【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、表面の一部又は全部に酸点を含むことを特徴とする電極活物質、前記電極活物質を含む電極、及び前記電極を備える電気化学素子、好ましくはリチウム二次電池を提供することにある。
【0006】
また、本発明の目的は、酸点を有する化合物が既に製造された電極表面にコートされたり、電極材料と混合されることを特徴とする電極、及び前記電極を備える電気化学素子、好ましくはリチウム二次電池を提供することにある。
【0007】
さらに、本発明の目的は、(i)(a)プロトン(又は電子対)供与、或いは、プロトン(又は電子対)受容を行う化合物と、(b)酸点を有する化合物とを反応させる段階;及び、(ii)前記(i)段階の結果物を電極活物質の表面にコートし、そのコーティング層を乾燥させる段階を含むことを特徴とする、酸点強度が調節されたコーティング層を有する電極活物質の製造方法を提供することにある。
〔本発明の態様〕
〔1〕表面の一部又は全部に酸点を含むことを特徴とする、電極活物質。
〔2〕前記酸点が、ブレンステッド酸点又はルイス酸点であることを特徴とする、〔1〕に記載の電極活物質。
〔3〕前記酸点の強度が、H
0(ハメット インジケーター)が−10〜10の範囲であることを特徴とする、〔1〕に記載の電極活物質。
〔4〕前記酸点が、電極活物質上に表面処理された無機物又は有機(半)金属化合物と無機物との複合体により形成されることを特徴とする、〔1〕に記載の電極活物質。
〔5〕前記無機物が、表面の一部又は全部に存在するプロトン供与体作用基、異種金属原子の電気陰性度の差、又はこれらの全部により酸点が形成されることを特徴とする、〔4〕に記載の電極活物質。
〔6〕前記無機物で表面処理された電極活物質が、前記無機物で表面処理された後、400℃以上の温度で熱処理されることを特徴とする、〔4〕に記載の電極活物質。
〔7〕前記無機物が、
(a)13族元素含有化合物、又は
(b)(i)13族元素、及び(ii)アルカリ土金属、アルカリ金属、14族元素、15族元素、遷移金属、ランタノイド金属及びアクチナイド金属からなる群より選ばれた1種以上の元素を含有する化合物であることを特徴とする、〔4〕に記載の電極活物質。
〔8〕前記有機(半)金属化合物と無機物との複合体が、互いに結合された有機(半)金属化合物及び無機物間の電気陰性度の差、有機(半)金属化合物に結合された有機物質、又はこれらの全部により酸点が形成されることを特徴とする、〔4〕に記載の電極活物質。
〔9〕前記有機(半)金属化合物が、
(a)14族元素含有化合物、又は
(b)14族元素、及び、アルカリ土金属、アルカリ金属、13族元素、15族元素、遷移金属、ランタノイド金属及びアクチナイド金属からなる群より選ばれた1種以上の元素を含有する化合物であることを特徴とする、〔4〕に記載の電極活物質。
〔10〕前記有機(半)金属化合物が、電子供与基を一つ以上含むことを特徴とする、〔4〕に記載の電極活物質。
〔11〕前記有機(半)金属化合物が、シリコン(Si)含有化合物であることを特徴とする、〔4〕に記載の電極活物質。
〔12〕前記シリコン含有有機(半)金属化合物が、シラン、シリル化剤、シランカップリング剤、水素化珪素、モノシラン及びシランポリマーからなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする、〔11〕に記載の電極活物質。
〔13〕前記有機(半)金属化合物が、下記化学式1〜化学式7の何れか一つで表されることを特徴とする、〔4〕に記載の電極活物質。
[化1]
SiH
4
[化2]
Si(OR)
4−xR
x(0.1≦x≦3)
[化3]
Si(OR)
4−(x+y)R
xZ
y(0.1≦x+y≦3.9)[化4]
Si(OR)
4−xR
xSi(0.1≦x≦3)
[化5]
Si(OR)
4−(x+y)R
xZ
ySi(0.1≦x+y≦3.9)[化6]
R
xM(OR)
4−x(1≦x≦3)
[化7]
R
xMZ
y(OR)
4−(x+y)(0.1≦x+y≦3.9)
[上記式中、
