特許第5761458号(P5761458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761458
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】顕微鏡装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/06 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
   G02B21/06
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-519909(P2014-519909)
(86)(22)【出願日】2013年5月21日
(86)【国際出願番号】JP2013064023
(87)【国際公開番号】WO2013183438
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2014年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2012-127911(P2012-127911)
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】福武 直樹
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−121749(JP,A)
【文献】 特開2012−088530(JP,A)
【文献】 特開2011−002514(JP,A)
【文献】 特開2009−237109(JP,A)
【文献】 特開平07−225341(JP,A)
【文献】 特開2012−242532(JP,A)
【文献】 特開2012−220801(JP,A)
【文献】 特開2012−222672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00
G02B 21/06 − 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光で被検体を照明する照明光学系であり、光強度分布を調整可能な空間光変調素子を有する前記照明光学系と、
前記被検体からの光を結像する結像光学系と、
前記結像光学系からの光に基づき前記被検体の画像を生成する固体撮像素子と、
前記空間光変調素子を調整可能な制御装置であり、第1の照明光で前記被検体を照明するときに前記固体撮像素子から出力される第1の画像に基づいて、前記空間光変調素子を調整して前記被検体を第2の照明光で照明する、前記制御装置と、
を備え
前記制御装置は、前記第1の画像をフーリエ変換により二値化した画像に変換した後に、前記二値化した画像の主成分分析を行うことによって、前記第1の画像が有する空間周波数分布を求め、
前記空間光変調素子は、前記第1の画像の前記空間周波数分布に基づいて、光軸と直交する2つの方向の光強度分布を調整することを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1の照明光を前記第2の照明光に変換するための演算を行い、
前記空間光変調素子は、その演算結果に基づいて、前記被検体に照射される照明光の光強度分布を調整することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記空間光変調素子は、前記2つの方向の光強度分布のうち、前記第1の画像の空間周波数分布に関して高空間周波数成分に対応する方向の光強度分布を強調する、及び/又は、前記第1の画像の空間周波数分布に関して低空間周波数成分に対応する方向の光強度分布を絞る調整を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記第1の照明光が光軸と直交する面内において等方的な光強度分布を有し、前記第2の照明光が光軸と直交する面内において異方的又は等方的な光強度分布を有することを特徴とする請求項に記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記第1の照明光が光軸と直交する面内において円環状又は円形状の光強度分布を有し、前記第2の照明光が光軸と直交する面内において楕円環状又は円環状の光強度分布を有することを特徴とする請求項に記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記空間変調素子は、前記空間周波数分布が所定の閾値を超えない場合において、前記被検体に照射される照明光の光強度分布が点光源に近い状態に調整することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記照明光学系は、前記被検体に照射される照明光の光強度分布を可変に調整する第1の空間光変調素子を含み、
前記結像光学系は、前記被検体からの透過光に付加する位相の空間分布を可変に調整する第2の空間光変調素子を含み、
前記制御装置は、前記第1の空間光変調素子が前記光源からの照明光を基に形成した第1の照明光を前記被検体に照射し、且つ、前記第2の空間光変調素子が前記被検体からの透過光を透過させたときに、前記固体撮像素子が生成する前記被検体の第1の画像を取得し、
前記第1の画像に基づいて、前記第1の空間光変調素子が前記被検体に照射される前記第1の照明光の光強度分布を調整すると共に、前記第2の空間光変調素子が前記被検体からの透過光に付加する位相の空間分布を調整し、
前記第1の空間光変調素子が前記第1の照明光の光強度分布の調整後に形成した第2の照明光を前記被検体に照射し、且つ、前記第2の空間光変調素子が前記透過光に付加する位相の空間分布を調整したときに、前記固体撮像素子が生成する前記被検体の第2の画像を取得する制御を行うことを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項8】
