特許第5761457号(P5761457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5761457感光性樹脂組成物、感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761457
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20150723BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20150723BHJP
   G02F 1/167 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/004 512
   G03F7/038 501
   G02F1/167
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-515614(P2014-515614)
(86)(22)【出願日】2013年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2013063291
(87)【国際公開番号】WO2013172302
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2014年6月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-110479(P2012-110479)
(32)【優先日】2012年5月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真弓
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/065693(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/149776(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/114014(WO,A1)
【文献】 特開平06−118635(JP,A)
【文献】 特開平05−333541(JP,A)
【文献】 特開2011−043806(JP,A)
【文献】 特開2010−122381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する脂肪族バインダーポリマー、
(B)成分:光重合性化合物、
(C)成分:光重合開始剤、
(D)成分:分子内にエポキシ基を有する化合物、及び
(E)成分:グリセリン脂肪酸エステルを含む、隔壁形成材料として用いられる感光性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに(F)成分:増感剤を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(F)成分が、ピラゾリン化合物を含む、請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
支持体と、該支持体上に請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメント。
【請求項5】
前記感光性樹脂組成物層を光硬化させた硬化膜の引張り弾性率が、120℃で1時間熱処理後に1GPa以下である、請求項4に記載の感光性エレメント。
【請求項6】
感光性樹脂組成物層の膜厚が10〜100μmである、請求項4又は5に記載の感光性エレメント。
【請求項7】
画像表示装置の基板上に、請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂組成物層を形成する積層工程と、
前記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成する露光工程と、
前記光硬化部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程と、
を有する、画像表示装置の隔壁の形成方法。
【請求項8】
前記現像工程の後に、前記光硬化物パターンを、60〜250℃で加熱処理して熱硬化させる加熱工程をさらに有する、請求項7に記載の画像表示装置の隔壁の形成方法。
【請求項9】
表示媒体を、請求項7又は8に記載の方法により形成された隔壁内に充填する工程と、
一方の基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、
を有する、画像表示装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法により製造される、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙のように薄く、持ち運びが自由で、文字や画像が表示可能な画像表示装置(PLD:Paper Like Display)が注目を集めている。かかる画像表示装置は、通常の印刷物としての紙の長所である視認性、携帯性を有し、更に、情報を電気的に書き換え可能であるため、環境やコストの面からも紙の代替品として実用化が試みられている。
【0003】
画像表示装置の表示技術としては、電気泳動等により粒子を移動させるタイプ、液晶タイプ、電気化学タイプなど、様々なタイプが考案されている。特に粒子を移動させるタイプとしては、マイクロカプセル型電気泳動方式、マイクロカップ型電気泳動方式、電子粉流体方式、トナーディスプレイ方式等の方式が検討されている。これらの方式では、透明電極間に表示媒体である白と黒の粒子を封入し電場をかけ、これらの粒子を電気的に移動させることにより白/黒画像を形成し表示させる。また、画像表示装置の駆動方式としては、アクティブ駆動とパッシブ駆動があり、画像表示装置用の背面技術(パネル回路)の検討もなされている。
【0004】
上記粒子移動タイプの画像表示装置の場合、上述のように白/黒の粒子を封入するための隔壁(画素を分離する隔壁)が必要となる。かかる隔壁の形成方法としては、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。中でも、感光性樹脂組成物を用いて、活性光線の照射により高精細なパターンが効率よく形成できるフォトリソ法が注目されている。
【0005】
フォトリソ法を用いた画像表示装置の隔壁は、基板上に感光性樹脂組成物を塗布、又は感光性フィルムを積層することにより感光性樹脂組成物層を形成する工程、上記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化させる工程、未露光部を除去して光硬化物パターンを形成する工程、を経て形成される。従って、画像表示装置の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物には、一般に、感度、解像性及び基板への密着性が要求される。
【0006】
また、最近では紙のように手軽に扱うことを目的に、画像表示装置のフレキシブル化を実現させようという試みが行われている(例えば、非特許文献2参照)。これに伴い、使用する基材がガラス基材のようなリジッド基板から、ITO(酸化インジウムスズ)がスパッタされたPET(ポリエチレンテレフタレート)基材、FPC(フレキシブルプリント基板)基材のようなフレキシブル基板へと移行している。
【0007】
かかるフレキシブル化を実現する際、各画素間を区切る隔壁のフレキシブル化対応が必須となる。従って、弾性率の低い隔壁が必要となる。
【0008】
しかし、感光性エレメントの低弾性化を行うと、解像性、密着性が低下する傾向にある。一方、画像表示装置の各画素間のコントラストの向上には、表示面積を広くするために、隔壁の解像性及び密着性の向上が必要となるが、解像性及び密着性を高めると低弾性の隔壁を形成することが困難となる傾向にある。このように、解像性及び密着性に優れ、低弾性の隔壁を形成することは困難であった。
【0009】
更に、画像表示装置を製造する場合、上記工程で得た光硬化物パターン内に粒子等の表示媒体を充填する工程、上記光硬化物パターンを熱処理する工程、電極基板を貼り付ける工程などを更に含む。これにより、感光性樹脂組成物層の硬化物を隔壁とする画像表示装置が得られるが、上記電極基板を貼り付ける工程においては、高温高湿下で電圧を印加するため、感光性樹脂組成物の硬化物と密着した電極部分が溶解する問題があった。
【0010】
従来、画像表示装置の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物としては、例えば、下記特許文献2〜4に開示されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−178881号公報
【特許文献2】特開2010−066676号公報
【特許文献3】特開2010−169934号公報
【特許文献4】特開2010−256775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記特許文献2〜4に開示された、画像表示装置の隔壁を形成するための感光性樹脂組成物は、低弾性、解像性及び密着性には優れるものの、電極部分の溶解を抑える点では、改善の余地があった。更に、上記粒子移動タイプの画像表示装置の場合、帯電した表示媒体である白と黒の粒子を封入し電場をかけているため、これらの画像表示装置の隔壁の形成に用いられる感光性樹脂組成物は、上記表示媒体の表面電位に影響しないことが必要とされる。しかしながら、従来の感光性樹脂組成物では、上記粒子が移動する際に、画素を分離する隔壁と接触し、隔壁に電荷が蓄積され、粒子自体の帯電性に影響を与えるという問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電荷の蓄積を抑え且つ電極基板の溶解を低下させることが可能で、硬化膜の弾性率が低く、高解像、高密着な画像表示装置用の隔壁を形成することができる感光性樹脂組成物、及びこれを用いた感光性エレメントを提供することを目的とする。また、本発明は、当該感光性樹脂組成物又は感光性エレメントを用いた、画像表示装置の隔壁の形成方法、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、(A)成分:分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する脂肪族バインダーポリマー、(B)成分:光重合性化合物、(C)成分:光重合開始剤、(D)成分:分子内にエポキシ基を有する化合物、及び(E)成分:グリセリン脂肪酸エステルを含む、隔壁形成材料として用いられる感光性樹脂組成物を提供する。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は上記構成を有することにより、粒子の移動を妨げることのない隔壁を、簡便に作業性よく形成することができる。また、本発明の感光性樹脂組成物によれば、上記構成を有することにより、電荷の蓄積を抑え且つ電極基板の溶解を低下させることが可能で、硬化膜の弾性率が低く、高解像、高密着な画像表示装置用の隔壁を形成することができる。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに(F)成分:増感剤を含むことで、感度を高くすることができる。上記増感剤は、ピラゾリン化合物を含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明は、支持体と、該支持体上に上記感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層と、を備える感光性エレメントを提供する。本発明の感光性エレメントにおいては、上記感光性樹脂組成物層の膜厚が10〜100μmであることが好ましい。感光性樹脂組成物層の膜厚が上記範囲であることによって、感光性エレメントは、画像表示装置の隔壁として用いやすくなる。
