(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまでの提案の複合型光ファイバは、剛性が大きく、曲がり難いものであった。例えば、特に、医療用途に用いられた場合、曲げ半径が5mm程度の屈曲性が望まれる。勿論、医療用途以外の分野で用いられる光ファイバにあっても、前記屈曲性が必要な場合が有る。
しかしながら、これまでの提案の複合型光ファイバは、曲げ半径が5mm程度の屈曲性が満たされてない。
又、これまでの提案の複合型光ファイバは折れ易い懸念が有った。
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、屈曲性に富み、かつ、折れ難い複合型光ファイバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
屈曲性に富む複合型光ファイバとする為には、複合型光ファイバの径を小さくすることが考えられる。
複合型光ファイバが医療用途に用いられる場合、例えば複合型光ファイバがカテーテル管内に挿入される場合を考える。このような場合、複合型光ファイバの外径は、ライトガイドファイバや外層被覆を含めて、1.5mm以下であることが望まれる。特に、1mm以下であることが望まれる。そうすると、複合型光ファイバは、ライトガイドファイバや外層被覆を除いた場合、その外径は約1mm以下が望まれる。屈曲性が重視される場合には、0.5mm以下にすることも考えられる。
しかしながら、クロストークの問題などによって、更に小さくすることは、困難である。
【0010】
このような条件下、即ち、外径が0.5mm程度の大きさの従来の複合型光ファイバでは、曲げ半径が5mm程度の屈曲性が満たされ難いものであった。
【0011】
これまでの提案の複合型光ファイバの屈曲性の問題点は、複合型光ファイバの素材が石英ガラスなどの無機ガラスであることに起因することが判って来た。特に、大口径光ファイバ(エネルギ伝送ファイバ)の回りには、多数の小口径光ファイバ(イメージファイバ)が配置されている。この小口径光ファイバ(イメージファイバ)は、石英ガラスなどの無機ガラスで出来ていた。この為、屈曲性が大きく劣っていた。
【0012】
勿論、無機ガラス製の光ファイバでも、その外径が小さければ、屈曲性は確保される。しかしながら、クロストークなどの問題から、光ファイバの外径を小さくするにも限度が有った。例えば、小口径光ファイバで得られる画像を高精度なものとする為には、小口径光ファイバの本数が多いことが要求される。小口径光ファイバの本数は、例えば2,000本以上であることが要求される。2,000本以上の小口径光ファイバが大口径光ファイバの回りに配置された場合、小口径光ファイバの口径を小さくしても、全体の大きさには限界が有る。小口径光ファイバの口径が小さ過ぎた場合、クロストークの問題が起きる。得られた画像にはボケが生じる。このようなことから、複合型光ファイバの外径は、これまでは、0.4〜0.5mm程度が限界であった。この結果、これまでに提案の複合型光ファイバは屈曲性に問題が残されたままであった。
【0013】
大口径光ファイバの回りに配置された多数本の小口径光ファイバが無機ガラスで出来ていると、屈曲性が乏しいばかりでなく、屈曲させた際に、折れ易い問題が有る。折れた(破断した)場合には、安全性に劣ることが懸念される。
【0014】
しかしながら、この懸念も、屈曲性が増すことによって、解消される。
【0015】
上記知見に基づいて、本発明がなされた。
【0016】
すなわち、前記の課題は、
複合型光ファイバであって、
大口径光ファイバと、
前記大口径光ファイバより口径が小さな小口径光ファイバ
とを具備し、
前記大口径光ファイバと前記小口径光ファイバとは、前記大口径光ファイバの周囲が複数の前記小口径光ファイバよりなる群によって囲まれるように、配置されてなり、
前記小口径光ファイバは、コア部およびクラッド部を具備するプラスチック製光ファイバであり、
前記小口径光ファイバのクラッド部同士が、互いに、溶着してなる
ことを特徴とする複合型光ファイバによって解決される。
【0017】
上記複合型光ファイバであって、好ましくは、前記大口径光ファイバは口径が30μm以上、300μm以下、前記小口径光ファイバのコア部の口径が1μm以上、10μm以下、前記複合型光ファイバの外径が0.3mm以上、1.5mm以下であることを特徴とする複合型光ファイバによって解決される。
【0018】
上記複合型光ファイバであって、好ましくは、前記小口径光ファイバの本数が2,000本以上、50,000本以下であることを特徴とする複合型光ファイバによって解決される。
【0019】