前記第2の空間光変調素子は、前記被検体からの透過光を1/4波長だけ位相がずれた状態で透過させる位相変調領域と、前記位相変調領域の周囲に前記被検体からの透過光をそのままの位相で透過させる透過領域とを有して、前記透過領域に対して前記位相変調領域を可変に調整することを特徴とする請求項に記載の顕微鏡装置。
【請求項9】
前記第2の空間光変調素子は、前記透過領域に対する前記位相変調領域の形状を、前記第1の空間光変調素子が調整する照明光の光強度分布に対応した形状に調整することを特徴とする請求項に記載の顕微鏡装置。
【請求項10】
前記第2の空間光変調素子は、前記位相の空間分布と共に、前記被検体からの透過光を透過させる透過率の空間分布を可変に調整することを特徴とする請求項の何れか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項11】
前記第1の空間光変調素子と前記第2の空間光変調素子とは、互いに同期しながらそれぞれの調整を行うことを特徴とする請求項10の何れか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項12】
前記結像光学系は、前記被検体からの透過光、反射光、及び散乱光のうちの少なくとも1つを受光することを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項13】
前記空間光変調素子又は前記第1の空間光変調素子は、液晶素子、エレクトロクロミック素子又はデジタルマイクロミラーデバイスの何れかであることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項14】
前記第2の空間光変調素子は、液晶素子であることを特徴とする請求項12の何れか一項に記載の顕微鏡装置。
【請求項15】
前記固体撮像素子は、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサの何れかであることを特徴とする請求項1〜14の何れか一項に記載の顕微鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体を観察するための顕微鏡装置に関する。
本願は、2012年6月5日に出願された特願2012−127911号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
光学式の顕微鏡装置としては、明視野顕微鏡や位相差顕微鏡などが従来より用いられている。このうち、明視野顕微鏡では、円形の絞りを可変に調整することで、照明光の光強度分布を調整している。また、観察者の判断で形状の異なる絞りを選択して使用することもある。一方、位相差顕微鏡では、リング絞り及び位相リングを用いて照明光の光強度分布を形成している。
【0003】
照明光の光強度分布は、観察対象である被検体の画像に大きな影響を及ぼすため、上述した円形の絞りや、リング絞り及び位相リング等に改良を加えて、良好な被検体の画像が得られるように様々な工夫がなされている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、位相リングのリング状に設けられたリング領域を取り囲むように変調部を設け、変調部と、この変調部以外の領域との透過軸の方向が異なるように形成することで、コントラストを連続的に可変する位相差顕微鏡が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−237109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の顕微鏡装置では、絞りの形状がある程度決まっているために、照明光の光強度分布の調整に制限があった。また、絞りの形状を選択する場合も、観察者の判断又は経験を元にして選択されるため、絞りの形状が必ずしも観察中の被検体の像を最良の状態で観察できる形状になっているわけではなかった。さらに、位相差顕微鏡の場合、リング絞りと位相リングの位置は固定されているために、それらの形状を自由に選択することができず、最適の状態で被検体を観察することが困難であった。
【0007】
本発明の態様は、被検体に照射される照明光の光強度分布を最適化し、良好な被検体の画像を得ることによって、被検体を最適の状態で観察することが可能な顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に従えば、光源と、光源からの光で被検体を照明する照明光学系であり、光強度分布を調整可能な空間光変調素子を有する照明光学系と、被検体からの光を結像する結像光学系と、結像光学系からの光に基づき被検体の画像を生成する固体撮像素子と、空間光変調素子を調整可能な制御装置であり、第1の照明光で被検体を照明するときに固体撮像素子から出力される第1の画像に基づいて、空間光変調素子を調整して被検体を第2の照明光で照明する制御装置と、を備え、制御装置は、第1の画像をフーリエ変換により二値化した画像に変換した後に、二値化した画像の主成分分析を行うことによって、第1の画像が有する空間周波数分布を求め、空間光変調素子は、第1の画像の空間周波数分布に基づいて、光軸と直交する2つの方向の光強度分布を調整することを特徴とする顕微鏡装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、被検体に照射される照明光の光強度分布を最適化し、良好な被検体の画像を得ることによって、被検体を最適の状態で観察することが可能な顕微鏡装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態として示す顕微鏡装置の概略構成図である。
図2A】顕微鏡装置が備える空間光変調素子として、液晶素子を用いた場合の構成図である。
図2B】顕微鏡装置が備える空間光変調素子として、DMDを用いた場合の構成図である。