【0018】
また、本発明の感光性エレメントにおいて、上記感光性樹脂組成物層を光硬化させた硬化膜の引張り弾性率が、120℃で1時間熱処理後に1GPa以下であることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、基板上に、上記感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂組成物層を形成する積層工程と、上記感光性樹脂組成物層の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成する露光工程と、上記光硬化部以外の部分を除去して光硬化物パターンを形成する現像工程と、を有する、画像表示装置の隔壁の形成方法を提供する。
【0020】
また、本発明の画像表示装置の隔壁の形成方法は、上記現像工程の後に、上記光硬化物パターンを、60〜250℃で加熱処理して熱硬化せしめる加熱工程をさらに有することが好ましい。
【0021】
また、本発明は、表示媒体を、上記方法により形成された隔壁内に充填する工程と、一方の基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、を有する、画像表示装置の製造方法を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、上記製造方法により製造される、画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電荷の蓄積を抑え且つ電極基板の溶解を低下させることが可能で、硬化膜の弾性率が低く、高解像、高密着な画像表示装置用の隔壁を簡便に作業性よく形成することができる感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメントを提供することができる。また、本発明によれば、上記感光性樹脂組成物又は感光性エレメントを用いた、画像表示装置の隔壁の形成方法、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置を提供することができる。なお、隔壁はスペーサーと呼ばれることもあるが本明細書中では同義とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。
図2】本発明の感光性エレメントを用いた画像表示装置の隔壁の形成方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。
図3図2(c)の隔壁が格子状に形成された例を示す模式平面図である。
図4図2(c)の隔壁が六角形状に形成された例を示す模式平面図である。
図5図2(e)の画像表示装置が曲率半径5〜15mm程度で屈曲している状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書における(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル及びメタクリロイルを意味する。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する脂肪族バインダーポリマー、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)分子内にエポキシ基を有する化合物、(E)グリセリン脂肪酸エステルを含有してなる。
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物は上記構成を有することにより、電荷の蓄積を抑え且つ電極基板の溶解を低下させることが可能であり、硬化膜の弾性率が低く、高解像性及び高密着性を有する画像表示装置用の隔壁を形成することができる。ここで、上記構成を有することによる効果の発現機構は、必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のように推察している。即ち、分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有する脂肪族バインダーポリマーと、分子内にエポキシ基を有する化合物と、グリセリン脂肪酸エステルを加えることで、電荷の蓄積を抑え且つ電極基板の溶解を低下させることが可能となり、また、硬化膜の弾性率を低くすることができ、高解像性及び高密着性が得られると考えられる。特に、グリセリン脂肪酸エステルを加えることで、感光性樹脂組成物の表面が親水化され、蓄積した電荷が逃げやすくなるために、電荷の蓄積を抑えることが可能になると考えられる。
【0028】
以下、各成分について詳細に説明する。
【0029】
(A)成分:カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する脂肪族バインダーポリマー
本発明に用いる(A)成分としては、分子内にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有し、フィルム性を付与できるものであれば特に制限無く、例えばアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、ウレタン系樹脂が挙げられる。バインダーポリマーが脂肪族の重合性単量体から構成されることにより、スチレン等の芳香族の重合性単量体を含むバインダーポリマーに比べ、隔壁に電荷が帯電することを防ぐことができる。
【0030】
これらの脂肪族バインダーポリマーは単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。二種類以上のバインダーポリマーの組み合わせの例としては、異なる共重合成分からなる二種類以上のバインダーポリマー、異なる重量平均分子量の二種類以上のバインダーポリマー、異なる分散度の二種類以上のバインダーポリマー等が挙げられる。また、特開平11−327137号公報記載のマルチモード分子量分布を有するポリマーを用いることもできる。
【0031】
(A)成分は、例えば、カルボキシル基を有する重合性単量体とその他の重合性単量体をラジカル重合させた後、その共重合体と反応する官能基及びエチレン性不飽和結合を有する単量体(以下、「反応性官能基を有する単量体」と呼ぶ)を付加させることで製造することができる。
【0032】
重合性単量体としては、例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノイソプロピルエステル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸が挙げられる。
【0033】
カルボキシル基を有する重合性単量体としては、現像性及び安定性の観点から(メタ)アクリル酸が好ましく、その他の重合性単量体としては、弾性率の観点から、環状構造を含まない(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、ビニルアルコールのエステル類、マレイン酸アルキルエステル類が好ましい。
【0034】
上記反応性官能基を有する単量体としては、例えばイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0035】
また、(A)成分は、少なくとも(メタ)アクリル酸及びヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを構造単位に有する共重合体と、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、を反応させて得られる脂肪族バインダーポリマーを含むことが好ましい。
【0036】
少なくとも(メタ)アクリル酸及びヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを構造単位に有する共重合体は、(メタ)アクリル酸と、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、をラジカル重合させることにより製造することができる。
【0037】
上記ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、後述のイソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと反応するものであれば特に制限は無いが、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル及びこれらの構造異性体が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルの構造単位を含むことが好ましい。
【0038】
上記少なくとも(メタ)アクリル酸及びヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを構造単位に有する共重合体は、環状構造を有さない範囲で、その他の重合性単量体を含有してもよい。その他の重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0039】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、及びこれらの構造異性体が挙げられる。中でも、現像性、解像度に優れる点では、(メタ)アクリル酸メチル、及び(メタ)アクリル酸ブチルを含有することが好ましい。
