特許第5761760号(P5761760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5761760
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】二次電池用電極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20150723BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
   H01M4/48
   H01M4/36 B
   H01M4/36 C
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-172519(P2012-172519)
(22)【出願日】2012年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-26949(P2014-26949A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2012年8月3日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0081990
(32)【優先日】2012年7月26日
(33)【優先権主張国】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.ウェブサイトの掲載日:平成24年2月3日 2.ウェブサイトのアドレス及び掲載書 http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.201108915/abstract Angewandte Chemie International Edition Volume 51,Issue 11,pages2767−2771
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン、ジュ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ユン、アー
(72)【発明者】
【氏名】イ、ミ、リム
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、ジュン、ウー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジェ、ヤン
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/124893(WO,A1)
【文献】 特開2004−047404(JP,A)
【文献】 特開2003−317717(JP,A)
【文献】 特開2011−076788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62、10/00、10/05−10/0587、10/36−10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池用電極活物質であって、
表面に炭素がコーティングされた後、熱処理を介し内部にリチウムが分散され、表面或いは前記表面及び前記内部に気孔が存在し、前記表面に炭素が被覆された多孔性ケイ素酸化物複合体を含んでなり、
前記多孔性ケイ素酸化物複合体が、ケイ素相と、SiO(0<x<2)相と、二酸化ケイ素相とを備えてなり、5〜90%の空隙率を有するものであり、
前記多孔性ケイ素酸化物複合体が、多孔性ケイ素酸化物粒子の表面に炭素を被覆し、前記多孔性ケイ素酸化物粒子をリチウム前駆体と混合した後、熱処理して得られるものであることを特徴とする、リチウム二次電池用電極活物質。
【請求項2】
前記リチウムの含量が、前記多孔性ケイ素酸化物複合体の総重量に対して2〜15重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項3】
前記炭素の含量が、前記多孔性ケイ素酸化物複合体の総重量に対して2〜30重量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項4】
前記多孔性ケイ素酸化物複合体の内部に分散されたリチウムの濃度が、多孔性ケイ素酸化物複合体の炭素被覆された表面と隣接した部分で最大であり、前記多孔性ケイ素酸化物複合体の球心方向に行くほど低くなることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項5】
前記多孔性ケイ素酸化物複合体は、ケイ素酸化物として一酸化ケイ素を含むことを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項6】
前記多孔性ケイ素酸化物複合体のBET比表面積が、2〜100m/gであることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項7】
前記多孔性ケイ素酸化物複合体が、SiO(0<x<2)相を含むことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項8】
前記二酸化ケイ素相が、前記SiO相に分散されていることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項9】
前記二酸化ケイ素相が、結晶質であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項10】
前記ケイ素相が、電極活物質の中心周辺部より中心部で濃度がさらに大きいことを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項11】
