(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
集水管の外周に複数の封筒状膜が巻回されてなる複数本のスパイラル膜モジュールと、該複数本のスパイラル膜モジュールの両端部に共通に設けられ、該スパイラル膜モジュールの各々に対して原水の流出入を行うためのマニホールドとを備えてなる水処理用膜モジュールユニットであって、
複数本の前記スパイラル膜モジュールを集束させると共に、隣接する各スパイラル膜モジュールの間の隙間を合成樹脂で埋め固めた膜モジュール集合体を形成し、該膜モジュール集合体の両端部にそれぞれ前記マニホールドを接続してなることを特徴とする水処理用膜モジュールユニット。
前記膜モジュール集合体は、隣接する前記スパイラル膜モジュールの間の前記合成樹脂の部分に、空隙を有していることを特徴とする請求項1記載の水処理用膜モジュールユニット。
前記膜モジュール集合体は、隣接する前記スパイラル膜モジュールの間の前記合成樹脂の部分に、該膜モジュール集合体の長さ方向に沿う補強用棒状体を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の水処理用膜モジュールユニット。
前記補強用棒状体は、前記膜モジュール集合体の両端部にそれぞれ設けられた前記マニホールド同士を連結する連結ボルトであることを特徴とする請求項3記載の水処理用膜モジュールユニット。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶バラスト水中の微生物を膜処理することによって除去する試みがなされている。特にタンカーのような巨大船舶では、バラストタンクの容量も巨大となるため、バラスト水を膜処理する場合は膨大な量のバラスト水を短時間で処理する必要があり、このため船舶内に膨大な数の膜を備える必要がある。
【0003】
このため、本願出願人は、
図11に示すように、原水の流路を構成するマニホールド200、300に対して複数本のスパイラル膜モジュール100を接続した構造のバラスト処理用膜モジュールユニットを提案している(特許文献1)。
【0004】
スパイラル膜モジュール100は、集水管の外周に複数の封筒状膜が巻回されてなる構造体の外周を外筒で被覆した構造を有しており、複数本のスパイラル膜モジュール100の両端部に対してそれぞれ一つずつのマニホールド200、300を原水の流出入が可能となるように接続することで、一つの水処理用膜モジュールユニットを構成している。
【0005】
図12に、この従来の水処理用膜モジュールユニットの要部断面図を示す。図中、100はスパイラル膜モジュール、200はスパイラル膜モジュール100の一方端部に接続された第1マニホールド、300は膜モジュール100の他方端部に接続された第2マニホールドである。
【0006】
スパイラル膜モジュール100は、中心軸部分に、一端が閉鎖され他端のみが開口する集水管103が配置されており、この集水管103の外周に複数の封筒状膜102が巻回されている。この集水管103の外周に複数の封筒状膜102が巻回された構造体は、集水管103の長さ方向が外筒101の長さ方向と一致するように該外筒101内に収容されている。
【0007】
第1マニホールド200は、内部に複数の膜モジュール100に共通の原水室201を有しており、壁面に原水が導入される原水導入口202と、スパイラル膜モジュール100の外筒101の一端を接続するための複数の取付け開口部202とが形成されている。
【0008】
第2マニホールド300は、内部に複数のスパイラル膜モジュール100に共通の洗浄排液室(原水濃縮液)301と、この洗浄排液室301に対して区画され、複数のスパイラル膜モジュール100に共通の処理水室302とを有している。各スパイラル膜モジュール100の集水管103の開口端は、処理水室302と接続されている。壁面には処理水室302内の処理水を排出する処理水排出口303と、洗浄排液室301内の排液を排出する排液排出口304と、スパイラル膜モジュール100の外筒101の他端を接続するための複数の取付け開口部305とが形成されている。
【0009】
