(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して各実施形態を説明する。尚、添付図面は、構造の概略を説明するためのものであり、実際の大きさを表していない。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、めっき層のハッチングを省略している。
【0012】
以下、一実施形態を
図1〜
図10に従って説明する。
(リードフレーム)
まず、リードフレーム1の構造を説明する。
【0013】
図1に示すリードフレーム1は、基本的には、QFP(Quad Flat Package)の基板として用いられる基板フレーム2から構成されている。基板フレーム2(基材)の材料としては、例えば銅(Cu)、Cuをベースにした合金、鉄−ニッケル(Fe−Ni)又はFe−Niをベースにした合金等を用いることができる。この基板フレーム2は、例えば金属板をプレス加工又はエッチング加工することにより得られる。
【0014】
基板フレーム2は、半導体素子21(
図2参照)が搭載されるダイパッド3を有している。ダイパッド3は、平面視矩形状に形成されている。このダイパッド3は、基板フレーム2の長手方向の側縁部両側に形成された一対のレール部4に連結するサポートバー5によって支持されている。ダイパッド3の周囲には、ダムバー6に接続された複数のインナーリード7が形成されている。ダムバー6には複数のアウターリード8の基端が接続され、そのアウターリード8の先端は一対のレール部4又は一対の内フレーム9に接続されている。なお、一対の内フレーム9は、一対のレール部4を連結するように、レール部4が延在する方向と直交する方向に延在している。これらダイパッド3、サポートバー5、ダムバー6、インナーリード7やアウターリード8は、基板フレーム2に形成された開口部10によって画定されている。なお、
図1において、破線部分は封止樹脂23(
図2参照)によって樹脂封止される樹脂封止エリアを示している。すなわち、ダイパッド3及びインナーリード7は封止樹脂23によって封止される一方、アウターリード8は封止樹脂23から露出される。
【0015】
図2に示すように、ダイパッド3は、インナーリード7よりも低い位置に配置されている。また、そのインナーリード7と一体的に構成されたアウターリード8は、ダイパッド3よりも低い位置に配置されている。このアウターリード8は、インナーリード7側から第1の屈曲部8aと第2の屈曲部8bが形成されている。なお、この第2の屈曲部8bから先端までの底面部が、プリント配線板等の実装用基板にはんだ実装される実装面となる。
【0016】
次に、ダイパッド3、インナーリード7及びアウターリード8の層構成について説明する。
図2に示すように、封止樹脂23によって覆われるダイパッド3及びインナーリード7の表裏面及び側面には、下地用の第1めっき層11と、第2めっき層12と、第3めっき層13と、第4めっき層14とが順に積層された4層構造のめっき15Aがそれぞれ施されている。ここで、本実施形態では、第1めっき層11がニッケル(Ni)めっき層、第2めっき層12がパラジウム(Pd)めっき層、第3めっき層13が銀(Ag)めっき層、第4めっき層14が金(Au)めっき層である。一方、封止樹脂23から露出されているアウターリード8の表裏面及び側面には、下地用の第1めっき層11と、第2めっき層12と、第4めっき層14とが順に積層された3層構造のめっき15Bが施されている。
【0017】
このように、封止樹脂23によって覆われた基板フレーム2には、第3めっき層13(Agめっき層)を含む4層構造のめっき15Aが施される一方、封止樹脂23から露出された基板フレーム2には、第3めっき層13を含まない3層構造のめっき15Bが施されている。なお、第1〜第4めっき層11〜14は、例えば電解めっきにより形成することができる。
【0018】
第1層目の下地用の第1めっき層11は、基板フレーム2の腐食を防止する耐腐食性効果、Pdからなる第2めっき層12との密着性や曲げ加工時のめっき割れなどを考慮して、材料組成や厚みが設定される。第1めっき層11の材料としては、例えばNiやNi合金などを用いることができる。また、第1めっき層11の厚みは、特性及び製造コストの点から、0.1μm以上3μm以下の範囲が好ましく、0.2μm以上2μm以下の範囲がより好ましい。
【0019】
