【文献】
佐藤優光,笠井健太,坂庭好一,帯疎行列を用いたノード検証復元アルゴリズムによる圧縮センシング,第34回情報理論とその応用シンポジウム予稿集,2011年11月22日,pp.536-540
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ランダム圧縮行列による圧縮処理には、行列演算処理の負荷が重いため、圧縮及び復元処理時間が長くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、圧縮センシングにおける圧縮及び復元処理の負荷を軽減することができる信号処理システム及び信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、リモート局と中央局とを備え
、前記リモート局が伝送路を介して前記中央局と通信可能に接続された信号処理システムであって、前記リモート局は、入力アナログ信号をデジタル信号に変換
し、前記中央局から受信したコントロール情報に含まれる圧縮センシングフレームのサイズの情報に従って該サイズによる圧縮センシングフレーム単位により変換後のデジタル信号を出力するAD変換部と、前記AD変換部が出力した
前記デジタル信号を
前記圧縮センシングフレーム毎に分けて高速フーリエ変換処理を実行して周波数領域の信号を出力する高速フーリエ変換部と、前記中央局から受信
した前記コントロール情報
に含まれる圧縮センシングフレームのサイズとランダム圧縮行列の行数および列数の情報に従って、各行が列数より少ない所定数の非ゼロのランダム値の成分を有し、各列が行数より少ない所定数の非ゼロのランダム値の成分を有し、各非ゼロの成分の位置がランダムに決定されたランダム圧縮行列を生成するランダム圧縮行列生成部と、前記高速フーリエ変換部が出力
した信号
と前記ランダム圧縮行列
の行列掛け算を行うことにより前記信号を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部が出力
した圧縮信号
を前記伝送路を介して前記中央局
へ送信
するとともに、前記中央局が送信
した前記圧縮センシングフレームのサイズと前記ランダム圧縮行列の行数および列数の情報を含む前記コントロール情報
を前記伝送路を介して受信
する第1の通信部とを備え、前記中央局は、前記リモート局が送信
した前記圧縮信号
を前記伝送路を介して受信
するとともに、前記コントロール情報を
前記伝送路を介して前記リモート局へ送信する第2の通信部と、
前記圧縮センシングフレームのサイズと前記ランダム圧縮行列の行数および列数とランダム復元行列の行数および列数の情報を生成し、該情報に基づき前記ランダム圧縮行列の生成のために前記リモート局に送信する前記コントロール情報を生成する制御部と、前記
制御部が生成した前記圧縮センシングフレームのサイズとランダム復元行列の行数および列数の情報に従ってランダム復元行列を生成するランダム復元行列生成部と、前記ランダム復元行列を用いて前記リモート局から受信
した前記圧縮信号を復元処理することにより元のデジタル信号を復元する復元部とを備え、前記復元処理は、グラフ表現を用いたL1最適化問題を解く際の近似値を求めることにより前記信号の復元を行うことを特徴とする
信号処理システムである。
【0012】
本発明は、リモート局と中央局とを備え
、前記リモート局が伝送路を介して前記中央局と通信可能に接続された信号処理システムであって、前記リモート局は、入力アナログ信号をデジタル信号に変換
し、前記中央局から受信したコントロール情報に含まれる圧縮センシングフレームのサイズの情報に従って該サイズによる圧縮センシングフレーム単位により変換後のデジタル信号を出力するAD変換部と、前記AD変換部が出力した
前記デジタル信号を
前記圧縮センシングフレーム毎に分けて高速フーリエ変換処理を実行して周波数領域の信号を出力する高速フーリエ変換部と、前記中央局から受信
した前記コントロール情報
に含まれる圧縮センシングフレームのサイズとランダム圧縮行列の行数および列数の情報に従って、各行が列数より少ない所定数の非ゼロの値として1の成分を有し、各列が行数より少ない所定数の非ゼロの値として1の成分を有し、各非ゼロの成分の位置がランダムに決定されたランダム圧縮行列を生成するランダム圧縮行列生成部と、前記高速フーリエ変換部が出力
した信号
と前記ランダム圧縮行列
の行列掛け算を行うことにより前記信号を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部が出力
した圧縮信号
を前記伝送路を介して前記中央局
へ送信
するとともに、前記中央局が送信
した前記圧縮センシングフレームのサイズと前記ランダム圧縮行列の行数および列数の情報を含む前記コントロール情報
を前記伝送路を介して受信
する第1の通信部とを備え、前記中央局は、前記リモート局が送信
した前記圧縮信号
を前記伝送路を介して受信
するとともに、前記コントロール情報を
前記伝送路を介して前記リモート局へ送信する第2の通信部と、
前記圧縮センシングフレームのサイズと前記ランダム圧縮行列の行数および列数とランダム復元行列の行数および列数の情報を生成し、該情報に基づき前記ランダム圧縮行列の生成のために前記リモート局に送信する前記コントロール情報を生成する制御部と、前記
制御部が生成した前記圧縮センシングフレームのサイズとランダム復元行列の行数および列数の情報に従ってランダム復元行列を生成するランダム復元行列生成部と、前記ランダム復元行列を用いて前記リモート局から受信
した前記圧縮信号を復元処理することにより元のデジタル信号を復元する復元部とを備え、前記復元処理は、グラフ表現を用いたL1最適化問題を解く際の近似値を求めることにより前記信号の復元を行うことを特徴とする