これら第1マニホールド200及び第2マニホールド300とスパイラル膜モジュール100の外筒101とは、Oリング等のシール部材を介して嵌合し、例えば接着剤によって固着したり、第1マニホールド200と第2マニホールド300とに亘ってボルト(図示せず)を架け渡したりすることによって接続すると共に、集水管103の開口端を第2マニホールド300の処理水室302の壁面に貫通させることで、該集水管103の内部と処理水室302とを連通させるようにしている。
【0010】
このような水処理用膜モジュールユニットによれば、大量の原水の膜処理を並列して行うことができて極めて効率的である等の数々の利点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、このような水処理用膜モジュールユニットの更なる性能向上を図るべく鋭意検討したところ、以下のような新たな課題を見出した。
【0013】
(1)従来の水処理用膜モジュールユニットは、一つのマニホールドに対して複数本のスパイラル膜モジュールを接続しているため、例えばスパイラル膜モジュールが6本ある場合、一つのマニホールドに対して6本のスパイラル膜モジュールを個別に接続しなくてはならない。各スパイラル膜モジュールとマニホールドとは、接続によって原水を流出入させる必要がある他にも、集水管から処理水を取り出すための接続を行う必要があり、一つの膜モジュールについてマニホールドに対する原水流路の接続と集水管の接続という接続作業がそれぞれ必要となることから、接続作業の簡素化が望まれる。
【0014】
(2)スパイラル膜モジュールとマニホールドとの接続部分は、膜処理時に掛かる高い濾過圧にも耐えられる水密構造とする必要があるが、従来の水処理用膜モジュールユニットでは、各スパイラル膜モジュールの両端部においてそれぞれマニホールドと接続しているため、一つの水処理用膜モジュールユニットには、スパイラル膜モジュールの本数分×2の数の水密構造部分が存在することとなる。このため水密構造の簡素化が望まれる。
【0015】
(3)従来の水処理用膜モジュールユニットでは、複数本のスパイラル膜モジュールをマニホールドに並列させて接続しているため、水処理用膜モジュールユニットの幅は、スパイラル膜モジュールの外径×本数分以上の幅が必要となる。この水処理用膜モジュールユニットの幅をコンパクトにするには、複数本のスパイラル膜モジュールを集束させるようにすればよいが、複数本のスパイラル膜モジュールを集束させると、スパイラル膜モジュールを接続するためにマニホールドに設けられるスパイラル膜モジュール毎の接続開口部も近接するため、接続開口部の強度を維持することが難しくなる。しかも、複数本のスパイラル膜モジュールを集束させると、内側に位置するスパイラル膜モジュールとマニホールドとの個別の接続部分を目視で確認できないため、水漏れ等の発生の確認が難しくなる。このため、各スパイラル膜モジュールの接続部分の水漏れ等の確認の必要がなく、全体のコンパクト化を図り得るようすることが望まれる。
【0016】
そこで、本発明は、複数本のスパイラル膜モジュールとマニホールドとの接続部分を一つだけにすることにより、接続作業の簡素化、水密構造の簡素化を図り得ると共に、全体のコンパクト化を図り得る水処理用膜モジュールユニットを提供することを課題とする。
【0017】
また、本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0019】
(請求項1)
集水管の外周に複数の封筒状膜が巻回されてなる複数本のスパイラル膜モジュールと、該複数本のスパイラル膜モジュールの両端部に共通に設けられ、該スパイラル膜モジュールの各々に対して原水の流出入を行うためのマニホールドとを備えてなる水処理用膜モジュールユニットであって、
複数本の前記スパイラル膜モジュールを集束させると共に、
隣接する各スパイラル膜モジュールの間の隙間を合成樹脂で埋め固めた膜モジュール集合体を形成し、該膜モジュール集合体の両端部にそれぞれ前記マニホールドを接続してなることを特徴とする水処理用膜モジュールユニット。
【0020】
(請求項2)
前記膜モジュール集合体は、隣接する前記スパイラル膜モジュールの間の前記合成樹脂の部分に、空隙を有していることを特徴とする請求項1記載の水処理用膜モジュールユニット。
【0021】
(請求項3)