前記二酸化ケイ素相が、SiO粒子の中心部より中心周辺部で濃度がさらに大きいことを特徴とする、請求項1〜10の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項12】
前記ケイ素相及び二酸化ケイ素相が、SiO(0<x<1)の不均等化により形成されることを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電極活物質。
【請求項13】
リチウム二次電池であって、
負極活物質を含む負極と、分離膜と、正極活物質を含む正極と、電解質とを備えてなり、
前記負極活物質又は前記正極活物質が、請求項1〜12の何れか一項に記載のリチウム二次電池用電極活物質であることを特徴とする、リチウム二次電池。
【請求項14】
リチウム二次電池電極活物質用多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法であって、
多孔性ケイ素酸化物粒子の表面に炭素を被覆し、
前記粒子をリチウム前駆体と混合した後、500〜1200℃での温度で熱処理し、及び、
リチウム二次電池電極活物質用多孔性ケイ素酸化物複合体の表面或いは表面及び内部に気孔を存在させてなることを含んでなる、リチウム二次電池電極活物質用多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法。
【請求項15】
前記リチウム前駆体が、LiOH・HO、LiCl、Li(OH)・HO、LiCHOO・2HO、LiSO、LiPO及びこれらの塩からなる群から選択される一種以上を含んでなることを特徴とする、請求項14に記載のリチウム二次電池電極活物質用多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理が、2〜10時間の間で行われることを特徴とする、請求項14又は15に記載のリチウム二次電池電極活物質用多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法。
【請求項17】
フッ素系溶液と金属前駆体溶液を混合した後、SiO(0<x<2)粒子と接触させて前記SiO(0<x<2)粒子の表面に金属粒子を電着させ、
前記金属粒子が電着されたSiO(0<x<2)粒子をエッチング溶液と接触させてエッチングし、
前記エッチングされたSiO(0<x<2)粒子を金属除去溶液と接触させて前記金属粒子を除去することをさらに含んでなることを特徴とする、請求項14〜16の何れか一項に記載のリチウム二次電池電極活物質用多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法。
【請求項18】
前記金属粒子を除去した後、
SiO(0<x<2)粒子をアルカリ系水酸化物が溶解された極性溶媒と混合し、
前記極性溶媒と混合されたSiO(0<x<2)粒子で極性溶媒を蒸発させた後、加熱することをさらに含んでなることを特徴とする、請求項17に記載のリチウム二次電池電極活物質用多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電極活物質に関し、さらに具体的に多孔性ケイ素酸化物複合体を含む電極活物質及び多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1800年代電気が発見されて以来、今まで低い作動電圧を有する電池から高い作動電圧を有する電池に、一次電池から二次電池に発展してきた。多様な電池のうちリチウム二次電池は21世紀の電池技術を主導し、各種の携帯用機器から電気自動車までエネルギー貯蔵システムとして注目されている。
【0003】
リチウム二次電池は、リチウムが放電過程で正極から負極に移動し、充電時にはリチウムイオンが負極から正極に移動しながら、電池内に電気エネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵装置である。他の電池と比較してみるとき、高いエネルギー密度を有し自家放電の生じる程度が小さいので幾多の事業全般に用いられている。
【0004】
リチウム二次電池の構成要素は負極、正極、電解質及び分離膜などに分けることができる。初期のリチウム二次電池では正極活物質としてリチウム金属が用いられたが、充電と放電が繰り返されることに伴い安全性の問題が現われながら、黒鉛(graphite)など炭素系物質に取り替えられた。炭素系正極活物質はリチウムイオンとの電気化学的反応電位がリチウム金属と類似し、継続的なリチウムイオンの挿入・脱離過程の間に結晶構造の変化が少ないので持続的な充/放電が可能となり、したがって、優れた充/放電寿命を有することになった。
【0005】
ところが、最近携帯機器に用いる小型リチウム二次電池から自動車に用いられる大型二次電池まで市場が拡大されるに伴い、正極活物質の高容量・高出力化技術が求められている。したがって、炭素系正極活物質より理論容量の高いケイ素、錫、ゲルマニウム、亜鉛、鉛などを中心に非炭素系正極活物質の開発が進められている。
【0006】
そのうち、ケイ素(silicon)系物質は、炭素系正極活物質の有する理論容量(372mAh/g)より11倍以上高い容量(4190mAh/g)を有しているので、炭素系正極活物質を取り替えるための物質として脚光を浴びている。しかし、ケイ素のみ用いた場合、リチウムイオンの挿入時に物質の体積膨張が3倍以上になるため、電池容量が充/放電が進められるほど減少する傾向を有し、安全性の問題も発生し商業化するためには多くの技術開発を要する。
【0007】
したがって、ケイ素系複合体に関する研究が活発に進行中である。そのうちケイ素系物質と炭素系物質を同時に用いる研究は、ケイ素系物質の体積膨張を最小化し、高い容量と充/放電寿命を同時に増加させるため開発された方法である。最も基本的な複合体の合成方法は、ケイ素系物質に炭素を被覆して用いることである。これは、活物質粒子間の電気伝導性及び電解質に対する電気化学的特性の向上と、ケイ素系粒子の体積膨張を減少させて電池寿命の増加とをもたらすものの、初期の充/放電時にケイ素系物質による非可逆相の形成により初期の充/放電効率が低下する問題がある。
