(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761478
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】ラミネート接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20150723BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20150723BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20150723BHJP
C09J 175/10 20060101ALI20150723BHJP
C09J 125/08 20060101ALI20150723BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20150723BHJP
B32B 15/085 20060101ALI20150723BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C09J175/06
C09J175/10
C09J125/08
B32B27/32 C
B32B15/085 A
B32B15/09 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-506033(P2015-506033)
(86)(22)【出願日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】JP2014069011
(87)【国際公開番号】WO2015008822
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2015年2月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-150515(P2013-150515)
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】大原 伸一
(72)【発明者】
【氏名】新居 正光
(72)【発明者】
【氏名】島村 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真也
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 貴司
【審査官】
松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−183829(JP,A)
【文献】
特開2000−154365(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/094341(WO,A1)
【文献】
国際公開第2006/011256(WO,A1)
【文献】
特開2008−111026(JP,A)
【文献】
特開平05−179222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、及びシランカップリング剤(C)を含有するラミネート接着剤組成物であって、
前記シランカップリング剤(C)が、エポキシシラン(c1)とアミノシラン(c2)とを、モル比〔(c1)/(c2)〕が、1/1〜2/1となる割合で反応させて得られるものであることを特徴とするラミネート接着剤組成物。
【請求項2】
アミノシラン(c2)が、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルジエトキシメチルシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリエトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルメチルジメトキシシラン、及びN−ブチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシランからなる群から選択されるものである請求項1記載のラミネート接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリオール(A)がポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールである請求項1又は2に記載のラミネート接着剤組成物。
【請求項4】
更に、リン酸誘導体、又はスチレン−無水マレイン酸系共重合体を含有する請求項1〜3の何れかに記載のラミネート接着剤組成物。
【請求項5】
PETフィルムとCPPとを請求項1又は2記載の接着剤で貼りあわせてなることを特徴とするラミネート物。
【請求項6】
PETフィルムとアルミ箔とCPPとを請求項1又は2記載の接着剤で貼りあわせてなることを特徴とするラミネート物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤組成物およびラミネート方法に関する。更に詳しくは、各種プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、アルミニウム箔等をラミネートして、主として食品、医薬品、洗剤等の包装材料に使用する複合フィルムを製造する際に用いるラミネート用2液混合型接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品容器向けフレキシブルパッケージングは手軽さから増大傾向である。そこで、ラミネート接着剤はあらゆる容器に対応する必要があり、高機能化が求められている。一方で、欧州では、包装材から食品に溶出する化学物質を規制する法律が強化されており、ミネラルオイルコンタミ等の化学物質の食品への溶出による問題等の市民の関心が増大している。現在は、欧州では接着剤に対する法規制はまだ存在していないが、食品と接触することを意図するプラスチック素材及び製品に関する委員会規則〔EU No.10/2011〕で、複合体プラスチックフィルムからの化学物質の溶出が規制されており、接着剤成分からの溶出を抑える必要がある。