前記膜モジュール集合体は、隣接する前記スパイラル膜モジュールの間の前記合成樹脂の部分に、該膜モジュール集合体の長さ方向に沿う補強用棒状体を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の水処理用膜モジュールユニット。
【0022】
(請求項4)
前記補強用棒状体は、前記膜モジュール集合体の両端部にそれぞれ設けられた前記マニホールド同士を連結する連結ボルトであることを特徴とする請求項3記載の水処理用膜モジュールユニット。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、複数本のスパイラル膜モジュールとマニホールドとの接続部分を一つだけにすることにより、接続作業の簡素化、水密構造の簡素化を図り得ると共に、全体のコンパクト化を図り得る水処理用膜モジュールユニットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0026】
図1は一つの水処理用膜モジュールユニットの斜視図、
図2は水処理用膜モジュールユニットの長さ方向の中央部を該長さ方向と直交する方向に切断した断面図、
図3はスパイラル膜モジュールの断面図、
図4は水処理用膜モジュールユニットの一方端部側の断面図、
図5は水処理用膜モジュールユニットの他方端部側の断面図である。
【0027】
水処理用膜モジュールユニット1(以下、単にユニット1という。)は、複数本のスパイラル膜モジュール2(以下、単に膜モジュール2という。)を内部に収容してなる膜モジュール集合体10と、この膜モジュール集合体10の両端にそれぞれ接続された第1マニホールド11及び第2マニホールド12とを有している。
【0028】
膜モジュール2は、処理水を集める集水管21と該集水管21の外周に巻回状態で設けられた複数の封筒状膜22とを有する。
【0029】
各封筒状膜22内には、それぞれ封筒状膜22の張設状態を維持し、該封筒状膜22の内側に透過した処理水のためのスペースを形成する透過側スペーサ22aが設けられている。封筒状膜22の内部は集水管21の内部と連通しており、該封筒状膜22を透過した処理水を集水管21に移送可能としている。この封筒状膜22は、集水管21の外周面に放射状に取り付けられており、これらが集水管21に巻回されて該集水管21の外周に高密度に巻き付けられることによって、全体として集水管21を軸とする略円柱状を呈している。
【0030】
隣接する封筒状膜22の間には、隣接する封筒状膜22間に原水流路23を形成するためのスペーサ24が挿設されている。なお、
図3では説明の便宜のため、各封筒状膜22の巻回時の長さを短く表現しているが、実際の封筒状膜22は、集水管21の外周に対して何重にも巻回し得る程度の長さを有している。
【0031】
集水管21は、一方端が閉鎖された閉鎖端部21a(
図4)であり、他方端が処理水を排出するために開口した開口端部21b(
図5)とされている。
【0032】
各膜モジュール2の両端部には、巻回状態の封筒状膜22が軸方向にずれることを防止するための軸方向ずれ防止部材(ATD)26がそれぞれ接合されている。軸方向ずれ防止部材26は、集水管21が挿通される環状部26aと、この環状部26aから放射状に延びる複数本の支持腕26bとを有しており、環状部26a内に集水管21の閉鎖端部21a側又は開口端部21b側が挿入されると共に、支持腕26bが巻回状態の封筒状膜22の端部に当接するように装着された状態で、環状部26aが集水管21に対して接着されている。これにより、各膜モジュール2は、支持腕26bによって両端部から封筒状膜22を挟み付け、封筒状膜22の軸方向のずれが防止される。
【0033】
膜モジュール集合体10は、複数本の膜モジュール2の周囲を合成樹脂Pによって固めることによって、全体として円柱形状となるように形成されており、内部に膜モジュール2を集束した状態で配置している。
図2では7本の膜モジュール2が集束状態で配置されているが、本数は特に問わない。
【0034】
合成樹脂Pとしては、複数本の膜モジュール2を固めてその集束状態を維持することができるものであれば特に問わず、例えば熱硬化性樹脂を用いることができる。特に膜モジュール2に与える熱の影響を低減するため、硬化時の発熱量が少ないものが好ましい。
