【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、支持基板と、前面基板と、前記支持基板と前面基板との間で光電変換素子をカプセル化しており、珪素原子に結合されているアリール基を有するシリコーン樹脂を含み、前記シリコーン樹脂に含まれる全体の珪素原子(Si)に対する前記アリール基(Ar)のモル比(Ar/Si)が0.3を超過する封止材(Encapsulation material)と、を有する光電池モジュールに関する。
【0010】
以下、本発明の光電池モジュールについて具体的に説明する。
【0011】
本発明の光電池は、前面基板と裏面基板とを含み、また、前記前面基板と裏面基板との間で封止材によりカプセル化されている光電変換素子を含む。前記封止材は、シリコーン樹脂、具体的には珪素原子に結合しているアリール基を含むシリコーン樹脂を含む。本発明において、光電変換素子をカプセル化している封止材が2層以上の多層で構成される場合、前記複数の層の中で一つ以上、好ましくは、全ての層が前記のようなシリコーン樹脂を含むことができる。
【0012】
本発明において、光電変換素子には、光を電気信号に転換させることができる全ての素子が含まれ、その例としては、バルク型または薄膜型シリコーン系光電変換素子及び化合物半導体系光電変換素子などがある。
【0013】
本発明において、封止材に含まれるシリコーン樹脂は、モジュールに含まれて封止材と接触する多様な部品及び素材に対して優れた接着性を示し、耐湿性、耐候性及び耐光性などに優れる。
【0014】
本発明では、アリール基、具体的には珪素原子に結合されているアリール基を含むシリコーン樹脂を使用することで、耐湿性、耐候性、接着特性などに優れて、且つ光電変換素子への光伝達効率に優れた封止材を形成することができる。珪素原子に結合されるアリール基の具体的な種類は特別に制限されないが、好ましくは、フェニル基である。
【0015】
本発明のシリコーン樹脂では、前記シリコーン樹脂の全体の珪素原子(Si)に対する前記珪素原子に結合されているアリール基(Ar)のモル比(Ar/Si)は0.3を超過し、好ましくは、0.5を超過し、より好ましくは、0.7以上である。前記モル比(Ar/Si)が0.3を超過するようにすることで、封止材の耐湿性、耐候性及び硬度などを優秀に維持し、光電池モジュールの発電効率を高めることができる。本発明では、前記モル比(Ar/Si)の上限は制限されず、例えば、1.5以下または1.2以下である。
【0016】
一例として、前記シリコーン樹脂は、下記化学式1の平均組成式で表示することができる。
【0017】
[化学式1]
(R
3SiO
1/2)
a(R
2SiO
2/2)
b(RSiO
3/2)
c(SiO
4/2)
d
【0018】
前記化学式1において、Rは、珪素原子に直接結合している置換基であって、各々独立的に、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基を示し、Rの中で少なくとも一つは、アリール基を示し、aは、0乃至0.6であり、bは、0乃至0.95であり、cは、0乃至0.8であり、dは、0乃至0.4である。但し、a+b+c+dは、1であり、b及びcは同時に0ではない。
【0019】
本発明において、シリコーン樹脂が特定の平均組成式で表示される場合は、単一のシリコーン樹脂が特定平均組成式で表示される場合だけではなく、多数の樹脂成分が存在するが、各樹脂成分の組成の平均を取ると、特定の平均組成式で表示される場合も含む。
【0020】
前記化学式1において、Rは、珪素原子に直接結合されている置換基であり、各々のRは互いに同一であるかまたは相異なっていることがあり、独立的に、水素、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、アルコキシ基または1価炭化水素基を示し、必要によって、一つまたは二つ以上の置換基により置換されている。
【0021】
前記化学式1において、アルコキシは、炭素数1乃至12、好ましくは、1乃至8、より好ましくは、1乃至4の直鎖状、分枝状または環状アルコキシであり、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、またはtert−ブトキシなどを含む。
【0022】