信号処理システムである。
【0018】
本発明は、リモート局と中央局とを備え
、前記リモート局が伝送路を介して前記中央局と通信可能に接続された信号処理システムが行う信号処理方法であって、前記リモート局が、入力アナログ信号をデジタル信号に変換
し、前記中央局から受信したコントロール情報に含まれる圧縮センシングフレームのサイズの情報に従って該サイズによる圧縮センシングフレーム単位により変換後のデジタル信号を出力するAD変換ステップと、前記AD変換ステップ
により出力した
前記デジタル信号を
前記圧縮センシングフレーム毎に分けて高速フーリエ変換処理を実行して周波数領域の信号を出力する高速フーリエ変換ステップと、前記中央局から受信
した前記コントロール情報
に含まれる圧縮センシングフレームのサイズとランダム圧縮行列の行数および列数の情報に従って、各行が列数より少ない所定数の非ゼロのランダム値の成分を有し、各列が行数より少ない所定数の非ゼロのランダム値の成分を有し、各非ゼロの成分の位置がランダムに決定されたランダム圧縮行列を生成するランダム圧縮行列生成ステップと、前記高速フーリエ変換ステップ
により出力
した信号
と前記ランダム圧縮行列
の行列掛け算を行うことにより前記信号を圧縮する圧縮ステップと、前記圧縮ステップ
により出力
した圧縮信号
を前記伝送路を介して前記中央局
へ送信
するとともに、前記中央局が送信
した前記圧縮センシングフレームのサイズと前記ランダム圧縮行列の行数および列数の情報を含む前記コントロール情報
を前記伝送路を介して受信
する第1の通信ステップと
を実行し、前記中央局が、前記リモート局が送信
した前記圧縮信号
を前記伝送路を介して受信
するとともに、前記コントロール情報を
前記伝送路を介して前記リモート局へ送信する第2の通信ステップと、
前記圧縮センシングフレームのサイズと前記ランダム圧縮行列の行数および列数とランダム復元行列の行数および列数の情報を生成し、該情報に基づき前記ランダム圧縮行列の生成のために前記リモート局に送信する前記コントロール情報を生成する制御ステップと、前記
制御ステップにより生成した前記圧縮センシングフレームのサイズとランダム復元行列の行数および列数の情報に従ってランダム復元行列を生成するランダム復元行列生成ステップと、前記ランダム復元行列を用いて前記リモート局から受信
した前記圧縮信号を復元処理することにより元のデジタル信号を復元する復元ステップとを
実行し、前記復元処理は、グラフ表現を用いたL1最適化問題を解く際の近似値を求めることにより前記信号の復元を行うことを特徴とする
信号処理方法である。
【0019】
本発明は、リモート局と中央局とを備え
、前記リモート局が伝送路を介して前記中央局と通信可能に接続された信号処理システムが行う信号処理方法であって、前記リモート局が、入力アナログ信号をデジタル信号に変換
し、前記中央局から受信したコントロール情報に含まれる圧縮センシングフレームのサイズの情報に従って該サイズによる圧縮センシングフレーム単位により変換後のデジタル信号を出力するAD変換ステップと、前記AD変換ステップ
により出力した
前記デジタル信号を
前記圧縮センシングフレーム毎に分けて高速フーリエ変換処理を実行して周波数領域の信号を出力する高速フーリエ変換ステップと、前記中央局から受信
した前記コントロール情報
に含まれる圧縮センシングフレームのサイズとランダム圧縮行列の行数および列数の情報に従って、各行が列数より少ない所定数の非ゼロの値として1の成分を有し、各列が行数より少ない所定数の非ゼロの値として1の成分を有し、各非ゼロの成分の位置がランダムに決定されたランダム圧縮行列を生成するランダム圧縮行列生成ステップと、前記高速フーリエ変換ステップ
により出力
した信号
と前記ランダム圧縮行列
の行列掛け算を行うことにより前記信号を圧縮する圧縮ステップと、前記圧縮ステップ
により出力
した圧縮信号
を前記伝送路を介して前記中央局
へ送信
するとともに、前記中央局が送信
した前記圧縮センシングフレームのサイズと前記ランダム圧縮行列の行数および列数の情報を含む前記コントロール情報
を前記伝送路を介して受信
する第1の通信ステップと
を実行し、前記中央局が、前記リモート局が送信
した前記圧縮信号
を前記伝送路を介して受信
するとともに、前記コントロール情報を
前記伝送路を介して前記リモート局へ送信する第2の通信ステップと、
前記圧縮センシングフレームのサイズと前記ランダム圧縮行列の行数および列数とランダム復元行列の行数および列数の情報を生成し、該情報に基づき前記ランダム圧縮行列の生成のために前記リモート局に送信する前記コントロール情報を生成する制御ステップと、前記
制御ステップにより生成した前記圧縮センシングフレームのサイズとランダム復元行列の行数および列数の情報に従ってランダム復元行列を生成するランダム復元行列生成ステップと、前記ランダム復元行列を用いて前記リモート局から受信
した前記圧縮信号を復元処理することにより元のデジタル信号を復元する復元ステップとを
実行し、前記復元処理は、グラフ表現を用いたL1最適化問題を解く際の近似値を求めることにより前記信号の復元を行うことを特徴とする
信号処理方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、圧縮センシングにおける圧縮処理の負荷を軽減することができるという効果が得られる。そのため、圧縮処理に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態>
[信号処理システムの全体構成]
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による信号処理システムを説明する。
