特許第5761648号(P5761648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761648
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】光電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20150723BHJP
   H01L 31/055 20140101ALI20150723BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
   H01L31/04 622
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-549954(P2012-549954)
(86)(22)【出願日】2011年1月25日
(65)【公表番号】特表2013-518406(P2013-518406A)
(43)【公表日】2013年5月20日
(86)【国際出願番号】KR2011000525
(87)【国際公開番号】WO2011090366
(87)【国際公開日】20110728
【審査請求日】2014年1月14日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0007452
(32)【優先日】2011年1月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2010-0006697
(32)【優先日】2010年1月25日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ジン・コ
【審査官】 池谷 香次郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−515365(JP,A)
【文献】 特表2009−545872(JP,A)
【文献】 特開平07−263722(JP,A)
【文献】 特開2009−206212(JP,A)
【文献】 特開2008−111117(JP,A)
【文献】 特開2008−001828(JP,A)
【文献】 特開2007−070603(JP,A)
【文献】 特開2004−063792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/048 − 31/049
H01L 31/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板;
前面基板;
前記支持基板と前記前面基板との間で光電変換素子をカプセル化しており、また珪素原子に結合されているアリール基を有するシリコーン樹脂を含み、前記シリコーン樹脂に含まれる全体の珪素原子に対する前記アリール基のモル比が0.3を超過する封止材を有する、光電池モジュールであって、
前記シリコーン樹脂は、下記化学式1の平均組成式で表示される、光電池モジュール。
[化学式1]
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)
前記化学式1において、Rは、珪素原子に直接結合している置換基であって、各々独立的に、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基を示し、Rの中で少なくとも一つは、アリール基を示し、Rの中で少なくとも一つは、エポキシ基を示し、aは、0乃至0.6であり、bは、0乃至0.95であり、cは、0乃至0.7であり、dは、0乃至0.4である。但し、a+b+c+dは、1であり、b及びcは同時に0ではなく、
前記シリコーン樹脂は、ヒドロシリル化付加硬化型シリコーン材料から形成される
【請求項2】
前記シリコーン樹脂に含まれる全体の珪素原子に対する珪素原子に結合されたアリール基のモル比が0.5を超過する、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂に含まれる全体の珪素原子に対する珪素原子に結合されたアリール基のモル比が0.7以上である、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂に含まれるアリール基がフェニル基である、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項5】
前記化学式1の平均組成式で表示されるシリコーン樹脂は、下記化学式2または化学式3のシロキサン単位を含む、請求項1に記載の光電池モジュール。
[化学式2]
SiO2/2
[化学式3]
SiO3/2
前記化学式2及び3において、R及びRは、各々独立的にアルキル基またはアリール基を示し、R及びRの中で少なくとも一つは、アリール基であり、Rは、アリール基を示す。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂に含まれる珪素原子に結合されたアリール基が全て化学式2または化学式3のシロキサン単位に含まれる、請求項に記載の光電池モジュール。