Zは、ハロゲン元素であり、
Mは、アルカリ土金属、アルカリ金属、遷移金属、ランタノイド金属及びアクチナイド金属からなる群より選ばれた1種以上の元素であり、
Rは、ハロゲン元素に置換又は非置換の、C1〜C20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ビニル基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選ばれた置換基である。]
〔14〕前記有機(半)金属化合物と無機物の成分比率が、0wt%〜95wt%:5wt%〜100wt%の範囲であることを特徴とする、〔4〕に記載の電極活物質。
〔15〕前記無機物又は有機(半)金属化合物と無機物との複合体の含有量が、電極活物質100重量部当り0.05〜20重量部であることを特徴とする、〔4〕に記載の電極活物質。
〔16〕〔1〕〜〔15〕の何れか一項に記載の電極活物質を備えてなることを特徴とする、電極。
〔17〕前記電極が、正極であることを特徴とする、〔16〕に記載の電極。
〔18〕前記電極が、電極活物質の表面の一部又は全部に形成された酸点により、電池内に存在するHX(X=F、Cl、Br、I)と電極活物質との反応性が減少されることを特徴とする、〔16〕に記載の電極。
〔19〕酸点を有する化合物が電極表面にコートされ、電極材料と混合されることを特徴とする、電極。
〔20〕正極と、負極と、分離膜と、及び電解液を備えてなる電気化学素子であって、前記正極、前記負極又は両電極が、〔1〕〜〔15〕の何れか一つの電極活物質を含んでなる電極或いは〔19〕に記載の電極であることを特徴とする、電気化学素子。
〔21〕前記電気化学素子が、リチウム二次電池であることを特徴とする、〔20〕に記載の電気化学素子。
〔22〕(i)(a)プロトン(又は電子対)供与、或いは、プロトン(又は電子対)受容を行う化合物と、(b)酸点を有する化合物とを反応させる段階と、及び、
(ii)前記(i)段階の結果物を電極活物質の表面にコートし、そのコーティング層を乾燥させる段階を含むことを特徴とする、酸点強度が調節されたコーティング層を有する電極活物質の製造方法。
〔23〕前記酸点強度が、H
0が−10〜10の範囲であることを特徴とする、〔22〕に記載の製造方法。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明では、リチウムのインターカレーション/デインターカレーションを行ったり、或いは、挿入及び放出を行う電極活物質粒子の表面の一部又は全部に酸点を形成させ、電極活物質の表面の電気化学的物性を改質することを特徴とする。
【0010】
一般に、酸点は、ゼオライト等のような固体酸性触媒に存在して、化学反応、例えば分解反応等を起こす反応活性点として知られている。これに対し、本発明では、新規な表面改質法により、活物質の表面の一部又は全部に形成される表面改質部における特定の酸点強度を示す活性点を称する。
【0011】
酸点強度は、プロトンをどれくらい容易に供与できるか、或いは、電子対をどれくらい容易に受容できるかにより決定されるものである。よって、このような酸点特性は、一般に、表面構造よりは表面を構成する原子間の電子的性質と連関性があると言える。
【0012】
このように、表面に酸点が形成された電極活物質は、正電荷を有したり、又は電気陰性度の差により部分的に正電荷を有する通常の酸性物質と類似に作用する。したがって、電池内部に存在する、プロトンを供与する酸性物質(ブレンステッド酸)と、電子対を受容する親電子性物質(ルイス酸)との反応性自体が有意的に減少して、電池の諸般性能を向上できる。これに対しては下記のように推定することができる。
【0013】
1)従来の電極活物質の表面は、リチウム副産物又は親水性表面処理により弱塩基性を示す。よって、実際に酸点に対する認識が殆どなかった。
【0014】
このような従来の電極活物質、好ましくは正極活物質を用いる電池は、電極又は電解液内に存在する水分及びリチウム塩(例えば、LiPF