上記複合型光ファイバであって、好ましくは、前記大口径光ファイバがプラスチック製であることを特徴とする複合型光ファイバによって解決される。或は、前記大口径光ファイバが無機ガラス製であることを特徴とする複合型光ファイバによって解決される。大口径光ファイバが無機ガラス製の場合には、好ましくは、無機ガラス製の大口径光ファイバの外周に有機保護層が設けられてなることを特徴とする複合型光ファイバによって解決される。
【0020】
前記の課題は、
複合型光ファイバの製造方法であって、
前記製造方法は、
プラスチック製光ファイバ素線配置工程と、
ロッド体配置工程と、
減圧工程と、
延伸工程
とを具備してなり、
前記プラスチック製光ファイバ素線配置工程は、
コア部およびクラッド部を具備するプラスチック製光ファイバ素線が、プラスチック製外側パイプとプラスチック製内側パイプとの間に、複数本、配置される工程であり、
前記ロッド体配置工程は、
光ファイバ構成素材である透明部を具備するコアロッドが、プラスチック製内側パイプの内側に、配置される工程であり、
前記減圧工程は、
前記プラスチック製外側パイプと前記プラスチック製内側パイプとの間の気圧が、減圧される工程であり、
前記延伸工程は、
前記プラスチック製光ファイバ素線配置工程および前記ロッド体配置工程を経て得られたプラスチック製外側パイプ−プラスチック製光ファイバ素線−プラスチック製内側パイプ−コアロッドを具備する部材が、加熱・延伸される工程であり、この工程は前記部材の間の空隙部が減圧状態で行われる
ことを特徴とする複合型光ファイバの製造方法によって解決される。
【0021】
前記の課題は、
複合型光ファイバの製造方法であって、
前記製造方法は、
配置工程と、
減圧工程と、
延伸工程
とを具備してなり、
前記配置工程は、
光ファイバ構成素材である透明部を具備するコアロッドと、コア部およびクラッド部を具備するプラスチック製光ファイバ素線とが、複数本の該プラスチック製光ファイバ素線が該コアロッドの周囲を囲むように、プラスチック製パイプの内側に、配置される工程であり、
前記減圧工程は、
前記プラスチック製パイプ内の気圧が減圧される工程であり、
前記延伸工程は、
前記配置工程を経て得られたプラスチック製パイプ−プラスチック製光ファイバ素線−コアロッドを具備する部材が、加熱・延伸される工程であり、この工程は前記部材の間の空隙部が減圧状態で行われる
ことを特徴とする複合型光ファイバの製造方法によって解決される。
【0022】
前記の課題は、
複合型光ファイバの製造方法であって、
前記製造方法は、
プラスチック製光ファイバ素線配置工程と、
プラスチック製内側パイプ配置工程と、
減圧工程と、
延伸工程と、
光ファイバ配置工程
とを具備してなり、
前記プラスチック製光ファイバ素線配置工程は、
コア部およびクラッド部を具備するプラスチック製光ファイバ素線が、プラスチック製外側パイプ内に、複数本、配置される工程であり、
前記プラスチック製内側パイプ配置工程は、
プラスチック製内側パイプが、プラスチック製外側パイプ内の略中心部に位置するように配置される工程であり、
前記減圧工程は、
前記プラスチック製外側パイプと前記プラスチック製内側パイプとの間の気圧が減圧される工程であり、
前記延伸工程は、
前記プラスチック製光ファイバ素線配置工程および前記プラスチック製内側パイプ配置工程を経て得られたプラスチック製外側パイプ−プラスチック製光ファイバ素線−プラスチック製内側パイプを具備する部材が、加熱・延伸される工程であり、この工程は前記部材の間の空隙部が減圧状態で行われ、
前記光ファイバ配置工程は、
前記延伸工程の後、プラスチック製内側パイプに光ファイバが配置される工程である
ことを特徴とする複合型光ファイバの製造方法によって解決される。
【発明の効果】
【0023】
有機樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂やポリスチレン樹脂など)と無機ガラス(例えば、石英ガラスなど)とを比べた場合、前者のヤング率は後者のヤング率の1/20程度である。従って、プラスチック製光ファイバは、石英製光ファイバに比べて、屈曲性に富み、曲げ易い。例えば、外径0.5mmとしても、曲げ半径5mm程度は十分に可能である。そして、破断の恐れも少ない。
【0024】
プラスチック製光ファイバを中心位置の大口径光ファイバに用いることは、一向に、差し支えない。中心位置の大口径光ファイバには石英ガラス製光ファイバを用いることも出来た。しかしながら、大口径光ファイバの周囲に配置、特に、複数層的に配置される小口径光ファイバを、必ず、プラスチック製のものとすることが、屈曲性の観点から、必須であった。この要件を満たすことによって、従来の石英ガラス製複合型光ファイバに比べて、屈曲性が大幅に改善された。