【発明の概要】
【技術的課題】
【0008】
本発明は、二次電池の電極活物質として多孔性ケイ素系物質を用いることにより、初期効率及び容量維持率を向上させ、厚さの変化率を低めて寿命を向上させることのできる多孔性ケイ素酸化物複合体を含む電極活物質を提供する。
【技術的解決方法】
【0009】
本発明は、内部にリチウムが分散され、表面に炭素が被覆された多孔性ケイ素酸化物複合体を含む電極活物質を提供する。
【0010】
さらに、本発明は多孔性ケイ素酸化物粒子の表面に炭素を被覆し、
前記粒子をリチウム前駆体と混合したあと熱処理することを含む多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施例に係る電極活物質は、ケイ素系酸化物の表面及び内部に気孔を形成させ、二次電池で高容量を表すだけでなく、充/放電時に発生する体積の変化を効率的に制御し寿命が向上され得る。さらに、多孔性ケイ素酸化物粒子の内部にリチウムが分散され、表面に炭素が被覆され従来のケイ素系電極活物質より初期効率が増加するので、二次電池の電極活物質として有用に用いることができる。
【発明の実施のための最良の形態】
【0012】
本発明は、内部にリチウムが分散され、表面に炭素が被覆された多孔性ケイ素酸化物複合体を含む電極活物質を提供する。
【0013】
本発明の一実施例に係る電極活物質は、前述のように、ケイ素系物質の有する厚さ膨張の抑制及び寿命特性が低下する欠点を補うため多孔性ケイ素酸化物粒子を用いる。さらに、初期充/放電時にケイ素酸化物とリチウムとの反応により初期効率が低下する問題を解決すべく、多孔性ケイ素酸化物粒子の表面に炭素をコーティングしたあと、熱処理を介しリチウムを多孔性ケイ素酸化物粒子の内部に分散させて初期効率を増加させることができる。本発明の一実施例に係る電極活物質で、出発物質である多孔性ケイ素酸化物粒子は特定の製造方法に制限されず、多様な方法で製造され得る。
【0014】
本発明の一実施例に係る電極活物質で、前記リチウムの含量は、前記多孔性ケイ素酸化物複合体の総重量の2〜15重量%であり得る。前記リチウム含量が2重量%未満の場合は初期効率が向上されないことがあり得、15重量%を超過する場合はリチウムが過量含まれて二次電池の安全性を低下させ得る。さらに、前記多孔性ケイ素酸化物複合体で内部に分散されたリチウムの濃度は、炭素被覆された表面と隣接した部分で最大であり、多孔性ケイ素酸化物複合体の球心方向に行くほど低くなり得る。
【0015】
前記炭素の含量は、前記多孔性ケイ素酸化物複合体の総重量2〜30重量%であり得る。前記炭素の含量が2重量%未満の場合は多孔性ケイ素酸化物粒子の表面に炭素を均一に被覆することができず、30重量%を超過する場合は過量の炭素が被覆され電池の容量が減少し、炭素により気孔が塞がり電池の寿命が低下し得る。
【0016】
さらに、前記多孔性ケイ素酸化物複合体のBET比表面積は2〜100m2/gであり得る。
【0017】
本発明の一実施例に係る電極活物質において、前記多孔性ケイ素酸化物複合体のケイ素酸化物は一酸化ケイ素(SiO、silicon monoxide)であり得る。
【0018】
さらに、本発明の一実施例に係る多孔性ケイ素酸化物複合体の空隙率は、前記多孔性ケイ素酸化物複合体の全体体積に対し5〜90%であり得、前記多孔性ケイ素酸化物複合体の少なくとも表面、又は表面及び内部に蜂の巣状の気孔が形成され得る。前記多孔性ケイ素酸化物複合体の空隙率が5%未満の場合は充/放電時に電極活物質の体積の膨張を抑制することができず、90%を超過する場合は、電極活物質内に存在する多量の気孔により機械的強度が低下し、電池の製造工程(スラリーの混合、コーティング後プレッシングなど)時に電極活物質が破壊され得る。
【0019】
前記電極活物質の粒子の大きさは数十nm〜数十μmで多様であり得るものの、100nm〜50μmであってもよい。
【0020】
本発明の一実施例に係る電極活物質において前記多孔性ケイ素酸化物複合体は、ケイ素相と、SiOx(0<x<2)相と、二酸化ケイ素相とを含み、前記二酸化ケイ素相は前記SiOx相に分散されており、前記ケイ素相及び二酸化ケイ素相は結晶質であり得る。
【0021】
本発明の一実施例に係る電極活物質において、前記SiOxのxは0超過2未満で、0.5〜1.2であり得、商業的に容易に入手可能な一酸化ケイ素であり得る。前記xの範囲が0.5未満の場合は、初期効率は高いが体積の膨張を抑制することのできる酸素の量が少ないため、多孔性構造を形成するとしても寿命及び厚さ膨張の抑制が低下する問題があり、1.2を超過する場合は、酸素の量が増加し初期効率が低くなる問題がある。
【0022】
さらに、前記多孔性ケイ素酸化物複合体において、前記ケイ素及び二酸化ケイ素は、活物質粒子内にナノメートル大きさの結晶質で存在することができる。ここで、結晶質ケイ素の大きさは1乃至1000nmであり、結晶質二酸化ケイ素の大きさは1乃至1000nmである。前記多孔性ケイ素酸化物複合体に含まれているケイ素相、SiOx相及び二酸化ケイ素相はリチウムを挿入及び脱離することができる。
【0023】
前記ケイ素相及び二酸化ケイ素相は、SiOx(0<x<2)の負極(disproportionation)により形成され得る。前記多孔性ケイ素酸化物複合体のケイ素相は、多孔性ケイ素酸化物複合体の中心周辺部(ceter-periphery portion)より中心部(ceter portion)で濃度がさらに大きく、前記二酸化ケイ素相は、多孔性ケイ素酸化物複合体の中心部より中心周辺部で濃度がさらに大きい。本発明における多孔性ケイ素酸化物粒子の中心部は、以下のように定義する。前記多孔性ケイ素酸化物複合体の断面において、多孔性ケイ素酸化物複合体の接線から垂直方向での多孔性ケイ素酸化物複合体の長さの最大値を求めた後、この最大値の50%内側に入ったラインより内側の部分を中心部と称し、50%内側のラインより外側の部分を中心周辺部と称する。さらに、多孔性ケイ素酸化物複合体の中心周辺部より中心部で濃度がさらに大きいとのことは、50%の直径を有する多孔性ケイ素酸化物複合体の断面で多孔性ケイ素酸化物複合体の中心部での濃度平均が多孔性ケイ素酸化物複合体の中心周辺部での濃度平均より高いことを意味する。