【0040】
上記イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、少なくとも(メタ)アクリル酸及びヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを構造単位に有する共重合体と反応するものであれば特に制限無く用いることができ、例えば2−イソシアネートメチルメタクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレート、2−イソシタネートエチルアクリレート、2−イソシアネートプロピルメタクリレート、2−イソシアネートオクチルアクリレートを用いることができる。この中でも、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアネートメチルメタクリレートが好ましい。
【0041】
少なくとも(メタ)アクリル酸及びヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを構造単位に有する共重合体と、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステルは、通常の反応条件で反応させればよい。
【0042】
上記反応における、(メタ)アクリル酸及びヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを構造単位に有し、かつ環状構造を有さない共重合体と、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステルのモル比(前者/後者)は、1/0.3〜1/2の範囲で反応させればよいが、好ましくはモル比が1/0.4〜1/1.8の範囲であり、より好ましくはモル比が1/0.6〜1/1.5の範囲であり、更に好ましくはモル比が1/0.8〜1/1.2の範囲である。特に、本発明の効果をより十分に奏するためには、(メタ)アクリル酸及びヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを構造単位に有し、かつ環状構造を有さない共重合体中のヒドロキシル基と、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステル中のイソシアネート基が100%反応することが好ましい。
【0043】
上記反応における溶媒は、反応に影響が無ければ公知の溶媒を特に制限無く使用でき、例えばメチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いることができる。この中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いることが好ましい。
【0044】
(A)成分の重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算)は、耐現像液性に優れる点では、20,000以上であることが好ましく、25,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましい。現像時間を短くできる観点からは、300,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが更に好ましい。なお、バインダーポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することとする。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は、以下に示すとおりである。
【0045】
[GPC測定条件]
ポンプ:日立 L−6000型(株式会社日立製作所製、商品名)
カラム:Gelpack GL−R420 + Gelpack GL−R430 + Gelpack GL−R440(計3本)(以上、日立化成工業株式会社製、商品名)
試料注入量:200μm
試料濃度:120mg/5mL
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:25℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI(株式会社日立製作所製、商品名)
【0046】
(A)成分における(メタ)アクリル酸に基づく構成単位の含有量は、分子全質量を基準として5〜35質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、15〜25質量%であることが更に好ましい。解像性に優れる点では、5質量%以上であることが好ましく、電極溶解を抑制する観点から35質量%以下であることが好ましい。
【0047】
(A)成分が、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構成単位を有する場合、その含有量は、分子全質量を基準として5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、20〜60質量%であることが更に好ましい。解像性に優れる点では、この含有量が5質量%以上であることが好ましく、電極溶解を抑制する観点から80質量%以下であることが好ましい。
【0048】
(A)成分におけるヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルに基づく構成単位の含有量は、硬化膜を低弾性化する観点から、分子全質量を基準として5〜30質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、15〜25質量%であることが更に好ましい。
【0049】
(A)成分におけるイソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステルに基づく構成単位の含有量は、電極溶解の抑制、硬化膜の低弾性化の観点から、分子全質量を基準として5〜35質量%であることが好ましく、11〜35質量%であることがより好ましく、17〜29質量%であることが更に好ましい。
【0050】
感光性樹脂組成物における(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、フィルム形成性に優れる点では、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、65質量部以上が更に好ましい。光硬化物の機械的強度に優れる点では、(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、90質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下が更に好ましい。
【0051】
(B)成分:光重合性化合物
本発明に用いる(B)成分としては、光架橋が可能であれば特に制限は無いが、例えば、(B1)成分:分子内にエチレン性不飽和基及びウレタン結合を有する化合物、(B2)成分:多価アルコール及び/又はグリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、(B3)成分:分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する化合物が挙げられる。
【0052】
(B1)成分:分子内にエチレン性不飽和基及びウレタン結合を有する化合物
硬化物の伸びを向上させることができ、フレキシブル基板への密着性に優れる点では、(B1)成分を含むことが好ましい。
【0053】
本発明に用いることのできる(B1)成分としては、特に制限は無いが、イソシアヌル環構造を有する化合物を含有することが好ましい。イソシアヌル環構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0054】
【化1】
[式(1)中、Rは各々独立に、下記一般式(2)で表される基、下記一般式(3)で表される基、又は、下記一般式(4)で表される基を示し、Rのうち少なくとも1つは下記一般式(4)で表される基である。]
【0055】
【化2】
[式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは1〜15の整数を示す。]
【0056】
【化3】
[式(3)中、mは1〜15の整数である。]
【0057】
【化4】
[式(4)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは1〜9の整数を示し、mは1〜15の整数を示す。]
【0058】
弾性率、密着性の観点からは、一般式(1)中のRのうち少なくとも2つは、一般式(4)で表される基であることがより好ましく、Rの全てが一般式(4)で表される基であることが更に好ましい。
【0059】
一般式(2)、(3)、(4)中、耐薬品性に優れる点では、mは1〜6の整数であることが好ましい。また、一般式(4)中、機械強度に優れる点では、mは3〜6、nは4〜8の整数であることが好ましい。
【0060】
上記一般式(1)で表される化合物で、市販のものとしては、例えば、NKオリゴUA−21EB(新中村化学工業株式会社製、商品名、一般式(1)中、Rが全て一般式(4)で表される基である化合物)が挙げられる。
【0061】
また、(B1)成分としては、ポリカーボネート化合物及び/又はポリエステル化合物の末端のヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基との反応に由来するウレタン結合を有し、かつ複数の末端にイソシアネート基を有するウレタン化合物と、ヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有する化合物とを縮合反応させることで得ることができる化合物を含むことが好ましい。
【0062】
これらの化合物は、常法によって合成したものを用いてもよく、市販のものを用いることもできる。市販のものとしては、例えば、UF−8003M、UF−TCB−50、UF−TC4−55(以上商品名、共栄社化学株式会社製)、HT9082−95(商品名、日立化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0063】