図1は、本実施形態における信号処理システム100の構成を示すブロック図である。この図に示す信号処理システム100は、圧縮センシング部101、信号復元部102、ランダム圧縮行列生成部103およびランダム復元行列生成部104を備える。圧縮センシング部101は、ランダム圧縮行列生成部103により生成されたランダム圧縮行列を利用して入力信号を圧縮し、圧縮信号を出力する。信号復元部102は、ランダム復元行列生成部104により生成されたランダム復元行列を利用して圧縮信号を復元し、復元信号を出力する。
【0024】
ランダム圧縮行列生成部103は、各行と各列あたりにK個とJ個の非ゼロのランダム値を持つランダム行列を生成する。ここで、KとJはそれぞれランダム圧縮行列の行数と列数より少ない数である。
図2に、ランダム圧縮行列の行数と列数が4と10の場合に、KとJが5と2の場合のランダム圧縮行列の例を示す。各行には、5個のみの成分が非ゼロの値を持ち、各列は2個のみ成分が非ゼロの値を持つ。各非ゼロの値と非ゼロの値を持つ成分の位置はランダムに決定される。ランダム復元行列生成部104は、ランダム圧縮行列生成部が生成したランダム圧縮行列と同様な行列を生成し、ランダム復元行列とする。
【0025】
図3は、上記
図1に示す信号処理システム100における信号処理を模式的に示す図である。
図3(a)は、入力信号を示している。ここでの入力信号としては、時系列における(X
0〜X
299)の300個のデータを抜き出して示している。圧縮センシング部101は、上記のように時系列で入力される入力信号を所定数のデータごとの圧縮センシングフレームの単位に分割する。
図3(a)では、データX
0〜X
299を、X
0〜X
99、X
100〜X
199およびX
200〜X
299の各100個のデータから成る3つの圧縮センシングフレームに分割した例を示している。
【0026】
そして、
図3(a)から
図3(b)への遷移として示すように、圧縮センシング部101は、データX
0〜X
99から成る圧縮センシングフレームについて圧縮処理を施すことで、40個のデータT
0〜T
39から成る圧縮フレームを生成する。同様に、圧縮センシング部101は、データX
100〜X
199から成る圧縮センシングフレームについて圧縮処理を施して40個のデータT
40〜T
79から成る圧縮フレームを生成する。同様に、圧縮センシング部101は、データX
200〜X
299から成る圧縮センシングフレームについて圧縮処理を施して40個のデータT
80〜T
119から成る圧縮フレームを生成する。このように得られた圧縮フレーム(T
0〜T
39)、(T
40〜T
79)、(T
80〜T
119)が圧縮信号として出力される。
【0027】
このように圧縮センシング部101は、N個データから成る圧縮センシングフレームごとに、M(M<N)個のデータとなるように圧縮する。この
図4の例では、N=100、M=40とされているので、圧縮率は40%となる。
【0028】
次に、信号復元部102は、圧縮信号として、圧縮フレーム(T
0〜T
39)、(T
40〜T
79)、(T
80〜T
119)を入力し、この圧縮フレームごとを対象として復元処理を実行する。つまり、信号復元部102は、データT
0〜T
39から成る圧縮フレームについて復元処理を施して、X
0〜X
99のデータに復元する。同様に、信号復元部102は、データT
40〜T
79から成る圧縮フレームについて復元処理を施して、X
100〜X
199のデータに復元する。同様に、信号復元部102は、データT
80〜T
119から成る圧縮フレームについて復元処理を施して、X
200〜X
299のデータに復元する。このように復元されたデータX
0〜X
299が復元信号となる。なお、この図においては圧縮率が40%の場合を示しているが、圧縮率についてはあくまでも一例であり、他の圧縮率が採用されてかまわない。
【0029】
[信号復元部の構成]
以下、1個の圧縮センシングフレーム(N)分に相当する入力信号と、ランダム圧縮行列と、圧縮後の信号と信号復元後の信号を、それぞれ、X0と、Hと、Yと、Xと称する。第1の実施形態において、ランダム復元行列はランダム圧縮行列と同様であるため、ランダム復元行列もランダム圧縮行列と同様にHと称する。X0と、Hと、Yと、Xの行列のサイズは、それぞれ、N×1、M×N、M×1、N×1である。X0とHとYは、圧縮後の信号Yが、ランダム圧縮行列Hに入力信号X0を掛け算する結果で得られるため、Y=H×X0で表現される。
【0030】
以下、Hのu行目とi列目の成分をH
uiと称する。また、X0のi行目の成分をX0
i と称する。また、Yのu行目の成分をY
uと称する。X0
iとH
uiとY
uは、
【数1】
の関係式で表現される。ここで、∂uは、Hのu行目の非ゼロ成分に対する列添字の集合を表す。例えば、
図2に示すランダム圧縮行列の例において、ランダム圧縮行列の1行目の非ゼロ成分に対する列添字の集合は、{1、4、6、7、9}であるため、∂1は{1、4、6、7、9}である。同様に、∂2は、{2、3、4、8、10}である。
【0031】
以下、同様に、Hのi列目の非ゼロ成分に対する行添字の集合を∂iと表す。例えば、
図2に示すランダム圧縮行列の列において、ランダム圧縮行列の1列目の非ゼロ成分に対する行添字の集合は、{1、3}であるため、∂1は{1、3}である。同様に、∂2は、{2、3}である。
【0032】
HとYを与えられた際の信号復元の方策としてL1―MINIMIZATION(L1最小化)は、H×X=Yの拘束条件を満たしながら、XのL1ノルムを最小化するXを探す過程であり(式1)のように表される。
