溶液を粉末X線回折装置で測定し、2θ=11.7°位に出現する二水石膏の020面のX線回折強度を測定した。この測定は、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が85、91および98のものについて実施した。なお、二水石膏の020面のX線回折強度は、二水石膏の020面のX線回折のピーク強度からバックグランドを引き算した強度である。
図3のグラフの横軸が撹拌時間であり、縦軸は二水石膏の020面のX線回折強度である。
図3のグラフから、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が高いほど、二水石膏の析出の速度は緩慢になることがわかる。
図2のグラフと
図3のグラフとを比較すると、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が低い場合、半水石膏が完全に溶解する前に二水石膏が析出することがわかる。
【0023】
(スズまたはスズ化合物)
本発明のセメント組成物はスズまたはスズ化合物を含む。好ましいスズ化合物には、フッ化スズ、塩化スズ、酸化スズ、硫酸スズおよび硝酸スズなどが挙げられる。セメントクリンカ1kgに対するスズまたはスズ化合物の質量は、スズに換算して、40〜250mgであり、好ましくは80〜200mgであり、より好ましくは100〜150mgである。スズに換算したスズまたはスズ化合物の質量が40〜250mgであると、セメント組成物の流動性が混練直後に低下することを抑制できるとともにセメント組成物が発現する強度を強くすることができる。
【0024】
(ブレーン比表面積)
本発明のセメント組成物のブレーン比表面積は、4000〜5000cm
2/gであり、好ましくは4200〜4800cm
2/gであり、より好ましくは4400〜4600cm
2/gである。ブレーン比表面積が4000〜5000cm
2/gであると、セメント組成物の流動性が混練直後に低下することを抑制できるとともにセメント組成物が発現する強度を強くすることができる。なお、ブレーン比表面積とは、JIS R 5201 「セメントの物理試験方法」に準拠したブレーン方式により測定した比表面積である。
【0025】
(3CaO・Al
2O
3と石膏との質量の割合)
セメント組成物中の3CaO・Al
2O
3の質量に対する石膏のSO
3換算の質量の割合は、好ましくは0.04〜0.6である。3CaO・Al
2O
3の質量に対する石膏のSO
3換算の質量の割合を0.04〜0.6にすることにより、3CaO・Al
2O
3の水和を遅延させることができるとともに、セメント組成物の混練直後の流動性を良好にし、セメント組成物が発現する強度を高くすることができる。
【0026】
(セメント組成物のその他の成分)
本発明のセメント組成物には、流動性、水和速度または強度発現の調節用として、石灰石、フライアッシュ、高炉スラグあるいはシリカフュームを添加することができる。この場合、石灰石としては、CaCO
3量をCaO基準で53質量%以上含有しているものが好ましい。なお、CaO換算量は、JIS M 8850 1994「石灰石分析方法」に準じて測定した値である。石灰石を適量添加することにより、特に初期強度の向上および流動性改善に有効である。高炉スラグ粉末を添加する場合には、水砕スラグで、その塩基度((CaO質量%+MgO質量%+Al
2O
3質量%)/SiO
2質量%)が1.70以上、好ましくは1.80以上のものを使用することができる。さらに、フライアッシュは、JIS A 6201:1999「コンクリート用フライアッシュ」に規定のI種、II種、III種あるいはIV種、好ましくはI種またはII種のものがセメントの水和促進にも有効に作用する。
【0027】
また、本発明のセメント組成物に、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤、とくにポリカル系高性能AE減水剤を添加することにより、コンクリートの流動性および強度をより向上させることができる。
【0028】
(モルタルおよびコンクリート)