【請求項7】
前記化学式2のシロキサン単位が下記化学式4及び化学式5のシロキサン単位から選択される一つ以上である、請求項に記載の光電池モジュール。
[化学式4]
(C)(CH)SiO2/2
[化学式5]
(C)SiO2/2
【請求項8】
前記化学式3のシロキサン単位が下記化学式6のシロキサン単位である、請求項に記載の光電池モジュール。
[化学式6]
(C)SiO3/2
【請求項9】
前記シリコーン樹脂は、重量平均分子量が500乃至100,000である、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項10】
前記封止材が光変換物質を追加で含む、請求項1に記載の光電池モジュール。
【請求項11】
前記光変換物質は、下記化学式21で表示される、請求項10に記載の光電池モジュール。
[化学式21]
Eu
前記化学式21において、wは、0.01乃至0.2であり、xは、2乃至3であり、yは、2乃至3であり、zは、0乃至1である。
【請求項12】
前記封止材は、シリコーン樹脂100重量部に対して、0.1重量部乃至10重量部の光変換物質を含む、請求項10に記載の光電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光電池(Photovoltaic cellまたはsolar cell)は、光を受けると光起電力を発生させる素子の光電変換素子を利用して、光エネルギーを電気エネルギーに転換させることができる電池である。光電池は、光を受けると、端子を通じて電圧を発生させて電子の流れを誘発する。電子の流れの大きさは、電池表面に形成された光電池接合部に対する光の衝突強度に比例する。
【0003】
光電池の種類には、シリコーンウェハ系光電池及び薄膜型光電池などがある。シリコーンウェハ系光電池は、単結晶または多結晶シリコーンインゴット(ingot)を使用して製造した光電変換素子を使用し、薄膜型光電池での光電変換素子は、スパッタリングまたは蒸着などの方式で基板または強誘電体などに沈着させて形成する。
【0004】
光電池は、脆性を有するので、電池を支持する支持部材が要求される。支持部材は、光電変換素子の上部に配置される光透過性前面基板であるか、または、光電変換素子の裏面に配置されるバックシートであってもよい。光電池は、前記のような光透過性前面基板及びバックシートを同時に含むことができる。前面基板またはバックシートは、通常的にガラスのような剛性材料、金属フィルムまたはシートのような可撓性材料、またはポリイミドのような高分子系列の可塑性材料からなる。
【0005】
通常、バックシートは、光電池の裏面を保護するための強直性バックスキン形態である。このようなバックシートに適用できる多様な材料は公知であり、例えば、ガラスのような強誘電体、ETFE(ethylene tetrafluoroethylene)のような有機フッ素系重合体またはPET(Polyethyleneterephthalate)のようなポリエステル系素材などがある。前記材料は、単独に適用するか、SiOxのような素材で被覆された状態で適用してもよい。
【0006】
光電池は、光電変換素子または電気的に相互連結されている光電変換素子、すなわち光電変換素子のアレイを含む。光電変換素子または光電変換素子のアレイは封止材(Encapsulation material)によりカプセル化される。封止材は、外部環境から素子を保護し、カプセル化して一体型モジュールを形成するために使われる。
【0007】
汎用されている封止材は、EVA(ethylene vinyl acetate)系素子である。しかし、EVA系素子は、モジュール内で他の部品との接着性が低下するので、長期間使えば、層間剥離が誘発しやすく、効率低下や水分浸透による腐食などを誘発する。また、EVA系素子は、紫外線に対する低い耐性により、脱色または変色を誘発し、モジュール効率を低下させる。また、EVA系素子は、硬化過程で応力を発生させて素子の損傷を誘発する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、前記のような従来の諸問題点を解消するために提案されたものであって、本発明の目的は、光電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、支持基板と、前面基板と、前記支持基板と前面基板との間で光電変換素子をカプセル化しており、珪素原子に結合されているアリール基を有するシリコーン樹脂を含み、前記シリコーン樹脂に含まれる全体の珪素原子(Si)に対する前記アリール基(Ar)のモル比(Ar/Si)が0.3を超過する封止材(Encapsulation material)と、を有する光電池モジュールに関する。
【0010】
以下、本発明の光電池モジュールについて具体的に説明する。