また、前記1価炭化水素基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはアリールアルキル基が挙げられ、好ましくは、アルキル基、アルケニル基またはアリール基である。
【0023】
前記アルキル基は、炭素数1乃至12、好ましくは、1乃至8、より好ましくは、1乃至4の直鎖状、分枝状または環状アルキル基であり、好ましくは、メチル基である。
【0024】
また、前記アルケニル基は、炭素数2乃至12、好ましくは、2乃至8、より好ましくは、2乃至4のアルケニル基であり、好ましくは、ビニル基である。
【0025】
また、前記アリール基は、炭素数6乃至18、好ましくは、炭素数6乃至12のアリール基であり、好ましくは、フェニル基である。
【0026】
また、前記アリールアルキル基は、炭素数6乃至19、好ましくは、炭素数6乃至13のアリールアルキル基であり、例えば、ベンジル基である。
【0027】
前記化学式1において、Rのうち少なくとも一つは、アリール基、好ましくは、フェニル基であり、前記置換基は、上述のモル比(Ar/Si)を満足するようにシリコーン樹脂内に含まれる。
【0028】
また、前記化学式1において、Rのうち少なくとも一つは、好ましくは、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリロイル基、メタクリロイル基またはビニル基であり、より好ましくは、エポキシ基である。このような官能基は、封止材の接着特性などを一層向上させることができる。
【0029】
前記化学式1において、a、b、c及びdは、各シロキサン単位のモル分率を示し、その合計は1である。また、前記化学式1において、aは、0乃至0.6、好ましくは、0乃至0.5であり、bは、0乃至0.95、好ましくは、0乃至0.8であり、cは、0乃至0.8、好ましくは、0乃至0.7であり、dは、0乃至0.4、好ましくは、0乃至0.2である。但し、b及びcは同時に0ではない。
【0030】
本発明の前記シリコーン樹脂は、下記化学式2及び3で表示されるシロキサン単位からなる群より選択された一つ以上の物質を含む。
【0031】
[化学式2]
R
1R
2SiO
2/2
【0032】
[化学式3]
R
3SiO
3/2
【0033】
前記化学式2及び3において、R
1及びR
2は、各々独立的にアルキル基またはアリール基を示し、R
1及びR
2のうち少なくとも一つは、アリール基であり、R
3は、アリール基を示す。
【0034】
前記化学式2のシロキサン単位は、少なくとも一つの珪素原子に結合されたアリール基を含むシロキサン単位であり、前記アリール基は、好ましくは、フェニル基である。また、前記化学式2のシロキサン単位に含まれるアルキル基は、好ましくは、メチル基である。
【0035】
本発明では、前記化学式2のシロキサン単位は、好ましくは、下記化学式4及び化学式5のシロキサン単位からなる群より選択される一つ以上の物質である。
【0036】
[化学式4]
(C
6H
5)(CH
3)SiO
2/2
【0037】
[化学式5]
(C
6H
5)
2SiO
2/2
【0038】
また、前記化学式3は、珪素原子に結合されているアリール基を含む3官能性のシロキサン単位であり、好ましくは、下記化学式6で表示されるシロキサン単位である。
【0039】
[化学式6]
(C
6H
5)SiO
3/2
【0040】
本発明のシリコーン樹脂において、好ましくは、前記樹脂に含まれる全ての珪素原子に結合されたアリール基が前記化学式2または化学式3のシロキサン単位に含まれており、この場合、前記化学式2の単位は、化学式4または化学式5の単位であり、前記化学式3の単位は、前記化学式6の単位である。
【0041】
本発明において、前記シリコーン樹脂は、分子量が500乃至100,000、好ましくは、1,000乃至100,000である。樹脂分子量を前記のように調節することで、封止材が優れた硬度を有し、工程性も優秀に維持される。本発明で、特定しない限り、用語「分子量」は、重量平均分子量(Mw:Weight Average Molecular Weight)を示す。また、前記重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定された標準ポリスチレンに対する換算数値である。
【0042】
本発明の一つの例示において、前記シリコーン樹脂は、下記化学式7乃至20で表示されるシリコーン樹脂の中でいずれの一つの樹脂であるが、これに制限されるものではない。