図3A】空間光変調素子の絞りの開口を円形とした場合の平面図である。
図3B】空間光変調素子の絞りの開口を円環状とした場合の平面図である。
図4】(a)は第1の照明光を用いて得られた第1の画像の一例を示す顕微鏡写真、(b)は第1の画像をフーリエ変換により二値化した画像、(c)は空間光変調素子の絞りの開口を楕円環状とした場合の平面図、(d)は第2の照明光を用いて得られた第2の画像の一例を示す顕微鏡写真である。
図5】空間光変調素子の絞りの開口を円環状とした場合の平面図である。
図6】顕微鏡装置により観察した別の被検体の画像である。
図7】顕微鏡装置により観察した別の被検体の画像である。
図8】第2の実施形態として示す顕微鏡装置の概略構成図である。
図9A】第1の空間光変調素子の絞りの開口を円環状とした場合の平面図である。
図9B】第2の空間光変調素子の位相調整領域を円環状とした場合の平面図である。
図10A】第1の空間光変調素子の絞りの開口を楕円環状とした場合の平面図である。
図10B】第2の空間光変調素子の位相調整領域を楕円環状とした場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を模式的に示している場合がある。また、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態として図1に示す顕微鏡装置1について説明する。
なお、図1は、第1の実施形態として示す顕微鏡装置1の概略構成図である。
【0013】
第1の実施形態として図1に示す顕微鏡装置1は、観察対象である被検体Sに照明光Lを照射し、被検体Sからの透過光によって得られた被検体Sの拡大像を観察する明視野顕微鏡を構成するものである。
【0014】
具体的に、この顕微鏡装置1は、照明光Lを出射する光源2と、光源2からの照明光Lを被検体Sに照射する照明光学系3と、被検体Sからの透過光Lpを結像する結像光学系4と、結像光学系4により結像された透過光Lpを受光し電気信号に変換して被検体Sの画像を生成する固体撮像素子5と、各部の制御を行う制御部6とを備えている。
【0015】
照明光学系3と結像光学系4との間には、ステージ7が配置されている。ステージ7は、被検体Sが設置される設置面7aを有している。また、ステージ7は、その面内において互いに直交する2つの方向(図1中に示すX軸方向及びY軸方向)に移動操作される。これにより、被検体Sの観察位置を任意に変更することが可能となっている。
さらに、ステージ7は、高さ方向(図1中に示すZ軸方向)に移動操作される構成であってもよい。
【0016】
以下では、光源2から出射された照明光Lの光軸(光束の中心軸)をZ軸方向とし、このZ軸と直交する面内において互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。なお、図1では、光源2から出射された照明光Lを破線で模式的に示している。
【0017】
光源2は、例えば白色光などの可視光又はその近傍の波長域の光を照明光Lとして照射する。光源2には、反射鏡等を利用して自然光や白色蛍光灯、白色電球などの外部光源からの光を照明光Lとして用いることができる。また、光源2には、ハロゲンランプやタングステンランプなどの内部光源からの光を照明光Lとして用いることができる。
【0018】
また、光源2には、発光ダイオード(LED)等を用いてもよい。この場合、光源2は、例えば赤、青、緑の各波長の光を発するLEDの組み合わせにより構成することができる。また、これら波長の異なるLEDの点灯及び消灯を制御することによって、光源2が発する照明光の波長を可変に制御できるため、このようなLEDを光源2に用いた場合は、後述する波長フィルタ9を省略することも可能である。
【0019】
照明光学系3は、光源2側から順に、第1のコンデンサレンズ8と、波長フィルタ9と、空間光変調素子10と、第2のコンデンサレンズ11とが配置された構成を有している。
【0020】
第1のコンデンサレンズ8及び第2のコンデンサレンズ11は、光源2から出射された照明光Lをステージ7上の被検体Sに集光させる。
【0021】
波長フィルタ9は、照明光Lの波長を特定の範囲内に制限する。波長フィルタ9には、例えば特定範囲の波長の光のみを透過するバンドパスフィルタが用いられる。また、波長フィルタ9は、着脱可能とされており、それぞれ異なる波長の光を透過する複数のバンドパスフィルタを予め用意しておき、その入れ替えを行うことによって、波長フィルタ9を透過する照明光Lの波長を選択的に調整することが可能となっている。
【0022】
なお、波長フィルタ9は、固体撮像素子5において特定の波長の光を受光させることを目的としているため、その配置については特に限定されることはない。上述した第1のコンデンサレンズ8と空間光変調素子10との間に波長フィルタ9が配置された構成に限らず、光源2と固体撮像素子5との間の何れの光路中に配置することが可能である。
【0023】
空間光変調素子10は、結像光学系4の瞳位置に対して共役となる位置に配置されている。空間光変調素子10は、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布を可変に調整するもの(絞り)である。この絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)10aの形状や大きさ等を自由に変化させることが可能となっている。
【0024】
空間光変調素子10としては、例えば図2Aに示すような液晶パネル(液晶素子)12を用いることができる。具体的に、図2Aに示す空間光変調素子10は、液晶パネル12を挟んだ両側に一対の偏光板13a,13bが配置された構造を有する。空間光変調素子10では、液晶パネル12の面内に配置された各ドットの印加電圧を制御することによって、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布(開口10aの形状や大きさ等)を任意に変化させることが可能となっている。
