(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イソシアネート化合物が、メタキシレンジイソシアネート、又はメタキシレンジイソシアネートと分子内に少なくとも2個以上の水酸基を有する多価アルコールとの反応生成物である請求項2に記載の水蒸気バリア性接着剤用樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
食品包装材料は、内容物保護、賞味期限の延長等のニーズから、ガス或いは水蒸気バリア性を求められ、これまで数多く検討されてきており、各種プラスチックフィルム、金属、ガラス蒸着フィルム、金属箔等を多層ラミネートして複合フィルム化した材料が使用されてきた。上記ガスバリア性を有する材料に対するニーズを満足するためには、包装材料には、シリカ、アルミナ等の無機物を蒸着した透明蒸着フィルムが使用されるが、高コストであり、耐折り曲げ性に乏しい等の問題があった。
【0003】
アルミ箔等を用いた場合、ガスバリア性は強いが、リサイクルの観点から使用しにくく、且つ高価である等の問題がある。
【0004】
水蒸気バリア性を有する材料としては、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化材料や、シクロオレフィンコポリマー系が主であった。
【0005】
また、これらの各種バリア性フィルム、金属、ガラス蒸着フィルム、金属箔等を貼り合わせ、積層体を作製する方法としては、一方の材料面に接着剤を塗布後、溶剤を蒸発乾燥除去し、他の材料を加熱、圧着しながら積層するドライラミネーションと呼ばれる技術がある。この技術は、任意のフィルム同士を自由に貼り合わせることができ、目的に応じた性能を有する複合フィルムを得ることができるため、高性能が要求される食品の包装材料の製造に広く用いられている。
【0006】
ここで使用される接着剤は、(1)プラスチックフィルム、アルミ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム、及びアルミ箔に対する接着性、(2)トンネリングを防ぐための初期接着性、(3)接着剤の硬化速度、(4)ポットライフ、(5)耐内容物性、(6)ボイル、レトルト耐性等に対して高い性能が要求される。更に最近では、接着剤由来の各種不純物が内容物へ移行し香りや味覚に悪影響を与えることのない、(7)低臭味性が重要視されるようになってきているが、水蒸気バリア性を有する接着剤は知られていないのが現状である。
【0007】
水蒸気バリア性を有するシートとしては、例えば特許文献1には、環状オレフィンを樹脂組成に含む水蒸気バリア性、耐衝撃性、剛性及び耐熱性に優れたシート及びそのシートで形成された容器が記載されている。
【0008】
また、特許文献2には、塩化ビニリデン系共重合体を含有するフィルム又はシートである材料が記載されている。
【0009】
トリシクロデカン骨格を有する材料に関しては、例えば特許文献3には、縮合型脂環式構造を有するマレイミド化合物を使用した例があり、得られるシール剤に水蒸気バリア性を付与できることが記載されている。
【0010】
また、特許文献4には、透明無機蒸着フィルム用接着剤、アンカーコート剤として、ポリウレタンを開発し、ポリウレタン原料としてポリエステルポリオールを使用しており、グリコール成分としてトリシクロデカンジメタノールを使用することが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で使用する水蒸気バリア性接着剤用樹脂組成物は、ポリオールと硬化剤とを反応させてなる水蒸気バリア性接着剤用樹脂組成物であって、
トリシクロアルカン構造をポリオール又は硬化剤に有し、樹脂組成物にトリシクロアルカン構造を有する点に特徴がある。本構造を含有することによる樹脂組成物の疎水性が向上し、水蒸気の溶解度を低下させることができるため、水蒸気バリア性が発現する。
なお、本発明において、水蒸気バリア性を有する接着剤として用いることのできる樹脂組成物を、水蒸気バリア性接着剤用樹脂組成物と称する。
【0017】
本発明で用いられるポリオールは、硬化剤と反応すれば特に制限はないが、水酸基を有するトリシクロアルカンと多価カルボン酸或いはその酸無水物、又は、水酸基を有するトリシクロアルカンと多価カルボン酸或いはその酸無水物及び多価アルコールとを反応させてなるポリオール類を挙げることができる。
【0018】
(水酸基を有するトリシクロアルカン)
本発明で使用される水酸基を有するトリシクロアルカンは、公知慣用の水酸基を有するトリシクロアルカンを挙げることができ、トリシクロアルカンとしては、例えば、トリシクロノナン、トリシクロノネン、トリシクロデカン、トリシクロデセン、トリシクロウンデカン、トリシクロドデカン、トリシクロテトラデカン、トリシクロペンタデカン、トリシクロヘキサデカン等を挙げることができる。
【0019】
(多価カルボン酸)
本発明で使用する多価カルボン酸成分として具体的には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物或いはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。また、これらの酸無水物も使用することができる。中でも、バリア性を得る為にはコハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、オルトフタル酸、オルトフタル酸の酸無水物、イソフタル酸が好ましく、更にはオルトフタル酸及びその酸無水物がより好ましい。