【0011】
本発明の光電池は、前面基板と裏面基板とを含み、また、前記前面基板と裏面基板との間で封止材によりカプセル化されている光電変換素子を含む。前記封止材は、シリコーン樹脂、具体的には珪素原子に結合しているアリール基を含むシリコーン樹脂を含む。本発明において、光電変換素子をカプセル化している封止材が2層以上の多層で構成される場合、前記複数の層の中で一つ以上、好ましくは、全ての層が前記のようなシリコーン樹脂を含むことができる。
【0012】
本発明において、光電変換素子には、光を電気信号に転換させることができる全ての素子が含まれ、その例としては、バルク型または薄膜型シリコーン系光電変換素子及び化合物半導体系光電変換素子などがある。
【0013】
本発明において、封止材に含まれるシリコーン樹脂は、モジュールに含まれて封止材と接触する多様な部品及び素材に対して優れた接着性を示し、耐湿性、耐候性及び耐光性などに優れる。
【0014】
本発明では、アリール基、具体的には珪素原子に結合されているアリール基を含むシリコーン樹脂を使用することで、耐湿性、耐候性、接着特性などに優れて、且つ光電変換素子への光伝達効率に優れた封止材を形成することができる。珪素原子に結合されるアリール基の具体的な種類は特別に制限されないが、好ましくは、フェニル基である。
【0015】
本発明のシリコーン樹脂では、前記シリコーン樹脂の全体の珪素原子(Si)に対する前記珪素原子に結合されているアリール基(Ar)のモル比(Ar/Si)は0.3を超過し、好ましくは、0.5を超過し、より好ましくは、0.7以上である。前記モル比(Ar/Si)が0.3を超過するようにすることで、封止材の耐湿性、耐候性及び硬度などを優秀に維持し、光電池モジュールの発電効率を高めることができる。本発明では、前記モル比(Ar/Si)の上限は制限されず、例えば、1.5以下または1.2以下である。
【0016】
一例として、前記シリコーン樹脂は、下記化学式1の平均組成式で表示することができる。
【0017】
[化学式1]
(RSiO1/2)(RSiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)
【0018】
前記化学式1において、Rは、珪素原子に直接結合している置換基であって、各々独立的に、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基を示し、Rの中で少なくとも一つは、アリール基を示し、aは、0乃至0.6であり、bは、0乃至0.95であり、cは、0乃至0.8であり、dは、0乃至0.4である。但し、a+b+c+dは、1であり、b及びcは同時に0ではない。
【0019】
本発明において、シリコーン樹脂が特定の平均組成式で表示される場合は、単一のシリコーン樹脂が特定平均組成式で表示される場合だけではなく、多数の樹脂成分が存在するが、各樹脂成分の組成の平均を取ると、特定の平均組成式で表示される場合も含む。
【0020】
前記化学式1において、Rは、珪素原子に直接結合されている置換基であり、各々のRは互いに同一であるかまたは相異なっていることがあり、独立的に、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基を示し、必要によって、一つまたは二つ以上の置換基により置換されている。
【0021】
前記化学式1において、アルコキシは、炭素数1乃至12、好ましくは、1乃至8、より好ましくは、1乃至4の直鎖状、分枝状または環状アルコキシであり、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、またはtert−ブトキシなどを含む。
【0022】
また、前記1価炭化水素基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基またはアリール基である。
【0023】
前記アルキル基は、炭素数1乃至12、好ましくは、1乃至8、より好ましくは、1乃至4の直鎖状、分枝状または環状アルキル基であり、好ましくは、メチル基である。
【0024】
また、前記アルケニル基は、炭素数2乃至12、好ましくは、2乃至8、より好ましくは、2乃至4のアルケニル基であり、好ましくは、ビニル基である。
【0025】
また、前記アリール基は、炭素数6乃至18、好ましくは、炭素数6乃至12のアリール基であり、好ましくは、フェニル基である。
【0026】
また、前記アリールアルキル基は、炭素数6乃至19、好ましくは、炭素数6乃至13のアリールアルキル基であり、例えば、ベンジル基である。
【0027】
前記化学式1において、Rのうち少なくとも一つは、アリール基、好ましくは、フェニル基であり、前記置換基は、上述のモル比(Ar/Si)を満足するようにシリコーン樹脂内に含まれる。
【0028】