【0024】
さらに、前記二酸化ケイ素相はクリストバライト(cristoballite)を含むことができる。
【0025】
前記二酸化ケイ素相は、前記多孔性ケイ素酸化物複合体に対し2〜50重量%で存在することができる。二酸化ケイ素相が2重量%未満の場合は初期効率の増加が微々たる問題があり、50重量%を超過する場合は初期効率は大きく増加するが放電容量が減少する問題がある。
【0026】
さらに、多孔性ケイ素酸化物複合体の少なくとも表面、又は表面と内部全てに気孔が存在して電池の容量が向上し、充/放電時に発生する体積の変化を効率的に制御することができるので向上した寿命を有することができる。本発明の一実施例に係る電極活物質は、負極活物質及び正極活物質の全てに使用可能であるものの、正極活物質であり得る。
【0027】
さらに、本発明は、負極活物質を含む負極と、分離膜と、正極活物質を含む正極と、電解質とを含む二次電池であって、前記負極活物質又は正極活物質は内部にリチウムが分散され、表面に炭素が被覆された多孔性ケイ素酸化物複合体を含むことを特徴とする二次電池を提供する。
【0028】
本発明の一実施例に係る電極活物質は、従来に通常用いられる電極活物質と混合して二次電池に用いられ得、前記通常用いられる電極活物質は黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン及びリチウムチタン酸化物(lithium titanium oxide)でなる群から選択される1種以上であり得る。
【0029】
前記電極活物質、具体的に正極活物質は、当分野で通常用いられる製造方法で電極を製造することができる。例えば、本発明の一実施例に係る正極活物質に結着剤と溶媒、必要に応じて導電剤と分散剤を混合及び攪拌してスラリーを製造した後、これを集電体に塗布し圧縮して正極を製造することができる。
【0030】
前記結着剤には、ビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコーポリマー(PVDF-co-HEP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム(SBR)、フッ素ゴム、多様な共重合体などの多様な種類のバインダー高分子が用いられ得る。
【0031】
前記溶媒にはN-メチルピロリドン、アセトン、水などを用いることができる。
【0032】
前記導電剤は、当該電池に化学的変化を誘発しないまま導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛と、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックと、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維と、フルオロカーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末と、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカーと、酸化チタンなどの導電性金属酸化物と、ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられ得る。
【0033】
前記分散剤は、水系分散剤又はN−メチル−2−ピロリドンなどの有機分散剤を用いることができる。
【0034】
前述の正極の製造と同様に、負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合してスラリーを製造した後、これを金属集電体に直接コーティングするか、別途の支持体上にキャスティングし、この支持体から剥離させた負極活物質フィルムを金属集電体にラミネーションして負極を製造することができる。
【0035】
前記負極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物や1又はそれ以上の転移金属に置換された化合物と、化学式Li1+yMn2-yO4(ここで、yは0〜0.33である)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物と、リチウム銅酸化物(Li2CuO2)と、LiV3O8、LiFe3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物と、化学式LiNi1-yMyO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B又はGaであり、y=0.01〜0.3である)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物と、化学式LiMn2-yMyO2(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn又はTaであり、y=0.01〜0.1である)又はLi2Mn3MO8(ここで、M=Fe、Co、Ni、Cu又はZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物と、化学式のLi一部がアルカリ土金属イオンに置換されたLiMn2O4と、ジスルフィド化合物と、Fe2(MoO43などを挙げることができるが、これらだけに限定されるものではない。
【0036】