【0025】
プラスチック製光ファイバが採用された場合、素材(コア部の屈折率とクラッド部の屈折率との差が0.07〜0.1程度となる素材)の選定が容易である。すなわち、コア部の屈折率とクラッド部の屈折率との差が0.07〜0.1程度のプラスチック製光ファイバが、簡単に、手に入る。このような特徴で、かつ、口径が小さな光ファイバは、数多く束ねられても、クロストークが起き難い。それ故に、本発明において、プラスチック製光ファイバを用いたが故に、屈折率差を大きくできたので、数多く束ねられる小口径光ファイバは、その口径が小さなものを用いることが出来た。口径が小さくなった故に、複合型光ファイバ全体の口径が同じ場合、画像用のイメージファイバとなる小口径光ファイバの本数を増やすことが出来、それだけ画素数が増す。従って、解像度も向上する。例えば、小口径光ファイバの本数(画素数)を2,000以上としても、屈曲性が高い。
【0026】
例えば、観察と治療とが共に行える内視鏡システムの光ファイバとして、極めて、好適である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1の本発明は複合型光ファイバである。この複合型光ファイバは、大口径光ファイバと、小口径光ファイバとを具備する。小口径光ファイバとは、前記大口径光ファイバの口径より口径が小さな光ファイバである。大口径光ファイバは、レーザ導光を可能とする。小口径光ファイバは、画像伝送を可能とする。前記大口径光ファイバの周囲(特に、全周囲)が前記小口径光ファイバの群によって囲まれるように前記大口径光ファイバと前記小口径光ファイバとが配置されている。小口径光ファイバはN(Nは2以上の整数)本用いられる。好ましくは、例えば2,000本〜50,000本の小口径光ファイバが、大口径光ファイバの周囲を囲むように、配置されている。特に、小口径光ファイバは、複数層が形成されるように、配置されている。前記小口径光ファイバは、特に、プラスチック製である。
【0029】
上記複合型光ファイバにおいて、大口径光ファイバは、好ましくは、口径が30μm以上、300μm以下であった。更に好ましくは、40μm以上、250μm以下であった。より更に好ましくは、50μm以上、200μm以下であった。上記口径が好ましい理由は次の通りであった。口径が30μm未満と小さ過ぎた場合、レーザ光が大口径光ファイバ端面に十分に絞り込まれて導入されることは困難であった。この点から、大口径光ファイバのコア部の口径は、50μm以上であることが一層好ましかった。逆に、300μmを越えて大きくなり過ぎた場合、外周部のイメージ伝送部(小口径光ファイバ)の面積割合が低下し、画像観察が困難になった。又、曲がり難くなった。上記大口径光ファイバのクラッド厚みは2μm以上、30μm以下であることが好ましかった。クラッド厚みが2μm未満である場合、クロストークと同様な現象が発生した。レーザ光がファイバ外部に漏れやすくなった。画像のコントラストが劣化する場合があった。逆に、クラッド厚みが30μmを超えた場合、大口径光ファイバの断面に占めるコアの割合が小さくなった。そして、レーザ光が十分に絞り込まれて大口径光ファイバ端面に導入されることが困難であった。上記大口径光ファイバのクラッドの外側は2μm以上、30μm以下の遮光性被覆部材で覆われていてもよい。上記複合型光ファイバにおいて、小口径光ファイバのコア部の口径は、好ましくは、1μm以上、10μm以下であった。更に好ましくは、2μm以上であった。更に好ましくは、5μm以下であった。上記口径が好ましい理由は次の通りであった。1μm未満と小さ過ぎた場合、クロストークが発生した。画像がボケた。光量不足となり、得られる画像が暗かった。逆に、10μmを越えて大きくなり過ぎた場合、小口径光ファイバを、多数本、充填することが出来にくかった。多数本充填すると、複合光ファイバの外径が大きくなった。この結果、曲げ特性が悪化した。上記複合型光ファイバにおいて、複合型光ファイバの外径は、好ましくは0.2mm以上、1.5mm以下であった。更に好ましくは、0.3mm以上、1.0mm以下であった。より更に好ましくは、0.4mm以上、1.0mm以下であった。その理由は次の通りであった。0.2mm未満と小さ過ぎた場合は、小口径光ファイバの数が少な過ぎる。その結果、画素数が少なくなる。得られる画像の解像度が低くなった。逆に、1.5mmを越えて大きくなり過ぎた場合、曲げ特性が低下した。上記複合型光ファイバにおいて、大口径光ファイバを囲むプラスチック製の小口径光ファイバは、好ましくは、その数が2,000本以上、50,000本以下であった。更に好ましくは、3,000本以上、30,000本以下であった。より更に好ましくは、5,000本以上、20,000本以下であった。その理由は次の通りであった。2,000本未満と少な過ぎた場合、得られる画像の解像度が低くなった。50,000本を越えて多すぎた場合、曲げ特性が低下した。