【0020】
(多価アルコール成分)
本発明で使用する多価アルコールは、具体的には、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、芳香族多価フェノールとして、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらの、エチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族を例示することができる。中でも酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟になりにくいと推定されることから、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールが好ましく、更にはエチレングリコールがより好ましい。多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応は、公知慣用の方法で行うことができる。
【0021】
本発明のポリエステルポリオールの態様は、例えば以下を挙げることができるが、これらに限らない。
(I);一般式(1)
【0023】
(但し、Aは多価カルボン酸若しくはその無水物、Bはトリシクロデカン骨格を有する多価アルコールであって、A及びBは、A及びBとの反応により得られるエステル基で結合されており、nは1〜100の整数である。)
で表されるポリエステルポリオール。
【0026】
(但し、Aは多価カルボン酸若しくはその無水物、Bはトリシクロデカン骨格を有する多価アルコール、Cはトリシクロデカン骨格を有する多価アルコール以外の多価アルコールであって、A及びB、A及びCは、A及びB、A及びCとの反応により得られるエステル基で結合されており、m、nは1〜100の整数である。)
で表されるポリエステルポリオール。
【0029】
(但し、Aは多価カルボン酸若しくはその無水物、Bはトリシクロデカン骨格を有する多価アルコール、Cはトリシクロデカン骨格を有する1価又は多価アルコール、Dはトリシクロデカン骨格を有する多価アルコール以外の多価アルコールであって、A及びB、A及びC、A及びDは、A及びB、A及びC、A及びDとの反応により得られるエステル基で結合されており、m、nは1〜100の整数である。)
で表されるポリエステルポリオール。
【0032】
(但し、Aは多価カルボン酸若しくはその無水物、Bはトリシクロデカン骨格を有する多価アルコール、Cは水酸基を有する炭素数1〜30の直鎖状或いは分岐状アルキル基であって、A及びB、A及びCは、A及びB、A及びCとの反応により得られるエステル基で結合されており、nは1〜100の整数である。)
で表されるポリエステルポリオール。
【0035】
(但し、Aは多価カルボン酸若しくはその無水物、Bはトリシクロデカン骨格を有する多価アルコール以外の多価アルコール、Cはトリシクロデカン骨格を有する1価又は多価アルコールであって、A及びB、A及びCは、A及びB、A及びCとの反応により得られるエステル基で結合されており、nは1〜100の整数である。)
で表されるポリエステルポリオール。
【0036】
本発明で使用する多価カルボン酸には、好ましくはベンゼン環を含有しているものが好ましく、特に好ましくはオルトフタル酸及びその無水物を挙げることができる。該オルトフタル酸及びその無水物骨格が非対称構造である。従って、得られるポリエステルの分子鎖の回転抑制が生じると推定され、これによりガスバリア性、特に水蒸気バリア性に優れると推定している。また、この非対称構造に起因して非結晶性を示し、十分な基材密着性が付与され、接着力とガスバリア性、特に水蒸気バリア性に優れると推定される。さらにドライラミネート接着剤として用いる場合には必須である溶媒溶解性も高いことで取扱い性にも優れる特徴を持つ。また、ベンゼン環を水素添加したシクロヘキサン骨格を含有する多価カルボン酸を用いた場合には疎水性が向上し、水蒸気の溶解度を低下させることができるため、好ましく用いることができる。
【0037】
(多価カルボン酸 その他の成分)
3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールを合成する際に、多価カルボン酸成分により分岐構造を導入する場合には、三価以上のカルボン酸を少なくとも一部に有する必要がある。これらの化合物としては、トリメリット酸およびその酸無水物、ピロメリット酸及びその酸無水物等があげられるが、合成時のゲル化を防ぐ為には三価以上の多価カルボン酸としては三価カルボン酸が好ましい。
【0038】
これ以外の成分として本発明のポリエステルポリオールは、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸成分を共重合させてもよい。具体的には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、不飽和結合含有多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物或いはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。中でも、コハク酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましい。