前記分離膜は、従来分離膜に用いられる通常の多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独に、又はこれらを積層して用いることができ、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などでなる不織布を用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明の一実施例で用いられる電解液において、電解質に含まれ得るリチウム塩は、二次電池用電解液に通常用いられるもの等であれば制限なく用いられ得、例えば、前記リチウム塩の陰イオンにはF-、Cl-、I-、NO3-、N(CN)2-、BF4-、ClO4-、PF6-、(CF32PF4-、(CF33PF3-、(CF34PF2-、(CF35PF-、(CF36P-、CF3SO3-、CF3CF2SO3-、(CF3SO22N-、(FSO22N-、CF3CF2(CF32CO-、(CF3SO22CH-、(SF53C-、(CF3SO23C-、CF3(CF27SO3-、CF3CO2-、CH3CO2-、SCN-及び(CF3CF2SO22N-でなる群から選択される1種を用いることができる。
【0038】
本発明の一実施例で用いられる電解液において、電解液に含まれる有機溶媒には通常用いられるもの等であれば制限なく用いられ得、代表的にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ビニレンカーボネート、スルホラン、ガンマ−ブチロラクトン、プロピレンサルファイト及びテトラヒドロフランでなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0039】
特に、前記カーボネート系有機溶媒のうち環形カーボネートであるエチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒として誘電率が高く電解質内のリチウム塩を良く解離させるので好ましく用いられ得、このような環形カーボネートにジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率線形カーボネートを適当な割合で混合して用いれば高い電気伝導率を有する電解液を作ることができるので、さらに好ましく用いられ得る。
【0040】
選択的に、本発明に従い貯蔵される電解液は、通常の電解液に含まれる過充電防止剤などのような添加剤をさらに含むことができる。
【0041】
負極と正極との間に分離膜を配置して電極組立体を形成し、前記電極組立体を円筒状電池ケース又は角形電池ケースに入れた後、電解液を注入すれば二次電池が完成される。又は、前記電極組立体を積層した後、これを電解液に含浸させ、得られた結果物を電池ケースに入れて密封すれば二次電池が完成される。
【0042】
さらに、本発明は、多孔性ケイ素酸化物粒子の表面に炭素を被覆し、前記粒子をリチウム前駆体と混合したあと熱処理することを含む多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法を提供する。
【0043】
本発明の一実施例に係る多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法で、多孔性ケイ素酸化物粒子の表面に炭素を被覆する方法は、アセチレンガスを供給し加熱して製造され得るが、被覆方法がこれに制限されるものではない。
【0044】
前記炭素がコーティングされた多孔性ケイ素酸化物粒子をリチウム前駆体と混合して熱処理し、多孔性ケイ素酸化物複合体を製造することができる。前記熱処理を介し、炭素が被覆された多孔性ケイ素酸化物粒子の内部にリチウムが分散され得、このとき炭素は分散障壁(diffusion layer)の役割を行いリチウムが多孔性ケイ素酸化物粒子の内部に分散されるようにする。
【0045】
前記リチウム前駆体は LiOH・H2O、LiCl、Li(OH)・H2O、LiCH3OO・2H2O、Li2SO4、Li3PO4及びこれらの塩でなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0046】
前記熱処理は500〜1200℃で2〜10時間のあいだ行われ得る。前記熱処理温度が500℃未満の場合は、リチウム前駆体が充分分解されないか、リチウムが多孔性ケイ素酸化物粒子の内部に分散されないことがあり得、1200℃を超過する場合は、多孔性ケイ素酸化物粒子内に結晶質ケイ素が過度に成長する問題がある。
【0047】
本発明の一実施例に係る多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法において、前記多孔性ケイ素酸化物粒子の製造は、フッ素系溶液と金属前駆体溶液を混合したあとSiOx(0<x<2)粒子と接触させて前記SiOx粒子の表面に金属粒子を電着させ、前記金属粒子が電着されたSiOx粒子をエッチング溶液と接触させてエッチングし、前記エッチングされたSiOx粒子を金属除去溶液と接触させて前記金属粒子を除去することを含むことができる。
【0048】
前記多孔性ケイ素酸化物粒子の製造方法は、フッ素系溶液と金属前駆体溶液とを混合した後SiOx粒子を接触させ、前記金属前駆体溶液の金属粒子をSiOx粒子に電着させるステップを含む。このとき、フッ素系溶液によりSiOx粒子は電子を渡すことになり、渡した電子を溶液内の金属イオンが受けて金属イオンは還元されSiOx粒子の表面に電着される。一応金属粒子がSiOx粒子の表面に電着されると、金属粒子自体が触媒サイトとなり連続的な電着が生じることになる。前記SiOx粒子はSiOx(0<x<2)であり得る。
【0049】
