【文献】
セメント化学専門委員会報告 C−8 セメント中の微量成分の定量方法の検討 : B、Co、Se、Sn、Sb、Te、Tlの定量方法,社団法人セメント協会・研究所,2004年 3月15日,1−36頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
セメント組成物の粉体粒子と水を混合すると、粉体粒子が凝集体を形成し、その中に取り込まれた水は、混合物の流動性に寄与できない。このような凝集体の形成を妨げ、少ない水で所望の流動性を得るために、セメント組成物と水を混合するとき、高性能減水剤を添加する。しかし、高性能減水剤を添加すると、セメント組成物と水との混合物の見かけ上の粘度がかえって増大する場合がある。このため、セメントの混練後に急激なスランプ低下現象が起こる可能性がある。これは、高性能減水剤がセメント組成物中のC
3AやC
4AFに選択的に吸着することにより、C
3AやC
4AFと半水石膏との反応が妨げられ、C
3Aと反応しないためにC
3Aに対して過剰量となった半水石膏が急速に水和し、二水石膏になり、流動性低下を引き起こしたためであると考えられている。高性能減水剤の添加以外に、セメントの流動性を改善する方法には、たとえば以下のものがある。
【0003】
セメントの流動性改善に関する従来技術としては、まず、5重量%以下のC
3Aと、C
3AおよびC
4AFの合計量が8〜11重量%になるような割合のC
4AFとを含み、50%以上の残りがC
3SおよびC
2Sなどのセメントクリンカ粉末と不溶性無水石膏とである水硬性組成物が提案されている(たとえば特許文献1参照)。このような組成により、分散剤の流動性効果が向上し、流動性の経時変化を小さくすることができる。また、C
3A含有量が5重量%以下のセメントクリンカ組成物と、半水石膏の割合とを調整した半水石膏および二水石膏からなる石膏と、セメントと、分散剤と、水とから構成される、流動性が良好で経時変化が小さい高流動性水硬性組成物が提案されている(たとえば特許文献2参照)。さらに、半水石膏または可溶性無水石膏(III型無水石膏)と、場合により不溶性無水石膏(II型無水石膏)とを含有させ、スランプロスを低減させたセメント組成物も提案されている(たとえば特許文献3参照)。
【0004】
また、混練直後の流動性に優れた高間隙相型セメント組成物が従来技術として知られている(たとえば特許文献4参照)。このセメント組成物では、セメント組成物中に含まれる半水石膏のSO
3量を、セメントクリンカおよび石膏との合計量に対し、1.7質量%以下にすることにより、混練直後の流動性を改善している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、セメントクリンカおよび半水石膏を含むセメント組成物であって、セメントクリンカは、セメント組成物の質量に対して、15〜50質量%の3CaO・SiO
2、15〜45質量%の2CaO・SiO
2ならびに20〜25質量%の3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3を含み、スズ換算で、セメントクリンカ1kgに対して40〜250mgのスズまたはスズ化合物をさらに含み、セメント組成物のブレーン比表面積は2800〜3800cm
2/gであり、セメント組成物の質量に対する半水石膏の割合は、SO
3換算で0.4〜3.0質量%であり、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は、65〜115である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
(セメントクリンカ)
本発明のセメント組成物に使用されるセメントクリンカは、セメント組成物を構成する主要組成物であり、石灰石(CaO成分)、粘土(Al
2O
3成分、SiO
2成分)、ケイ石(SiO
2成分)および酸化鉄原料(Fe
2O
3成分)などを適量ずつ配合し、1450℃前後の高温で焼成して製造される。セメントクリンカは、3CaO・SiO
2(略号:C
3S)、2CaO・SiO
2(略号:C
2S)、3CaO・Al
2O
3(略号:C
3A)および4CaO・Al
2O
3・FeO
3(略号:C
4AF)を含む。セメントクリンカは、エーライト(C
3S)およびビーライト(C
2S)の主要鉱物と、その主要鉱物の結晶間に存在するアルミネート相(C
3A)およびフェライト相(C
4AF)の間隙相などとから構成される。
【0013】
なお、セメントクリンカにおける3CaO・SiO
2(略号:C
3S)、2CaO・SiO
2(略号:C
2S)、3CaO・Al
2O
3(略号:C