【0035】
膜モジュール集合体10の製造方法の一例について説明とすると、
図6に示すように、円筒形状の成形型30内に、両端部にそれぞれ軸方向ずれ部材26を装着した複数本の膜モジュール2を集束させて配置させ、その周囲に上記の合成樹脂Pを流し込むことによって、該合成樹脂Pで各膜モジュール2の外周を被覆し、固定化することによって形成される。
【0036】
内部に膜モジュール2を配置した成形型30の両端部には蓋体31が設けられる。各蓋体31には、膜モジュール集合体10において各膜モジュール2に対して原水の流出入を可能とするための開口部31aが膜モジュール2毎に形成されており、成形型30の端部に固着された際に、各膜モジュール2の端部を開口部31a内に配置させるか、又は該開口部31aから外部に僅かに突出させるようになっている。
【0037】
成形型30に蓋体31を装着した状態で、少なくとも一方の蓋体31に形成された樹脂注入口31bから内部に合成樹脂Pを流し込むことによって、各膜モジュール2間の隙間を合成樹脂Pで埋め、硬化させる。各膜モジュール2は集水管21の外周に封筒状膜22が密に巻回されているため、注入された合成樹脂Pはほとんど膜モジュール2の最外周面にとどまり、内部の集水管21まで至ることはなく、膜面を完全に塞いでしまうことはない。
【0038】
成形後、蓋体31及び成形型30を取り外すことにより、
図2に示すように、複数本の膜モジュール2が合成樹脂Pによって固められた円柱形状の膜モジュール集合体10が得られる。各膜モジュール2の両端部(原水流路23の端部)は、膜モジュール集合体10の両端部にそれぞれ露出している。
【0039】
集水管21の開口端部21bは、
図5に示すように、膜モジュール集合体10の一方端部から突出している。各膜モジュール2の集水管21の開口端部21bには、配管25が接続されている。
【0040】
この配管25は、各膜モジュール2の集水管21の開口端部21bとそれぞれ接続される分岐管部25aと、この分岐管部25aを1本につなげる配管本体部25bからなり、膜モジュール集合体10内に配置される全ての膜モジュール2の集水管21を配管本体部25bの1本にまとめている。
【0041】
第1マニホールド11は、金属、プラスチック、金属とプラスチックの複合材料、FRP等によって有底円筒形状に形成されており、その開口側が膜モジュール集合体10の一方端部に内部が水密状となるように取り付けられる。第1マニホールド11の内部には複数本の膜モジュール2に共通の原水室11aが形成されている。
【0042】
第1マニホールド11と膜モジュール集合体10との取付けは、一定の水密状態を形成できれば特に限定されず、例えばOリング等のシール部材を介して水密状に嵌合させることによって行うことができる。また、膜モジュール集合体10と第1マニホールド11とにそれぞれボルト挿通用のフランジ(図示せず)を突設しておき、これらによってボルト止めするようにしてもよい。
【0043】
有底円筒形状の第1マニホールド11の底部には、原水室11aに原水を導入するための原水導入口11bが設けられている。原水は、この原水導入口11bに接続された不図示の配管を通して供給される。
【0044】
第2マニホールド12は、金属、プラスチック、金属とプラスチックの複合材料、FRP等によって有底円筒形状に形成されており、その開口側が膜モジュール集合体10の他方端部に内部が水密状となるように取り付けられる。第2マニホールド12の内部には複数本の膜モジュール2に共通の洗浄排液室(原水濃縮液室)12aが形成されている。
【0045】
第2マニホールド12と膜モジュール集合体10との取付けも、一定の水密状態を形成できれば特に限定されず、例えばOリング等のシール部材を介して水密状に嵌合させることによって行うことができる。また、膜モジュール集合体10と第2マニホールド12とにそれぞれボルト挿通用のフランジ(図示せず)を突設しておき、これらによってボルト止めするようにしてもよい。
【0046】
有底円筒形状の第2マニホールド12の底部には、洗浄排液室12a内の洗浄排液を流出させるための排液排出口12bが設けられている。洗浄排液は、原水を各膜モジュール2の封筒状膜22の膜面に対して平行流を形成することによって該膜面の洗浄を行った際の排液であり、この排液排出口12bに接続された不図示の配管を通して排出される。