【0039】
(多価アルコール その他の成分)
3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールを合成する際に、多価アルコール成分により分岐構造を導入する場合には、三価以上の多価アルコールを少なくとも一部に有する必要がある。これらの化合物としてはグリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等があげられるが、合成時のゲル化を防ぐ為には三価以上の多価アルコールとしては三価アルコールが好ましい。
【0040】
これ以外の成分として本発明では前述の多価アルコール成分は、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコール成分を共重合させてもよい。具体的には、脂肪族ジオールとしては1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、芳香族多価フェノールとして、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらのエチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族を例示することができる。
【0041】
次に、前記ポリエステルポリオールの合成は、公知慣用の方法を用いて行うことができる(詳細は実施例を参照)。
【0042】
本発明では、ポリエステルポリオールの水酸基価が20〜250であり、酸価が20〜200であることが好ましい。水酸基価はJIS−K0070に記載の水酸基価測定方法にて、酸価はJIS−K0070に記載の酸価測定法にて、測定することができる。水酸基価が20mgKOH/gより小さい場合、分子量が大きすぎる為に粘度が高くなり、良好な塗工適性が得られない。逆に水酸基価が250mgKOH/gを超える場合、分子量が小さくなりすぎる為、硬化塗膜の架橋密度が高くなりすぎ、良好な接着強度が得られない。酸価が20mgKOH/gより小さい場合、分子間の相互作用が小さくなり、良好なバリア性、良好な初期凝集力が得られない。逆に酸価が200mgKOH/gを超える場合、硬化剤であるイソシアネート化合物との反応が早くなり過ぎ、良好な塗工適性が得られない。
【0043】
なお、本願において水蒸気バリア性接着剤用樹脂組成物に含まれるトリシクロアルカン構造の割合(質量%)は、以下のようにして算出することができる。即ち、
【0045】
但し、
TMW:トリシクロアルカン分子量
n :重合度 (末端にトリシクロアルカン構造を含有する場合はn+1)
NMW:繰り返しユニット分子量
EMW:末端モノマー分子量
W :トリシクロアルカン構造を含有する主剤或いは硬化剤配合量、若しくは主剤+硬化剤配合量
AW :主剤+硬化剤配合量
を示す。
【0046】
例えば[化5]における具体的な化合物例として、主剤ポリエステルポリオールに、Aはトリメリット酸、Bはエチレングリコール、Cはトリシクロデカン骨格を有する1価アルコール、硬化剤としてタケネートD110Nを使用した場合、以下のようになる。
【0048】
本発明では、十分な水蒸気バリア性を保持するため、本発明の水蒸気バリア性接着剤用樹脂組成物に含まれるトリシクロアルカン構造の割合が10質量%〜50質量%であることが好ましい。
【0049】
(接着剤 硬化剤)
本発明で使用する硬化剤は、前記ポリオールの水酸基と反応しうる硬化剤であれば特に限定はなく、ジイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物やエポキシ化合物等の公知の硬化剤を使用できる。中でも、接着性や耐レトルト性の観点から、ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
【0050】
ポリイソシアネート化合物としては芳香族、脂肪族のジイソシアネート、3価以上のポリイソシアネート化合物があり、低分子化合物、高分子化合物のいずれでもよい。たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3−ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4−ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体が挙げられる。
【0051】
イソシアネート化合物としてはブロック化イソシアネートであってもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t−ブタノール、t−ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0052】
中でも、良好なバリア性を得る為にはメタキシレンジイソシアネート、又はメタキシレンジイソシアネートと分子内に少なくとも2個以上の水酸基を有する多価アルコールとの反応生成物が好ましい。
【0053】
本発明のポリオールと硬化剤との硬化塗膜のガラス転移温度が−30℃〜80℃の範囲が好ましい。より好ましくは0℃〜70℃である。更に好ましくは25℃〜70℃である。ガラス転移温度が80℃よりも高い場合、室温付近での硬化塗膜の柔軟性が低くなることにより、基材への密着性が劣ることで接着力が低下するおそれがある。一方−30℃よりも低い場合、常温付近での硬化塗膜の分子運動が激しいことにより十分なバリア性が出ないおそれや、凝集力不足による接着力低下のおそれがある。