6)と反応して強酸であるHFを形成し、形成されたHFは、弱塩基性を示す電極活物質と自発的に反応して電極活物質成分を溶出させて退化させる。また、正極表面にLiFを形成して、電極内の電気抵抗の増加及びガスの発生により電池の寿命を低下させる。特に、HFによる電極の溶出速度は高温下で上昇するため、HFは高温での電池サイクル寿命及び保存性に大きな問題点を有することになる。
【0015】
これに対し、本発明の電極活物質は、表面上に酸点を有することで、実質的に酸性物質として作用することになる。よって、強酸の一種であるHX(X=ハロゲン元素)との反応性自体が低下するため、前述の問題点を根本的に解消でき、電極活物質の構造的安全性の確保及び電池性能の向上を図ることができる。
【0016】
2)従来の電池用電解液としてはカーボネート系非水溶媒を用いる。このようなカーボネート系電解液溶媒は、下記反応式1に表されるように、双極子モーメント上で相対的に正電荷(+)を有する炭素と、負電荷(-)を有する酸素とが存在するようになる。このとき、電極活物質の表面上に非共有電子対を供与できるルイス塩基が存在する場合、ルイス塩基が正電荷を表す炭素を攻撃して、電解液の親電子性分解反応がより活性化される。
【0017】
これに対し、酸点を有する本発明の電極活物質は、非共有電子対を供与するよりは非共有電子対を受容するルイス酸である。これにより、前述した電解液との副反応自体が有意的に減少して、電池性能の低下を最小化できる。
【化1】
【0018】
本発明により電極活物質の表面の一部又は全部に形成される酸点は、公知された通常の酸点を意味する。一例として、プロトンを供与できるブレンステッド酸点又は非共有電子対を受容できるルイス酸点であり得る。
【0019】
酸点強度は、H
0(Hammett indicator:ハメット インジケーター)で表され、公知された通常の範囲、例えば−20〜20内で調節可能である。酸点強度の調節により、電極活物質の退化防止及び電解液との副反応発生の抑制を図るために、H
0が−10〜10であるのが好ましい。
【0020】
電極活物質の表面上に酸点を形成する方法は、特別に制限されず、一例として下記の2種類の実施形態がある。
【0021】
1)第一の実施形態は、電極活物質を無機物で表面処理するものである。
【0022】
このように、電極活物質の表面上に表面処理された無機物は、無機物の表面の一部又は全部に存在するプロトン供与体作用基、及び/又は異種金属原子の電気陰性度の差により、電極活物質の表面電子の分布を変化させて表面の電気化学的物性が変化するものであり、これにより電極活物質の表面上に酸点が形成されるものである。
【0023】
無機物は、公知された通常の無機物、例えばセラミック、金属又はこれらの混合物であって、電極活物質の表面に存在するとき、表面の電気化学的物性を変化させることができるものであれば特別に制限がない。特に、原子サイズが小さくて電極活物質の表面上に容易にドープされることで、Liのインターカレーションに従う電極の構造的安全性が図られる13族元素、14族元素、15族元素、例えばB、Al、Ga、In、Ti又はこれらの組合を含む化合物が好ましい。
【0024】
使用可能な無機物の非制限的な例としては、(a)13族元素含有化合物;(b)(i)13族元素;及び(ii)アルカリ土金属、アルカリ金属、14族元素、15族元素、遷移金属、ランタノイド金属及びアクチナイド金属からなる群より選ばれた1種以上の元素を含有する化合物などがある。一例として、無機物は、M
1−XSi
XO
2(M=13族及び遷移金属からなる群より選ばれた1種以上の元素;0≦x<1)であり得る。
【0025】
酸点を有する無機物は、電極活物質の表面改質の後、熱処理により形成され得る。このとき、熱処理温度は、酸点を形成する温度以上であれば特別に制限がない。表面にヒドロキシル基が相変らず存在する場合、強いルイス酸点を形成できないため、可能であればヒドロキシル基を除去できる400℃以上が好ましい。
【0026】
前述した無機物の粒径及び含量は特別に制限されず、公知された通常の範囲内で適切に調節可能である。
【0027】