更に、上記以外の(B1)成分としては、例えば、β位に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーと、イソホロンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物;EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、商品名:UA−11が挙げられる。また、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、新中村化学工業株式会社製、商品名:UA−13が挙げられる。ここで、EOは、オキシエチレン基を、POは、オキシプロピレン基を示す。
【0064】
(B2)成分:多価アルコール及び/又はグリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物
(B2)成分としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパン(メタ)アクリレート化合物;テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等のテトラメチロールメタン(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール(メタ)アクリレート化合物;ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート及びビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリレートが挙げられる。
【0065】
中でも、硬化膜の低弾性を維持しつつ、解像度及び密着性に優れる点では、(B2)成分として、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、下記一般式(5)、(6)又は(7)で表される化合物を含むことがより好ましい。
【0066】
【化5】
【0067】
上記一般式(5)、(6)又は(7)中、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示す。m、m、m及びmはオキシエチレン基からなる構造単位数を示し、n、n、n及びnは、オキシプロピレン基からなる構造単位数を示し、オキシエチレン基の構造単位の総数m+m、m及びmは、それぞれ独立に1〜30の整数を示し、オキシプロピレン基の構造単位の総数n、n+n及びnは、それぞれ独立に1〜30の整数を示す。
【0068】
上記一般式(5)、(6)又は(7)で表される化合物において、オキシエチレン基の構造単位の総数m+m、m及びmは、それぞれ独立に1〜30の整数であり、1〜10の整数であることが好ましく、4〜9の整数であることがより好ましく、5〜8の整数であることが更に好ましい。解像度、密着性に優れる点では、この構造単位数が、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。
【0069】
また、オキシプロピレン基の構造単位の総数n、n+n及びnは、それぞれ独立に1〜30の整数であり、5〜20の整数であることが好ましく、8〜16の整数であることがより好ましく、10〜14の整数であることが更に好ましい。解像度の向上及びスラッジの低減に優れる点では、この構造単位数が、20以下が好ましく、16以下がより好ましく、14以下が更に好ましい。また、構造単位の総数は、隔壁を低弾性化する点では、5以上が好ましく、8以上がより好ましく、10以上が更に好ましい。
【0070】
上記一般式(5)で表される化合物としては、R=メチル基、m+m=6(平均値)、n=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業株式会社製、商品名:FA−023M)等が挙げられる。上記一般式(6)で表される化合物としては、R=メチル基、m=6(平均値)、n+n=12(平均値)であるビニル化合物(日立化成工業株式会社製、商品名:FA−024M)等が挙げられる。上記一般式(7)で表される化合物としては、R=水素原子、m=1(平均値)、n=9(平均値)であるビニル化合物(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルHEMA−9P)等が挙げられる。
【0071】
(B3)成分:分子内にエチレン性不飽和結合を1つ有する化合物
(B3)成分としては、特に制限は無いが、解像度に優れる点では、下記一般式(8)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0072】
【化6】
[式(8)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子、メチル基又はハロゲン化メチル基のいずれかを示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基のいずれかを示し、pは0〜4の整数を示す。なお、pが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。−(O−A)−はオキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を示し、−(O−A)−の構造単位の総数aは1〜4の整数を示す。]
【0073】
上記一般式(8)で表される化合物としては、例えば、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシエチル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、及びβ−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが挙げられ、なかでも、γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレートが好ましい。γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレートは、FA−MECH(日立化成工業株式会社製、商品名)等として商業的に入手可能である。
【0074】
上記(B)成分は、単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
感光性樹脂組成物における(B)成分の含有量は、解像度及び密着性と、フィルム形成性の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、10〜50質量部の範囲とすることが好ましく、20〜40質量部とすることがより好ましい。
【0076】
また、(B1)成分の含有量は、解像度及び密着性と、フィルム形成性の観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、5〜30質量部の範囲とすることが好ましく、10〜25質量部とすることがより好ましい。(B2)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、5〜25質量部の範囲とすることが好ましく、5〜15質量部とすることがより好ましい。(B3)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、1〜10質量部の範囲とすることが好ましく、5〜15質量部とすることがより好ましい。
【0077】
(C)成分:光重合開始剤
本発明に用いる(C)成分としては、使用する露光機の光波長にあわせたものであれば特に制限は無く、具体的には例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントレンキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;1−(4−メトキシフェニル)−2,2−ジメトキシ−2−フェニルエタン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メトキシ−2−エトキシ−2−フェニルエタン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メトキシ−2−プロポキシ−2−フェニルエタン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(通称ベンジルジメチルケタール)等のベンジルケタール等のベンジル誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体;クマリン系化合物;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等のイミダゾール二量体が挙げられる。また、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一で対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは、単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
中でも、(C)成分としては、感光性樹脂組成物の硬化後のレジスト底部の硬化性に優れる点では、ベンジルケタール等のベンジル誘導体を含むことが好ましく、感光性樹脂組成物の硬化後のレジスト上部の硬化性に優れる点では、アクリジン誘導体を含むことが好ましく、上底部の硬化性に優れる点では、ベンジルケタール等のベンジル誘導体及びアクリジン誘導体の双方を含むことが好ましい。特に感光性樹脂組成物からなる層の膜厚が厚くなればなるほど、レジスト底部の硬化性及びレジスト上部の硬化性をバランスよく調整することが必要となる。
【0079】
更には、(C)成分としては、解像度を良好にし、硬化後のレジストの裾引きを抑える点では、アクリジン誘導体及びベンジル誘導体の双方を含むことが好ましく、特に1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンの双方を含むことが好ましい。
【0080】
感光性樹脂組成物における(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、光感度に優れる点では、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。また、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、感光性樹脂組成物の内部の光硬化性に優れる点では、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0081】