また、前記化学式1において、Rのうち少なくとも一つは、好ましくは、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基またはビニル基であり、より好ましくは、エポキシ基である。このような官能基は、封止材の接着特性などを一層向上させることができる。
【0029】
前記化学式1において、a、b、c及びdは、各シロキサン単位のモル分率を示し、その合計は1である。また、前記化学式1において、aは、0乃至0.6、好ましくは、0乃至0.5であり、bは、0乃至0.95、好ましくは、0乃至0.8であり、cは、0乃至0.8、好ましくは、0乃至0.7であり、dは、0乃至0.4、好ましくは、0乃至0.2である。但し、b及びcは同時に0ではない。
【0030】
本発明の前記シリコーン樹脂は、下記化学式2及び3で表示されるシロキサン単位からなる群より選択された一つ以上の物質を含む。
【0031】
[化学式2]
SiO2/2
【0032】
[化学式3]
SiO3/2
【0033】
前記化学式2及び3において、R及びRは、各々独立的にアルキル基またはアリール基を示し、R及びRのうち少なくとも一つは、アリール基であり、Rは、アリール基を示す。
【0034】
前記化学式2のシロキサン単位は、少なくとも一つの珪素原子に結合されたアリール基を含むシロキサン単位であり、前記アリール基は、好ましくは、フェニル基である。また、前記化学式2のシロキサン単位に含まれるアルキル基は、好ましくは、メチル基である。
【0035】
本発明では、前記化学式2のシロキサン単位は、好ましくは、下記化学式4及び化学式5のシロキサン単位からなる群より選択される一つ以上の物質である。
【0036】
[化学式4]
(C)(CH)SiO2/2
【0037】
[化学式5]
(C)SiO2/2
【0038】
また、前記化学式3は、珪素原子に結合されているアリール基を含む3官能性のシロキサン単位であり、好ましくは、下記化学式6で表示されるシロキサン単位である。
【0039】
[化学式6]
(C)SiO3/2
【0040】
本発明のシリコーン樹脂において、好ましくは、前記樹脂に含まれる全ての珪素原子に結合されたアリール基が前記化学式2または化学式3のシロキサン単位に含まれており、この場合、前記化学式2の単位は、化学式4または化学式5の単位であり、前記化学式3の単位は、前記化学式6の単位である。
【0041】
本発明において、前記シリコーン樹脂は、分子量が500乃至100,000、好ましくは、1,000乃至100,000である。樹脂分子量を前記のように調節することで、封止材が優れた硬度を有し、工程性も優秀に維持される。本発明で、特定しない限り、用語「分子量」は、重量平均分子量(Mw:Weight Average Molecular Weight)を示す。また、前記重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定された標準ポリスチレンに対する換算数値である。
【0042】
本発明の一つの例示において、前記シリコーン樹脂は、下記化学式7乃至20で表示されるシリコーン樹脂の中でいずれの一つの樹脂であるが、これに制限されるものではない。
【0043】
[化学式7]
(ViMeSiO1/2)(MePhSiO2/2)30
【0044】
[化学式8]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO2/2)10(MeSiO2/2)10
【0045】
[化学式9]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO2/2)15(MeSiO2/2)15(MeEpSiO2/2)
【0046】
[化学式10]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO3/2)10
【0047】
[化学式11]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO3/2)10(MeSiO3/2)
【0048】
[化学式12]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO3/2)10(MeEpSiO2/2)
【0049】
[化学式13]
(HMeSiO1/2)(PhSiO3/2)10
【0050】
[化学式14]
(ViMeSiO1/2)(EpSiO3/2)(MePhSiO2/2)20
【0051】
[化学式15]
(HMeSiO1/2)(PhSiO3/2)10(MeEpSiO2/2)
【0052】
[化学式16]
(HMeSiO1/2)(PhSiO2/2)1.5
【0053】
[化学式17]
(PhSiO3/2)10(MePhSiO2/2)10(MeSiO2/2)10
【0054】
[化学式18]
(PhSiO3/2)(EpMeSiO2/2)(MeSiO2/2)10
【0055】
[化学式19]
(PhSiO3/2)(AcSiO3/2)(MePhSiO2/2)10
【0056】
[化学式20]