前記フッ素系溶液はフルオロ化水素(HF)、フルオロ化ケイ酸(H2SiF6)及びフルオロ化アンモニウム(NH4F)でなる群から選択される1種以上を用いることができ、前記金属前駆体溶液は銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)及び銅(Cu)でなる群から選択される1種以上を含むことができる。前記フッ素系溶液と金属前駆体溶液は、10〜90:90〜10の体積比で混合され得る。前記フッ素系溶液が10体積比未満に混合される場合は、SiOx含有粒子の表面に電着される金属粒子の量が少なく反応速度が非常に遅いので、製造時間が長くなる問題があり、90体積比を超過して混合される場合はSiOx粒子の表面に金属粒子が電着される速度が非常に速いので、SiOx粒子の表面に均一で小さい大きさの金属粒子を電着させることができない問題がある。
【0050】
さらに、フッ素系溶液の濃度及びSiOx粒子の金属前駆体溶液との接触時間に従い、SiOx粒子に電着される金属粒子の量を調節することができ、前記SiOx粒子は前記フッ素系溶液及び金属前駆体溶液の混合溶液100重量部に対し0.001〜50の重量部で接触され得る。前記エッチング工程を介し、SiOx粒子にはナノ気孔(nanopore)、メソ気孔(mesopore)及びマクロ気孔(macropore)が形成される。
【0051】
前記SiOx粒子のエッチングは次の通りである。H2O2により金属粒子は酸化され金属イオンとなり、SiOx粒子と金属粒子との境界面でSiOx粒子は金属粒子に電子を伝達しながら引続き溶解され、前述のSiOx粒子の表面に電着された金属粒子で酸化した金属イオンの還元が発生する。このような方法で、金属粒子と接触するSiOx粒子は連続的にエッチングされ、少なくとも表面に蜂の巣状の多孔性構造を形成することができ、エッチングのあいだ金属粒子はエッチング溶液内で隣接する金属粒子と凝集する傾向が強いため、金属粒子の大きさは増加する。
【0052】
前記エッチング溶液は、フルオロ化水素(HF)溶液と過酸化水素(H2O2)溶液との混合溶液を用いることができ、エッチングの程度に応じて含まれるフルオロ化水素溶液の量が多様であり得るが、前記フルオロ化水素(HF)溶液と過酸化水素(H2O2)溶液とは10〜90:90〜10の体積比で混合され得る。このとき、H2O2の含量はSiOx粒子内でメソ気孔(mesopore)の形成に重要な役割を果たし、H2O2濃度により金属粒子の酸化量が決定され金属イオンの濃度を決定することができる。H2O2により金属粒子は金属イオンとなり、金属イオンは特定の欠陥地点(defective site、例えばSiOxがエッチングされた部分)で付着し始め、金属が付着したSiOx粒子の下部をエッチングしてメソ気孔を形成することになる。
【0053】
さらに、前記エッチングは30分乃至5時間のあいだ行われ得る。前記エッチングが30分未満で行われる場合はSiOx粒子に気孔の生成が微々たる問題があり、5時間を超過して行われる場合はSiOx粒子が過度にエッチングされ、SiOx粒子の機械的物性が低下するとの問題がある。
【0054】
前記金属除去溶液は硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)及び塩酸(HCl)でなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0055】
本発明の一実施例に係る多孔性ケイ素酸化物複合体の製造方法において、前記多孔性ケイ素酸化物粒子の製造方法は、前記金属粒子を除去したあと、SiOx粒子をアルカリ系水酸化物が溶解されている極性溶媒と混合し、前記極性溶媒と混合されたSiOx粒子から極性溶媒を蒸発させたあと加熱することをさらに含むことができる。
【0056】
前記アルカリ系水酸化物はLiOH、NaOH、KOH、Be(OH)2、Mg(OH)、Ca(OH)2及びこれらの水化物でなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0057】
前記アルカリ系水酸化物を溶解させる溶媒には、アルカリ系水酸化物を溶解させることができ除去が容易な溶媒であればこれに制限されるものではないが、水又はアルコール溶媒などを用いることができ、アルコール溶媒にはエタノール又はメタノールなどであり得る。
【0058】
前記SiOx粒子は、アルカリ系水酸化物の0.01〜30重量%で混合することができる。SiOx粒子が0.01重量%未満の場合は、後述の加熱工程後形成されたケイ素と二酸化ケイ素の量が少ないので(SiOxの一部が加熱を介しSi-SiO2になり、低いSiOx含量によりSi-SiOx-SiO2中Si-SiO2の割合が少なくなる)初期効率が低いことがあり得、30重量%を超過する場合は、加熱後形成されたSi-SiO2の量が多いので容量が大きく低下し得る。
【0059】
前記極性溶媒の蒸発は80〜120℃で行われ得、80〜120℃で予熱されているアルミナボートなどに備えて行われ得るものの、極性溶媒を蒸発させ得る温度であればこれに制限されるものではない。一方、前記極性溶媒の蒸発にも拘わらずアルカリ系水酸化物はSiOx粒子の表面に残存する。
【0060】
以後、前記極性溶媒を蒸発させた混合物を750〜1000℃で5〜120分のあいだ加熱することができる。前記加熱が750℃未満の場合は結晶質二酸化ケイ素が形成されない問題があり、1000℃を超過する場合は結晶質ケイ素が多量生成され二次電池の寿命特性を低下させ、エネルギー効率の側面で過量のエネルギーの消耗される問題がある。さらに、反応時間が5分未満の場合は結晶質二酸化ケイ素が形成されず、120分を超過する場合は結晶質二酸化ケイ素が形成されるに十分な時間が過ぎた後なので、エネルギー効率の側面で好ましくない。
【0061】
加熱後、SiOx粒子はケイ素及び非晶質シリカ(SiO2)に負極(disproportionation)される。即ち、SiOx粒子で酸素が外部(表面)に移動して非晶質SiO2を形成し、酸素と分離されたケイ素は、酸素と分離されたさらに他のケイ素と結合してケイ素結晶でSiOx相に存在することになり、非晶質SiO2がSiOx粒子の内部でよりは外部(表面)に主に形成される。非晶質SiOxは、加熱温度又は時間が増加するに伴い漸次減少し、逆に結晶質Si及び結晶質SiO2は増加することになる。