【0025】
また、空間光変調素子10としては、例えば図2Bに示すようなデジタルミラーデバイス(DMD)14を用いることができる。具体的に、DMD14は、その傾きを変えることができる微小な鏡(マイクロミラー)を面内に複数並べて配置したものから構成される。空間光変調素子10では、各鏡の傾きを任意に切り換えながら、照明光Lの反射方向を制御することによって、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布(開口10aの形状や大きさ等)を任意に変化させることが可能となっている。
【0026】
空間光変調素子10としては、例えばエレクトロクロミック素子(図示せず。)を用いてもよい。このエレクトロクロミック素子は、透明電極とエレクトロクロミック層とを組み合わせた積層構造から構成される。エレクトロクロミック層に電圧が印加されると、その電圧が印加された領域のエレクトロクロミック層が可逆的に電解酸化又は還元反応して、その領域での照明光Lの透過又は不透過が可逆的に変化する。
したがって、空間光変調素子10として、このようなエレクトロクロミック素子を用いた場合も、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布(開口10aの形状や大きさ等)を任意に変化させることが可能である。なお、エレクトロクロミック素子として、例えば特開平8−220568号公報に開示されているものなどを用いることができる。
【0027】
また、空間光変調素子10としては、例えば電気刺激の印加によって透過率等の特定の光学特性が変化する電気活性材料が封入され、TFT等の電極が形成された複数の空間を有する光学素子(図示せず。)を用いてもよい。この光学素子は、密封封止されアレイ状に形成されたセルを有しており、各セルには電気活性材料が封入されている。そして、各セルには電極が形成されてセル毎に独立に電圧を印加することができ、各セルの印加電圧を制御することで、セルを光が透過する状態及び光を透過しない状態を可逆的に変化させることができる。
したがって、空間光変調素子10として、このような光学素子を用いた場合も、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布(開口10aの形状や大きさ等)を任意に変化させることが可能である。なお、このような光学素子については、例えば特表2010−507119号公報に開示されているものを用いることができる。
【0028】
結像光学系4は、図1に示すように、対物レンズ15を有して構成されている。対物レンズ15は、被検体Sからの透過光Lpを固体撮像素子5の受光面上に結像させる。
【0029】
固体撮像素子5は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの受光波長の異なる受光素子を複数有するものから構成される。固体撮像素子5は、上述した結像光学系4により結像された透過光Lpを受光し電気信号(画像信号)に変換して制御部6に出力する。
【0030】
制御部6は、コンピュータ(CPU)等から構成される。制御部6は、その内部に記録された制御プログラムに従って、顕微鏡装置1の各部を駆動するための制御等を行う。また、制御部6は、各部の制御を実行するための演算等を行う。制御部6には、例えば液晶表示パネルなどのモニター(表示部)16が接続されている。
【0031】
以上のような構造を有する顕微鏡装置1では、光源2から出射された照明光Lが第1のコンデンサレンズ8を通過することによって、平行な照明光Lに変換される。その後、この平行な照明光Lが波長フィルタ9を透過することによって、特定の波長の照明光Lが空間光変調素子10に入射する。
そして、空間光変調素子10の開口10aを通過した照明光Lが第2のコンデンサレンズ11を通過することによって、平行な照明光Lに変換される。その後、この平行な照明光Lがステージ7の設置面7a上に載置された被検体Sに照射される。
【0032】
そして、被検体Sからの透過光Lpを対物レンズ15が固体撮像素子5の受光面上に結像させることによって、固体撮像素子5が受光した透過光Lpを電気信号(画像信号)に変換して制御部6に出力する。これにより、制御部6が被検体Sの画像を生成し、その画像をモニター16に表示することが可能となっている。
【0033】
ところで、本実施形態の顕微鏡装置1では、被検体Sを観察するのに最適な画像を得るために、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布を最適化するための制御を行っている。
【0034】
具体的に、制御部6は、空間光変調素子10(第1モード)が光源2からの照明光Lを基に(下記の調整前に)形成した第1の照明光を被検体Sに照射したときに、固体撮像素子5が生成する被検体Sの第1の画像を取得する制御を行う。
制御部6は、この第1の画像に基づいて、空間光変調素子10(第2モード)が被検体Sに照射される第1の照明光の光強度分布を調整し、空間光変調素子10が第1の照明光の光強度分布の調整後に形成した第2の照明光を被検体Sに照射したときに、固体撮像素子5が生成する被検体Sの第2の画像を取得する制御を行う。
すなわち、制御部6の制御の下で、照明光学系3は、第1モードの空間光変調素子10を介して第1の照明光で被検体Sを照明する。固体撮像素子5は、第1の照明光で照明された被検体Sの像を含む、結像光学系4からの光を受光する。制御部6は、固体撮像素子5から出力される第1の画像に関する信号に基づいて、空間光変調素子10を第2モードに調整する。照明光学系3は、第2モードの空間光変調素子10を介して第2の照明光で被検体Sを照明する。固体撮像素子5は、第2の照明光で照明された被検体Sの像を含む、結像光学系4からの光を受光するとともに、第2の画像に関する信号を出力する。
【0035】