【0003】
ラミネート接着剤は、ポリオール/イソシアネートによる硬化が一般的であり、レトルト用途等の高機能用途には多く利用されている。これらの接着剤は、食品の内容物が包装材から確認可能なように、アルミ箔とシーラントの貼り合わせから、透明蒸着フィルムとシーラントの貼り合わせが多くなっている。そのために、これらフィルムとの蒸着フィルムとの密着性を付与するために、接着剤にはエポキシシランやアミノシランシラン等のシランカップリング剤を添加することが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、密着性を保持するためにエポキシシランを増量すれば、エポキシシランの食品への溶出は増大する。さらに、同じ接着剤を蒸着のないフィルムのラミネートに使用するとシランカップリング剤の溶出は蒸着構成の接着剤より多くなり、構成により接着剤を交換する必要がある。
【0004】
一方で、アミノシランはイソシアネートと反応するため食品への溶出は小さいが、接着剤が黄色に着色する傾向がある。そのため、アミノシランとエポキシシランの併用が報告されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、当該技術はアミノシランとエポキシシランを分けて添加するために、ポリオールとイソシアネートするためのエージング時間では十分に反応せず、エポキシシランが溶出しやすい傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61−4864号公報
【特許文献2】特許第4226852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術を鑑みて、ポリオールとイソシアネートからなるフレキブルパッケージ用接着剤において、透明蒸着フィルムの密着性を保持しつつ、食品への化学物質の溶出量を低減する接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討の結果、シランカップリング剤(C)として、エポキシシラン(c1)とアミノシラン(c2)
の反応物を用いると、接着性を維持しつつ、シランカップリング剤(C)の溶出を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリオール、ポリイソシアネート、及び、シランカップリング剤(C)を含有するラミネート接着剤組成物であって、前記シランカップリング剤(C)が
、エポキシシラン(c1)とアミノシラン(c2)とを、モル比〔(c1)/(c2)〕が、1/1〜2/1となる割合で反応させて得られるものであることを特徴とするラミネート接着剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食品容器向けフレキシブルパッケージングの分野において、アルミ及び蒸着フィルムへの密着性を付与しつつ、蒸着層のないフィルムの構成であっても食品への化学物質の溶出のリスクがないラミネート接着剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、以下の項目からなるものである。
1.ポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、及びシランカップリング剤(C)を含有するラミネート接着剤組成物であって、
前記シランカップリング剤(C)が、エポキシシラン(c1)とアミノシラン(c2)とを、モル比〔(c1)/(c2)〕が、1/1〜2/1となる割合で反応させて得られるものであることを特徴とするラミネート接着剤組成物、
2.アミノシラン(c2)が、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルジエトキシメチルシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリエトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルメチルジメトキシシラン、及びN−ブチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシランからなる群から選択されるものである1.記載のラミネート接着剤組成物、
3.前記ポリオール(A)がポリエステルポリオール、又はポリエーテルポリオールである1.又は2.に記載のラミネート接着剤組成物、
4.更に、リン酸誘導体、又はスチレン−無水マレイン酸系共重合体を含有する1.〜3.の何れかに記載のラミネート接着剤組成物、
5.PETフィルムとCPPとを請求項1又は2記載の接着剤で貼りあわせてなることを特徴とするラミネート物、
6.PETフィルムとアルミ箔とCPPとを請求項1又は2記載の接着剤で貼りあわせてなることを特徴とするラミネート物。
【0012】
本発明で用いるポリオール樹脂(A)としては、例えば、後述するポリオール(a1)、或いはポリオール(a1)と後述するポリカルボン酸類とを反応させて得られるポリエステルポリオール、或いは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物類を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマー類を付加重合したポリエーテル類等が挙げられる。
【0013】