3A)および4CaO・Al
2O
3・FeO
3(略号:C
4AF)の含有量は、JIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」により測定したセメントクリンカにおけるCaO、SiO
2、Al
2O
3およびFe
2O
3の割合から、セメント化学の分野でボーグ式と呼ばれる計算式により求められる(たとえば、大門正機編訳「セメントの化学」、内田老鶴圃(1989)、p.11を参照)。
【0014】
(セメントクリンカの製造)
次に、セメントクリンカの製造の一例について説明する。セメントクリンカ原料としては、Ca、Si、Alなどを含み、所望によりFeを含むものであれば、元素単体物、酸化物、炭酸化物などの形態を問わず用いることができ、また、それらの混合物を用いることができる。天然原料の例として、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料が挙げられ、工業的な原料の例として、上記元素を含む廃棄物原料、高炉スラグ、フライアッシュなどが挙げられる。また、かかるセメントクリンカ原料の混合割合に関しては、とくに限定されるものではなく、目的とする鉱物組成に対応した成分組成となるように原料配合を定めることができる。
【0015】
そして、目的とするセメントクリンカが得られるような組成で混合されたセメントクリンカ原料を、下記の焼成条件で焼成し、冷却する。焼成は、通常、電気炉やロータリーキルンなどを用いて行われる。焼成方法としては、たとえば、セメントクリンカ原料を、所定の第1焼成温度および第1焼成時間で加熱して焼成を行う第1焼成工程と、該第1焼成工程後、第1焼成温度から所定の第2焼成温度まで所定の昇温時間をかけて昇温させる昇温工程と、該昇温工程後、第2焼成温度および所定の第2焼成時間で加熱して焼成を行う第2焼成工程と、を含む方法が挙げられる。たとえば、電気炉を用いた場合、セメントクリンカ原料を、1000℃の焼成温度(第1焼成温度)で30分間(第1焼成時間)加熱して焼成を行った後(第1焼成工程)、1450℃(第2焼成温度)まで30分間(昇温時間)かけて昇温させ(昇温工程)、さらに1450℃で15分間(第2焼成時間)加熱して焼成を行った後(第2焼成工程)、焼成物を急冷することにより、セメントクリンカを製造することができる。
【0016】
(3CaO・SiO
2)
本発明のセメント組成物の成分の一つである3CaO・SiO
2は、上述のセメントクリンカのエーライトの主成分として、セメント組成物中に存在する。セメント組成物の質量に対する3CaO・SiO
2の割合は15〜50質量%である。3CaO・SiO
2の割合は15〜50質量%であると、セメント組成物が発現する強度が高くなる。なお、3CaO・SiO
2の割合は、上述のボーグ式から算出した値である。
【0017】
(2CaO・SiO
2)
本発明のセメント組成物の成分の一つである2CaO・SiO
2は、上述のセメントクリンカのビーライトの主成分として、セメント組成物中に存在する。セメント組成物の質量に対する2CaO・SiO
2の割合は15〜45質量%である。2CaO・SiO
2の割合は15〜45質量%であると、セメント組成物が発現する強度が高くなる。なお、2CaO・SiO
2の割合は、上述のボーグ式から算出した値である。
【0018】
(3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3)
本発明のセメント組成物の成分の一つである3CaO・Al
2O
3は、上述のセメントクリンカのアルミネート相の主成分として、セメント組成物中に存在する。また、本発明のセメント組成物の成分の一つである4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3は、上述のセメントクリンカのフェライト相の主成分として、セメント組成物中に存在する。セメント組成物の質量に対する3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3の合計の割合は20〜25質量%である。3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3の合計の割合が20質量%未満であると、セメント組成物の流動性が混練直後に低下し、セメント組成物が発現する強度が弱くなる場合があり、3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3の合計の割合が25質量%よりも大きくなると、セメント組成物の流動性が混練直後にかなり大きく低下する場合がある。また、3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3の合計の割合が20〜25質量%であると、セメント組成物に多量の産業廃棄物・副産物等を加えることができるとともに、セメント組成物が発現する耐久性を高めることができる。なお、3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3の合計の割合は、上述のボーグ式から算出した値である。また、混練直後とは、セメント組成物の混練を終了してから15分までの時間である。