【0054】
また、本発明で用いる樹脂組成物の末端にカルボン酸が残存した場合には、エポキシ化合物を硬化剤として用いることができる。エポキシ化合物としてはビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−ジグリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0055】
エポキシ化合物を硬化剤として用いる場合には、硬化を促進する目的で汎用公知のエポキシ硬化促進剤を本発明の目的であるバリア性が損なわれない範囲で適宜添加してもよい。
【0056】
中でも、硬化剤が芳香族環を有するポリイソシアネート化合物であることが好ましく、前記メタキシレン骨格を含むポリイソシアネート化合物であると、ウレタン基の水素結合だけでなく芳香環同士のπ−πスタッキングによってバリア性を向上させることができるという理由から好ましい。
【0057】
前記メタキシレン骨格を含むポリイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネートの3量体、アミンとの反応により合成されるビューレット体、アルコールと反応してなるアダクト体があるが、3量体、ビューレット体と比べ、ポリイソシアネート化合物のドライラミネート接着剤に用いられる有機溶剤への溶解性が得られやすいという理由からアダクト体がより好ましい。アダクト体としては、上記の低分子活性水素化合物の中から適宜選択されるアルコールと反応してなるアダクト体が使用できるが、中でも、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリエタノールアミン、メタキシレンジアミンのエチレンオキシド付加物とのアダクト体が特に好ましい。
【0058】
前記樹脂組成物と前記硬化剤とは、樹脂組成物と硬化剤との割合が樹脂組成物の水酸基と硬化剤の反応成分とが1/0.5〜1/10(当量比)となるように配合することが好ましく、より好ましくは1/1〜1/5である。該範囲を超えて硬化剤成分が過剰な場合、余剰な硬化剤成分が残留することで接着後に接着層からブリードアウトするおそれがあり、一方、硬化剤成分が不足の場合には接着強度不足のおそれがある。
【0059】
前記硬化剤は、その種類に応じて選択された公知の硬化剤或いは促進剤を併用することもできる。例えば接着促進剤としては、加水分解性アルコキシシラン化合物等のシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂等が挙げられる。シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤は、各種フィルム材料に対する接着剤を向上させる意味でも好ましい。
【0060】
(接着剤 その他の成分)
本発明の接着剤は、接着力およびバリア性を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤等が例示できる。
【0061】
(板状無機化合物)
本発明の接着剤用樹脂組成物では、板状無機化合物を含有してもよい。
本発明に用いられる板状無機化合物は、接着剤用樹脂組成物を硬化させてなる接着剤のラミネート強度とバリア性を向上させる効果を有する。
【0062】
本発明で用いられる板状無機化合物は形状が板状であることによりラミネート強度とバリア性が向上する特徴がある。板状無機化合物の層間の電荷はバリア性に直接大きく影響しないが、樹脂組成物に対する分散性が、イオン性無機化合物、或いは水に対して膨潤性無機化合物では大幅に劣り、添加量を増加させると樹脂組成物の増粘やチキソ性となることより塗工適性が課題となる。これに対して、無電荷(非イオン性)、或いは水に対して非膨潤性の場合は、添加量を増加させても、増粘やチキソ性となり難く塗工適性が確保できる。本発明で使用される板状無機化合物としては、例えば、板状無機化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト−蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト−タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい。無機層状化合物は単独で又は二種以上組み合わせて使用される。
【0063】
また、本発明で用いられる板状無機化合物は、層間電化を持たない非イオン性であることが好ましい。
【0064】
このような本発明で使用される板状無機化合物としては、例えば、カオリナイト−蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト−タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)等を挙げることができる。
【0065】
また、本発明で用いられる板状無機化合物は、水に対して非膨潤性であることが好ましい。
【0066】
このような本発明で使用される板状無機化合物としては、例えば、カオリナイト−蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト−タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム等を挙げることができる。