中でも、上記(C)成分として、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタンを含む場合、その含有量は、上記(A)成分と(B)成分の総量100質量部に対して、光感度に優れる点では、0.05〜1質量部であることが好ましく、0.1〜0.5質量部であることがより好ましい。
【0082】
また、上記(C)成分として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを含む場合、その含有量は、上記(A)成分と(B)成分の総量100質量部に対して、光感度及び密着性に優れる点では、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、加熱処理の工程にて、アウトガスを抑える観点からは、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0083】
(D)成分:分子内にエポキシ基を有する化合物
本発明で用いる(D)成分としては、分子内にエポキシ基(オキシラン環)を有する化合物であれば特に制限は無い。
【0084】
分子内にエポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールジグリシジルエーテル等のビキシレノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びそれらの二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0085】
これらの化合物としては市販品を用いることができる。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとしては、jER828、jER1001及びjER1002(いずれも三菱化学株式会社製、商品名(「jER」は登録商標))、並びに、エピクロン1055(DIC株式会社製、商品名(「エピクロン」は登録商標))を挙げることができる。
【0086】
ビスフェノールFジグリシジルエーテルとしては、jER807(三菱化学株式会社製、商品名)等を挙げることができ、ビスフェノールSジグリシジルエーテルとしては、EBPS−200(日本化薬株式会社製、商品名)、エピクロンEXA−1514(DIC株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
【0087】
また、ビフェノールジグリシジルエーテルとしては、YL−6121(三菱化学株式会社製、商品名)等を挙げることができ、ビキシレノールジグリシジルエーテルとしては、YX−4000(三菱化学株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
【0088】
更に、水添ビスフェノールAグリシジルエーテルとしては、ST−2004及びST−2007(いずれも新日化エポキシ製造株式会社製、商品名)等を挙げることができ、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、エピクロンHP−7200L(DIC株式会社製、商品名)等を挙げることができ、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピクロンN−665−EXP、エピクロンN−670−EXP−S(DIC株式会社製、商品名)等を挙げることができる。また、上記した二塩基酸変性ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ST−5100及びST−5080(いずれも新日化エポキシ製造株式会社製、商品名)等を挙げることができる。
【0089】
これらの中でも、電極の溶解を抑える点では、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。また、上記(D)成分は、単独で、又は二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
感光性樹脂組成物における(D)成分の含有量は、上記(A)成分と(B)成分の総量100質量部に対して、電荷の蓄積を抑え、且つ電極の溶解を抑える点では、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。また、感光性樹脂組成物がフィルム形成性に優れる点では、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0091】
(E)成分:グリセリン脂肪酸エステル
(E)成分のグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート等のモノグリセライド類、グリセリンジステアレート、グリセリンジパルミテート、グリセリンジベヘネート、グリセリンジオレート等のジグリセライド類、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンオレエート、ジグリセリンモノオレート等のジグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート等のエチレンオキサイド付加物、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタントリベヘネート、ソルビタンカプリレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、コハク酸脂肪酸モノグリセライド、クエン酸脂肪酸モノグリセライド、ジアセチル酒石酸脂肪酸モノグリセライド等の有機酸モノグリセライドが挙げられ、表示媒体の表面電位に影響させない(感光性樹脂組成物の電荷の蓄積を抑える)観点からジグリセリンモノオレートが好ましい。
【0092】
(F)成分:増感剤
本実施形態の感光性樹脂組成物は、(F)成分として増感剤(増感色素)の少なくとも1種を含有することができる。(F)成分である増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物、及びアミノアクリジン化合物が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
特に、340〜430nmの活性光線を用いて感光性樹脂組成物層の露光を行う場合には、感度及び密着性の観点から、(F)成分は、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、トリアリールアミン化合物、チオキサントン化合物及びアミノアクリジン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の増感剤を含むことが好ましく、中でもジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、及びトリアリールアミン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、ピラゾリン化合物の少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
【0094】
上記感光性樹脂組成物における(F)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.01質量部〜10質量部とすることが好ましく、0.05質量部〜5質量部とすることがより好ましく、0.1質量部〜3質量部とすることが更に好ましい。この含有量が0.01質量部以上であると、より優れた感度及び解像度が得られ易くなる傾向があり、10質量部以下であると、十分に良好なレジスト形状が得られ易くなる傾向がある。
【0095】
上記ピラゾリン化合物としては、特に制限なく用いることができる。具体的には、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,5−ジメトキシスチリル)−5−(3,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(3,4−ジメトキシスチリル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,6−ジメトキシスチリル)−5−(2,6−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,5−ジメトキシスチリル)−5−(2,5−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,3−ジメトキシスチリル)−5−(2,3−ジメトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(2,4−ジメトキシスチリル)−5−(2,4−ジメトキシフェニル)−ピラゾリンが挙げられる。
【0096】
また、1−フェニル−3,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3,5−ビス(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチルフェニル)−ピラゾリンが挙げられる。
【0097】
これらの中でも、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3,5−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3,5−ビス(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチルフェニル)−ピラゾリンから選択される一種を用いることが好ましく、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−オクチルフェニル)−ピラゾリンから選択される一種を用いることがより好ましく、1−フェニル−3−(4−イソプロピルスチリル)−5−(4−イソプロピルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)−ピラゾリンから選択される一種を用いることが更に好ましい。
【0098】
<その他の成分>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、金属配線や金属層等の銅及び銅合金、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)等を腐食させることなく、優れた防錆効果、未露光部の残膜防止効果、及び膜密着効果を奏する点で、(G)成分:メルカプト基を含まない複素環状化合物を含むことが好ましい。
【0099】