【0030】
上記複合型光ファイバにおいて、大口径光ファイバを囲む複数のプラスチック製の小口径光ファイバは、そのクラッド部同士が互いに溶着してなる。この溶着構造の故に、小口径光ファイバの集合体は、断面が、恰も、海島構造である。小口径光ファイバはプラスチック製であることから、加熱により、周辺に位置するクラッド部同士が溶着・一体化する。これにより、大口径光ファイバを囲む複数の小口径光ファイバは、簡単に、固定される。すなわち、小口径光ファイバは位置ズレが起き難い。従って、得られる画像の品質が高かった。
【0031】
上記複合型光ファイバにおいて、大口径光ファイバは、好ましくは、プラスチック製である。このタイプの全プラスチック製複合型光ファイバの一例が
図1に示される。
図1は複合型光ファイバの断面図である。
図1中、1は大口径光ファイバである。1aはコア部(レーザ導光コア部)、1bはクラッド部(レーザ導光クラッド部)である。コア部1aは、後述の製造方法における「ロッド体」で構成される。クラッド部1bは、後述の製造方法における「プラスチック製内側パイプ」で構成される。2aは、小口径光ファイバ(イメージファイバ)のコア部である。2bはクラッド部である。これ等のコア部2a及びクラッド部2bは、後述の製造方法における「プラスチック製光ファイバ素線」で構成される。上述した通り、又、
図1からも判る通り、クラッド部2bは溶着・一体化している。つまり、海島構造(コア部2aが島:クラッド部2bが海)である。3は外クラッドである。尚、外クラッド3は絶対必須要件では無い。外クラッド3は、後述の製造方法における「プラスチック製外側パイプ」で構成される。
【0032】
大口径光ファイバは、無機ガラス製であっても良い。大口径光ファイバが無機ガラス製の場合、好ましくは、大口径光ファイバの外周には有機樹脂層(保護層)が設けられる。この構造の大口径光ファイバの一例が
図4,5に示される。
図4,5は複合型光ファイバの断面図である。
図4は有機樹脂層(保護層)が有る場合、
図5は有機樹脂層(保護層)が無い場合である。
図4,5中、1は無機ガラス製の大口径光ファイバである。1aはコア部(レーザ導光コア部)、1bはクラッド部(レーザ導光クラッド部)である。2aは、小口径光ファイバ(イメージファイバ)のコア部である。2bはクラッド部である。これ等のコア部2a及びクラッド部2bは、後述の製造方法における「プラスチック製光ファイバ素線」で構成される。上述した通り、又、
図4,5からも判る通り、クラッド部2bは溶着・一体化している。つまり、海島構造(コア部2aが島:クラッド部2bが海)である。3は外クラッドである。4は内クラッドである。尚、外クラッド3や内クラッド4は絶対必須要件では無い。外クラッド3は、後述の製造方法における「プラスチック製外側パイプ」で構成される。内クラッド4は、後述の製造方法における「プラスチック製内側パイプ」で構成される。5は、無機ガラス製の大口径光ファイバ1を被覆する被覆層である。被覆層5によって、ガラス製光ファイバ1の折れ耐性が向上する。この被覆層5の形成には、例えばシリコーン系樹脂、UV硬化型樹脂、ポリイミド系樹脂などが好適に用いられる。アルミニウムなどの導電性金属被覆も適宜用いられる。
【0033】
第2の本発明は複合型光ファイバの製造方法である。例えば、上記複合型光ファイバの製造方法である。
【0034】
上記製造方法は、プラスチック製外側パイプとプラスチック製内側パイプとの間に、コア部およびクラッド部を具備するプラスチック製光ファイバ素線をN本配置するプラスチック製光ファイバ素線配置工程を有する。本プラスチック製内側パイプは、大口径ファイバのクラッド部に相当するものになる。又、プラスチック製内側パイプの内側に光ファイバ構成素材である透明部を具備するコアロッドを配置するコアロッド配置工程を有する。本コアロッドは、大口径ファイバのコア部に相当するものになる。但し、本コアロッドはコアとクラッドを構成する光ファイバプリフォームに相当するものになっても良い。又、少なくともプラスチック製外側パイプとプラスチック製内側パイプとの間の気圧を減圧する減圧工程を有する。又、前記プラスチック製光ファイバ素線配置工程および前記ロッド体配置工程を経て得られたプラスチック製外側パイプ−プラスチック製光ファイバ素線−プラスチック製内側パイプ−コアロッドを具備する各部材間の空隙部を減圧状態で加熱・延伸する延伸工程を有する。この延伸工程は、減圧・加熱下で行われるから、プラスチック製光ファイバ素線同士は周縁部同士が溶着・一体化する。しかも、減圧下で延伸されるから、空隙が残らない。プラスチック製光ファイバ素線集合体は、断面が、恰も、海島構造になる。