第2層目の第2めっき層12は、第1めっき層11のアセンブリ時の熱による拡散と酸化を抑制する役割を果たす。このような機能を実現するための第2めっき層12の材料としては、例えばPd又はPd合金を用いることができる。第2めっき層12の厚みは、製造コストの点からできる限り薄膜化しつつも、第1めっき層11の拡散と酸化を抑制するためには、0.005μm以上0.2μm以下の範囲が好ましい。
【0020】
第3層目の第3めっき層13は、ボンディングワイヤ22との接続信頼性を向上させる役割を果たす。この第3めっき層13の材料としては、比較的酸化し難く、硬度の低い金属であることが好ましく、例えばAg又はAg合金を用いることができる。第3めっき層13の厚みは、ボンディングワイヤ22との接続信頼性を安定して向上させるためには、0.01μm以上3.5μm以下の範囲が好ましく、0.05μm以上3.5μm以下の範囲がより好ましい。
【0021】
第4層目の第4めっき層14は、ボンディングワイヤ22との接続信頼性を向上させる役割を果たす。このような機能を実現するための第4めっき層14の材料としては、酸化し難く、硬度の低い金属であることが好ましく、例えばAu又はAu合金を用いることができる。第4めっき層14の厚みは、製造コストの点からできる限り薄膜化しつつも、ボンディングワイヤとの接続信頼性を向上させるためには、0.001μm以上0.1μm以下の範囲が好ましく、0.003μm以上0.01μm以下の範囲がより好ましい。
【0022】
(半導体装置)
次に、半導体装置20の構造について説明する。
図2に示すように、樹脂封止型の半導体装置20は、上記リードフレーム1を用いて作成されたQFPのパッケージ構造を有している。この半導体装置20では、リードフレーム1のダイパッド3上、具体的にはダイパッド3の表面上に形成されためっき15A上に、半導体素子21が接着剤21A(例えば、Agペースト)により接着されている。この半導体素子21の電極21Bは、ボンディングワイヤ22を介してインナーリード7に接続されている。具体的には、半導体素子21の電極21Bは、ボンディングワイヤ22及び第1〜第4めっき層11〜14(めっき15A)を介して、インナーリード7と電気的に接続されている。これら半導体素子21、ボンディングワイヤ22、ダイパッド3及びインナーリード7は、封止樹脂23によって封止されている(覆われている)。そして、この半導体装置20では、アウターリード8が外部接続端子として封止樹脂23から露出されている。
【0023】
なお、半導体素子21は、例えばICチップやLSIチップなどである。図示の例では、1つの半導体素子が搭載されているが、必要に応じて、2個もしくはそれ以上の半導体素子を搭載するようにしてもよい。また、このような半導体素子に代えて、あるいは半導体素子と組み合わせて、任意の能動素子あるいは受動素子を搭載してもよい。ボンディングワイヤ22としては、例えばCuワイヤ、Auワイヤやアルミニウム(Al)ワイヤなどを用いることができる。封止樹脂23の材料としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂やアクリル樹脂などを用いることができる。
【0024】
(接続信頼性評価)
次に、上記4層構造のめっき15Aが施されたインナーリード7について、Cuワイヤの接続信頼性(ワイヤボンディング性)を評価した結果を説明する。
【0025】
まず、第1めっき層11の厚みを1.0μm、第2めっき層12の厚みを0.03μm、第3めっき層13の厚みを0.1μm、第4めっき層14の厚みを0.008μmとしたインナーリード7に対してワイヤボンディングされたCuワイヤの引っ張り強度を測定した(実施例1)。なお、従来の3層構造のめっき16(
図15参照)が施されたリードフレーム50、具体的にはNiめっき層11A、Pdめっき層12A、Auめっき層14Aの厚みをそれぞれ1.0μm、0.03μm、0.008μmとしたリードフレームについても同様の条件でCuワイヤの引っ張り強度を測定した(比較例1)。また、Cu又はCu合金からなる基板フレーム上に厚さ5μmの銀めっき層が直接形成されたリードフレームについても同様の条件でCuワイヤの引っ張り強度を測定した(比較例2)。これらの結果を
図3に示している。
【0026】
ここで、引っ張り強度は、インナーリードにステッチボンディングを施したリードフレームに対してCuワイヤステッチボンド部分の引っ張り試験を行い、その引っ張り試験においてCuワイヤが剥離又は破断した時の荷重を表わした値である。この荷重が大きいほど、引っ張り強度が高く、Cuワイヤの接続信頼性が高いことを示している。
【0027】