複素環状化合物は、二種又はそれ以上の元素の原子(炭素のほか、窒素、酸素、硫黄等)から環が構成されてなる環式化合物をいう。複素環状化合物としては、トリアゾール環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H−ピラン環、6H−ピラン環、トリアジン環等の複素環を有する化合物、及びこれらの化合物の塩等が挙げられる。
【0100】
上記の中でも炭素原子と窒素原子を含むトリアゾール環、ピロール環、ピラゾール環、チアゾール環、イミダゾール環及びテトラゾール環のうちの一種以上を有する化合物及びこれらの化合物の塩が好ましい。
【0101】
(G)成分のメルカプト基を含まない複素環状化合物は、テトラゾール環を有する場合、1H−テトラゾール、5置換−1H−テトラゾール、1置換−1H−テトラゾール及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であると好ましい。
【0102】
上記(G)成分の複素環状化合物はトリアゾール環を有する化合物が好ましい。中でも、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール及びその誘導体、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5置換−1H−ベンゾトリアゾール、6置換−1H−ベンゾトリアゾール、5,6置換−1H−ベンゾトリアゾール及びその誘導体からなる群から選択されると好ましい。また、(G)成分の複素環状化合物は、4−メチル−1Hベンゾトリアゾールンのアミン塩や、5−メチル−1Hベンゾトリアゾールンのアミン塩(例えば、ANTAGE TDP(フェノチアジン、川口化学工業株式会社製、商品名(「ANTAGE」は登録商標))等)を含有することが好ましい。
【0103】
以上のような成分を含む感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、熱発色防止剤、p−トルエンスルホンアミド等の可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤などを、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して各々0.01〜20質量部程度含有することができるが、着色性を有する成分は含まないことが好ましい。
【0104】
特に、ロイコクリスタルバイオレットやマラカイトグリーン等の着色性を有する化合物(染料)の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して0.1質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以下であることがさらに好ましい。
【0105】
以上のような成分を含む本発明の感光性樹脂組成物は、たとえば、含有成分をロールミル、ビーズミル等で均一に混練、混合することにより得ることができる。また、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶剤又はこれらの混合溶剤に溶解して、固形分30〜60質量%程度の溶液として用いることができる。
【0106】
得られた感光性樹脂組成物を用いて画像表示装置用基板上に感光性樹脂組成物層を形成する方法としては、特に制限はないが、上記基板上に感光性樹脂組成物を液状レジストとして塗布して乾燥する方法を用いることができる。また、必要に応じて感光性樹脂組成物層上に保護フィルムを被覆することができる。さらに、後に詳しく述べるが、感光性樹脂組成物層を感光性エレメントの形態で用いることが好ましい。
【0107】
塗布される感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、乾燥後の厚みで10〜100μmであることが好ましい。液状レジストとして塗布後、保護フィルムを被覆して用いる場合の保護フィルムとしては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体フィルムが挙げられる。
【0108】
本発明の感光性エレメントは、支持体と、その上に上記感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層とを備える。
【0109】
図1は、本発明の感光性エレメントの好適な一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、本発明の感光性エレメント10は、支持体1と、その上に上記感光性樹脂組成物を用いて形成された感光性樹脂組成物層2(以下、「感光層2」ともいう)と、感光性樹脂組成物層2上に形成された保護フィルム3と、を備える。なお、保護フィルム3は、必要に応じて設けられる。
【0110】
支持体としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の重合体フィルムを好ましく用いることができる。重合体フィルムの厚みは、1〜100μm程度とすることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましく、10〜30μmであることがさらに好ましい。
【0111】
支持体上への感光性樹脂組成物層の形成方法は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物の溶液を塗布、乾燥することにより好ましく実施できる。塗布される感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、隔壁の用途に使用する場合は、乾燥後の厚みで10〜100μmであることが好ましい。
【0112】
(隔壁の形成方法)
次に、本発明の隔壁の形成方法について、画像表示装置の製造方法を例にとり説明する。まず、図2(a)に示すように、電極4と基板5とからなる電極基板30を用意し、図2(b)に示すように、この電極基板30上に、上述した感光性エレメント10における感光層2及び支持体1を積層する(積層工程)。
【0113】
電極基板30を構成する基板5としては、屈曲性を有する基板であれば特に制限されず、例えば、ポリマーフィルム基板のような絶縁基板、及び、シリコン基板等の半導体基板が挙げられる。電極基板30としては、このような基板5上にITO、IZO、Agワイヤ・インクのような屈曲性を有する電極4が形成されたものが挙げられる。電極4の形成方法としては、蒸着、スパッタリング等の方法で積層した電極材料をフォトリソ手法を用いてパターン形成する方法や、感光性を有する電極材料をパターニングする方法などが挙げられる。この電極4の形成方法に関しては特に制限はない。
【0114】
電極基板30上への感光層2の積層方法としては、上述した感光性エレメント10を用いる方法のほか、感光性樹脂組成物の溶液を電極基板30上に塗布し乾燥する方法を用いることもできる。
【0115】
感光性エレメント10を用いる積層方法は、感光層2上に保護フィルム3が存在している場合には、保護フィルム3を除去しながら電極基板30上へ積層する。上記積層条件としては、例えば、感光層2を70〜130℃程度に加熱しながら、電極基板30上に0.1〜1MPa程度(1〜10kgf/cm2程度)の圧力で圧着することにより積層する方法等が挙げられ、減圧下で積層することも可能である。電極基板30表面の形状は、通常は電極パターンが形成されているが、平坦であったり、必要に応じて凹凸が形成されていてもよい。
【0116】
感光層2の積層後、図2(b)に示すように、感光層2に画像状に活性光線8を照射して、露光部を光硬化させる(露光工程)。画像状に活性光線8を照射させる方法としては、図2(b)に示すように、感光層2上にマスクパターン7を設置して画像状に活性光線8を照射し、露光部の感光層2を光硬化させる方法がある。マスクパターン7は、ネガ型でもポジ型でもよく、一般に用いられているものを使用できる。活性光線8の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、露光方法としては、マスクパターン7を用いずにレーザーで直接パターンを描画する、直接描画露光法を用いることもできる。
【0117】
露光後、図2(c)に示すように、未露光部の感光層2を現像により選択的に除去することにより、画像表示装置用の基板(電極基板30)上に光硬化物パターン20が形成される(現像工程)。図3及び図4に、光硬化物のパターンの一例を示す。図3は、図2(c)の隔壁(光硬化物パターン20)が格子状に形成された例を示す模式平面図であり、図4は、図2(c)の隔壁(光硬化物パターン20)が六角形状に形成された例を示す模式平面図である。図3及び図4においては、図2(c)に示すように電極4及び光硬化物パターン20の下に基板5が配置されているが、電極4はITO電極でもよく、基板5はPET基板でもよい。なお、現像工程は、支持体1が存在する場合は、現像に先立ち、支持体1を除去する。
【0118】
現像は、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤等の現像液によるウエット現像、ドライ現像等で未露光部を除去することにより行われる。本実施形態においては、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。アルカリ性水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%炭酸ナトリウム溶液、0.1〜5質量%炭酸カリウム溶液、0.1〜5質量%水酸化カリウム溶液等が挙げられる。このアルカリ性水溶液のpHは9〜11の範囲とすることが好ましく、その温度は、感光層の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、有機溶剤等を混入させてもよい。上記現_像の方式としては、例えば、ディップ方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング等が挙げられるが、解像度を向上させるにはスプレー方式が好ましい。
【0119】
現像後の処理として、形成された上記光硬化物パターン20を、必要に応じて60〜250℃程度の加熱処理により更に硬化させることが好ましい。硬化温度は、80〜200℃程度であることが好ましく、100〜150℃程度であることがより好ましい。また、硬化時間は特に制限はないが、10分〜3時間であることが好ましく、30分〜2時間であることがより好ましい。
【0120】