【0035】
或は、上記製造方法は、プラスチック製パイプの内側に、コアとクラッドを具備する光ファイバプリフォームロッドと、該プリフォームロッドの周囲(特に、全周囲)を囲むコア部およびクラッド部を具備するN本のプラスチック製光ファイバ素線とを配置する配置工程を有する。本製造方法は、前記製造方法の場合と異なり、上記の如きのプラスチック製内側パイプを用いない場合が有る。又、前記プラスチック製パイプ内の気圧を減圧する減圧工程を有する。又、前記配置工程を経て得られたプラスチック製パイプ−プラスチック製光ファイバ素線−プリフォームロッドを具備する各部材間の空隙部を減圧状態で加熱・延伸する延伸工程を有する。この延伸工程は、減圧・加熱下で行われるから、プラスチック製光ファイバ素線同士は周縁部同士が溶着・一体化する。しかも、減圧下で延伸されるから、空隙が残らない。プラスチック製光ファイバ素線集合体は、断面が、恰も、海島構造になる。
【0036】
又は、上記製造方法は、プラスチック製外側パイプ内に、コア部およびクラッド部を具備するプラスチック製光ファイバ素線をN本配置するプラスチック製光ファイバ素線配置工程を有する。又、プラスチック製外側パイプ内の略中心部に位置するようプラスチック製内側パイプを配置するプラスチック製内側パイプ配置工程を有する。又、プラスチック製外側パイプとプラスチック製内側パイプとの間の気圧を減圧する減圧工程を有する。又、前記プラスチック製光ファイバ素線配置工程および前記プラスチック製内側パイプ配置工程を経て得られたプラスチック製外側パイプ−プラスチック製光ファイバ素線−プラスチック製内側パイプを具備する各部材間の空隙部を減圧状態で加熱・延伸する延伸工程を有する。前記延伸工程は、減圧・加熱下で行われるから、プラスチック製光ファイバ素線同士は周縁部同士が溶着・一体化する。しかも、減圧下で延伸されるから、空隙が残らない。プラスチック製光ファイバ素線集合体は、断面が、海島構造になる。
又、プラスチック製内側パイプより中心部分を減圧せずに延伸することで、小口径光ファイバの集合体は、断面の中心付近に連通した孔を備える中空型光ファイバ集合体となる。
中空型光ファイバ集合体のプラスチック製内側パイプ内に光ファイバを配置する光ファイバ配置工程を有するによって、複合型光ファイバが得られる。プラスチック製内側パイプ配置工程を有することにより、中空型光ファイバ集合体と大口径光ファイバとを、各々、別に、作製することが出来る。従って、大口径光ファイバの材質を自由に選択でき、少量多品種生産に好適である。又、中空型光ファイバ集合体と大口径光ファイバとは溶着・一体化していないので、柔軟性に優れる。前記延伸工程は、減圧・加熱下で行われるから、プラスチック製光ファイバ素線同士は周縁部同士が溶着・一体化する。しかも、減圧下で延伸されるから、空隙が残らない。プラスチック製光ファイバ素線集合体は、断面が、恰も、海島構造になる。
中空型光ファイバ集合体が備える連通した孔の直径は、被覆部材をふくめた大口径光ファイバの直径より5μm以上、100μm以下の範囲で大きいことが好ましかった。5μmより小さいと、中空型光ファイバ集合体を、予め、作製し、その後大口径光ファイバを挿入する場合、作業が困難になる場合がある。100μmより大きい場合、前記作業のしやすさは、顕著には、改善されず、寧ろ、小口径光ファイバの群の面積が小さくなったり、大口径光ファイバの口径が小さくなったりするので、好ましくない。前記範囲は、10μm以上、50μm以下であることがより好ましかった。
【0037】
第3の本発明は中空型光ファイバ集合体である。この中空型光ファイバ集合体は、プラスチック製外側パイプとプラスチック製内側パイプとの間に、小口径光ファイバが配置されている。この小口径光ファイバは、コア部およびクラッド部を具備するプラスチック製光ファイバである。前記クラッド部は、互いに、溶着している。
【0038】