【数2】
ここで、XのL1ノルムとは、
【数3】
であり、Xの各成分の絶対値の総和を表す。
【0033】
(式1)は、拘束条件のない下記の(式2)で表すXの最適化問題と同様であることが知られている。
【数4】
ここで、λは、λ>0を満たす。
【0034】
さらに、(式2)は、λが+0に近づくことを解くことで、(式3)のZとXの最適化問題と同様になる。
【数5】
ここで、Zは、(式2)と(式3)を同様にするYとXの変数である。
【0035】
信号復元部102の復元処理は、(式3)で表される最適化問題の解として求められたXを、入力信号X0の近似値と見なし、入力信号X0の復元処理を行う。
【0036】
(式3)の最適化問題の解を求める準備として、(式3)の最適化問題の目的関数を、Ω(X,Z)と称し、(式4)のように表わす。
【数6】
ここで、
【数7】
は、Xに単独に依存し、
【数8】
は、Zに単独に依存する。
【0037】
(式4)が表す目的関数Ω(X,Z)のグラフ表現を導入する。
図5は、目的関数Ω(X,Z)のグラフ表現の例を示す。
図5において、「○」の表示は、信号の各成分X
iおよび目的関数(式4)の中でX
iに関して単独に依存する項λ|X
i|を表す。また、「□」の表示は、変数Z
uおよび目的関数(式4)の中でZ
uに関して単独に依存する項−(1/2)Z
u2+Z
uY
uを表現する。「○」の表示と「□」の表示を結ぶ結線は相互作用項H
uiZ
uX
iを意味する。
【0038】
信号復元部102の復元処理は、(式3)で表される最適化問題の解を求めることであるが、(式3)の最適化問題は、多変数を同時に最適化する必要があり、信号処理が複雑であり、また、信号処理における負荷が大きい。以下、(式3)の最適化問題の処理負荷を低減するため、(式4)で表現される目的関数を変数毎に独立な1変数の目的関数の束に近似し、各1変数毎の最適化問題を単独に求める。
【0039】
(式4)のΩ(X,Z)の中で、X
iのみに依存する目的関数をΩ
i(X
i)と称し、(式5)に表す。同様に、(式4)のΩ(X,Z)の中で、Z
uのみに依存する目的関数をΩ
u(Z
u)と称し、(式6)に表す。
【数9】
ここで、X\X
iは集合Xから要素X
iを取り除いてできる集合を表し、また、Z\Z
uは集合Zから要素Z
uを取り除いてできる集合を表す。例えば、集合Xが{X
1,X
2,X
3,X
4,X
5}の場合、X\X
2は、集合XからX
2を取り除いた{X
1,X
3,X
4,X
5}である。
【0040】
X
iのみに依存するΩ
i(X
i)と、Z
uのみに依存するΩ
u(Z
u)を、それぞれ、X
iのマージナルコスト(MARGINAL COST)とZ
uのマージナルコストと称する。X
iのマージナルコストΩ
i(X
i)が与えられれば、X
iの復元値は、Ω
i(X
i)をX
iについて最適化することで求まる。これは多変数の目的関数(式4)のΩ(X,Z)の最適化よりも技術的にも計算量的にも容易である。
【0041】
ここで、補助的な目的関数をもう1つ導入する。(式4)のΩ(X,Z)において、X
iが関わっている項は、
【数10】
のみである。このことに着目し、X
iに関する項を取り除いて得られる目的関数をΩ
\i(X\Xi,Z)と定義する。Ω
\i(X\Xi,Z)は下記の(式7)のように表される。
【数11】
【0042】
同様に、(式4)のΩ(X,Z)から、Z
uに関する項を取り除いて得られる目的関数をΩ
\u(X,Z\Z
u)と定義する。Ω
\u(X,Z\Z
u)は下記の(式8)のように表される。
【数12】
【0043】
(式7)及び(式8)に定義した、Ω
\i(X\Xi,Z)及びΩ
\u(X,Z\Z
u)をキャビティコスト(CAVITY COST)と称する。
【0044】
(式5)のΩ
i(X
i)と(式7)のΩ
\i(X\Xi,Z)の間では、(式9)の関係が成立する。
【数13】
【0045】
同様に、(式6)のΩ
u(Z
u)と(式8)のΩ
\u(X,Z\Z
u)の間では、(式10)の関係が成立する。
【数14】
【0046】
ここで、信号復元部102の復元処理が、(式3)に表す最適化問題の解を求めることにおいて、
図5のグラフがループを含まずツリー構造をしている場合には、任意のノードを取り除いて局所的に分離される部分同士は、他の部分で連結している可能性はない。そのため、最適化処理を任意のノードを取り除いて分かれる部分間で独立に行うことができる。
図6に、X
iを取り除いて局所的に分離される4部分の独立的な最適化処理の例を示す。
図6では、X
iを取り除くことで、
図5のグラフが連結しない4部分に分かれる。この4部分の最適化をそれぞれ独立して行ってから得られる4個結果だけを比較して最終的な解を求める。
【0047】
次に、最適化処理を任意のノードを取り除いて分かれる部分間で独立に行う方法を説明する。まず、X
iに関する項を取り除いて得られるキャビティコストΩ
\i(X\Xi,Z)における、Z
uのマージナルコストをΩ
u\i(Z
u)と称し、(式11)のように定義する。
【数15】
【0048】
同様に、Z
uに関する項を取り除いて得られるキャビティコストΩ
\u(X,Z\Z
u)における、X
iのマージナルコストをΩ
i\u(X
i)と称し、(式12)のように定義する。
【数16】
【0049】
そして、Ω
u\i(Z
u)とΩ
i\u(X
i)をキャビティマージナル(CAVITY MARGINAL)と称する。
【0050】
X
iのマージナルコストΩ
i(X
i)と、X
iのキャビティコストΩ
\i(X\X
i,Z)と、Ω
\i(X\X
i,Z)における、Z
uのキャビティマージナルΩ
u\i(Z
u)の関係は、(式13)のようになる。