また、上記工程で形成した光硬化物パターン20内に、粒子等の表示媒体を充填する工程、上記光硬化物パターン20に別の電極基板30を貼り付ける工程(図2の(d)及び(e))等を経て、画像表示装置の隔壁の形成、及び、画像表示装置100の製造を完了することができる。
【0121】
図2(d)に示すように、上記現像工程で形成した光硬化物パターン20内に、粒子等の表示媒体50を充填する。表示媒体としては特に限定されないが、電子粉粒体、顔料インク、白色微細粒子等が挙げられる。電子粉粒体や白色微細粒子等を用いる場合、それら以外の光硬化物パターン20内の空間には、空気、オレフィン系溶剤、シリコーンオイル等が充填される。また、用途によっては、表示媒体が必要でない場合がある。
【0122】
光硬化物パターン20に別の電極基板30を貼り付ける工程は、以下のようにして行うことができる。すなわち、上記工程は、図2(d)に示すように、光硬化物パターン20上に接着剤40を積層し、図2(e)に示すように、接着剤40によって電極基板30と光硬化物パターン20とを接着することにより行われる。なお、接着剤40を用いることなく、光硬化物パターン20に直接電極基板30を接着してもよい。
【0123】
画像表示装置100の少なくとも表示面側の電極基板には、透明な電極基板が用いられる。画像表示装置100の好ましい態様としては、基板5として透明なガラス基板を用い、電極4として透明なITO電極を用いた態様が挙げられる。
【0124】
上述した各工程を経て形成された画像表示装置は、屈曲性を有する電極基板30と、高度な伸びを有する光硬化物パターン20からなる隔壁とを備えており、優れた屈曲性を達成することができる。特に、電極4の材料の選択によっては、曲率半径5〜15mm程度まで対応可能な高度な屈曲性を有する画像表示装置が得られる。また、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成された隔壁は、曲率半径5〜15mm程度で画像表示装置を屈曲した場合でも、破損の発生を十分に抑制することができる(図5参照)。
【0125】
本発明の画像表示装置の製造方法は、粒子等の表示媒体を上記工程で得た隔壁内に充填する工程と、一方の基板に対向するように隔壁の反対側に基板を貼り付ける工程と、を有する。上記基板としては、ガラス基板若しくはポリマー基板のような絶縁基板又はシリコン基板等の半導体基板若しくはITOやIZOのような電極が形成された半導体基板が挙げられる。
【実施例】
【0126】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0127】
(実施例1〜5及び比較例1〜8)
まず、下記成分を混合し、溶液を得た。
(B)成分:光重合性化合物
HT−9082−95(有機イソシアネート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られた、末端にヒドロキシル基を有するポリカーボネート化合物、重量平均分子量4000、日立化成株式会社製、商品名)3.8g
UA−21EB(上記一般式(1)中、Rが全て一般式(4)で表される基である化合物、新中村化学工業株式会社、商品名)14.6g
FA−023M(日立化成株式会社製、商品名)6.4g
FA−024M(日立化成株式会社製、商品名)3.8g
FA−MECH(γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β’−メタクリロイルオキシエチル−o−フタレート、日立化成株式会社製、商品名)6.4g
(C)成分:光重合開始剤
N−1717(1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、株式会社ADEKA製、商品名)0.3g
IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、BASFジャパン株式会社製、商品名(「IRGACURE」は登録商標))3.0g
ノンネンKY−TB(α,α,α−トリブロモメチルフェニルスルホン、丸菱油化工業株式会社製、商品名(「ノンネン」は登録商標))1.0g
(D)成分:分子内にエポキシ基を有する化合物
エピクロンN−670−EXP−S(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製、商品名)8.0g
(E)成分:グリセリン脂肪酸エステル
エレクトロストリッパーME−1(ジグリセリンモノオレート、花王株式会社製、商品名(「エレクトロストリッパー」は登録商標))1.0g
(その他の成分)
BT−1HCA(チタンブラック分散液、三菱マテリアル電子化成株式会社製、商品名)0.45g
フローレンDOPA−17HF(分散剤、共栄社化学株式会社製、商品名)0.145g
SH−193(レベリング剤、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名)0.04g
トルエン3g
メタノール1g
メチルエチルケトン10g
【0128】
この溶液に、表1に示す(A)成分及びその他の成分を溶解させて感光性樹脂組成物溶液を得た。表1中の各成分の配合量の単位はgである。次いで、この感光性樹脂組成物溶液を、厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、商品名:FB−40)上にベーカー式アプリケーターを用いて均一に塗布し、90℃の熱風対流式乾燥機で10分間乾燥することで感光性樹脂組成物層を形成した。この感光性樹脂組成物層を、ポリエチレン製保護フィルム(フィルム長手方向の引張強さ:16MPa、フィルム幅方向の引張強さ:12MPa、タマポリ株式会社製、商品名:NF−15)で保護して感光性エレメントを得た。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚をデジタルシックネスゲージにより測定したところ、45μmであった。
【0129】
R300(ITO付PET基材、東洋紡績株式会社製、商品名)のITO面上に、上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がITO面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。できあがった積層物の構成は、下からITO付PET基材、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルムとなる。得られた積層物について、感度、密着性、解像度及び表示特性の評価を行った。
【0130】
<感度の評価>
高圧水銀灯を有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製、商品名:EXM−1201)を用いて、41段ステップタブレットを有するフォトツールを上記積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、0.3質量%炭酸ナトリウム水溶液と0.2質量%ノナール912A(東邦化学工業株式会社製、商品名)の混合液を26℃で90秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が約29.0となるエネルギー量(mJ/cm)を照射した。このエネルギー量を感度とした。このエネルギー量の数値が小さい程、感度が高いことを示す。表1に評価結果を示す。表1には、上記エネルギー量で露光及び現像を行った際の実際の残存ステップ段数も併せて示す。
【0131】
<解像度の評価>
41段ステップタブレットを有するフォトツールと、解像度評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が30/30〜200/200(単位:μm)の配線パターンを有するフォトツールを上記積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、高圧水銀灯を有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製、商品名:EXM−1201)を用いて、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、0.3質量%炭酸ナトリウム水溶液と0.2質量%ノナール912A(東邦化学工業株式会社製、商品名)の混合液を26℃で90秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去して解像度を評価した。解像度は現像処理によって未露光部が良好に除去された最も小さいスペース幅(μm)で表され、この数値が小さいほど解像度は良好である。表1に評価結果を示す。
【0132】
<密着性の評価>
高圧水銀灯を有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製、商品名:EXM−1201)を用いて、密着性評価用ネガとしてライン幅/スペース幅が10/300〜80/300(単位:μm、スペース幅一定)の配線パターンを有するフォトツールと、41段ステップタブレットを有するフォトツールを上記積層物のポリエチレンテレフタレートフィルム上に密着させ、41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、0.3質量%炭酸ナトリウム水溶液と0.2質量%ノナール912A(東邦化学工業株式会社製、商品名)の混合液を26℃で90秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去して密着性を評価した。密着性は現像液により剥離されずに残ったラインの幅(μm)で表され、この数値が小さい程、細いラインでもITO面から剥離せずに密着していることから、密着性が高いことを示す。表1に評価結果を示す。
【0133】
<蓄積電荷の評価>