図3に示した結果から明らかなように、4層構造のめっき15Aが施された実施例1では、3層構造のめっき16が施された比較例1よりも、おおよそ3〜4倍程度の引っ張り強度を得ることができる。これは、第3めっき層13(Agめっき層)を追加することで、ワイヤボンディングの施されるインナーリード7(第4めっき層14)の表層の硬度が低下するためであると考えられる。詳述すると、まず、Auワイヤに代えてCuワイヤを使用した場合にワイヤボンディング性が低下するのは、CuワイヤがAuワイヤよりも硬く、接合時にCuワイヤの滑りが発生することに起因していると考えられる。これに対し、4層構造のめっき15Aが施された実施例1では、上述のように、第3めっき層13(Agめっき層)の存在によって表層の硬度が低下し、リードフレーム側の塑性変形を誘発することで、Cuワイヤの滑りが抑制されることにより良好な接続が可能となり、比較例1よりも引っ張り強度が大幅に向上したものと考えられる。なお、実施例1では、第3めっき層13(Agめっき層)の厚みが比較例2のAgめっき層と比べると薄く形成されているものの、その比較例2と同程度の引っ張り強度、つまり実用上、十分な引っ張り強度を得ることができる。
【0028】
上述したインナーリード7(第4めっき層14)の表層の硬度は、硬度の低い金属からなる第4めっき層14や第3めっき層13の厚みが厚くなるほど低くなる。このため、第4めっき層14及び第3めっき層13の厚みを厚くするほどワイヤボンディング性を向上させることができる。このことを示す評価結果例を
図4及び
図5に示している。
【0029】
まず、
図4は、インナーリード7上に形成された4層構造のめっき15Aのうちの第3めっき層13の厚みと、ビッカース硬度との関係を示している。具体的には、第1めっき層11の厚みを0.8μm、第2めっき層12の厚みを0.02μm、第4めっき層14の厚みを0.006μmとしたインナーリード7において、第3めっき層13(Agめっき層)の厚みを0μm、0.05μm、0.1μm、0.5μm、1.0μmに変えたときのビッカース硬度を示している。ビッカース硬度測定は50gFを用いた。なお、ビッカース硬度は、その値が低いほど、硬度が低いことを示している。この
図4の結果からも明らかなように、第3めっき層13の厚みが厚くなるほど、ビッカース硬度が低くなる、つまりインナーリード7の硬度が低くなる。
【0030】
次に、
図5は、インナーリード7上に形成された4層構造のめっき15Aのうちの第3めっき層13の厚みと、引っ張り試験後のステッチ(Stitch)剥がれによる不良発生率との関係を示している。この
図5に示した結果から明らかなように、第3めっき層13の厚みが厚くなるほど、ステッチ剥がれによる不良発生率が低くなっている。特に、第3めっき層13の厚みが0.05μm以上になると、ステッチ剥がれによる不良発生率が0(ゼロ)となる。このように、これらの結果からも、第3めっき層13の厚みを厚くするほど、インナーリード7の表層の硬度が低くなり、ワイヤボンディング性を向上させられることが分かる。
【0031】
但し、第3めっき層13の厚みを厚くするほど製造コストが増加するため、第3めっき層13の厚みの上限値についても検討した。この検討した結果を
図6に示している。
図6は、Cu又はCu合金からなる基板フレーム上に直接形成されるAgめっき層の厚みを、2.0μm、3.5μm、6.0μm、12.0μmに変えたときの引っ張り強度をそれぞれ示している。
図6の結果から明らかなように、Agめっき層の厚みが2.0μm以上である場合には、いずれの場合においても実用上、十分な引っ張り強度を得ることができる。但し、Agめっき層の厚みが3.5μmを超えると、Agめっき層の厚みが厚くなるほど、引っ張り強度のばらつきが大きくなることが分かる。したがって、
図6の結果から、Agめっき層の厚みを3.5μmに設定すると、高い引っ張り強度を安定して得ることができるのが分かる。なお、
図6の結果は基板フレーム上にAgめっき層を直接形成した場合の結果であるが、4層構造の第3めっき層13(Agめっき層)が引っ張り強度を向上させるのに大きく寄与しているため、この4層構造の第3めっき層13の厚みを変化させた場合にも、
図6の結果と同様の傾向の引っ張り強度が得られると考えられる。すなわち、4層構造のめっき15Aが施されたインナーリード7であっても、第3めっき層13の厚みを3.5μmに設定することにより、高い引っ張り強度を安定して得ることができ、高い接続信頼性を得ることができる。
【0032】
以上のことから、第3めっき層13の厚みは、0.05μm以上3.5μm以下の範囲が好ましい。