前記ポリオール(a1)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等のグリコール類、プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物類を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマー類を付加重合したポリエーテル類等が挙げられる。
【0014】
前記ポリカルボン酸類としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸類が挙げられる。
【0015】
ポリイソシアネート系硬化剤組成物(B)としては、例えば、前記ポリイソシアネート(b)としては、イソシアネート基を分子内に少なくとも2つ有する有機化合物が挙げられる。有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、これらのポリイソシアネートのビュレット体、または、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられる。
【0016】
また、前記イソシアネートと前記ポリオール樹脂(A)とをイソシアネート基が過剰となる混合比で反応したものを用いてもよい。
【0017】
前記ポリオール樹脂(A)の水酸基当量とポリイソシアネート(B)のイソシアネート当量との当量比〔(B)/(A)〕が0.5〜5.0であることが好ましい。
【0018】
本発明で用いるシランカップリング剤(C)は、後述するエポキシシラン(c1)とアミノシラン類(c2)の混合物、又は反応させて得られる反応物である。
【0019】
前記エポキシシラン(c1)としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン系シランカップリング剤;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0020】
前記アミノシラン(c2)類としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−(2−(2−アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、3−(N−エチルアミノ)−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルジエトキシメチルシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリエトキシシラン、N−エチル−3−アミノ−2−メチルプロピルメチルジメトキシシラン、N−ブチル−3−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、3(N−メチル−2−アミノ−1−メチル−1−エトキシ)−プロピルトリメトキシシラン、N−エチル−4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、N−エチル−4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる
。
【0021】
前記エポキシシラン(c1)と前記アミノシラン(c2)の反応比率としては、特に限定はないが、例えば、エポキシシラン(c1)とアミノシラン(c2)のモル比〔(c1)/(c2)〕が、1/1〜
2/1であることが好ましく、とくに、2/1であることが好ましい。
【0022】
前記シランカップリング剤(C)は、ポリオール100質量部あたり、0.1〜2質量部添加することが好ましい。
【0023】
本発明のラミネート接着剤組成物には、更に、リン酸誘導体、又はスチレン−無水マレイン酸系共重合体を添加しることで、更にシランカップリング剤(C)の溶出量を低減できる。
【0024】
前記リン酸誘導体としては、正リン酸、ポリリン酸等が挙げられる。
【0025】
前記スチレン−無水マレイン酸系共重合体としては、例えば下記式(1)で表される。式(1)中、mは好ましくは1〜8であり、nは好ましくは8〜12である。
【0027】
前記スチレン−無水マレイン酸系共重合体は、スチレンと無水マレイン酸とを種々の方法でラジカル共重合することにより得られる。また、市販品を利用することもでき、例としては、サートマー・ジャパン(株)製のSMA3000、SMA1000、SMA2000、EF30、EF40、EF60、EF80等が挙げられる。
【0028】
前記リン酸誘導体、前記スチレン−無水マレイン酸系共重合体は、単独に、或いは、併用して用いることができる。
【0029】
両者を用いる際の配合比率としては、それぞれ独立に、ポリオール100質量部あたり、リン酸誘導体0.1〜1.0質量部、ポリオール100質量部あたり、スチレン−無水マレイン酸系共重合体1.0〜10質量部添加することが好ましい。
【0030】
本発明のラミネート接着剤組成物には、必要に応じて、前記以外のその他の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、フィルムやコーティング膜などを形成する樹脂組成物に一般に使用されている添加剤などが挙げられる。添加剤としては、例えば、レベリング剤;コロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子;ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子;消泡剤;タレ性防止剤;湿潤分散剤;シランカップリング剤;粘性調整剤;紫外線吸収剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;難燃剤;補強剤;可塑剤;潤滑剤;防錆剤;蛍光性増白剤;無機系熱線吸収剤;防炎剤;帯電防止剤;脱水剤;などが挙げられる。
【0031】
本発明のラミネート接着剤組成物は、通常、硬化剤であるポリイソシアネート化合物以外の各成分をあらかじめ配合した主剤プレミックスを調製しておき、これとポリイソシアネート化合物とを混合して調製することが出来る。
