(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置を示すブロック図である。
図3に示す例では、電力変換装置5は、ポンプPに連結されたモータMを駆動するために使用されている。
図3に示すように、電力変換装置5は、インバータ10、センサ部15、インバータ制御部16、記憶部17、および操作通信部19を備えている。
【0017】
インバータ10は、コンバータ回路11、インバータ回路12、ゲートドライブ回路13を有している。コンバータ回路11は整流回路を有しており、商用電源1から供給される3相の交流電力を直流電力に変換するように構成されている。インバータ回路12は、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのスイッチング素子を有しており、コンバータ回路11によって変換された直流電力から3相の交流電力を生成する。ゲートドライブ回路13は、インバータ回路12の各スイッチング素子を開閉するためのゲートドライブ信号を生成する。インバータ回路12のスイッチング素子は、ゲートドライブ回路13からのゲートドライブ信号に従って駆動され、これによりインバータ回路12は可変周波数の交流電力を出力する。
【0018】
センサ部15は電流測定器20および電圧測定器21を有している。電流測定器20は、インバータ回路12から出力される三相電流を測定して、その測定値(出力電流信号)をインバータ制御部16に送る。電圧測定器21は、モータMが発生する誘起電圧を測定して、その測定値(誘起電圧信号)をインバータ制御部16に送る。センサ部15は、ポンプPの吐出圧力、流量などの制御対象を測定する各種センサをさらに有してもよい。
図3の符号25は、ポンプPの吐出圧力を測定する圧力センサである。
【0019】
記憶部17は不揮発性のメモリであり、インバータ回路12の駆動および制御のために必要な各種パラメータや、制御プログラムなどが格納されている。また、記憶部17には、吐出圧力制御などのポンプ運転制御に必要なプログラムや各種パラメータが記憶されている。
【0020】
操作通信部19は、電力変換装置5の外部からの操作により、電力変換装置5の運転を開始および停止し、また各種設定値を設定するように構成されている。また、操作通信部19は、外部から周波数指令信号を受信し、また運転状況を示す信号を外部に出力する。操作通信部19は、より上位の制御装置との接続を通信を介して行うように構成されてもよい。
【0021】
インバータ制御部16は、センサ部15から送られる測定信号、および操作通信部19から送られる周波数指令信号に基づいて、モータMの回転速度を制御する。すなわち、インバータ制御部16は、周波数指令信号を操作通信部19から受け、センサ部15からの測定信号に基づいてPWM信号を生成する。このPWM信号はゲートドライブ回路13に送られる。ゲートドライブ回路13は、PWM信号に基づいて、インバータ回路12のスイッチング素子を駆動するためのゲートドライブ信号を生成する。インバータ回路12のスイッチング素子は、ゲートドライブ回路13からのゲートドライブ信号に従って駆動され、これによりインバータ回路12は可変周波数の交流電力を出力する。
【0022】
図4はインバータ制御部16のブロック図である。インバータ制御部16は、モータMに供給する電流をトルク電流成分と磁化電流成分とに分解してこれらを独立に制御するベクトル制御部30と、モータMに発生する誘起電圧からモータMの位相および回転速度を決定する同期始動制御部50とを有している。同期始動制御部50は、自由回転しているモータMの回転速度を決定することができるので、ベクトル制御部30はモータMの回転速度に同期したインバータ駆動を開始することができる。
【0023】
インバータ10の3相の出力電流は、電流測定器20により測定される。測定された三相電流Iu,Iv,Iwは、3/2相変換部32、静止/回転座標変換部33により、回転座標系上の二相電流Id,Iqに変換された後、磁化電圧制御部34およびトルク電圧制御部35に入力される。磁化電圧制御部34は、磁化電流Idと磁化電流指令値Id*との偏差を0とする磁化電圧指令値Vd*をPI演算により求める。磁化電流指令値Id*は、モータモデルを用いて算出された理想的な磁化電流である。トルク電圧制御部35は、トルク電流Iqとトルク電流指令値Iq*との偏差を0とするトルク電圧指令値Vq*をPI演算により求める。