2)第二の実施形態は、電極活物質の表面を、有機(半)金属化合物及び無機物の複合体で表面処理するものである。
【0028】
このような電極活物質の表面上に形成される有機(半)金属化合物及び無機物の複合体は、互いに結合された有機(半)金属化合物と無機物との間の電気陰性度の差及び/又は有機金属化合物に結合された有機物質により、表面の電気化学的物性が変化して酸点を形成し得る。
【0029】
このとき、複合体のうち、有機(半)金属化合物及び無機物は、互いに化学結合により連結しており、このような化学結合の形態及び種類は特別に制限されない。例えば、共有結合、配位結合であり得る。
【0030】
このように、電極活物質又は電極の表面改質剤として有機(半)金属化合物及び無機物の複合体を並用する場合、有機−無機複合体に含まれた有機物成分により無機物成分、例えば無機アルコキシド化合物の加水分解速度を減少させることができる。従って、より均一な表面を生成できると共に、生成された表面を持続的に維持できるため、充放電の進行による電極活物質の構造的安全性の低下及び構造崩壊、これによる電池性能の低下を最小化できる。合せて、有機−無機複合体に含まれた無機成分により、表面改質層の導入に従う電極活物質の電気伝導性の低下を効率よく向上できる。
【0031】
また、電極活物質の表面に導入された有機−無機複合体は、空気中の水分又は二酸化炭素と反応してLi−副産物を生成し、これにより副反応を発生させる経時変化を防止できる。したがって外部要人による電極活物質の物質変化防止をはかることができる。特に、水分により変化が激しく発生するニッケル系正極活物質などがより効果的である。
【0032】
さらに、従来の表面改質されない電極活物質からなる電池での正極及び電解液間の副反応性接触面を減少させることで、電池の安全性を向上させることができる。
【0033】
前述したように、電極活物質の粒子の表面の一部又は全部に酸点を形成できる有機−無機複合体成分の一つは、公知された通常の有機(半)金属化合物であれば特別に制限がない。酸点強度の調節効果及び経時変化の防止効果を高めるために、ブレンステッド酸点を増加できる電子供与基を含むことが好ましい。電子供与基は、構造式、置換基又は炭素数の範囲などに特別に制限がなく、例えば水素又は炭化水素などがある。
【0034】
有機(半)金属化合物は、(a)14族元素含有化合物;又は(b)(i)14族元素;及び(ii)アルカリ土金属、アルカリ金属、13族元素、15族元素、遷移金属、ランタノイド金属及びアクチナイド金属からなる群より選ばれた1種以上の元素を含有する化合物などがあるが、これに制限されるものではない。有機(半)金属化合物としてはシリコン含有化合物が好ましいが、その具体例としては、シラン、シリル化剤、シランカップリング剤、水素化珪素、モノシラン、シランポリマー又はこれらの混合物などがある。
【0035】
有機(半)金属化合物は、下記化学式1〜化学式7で表されるが、これに制限されるものではない。
[化1]
SiH
4
[化2]
Si(OR)
4−xR
x(0.1≦x≦3)
[化3]
Si(OR)
4−(x+y)R
xZ
y(0.1≦x+y≦3.9)
[化4]
Si(OR)
4−xR
x Si(0.1≦x≦3)
[化5]
Si(OR)
4−(x+y)R
xZ
ySi(0.1≦x+y≦3.9)
[化6]
R
xM(OR)
4−x(1≦x≦3)
[化7]
R
xMZ
y(OR)
4−(x+y)(0.1≦x+y≦3.9)
上記式中、
Zは、ハロゲン元素であり、
Mは、アルカリ土金属、アルカリ金属、遷移金属、ランタノイド金属及びアクチナイド金属からなる群より選ばれた1種以上の元素であり、
Rは、ハロゲン元素に置換されたり、又は非置換されたC1〜C20のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ビニル基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選ばれた置換基である。
【0036】