【0019】
なお、セメント組成物に加えることができる産業廃棄物・副産物には、たとえば、高炉スラグおよび製鋼スラグなどの鉄鋼スラグ、銅ガラミおよび亜鉛滓などの非鉄スラグ、シンダアッシュ、フライアッシュ、クリンカアッシュおよびボトムアッシュなどの石炭灰、ならびに下水汚泥などが挙げられる。
【0020】
(半水石膏)
本発明のセメント組成物に使用される半水石膏は、CaSO
4・1/2H
2Oの化学式で表され、二水石膏の結晶水の3/4相当量を脱水して得られる。半水石膏は焼石膏の主成分でもある。半水石膏に水を添加すると、針状の結晶が析出して、半水石膏は、凝結硬化した二水石膏になる。半水石膏は、一般にセメント用に使用されているものであればとくに限定されない。セメント組成物の質量に対する半水石膏の割合は、SO
3換算で0.4〜3.0質量%であり、好ましくは0.8〜2.5質量%であり、より好ましくは1.0〜2.0質量%である。半水石膏の割合がSO
3換算で0.4質量%未満であると、セメント組成物の流動性が混練直後にかなり大きく低下する場合があり、半水石膏の割合がSO
3換算で3.0質量%よりも大きいと、セメント組成物の流動性が混練直後に低下し、セメント組成物が発現する強度が弱くなる場合がある。なお、セメント組成物中のSO
3換算の半水石膏の割合は、JIS R 5202:1998「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定することができる。
【0021】
本発明のセメント組成物に使用される半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は65〜115であり、好ましくは70〜110であり、より好ましくは80〜100である。半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が65〜115であると、半水石膏の水への溶解性が良好になり、これにより、半水石膏が凝結硬化した二水石膏に変わる前に、半水石膏は水に溶解する。なお、半水石膏のX線回折のピークの強度は、3CaO・SiO
2および3CaO・Al
2O
3などの他の成分のX線回折のピークに比べて弱い。このため、半水石膏のX線回折のピークの強度を測定するときは、サリチル酸メタノール溶液を使用して、セメント組成物から3CaO・SiO
2および3CaO・Al
2O
3などの他の成分を除去してから半水石膏のX線回折のピークの強度を測定する。
【0022】
半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は、二水石膏から半水石膏を作製するときの熱処理温度を調整することにより制御することができる。
図1は、半水石膏作製温度とX線回折ピーク強度比との関係を示す図である。横軸が二水石膏から半水石膏を作製するときの熱処理温度であり、縦軸が半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比である。これより、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は、二水石膏から半水石膏を作製するときの熱処理温度に対して負相関であることわかる。半水石膏の結晶構造中では、水分子はc軸に対して直角の方向に同一結晶面に配列し、結晶水はc軸上に対して出入りしやすい状態にある。したがって、二水石膏をより高温状態で保持し、脱水させた場合、半水石膏を生成する反応において、110面および220面などのc軸に対して平行な面のX線回折強度が高い結晶が生成されやすくなり、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比はより低くなる。なお、二水石膏から半水石膏を作製するときの熱処理温度の調整は、セメント仕上工程でセメントクリンカに二水石膏を添加して粉砕するときの温度を上記の熱処理温度に調整することにより実施することができる。
【0023】
半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比と半水石膏の水への溶解性との関係は、以下のようにして確認した。