【0024】
目標トルク電流決定部37は、外部から入力された角速度指令値ω*と現在の角速度ωとの偏差が0となるようにPI演算を行なってトルク電流指令値Iq*を決定する。現在の角速度ωは、電圧指令値Vd*,Vq*に基づき、軸誤差推定器(PLL)38によって求められる。さらに、積分器39により角速度ωから位相θが求められる。得られた位相θは、静止/回転座標変換部33および回転/静止座標変換部40に送られる。電圧指令値Vd*,Vq*は、回転/静止座標変換部40および2/3相変換部41を経て固定座標系上の3相電圧指令値Vu*,Vv*、Vw*に変換される。
【0025】
ベクトル制御部30は、これら三相電圧指令値Vu*,Vv*、Vw*に対応したPWM信号を生成し、このPWM信号をゲートドライブ回路13に送る。ゲートドライブ回路13は、三相電圧指令値Vu*,Vv*、Vw*に対応するPWM信号に基づいてゲートドライブ回路PWM信号を生成し、スイッチング素子は、ゲートドライブ回路PWM信号に基づいて動作(オン、オフ)される。このように、インバータ10はベクトル制御部30からの三相電圧指令値に基づいた電圧を生成し、これをモータMに印加する。
【0026】
ポンプが水道本管に直結された、いわゆる直結型の給水装置では、ポンプが停止しているときでも、水道本管からの液体の圧力により給水が行われることがある。したがって、インバータ10によりモータMが駆動されていないときであっても、ポンプ内を流れる液体によりポンプの羽根車およびこれに連結されたモータMが回転する。このようにモータMが自由回転している状態からインバータ10によりモータMを始動するためには、回転しているモータMの誘起電圧の周波数および位相に同期した電圧をインバータ10が生成する必要がある。
【0027】
モータMの自由回転は、瞬間的な停電の直後にも起こる。すなわち、モータMがインバータ10により駆動されている最中に瞬間的な停電が起こると、モータMに電力が供給されていなくても、モータMのロータは慣性によりしばらくの間は回転し続ける。停電が復旧した後に自由回転しているモータMを始動するときは、モータMの誘起電圧の周波数および位相に同期した電圧をインバータ10が生成する必要がある。
【0028】
本明細書では、モータが電力の供給を受けずに、外部の運動エネルギーまたは慣性により回転している状態を「自由回転」という。このような自由回転しているモータとインバータとの同期始動を実現するために、本電力変換装置5は、モータMのU相、V相、W相の誘起電圧を測定し、その測定された電圧から自由回転しているモータの位相(磁極位置)および回転速度を推定し、その推定された位相および回転速度に基づいて、インバータ10の制御を開始する。
【0029】
回転しているモータMは、誘起電圧を発生する。電力変換装置5はこのモータMの誘起電圧からモータMの位相および回転速度を決定する。
図5は、
図4に示す同期始動制御部50を示すブロック図である。
図5に示すように、同期始動制御部50は、U相−V相間の電圧差からパルス信号を生成する第1の線間電圧比較器51A、V相−W相間の電圧差からパルス信号を生成する第2の線間電圧比較器51B、第1の線間電圧比較器51Aにより生成されたパルス信号のパルスエッジを検出する第1のパルスエッジ検出部52A、第2の線間電圧比較器51Bにより生成されたパルス信号のパルスエッジを検出する第2のパルスエッジ検出部52B、およびパルスエッジからモータの位相を特定し、かつモータの回転速度を算出する速度算出部55を有している。
【0030】
電圧測定器21は、インバータ10とモータMとを接続する三相の線の電圧を測定し、U相、V相、W相の電圧信号を出力する。この三相の出力電圧信号は、自由回転しているモータMの誘起電圧を示す信号である。出力電圧信号はゲイン調整器49により増幅された後、第1の線間電圧比較器51A、第2の線間電圧比較器51B、および速度算出部55のADコンバータ55aに送られる。
【0031】
第1の線間電圧比較器51Aは、U相の電圧信号とV相の電圧信号とを比較して、パルス信号P
UVを生成する。具体的には、V相の電圧信号がU相の電圧信号よりも高いときは高位信号を発生し、V相の電圧信号がU相の電圧信号よりも低いときは低位信号を発生する。同様に、第2の線間電圧比較器51Bは、V相の電圧信号とW相の電圧信号とを比較して、パルス信号P