【0047】
この第2マニホールド12内の洗浄排液室12aには、各集水管21の開口端部21bに共通に接続された配管25の分岐管部25aが収容されており、この配管25の配管本体部25bの一端側が、第2マニホールド12に設けられた開口部12cから外部に突出して延びている。この配管本体部25bと開口部12cとの境界部分はOリング等のシール部材によって水密が図られている。配管本体部25bの突出端側には、不図示の配管が接続され、各膜モジュール2の集水管21に取り出された処理水を集めて移送させるようになっている。
【0048】
なお、ここでは、第2マニホールド12の中心部に開口部12cが配置されている。このため、第2マニホールド12の取り付けに際して該第2マニホールド12の中心に対する角度に注意を払う必要がなく、取付け作業を簡単にできる。
【0049】
このようなユニット1によれば、第1マニホールド11及び第2マニホールド12に対して、従来と同様に複数本の膜モジュール2を原水の流出入が可能となるように接続されるが、第1マニホールド11及び第2マニホールド12との接続は、膜モジュール集合体10に対してそれぞれ一度に行うだけで済み、膜モジュール2毎に接続を行う必要はない。このため、接続作業は大幅に簡素化される。
【0050】
また、水密構造部分は、第1マニホールド11と膜モジュール集合体10との接続部分、第2マニホールド12と膜モジュール集合体10との接続部分、及び、配管25の配管本体部25bが第2マニホールド12の開口部12cを貫通する部分との3箇所だけで済み、従来に比べて水密構造も大幅に簡素化される。
【0051】
更に、膜モジュール集合体10内に複数本の膜モジュール2を集束させるようにしているため、ユニット1としての幅を容易にコンパクトにすることができる。特に、第1マニホールド11及び第2マニホールド12と各膜モジュール2とを個別に接続する必要がないため、従来のようにマニホールドと膜モジュールとの接続開口部が近接してしまうことによる問題はなくなり、しかも、膜モジュール2毎の水密を考慮する必要がないため、各膜モジュール2の接続部分の水漏れ等の確認の必要はなくなる。
【0052】
よって、このユニット1によれば、接続作業の簡素化、水密構造の簡素化を図り得ると共に、全体のコンパクト化を図り得る。
【0053】
また、膜モジュール集合体10は複数本の膜モジュール2によって構成されるので、膜モジュール集合体10と同一径の1本の膜モジュールとする場合に比べると、膜の有効面積が広くなる利点がある。よって、同一スペースで処理量を増加させることができるようになる。
【0054】
膜モジュール集合体10には、
図2に示すように、隣接する膜モジュール2の間の合成樹脂Pの部分に、複数の空隙10aを有していることが好ましい。この空隙10aにより、膜モジュール集合体10の軽量化を図ることができる。
【0055】
この空隙10aは、内部が原水室11aと洗浄排液室12aとを連通する流路となって膜モジュール2による処理効率が低下しないようにするため、両端を貫通させないか、または、両端が貫通する場合は、原水圧が掛かる原水室11a側の開口部にキャップ部材を嵌入することによって水密状に閉塞する。
【0056】
また、膜モジュール集合体10は、
図7に示すように、隣接する膜モジュール2の間の合成樹脂Pの部分に、該膜モジュール集合体10の長さ方向に沿う補強用棒状体10bを有していることも好ましい。補強用棒状体10bは、例えばステンレス等の金属からなる棒状体であり、適宜数、好ましくは複数本を膜モジュール集合体10の合成樹脂Pの部分に埋設することにより、該膜モジュール集合体10の強度保持を図ることができる。特に、補強用棒状体10bを膜モジュール2毎にそれぞれ近接して配置させることで、各膜モジュール2の補強を図ることもでき、好ましい。
【0057】
このような補強用棒状体10bは中空状の棒状体によって構成することで軽量化を図るようにすることも好ましい。この場合も、内部が原水室11aと洗浄排液室12aとを連通する流路となって膜モジュール2による処理効率が低下しないようにするため、少なくともいずれか一方の端部は合成樹脂Pの外部に露出させないか、両端部を外部に露出させる場合は少なくとも一方の端部、好ましくは原水室11a側の端部を閉塞する。