第1の照明光については、その光軸と直交する面内において等方的な光強度分布を有する照明光Lを用いることができる。この等方的な光強度分布を有する照明光Lを得るためには、例えば、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布が円形となるように、制御部6が空間光変調素子10を制御する。すなわち、空間光変調素子10の絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)10aを、例えば図3Aに示すような円形とする制御を行う。
【0036】
また、絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)10aは、対物レンズ15の瞳(対物瞳)を完全に覆う大きさとする。すなわち、絞りの開口10aの外径dは、対物瞳よりも大きくなっている。
【0037】
なお、等方的な光強度分布を有する照明光Lとしては、上述した円形状の光強度分布を有する照明光L以外にも、例えば円環状の光強度分布を有する照明光Lを用いることができる。この場合、制御部6は、空間光変調素子10の絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)10aを、例えば図3Bに示すような円環状とする制御を行う。
【0038】
そして、制御部6は、第1の照明光を被検体Sに照射したときに、固体撮像素子5が生成する被検体Sの第1の画像を取得する。例えば、図4(a)は、第1の照明光を用いて得られた第1の画像の一例を示す顕微鏡写真である。
【0039】
次に、制御部6は、被検体Sを観察するのに最適な画像(第2の画像)を得るために、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布を調整する制御を行う。すなわち、制御部6は、1つのパラメータとして設定された光強度分布を有する第1の照明光を、被検体Sを観察するのに最適な光強度分布を有する第2の照明光に変換するための演算を行う。
【0040】
具体的に、制御部6は、第1の照明光を第2の照明光に変換するための演算方法として、先ず、第1の画像をフーリエ変換により二値化した画像に変換する。
図4(a)に示す第1の画像をフーリエ変換により二値化した画像を図4(b)に示す。図4(b)に示す二値化した画像は、図4(a)に示す第1の画像が有する空間周波数分布のうち、所定のノイズレベルを差し引いて、それを二値化して表したものである。
【0041】
次に、二値化した画像の主成分分析を行うことによって、第1の画像が有する空間周波数分布を求める。具体的には、この二値化された画像の空間周波数分布における中心を原点としたxy座標を考える。そして、二値化された画像の各点のうち、「0」ではなく「1」の値を持つi番目の点(1≦i≦N:Nは値を持つ点の数)のxy座標を(X,Y)としたときに、下記式(1)で表される2行2列の行列について、2つの固有値を演算により求める。
なお、二値化した画像の主成分分析には、上述した主成分分析に限らず、それ以外の分析方法を用いることも可能である。
【0042】
【数1】
【0043】
制御部6は、この演算結果から第1の画像が有する空間周波数分布の広がりや方向性などを分析し、被検体Sの形状を推定しながら、この演算結果を第2の照明光の形成に反映させる。
【0044】
すなわち、制御部6は、この演算結果に基づいて、被検体Sに照射される照明光Lの光軸と直交する2つの方向の光強度分布を調整する制御を行う。具体的には、2つの方向の光強度分布のうち、第1の画像の空間周波数分布に関して高空間周波数成分に対応する方向の光強度分布を強調する制御を行う。代替的に又は付加的に、第1の画像の空間周波数分布に関して低空間周波数成分に対応する方向の光強度分布を絞る制御を行う。
【0045】
例えば、第2の照明光としては、楕円環状の空間周波数分布を有する照明光Lを用いる。
第2の照明光のパラメータ設定の一例を次に示す。式(1)に示す行列の2つの固有値のうち、大きい方の固有値に対応する固有ベクトルの向きと、楕円環の長軸の向きとを一致させる。楕円環の長軸の長さは、対物レンズ15の瞳径に一致させる。楕円環の短軸の長さは、被検体Sが有する高周波数成分が強調されるように、楕円環の長軸の長さに対して(小さい方の固有値/大きい方の固有値)の2乗倍にする。これにより、被検体Sを観察するのに最適な光強度分布を有する第2の照明光を求めることができる。
【0046】
制御部6は、このような第2の照明光を得るために、空間光変調素子10の絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)10aを、例えば図4(c)に示すような楕円環状とする制御を行う。
【0047】
次に、制御部6は、第2の照明光を被検体Sに照射したときに、固体撮像素子5が生成する被検体Sの第2の画像を取得する。例えば、図4(d)は、第2の照明光を用いて得られた第2の画像の一例を示す顕微鏡写真である。
【0048】
図4(a)に示す第1の画像と、図4(d)に示す第2の画像との比較から、第2の画像が第1の画像よりも分解能が高く、コントラストも向上していることがわかる。
【0049】
以上のように、本実施形態によれば、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布(形状)を最適化し、被検体Sの高分解能且つ高コントラストな画像を得ることによって、被検体Sを最適の状態で観察することが可能である。
【0050】
なお、第2の照明光については、上述した高空間周波数成分に対応する方向の光強度分布を強調したり、低空間周波数成分に対応する方向の光強度分布を絞ったりすることで、光軸と直交する面内において異方的な光強度分布を有する照明光L、特に光軸と直交する面内において楕円環状の光強度分布を有する照明光Lを用いることが可能である。
【0051】
一方、制御部6による演算結果から、被検体Sを観察するのに最適な光強度分布として、第2の照明光が等方的な光強度分布を有する場合もある。この場合、被検体Sに照射される照明光L(第2の照明光)の光強度分布は、上述した楕円環状ではなく、円環状が最適な形状となる。