【0067】
本発明での平均粒径とは、ある板状無機化合物の粒度分布を光散乱式測定装置で測定した場合の出現頻度が最も高い粒径を意味する。本発明で用いる板状無機化合物での平均粒径は特に限定はないが、好ましくは0.1μm以上であり、更に好ましくは1μm以上である。平均粒径が0.1μm以下であると、長辺の長さが短いことにより、分子の迂回経路が長くならずにバリア能を向上させにくい問題や接着力を向上させにくい問題が生じる。平均粒径の大きい側は特に限定されない。塗工の方法により大きな板状無機化合物を含有することで塗工面にスジ等の欠陥が生じる場合は、好ましくは平均粒径100μm以下、更に好ましくは20μm以下の材料を用いると良い。
【0068】
本発明で使用される板状無機化合物のアスペクト比はガスの迷路効果によるバリア能の向上のためには高い方が好ましい。具体的には3以上が好ましく、更に好ましくは10以上、最も好ましくは40以上である。
【0069】
本発明で使用される無機化合物を樹脂組成物或いは水蒸気バリア性接着剤用樹脂組成物に分散させる方法としては公知の分散方法が利用できる。例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントコンディショナー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、ナノミル、SCミル、ナノマイザー等を挙げることができ、更により好ましくは、高い剪断力を発生させることのできる機器として、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、二本ロール、三本ロール等が上げられる。これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本発明の接着剤およびフィルム積層体は水蒸気以外のガスを遮断することもできる。対象となるガスとしては、酸素、アルコール、不活性ガスおよび揮発性有機物(香り)等があげられる。
【0071】
(対象となるアルコール)
本発明の接着剤及び多層フィルムが遮断することを対象としているアルコールとは、少なくとも一箇所にアルキル鎖に対して水酸基が結合している構造を持つ、一般的にアルコール類に分類される材料類であれば特に制限がない。また、一価のアルコールでも多価のアルコールでも差し支えない。一価アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ネオペンチルグリコール、ヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール等を例示できる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチルプロパン等が例示できる。更には、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン等のアミノアルコール類の他、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエーテル基含有のアルコール化合物等も用いることができる。
【0072】
また、アルコール化合物の状態としては、常温領域で気体から液体である材料が本発明の有効性が高く好適である。
【0073】
(対象となる不活性ガス)
本発明の接着剤及び多層フィルムが遮断することを対象としている不活性ガスとは、食品等に対して不活性であり一般的な化学変化を起こしにくいことより、食品周囲への酸素や水蒸気の接触を防ぐ等の機能により、食品の風味の維持、内容物の保持、酸化防止の役に立つガスのことである。具体的には、窒素、炭酸ガスの他、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンの希ガスが例示できる。中でも、窒素、アルゴン、炭酸ガスが不活性ガスとしては広く用いられる。
【0074】
(香り)
本発明の接着剤及び多層フィルムが遮断することを対象としている揮発性有機物(香り)とは、ココア、醤油、ソース、味噌、コーヒー、レモネン、サリチル酸メチル、メントール、チーズ、香料類、シャンプー、リンス、洗剤、柔軟剤、石鹸等の香り成分を含むサニタリー分野、ペットフード、防虫剤、芳香剤、毛染め類、香水、農薬類等があげられる。
【0075】
本発明の接着剤および多層フィルムはガスを遮断することができることより、活性炭、ゼオライト等の吸着剤、消臭剤、浄水器カートリッジ、米穀類、インスタントラーメン、ミネラルウオーター、そうめん、綿類等の、外部からの香りの進入を防ぎたい用途、外部への香りの漏れを防ぎたい用途にも好適に用いられる。
【0076】
(接着剤の形態)
本発明の接着剤は、溶剤型又は無溶剤型のいずれの形態であってもよい。溶剤型の場合、溶剤はポリエステルポリオール及び硬化剤の製造時に反応媒体として使用してもよい。更に塗装時に希釈剤として使用される。使用できる溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。これらのうち通常は酢酸エチルやメチルエチルケトンを使用するのが好ましい。また、無溶剤で使用する場合は必ずしも有機溶剤に可溶である必要は無いと考えられるが、合成時の反応釜の洗浄やラミネート時の塗工機等の洗浄を考慮すると、有機溶剤に対する溶解性が必要である。
【0077】