【0062】
本発明では、アルカリ系水酸化物がSiOx粒子の表面に存在する状態で加熱することにより、結晶質SiO2の形成を促進することになる。同一の温度で加熱するとしても、アルカリ系水酸化物を用いない場合はSiO2の結晶ピークが全然形成されないが、アルカリ系水酸化物を用いる場合はSi結晶の成長とともにSiO2の結晶ピークが急激に成長することになる(2 Theta=21度近傍)。即ち、従来の技術でのようにSiOと炭素の複合体の形成、又はSiOに炭素前駆体又は炭素を被覆するために熱処理する場合はSiのみ結晶成長をすることになる(XRD上で2 Theta=28.5度近傍)反面、本発明でのようにアルカリ系水酸化物がSiOxの表面に存在する状態で加熱する場合はSiO2が結晶質として成長することになり、初期効率(放電容量/充電容量×100、ケイ素系化合物に初めてリチウムが入った量に対するリチウムが初めて放出された量の割合)が増加することになる。結晶質に成長したSiO2は電気化学的に非活性(inactive、リチウムと無反応)であり、SiOxは電気化学的活性部分(リチウムと反応)と電気化学的非活性部分に分けられることになり、リチウムと反応しない電気化学的活性部分はSiOに比べSi対比酸素のモル濃度が減少するため、初期効率が増加するものと判断される。
【0063】
本発明の一実施例に係る多孔性ケイ素酸化物複合体において、前記多孔性ケイ素酸化物粒子の製造方法は、前記で製造された混合物を濾過するステップをさらに含むことができる。
【0064】
前記ステップは、加熱後SiOx粒子の表面に付着しているアルカリ系水酸化物を除去するためのステップである。多孔性ケイ素酸化物複合体の表面に付着しているアルカリ系水酸化物が除去されるよう、蒸留水に十分な時間のあいだ放置しておくことができる。
【0065】
以下、発明の好ましい実施例を介し、発明の構成及び作用をさらに詳しく説明する。但し、このような実施例により発明の権利範囲が限定されるものではなく、これは例示として提示されたものに過ぎない。
【0066】
実施例1:多孔性ケイ素酸化物複合体の製造1
多孔性ケイ素酸化物粒子の表面に炭素被覆
多孔性ケイ素酸化物粒子20gを回転管状炉に投入し、アルゴンガスを0.5L/分で流したあと温度を5℃/分の速度で800℃まで昇温させた。回転管状炉を10rpm/分の速度で回転させながらアルゴンガスを1.8L/分、アセチレンガスを0.3L/分で流しながら3時間のあいだ熱処理し、炭素が被覆された多孔性ケイ素酸化物粒子を製造した。このときの炭素含量は多孔性ケイ素酸化物粒子に対し5重量%であった。
【0067】
炭素が被覆された多孔性ケイ素酸化物粒子にリチウム結合
前記で製造された炭素が被覆された多孔性ケイ素酸化物粒子とLiOH・H2Oを65:35の重量比で混合し、アルゴン雰囲気下で700℃、5時間のあいだ熱処理してコア−シェル構造の多孔性ケイ素酸化物複合体を製造した。このとき、リチウムの含量は8重量%であった。
【0068】
実施例2(参考例):電極活物質の製造1
一酸化ケイ素粒子の表面にAg電着
フルオロ化水素(HF)が10モル%である300ml溶液と、硝酸銀(AgNO3)が10mMである300ml溶液とを10分間混合した。前記フルオロ化水素と硝酸銀とが混合された溶液に一酸化ケイ素(SiO)2gを添加し5分間混合したあと、濾過、洗浄及び乾燥してAgが電着された一酸化ケイ素を製造した。
【0069】
化学的エッチング
フルオロ化水素が5モル%である200ml溶液と、過酸化水素(H2O2)が1.5重量%で添加された100ml溶液とを10分間混合した。Ag粒子が電着された一酸化ケイ素を前記フルオロ化水素と過酸化水素とが混合されたエッチング溶液に投入し30分間混合したあと、濾過、洗浄及び乾燥して多孔性一酸化ケイ素を製造した。
【0070】
Ag除去
60モル%の硝酸(HNO3)100mlを50℃で加熱した後、前記多孔性一酸化ケイ素を投入して2時間のあいだ混合し、濾過、洗浄及び乾燥してAgが除去された多孔性一酸化ケイ素を製造した。
【0071】
アルカリ系水酸化物とケイ素系物質の混合
水酸化ナトリウム50mgをエタノールに溶解させて製造された水酸化ナトリウム溶液に、前記で製造された多孔性一酸化ケイ素1gを投入して10分以上攪拌した。
【0072】
溶媒蒸発及び加熱
80〜120℃で加熱されているアルミナボートに多孔性一酸化ケイ素と水酸化ナトリウムを混合した溶液を投入してエタノールを蒸発させた。溶媒の蒸発が完了すれば、多孔性一酸化ケイ素と水酸化ナトリウムの混合物が盛られたアルミナボートを石英管ファーネス(Quartz Tube Furnace)に投入した後、アルゴンガスを流しながら800℃の温度で5分間熱処理し、石英管ファーネスを常温まで冷却させて多孔性ケイ素酸化物粒子を製造した。
【0073】
溶媒に浸漬したあと濾過
アルミナボートに盛られている多孔性ケイ素酸化物粒子を回収し、蒸留水に2時間のあいだ浸漬して濾過し、多孔性ケイ素酸化物粒子の表面に付着している水酸化ナトリウムを除去した。
【0074】
実施例3(参考例):電極活物質の製造2
Agが電着された一酸化ケイ素をフルオロ化水素と過酸化水素が混合されたエッチング溶液に投入して5時間のあいだ混合したことを除いては、前記実施例2と同一の方法で多孔性ケイ素酸化物粒子を製造した。
【0075】
実施例4(参考例):電極活物質の製造3
熱処理時間を120分間行ったことを除いては、前記実施例2と同一の方法で多孔性ケイ素酸化物粒子を製造した。
【0076】
実施例5(参考例):電極活物質の製造4
Agが電着された一酸化ケイ素をフルオロ化水素と過酸化水素が混合されたエッチング溶液に投入して5時間のあいだ混合し、熱処理時間を120分間行ったことを除いては、前記実施例2と同一の方法で多孔性ケイ素酸化物粒子を製造した。