(PhSiO3/2)10(AcSiO3/2)(ViMeSiO1/2)
【0057】
前記化学式7乃至20において、Meは、メチル基を示し、Phはフェニル基を示し、Acは、アクリロイル基を示し、Epは、エポキシ基を示す。
【0058】
前記シリコーン樹脂は、この分野で公知である多様な方式で製造することができる。例えば、前記樹脂は、付加硬化型シリコーン系材料、縮合または重縮合硬化型シリコーン系材料、紫外線硬化型シリコーン系材料または過酸化物加硫型シリコーン系材料などを使用して製造することができ、好ましくは、付加硬化型シリコーン系材料、縮合または重縮合硬化型シリコーン系材料または紫外線硬化型シリコーン系材料を使用して製造することができる。
【0059】
付加硬化型シリコーン系材料は、水素珪素化反応(hydro silylation)を通じて硬化する材料である。この材料は、珪素原子に直接結合されている水素原子を有する有機珪素化合物及びビニル基のような脂肪族不飽和基を有する有機珪素化合物を少なくとも含み、前記化合物は、触媒の存在下で互いに反応して硬化される。触媒の例としては、周期律表第8族の金属や、前記金属をアルミナ、シリカまたはカーボンブラックなどの担体に担持させた触媒または前記金属の塩や錯体などが含まれる。前記周期律表第8族の金属としては、白金、ロジウムまたはルテニウムなどを使用することができ、好ましくは、白金を使用することができる。
【0060】
縮合または重縮合硬化型シリコーン系材料を使用する方式は、ハロゲン原子やアルコキシ基などのような加水分解性官能基を有するシランやシロキサンなどの珪素化合物またはその加水分解物の加水分解及び縮合反応を通じてシリコーン樹脂を製造する方式である。このような方式で使用できる単位化合物としては、RSi(OR)、RSi(OR)、RSi(OR)及びSi(OR)などのシラン化合物を例示することができる。前記化合物において、(OR)は、炭素数1乃至8の直鎖状または分枝状アルコキシ基を示し、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシまたはt−ブトキシなどである。また、前記化合物において、Rは、珪素原子に結合されている官能基であり、これは目的のシリコーン樹脂に含まれる置換基を考慮して選択することができる。
【0061】
紫外線硬化型シリコーン系材料を使用する方式は、アクリロイル基などのような紫外線反応基を有するシラン、またはシロキサンなどの珪素化合物、またはその加水分解物を加水分解及び縮合反応に適用して樹脂を製造し、さらに紫外線照射により反応させて目的の樹脂を製造する方式である。
【0062】
この分野では、前記のような付加硬化型、縮合または重縮合硬化型または紫外線硬化型シリコーン系材料が多様に公知とされており、この分野の通常の知識を有した技術者は、目的とするシリコーン樹脂によって前記公知の材料を容易に採用して、目的の樹脂を製造することができる。
【0063】
本発明の封止材は、前記シリコーン樹脂とともに光変換物質を追加で含むことができる。本発明において、前記光変換物質は、入射光のうち紫外線領域の光を吸収し、吸収された光を可視光線領域または近赤外線領域に変換させて放出することができる物質であり、このような物質を含むことで、光電池モジュールの発電効率を極大化することができる。特に、本発明の封止材において、シリコーン樹脂は、紫外線領域の光を吸収しないので、光変換物質を使用する効果を極大化することができる。
【0064】
本発明で使用することができる光変換物質の種類は、紫外線領域の光を吸収して可視光線または近赤外線領域の光を放出することができる物質であれば、特別に制限されない。
【0065】
本発明の一例において、前記光変換物質は、下記化学式21で表示される物質である。
【0066】
[化学式21]
Eu
【0067】
前記化学式21において、wは、0.01乃至0.2であり、xは、2乃至3であり、yは、2乃至3であり、zは、0乃至1である。
【0068】
本発明の封止材において、前記光変換物質は、前記シリコーン樹脂100重量部に対して、0.1重量部乃至10重量部、好ましくは、0.1重量部乃至5重量部、より好ましくは、0.2重量部乃至5重量部で含まれる。光変換物質の含量をこのように調節することで、散乱による光効率の低下を防止しながら光変換効果を極大化することができる。本明細書において用語「重量部」は、特定しない限り、重量の割合を意味する。
【0069】
本発明の封止材は、前記シリコーン樹脂と光変換物質の以外にもフィラーなどのような任意の公知成分を追加で含むことができる。
【0070】
本発明の光電池モジュールは、多様な形態で構成することができる。
【0071】
図1及び図2は、本発明の例示的な光電池モジュールを模式的に示す図である。
【0072】