本発明において、大口径光ファイバの外週部に多数本配置する小口径光ファイバはプラスチック製である。該小口径光ファイバの島部であるコア部は、屈折率が高い透明樹脂で構成される。例えば、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂などの群の中から選ばれる適宜な樹脂が選択される。前記コア部を囲むように周辺に存する海部を構成するクラッド部は、前記コア部の屈折率よりも小さな屈折率の樹脂が用いられる。例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素系樹脂などの群の中から選ばれる適宜な樹脂が選択される。コアとクラッドの組み合わせとして、例えばポリメチルメタクリレート樹脂とポリスチレン樹脂との組み合わせになるものは好ましい一例である。フッ素系樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂との組み合わせになるものも好ましい一例である。大口径光ファイバがプラスチック製で構成される場合、大口径光ファイバは、口径が異なる点を除けば、小口径光ファイバと同様に構成される。
【0039】
本発明の一実施形態になる全プラスチック製複合型光ファイバの製造方法が、
図2,3を参照しながら、説明される。
【0040】
図2,3に示される如く、透明樹脂からなるプラスチック製外側パイプ11と、透明樹脂からなるプラスチック製内側パイプ12とが、同心状に、配置される。コア部とクラッド部とからなるプラスチック製光ファイバ素線13が、プラスチック製外側パイプ11とプラスチック製内側パイプ12との間に、挿入される(
図2,3参照)。
図2,3から判る通り、挿入されたプラスチック製光ファイバ素線13は多数本である。この多数のプラスチック製光ファイバ素線13により、プラスチック製外側パイプ11とプラスチック製内側パイプ12との間の空間が、埋め尽くされている。透明な樹脂製のコアロッド(小径パイプ12の屈折率よりも高屈折率)14が、プラスチック製内側パイプ12内に、挿入される(
図3参照)。挿入されるコアロッド14は、コア部とクラッド部とからなるプラスチック製光ファイバプリフォームロッドであっても良い。
【0041】
この母材の先端が加熱され、延伸処理が行われる。この加熱・延伸に際しては、プラスチック製外側パイプ11とプラスチック製内側パイプ12との間に存する空気が吸引・排気される。すなわち、加熱・延伸処理は減圧状態にて行われる。加熱・延伸処理により、プラスチック製光ファイバ素線13同士のクラッド部は溶着、一体化する。この一体化に際しては、プラスチック製光ファイバ素線13間に存する空気は吸引・排気されているので、溶着したクラッド部に気泡は残留していない。この結果、
図1に示される構造の全プラスチック製複合型光ファイバが得られた。尚、プラスチック製光ファイバ素線13は溶融紡糸法で得られる。或いは、延伸処理でも得られる。
【0042】
本発明の他の実施形態になる中心部が無機ガラス製複合型光ファイバの製造方法が、
図2を参照しながら、説明される。
【0043】
図2に示される如く、透明樹脂からなるプラスチック製外側パイプ11と、透明樹脂からなるプラスチック製内側パイプ12とが、同心状に、配置される。コア部とクラッド部とからなるプラスチック製光ファイバ素線13が、プラスチック製外側パイプ11とプラスチック製内側パイプ12との間に、挿入される(
図2参照)。尚、大径パイプ11内にプラスチック製内側パイプ12とプラスチック製光ファイバ素線13とが、同時に、挿入されても良い。或は、プラスチック製光ファイバ素線13が挿入された後に、小径パイプ12が挿入されても良い。
図2から判る通り、挿入されたプラスチック製光ファイバ素線13は多数本である。この多数のプラスチック製光ファイバ素線13により、プラスチック製外側パイプ11とプラスチック製内側パイプ12との間の空間が、埋め尽くされている。この状態の母材の先端が加熱され、延伸処理が行われる。この加熱・延伸に際しては、プラスチック製外側パイプ11とプラスチック製内側パイプ12との間の空気が吸引・排気される。すなわち、加熱・延伸処理は減圧状態にて行われる。加熱・延伸処理により、プラスチック製光ファイバ素線13同士のクラッド部は溶着、一体化する。この一体化に際しては、プラスチック製光ファイバ素線13間に存する空気は吸引・排気されているので、溶着したクラッド部に気泡は残留していない。この結果、外周に複数のプラスチック製光ファイバが位置し、中心部が中空となった、中空型光ファイバ集合体が得られた。
【0044】
この後、本中空型光ファイバ集合体は所望の長さ、例えば0.5〜5m程度に切断された。そして、石英など無機ガラス製の光ファイバが、中空型光ファイバ集合体の中空部に挿入される。この結果、
図4(又は
図5)に示されるタイプの中心部が無機ガラス製光ファイバからなる複合型光ファイバが得られた。無機ガラス製光ファイバの挿入に際しては、挿入摩擦抵抗を少なくする為、無機ガラス製光ファイバ表面あるいは小径パイプ12内面に、潤滑剤(例えば、油性オイル、シリコーンオイル、水系界面活性剤など)が塗布されていることは好ましい。無機ガラス製光ファイバ外面と中空プラスチックイメージファイバ内面との間には微小間隙が皆無と言う訳では無い。従って、エポキシ接着剤などによって両者が接合されることが好ましい。長手方向の全般に亘って接着されても良い。両端部のみが接着されても良い。これらによって、切断や両端面の研磨作業も容易になる。