【0043】
[化学式7]
(ViMe
2SiO
1/2)
2(MePhSiO
2/2)
30
【0044】
[化学式8]
(ViMe
2SiO
1/2)
2(Ph
2SiO
2/2)
10(Me
2SiO
2/2)
10
【0045】
[化学式9]
(ViMe
2SiO
1/2)
2(Ph
2SiO
2/2)
15(Me
2SiO
2/2)
15(MeEpSiO
2/2)
5
【0046】
[化学式10]
(ViMe
2SiO
1/2)
3(PhSiO
3/2)
10
【0047】
[化学式11]
(ViMe
2SiO
1/2)
3(PhSiO
3/2)
10(MeSiO
3/2)
2
【0048】
[化学式12]
(ViMe
2SiO
1/2)
3(PhSiO
3/2)
10(MeEpSiO
2/2)
5
【0049】
[化学式13]
(HMe
2SiO
1/2)
3(PhSiO
3/2)
10
【0050】
[化学式14]
(ViMe
2SiO
1/2)
2(EpSiO
3/2)
3(MePhSiO
2/2)
20
【0051】
[化学式15]
(HMe
2SiO
1/2)
3(PhSiO
3/2)
10(MeEpSiO
2/2)
5
【0052】
[化学式16]
(HMe
2SiO
1/2)
2(Ph
2SiO
2/2)
1.5
【0053】
[化学式17]
(PhSiO
3/2)
10(MePhSiO
2/2)
10(Me
2SiO
2/2)
10
【0054】
[化学式18]
(PhSiO
3/2)
5(EpMeSiO
2/2)
2(Me
2SiO
2/2)
10
【0055】
[化学式19]
(PhSiO
3/2)
5(AcSiO
3/2)
5(MePhSiO
2/2)
10
【0056】
[化学式20]
(PhSiO
3/2)
10(AcSiO
3/2)
5(ViMe
2SiO
1/2)
5
【0057】
前記化学式7乃至20において、Meは、メチル基を示し、Phはフェニル基を示し、Acは、アクリロイル基を示し、Epは、エポキシ基を示す。
【0058】
前記シリコーン樹脂は、この分野で公知である多様な方式で製造することができる。例えば、前記樹脂は、付加硬化型シリコーン系材料、縮合または重縮合硬化型シリコーン系材料、紫外線硬化型シリコーン系材料または過酸化物加硫型シリコーン系材料などを使用して製造することができ、好ましくは、付加硬化型シリコーン系材料、縮合または重縮合硬化型シリコーン系材料または紫外線硬化型シリコーン系材料を使用して製造することができる。
【0059】
付加硬化型シリコーン系材料は、水素珪素化反応(hydro silylation)を通じて硬化する材料である。この材料は、珪素原子に直接結合されている水素原子を有する有機珪素化合物及びビニル基のような脂肪族不飽和基を有する有機珪素化合物を少なくとも含み、前記化合物は、触媒の存在下で互いに反応して硬化される。触媒の例としては、周期律表第8族の金属や、前記金属をアルミナ、シリカまたはカーボンブラックなどの担体に担持させた触媒または前記金属の塩や錯体などが含まれる。前記周期律表第8族の金属としては、白金、ロジウムまたはルテニウムなどを使用することができ、好ましくは、白金を使用することができる。
【0060】
縮合または重縮合硬化型シリコーン系材料を使用する方式は、ハロゲン原子やアルコキシ基などのような加水分解性官能基を有するシランやシロキサンなどの珪素化合物またはその加水分解物の加水分解及び縮合反応を通じてシリコーン樹脂を製造する方式である。このような方式で使用できる単位化合物としては、R
a3Si(OR
b)、R
a2Si(OR
b)
2、R
aSi(OR
b)
3及びSi(OR
b)
4などのシラン化合物を例示することができる。前記化合物において、(OR
b)は、炭素数1乃至8の直鎖状または分枝状アルコキシ基を示し、具体的には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシまたはt−ブトキシなどである。また、前記化合物において、R
aは、珪素原子に結合されている官能基であり、これは目的のシリコーン樹脂に含まれる置換基を考慮して選択することができる。
【0061】