SUS板上に上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がSUS板表面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。得られた積層物の構成は、下からSUS板、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルムの順となる。得られた積層物を、平行光露光機(株式会社オーク製作所製、商品名:EXM−1201)を用いて、露光した。なお、積層体の露光にあたっては41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量とした。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、更に、0.3質量%炭酸ナトリウム水溶液と0.2質量%ノナール912A(東邦化学工業株式会社製、商品名)の混合液を26℃で90秒間スプレーすることにより現像を行った。次いで、紫外線照射装置(東芝電材株式会社製、定格電圧200V、定格消費電力7.2kW)を使用し紫外線照射(紫外線照射度:2J/cm)を行った。最後に、120℃に加熱した箱型乾燥機(三菱電機株式会社製、型番:NV50−CA)内に60分間静置した。熱処理後の感光性エレメントを表面洗浄度測定器(ナノコート・ティーエス株式会社製、商品名:コロナサーフ)により、真鍮製の電極(主電極:37mm、背面電極:50mm)を用いて、8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METER(株式会社エーディーシー製、商品名)により、直流電圧100Vを1分間印加し、印加時の電流値と時間を測定し、20秒間に蓄積した電荷を求めた。表1に評価結果を示す。
【0134】
<電極の溶解性>
ITO−TEG(Test Element Group)基板のITO面上に、上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がITO面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。できあがった積層物の構成は、下からITO−TEG基板、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルムとなる。得られた積層物を、高圧水銀灯を有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製、商品名:EXM−1201)を用いて、現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、0.3質量%炭酸ナトリウム水溶液と0.2質量%ノナール912A(東邦化学工業株式会社製、商品名)の混合液を26℃で90秒間スプレーすることにより、未露光部分を除去した。次いで、120℃に加熱した箱型乾燥機(三菱電機株式会社製、型番:NV50−CA)内に1時間静置した。次いで、60℃、90%RH(相対湿度)の条件下で、80Vの直流電圧を印加し、200時間経過後の電極(陽極)の抵抗値を測定し、下記式より初期値からの抵抗値の上昇率を算出した。表1に評価結果を示した。
抵抗値の上昇率(%)=[(200時間経過後の陽極抵抗値)×100/(陽極抵抗値の初期値)]−100
【0135】
<弾性率の評価>
PTFEシート(ポリテトラフルオロエチレン、日東電工株式会社製、商品名:ニトフロン(「ニトフロン」は登録商標))上に上記感光性エレメントを、感光性樹脂組成物層がPTFEシート表面に接するように、ポリエチレン製保護フィルムを剥離しながら110℃に加熱したラミネートロールを通してラミネートした。得られた積層物の構成は、下からPTFEシート、感光性樹脂組成物層、ポリエチレンテレフタレートフィルムの順となる。得られた積層物を、高圧水銀灯を有する平行光露光機(株式会社オーク製作所製、商品名:EXM−1201)を用いて、露光した。なお、積層物の露光にあたっては41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が29.0となるエネルギー量とした。露光後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、0.3質量%炭酸ナトリウム水溶液と0.2質量%ノナール912A(東邦化学工業株式会社製、商品名)の混合液を26℃で90秒間スプレーすることにより現像を行った。次いで、紫外線照射装置(東芝電材株式会社製、定格電圧200V、定格消費電力7.2kW)を使用し紫外線照射(紫外線照射度:2J/cm)を行った。最後に、120℃に加熱した箱型乾燥機(三菱電機株式会社製、型番:NV50−CA)内に60分間静置した。熱処理後の感光性エレメントを幅10mm×長さ70mmに切り出し、チャック間距離を50mmとし、引張り試験機(株式会社レオテック製、商品名:FUDOHレオメーター)を用いて、温度23℃、速度20mm/分の一定速度でJIS K 7127に準拠して引張り試験を行い、引張り弾性率を求めた。表1に評価結果を示す。
【0136】
【表1】
【0137】
表1中の各成分の詳細は以下の通りである。
樹脂A:メタクリル酸20gと、メタクリル酸メチル30gと、メタクリル酸ブチル30gと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル20gとを反応させて得られた共重合体に、2−イソシアネートエチルメタクリレート23.4gを反応させて得られた化合物(重量平均分子量50,000)の43質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液151g(固形分65g)
樹脂B:メタクリル酸20gと、メタクリル酸メチル30gと、メタクリル酸ブチル30gと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル20gとを反応させて得られた共重合体に、2−イソシアネートエチルメタクリレート19.3gを反応させて得られた化合物(重量平均分子量50,000)の43質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液151g(固形分65g)
樹脂C:メタクリル酸20gと、メタクリル酸メチル35gと、メタクリル酸ブチル35gと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル10gとを反応させて得られた共重合体に、2−イソシアネートエチルメタクリレート11.7gを反応させて得られた化合物(重量平均分子量50,000)の43質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液151g(固形分65g)
樹脂D:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル共重合体(質量比20/45/35、重量平均分子量50,000)の48質量%エチレングリコールモノメチルエーテル/トルエン(質量比6/4)溶液135g(固形分65g)
樹脂E:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル共重合体(質量比25/40/35、重量平均分子量50,000)の48質量%エチレングリコールモノメチルエーテル/トルエン(質量比6/4)溶液135g(固形分65g)
樹脂F:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル共重合体(質量比30/35/35、重量平均分子量50,000)の48質量%エチレングリコールモノメチルエーテル/トルエン(質量比6/4)溶液135g(固形分65g)
樹脂G:メタクリル酸12gと、N−シクロヘキシルマレイミド11.1gと、ジシクロペンタニルメタクリレート27.2gと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル31.1gとを反応させて得られた共重合体に、2−イソシアネートエチルメタクリレート18.6gを反応させて得られた化合物(重量平均分子量25,000)の35質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/乳酸メチル(質量比88/12)溶液168.6g(固形分59g)
樹脂H:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル共重合体(質量比12/68/20、重量平均分子量65,000)の48質量%エチレングリコールモノメチルエーテル/トルエン(質量比6/4)溶液12.5g(固形分6g)
樹脂I:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体(質量比20/30/30/20、重量平均分子量50,000)の48質量%エチレングリコールモノメチルエーテル/トルエン(質量比6/4)溶液135g(固形分65g)
樹脂J:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体(質量比20/35/35/10、重量平均分子量50,000)の48質量%エチレングリコールモノメチルエーテル/トルエン(質量比6/4)溶液135g(固形分65g)
EAB(4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、保土谷化学工業株式会社製、商品名)0.05g
PZ−501D(1−フェニル−3−(4−メトキシスチリル)−5−(4−メトキシフェニル)ピラゾリン、株式会社日本化学工業所製、商品名)0.05g
ME−1:ジグリセリンオレエート(花王株式会社製、商品名:エレクトロストリッパーME−1)1.0g
ANTAGE TDP:フェノチアジン(川口化学工業株式会社製、商品名)1.0g
DIC−TBC 5P:p−tert−ブチルカテコール(DIC株式会社製、商品名(「DIC−TBC」は登録商標))1.0g
【0138】
表1から明らかなように、(A)成分のカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有する脂肪族バインダーポリマーと(E)成分のグリセリン脂肪酸エステル(ME−1)を含む実施例1〜5の感光性エレメントは、電荷の蓄積を抑え且つ電極基板の溶解を防止することが可能であった。一方、比較例1では、電極の溶解は抑えられたものの、電荷の蓄積が大きすぎ、比較例2〜8では、電極の溶解が大きく断線が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上説明したとおり、本発明によれば、電荷の蓄積を抑え且つ電極基板の溶解を低下させることが可能で、硬化膜の弾性率が低く、高解像、高密着な画像表示装置用の隔壁を簡便に作業性よく形成することができる感光性樹脂組成物、これを用いた感光性エレメントを提供することができる。また、本発明によれば、上記感光性樹脂組成物又は感光性エレメントを用いた、画像表示装置の隔壁の形成方法、画像表示装置の製造方法及び画像表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0140】
1…支持体、2…感光層、3…保護フィルム、4…電極、5…基板、10…感光性エレメント、20…感光性樹脂組成物の硬化物(光硬化物パターン)、30…電極基板、40…接着剤、50…表示媒体。
図1
図2
図3
図4
図5