(信頼性評価)
封止樹脂内の基板フレームにAgめっき層を含む4層構造のめっきが施された構造(
図2参照)の半導体装置に対して信頼性試験(吸湿リフロー試験)を行って、その半導体装置の信頼性を評価した。また、その比較例として、封止樹脂内の基板フレームにAgめっき層を含まない3層構造のめっきが施された構造(
図15参照)の半導体装置に対しても同様の評価を行った。すなわち、これら両半導体装置に対する信頼性試験は、Agめっき層の有無が異なるだけで、その他の構造及び評価条件は同一である。
図7及び
図8は、このような信頼性試験前後の半導体装置において、封止樹脂とリードフレームとの間に剥離が生じているか否かを超音波探傷装置(SAT)で観察した結果を示している。
【0033】
ここで、上記信頼性試験は、次の条件下で行った。
吸湿条件:JEDEC MSL 2a(60℃/60%RH×120hrs)、リフロー条件:260℃×3回
図7(a)及び
図8(a)に示すように、信頼性試験の実施される両半導体装置において、その信頼性試験前には封止樹脂とリードフレームとの間に剥離が生じていないことが確認された。しかし、
図8(b)に示すように、封止樹脂内でAgめっき層を含まない3層構造のめっきが施された半導体装置では、信頼性試験が行われた後、検査した全てのダイパッドで封止樹脂とリードフレームとの間の剥離が検出された(白枠参照)。これに対し、
図7(b)に示すように、封止樹脂内でAgめっき層を含む4層構造のめっきが施された半導体装置では、信頼性試験を行った後でも、検査した全てのダイパッドで封止樹脂とリードフレームとの間の剥離は検出されなかった。これらの結果から、
図2に示す半導体装置20において、封止樹脂23で封止される領域の基板フレーム2に第3めっき層13(Agめっき層)を含む4層構造のめっき15Aを施すことにより、半導体装置20の信頼性を向上させることができるのが分かる。
【0034】
(アウターリード上にAgめっき層を形成しない理由)
ところで、基板フレーム2上に4層構造のめっき15Aを施す構造としては、
図16に示すように、インナーリード7と同様に、アウターリード8上にも4層構造のめっき15Aを施す構造が考えられる。しかし、本実施形態では、封止樹脂23から露出されるアウターリード8上には、意図的に、第3めっき層13(Agめっき層)を含まない3層構造のめっき15Bを施すようにした。以下に、その理由を説明する。すなわち、封止樹脂23から露出されるアウターリード8上に、第3めっき層13を形成した場合に発生する問題点を以下に説明する。
【0035】
(第1の問題点)
リードフレームがパッケージとなって、基板上にはんだ実装される際に、基板側のはんだとしてSn−Ag−Cu等の鉛フリーはんだが使用される場合に、以下の問題が発生するおそれがある。詳述すると、Ag3Sn金属化合物は比較的安定な合金であることから、上述のような鉛フリーはんだは機械的強度に優れた鉛フリーはんだとして知られているが、Sn中のAg濃度が4%を超えると、クリープ強度が過剰となり、基板のランド剥離などの現象を起しやすくなる。さらに、Sn中のAg濃度が5%を超えると、引け巣が発生し、クラックの原因ともなる。ここで、
図16に示すように、リードフレーム1Dのアウターリード8(実装面)上に第3めっき層13(Agめっき層)を含むめっき15Aが形成されていると、はんだと接合する部分にAgが大量に存在することになり、Ag濃度が高くなって上述したランド剥離やクラックなどが発生しやすくなる。
【0036】
(第2の問題点)
Agは、一般に、硫化しやすい金属として知られている。ここで、アウターリード8上にAgめっき層を含むめっき15Aが形成されていると、例えばアセンブリ時にAgがリードフレーム1Dの表層に熱拡散され、その表層においてAgとAuが共存又は合金として存在することになる。すると、リードフレーム1D(特に、アウターリード8)が硫化しやすくなる。さらに、アウターリード8に硫化が発生すると、アウターリード8とはんだとの濡れ性が悪化するという問題が発生する。これらのことを裏付ける実験結果を
図9及び
図10に示している。以下に、その実験条件及び実験結果を説明する。
【0037】
まず、アウターリード8上に3層構造のめっき15Bを施したリードフレーム1(
図2参照)とアウターリード8上に4層構造のめっき15Aを施したリードフレーム1D(
図16参照)とを用意し、それらリードフレーム1,1Dをアセンブリを想定した条件で加熱した後に、それらリードフレーム1,1Dに対してガス試験を行った。
【0038】