【0077】
実施例6乃至9(参考例):炭素が被覆された電極活物質の製造
前記実施例2、実施例3、実施例4及び実施例5で製造されたそれぞれの電極活物質20gを回転管状炉に投入し、アルゴンガスを0.5L/分で流したあと温度を5℃/分の速度で800℃まで昇温させた。回転管状炉を10rpm/分の速度で回転させながらアルゴンガスを1.8L/分、アセチレンガスを0.3L/分で流しながら5時間のあいだ熱処理し、導電性炭素被覆層が形成された多孔性ケイ素酸化物粒子を製造した。このとき、導電性炭素被覆層の炭素含量は多孔性ケイ素酸化物粒子の総重量の10重量%であった。
【0078】
実施例10:多孔性ケイ素酸化物複合体の製造2
前記実施例6で製造された炭素が被覆された多孔性ケイ素酸化物粒子とLiOH・H2Oを65:35の重量比で混合し、アルゴン雰囲気下で700℃、5時間のあいだ熱処理してコア−シェル構造の多孔性ケイ素酸化物複合体を製造した。このとき、リチウムの含量は8重量%であった。
【0079】
実施例11乃至20(実施例11及び20以外は参考例):二次電池の製造
前記実施例1乃至10で製造された物質をそれぞれ正極活物質に用い、アセチレンブラックを導電材、及びポリビニリデンフルオリドをバインダーとして用いて85:5:10の重量比で混合し、これらを溶媒であるN−メチル−2−ピロリドンに混合してスラリーを製造した。製造されたスラリーを銅集電体の一面に65μmの厚さにコーティングし、乾燥及び圧延したあと一定の大きさにパンチング(punching)して正極を製造した。
【0080】
エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを30:70の体積比で混合して製造された非水電解液溶媒にLiPF6を添加し、1MのLiPF6非水電解液を製造した。
【0081】
対向電極(counter electrode)としてリチウム金属ホイル(foil)を用い、両電極の間にポリオレフィン分離膜を介在させたあと、前記電解液を注入してコイン形二次電池を製造した。
【0082】
比較例1:
気孔のない一酸化ケイ素を正極活物質に用いたことを除いては、前記実施例11と同一の方法で二次電池を製造した。
【0083】
比較例2:
気孔のない一酸化ケイ素を前記実施例6と同一の方法で炭素が被覆された一酸化ケイ素の表面に炭素を被覆させたあと、前記実施例11と同一の方法で二次電池を製造した。
【0084】
比較例3:
前記比較例2で製造された炭素が被覆された一酸化ケイ素とLiOH・H2Oを65:35の重量比で混合し、アルゴン雰囲気下で700℃、5時間のあいだ熱処理し、内部にリチウムが分散され表面に炭素が被覆された一酸化ケイ素を製造した後、前記実施例11と同一の方法で二次電池を製造した。
【0085】
実験例1:寿命特性及び厚さ変化率の分析
前記実施例11乃至20及び比較例1乃至3で製造された二次電池の寿命特性及び厚さ変化率を調べるため、下記のような実験を行った。
【0086】
3番目のサイクルから0.5Cで充/放電を行って電池の寿命特性を測定しており、1番目のサイクル放電容量に対し49番目のサイクル放電容量の割合で表した。
【0087】
50番目のサイクル充電状態でそれぞれの二次電池を分解して電極の厚さを測定した後、サイクル充電前の電極の厚さとの差を測定して厚さの変化率で表した。
【0088】
下記表1は、実施例11乃至20及び比較例1乃至3で製造された二次電池の空隙率、寿命特性及び厚さ変化率を表したものである。
【表1】
−寿命特性:(49番目のサイクル放電容量/1番目のサイクル放電容量)×100
−厚さの変化率:(50番目のサイクル充電後の電極厚さ−サイクル前の電極厚さ)/サイクル前の電極厚さ×100
【0089】
前記表1に示した通り、実施例11乃至実施例20で製造された二次電池が比較例1乃至3で製造された二次電池と比べ、寿命特性が小さくは4%、大きくは15%まで向上することが分かり、厚さの変化率もまた小さくは22%、大きくは153%まで相違することが分かる。これは、本発明の一実施例に係る正極活物質が従来のSiとは異なり酸素を含むだけでなく、多数の気孔を含むため、電池の寿命特性及びスウェリング特性を大きく改善させることが分かる。
【0090】
実験例2:充/放電特性及び初期クーロン効率の分析
前記実施例11乃至20及び比較例1乃至3で製造された二次電池の初期効率を調べるため、下記のような実験を行った。
【0091】
二次電池の充/放電特性を調べるため、前記実施例11乃至20及び比較例1乃至3で製造された二次電池を5mVまで定電流で充電した後、5mVで電流が0.005Cに到達するまで一定に充電したあと終了した。二次電池の放電は1.5Vまで定電流で放電した。
【0092】
下記表2は、前記実施例11乃至20及び比較例1乃至3で製造された二次電池の放電容量、充電容量及び初期クーロン効率を示したものである。
【表2】
−初期効率:(1番目のサイクル放電容量)/(1番目のサイクル充電容量)×100
【0093】
前記表2に示した通り、実施例11乃至20で製造された二次電池は、比較例1の二次電池に比べ放電容量が多少減少したが、初期効率が大凡8%以上増加したことが分かる。さらに、実施例16乃至20で製造された二次電池は、比較例2の二次電池に比べ初期効率が大凡8%以上増加したことが分かる。一方、比較例3の場合は、初期効率が実施例11の次に高いことが分かるが、前述の寿命特性及び厚さ変化率が低いことが分かる。さらに、実施例20の場合、リチウムが含まれた重さほど電池の容量が微小に減少するが、初期効率は94.3%に大きく増加した。これは多孔性ケイ素酸化物粒子の製造で、アルカリ系水酸化物(例えば、NaOH)を用いて熱処理する負極反応による初期効率の増加とともに、リチウムを含んで初期効率が更に向上するものと判断される。さらに、多数の気孔を形成させるエッチング工程で厚さ膨張の程度は実施例6と類似することが分かる。