本発明の接着剤は、基材フィルム等に塗工して使用することができる。塗工方法としては特に限定はなく公知の方法で行えばよい。例えば粘度が調整できる溶剤型の場合は、グラビアロール塗工方式等で塗布することが多い。また無溶剤型で、室温での粘度が高くグラビアロール塗工が適さない場合は、加温しながらロールコーターで塗工することもできる。ロールコーターを使用する場合は、本発明の接着剤の粘度が500〜2500mPa・s程度となるように室温〜120℃程度まで加熱した状態で、塗工することが好ましい。
【0078】
本発明の接着剤は、水蒸気バリア性接着剤として、ポリマー、紙、金属などに対し、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性を必要とする各種用途の接着剤として使用できる。
【0079】
以下具体的用途の1つとしてフィルムラミネート用接着剤について説明する。
【0080】
本発明の接着剤は、フィルムラミネート用接着剤として使用できる。ラミネートされた積層フィルムは、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性に優れるため、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性積層フィルムとして使用できる。
【0081】
本発明で使用する積層用のフィルムは、特に限定はなく、所望の用途に応じた熱可塑性樹脂フィルムを適宜選択することができる。例えば食品包装用としては、PETフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。これらは延伸処理を施してあってもよい。延伸処理方法としては、押出成膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸或いは逐次二軸延伸を行うことが一般的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的にはロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。
【0082】
本発明の接着剤は、同種または異種の複数の樹脂フィルムを接着してなる積層フィルム用の接着剤として好ましく使用できる。樹脂フィルムは、目的に応じて適宜選択すればよいが、例えば包装材として使用する際は、最外層をPET、OPP、ポリアミドから選ばれた熱可塑性樹脂フィルムを使用し、最内層を無延伸ポリプロピレン(以下CPPと略す)、低密度ポリエチレンフィルム(以下LLDPEと略す)から選ばれる熱可塑性樹脂フィルムを使用した2層からなる複合フィルム、或いは、例えばPET、ポリアミド、OPPから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、OPP、PET、ポリアミドから選ばれた中間層を形成する熱可塑性樹脂フィルム、CPP、LLDPEから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した3層からなる複合フィルム、さらに、例えばOPP、PET、ポリアミドから選ばれた最外層を形成する熱可塑性樹脂フィルムと、PET、ナイロンから選ばれた第1中間層を形成する熱可塑製フィルムとPET、ポリアミドから選ばれた第2中間層を形成する熱可塑製フィルム、LLDPE、CPPから選ばれた最内層を形成する熱可塑性樹脂フィルムを使用した4層からなる複合フィルムは、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性フィルムとして、食品包装材として好ましく使用できる。
【0083】
また、フィルム表面には、膜切れやはじきなどの欠陥のない接着層が形成されるように必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理を施してもよい。
【0084】
前記熱可塑性樹脂フィルムの一方に本発明の接着剤を塗工後、もう一方の熱可塑性樹脂フィルムを重ねてラミネーションにより貼り合わせることで、本発明の水蒸気バリア性積層フィルムが得られる。ラミネーション方法には、ドライラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出しラミネーション等公知のラミネーションを用いることが可能である。
【0085】
ドライラミネーション方法は、具体的には、基材フィルムの一方に本発明の接着剤をグラビアロール方式で塗工後、もう一方の基材フィルムを重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせる。ラミネートロールの温度は室温〜60℃程度が好ましい。
【0086】
また、ノンソルベントラミネーションは基材フィルムに予め室温〜120℃程度に加熱しておいた本発明の接着剤を室温〜120℃程度に加熱したロールコーターなどのロールにより塗布後、直ちにその表面に新たなフィルム材料を貼り合わせることによりラミネートフィルムを得ることができる。ラミネート圧力は、10〜300kg/cm
2程度が好ましい。
【0087】
押出しラミネート法の場合には、基材フィルムに接着補助剤(アンカーコート剤)として本発明の接着剤の有機溶剤溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、室温〜140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行なった後に、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることによりラミネートフィルムを得ることができる。溶融させるポリマー材料としては低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0088】