加熱条件:室温から30分かけて175℃まで上昇させた後、大気中において175℃で60分間加熱し、さらにホットプレート上において200℃で2分間加熱した。
ガス試験:デシケータ内に6%亜硫酸水を100ml入れ、その溶液から発生するSO
2ガス雰囲気下にリードフレームを60分間放置した。さらに、デシケータ内に2%硫化水素アンモニウム水を100ml入れ、その溶液から発生するH
2Sガス雰囲気下にリードフレームを15分放置した。
【0039】
以上のガス試験が行われたリードフレームのアウターリード表面に存在する元素をAES(Auger Electron Spectroscopy)定性定量分析装置を用いて測定した。この測定結果を
図9に示している。この結果から明らかなように、アウターリード上にAgめっき層を有するリードフレーム1Dでは、アウターリード8表面に存在する硫黄(S)の存在量が、アウターリード上にAgめっき層を有さないリードフレーム1のそれの約3倍となっている。このことから、Agめっき層の存在によってアウターリードが硫化しやすくなることが分かる。
【0040】
また、上記ガス試験が行われたリードフレームについてメニスコグラフ試験によりゼロクロスタイムを測定した。この試験(はんだ濡れ性評価)は、はんだバスの種類:64%Sn−Pb共晶はんだ、フラックスの種類:非活性ロジン系フラックス、試験温度:215℃、浸漬速度:2mm/秒、浸漬深さ:0.5mm、浸漬時間:10秒、という条件の下で行ってゼロクロスタイムを測定した。この測定結果を
図10に示している。なお、ゼロクロスタイムは、この時間が短いほど、はんだ濡れ性が良好であることを示している。
【0041】
図10の結果から、アウターリード上にAgめっき層を有するリードフレーム1D(硫化の発生しているリードフレーム)は、アウターリード上にAgめっき層を有さないリードフレーム1よりもゼロクロスタイムが長く、はんだ濡れ性が悪くなっていることが分かる。
【0042】
以上の実験結果からも明らかなように、アウターリード上にAgめっき層が存在すると、アウターリードが硫化しやすくなり、さらにはんだ濡れ性が悪化するという問題が発生する。
【0043】
そこで、本実施形態のリードフレーム1では、
図2に示すように、アウターリード8上に第3めっき層13(Agめっき層)を形成せずに、3層構造のめっき15Bを形成するようにした。これにより、上述した第1の問題点及び第2の問題点の発生を未然に防ぐことができる。
【0044】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)ワイヤボンディング部分の基板フレーム2(インナーリード7)上に、第1〜第4めっき層11〜14からなる4層構造のめっき15Aを形成するようにした。Agからなる第3めっき層13及びAuからなる第4めっき層14により、インナーリード7の表層の硬度が低下するため、接合時のボンディングワイヤ22(Cuワイヤ)の滑りを抑制することができる。これにより、ボンディングワイヤとの接続信頼性を向上させることができる。したがって、Cuワイヤを使用してワイヤボンディングする場合であっても、そのCuワイヤの良好なワイヤボンディング性を得ることができる。
【0045】
(2)封止樹脂23によって封止される基板フレーム2の全領域(ダイパッド3及びインナーリード7の表裏面及び側面)に、第1〜第4めっき層11〜14からなる4層構造のめっき15Aを形成するようにした。これにより、リードフレーム1と封止樹脂23との剥離が抑制され、半導体装置20の信頼性を向上させることができる。
【0046】
(3)封止樹脂23から露出される基板フレーム2(アウターリード8)上には、第3めっき層13を含まない3層構造のめっき15Bを形成するようにした。これにより、アウターリード8上にAgめっき層が存在することによって発生しうる問題、つまりランド剥離やクラックなどの発生や硫化に伴うはんだ濡れ性の悪化などの問題の発生を未然に防ぐことができる。
【0047】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・
図11に示されるリードフレーム1A及び半導体装置20Aのように、ダイパッド3と半導体素子21の電極21Bとを、ボンディングワイヤ22(例えば、Cuワイヤ)で電気的に接続するようにしてもよい。具体的には、半導体素子21の電極21Bに接続されるボンディングワイヤ22を、ダイパッド3上に形成された4層構造のめっき15Aに接続するようにしてもよい。
【0048】