紫外線硬化型シリコーン系材料を使用する方式は、アクリロイル基などのような紫外線反応基を有するシラン、またはシロキサンなどの珪素化合物、またはその加水分解物を加水分解及び縮合反応に適用して樹脂を製造し、さらに紫外線照射により反応させて目的の樹脂を製造する方式である。
【0062】
この分野では、前記のような付加硬化型、縮合または重縮合硬化型または紫外線硬化型シリコーン系材料が多様に公知とされており、この分野の通常の知識を有した技術者は、目的とするシリコーン樹脂によって前記公知の材料を容易に採用して、目的の樹脂を製造することができる。
【0063】
本発明の封止材は、前記シリコーン樹脂とともに光変換物質を追加で含むことができる。本発明において、前記光変換物質は、入射光のうち紫外線領域の光を吸収し、吸収された光を可視光線領域または近赤外線領域に変換させて放出することができる物質であり、このような物質を含むことで、光電池モジュールの発電効率を極大化することができる。特に、本発明の封止材において、シリコーン樹脂は、紫外線領域の光を吸収しないので、光変換物質を使用する効果を極大化することができる。
【0064】
本発明で使用することができる光変換物質の種類は、紫外線領域の光を吸収して可視光線または近赤外線領域の光を放出することができる物質であれば、特別に制限されない。
【0065】
本発明の一例において、前記光変換物質は、下記化学式21で表示される物質である。
【0066】
[化学式21]
Eu
wY
xO
yS
z
【0067】
前記化学式21において、wは、0.01乃至0.2であり、xは、2乃至3であり、yは、2乃至3であり、zは、0乃至1である。
【0068】
本発明の封止材において、前記光変換物質は、前記シリコーン樹脂100重量部に対して、0.1重量部乃至10重量部、好ましくは、0.1重量部乃至5重量部、より好ましくは、0.2重量部乃至5重量部で含まれる。光変換物質の含量をこのように調節することで、散乱による光効率の低下を防止しながら光変換効果を極大化することができる。本明細書において用語「重量部」は、特定しない限り、重量の割合を意味する。
【0069】
本発明の封止材は、前記シリコーン樹脂と光変換物質の以外にもフィラーなどのような任意の公知成分を追加で含むことができる。
【0070】
本発明の光電池モジュールは、多様な形態で構成することができる。
【0071】
図1及び
図2は、本発明の例示的な光電池モジュールを模式的に示す図である。
【0072】
図1は、本発明の一例として、光電変換素子としてウェハ系素子を含むモジュール1を示す。
図1の光電池モジュールは、一般的にガラスのような強誘電体である前面基板11と、テドラー(TEDLAR)やPET/SiOx−PET/Al系積層シートであるバックシート14と、前記シリコーンウェハ系の光電変換素子13と、前記素子13をカプセル化している封止材12a、12bを含む。前記封止材は、素子13をカプセル化しながら前面基板11に付着される第1の封止材層12aと、素子13をカプセル化しながら支持基板であるバックシート14に付着される第2の封止材層12bと、を含む。前記第1または第2の封止材層12a、12bの中でいずれか一つの封止材層が上述の特徴的な成分を含むことができ、好ましくは、前記第1及び第2の封止材層12a、12bは両方とも特徴的な成分を含むことができる。
【0073】
図2は、他の例示による薄膜型光電池モジュール2の模式図である。
図2に示したように、薄膜型光電池モジュール2において、光電変換素子23は、前面基板21に蒸着などの方式で形成される。
【0074】
本発明で、前記のような多様な光電池モジュールを製造する方法は特別に制限されず、この分野で公知である多様な方法を適切に採用することができる。
【0075】
例えば、前記封止材を形成する各成分を使用してシート状封止材を製造し、これをラミネーション方式に適用してモジュールを製造することができる。例えば、目的とするモジュールの構造によって前面基板、光電変換素子、バックシート及びシート状封止材を積層して加熱圧着する方式でモジュールを製造する。
【0076】
他の方式では、前記光電池モジュールは、光変換物質を含む液状のシリコーン樹脂組成物を光電変換素子の周りにコーティングし、硬化させて封止材を形成する方式で製造してもよい。この場合、前記シリコーン樹脂組成物は、上述の化学式1の平均組成式で表示されるシリコーン樹脂や、あるいはその樹脂を形成することができる付加硬化型、縮合または重縮合硬化型または紫外線硬化型シリコーン材料である。