【数17】
【0051】
同様に、Z
uのマージナルコストΩ
u(Z
u)と、Z
uのキャビティコストΩ
\u(X,Z\Z
u)と、Ω
\u(X,Z\Z
u)における、X
iのキャビティマージナルΩ
i\u(X
i)の関係は、(式14)のようになる。
【数18】
【0052】
ところで、
図5のグラフがループを含まずツリー構造をしている場合には、キャビティマージナルに関して、(式15)の関係式が成立する。
【数19】
ここで、∂i\uは、上記ランダム圧縮行列Hのi列目の非ゼロ成分に対する行添字の集合である∂iから、u行目の行添字を取り除いた行添字の集合である。例えば、
図2に表すランダム圧縮行列Hにおいて、3列目の非ゼロ成分に対する行添字の集合を表す∂3は、{2,4}であり、この集合から2行目の行添字を取り除いた行添字の集合∂3\2は、{4}になる。また、Z
vは、集合∂i\uの行添字に関するZの変数である。例えば、上記の集合∂3\2の{4}の場合、Z
vはZ
4である。なお、H
viは、上記ランダム圧縮行列Hのv行目とi列目の成分を表す。
図2に示すランダム圧縮行列Hにおいて、上記の集合∂3\2の{4}の場合、H
43は、4行目の3列目の成分である1.4である。そして、Ω
v\i(Z
v)は、X
iに関する項を取り除いて得られるキャビティコストΩ
\i(X\X
i,Z)における、Z
vのマージナルコストである。
【0053】
同様に、
図5のグラフがループを含まずツリー構造をしている場合には、キャビティマージナルに関して、(式16)の関係式が成立する。
【数20】
ここで、∂u\iは、上記ランダム圧縮行列Hのu行目の非ゼロ成分に対する列添字の集合である∂uから、i列目の列添字を取り除いた列添字の集合である。X
lは、集合∂u\iの列添字に関するXの変数である。H
ulは、上記ランダム圧縮行列Hのu行目とl列目の成分を表す。Ω
l\u(X
l)は、Z
uに関する項を取り除いて得られるキャビティコストΩ
\u(X,Z\Z
u)における、X
lのマージナルコストである。
【0054】
(式16)のキャビティマージナルΩ
u\i(Z
u)が得られれば、(式5)に定義したX
iのマージナルコストΩ
i(X
i)は、(式17)のように求められる。
【数21】
【0055】
同様に、X
iの成分毎に(i=1,2,3,...,N)、(式16)のキャビティマージナルΩ
u\i(Z
u)を計算してから(式17)のΩ
i(X
i)をX
iの各成分を求めることができる。
【0056】
キャビティマージナル間の関係(式15)及び(式16)を更新する際に必要な計算量は全ノード数Nに比例する程度であるが、関数方程式であるため実装が技術的に難しい。そこで、実装を簡易化するため、(式15)を(式18)の関係式に近似する。
【数22】
ここで、F
i→uは、(式15)を(式18)に近似するため追加した項である。さらに、(式18)を(式19)のように簡易化することができる。
【数23】
ここで、X
i→uは、(式18)を解いた結果であり、下記(式20)の最適化問題の解である。
【数24】
また、(式16)のΩ
u\i(Z
u)は、(式21)のように近似することができる。
【数25】
ここで、D
i→uは、(式16)のΩ
u\i(Z
u)を(式21)に近似するため追加した項である。
【0057】
上記キャビティマージナルΩ
i\u(X
i)とΩ
u\i(Z
u)とF
i→uとD
i→uが満たすべき関係式は、(式22)から(式24)までである。
【数26】
ここで、(式24)のsgn(・)は符号関数であり、sgn(・)の中の値の符号を表す。例えば、F
i→uが3の場合、sgn(F
i→u)は、+1になり、F
i→uが、−2の場合、sgn(F
i→u)は、−1になる。また、Θ(・)は、段階関数(UNIT STEP FUNCTION)であり、Θ(・)の中の値が正の値である場合、負の値である場合、0の場合、それぞれ+1、0、0.5を出力する。
【0058】
以下、:=は、:=の右側の数式の計算結果を、:=の左側の変数に入力する意味である。例えば、有る変数Aの初期値が3の場合、A:=A+1は、右のA+1の値を、左の変数Aに代入する意味である。この場合、Aの初期値が3であったため、A+1の結果4を数式の左の変数Aに代入し、Aは4になる。
【0059】
復元信号X
iは、(式22)、(式23)、(式24)によって各パラメータが決定された後(式25)と(式26)により得られる。
【数27】
同様に、X
iの成分毎に、(式21)から(式22)までの計算を行うことにより、復元信号Xが得られる。
【0060】
ここからは、(式3)において、λを+0にするメカニズムを説明する。以下、(式26)の中で、F
iが、λを超える成分、つまりΘ(|F
i|−λ)が+1を出力する成分を生き残り成分と称する。また、λを超える成分の数、
【数28】
に表す。
【0061】
復元が成功するためには、生き残り成分の個数は、圧縮後のデータ数Mを超えてはならない。λが小さすぎると、生き残り成分数は、Mより大きくなり、λが大きすぎると、生き残り成分数は、逆にMより小さくなる。したがって、適切なλの値を設定するためには、生き残り成分の数
【数29】
とMを比較し、
【数30】
がMより多ければ、λを増大させ、逆に、
【数31】
がMより小さければ、λを減少させることが必要である。上記のことを考慮し、λを(式27)のように更新する。
【数32】
この制御の下では,更新時の生き残り成分数が、圧縮後のデータの数Mを下回っている場合、λは減少していくため復元が成功に向かうにつれて、λを+0に近づけることができる。
【0062】
(式27)によるλの更新と、(式22)から(式26)までの反復を行うことにより、復元信号が得られる。