【0045】
図6及び
図7は、複合型光ファイバ(小口径光ファイバ:イメージファイバ)の外周面に照明用のライトガイド光ファイバが設けられた実施形態のものである。断面図が示された
図6,7の実施形態の光ファイバは、例えば医療用の複合型内視鏡に用いられる。長さは、例えば1〜5mである。勿論、これに限られない。ライトガイド光ファイバ20は、一般に、入手可能な30〜150μm径の石英ガラスファイバや多成分ガラスファイバである。勿論、これに限られない。尚、曲げ特性の観点から、出来るだけ細い径のライトガイド光ファイバが用いられることが好ましい。曲げ特性の観点から、上記無機ガラス系のファイバに代わって、プラスチック製のファイバが用いられることも好ましい。この場合には、無機ガラス系のファイバの径(30〜150μm)よりも大きな径、例えば50〜250μmであっても、曲げ特性は良好である。
【0046】
ライトガイド光ファイバ20の外側には、保護の為、外装体21が設けられていることが好ましい。外装体21は樹脂チューブ(例えば、フッ素系樹脂チューブ、ポリウレタン系樹脂チューブ、ポリイミド系樹脂チューブなど)で構成される。
【0047】
尚、
図6,7中、
図1,4,5の符号と同一符号は同一構成のものであるから、詳細は省略される。
【0048】
図8は、上記実施形態(例えば、
図6)の複合型光ファイバがレーザ治療内視鏡システムに用いられた場合の説明図である。本レーザ治療内視鏡システムでは、照明光の照射、観察、レーザ光照射が、同時に、行われる。
【0049】
複合型光ファイバは光学系側で二つに分岐している。ライトガイド光ファイバは、纏めて、光源装置に接続される。他方の複合型光ファイバは、レーザ照射側(大口径光ファイバ)と、画像観察側(小口径光ファイバ)とに分岐して接続される。
【0050】
小口径光ファイバであるイメージファイバ部を伝送してきた画像情報は、集光レンズ、ビームスプリッタ、リレーレンズ、レーザ光を遮断する為の干渉フィルタを経て、CCDカメラに結像される。レーザ発振器から照射されたレーザ光は、コリメートレンズ、ビームスプリッタ、集光レンズを経由して、複合型光ファイバの中心部であるレーザ導光ファイバ部に入射される。
【0051】
レーザ光源は、治療内容によって、適宜選択される。例えば、色素レーザ、アルゴンイオンレーザ、半導体レーザ、Nd:YAGレーザ、Ho:YAGレーザが適宜用いられる。可視から近赤外までの各種レーザ光源が使用可能である。
【0052】
尚、上記全プラスチック製の複合型ファイバは、レーザ強度と波長によっては、使用に適さない場合がある。特に、レーザ波長が近赤外域である場合、可視光波長域では透明なプラスチック材料をコアとしたプラスチック製の光ファイバにあっては、赤外吸収による導光損失が大きくなり、近赤外レーザ光が透過しない。そればかりか、光ファイバのレーザ入射端面が損傷を受ける懸念も考えられる。従って、場合によっては、大口径光ファイバが無機ガラス製の光ファイバが好ましい場合もある。
【0053】
以下、更に具体的な実施例を挙げて説明する。
【0054】
[実施例1]
プラスチック製のモノファイバ素線13(コア部2aが透明なポリスチレン:クラッド部2bが透明なポリメチルメタクリレート)が、延伸処理によって線引きされながら、所定長さに切断された。透明なポリメチルメタクリレート製の外側パイプ11の中に、外径が小さくて透明なポリメチルメタクリレートの内側パイプ12が挿入された。前記外側パイプ11と内側パイプ12との間の空間に、前記線引きにより製造されたファイバ素線13が最密充填された。透明なポリスチレンコアロッド14が、内パイプ12の中心部に挿入された。これにより
図3の母材が構成された。
【0055】
外側パイプ11内側の全ての空間内の空気が吸引・排気されて減圧された。この減圧状態下において、上記母材の先端が加熱されながら、2次線引きが行われた。このようにして、
図1に示される断面構造の全プラスチック複合型光ファイバが得られた。この全プラスチック複合型光ファイバの外径は0.5mm、画素数(小口径光ファイバ数:イメージファイバ数)は8,000画素、大口径光ファイバ(レーザ導光ファイバ)1におけるコア部1aの径が135μmであった。
【0056】
上記全プラスチック複合型光ファイバが2m長さに切断された。その両端が鏡面研磨された。この後、10数本のライトガイド光ファイバ(径が125μmのポリメチルメタクリレート製ファイバ)20が、全プラスチック複合型光ファイバの外周に沿わせて、設けられた。この後、外径1.0mm、肉厚0.2mmのフッ素系樹脂チューブ21内に挿入された(