また、本発明の水蒸気バリア性積層フィルムは、作製後エージングを行うことが好ましい。エージング条件は、硬化剤としてポリイソシアネートを使用する場合であれば、室温〜80℃で、12〜240時間の間であり、この間に接着強度が生じる。
【0089】
本発明の接着剤はガスバリア性、特に水蒸気バリア性を有することを特徴としていることから、該接着剤により形成されるラミネートフィルムは、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、メタキシリレンアジパミドフィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着した無機蒸着フィルム層などの一般に使用されているバリア性材料を使用することなく非常に高いレベルのバリア性が発現する。
【0090】
本発明では、さらに高いバリア機能を付与するために、必要に応じてアルミニウム等の金属、或いはシリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルムや、ポリビニルアルコールや、エチレン・ビニールアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用してもよい。
【実施例】
【0091】
(合成例1 TCDoPA)
撹拌機、窒素ガス導入管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸100部、トリシクロデカンジメタノール155部、及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量2000、酸価1.13mgKOH/g、水酸基価58.8mgKOH/gのポリエステルポリオール(TCDoPA)を得た。
【0092】
(合成例2 TCDHH)
撹拌機、窒素ガス導入管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、ヘキサヒドロキシ無水フタル酸100部、トリシクロデカンジメタノール150部、及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量2000、酸価3.35mgKOH/g、水酸基価60.7mgKOH/gのポリエステルポリオール(TCDHH)を得た。
【0093】
(合成例3 EGTMATCD)
撹拌機、窒素ガス導入管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、トリメリット酸無水物100部、トリシクロデカンモノメタノール90部を仕込み、メチルエチルケトンを溶媒に用いて還流反応させ、酸価が315mgKOH/gとなったところで反応を終了し、脱溶媒を行った。エチレングリコール60部、及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量600、酸価1.32mgKOH/g、水酸基価161.8mgKOH/gのポリエステルポリオール(EGTMATCD)を得た。
【0094】
(合成例4 CHDMTMATCD)
撹拌機、窒素ガス導入管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、トリメリット酸無水物100部、トリシクロデカンモノメタノール90部を仕込み、メチルエチルケトンを溶媒に用いて還流反応させ、酸価が315mgKOH/gとなったところで反応を終了し、脱溶媒を行った。シクロヘキサンジメタノール150部、及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量640、酸価0.2mgKOH/g、水酸基価184.4mgKOH/gのポリエステルポリオール(CHDMTMATCD)を得た。
【0095】
(合成例5 TCDTMATCD)
撹拌機、窒素ガス導入管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、トリメリット酸無水物100部、トリシクロデカンモノメタノール90部を仕込み、メチルエチルケトンを溶媒に用いて還流反応させ、酸価が315mgKOH/gとなったところで反応を終了し、脱溶媒を行った。トリシクロデカンジメタノール210部、及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量720、酸価1.09mgKOH/g、水酸基価160.5mgKOH/gのポリエステルポリオール(TCDTMATCD)を得た。
【0096】
(比較例1 NDoPA)
撹拌機、窒素ガス導入管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸100部、ノナンジオール127部、及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して30ppm仕込み、精留塔上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量2000、酸価0.12mgKOH/g、水酸基価50.4mgKOH/gのポリエステルポリオール(NDoPA)を得た。