【0058】
また、
図8に示すように、補強用棒状体は、その両端が第1マニホールド11及び第2マニホールド12を貫通するように延長させた補強用棒状体10cとすることも好ましい。この補強用棒状体10cの両端部にそれぞれ雄ねじを刻設することで、この補強用棒状体10cを第1マニホールド11と第2マニホールド12同士を連結する連結ボルトとして機能させることもできる。なお、
図8では配管25は図示省略している。
【0059】
以上説明した実施形態では、膜モジュール集合体10は円柱形状のものとしたが、膜モジュール集合体10の形状は特に限定されず、これが設置される船舶内部の構造に応じて様々な形状とすることができる。
【0060】
例えば、
図9(a)に示すように、断面が三角形状となるように三角柱状に形成してもよいし、
図9(b)に示すように、断面が四角形状となるように形成してもよい。ここでは断面台形状となっているが、断面が正方形状、長方形状、平行四辺形状であってもよい。また、
図9(c)に示すように、断面六角形状等の多角形状であってもよい。なお、
図9では軸方向ずれ防止部材26は図示省略している。
【0061】
次に、このようなユニット1を用いたバラスト水処理方法の一例を
図10に示す。
【0062】
ここでは3つのユニット1が並列的に設けられているが、ユニット1の数は特に限定されない。
【0063】
バラスト原水Wは、バラストポンプ40によって船舶内に汲み上げられ、バラスト原水吸込み管41を介して各ユニット1の第1マニホールド11内に供給される。41aはバラスト原水吸込み管41に設けられる開閉弁である。
【0064】
各ユニット1の第2マニホールド12から突出する配管25は処理水管42と接続され、該処理水管42を介してバラストタンク50と連通している。42aは処理水管42に設けられた開閉弁である。
【0065】
また、第2マニホールド12の排液排出口12bはバラスト原水流出管(洗浄排液放流管)43と接続され、該バラスト原水流出管43を介して例えば海へ放流する。43aはバラスト原水流出管43に設けられた開閉弁である。
【0066】
バラスト水の処理は、例えばバラスト原水を各ユニット1に供給して処理水を得る膜処理と、膜洗浄を交互に行う。膜処理では、デッドエンド方式による全量ろ過が行われる。この方式は、バラスト原水流出管43に設けられた開閉弁43aを閉じ、処理水管42の開閉弁42aを開けて、バラストポンプ40を始動して、バラスト原水を汲み上げ、バラスト原水を各ユニット1の第1マニホールド11に供給して、その全量を各膜モジュール2の原水流路23(
図3参照)を通過させることによって行われる。膜処理によって生じた処理水は、各集水管21から配管25に集められ、更に処理水管42に送られ、バラストタンク50に供給される。
【0067】
また、バラスト水の漲水時において、上記の全量ろ過と交互に、膜面平行流による膜洗浄(この洗浄をクロスフロー方式による膜洗浄といい、単に方式を指称する場合は、クロスフロー方式という場合がある)を行うことが好ましい。このクロスフロー方式は、バラスト原水流出管43に設けられた開閉弁43aを開けて、バラストポンプ40を始動して、バラスト原水を汲み上げ、各ユニット1の第1マニホールド11に供給して、各膜モジュール2内のバラスト原水流路23(
図2参照)を通過させて第2マニホールド12の排液排出口12bから排出させる。各膜モジュール2内を流れるバラスト原水は、各膜モジュール2の封筒状膜22の膜面と平行な流れによって、膜表面の付着物質を剥離させる。排出された付着物質を含むバラスト原水(洗浄排液)は、バラスト原水流出管43を介して例えば海へ放流されてもよいし、あるいはその洗浄排液をバラスト原水側(原水導入口11b)に戻して洗浄排液を濃縮液として循環させてもよい。
【0068】
上記膜面平行流による膜洗浄の際には、処理水管42の開閉弁42aを開いて、膜洗浄と共にバラスト原水をろ過して処理水を得てもよいし、反対に、開閉弁42aを閉じて、処理水を得ないようにしてもよい。
【0069】
また、このようなユニット1を使用したバラスト水の処理は、バラストタンク50内のバラスト水を船外に排水する際に行うようにしてもよい。