VWを生成する。すなわち、W相の電圧信号がV相の電圧信号よりも高いときは高位信号を発生し、W相の電圧信号がV相の電圧信号よりも低いときは低位信号を発生する。
【0032】
図6は、U相、V相、W相の電圧信号と、U−V相の線間電圧を示すパルス信号P
UVと、V−W相の線間電圧を示すパルス信号P
VWを表すグラフである。グラフから分かるように、パルス信号P
UVの立ち上がりエッジE1および立ち下がりエッジE2は、U相の電圧信号とV相の電圧信号とが交差する点で現れ、パルス信号P
VWの立ち上がりエッジE3および立ち下がりエッジE4は、V相の電圧信号とW相の電圧信号とが交差する点で現れる。
【0033】
線間電圧比較器51A,51Bで生成されたパルス信号P
UVおよびパルス信号P
VWは、それぞれ第1のパルスエッジ検出部52Aおよび第2のパルスエッジ検出部52Bに送られる。第1のパルスエッジ検出部52Aは、パルス信号P
UVの立ち上がりエッジE1および立ち下がりエッジE2を検出し、これら立ち上がりエッジE1および立ち下がりエッジE2が検出されるたびに、パルスエッジ検出信号を速度算出部55に送る。同様に、第2のパルスエッジ検出部52Bは、パルス信号P
VWの立ち上がりエッジE3および立ち下がりエッジE4を検出し、これら立ち上がりエッジE3および立ち下がりエッジE4が検出されるたびに、パルスエッジ検出信号を速度算出部55に送る。以下、これらパルス信号P
UVおよびパルス信号P
VWの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジを、総称してパルスエッジと呼ぶ。
図6から、モータの誘起電圧の1周期内には、4つのパルスエッジE1,E2,E3,E4が現れることが分かる。
【0034】
速度算出部55は、第1のパルスエッジ検出部52Aまたは第2のパルスエッジ検出部52Bからのパルスエッジ検出信号を受けると、以下に説明するように、モータMの位相の特定および角周波数(すなわち回転速度のスカラー量)の計算を開始する。
【0035】
図7は、自由回転しているモータの角周波数(回転速度)を算出するフローチャートを示す図である。速度算出部55は、パルスエッジ検出信号を受けると、現在の時刻t
nを取得する。次に、速度算出部55は、検出されたパルスエッジの位相(角度)θ
nを特定し、時刻t
nにおけるモータの位相θ
nをベクトル制御部30の積分器39に送る。位相θ
nは、誘起電圧の1周期内に現れるパルスエッジごとに予め設定されている。すなわち、パルスエッジE1の位相は5/6π、パルスエッジE2の位相は−1/6π、パルスエッジE3の位相は−1/2π、パルスエッジE4の位相は1/2πに設定されている。
【0036】
したがって、検出されたパルスエッジがパルスエッジE1であれば、速度算出部55はモータの位相θ
nとして5/6πを積分器39に送る。同様に、検出されたパルスエッジがパルスエッジE2であれば、速度算出部55はモータの位相θ
nとして−1/6πを積分器39に送る。検出されたパルスエッジがパルスエッジE3であれば、速度算出部55はモータの位相θ
nとして−1/2πを積分器39に送る。検出されたパルスエッジがパルスエッジE4であれば、速度算出部55はモータの位相θ
nとして1/2πを積分器39に送る。位相θ
nが入力されると、積分器39は位相θを位相θ
nにリセットし(位相θを位相θ
nに置き換え)、位相θ
nを静止/回転座標変換部33および回転/静止座標変換部40に送る。
【0037】
図6に示すように、速度算出部55は、前回パルスエッジを検出してからの経過時間Δtと、現在の位相θ
nと、前回パルスエッジが検出されたときの位相θ
n−1とから、自由回転しているモータの角周波数ω
nを次のように決定する。
【数1】
このようにして、自由回転しているモータの位相θ
nおよび角周波数ω
nが決定される。
【0038】
図6に示す3相電圧は、比較的大きな振幅を有する。しかしながら、自由回転しているモータの回転速度が低いときは、
図2に示すように、誘起電圧は小さくなる。このため、各相の電圧の波形に現れるノイズの影響で、U相、V相、W相間の交差点から決定されるパルス信号が不安定となる。結果として、モータの正確な位相や回転速度を得ることができない。
【0039】
そこで、速度算出部55は、モータの誘起電圧が小さいときにはモータを同期運転させない機能を有している。