図1は、本発明の一例として、光電変換素子としてウェハ系素子を含むモジュール1を示す。図1の光電池モジュールは、一般的にガラスのような強誘電体である前面基板11と、テドラー(TEDLAR)やPET/SiOx−PET/Al系積層シートであるバックシート14と、前記シリコーンウェハ系の光電変換素子13と、前記素子13をカプセル化している封止材12a、12bを含む。前記封止材は、素子13をカプセル化しながら前面基板11に付着される第1の封止材層12aと、素子13をカプセル化しながら支持基板であるバックシート14に付着される第2の封止材層12bと、を含む。前記第1または第2の封止材層12a、12bの中でいずれか一つの封止材層が上述の特徴的な成分を含むことができ、好ましくは、前記第1及び第2の封止材層12a、12bは両方とも特徴的な成分を含むことができる。
【0073】
図2は、他の例示による薄膜型光電池モジュール2の模式図である。図2に示したように、薄膜型光電池モジュール2において、光電変換素子23は、前面基板21に蒸着などの方式で形成される。
【0074】
本発明で、前記のような多様な光電池モジュールを製造する方法は特別に制限されず、この分野で公知である多様な方法を適切に採用することができる。
【0075】
例えば、前記封止材を形成する各成分を使用してシート状封止材を製造し、これをラミネーション方式に適用してモジュールを製造することができる。例えば、目的とするモジュールの構造によって前面基板、光電変換素子、バックシート及びシート状封止材を積層して加熱圧着する方式でモジュールを製造する。
【0076】
他の方式では、前記光電池モジュールは、光変換物質を含む液状のシリコーン樹脂組成物を光電変換素子の周りにコーティングし、硬化させて封止材を形成する方式で製造してもよい。この場合、前記シリコーン樹脂組成物は、上述の化学式1の平均組成式で表示されるシリコーン樹脂や、あるいはその樹脂を形成することができる付加硬化型、縮合または重縮合硬化型または紫外線硬化型シリコーン材料である。
【発明の効果】
【0077】
本発明の光電池に含まれる封止材は、耐湿性、耐候性及び耐光性が優秀であり、光電池内の他の部品との接着性が優れる。また、前記封止材は、入射光を光電変換素子に効果的に伝達することができ、前記素子に適合する波長の光に転換させることができる。これによって、本発明では耐久性及び発電効率が優れた光電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】例示的な光電池モジュールを示す図である。
図2】例示的な光電池モジュールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、本発明による実施例及び本発明によらない比較例を通じて本発明をより詳しく説明するが、本発明の範囲は、下記提示された実施例により限定されるものではない。
【0080】
以下、実施例及び比較例において、Viは、ビニル基を示し、Meは、メチル基を示し、Phは、フェニル基を示し、Epは、エポキシ基を示す。
【0081】
(第1の実施例)
<封止材用組成物(A)の製造>
公知の方式で合成したオルガノシロキサン化合物として、各々下記の化学式A、B、C及びDで表示される化合物を混合して、ヒドロシリル化反応により硬化できるシロキサン組成物を製造した(配合量:化合物A:100g、化合物B:10g、化合物C:200g、化合物D:60g)。次に、前記組成物に触媒(プラチナ(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane))(Pt(0)含量が20ppmになる量)を配合し、均一に混合して封止材用組成物(A)を製造した。
【0082】
[化学式A]
(ViMeSiO1/2)(PhSiO2/2)10(MeSiO2/2)10
【0083】
[化学式B]
(ViMeSiO1/2)(EpSiO3/2)(MePhSiO2/2)15
【0084】
[化学式C]
(ViMeSiO1/2)(MePhSiO2/2)(PhSiO3/2)
【0085】
[化学式D]
(HMeSiO1/2)(PhSiO2/2)1.5
【0086】
<光電池モジュールの製造>
製造された封止材用組成物(A)を光電池モジュール用ガラス基板に塗布し、100℃で1時間硬化させた。その後、硬化された組成物上に光電変換素子を位置させて、その上に封止材用組成物(A)を更に塗布した後、塗布された組成物(A)を150℃で1時間硬化させて、バックシートを熱圧着させて光電池モジュールを製造した。
【0087】
(第1の比較例)
<封止材用組成物(B)の製造>
公知の方式で合成したオルガノシロキサン化合物として、各々下記の化学式E乃至Gで表示される化合物を混合して、ヒドロシリル化反応により硬化できるシロキサン組成物を製造した(配合量:化合物E:100g、化合物F:20g、化合物G:50g)。次に、シロキサン組成物に触媒(プラチナ(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane))(Pt(0)の含量が10ppmになる量)を配合し、均一に混合して樹脂組成物(B)を製造した。