【0097】
(比較例2 NDHH)
撹拌機、窒素ガス導入管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、ヘキサヒドロキシ無水フタル酸100部、ノナンジオール122部、及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して30ppm仕込み、精留塔上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量2000、酸価1.94mgKOH/g、水酸基価62.2mgKOH/gのポリエステルポリオール(NDHH)を得た。
【0098】
(比較例3 CHDMODA)
撹拌機、窒素ガス導入管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、オクタン二酸100部、シクロヘキサンジメタノール97部、及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して30ppm仕込み、精留塔上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量2000、酸価0.91mgKOH/g、水酸基価54.5mgKOH/gのポリエステルポリオール(CHDMODA)を得た。
【0099】
(比較例4 EGOSA)
撹拌機、窒素ガス導入管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、オクテニルコハク酸無水物100部、エチレングリコール45部、及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して30ppm、t-ブチルカテコールを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量600、酸価0.55mgKOH/g、水酸基価190.8mgKOH/gのポリエステルポリオール(EGOSA)を得た。
【0100】
(比較例5 PDTMAOcOH)
撹拌機、窒素ガス導入管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、トリメリット酸無水物100部、オクチルアルコール70部を仕込み、メチルエチルケトンを溶媒に用いて還流反応させ、酸価が315mgKOH/gとなったところで反応を終了し、脱溶媒を行った。1,2ペンタンジオール103部、及びチタニウムテトライソプロポキシドを多価カルボン酸と多価アルコールとの合計量に対して100ppm仕込み、精留塔上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保存した。酸価が5mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量600、酸価0.43mgKOH/g、水酸基価187.4mgKOH/gのポリエステルポリオール(PDTMAOcOH)を得た。
【0101】
(接着剤樹脂)
前記(合成例1)〜(合成例5)のポリエステルポリオールと硬化剤、有機溶剤を混合し、接着剤を得た。構成は、表1に示した。
【0102】
(塗工方法)
前記溶剤型接着剤を、バーコーターを用いて、塗布量5g/m
2(固形分)程度となるように厚さ12μmのPETフィルム(東洋紡績(株)製「E−5102」)のコロナ処理面に塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥し、接着剤が塗布されたPETフィルムの接着剤面と、厚さ15μmのナイロンフィルム(ユニチカ(株)製「エンブレムON−BC」)のコロナ処理面とラミネートし、PETフィルム/接着層/ナイロンフィルムの層構成を有する複合フィルムを作成した。次いで、この複合フィルムを40℃/5日間のエージングを行い、接着剤の硬化を行って、本発明の積層フィルムを得た。
【0103】
(評価方法)
(1)水蒸気透過率(MVTR)
エージングが終了した積層フィルムを、水蒸気透過度試験法 伝導度法「ISO−15106−3」に準じ、Illinois社製測定装置モデル7000を用いて40℃、90%RHの雰囲気下で評価を行った。なおRHとは、湿度を表す。
【0104】
また、接着剤硬化塗膜単体の水蒸気バリア性は水蒸気バリア性積層フィルム、PETフィルムおよびナイロンフィルムの測定結果より、式(a)を用いて計算した。
【0105】
【数3】
【0106】
P :水蒸気バリア性積層フィルムの水蒸気透過率
P1:塗膜単体の水蒸気透過率
P2:12μmPETフィルムの水蒸気透過率(49g/m
2・24時間として計算)
P3:15μmナイロンフィルムの水蒸気透過率(300g/m
2・24時間として計算)
【0107】
(実施例1〜5)
合成例1〜5の樹脂を用いて、硬化剤および溶剤を混合し、接着剤を得た。
塗工方法、評価方法は上記に示した通りである。結果を、表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
比較例1〜5により得られた樹脂組成物を用いた結果を表2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
・タケネートD−110N:タケネートD−110N(三井化学社製:XDI系ポリイソシアネート、不揮発分/約75%)
・AcOET:酢酸エチル
・MEK:メチルエチルケトン