【0063】
このように圧縮センシングの信号復元処理における、1回の反復毎に必要な計算量が、全ノード数Nに比例する程度で済む復元方法と、この実装を簡易化する方法は、本実施形態においては処理負荷も大幅に軽減される。これにより、圧縮処理時間も有効に短縮される。
【0064】
[処理手順例]
図10のフローチャートは、
図1に示す信号処理システム100が実行する処理手順を示すフローチャートである。この図に示す各処理は、
図1に示した部位の何れかが適宜実行する。まず、ランダム圧縮行列生成部103は、
図1にて説明したようにランダム圧縮行列を生成し、圧縮センシング部101は、このランダム圧縮行列を用いて入力信号の圧縮を実行し、その結果を信号復元部102に出力する(ステップS11)。そして、信号復元部102は、ランダム復元行列生成部104により生成されたランダム復元行列を用いて、信号復元処理を行い(ステップS12)、復元した信号を出力する(ステップS13)。
【0065】
<第2の実施形態>
[信号処理システムの全体構成]
第2の実施形態における信号処理システム100の全体構成は、第1の実施形態と同様である。ただし、ランダム圧縮行列生成部103が生成するランダム圧縮行列は、非ゼロの値が全て1である。
図8は、
図2の例において、非ゼロの値が全て1である場合の例をしめす。以下、
図8のような行列をバイナリランダム圧縮行列と称する。
【0066】
第2の実施形態における圧縮処理は、第1の実施形態と同様である。ただし、信号の復元処理は、ランダム圧縮行列が、バイナリランダム圧縮行列であることを利用し、下記のように効率性を高めることができる。
【0067】
[バイナリランダム圧縮行列の場合の信号復元処理]
ランダム圧縮行列がバイナリランダム圧縮行列の場合、復元処理における効率性を向上させるため、任意の定数Δを用いて、(式24)を(式28)のように変更させてから、Δを最適化することで復元処理の性能を向上させる。
【数33】
【0068】
最適なΔは、ランダム圧縮行列Hの性質による。以下では、ランダム圧縮行列がバイナリランダム圧縮行列である場合の最適なΔを求める方法を記述する。この場合、上記の(式22)から(式26)は、Hの非ゼロ要素がすべて1となることを利用して簡単化し、それぞれ(式29)から(式33)までに表すことができる。
【数34】
ここで、Jは、ランダム圧縮行Hの各列のあたりの非ゼロ値の個数である。
【0069】
[非ゼロ要素の値が1の場合の収束の加速]
変数X
i→uの収束性を高めて、復元処理の性能を向上させるため、変数X
i→uを線形化してその変差を最小化する方法を考える。その準備として、X
i→u=X0
i+δX
i→uとして、変数X
i→uを固定点X0
iの周りのδX
i→uに関して線形化する。ここで、X0
iは、圧縮前の元信号X0のi番目の行の成分である。つまり、復元処理が完璧であれば、復元処理後の結果、X
iはX0
iと同様であるべきであるが、復元処理のずれを、δX
i→uと表記し、X
iをX0
i周辺の確率変数δX
i→uによる確率分布として考えてその変差を最小化することで、復元処理の性能を向上する。したがって、δX
i→uを独立確率分布の確率変数とみなし、その平均と分散をそれぞれM
1とM
2と表記すると、M
1とM
2は、(式26)から、それぞれ(式34)と(式35)になる。
【数35】
ここで、ρは、圧縮前の元信号X0の非ゼロ要素の割合である。例えば、X0が{0,0,0,1,2,0,1}である場合、非ゼロ要素の割合は3/7であるため、ρ=3/7になる。
【0070】
(式34)と(式35)のM
1とM
2を、速くゼロに収束するように、上記の任意の定数Δを設定することにより、変数X
i→uの収束性を高まり、復元処理の性能の向上ができる。
【0071】
変数δX
i→uの平均値M
lは、Δの設定ではなく、各更新時に消去することができる。
つまり、圧縮結果の拘束条件
【数36】
より、変数X
i→uについては、(式36)が成り立つことが要請される。
【数37】
(式36)が満たされる場合、(式37)が成り立ち、結果的にM
lはゼロとなる。
(式37)δX
i→u=0
ここで、(式36)を各更新時に成立させるため、(式37)が各更新時に要請される。
【数38】
D
u→iの更新式である(式29)に続いて、(式39)の処理を行うことで、(式37)を満足させることができ、M
lはゼロになる。
【数39】
【0072】
変数δX
i→uの分散値M
2の収束を加速させるため、変化率
【数40】
を、Δに関して最小化する。結果的に、Δ
*=ρ(K−1)が、最適値として得られる。 ここで、Δ
*は、
【数41】
を最小化するときのΔの値である。ただし、圧縮前の元信号の非ゼロ要素の密度ρを事前に知ることはできないため、次善の策として、圧縮後のデータの数Mで復元できる非ゼロ密度の最大値であるα=M/Nをρの代わりに用いる。つまり、下記の(式40)のΔ
*の値をΔの値として設定する。
(式40)Δ
*=α(K−1)
【0073】
X
i→uの初期値を0に設定したうえで、下記の動作の反復を行うことで、信号の復元処理をすることが可能になる。まず、パラメータの更新は、(式41)から(式43)の計算で行う。
【数42】
なお、閾値の更新波(式44)にしたがって行う。
【数43】
【0074】
(式41)から(式44)の動作を反復を行うことにより、復元信号が得られる。
【0075】
[処理手順例]
第2実施形態の処置手順例は、第1実施形態の例と同様である。
【0076】
このように圧縮センシングの信号復元処理における、ランダム圧縮行列がバイナリランダム圧縮行列であるである場合、1回の反復毎に必要な計算量が、全ノード数Nに比例する程度で済む復元方法と、この実装を簡易化する方法は、本実施形態においては処理負荷も大幅に軽減される。これにより、圧縮処理時間も有効に短縮される。