本発明の電極活物質粒子の表面の一部又は全部に酸点を形成できる有機−無機複合体成分のもう一つは、前述した有機(半)金属化合物と化学結合数の差が発生して酸点を形成できる通常の無機物であれば、特別に制限がない。一例として前述した無機物成分が用いられる。このとき、有機−無機複合体の導入による電極活物質の伝導性の低下を防止するために、可能であれば伝導性を有する金属、金属含有酸化物、金属含有水酸化物、又はこれらの混合形態などを用いることが好ましい。
【0037】
前述した有機(半)金属化合物及び無機物からなる有機−無機複合体は、有機物及び無機物の単純混合形態でなく、これらが化学的に互いに結合された形態を示す。一例として、(a)金属−有機(半)金属化合物が結合された形態、金属酸化物−有機(半)金属化合物が結合された形態(Al
2O
3−Si−CH
3)、或いは金属水酸化物−有機(半)金属化合物が結合された形態(AlOOH−Si−CH
3)を示す。
【0038】
酸点を形成する化合物のうち、有機(半)金属化合物:無機物の成分比率は、特別に制限ないが、可能であれば0wt%〜95wt%:5wt%〜100wt%の範囲が好ましい。
【0039】
また、本発明の有機−無機複合体は、前述した成分の以外に、公知された通常の成分、例えば添加剤成分などをさらに含むことができる。
【0040】
本発明による電極活物質は、電極活物質の表面の一部又は全部を酸点を有する化合物で表面処理することにより製造可能である。
【0041】
その好ましい実施形態によれば、(a)無機物含有化合物又は無機物含有化合物と有機(半)金属化合物を混合したり、或いは溶媒に分散させる段階;及び、(b)前記混合物又は分散液に電極活物質を添加及び撹はんした後、乾燥する段階を含むことができる。
【0042】
前記無機物含有化合物としては、前述した元素を1種以上含む通常の水溶性又は非水溶性化合物が用いられる。例えば、前述した無機物を含むアルコキシド、硝酸、アセテートなどがある。
【0043】
溶媒としては、公知された通常の溶媒が用いられるが、その非制限的な例としては、水、アルコールなどの有機溶媒又はこれらの混合物などがある。
【0044】
前述した混合物又は分散媒に添加、混合及び撹はんしてコートされる電極活物質は、公知された通常の正極活物質、負極活物質を制限なく使用することができる。
【0045】
このとき、電極活物質の表面を無機物と有機(半)金属化合物との混合溶液でコートする方法は、公知された通常の方法、例えば、溶媒蒸発法、共沈法、沈殿法、ゾルゲル(sol-gel)法、吸着後フィルター法、スパッタ(sputtering)法、CVDなどが用いられる。中でもスプレーコート法が好ましい。
【0046】
無機物含有化合物又は無機物と有機(半)金属化合物との混合溶液(又は分散液)を電極活物質に添加するとき、電極活物質100重量部当り0.05〜20重量部の範囲で添加するのが好ましい。しかしながら、これに限定されるものではない。前記混合溶液が多過ぎる場合、活物質の表面に多量の表面処理層が存在して電極活物質へのリチウム移動及び 伝達が円滑ではなくて、電気化学的特性が減少し得る。また、前記混合溶液が少な過ぎる場合、所望の酸点効果を発揮し難い。以後、コートされた電極活物質は、公知された通常の方法により乾燥し得る。
【0047】
必要に応じて、乾燥された電極活物質を熱処理する段階を追加できる。このとき、熱処理温度は100℃以上であれば、特別に制限がなく、好ましくは100〜600℃の範囲である。また、熱処理は空気中又は非活性条件下で実施しても良い。
【0048】
従来には、高温焼成時、有機物が熱的に不安定であり、有機物が一部消耗されるため、所望の効果を発揮し難い。これにより焼成温度に制約が発生することになる。これに対し、本発明では、有機物の熱的不安定が無機物成分により補償されて熱的安全性を示すことができる。また、通常の乾燥段階又は低温焼成により製造可能であるため、製造方法の単純化に従う経済性の向上及び量産性を図ることができる。
【0049】
このように製造された電極活物質は、表面上に無機物又は有機−無機複合体層が形成されるが、形成された無機物又は有機−無機複合体は、前述したように酸点を形成することになる。
【0050】