図2は、X線回折ピーク強度比と半水石膏の溶解とを比較した図である。半水石膏の質量に対して100倍の質量の水を、半水石膏が入った容器に注入し、所定時間撹拌した後、水溶液を粉末X線回折装置で測定し、2θ=14.7°位に出現する半水石膏の200面のX線回折強度を測定した。この測定は、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が85、91および98のものについて実施した。なお、半水石膏の200面のX線回折強度は、半水石膏の200面のX線回折のピーク強度からバックグランドを引き算した強度である。
図2のグラフの横軸が撹拌時間であり、縦軸は半水石膏の200面のX線回折強度である。この図から、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が高いほど、水への溶解は急速に進行することがわかる。これは、半水石膏の114面は半水石膏の220面よりも水に対する溶解度が高いことに起因すると考えられる。
【0024】
半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比と二水石膏の析出との関係は、以下のようにして確認した。
図3は、X線回折ピーク強度比と二水石膏の析出とを比較した図である。半水石膏の質量に対して100倍の質量の水を、半水石膏が入った容器に注入し、所定時間撹拌した後、水溶液を粉末X線回折装置で測定し、2θ=11.7°位に出現する二水石膏の020面のX線回折強度を測定した。この測定は、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が85、91および98のものについて実施した。なお、二水石膏の020面のX線回折強度は、二水石膏の020面のX線回折のピーク強度からバックグランドを引き算した強度である。
図3のグラフの横軸が撹拌時間であり、縦軸は二水石膏の020面のX線回折強度である。
図3のグラフから、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が高いほど、二水石膏の析出の速度は緩慢になることがわかる。
図2のグラフと
図3のグラフとを比較すると、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が低い場合、半水石膏が完全に溶解する前に二水石膏が析出することがわかる。
【0025】
(スズまたはスズ化合物)
本発明のセメント組成物はスズまたはスズ化合物を含む。好ましいスズ化合物には、フッ化スズ、塩化スズ、酸化スズ、硫酸スズおよび硝酸スズなどが挙げられる。セメントクリンカ1kgに対するスズまたはスズ化合物の質量は、スズに換算して40〜250mgであり、好ましくは80〜200mgであり、より好ましくは100〜150mgである。スズに換算したスズまたはスズ化合物の質量が40〜250mgであると、セメント組成物の流動性が混練直後に低下することを抑制できるとともにセメント組成物が発現する強度を強くすることができる。
【0026】
(ブレーン比表面積)
本発明のセメント組成物のブレーン比表面積は2800〜3800cm
2/gであり、好ましくは3000〜3600cm
2/gであり、より好ましくは3200〜3400cm
2/gである。ブレーン比表面積が2800〜3800cm
2/gであると、セメント組成物の流動性が混練直後に低下することを抑制できるとともにセメント組成物が発現する強度を強くすることができる。なお、ブレーン比表面積とは、JIS R 5201 「セメントの物理試験方法」に準拠したブレーン方式により測定した比表面積である。
【0027】
(3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3と半水石膏との質量の割合)
セメント組成物中の3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3の合計の質量に対する半水石膏のSO
3換算の質量の割合は、好ましくは0.02〜0.12である。3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3の合計の質量に対する半水石膏のSO
3換算の質量の割合を0.02〜0.12にすることにより、3CaO・Al
2O
3の水和を遅延させることができるとともに、セメント組成物の混練直後の流動性を良好にし、セメント組成物が発現する強度を高くすることができる。
【0028】
(セメント組成物のその他の成分)