【0077】
<第3の実施形態>
[信号処理システムの全体構成]
第3の実施形態における信号処理システム100の全体構成は、第1の実施形態と第2の実施形態と同様である。ただし、ランダム圧縮行列のランダムな成分の結合は、信号成分をランダムに並べ替えるインターリーバを用いて生成することで、計算機能の高くないデバイスでの実装が簡易になる。
【0078】
また、圧縮センシング部101は、複数のインターリーバと加算器により構成される。
図9に、複数のインターリーバと加算器により構成される圧縮センシング部の例を示す。N次元の圧縮前の元信号X0は、J個のインターリーバ(X0の成分の位置をランダムに並べ替える装置)に入力される。各インターリーバは、独立なJ個のモジュールの一部を構成する。ここで、X0のi番目の成分のn番目のインターリーバによる出力結果をπ
n(i)と表記する。また、π
n(i)の逆関数を(π
n)
−1(i)と表記する。例えば、入力信号{1,2,3,4,5}が3番目のインターリーバに入力され、{5,1,2,3,4}の信号が出力される場合、3番目のインターリーバにとり、元信号の1番目の成分であった1が5に変わったため、π
3(1)=5になる。同様に、π
3(2)=1、π
3(3)=2、π
3(4)=3、π
3(5)=4になる。また、(π
n)
−1(i)はπ
n(i)の逆関数であるため、π
3(1)=5から(π
3)
−1(5)=4が成り立つ。同様に、(π
3)
−1(1)=2、(π
3)
−1(2)=3、(π
3)
−1(3)=4、(π
3)
−1(4)=5になる。なお、n番目のインターリーバによる出力のなかで、i番目の成分をX0
inと表記する。例えば、上記の例では、X0
13=5、X0
23=1、X0
33=2、X0
43=3、X0
53=4になる。
【0079】
また、各加算器は、インターリーバを介して入力された元信号に対して前からK個ずつの和を出力する。n番目のインターリーバを作用させた元信号のi番目の成分であるX0
inは、(式47)のように表される。
【数44】
【0080】
したがって、n番目の加算器のt番目の出力データは(式48)のようになる。
【数45】
この計算は、加算器のごとに独立に行うことができるため、処理速度を速くすることが可能である。
【0081】
圧縮センシング部101が複数のインターリーバと加算器により構成される場合、信号復元部102におけるパラメータ更新及び信号復元方法を
図10に示す。この場合、各信号成分は各加算器における計測値のうち1つのデータにしか含まれないため、グラフで表現した場合、各加算器は信号の各成分に対して並列して、一つの「□」の表示のノードの役割を果たす。また、各加算器には、同一の信号ベクトル(圧縮前の元信号)が入力されるため、信号ベクトル全体がまとまって「○」の表示のノードとして表現される。
【0082】
図10において、n番目の各加算器の信号推定値を、X
i→nと表記し、n番目の各加算器からの影響をD
n→iと表記すると、下記の(式49)から(式51)までのパラメータの更新式が得られる。また、下記の(式52)と(式52)の信号の復元が行われる。
【数46】
【0083】
また、∂tは、各加算器のt個目の圧縮データを構成する信号添字の集合であり∂t={K(t−1),K(t−1)+1,...,Kt}のように表現される。
【数47】
ここで、
【数48】
が、加算器毎に成立するため、平均の計算は、加算器毎に行う。
【数49】
なお、閾値の更新式は、(式54)である。
【数50】
【0084】
[処理手順例]
第3実施形態の処置手順例は、第1実施形態の例と同様である。
【0085】
このように、複数のインターリーバと加算器で構成される圧縮センシング部101と、上記の復元処理の方法にとり、計算機能の高くないデバイスでの実装が簡易になる。
【0086】
<第4の実施形態>
[信号処理システムの全体構成]
図11は、本実施形態における信号処理システム200の全体構成を示すブロック図である。この図に示す信号処理システム200は、AD変換部201、FFT処理部202、圧縮センシング部101、信号復元部102、ランダム圧縮行列生成部103およびランダム復元行列生成部104を備える。
【0087】
AD変換部201は入力されるアナログ信号を入力してAD変換を行い、デジタル信号を出力する。FFT処理部202は、AD変換部201が出力する信号を圧縮センシングのフレーム毎に分けてFFT処理を行いその結果を出力する。圧縮センシング部101、信号復元部102、ランダム圧縮行列生成部103およびランダム復元行列生成部104は第1の実施形態から第3の実施形態と同様である。
【0088】
[処理手順例]
図12は、
図11に示す信号処理システム200が実行する処理手順を示すフローチャートである。この図に示す各処理は、
図11に示した部位の何れかが適宜実行する。まず、AD変換部201は、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する(ステップS21)。そして、FFT処理部202はAD変換部201が出力する信号を圧縮センシングフレーム毎にFFT処理を行いその結果を圧縮センシング部101に出力する(ステップS22)。ランダム圧縮行列生成部103は、
図1にて説明したようにランダム圧縮行列を生成し、圧縮センシング部101は、このランダム圧縮行列を用いて入力信号の圧縮を実行し、その結果を信号復元部102に出力する(ステップS23)。そして、信号復元部102は、ランダム復元行列生成部104により生成されたランダム復元行列を用いて、信号復元処理を行い(ステップS24)、復元した信号を出力する(ステップS25)。