図6参照)。
【0057】
上記ファイバの一方の入射端(後端)は、全プラスチック複合型光ファイバとライトガイド光ファイバとに分岐させられた。各々の分岐端が、照明用の光源装置とレーザ照射・画像観察光学装置とに接続された。上記ファイバの先端には対物レンズが接続された(
図8参照)。
【0058】
光源装置から出射した照明光は、ライトガイド光ファイバ20に導入され、先端から照射された。照射された光は観察対象で反射し、先端の対物レンズによりイメージファイバ2端部に映像が結像する。映像光は、イメージファイバ2を伝播し、レーザ照射・画像観察光学装置に導入された。この後、集光レンズ、ビームスプリッタ、リレーレンズ、干渉フィルタを通過した後、CCDカメラにより撮影され、ビデオモニタで表示された。
【0059】
レーザ光源はNd:YAGレーザ(KTP)である。
図8に示されたコリメートレンズ、集光レンズにより、532nm波長のレーザ光が集光された。このレーザ光がレーザ導光部ファイバ1に導入された。レーザ光はレーザ導光部ファイバ1内を伝播し、先端から照射された。
【0060】
上記構成のファイバは、曲げ半径5mmに屈曲させても、折れなかった。そして、画像特性やレーザ伝送特性は優れたものであった。
【0061】
[実施例2]
実施例1のファイバは、全てがプラスチック製であった。本実施例2のファイバは、大口径光ファイバ(レーザ導光ファイバ)1が無機ガラス(石英ガラス)製である。
【0062】
プラスチック製のモノファイバ素線13(コア部2aが透明なポリスチレン:クラッド部2bが透明なポリメチルメタクリレート)が、延伸処理によって線引きされながら、所定長さに切断された。前記1次線引きにより製造されたファイバ素線13が、透明なポリメチルメタクリレート製の外側パイプ11の中に、最密充填された。外径が小さくて透明なポリメチルメタクリレートの内側パイプ12が、充填されたファイバ素線13の中心部に、挿入された。これにより母材が構成された(
図2参照)。
【0063】
外側パイプ11と内パイプ12との間の空隙内の空気が吸引・排気されて減圧された。この減圧状態下において、上記母材の先端が加熱されながら、2次線引きが行われた。このようにして、外周に複数のプラスチック製光ファイバが位置し、中心部が空洞状の中空型光ファイバ集合体が得られた。このものは、外径が500μm、中空孔径が150μm、画素数(小口径光ファイバ数:イメージファイバ数)が8,000であった。
【0064】
この後、2mの長さに切断された。石英製光ファイバ(外径125μm(コア径100μm、クラッド径120μm、ポリイミド被覆径125μm)、長さ2.1m)1が、中空孔に、挿入された。低粘度型の2液混合型のエポキシ系接着剤が、中空型光ファイバ集合体と石英製ファイバとの間の両端部における空隙部に埋め込まれた。この後、硬化・接着が行われた。最後に、両端が、ダイヤモンドソーで切断され、鏡面研磨され、複合型光ファイバが得られた。
【0065】
この複合型光ファイバ(外径0.5mm(中心石英125μm):長さ2m:中心部はガラス:周辺部はプラスチック)の2m長さの中央部に対して、条件[曲げ半径5mm:屈曲角度±135゜:引っ張り加重200gf]にて、繰り返し、屈曲試験が行われた。その結果、1200回(往復)でも、石英ファイバは破断しなかった。但し、外周に位置するプラスチックイメージファイバ部分の一部が破断した。尚、1,000回の屈曲時点では、イメージファイバ部および石英ファイバの導光性能に変化はなかった。
【0066】
実施例1と同様に、前記複合型光ファイバの外周に沿わせて、10数本のライトガイド光ファイバ20が設けられた。この後、外径1.0mm、肉厚0.2mmのフッ素系樹脂チューブ21内に挿入された(
図7参照)。そして、実施例1と同様に行われ、各々の分岐端が照明用の光源装置とレーザ照射・画像観察光学装置に接続されると共に、ファイバ先端には対物レンズが接続された(
図8参照)。また、Nd:YAGレーザ光が波長変換されずに、近赤外波長1064nmが用いられても、レーザ光はレーザ導光部ファイバ1内を伝播し、先端から照射され、複合型光ファイバが損傷するようなことはなかった。
【0067】
上記構成のファイバは、曲げ半径5mmに屈曲させても、折れなかった。そして、画像特性やレーザ伝送特性は優れたものであった。
【0068】
この出願は、2010年6月8日に出願された日本出願特願2010−131176を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。