本発明のセメント組成物には、流動性、水和速度または強度発現の調節用として、石灰石、フライアッシュ、高炉スラグあるいはシリカフュームを添加することができる。この場合、石灰石としては、CaCO
3量をCaO基準で53質量%以上含有しているものが好ましい。なお、CaO換算量は、JIS M 8850 1994「石灰石分析方法」に準じて測定した値である。石灰石を適量添加することにより、特に初期強度の向上および流動性改善に有効である。高炉スラグ粉末を添加する場合には、水砕スラグで、その塩基度((CaO質量%+MgO質量%+Al
2O
3質量%)/SiO
2質量%)が1.70以上、好ましくは1.80以上のものを使用することができる。さらに、フライアッシュは、JIS A 6201:1999「コンクリート用フライアッシュ」に規定のI種、II種、III種あるいはIV種、好ましくはI種またはII種のものがセメントの水和促進にも有効に作用する。
【0029】
また、本発明のセメント組成物に、AE減水剤、高性能減水剤または高性能AE減水剤、とくにポリカル系高性能AE減水剤を添加することにより、コンクリートの流動性および強度をより向上させることができる。
【0030】
(モルタルおよびコンクリート)
本発明のセメント組成物を、水と混合することにより、セメントミルクを作製することができ、水および砂と混合することにより、モルタルを作製することができ、砂および砂利と混合することにより、コンクリートを製造することができる。また、上記セメント組成物からモルタルやコンクリートを作製する際、高炉スラグやフライアッシュなどを添加することもできる。
【0031】
(高間隙相型セメント)
普通ポルトランドセメントよりも多くの廃棄物を原料として使用できる高間隙相型セメントに本発明のセメント組成物を使用することによって、高間隙相型セメントにおいて、流動性が混練直後に低下することを抑制し、セメント組成物が発現する強度を高めることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例は、本発明を限定するものではない。
【0033】
[評価方法]
実施例および比較例のセメント組成物に使用する半水石膏を次の評価方法で評価した。
(粉末X線回折測定)
実施例および比較例のセメント組成物に使用する半水石膏について、以下の測定条件で粉末X線回折測定を行った。
粉末X線回折装置:スペクトリス(株)製、「X'Pert Pro」
リートベルト回折ソフト:スペクトリス(株)製、「High Score Plus」
X線管球:Cu
管電圧−管電流:45kV−40mA
測定範囲(2θ):10〜70°
ステップ幅:0.0167°
スキャン速度:0.1013°/秒
【0034】
半水石膏の114面のX線回折強度は、2θ=31.9°付近に表れる半水石膏の114面のピークのピーク強度からバックグランドを差し引いたピーク強度(I
(114))である。また、半水石膏の220面のX線回折強度は、2θ=29.8°付近に表れる半水石膏の220面のピークのピーク強度からバックグランドを差し引いたピーク強度(I
(220))である。したがって、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比は、I
(114)/I
(220)の値である。
【0035】
実施例および比較例のセメント組成物を次の評価方法で評価した。
(3CaO・SiO
2、2CaO・SiO
2、ならびに3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3の割合)
セメント組成物の質量に対する3CaO・SiO
2、2CaO・SiO
2、ならびに3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3の割合は、JIS R 5202:1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準拠してセメントクリンカ中のCaO、SiO
2、Al
2O
3およびFe
2O
3の割合を測定し、その測定結果を用いて上述のボーグ式から算出した。なお、SO
3換算の半水石膏の割合およびスズ換算のスズまたはスズ化合物の割合は配合量から算出した。
【0036】
(モルタルフロー値の測定)
実施例および比較例のセメント組成物を使用してJIS R 5201 「セメントの物理試験方法」の「10.4.2 モルタルの配合」に、セメント重量に対して高性能減水剤(花王(株)製 マイティー150)を外割で1.0質量%添加した。そして、「10.4.3 練混方法」に準拠して作製したモルタルについて、「11.2 フロー値の測り方」のうち15回の落下運動は実施せず、フローコーンを引き抜いた後に、モルタルの広がりが停止した時点(引き抜いてから15秒後)におけるフロー値を測定した。