【0089】
<第5の実施形態>
[通信システムの全体構成]
図13は、信号処理システム構成が適用される通信処理システム600の全体構成例を示すブロック図である。この図に示す通信処理システム600は、リモート局300と中央局400を備える。リモート局300は、中央局400に対して複数存在し、各リモート局300は、伝送路500を介して中央局400と通信可能に接続される。なお、伝送路500については特に限定されるものではない。また、伝送路500は有線であっても無線であってもよい。
【0090】
リモート局300は、例えば音声信号などのアナログ信号を中央局400に伝送する。この際、リモート局300は、アナログ信号をデジタル信号に変換したうえで圧縮する。そして、リモート局300は、伝送路500を経由して圧縮信号を中央局400に伝送する。このように伝送すべき信号を圧縮することにより、伝送路500の有限な帯域を有効に利用することができる。中央局400は、伝送された圧縮信号を復元して所定の目的に利用する。
【0091】
[第5の実施形態のリモート局および中央局の構成]
図14は、
図11に示す信号処理システム200を、上記リモート局300と中央局400に適用した場合の構成例を示している。なお、この図において、
図1と同一部分には同一符号を付している。
【0092】
リモート局300は、AD変換部301、FFT処理部302、圧縮センシング部101、ランダム圧縮行列生成部103および通信部303を備える。AD変換部301は、リモート局300の外部から入力されるアナログ信号を入力してAD変換を行い、デジタル信号を出力する。FFT処理部302はAD変換部301が出力する信号を圧縮センシングのフレーム毎に分けてFFT処理を行いその結果を出力する。
【0093】
通信部303は、圧縮センシング部101が出力する圧縮信号を伝送路500経由で中央局400に送信する。また、通信部303は、中央局400の制御部402から出力される各種制御信号を伝送路500経由で受信する。
【0094】
中央局400は、信号復元部102、ランダム復元行列生成部104、制御部402および通信部401を備える。信号復元部102は、伝送路500を経由して送信された圧縮信号を入力する。そして、この圧縮信号とランダム復元行列生成部104が生成したランダム復元行列を利用して復元を行い、復元信号を出力する。
【0095】
制御部402は、リモート局300のAD変換部301に対して圧縮センシングフレームのサイズを通知する。AD変換部301は、通知されたサイズによる圧縮センシングフレーム単位によりAD変換後のデジタル信号を出力する。また、制御部402は、リモート局300のランダム圧縮行列生成部103に対して、伝送路500経由で、圧縮センシングフレームのサイズと、ランダム圧縮行列の行数および列数を通知する。ランダム圧縮行列生成部103は、通知された情報にしたがってランダム圧縮行列を生成する。
【0096】
また、制御部402は、同じ中央局400内のランダム復元行列生成部104に対して、圧縮センシングフレームのサイズとランダム復元行列の行数および列数を通知する。ランダム復元行列生成部104は通知された情報にしたがってランダム復元行列を生成する。通信部401は、リモート局300から送信された圧縮信号を受信する。また、通信部401は、上記各通知のために制御部402が出力する制御信号をリモート局300に伝送路500経由で送信する。
【0097】
[処理手順例]
図15は、通信処理システム600が実行する処理手順を示すフローチャートである。この図に示す各処理は、
図14に示した部位の何れかが適宜実行する。まず、リモート局300は、中央局400の制御部402から伝送路500を介して受信した、圧縮のフレームのサイズ等のコントロール情報に基づきパラメータの設定を行う(ステップS31)。そして、AD変換部301は、入力されるアナログをデジタル信号に変換する(ステップS32)。そして、FFT処理部302はAD変換部301が出力する信号を圧縮センシングフレーム毎にFFT処理を行いその結果を圧縮センシング部101に出力する(ステップS33)。ランダム圧縮行列生成部103は、
図1にて説明したようにランダム圧縮行列を生成し、圧縮センシング部101は、該ランダム圧縮行列を用いて入力信号の圧縮を実行し、その結果を通信部303に出力する(ステップS34)。
【0098】
そして、通信部303は、圧縮後のデータを伝送路500を介して中央局400に送信し(ステップS35)、中央局400の通信部401はこのデータを受信する(ステップS36)。続いて、信号復元部102は、ランダム復元行列生成部104により生成されたランダム復元行列を用いて、信号復元処理を行う(ステップS37)。制御部402は、復元された信号に基づきパラメータの更新を判定し、更新する場合はリモート局300に更新後のパラメータを伝送路500を介して送信する(ステップS38)。また、信号復元部102は、復元した信号を出力する(ステップS39)。
【0099】
なお、各図に示した部位の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより圧縮および復元処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0100】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0101】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行っても良い。