【0052】
したがって、制御部6は、このような第2の照明光を得るために、空間光変調素子10の絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)10aを、例えば図5に示すような円環状とする制御を行う。なお、絞りの開口10aの外径dは、上記演算結果に基づいて最適な値に設定される。
【0053】
また、制御部6による演算結果から、第1の画像の空間周波数分布が所定の閾値を超えない場合においては、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布を点光源に近い状態に調整することも可能である。すなわち、第1の画像が有する空間周波数分布の広がりが所定の領域より小さい場合には、楕円状の照明光Lではなく、点光源に近い照明光Lを用いることができる。
【0054】
なお、第2の照明光としては、上述した楕円環状や円環状などの環状(輪体状)の照明光Lを用いるだけでなく、環状(輪体)の一部が分断された形状の照明光Lを用いてもよい。
すなわち、本実施形態では、第1の画像に基づいて、その空間周波数分布の広がりや方向性などを反映した最適な光強度分布を有する第2の照明光を得るために、空間光変調素子10における絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)10aを自由に変化させることが可能である。
【0055】
また、顕微鏡装置1により観察した別の被検体Sの画像を図6及び図7に示す。図6及び図7に示す画像のうち、(a)は第1の照明光を用いて得られた第1の画像、(b)は第1の画像をフーリエ変換により二値化した画像、(c)は空間光変調素子の絞りの開口を楕円環状とした場合の平面図、(d)は第2の照明光を用いて得られた第2の画像を示す。
【0056】
図6及び図7に示すように、何れも第2の画像が第1の画像よりも分解能が高く、コントラストも向上していることがわかる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として図8に示す顕微鏡装置50について説明する。
図8は、第2の実施形態として示す顕微鏡装置50の概略構成図である。
【0058】
第2の実施形態として図8に示す顕微鏡装置50は、観察対象である被検体Sに照明光Lを照射し、被検体Sからの透過光Lpの位相差を明暗差に変換することによって得られた被検体Sの拡大像を観察する位相差顕微鏡を構成するものである。
【0059】
具体的に、顕微鏡装置50は、照明光Lを出射する光源51と、光源51からの照明光Lを被検体Sに照射する照明光学系52と、被検体Sからの透過光Lpを結像する結像光学系53と、結像光学系53により結像された透過光Lpを受光し電気信号に変換して被検体Sの画像を生成する固体撮像素子54と、各部の制御を行う制御部55とを備えている。
【0060】
照明光学系52と結像光学系53との間には、ステージ56が配置されている。
ステージ56は、被検体Sが設置される設置面56aを有している。また、ステージ56は、その面内において互いに直交する2つの方向(図8中に示すX軸方向及びY軸方向)に移動操作される。これにより、被検体Sの観察位置を任意に変更することが可能となっている。さらに、ステージ56は、高さ方向(図8中に示すZ軸方向)に移動操作される構成であってもよい。
【0061】
以下では、光源51から出射された照明光Lの光軸(光束の中心軸)をZ軸方向とし、このZ軸と直交する面内において互いに直交する2つの方向をX軸方向及びY軸方向として説明する。なお、図8では、光源51から出射された照明光Lを破線で模式的に示している。
【0062】
光源51は、例えば白色光などの可視光又はその近傍の波長域の光を照明光Lとして照射する。光源51には、反射鏡等を利用して自然光や白色蛍光灯、白色電球などの外部光源からの光を照明光Lとして用いることができる。また、光源51には、ハロゲンランプやタングステンランプなどの内部光源からの光を照明光Lとして用いることができる。
【0063】
また、光源51には、発光ダイオード(LED)等を用いてもよい。この場合、光源51は、例えば赤、青、緑の各波長の光を発するLEDの組み合わせにより構成することができる。また、これら波長の異なるLEDの点灯及び消灯を制御することによって、光源51が発する照明光の波長を可変に制御できる。
【0064】
照明光学系52は、光源51側から順に、第1のコンデンサレンズ57と、第1の空間光変調素子58と、第2のコンデンサレンズ59とが配置された構成を有している。
【0065】
第1のコンデンサレンズ57及び第2のコンデンサレンズ59は、光源51から出射された照明光Lをステージ56上の被検体Sに集光させる。
【0066】
第1の空間光変調素子58は、結像光学系53の瞳位置に対して共役となる位置に配置されている。第1の空間光変調素子58は、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布を可変に調整するもの(絞り)である。この絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)58aの形状や大きさ等を自由に変化させることが可能となっている。第1の空間光変調素子58には、図1に示す空間光変調素子10と同じものを用いることができる。
【0067】
結像光学系53は、ステージ56側から順に、対物レンズ60と、第2の空間光変調素子61とが配置された構成を有している。
【0068】
対物レンズ60は、被検体Sからの透過光Lpを固体撮像素子54の受光面上に結像させる。
【0069】
第2の空間光変調素子61は、結像光学系53の瞳位置又はその近傍に配置されている。また、第1の空間光変調素子58と第2の空間光変調素子61とは、互いに共役な位置に配置されている。