本発明では、無機物又は有機−無機複合体で表面改質された電極活物質の表面物性が酸点を有することを、本願の実験例を通して確認できた(
図9参照)。特に、有機−無機複合体は、有機物及び無機物が互いに結合された形態を示すだけでなく(
図7参照)、複合体内の有機物に存在する電子を供与する作用基により無機物のブレンステッド酸点が相対的に増加することで、一層酸点強度が増加したことを確認できた(
図9参照)。
【0051】
本発明は、前記のような電極活物質を含む電極を提供する。このとき、前記電極は、HFや水分による変化が激しい正極である場合が好ましい。
【0052】
これと同時に、本発明は、酸点を有する化合物が電極の表面にコートされたり、或いは電極材料と混合される電極を提供する。
【0053】
本発明により酸点を有する化合物を電極の構成成分として含む電極を製造する方法は、特別に制限されず、通常の方法により製造可能である。その好ましい実施例によれば、無機物含有化合物又は無機物含有化合物と有機(半)金属化合物とを混合したり溶媒に分散させて製造された混合物又は分散液を、電極活物質と混合して電極スラリーを製造した後、製造されたスラリーを集電体に塗布して電極を製造してから、乾燥することで完了できる。
【0054】
このとき、前記段階(b)のうち、混合過程の例としては、前記混合物又は分散液と電極活物質を混合して電極スラリーを製造した後、製造されたスラリーを集電体に塗布するものである。
【0055】
また、本発明により有機−無機複合体を電極のコーティング成分として使用して電極を製造する方法も、公知された通常の方法により製造可能である。その一実施例によれば、無機物含有化合物又は無機物含有化合物と有機(半)金属化合物とを混合したり溶媒に分散させた後、これを既に製造された電極表面にコート及び乾燥すればよい。このとき、既に製造された電極は、公知された通常の方法により製造可能である。
【0056】
また、本発明は、正極、負極、分離膜及び電解液を含む電気化学素子において、前記正極、負極又は両電極が前述した電極活物質を含んだり電極であることを特徴とする電気化学素子を提供する。
【0057】
電気化学素子は、電気化学反応を行う全ての素子を含み、具体例としては、全ての種類の一次・二次電池、燃料電池、太陽電池又はキャパシターなどがある。特に、二次電池の中、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が好ましい。
【0058】
本発明の電気化学素子は、公知された通常の方法により、正極及び負極間に多孔性の分離膜を入れ、前記電解液を投入して製造できる。
【0059】
前記電極と共に適用される電解液及び分離膜は、特別に制限されず、従来の電気化学素子に用いられる通常のものを使用することができる。
【0060】
本発明で提示された方法により製作された電気化学素子、好ましくはリチウム二次電池の外形は、特別に制限がないが、缶からなる円筒形、コイン形、角形又はパウチ形が可能である。
【0061】
さらに、本発明は、表面の酸点強度が調節された電極活物質の製造方法を提供する。このような製造方法の一実施例によれば、(a)酸点を有する化合物;及び、(b)プロトン(又は電子対)供与、或いは、プロトン(又は電子対)受容を行う化合物を反応させた後、電極活物質の表面の一部又は全部に表面処理することによりなされるが、これに制限されるものではない。
【0062】
プロトン(又は電子対)供与、或いは、プロトン(又は電子対)受容を行う化合物は、従来の化合物の酸点強度を特定範囲に調節できる影響因子として使用するものである。このとき、化合物の含量、化合物内に存在する作用基、成分比の調節により、酸点強度を所望の範囲に調節できる。
【0063】
このとき、プロトン(又は電子対)供与、或いは、プロトン(又は電子対)受容を行う化合物は、前述した作用が行われるものであれば、特別に制限がない。調節された活物質の表面の酸点強度は、H
0が−10〜10範囲であるのが好ましいが、これに制限されるものではない。その他、同一の作用によりH
0を−20〜20範囲に調節することも、本発明の範囲に属している。