本発明のセメント組成物を、水と混合することにより、セメントミルクを作製することができ、水および砂と混合することにより、モルタルを作製することができ、砂および砂利と混合することにより、コンクリートを製造することができる。また、上記セメント組成物からモルタルやコンクリートを作製する際、高炉スラグやフライアッシュなどを添加することもできる。
【0029】
(早強セメント)
早強セメントのセメント組成物は、高性能減水剤の効果が低いので、良好な流動性を得るために、高性能減水剤を多量に使用したり、必要以上に水比を高くしたりする必要があった。しかし、本発明のセメント組成物は、良好な流動性を得るために、高性能減水剤を多量に使用したり、必要以上に水比を高くしたりする必要がない。したがって、本発明のセメント組成物は、早強セメントのセメント組成物としてとくに有用である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例は、本発明を限定するものではない。
【0031】
[評価方法]
実施例および比較例のセメント組成物に使用する半水石膏を次の評価方法で評価した。
(粉末X線回折測定)
実施例および比較例のセメント組成物に使用する半水石膏について、以下の測定条件で粉末X線回折測定を行った。
粉末X線回折装置:スペクトリス(株)製、「X'Pert Pro」
リートベルト回折ソフト:スペクトリス(株)製、「High Score Plus」
X線管球:Cu
管電圧−管電流:45kV−40mA
測定範囲(2θ):10〜70°
ステップ幅:0.0167°
スキャン速度:0.1013°/秒
【0032】
半水石膏の114面のX線回折強度は、2θ=31.9°付近に表れる半水石膏の114面のピークのピーク強度からバックグランドを差し引いたピーク強度(I
(114))である。また、半水石膏の220面のX線回折強度は、2θ=29.8°付近に表れる半水石膏の220面のピークのピーク強度からバックグランドを差し引いたピーク強度(I
(220))である。したがって、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は、I
(114)/I
(220)の値である。
【0033】
実施例および比較例のセメント組成物を次の評価方法で評価した。
(3CaO・SiO
2および3CaO・Al
2O
3の割合)
セメント組成物の質量に対する3CaO・SiO
2および3CaO・Al
2O
3の割合は、JIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準拠してセメントクリンカ中のCaO、SiO
2、Al
2O
3およびFe
2O
3の割合を測定し、その測定結果を用いて上述のボーグ式から算出した。なお、SO
3換算の石膏の割合およびスズ換算のスズまたはスズ化合物の割合は配合量から算出した。
【0034】
(モルタルフロー値の測定)
実施例および比較例のセメント組成物を使用してJIS R 5201 「セメントの物理試験方法」の「10.4.2 モルタルの配合」に、セメント重量に対して高性能減水剤(花王(株)製 マイティー150)を外割で1.0質量%添加した。そして、「10.4.3 練混方法」に準拠して作製したモルタルについて、「11.2 フロー値の測り方」のうち15回の落下運動は実施せず、フローコーンを引き抜いた後に、モルタルの広がりが停止した時点(引き抜いてから15秒後)におけるフロー値を測定した。
【0035】
(モルタル圧縮強さ)
JIS R 5201 「セメントの物理試験方法」の「(5)強さ試験」の「(a)圧縮強さ」に準拠して、実施例および比較例のセメント組成物について材齢7日の供試体を測定した。なお、モルタル圧縮強さを評価するための供試体は、JIS R 5201 「セメントの物理試験方法」の「10.4 供試体の作り方」に準拠して作製した。
【0036】
[実施例および比較例のセメント組成物の作製]
以下のようにして、実施例および比較例のセメント組成物を作製した。
【0037】
<実施例1〜13、比較例1〜14>
(セメントクリンカおよび半水石膏の作製)
クリンカ原料として、二酸化珪素(キシダ化学(株)製、試薬1級、SiO
2)、酸化鉄(III)(関東化学(株)製、試薬特級、Fe
2O
3)、炭酸カルシウム(キシダ化学(株)製、試薬1級、CaCO
3)、酸化アルミニウム(関東化学(株)製、試薬1級、Al
2O
3)、塩基性炭酸マグネシウム(キシダ化学(株)製、試薬特級、約4MgCO