【0070】
第2の空間光変調素子61は、被検体Sからの透過光Lpに付加する位相の空間分布を可変に調整する。第2の空間光変調素子61は、例えば、透過光Lpに付加する位相を0°又は±90°に調整する。
具体的に、第2の空間光変調素子61は、被検体Sからの透過光Lpのうち、被検体Sを通過した直接光(0次光)を4分の1波長(±90°)だけ位相がずれた状態で透過させる位相変調領域61aと、この位相変調領域61aの周囲に被検体Sで回折した回折光をそのままの位相(0°)で透過させる回折光透過領域61bとを有している。
【0071】
第2の空間光変調素子61は、回折光透過領域61bに対して位相変調領域61aの形状や大きさ等を自由に変化させることが可能である。このような第2の空間光変調素子61としては、例えば液晶パネル(液晶素子)などを用いることができる。
【0072】
さらに、第2の空間光変調素子61は、上述した位相の空間分布と共に、被検体Sからの透過光Lpを透過させる透過率の空間分布を可変に調整する機能を有することができる。一般に、第2の空間光変調素子61を通過する透過光Lpのうち、位相変調領域61aを透過する直接光は、回折光透過領域61bを透過する回折光に比べて光強度が強いため、NDフィルタ等を用いて光強度を弱める調整を行う。
【0073】
なお、このようなNDフィルタについては、例えば特表2010−507119号公報に開示されているような透過率の空間分布を可変に調整できる光学素子などを用いることができる。また、第2の空間光変調素子61には、このような光学素子等を付加したものを用いることができる。
【0074】
固体撮像素子54は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの受光波長の異なる受光素子を複数有するものからなり、上述した結像光学系53により結像された透過光Lpを受光し電気信号(画像信号)に変換して制御部55に出力する。
【0075】
制御部55は、コンピュータ(CPU)等からなり、その内部に記録された制御プログラムに従って、顕微鏡装置50の各部を駆動するための制御等を行う。また、制御部55は、各部の制御を実行するための演算等を行う。制御部55には、例えば液晶表示パネルなどのモニター(表示部)62が接続されている。
【0076】
以上のような構造を有する顕微鏡装置50では、光源51から出射された照明光Lが第1のコンデンサレンズ57を通過することによって、平行な照明光Lに変換される。その後、この平行な照明光Lが第1の空間光変調素子58に入射する。
そして、第1の空間光変調素子58の開口58aを通過した照明光Lが第2のコンデンサレンズ59を通過することによって、平行な照明光Lに変換される。その後、この平行な照明光Lがステージ56の設置面56a上に載置された被検体Sに照射される。
【0077】
被検体Sからの透過光Lpが対物レンズ60を通過した後、第2の空間光変調素子61に入射する。このとき、被検体Sからの透過光Lpのうち、位相変調領域61aを透過した直接光が、4分の1波長だけ位相がずれた状態で、NDフィルタで減光された後、固体撮像素子54の受光面上に結像される。一方、回折光透過領域61bを透過した回折光がそのままの位相(0°)で、固体撮像素子54の受光面上に結像される。位相差顕微鏡では、これら直進光と回折光との干渉によって、位相の変化を光の明暗として観察することが可能である。
【0078】
そして、固体撮像素子54が受光した透過光Lpを電気信号(画像信号)に変換して制御部55に出力する。これにより、制御部55が被検体Sの画像を生成し、その画像をモニター62に表示することが可能となっている。
【0079】
ところで、本実施形態の顕微鏡装置50では、被検体Sを観察するのに最適な画像を得るために、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布、及び被検体Sからの透過光Lpに付加する位相の空間分布を最適化するための制御を行っている。
【0080】
具体的に、制御部55は、第1の空間光変調素子58(A1モード)が光源51からの照明光Lを基に(下記の調整前に)形成した第1の照明光を被検体Sに照射し、且つ、第2の空間光変調素子61(B1モード)が被検体Sからの透過光を透過させたときに、固体撮像素子54が生成する被検体Sの第1の画像を取得する制御を行う。
制御部55は、この第1の画像に基づいて、第1の空間光変調素子58が被検体Sに照射される第1の照明光の光強度分布を調整すると共に、第2の空間光変調素子61が被検体Sからの透過光に付加する位相の空間分布を調整する制御を行う。
さらに、制御部55は、第1の空間光変調素子58(A2モード)が前記第1の照明光の光強度分布の調整後に形成した第2の照明光を被検体Sに照射し、且つ、第2の空間光変調素子61(B2モード)が透過光に付加する位相の空間分布を調整したときに、固体撮像素子54が生成する被検体Sの第2の画像を取得する制御を行う。
すなわち、制御部55の制御の下で、照明光学系52は、A1モードの第1の空間光変調素子58を介して第1の照明光で被検体Sを照明する。結像光学系53は、B1モードの第2の空間変調素子61を介して、第1の照明光で照明された被検体Sの像を結像する。固体撮像素子54は、第1の照明光で照明された被検体Sの像を含む、結像光学系53からの光を受光する。制御部55は、固体撮像素子53から出力される第1の画像に関する信号に基づいて、第1の空間光変調素子58及び第2の空間光変調素子61をA2モード及びB2モードにそれぞれ調整する。照明光学系52は、A2モードの第1の空間光変調素子58を介して第2の照明光で被検体Sを照明する。結像光学系53は、B2モードの第2の空間変調素子61を介して、第2の照明光で照明された被検体Sの像を結像する。固体撮像素子54は、第2の照明光で照明された被検体Sの像を含む、結像光学系53からの光を受光するとともに、第2の画像に関する信号を出力する。