・上記実施形態では、封止樹脂23によって封止されるダイパッド3及びインナーリード7全体に4層構造のめっき15Aを形成するようにした。これに限らず、例えば
図12に示すリードフレーム1B及び半導体装置20Bのように、封止樹脂23によって封止される領域のうち、ボンディングワイヤ22が接続される部分(ボンディング部分)のみに第3めっき層13(Agめっき層)を含む4層構造のめっき15Aを施すようにしてもよい。なお、この場合には、封止樹脂23によって封止される領域のうち、ボンディング部分以外の基板フレーム2(ダイパッド3及びインナーリード7)には3層構造のめっき15Bを施すようにすればよい。このような構造であっても、上記実施形態の(1)と同様の効果を得ることができる。
【0049】
・上記実施形態では、QFPに用いられるリードフレーム1及びQFPのパッケージ構造を有する半導体装置20に具体化したが、これに限定されない。例えば
図13に示すように、LOC(Lead On Chip)に用いられるリードフレーム1C及びLOCのパッケージ構造を有する半導体装置20Cに具体化してもよい。このような半導体装置20Cでは、インナーリード7の下面側に接着フィルム25Aが貼着され、その接着フィルム25Aに半導体素子25が接着されて該半導体素子25がリードフレーム1C(基板フレーム2A)に支持されている。また、半導体素子25の電極25Bとインナーリード7とがボンディングワイヤ22によって電気的に接続されている。そして、インナーリード7と、そのインナーリード7に支持された半導体素子25と、ボンディングワイヤ22とが封止樹脂23によって封止されている。なお、リードフレーム1Cの基板フレーム2Aは、複数のインナーリード7及び複数のアウターリード8を有し、ダイパッドを有さない。
【0050】
このような構造の半導体装置20Cに用いられるリードフレーム1Cでは、封止樹脂23によって封止される領域であって、少なくともワイヤボンディング部分の基板フレーム2Aに4層構造のめっき15Aが形成され、封止樹脂23から露出される基板フレーム2A(アウターリード8)に3層構造のめっき15Bが形成されている。このような構造であっても、上記実施形態の(1)と同様の効果を得ることができる。なお、封止樹脂23によって封止される基板フレーム2A(インナーリード7)の全領域に4層構造のめっき15Aを形成するようにしてもよい。
【0051】
・また、例えば
図14に示すように、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)に用いられるリードフレーム30及びQFNのパッケージ構造を有する半導体装置40に具体化してもよい。このようなリードフレーム30には、所要箇所(図示の例では2箇所)に開口部30Xが形成されている。このリードフレーム30の基板フレーム31は、上記開口部30Xによって画定される、ダイパッド32及びその周囲に配置される複数のリード33を有している。また、半導体装置40は、上記リードフレーム30と、ダイパッド32上に搭載された半導体素子41と、半導体素子41の電極41Bとリード33とを電気的に接続するボンディングワイヤ42と、半導体素子41やボンディングワイヤ42や基板フレーム31の一部を覆うように形成された封止樹脂43とを有している。この封止樹脂43は、上記開口部30Xに、リードフレーム30の厚さよりも所定の厚さだけ薄い厚さでリードフレーム30の一方の面(図示の例では上面)から内側に充填されている。なお、この封止樹脂43から露出されるリード33は、プリント配線板等の実装用基板にはんだ実装される実装面となる。
【0052】
このような構造の半導体装置40に用いられるリードフレーム30では、封止樹脂43によって封止される領域のダイパッド32及びリード33に4層構造のめっき15Aが形成され、封止樹脂43から露出されるダイパッド32及びリード33に3層構造のめっき15Bが形成されている。このような構造であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、封止樹脂43によって封止される領域では、少なくともボンディングワイヤ42がワイヤボンディングされる部分に4層構造のめっき15Aが形成されていれば、上記実施形態の(1)と同様の効果を得ることができる。
【0053】
・あるいは、その他のパッケージ構造(例えば、BGA(Ball Grid Array)やLGA(Land grid array)など)を有する樹脂封止型の半導体装置やその半導体装置に用いられるリードフレームに具体化してもよい。