【0088】
[化学式E]
(ViMeSiO1/2)(ViMeSiO2/2)15(MeSiO3/2)(MeSiO2/2)50
【0089】
[化学式F]
(ViMeSiO1/2)(MeSiO3/2)
【0090】
[化学式G]
(HMeSiO1/2)(HMeSiO2/2)(MeSiO2/2)10
【0091】
<光電池モジュールの製造>
製造された封止材用組成物(B)を第1の実施例で使用したものと同一な光電池モジュール用ガラス基板に塗布し、100℃で1時間硬化させた。その後、硬化された組成物上に第1の実施例と同一な光電変換素子を位置させて、その上に封止材用組成物(B)を塗布した後、塗布された組成物(B)を150℃で1時間硬化させて、第1の実施例と同一なバックシートを熱圧着させて光電池モジュールを製造した。
【0092】
(第2の比較例)
<封止材用組成物(C)の製造>
公知の方式で合成したオルガノシロキサン化合物として、各々下記の化学式H乃至Jで表示される化合物を混合し、ヒドロシリル化反応により硬化できるシロキサン組成物を製造した(配合量:化合物H:100g、化合物I:20g、化合物J:50g)。次に、前記組成物にPt(0)含量が20ppmになるように触媒(プラチナ(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(Platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyldisiloxane)を合成して、均一に混合して樹脂組成物(C)を製造した。
【0093】
[化学式H]
(ViPhSiO1/2)(MeSiO2/2)20
【0094】
[化学式I]
(ViPhSiO1/2)(MeSiO3/2)10
【0095】
[化学式J]
(HMeSiO1/2)(HMeSiO2/2)(MeSiO2/2)10
【0096】
<光電池モジュールの製造>
製造された封止材用組成物(C)を第1の実施例で使用したものと同一な光電池モジュール用ガラス基板に塗布し、100℃で1時間硬化させた。その後、硬化された組成物上に第1の実施例と同一な光電変換素子を位置させて、その上に封止材用組成物(C)を塗布した後、塗布された組成物(C)を150℃で1時間硬化させて、第1の実施例と同一なバックシートを熱圧着させて光電池モジュールを製造した。
【0097】
(第3の比較例)
第1の実施例で製造された封止材用組成物(A)を使わないで、光電池用封止材で汎用されているEVA系の封止材用シートを使用して光電変換素子を封止したこと以外は、第1の実施例と同一な方式で光電池モジュールを製造した。
【0098】
1.光電池モジュールの電力評価
実施例及び比較例で製造された光電池モジュールの効率をサムシミュレーター(sum simulator)を使用して評価した。具体的には、製造されたモジュールのガラス基板側に約1kWの光源を同一時間の間の照射し、光電池モジュールの電力発生量を測定した。前記測定された結果は、下記表1に整理して記載した。
【0099】
【表1】
【0100】
2.水分透過性、耐久信頼性及び黄変抑制効果
(1) 水分透過性の測定
第1の実施例の組成物(A)、第1の比較例の組成物(B)及び第2の比較例の組成物(C)を150℃で1時間硬化させて厚さが1mmである板状試片を製造し、また、第3の比較例で使用したEVA系の封止材用シートを使用して厚さが1mmである板状試片を製造した後、各々の試片に対して水分透過性を測定した。具体的には、製造された試片の厚さ方向に対して、モコン装置を利用して同一な条件で水分透過性を測定して、その結果を下記表2に記載した。
【0101】
(2) 高温高湿条件下での信頼性測定
ガラス基板上に第1の実施例の組成物(A)、第1の比較例の組成物(B)及び第2の比較例の組成物(C)を同一厚さでコーティングして硬化させた後、85℃の温度及び85%の相対湿度で500時間放置した。その後、剥離試験(peel test)を通じて前記組成物の硬化物のガラス基板に対する剥離力を評価して、その数値を下記基準によって評価して高温及び高湿条件下での信頼性を評価した。
【0102】
<評価基準>
○:ガラス基板に対する剥離力が15gf/mm以上の場合
×:ガラス基板に対する剥離力が15gf/mm未満の場合
【0103】
(3) 黄変発生程度の測定
水分透過度測定に使用した各試片に対してQ−UVA(340nm、0.89W/Cm2)装置を用いて60℃で3日間光を照射して、黄変発生有無を下記基準によって評価してその結果を記載した。
【0104】
<評価基準>
○:450nmの波長の光に対する吸収率が5%未満の場合
×:450nmの波長の光に対する吸収率が5%以上の場合
【0105】
【表2】
【符号の説明】
【0106】
1:ウェハ系光電池モジュール
2;薄膜型光電池モジュール
11、21:前面基板
12a、12b、22:封止材層
13、23:光電変換素子
14、24:バックシート
図1
図2