【0081】
第1の照明光については、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布が円環状となるように、制御部55が第1の空間光変調素子58を制御する。すなわち、第1の空間光変調素子58の絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)58aを、例えば図9Aに示すような円環状とする制御を行う。
【0082】
また、絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)58aは、対物レンズ60の瞳(対物瞳)を完全に覆う大きさとする。すなわち、絞りの開口58aの外径dは、対物瞳よりも大きくなっている。
【0083】
第2の空間光変調素子61については、図9Bに示すように、回折光透過領域61bに対する位相変調領域61aの形状が、第1の空間光変調素子58の絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)58aに対応した形状、すなわち円環状となるように、制御部55が第2の空間光変調素子61を制御する。
【0084】
そして、制御部55は、この第1の照明光を被検体Sに照射し、且つ、第2の空間光変調素子61が被検体Sからの透過光を透過させたときに、固体撮像素子54が生成する被検体Sの第1の画像を取得する。
【0085】
次に、制御部55は、被検体Sを観察するのに最適な画像(第2の画像)を得るために、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布を調整する制御を行う。すなわち、制御部55は、1つのパラメータとして設定された光強度分布を有する第1の照明光を、被検体Sを観察するのに最適な光強度分布を有する第2の照明光に変換するための演算を行う。
【0086】
具体的に、制御部55は、第1の照明光を第2の照明光に変換するための演算方法として、上記第1の実施形態と同じ演算方法を用いることができる。すなわち、制御部55は、第1の実施形態と同じ演算方法を用いて、上記第1の画像が有する空間周波数分布の広がりや方向性などを分析し、被検体Sの形状を推定しながら、この演算結果を第2の照明光の形成に反映させる。これにより、被検体Sを観察するのに最適な光強度分布を有する第2の照明光を求めることができる。
【0087】
制御部55は、このような第2の照明光を得るために、第1の空間光変調素子58の絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)58aを、例えば図10Aに示すような楕円環状とする制御を行う。
【0088】
また、第2の空間光変調素子61については、回折光透過領域61bに対する位相変調領域61aの形状が、第1の空間光変調素子58の絞りの開口(照明光Lを通過させる領域)58aに対応した形状、すなわち図10Bに示すような楕円環状となるように、制御部55が第2の空間光変調素子61を制御する。
【0089】
このように、制御部55は、第1の空間光変調素子58と第2の空間光変調素子61とを互いに同期させながら、第1の空間光変調素子58の開口(照明光Lを通過させる領域)58aと、第2の空間光変調素子61の位相変調領域61aとの形状が常に共役となるように、それぞれの調整を行っている。
【0090】
次に、制御部55は、この第2の照明光を被検体Sに照射し、且つ、第2の空間光変調素子61が透過光に付加する位相の空間分布を調整したときに、固体撮像素子54が生成する被検体Sの第2の画像を取得する。これにより、第1の画像よりも高分解能且つ高コントラストの第2の画像を得ることが可能である。
【0091】
以上のように、本実施形態によれば、被検体Sに照射される照明光Lの光強度分布(形状)、並びに被検体Sからの透過光Lpに付加する位相の空間分布を最適化し、被検体Sの高分解能且つ高コントラストな画像を得ることによって、被検体Sを最適の状態で観察することが可能である。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明の顕微鏡装置は、上述した明視野顕微鏡や位相差顕微鏡を構成するものの以外にも、被検体Sからの反射光や散乱光によって得られた被検体Sの拡大像を観察する暗視野顕微鏡を構成するもの等であってもよい。
【0093】
また、上記モニター16,62に被検体Sの画像を表示する際には、上記第1の画像と上記第2の画像とを別々に表示するだけでなく、第1の画像と第2の画像とを並べて表示することも可能である。
【0094】
また、本発明の顕微鏡装置は、モニター16,62に表示された被検体Sの画像を観察するものに限らず、接眼レンズ(図示せず。)を通して被検体Sの画像を観察するものであってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…顕微鏡装置(第1の実施形態) 2…光源 3…照明光学系 4…結像光学系 5…固体撮像素子 6…制御部 7…ステージ 8…第1のコンデンサレンズ 9…波長フィルタ 10…空間光変調素子 10a…開口(照明光を通過させる領域) 11…第2のコンデンサレンズ 12…液晶パネル 14…DMD 15…対物レンズ 16…モニター(表示部)。
50…顕微鏡装置(第2の実施形態) 51…光源 52…照明光学系 53…結像光学系 54…固体撮像素子 55…制御部 56…ステージ 57…第1のコンデンサレンズ 58…第1の空間光変調素子 59…第2のコンデンサレンズ 60…対物レンズ 61…第2の空間光変調素子 61a…位相変調領域 61b…回折光透過領域 62…モニター(表示部)。
S…被検体 L…照明光。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図5
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図4
図6
図7