【0037】
(モルタル圧縮強さ)
JIS R 5201 「セメントの物理試験方法」の「(5)強さ試験」の「(a)圧縮強さ」に準拠して、実施例および比較例のセメント組成物について材齢28日の供試体を測定した。なお、モルタル圧縮強さを評価するための供試体は、JIS R 5201 「セメントの物理試験方法」の「10.4 供試体の作り方」に準拠して作製した。
【0038】
[実施例および比較例のセメント組成物の作製]
以下のようにして、実施例および比較例のセメント組成物を作製した。
【0039】
<実施例1〜4、比較例1〜9>
(セメントクリンカおよび半水石膏の作製)
クリンカ原料として、二酸化珪素(キシダ化学(株)製、試薬1級、SiO
2)、酸化鉄(III)(関東化学(株)製、試薬特級、Fe
2O
3)、炭酸カルシウム(キシダ化学(株)製、試薬1級、CaCO
3)、酸化アルミニウム(関東化学(株)製、試薬1級、Al
2O
3)、塩基性炭酸マグネシウム(キシダ化学(株)製、試薬特級、約4MgCO
3・Mg(OH)
2・5H
2O)、炭酸ナトリウム(キシダ化学(株)製、無水・特級、Na
2CO
3)およびリン酸三カルシウム(キシダ化学(株)製、試薬1級、Ca
3(PO
4)
2)を用いた。
半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が異なる半水石膏は、二水石膏から半水石膏を作製するときの熱処理温度を調節することにより作製した。なお、半水石膏の220面のX線回折強度に対する114面のX線回折強度の強度比が60、69、75、76、78、82、85、88、91、102、110および115である半水石膏の熱処理温度は、それぞれ、196℃、172℃、156℃、154℃、148℃、138℃、130℃、122℃、114℃、84℃、63℃および49℃であった。
【0040】
これらの配合量は、生成されるC
3S、C
2S、C
3A、およびC
4AFの組成が、表1に示す組成となるように、各原料の配合量をボーグ式を用いて決定した。なお、表1に示すC
3S、C
2S、C
3A、およびC
4AFの割合は、セメント組成物全量基準での割合である。上記の通り配合したクリンカ原料を、電気炉に投入して1000℃で30分間の焼成を行った後、1000℃から1450℃まで30分間かけて昇温させ、さらに1450℃で15分間の焼成を行った後、焼成物を急冷して、各実施例、比較例に用いたセメントクリンカを作製した。
【0041】
(セメント組成物の作製)
上記作製したセメントクリンカと半水石膏と酸化スズ粉末(和光純薬工業(株)製、型番:No.20−0160)とを、表1に示す組成となるように配合した。なお、表1に示す半水石膏の割合は、セメント組成物全量基準でのSO
3換算の半水石膏の割合であり、スズの質量はセメントクリンカ1kgに対する質量である。配合物を、ブレーン比表面積が約2800〜約3800cm
2/gの範囲となるようにボールミルで粉砕して、各実施例、比較例のセメント組成物を作製した。各実施例および比較例の配合の詳細と、ブレーン比表面積とを表1に示す。3CaO・SiO
2、2CaO・SiO
2、3CaO・Al
2O
3および4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3の割合は、セメント組成物の質量に対する割合であり、スズの割合は、スズで換算した、セメントクリンカ1kgに対する質量であり、半水石膏の割合はセメント組成物の質量に対するSO
3換算での割合である。
【0042】
【表1】
【0043】
[結果]
(1)実施例1〜4のモルタルフロー値は大きく、実施例1〜4の混練直後の流動性は良好であった。また、実施例1〜4のモルタル圧縮強さは高く、実施例1〜4が発現する強度は高かった。
(2)2、4、5、6、8および9比較例2、4、5、6、8および9のモルタル圧縮強さは高く、比較例2、4、5、6、8および9が発現する強度は高かった。しかし、比較例2、4、5、6、8および9のモルタルフロー値は小さく、比較例2、4、5、6、8および9の混練直後の流動性は悪かった。
(3)比較例1および3のモルタルフロー値は大きく、比較例1および3の混練直後の流動性は良好であった。しかし、比較例1および3のモルタル圧縮強さは低く、比較例3が発現する強度は低かった。
(4)比較例7のモルタルフロー値は小さく、比較例7の混練直後の流動性は悪かった。また、比較例7の流動性は非常に悪かったため、作製したモルタルを型に流し込めず、モルタル圧縮強さを測定するための供試体を作製することができなかった。このため、比較例7のモルタル圧縮強さは、測定できなかった。