3・Mg(OH)
2・5H
2O)、炭酸ナトリウム(キシダ化学(株)製、無水・特級、Na
2CO
3)およびリン酸三カルシウム(キシダ化学(株)製、試薬1級、Ca
3(PO
4)
2)を用いた。セメントクリンカに添加する石膏には、二水石膏を熱処理して半水石膏を形成させたものを使用した。
半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が異なる半水石膏は、二水石膏から半水石膏を作製するときの熱処理温度を調節することにより作製した。なお、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が60、65、75、83、86、90、98、102、105、110および115である半水石膏の熱処理温度は、それぞれ、200℃、180℃、156℃、140℃、130℃、104℃、90℃、80℃、75℃、66℃および60℃であった。粉末X回折測定により調べたところ、上述のように二水石膏を熱処理することにより、二水石膏は、ほぼ全て半水石膏に変わっていた。すなわち、セメントクリンカに添加する石膏は、ほぼ全て半水石膏であった。
【0038】
これらの配合量は、生成されるC
3SおよびC
3Aの組成が、表1に示す組成となるように、各原料の配合量をボーグ式を用いて決定した。なお、表1に示すC
3SおよびC
3Aの割合は、セメント組成物全量基準での割合である。上記の通り配合したクリンカ原料を、電気炉に投入して1000℃で30分間の焼成を行った後、1000℃から1450℃まで30分間かけて昇温させ、さらに1450℃で15分間の焼成を行った後、焼成物を急冷して、各実施例、比較例に用いたセメントクリンカを作製した。
【0039】
(セメント組成物の作製)
上記作製したセメントクリンカと半水石膏と酸化スズ粉末(和光純薬工業(株)製、型番:No.20−0160)とを、表1に示す組成となるように配合した。なお、表1に示す半水石膏の割合は、セメント組成物全量基準でのSO
3換算の半水石膏の割合であり、スズの質量はセメントクリンカ1kgに対する質量である。配合物を、ブレーン比表面積が約4000〜約5000cm
2/gの範囲となるようにボールミルで粉砕して、各実施例、比較例のセメント組成物を作製した。各実施例および比較例の配合の詳細と、ブレーン比表面積とを表1に示す。3CaO・SiO
2および3CaO・Al
2O
3の割合は、セメント組成物の質量に対する割合であり、スズの割合は、スズで換算した、セメントクリンカ1kgに対する質量であり、半水石膏の割合はセメント組成物の質量に対するSO
3換算での割合であり、石膏は半水石膏であるとした。
【0040】
【表1】
【0041】
[結果]
(1)実施例1〜6のモルタルフロー値は大きく、実施例1〜6の混練直後の流動性は良好であった。また、実施例1〜6のモルタル圧縮強さは高く、実施例1〜13が発現する強度は高かった。
(2)比較例1、2、4および6のモルタル圧縮強さは高く、比較例1、2、4および6が発現する強度は高かった。しかし、比較例1、2、4および6のモルタルフロー値は小さく、比較例1、2、4および6の混練直後の流動性は悪かった。
(3)比較例3のモルタルフロー値は大きく、比較例3の混練直後の流動性は良好であった。しかし、比較例3のモルタル圧縮強さは低く、比較例3が発現する強度は低かった。
(4)比較例5のモルタルフロー値は小さく、比較例5の混練直後の流動性は悪かった。また、比較例5の流動性は非常に悪かったため、作製したモルタルを型に流し込めず、モルタル圧縮強さを測定するための供試体を作製することができなかった。このため、比較例5のモルタル圧縮強さは、測定できなかった。
【解決手段】本発明は、セメントクリンカおよび石膏を含むセメント組成物であって、セメントクリンカは、セメント組成物の質量に対して、62〜74質量%の3CaO・SiO
換算で0.4〜3.0質量%であり、石膏は半水石膏を含み、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は65〜115であり、セメント組成物は、スズ換算で、セメントクリンカ1kgに対して40〜250mgのスズまたはスズ化合物を含み、セメント組成物のブレーン比表面積は4000〜5000cm