【0032】
本発明のラミネート方法は、前記の接着剤組成物を、グラビアコーター、ダイコーター若しくはリップコーターにて基材に塗布し、乾燥後他の基材とを貼り合わせるものである。このダイコーターおよびリップコーターは、ダイまたはリップ部分の両端に付設されたディッケルによって塗工幅を自在に調整することができるものである。揮発性の酸性化合物を使用する場合、酸性化合物が揮発すると接着剤がゲル化するため、常にpHを1〜8、好ましくは3〜7に維持する必要がある。
【0033】
接着剤の塗布量は、約0.5〜6.0g/m
2、好ましくは1.0〜4.0g/m
2である。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明する。尚、例中「部」とあるのは、「質量部」を示す。
【0035】
(製造例1)〔主剤調製例〕
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール 10.0部、ネオペンチルグリコール 21.1部、1,6−ヘキサンジオール 10.0部、ツノダイム216 8.0部、イソフタル酸21.5部、テレフタル酸21.5部、アジピン酸23.4部及びチタン触媒0.006部を仕込み、精留管上部温度が100℃を越えないように徐々に加熱して内温を240℃に保持した。酸価2mgKOH/g以下になるまでさらに反応を続けた。10mmHg以下に減圧し、1.5時間保持してエステル化反応を終了し、水酸基価28の中間体ポリエステルポリオールを得た。得られた中間体ポリエステルポリオールの100部に対し、イソホロンジイソシアネートを8.9部加え120℃に加熱してNCO%が3.1になるまでウレタン化の反応を行ってポリエステルウレタンポリイソシアネートを得た。これを酢酸エチル111.9部で希釈した後に40℃まで温度を下げて、50℃で約1時間保持し、不揮発分60%のポリウレタンポリエステルポリオール樹脂溶液Uを得た。
【0036】
(製造例2)〔添加剤〕
エポキシシラン(c1)は3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製KBM−403)、アミノシラン(c2)は3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製KBM−903)、燐酸は和光純薬工業社製85%リン酸 スチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA)は和光純薬工業社製Mw7,500の試薬を使用した。
【0037】
(製造例3)〔シランカップリング剤(C)反応物〕
エポキシシラン(c1)とアミノシラン(c2)の反応物は、エポキシシラン(c1)とアミノシラン(c2)を、モル比0.5:1、1:1、2:1、3:1、4:1になるようにフラスコに投入し、40℃で7時間反応させ、反応物A、B、C、D、Eを得た。
【0038】
(実施例1)〜(実施例
7)
及び(比較参考例1)
表1に示す組成で、ポリオール樹脂溶液U、芳香族ポリイソシアネート(DIC株式会社製KW−75)、シラン化合物、燐酸、スチレンマレイン酸を配合し、固形分30%の配合物を調製した。得られた配合物について、下記に示す方法でPETフィルムとポリプロピレンフィルムを貼り合せ、溶出試験、ピール強度の測定を行った。得られた結果を表1に示す。本実施例
及び(比較参考例1)で使用した反応物は、前記製造例3で得た反応物A〜Eである。
【0039】
(比較例1)〜(比較例3)
表
2に示す組成の原料を用いた以外は、実施例1と同様にして、配合液を調製し、各種試験を実施した
。
【0040】
〔溶出試験〕
ラミネート物はPETフィルム(東洋紡社製E5100 12μm)とCPP(東レフィルム加工社製;ZK93KM 70μm)を接着剤(固形分は3.5g/m
2)にて張り合わせ、40℃−72時間エージング保存した。溶出試験はEN13130に従って実施した。内容物の接触部分が200cm
2、になるようにパウチを作成し、食品疑似溶液として95%エタノールが100mLを充填した。作成したパウチは60℃−10日間で保存後、100mLを5mLまで濃縮しGC−MSでシラン化合物を定量した。溶出量の単位はEU基準のmg/kg−foodで算出した。シラン化合物の定量下限は0.001mg/kg−foodである。
<測定条件>
GC−MS 島津製作所製 GC2100A
カラム;ポリジメチルシロキサン系
【0041】
〔塗工液の色相〕
塗工液の色相はガードナー比色計で色相を測定した。
【0042】
〔ピール強度〕
ラミネート物はPETフィルム(東洋紡社製E5100 12μm)、アルミ箔(12μm)、CPP(東レフィルム加工社製;ZK93KM 70μm)を接着剤(固形分は3.5g/m
2)にて張り合わせ、40℃−72hrのエージング保存した。その後、内容物の接触部分が200cm
2となるようにパウチを作成し、食品疑似溶液内容物に食用酢:ミートソース:日本酒=1:1:1の溶液を50mL充填した。充填したパウチはスチーム殺菌処理を135℃−30min実施し、内容物を除去したヒートシール部のピール強度を測定した。
<測定条件>
雰囲気温度25℃で引張り試験機を用いて、剥離速度を300mm/分に設定し、T型の剥離方法で測定した際の引張り強度を接着強度とし、接着強度の単位は、N/15mmとする。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
〔結果〕
表1、
2の結果の通り、エポキシシランとアミノシランの反応物を用いた実施例1〜
7は、エポキシシランのみの比較例1に比べ、エポキシシランの溶出量が小さくなった。アミノシランを添加した比較例2はシラン化合物の溶出は確認できなかったが塗工液が着色していた。
また、実施例5〜
7ではリン酸、又はスチレン-無水マレイン酸樹脂を添加することにより、更にエポキシシランの溶出を減ずることができた
。