図8は、モータの同期始動の動作を示すフローチャートである。インバータ10の停止中にパルスエッジが検出されると(ステップ1)、タイマーが0にリセットされ、タイマーが始動される(ステップ2)。モータの出力電圧(誘起電圧)の測定値は、電圧測定器21からADコンバータ55aを介して速度算出部55に取り込まれ、予め設定されたしきい値と比較される(ステップ3)。モータの出力電圧がしきい値以下であるときは、角周波数ω
nおよび位相θ
nは破棄され、角周波数ω
nおよび位相θ
nはいずれも0に設定される(ステップ5)。そして、0に設定された角周波数ω
nおよび位相θ
nがベクトル制御部30に送られる(ステップ6)。
【0040】
一方、モータの出力電圧がしきい値よりも大きいときは、上記式(1)を用いて角周波数ω
nが算出され、さらに、検出されたパルスエッジに基づいて位相θ
nが特定される(ステップ4)。その後、得られた角周波数ω
nおよび位相θ
nがベクトル制御部30に送られる(ステップ6)。ベクトル制御部30は、外部から運転指令が入力したか否かを判断し(ステップ7)、運転指令が未入力の場合には、処理フローはステップ1に戻る。一方、運転指令が入力された場合には、自由回転しているモータの速度に同期してモータを始動させる(ステップ8)。なお、本実施形態では、ステップ3でモータの出力電圧がしきい値より大きいかどうかを判断した後にステップ4で角周波数ω
nおよび位相θ
nが算出されるが、ステップ3とステップ4の順番を入れ替えて、先に角周波数ω
nおよび位相θ
nを算出してから、モータの出力電圧がしきい値より大きいかどうかを判断してもよい。
【0041】
図4に示すスイッチSW1は、軸誤差推定器38および同期始動制御部50に接続されており、軸誤差推定器38からの角周波数ω
Cおよび同期始動制御部50からの角周波数ω
nのうちのいずれか一方のみを選択的に通過させるように構成されている。したがって、目標トルク電流決定部37および積分器39に入力される角周波数ωとしては、角周波数ω
Cまたは角周波数ω
nのいずれかが採用される。ステップ7で運転指令が入力されたと判断されるまでは、スイッチSW1を介して同期始動制御部50とベクトル制御部30とが接続され、同期始動制御部50からの角周波数ω
nがベクトル制御部30に入力され続ける。そして、運転指令が入力されたと判断されると、軸誤差推定器38からの角周波数ω
CがスイッチSW1を介して目標トルク電流決定部37および積分器39に送られ、ベクトル制御が行われる。
【0042】
モータが回転していない場合は、パルスエッジは検出されない。したがって、ステップ1において、所定時間内にパルスエッジが検出されなかった場合には、タイマーがリセットされ(ステップ9)、さらに角周波数ω
nおよび位相θ
nはいずれも0に設定される(ステップ5)。
【0043】
上述したように、モータの出力電圧がしきい値以下のときは、得られた角周波数ω
nおよび位相θ
nは破棄され、角周波数ω
nおよび位相θ
nは0に設定される(ステップ5参照)。これは、モータの誘起電圧が小さいことに起因して、モータの出力電圧波形に現れたノイズがパルスエッジを生成したと考えられるからである。つまり、ノイズに起因して生成されたパルスエッジからは、実際のモータの回転速度および位相を決定することができない。一方、モータの出力電圧がしきい値よりも大きいときは、算出された角周波数ω
nおよび特定された位相θ
nがベクトル制御部30に送られる(ステップ4参照)。
【0044】
角周波数ω
nは、スイッチSW1を介して目標トルク電流決定部37および積分器39に入力され、位相θ
nは積分器39を介して回転/静止座標変換部40および静止/回転座標変換部33に入力される。そして、ベクトル制御部30は、自由回転しているモータMの位相および回転速度に同期した電圧指令値Vu*,Vv*、Vw*を生成する。インバータ10は、電圧指令値Vu*,Vv*、Vw*に従って電力を出力し、モータMを始動させる(ステップ8)。このようにして、電力変換装置5は、インバータ10の出力電圧の周波数および位相を、自由回転しているモータの出力電圧の周波数および位相に同期させた状態で、モータを始動させることができる。
【0045】
モータの回転速度が遅くなるほど、モータの誘起電圧は低くなる。このため、始動しようとするモータの回転速度が0または非常に低い場合は、モータの出力電圧が上記しきい値を上回ることができない。結果として、処理フローはステップ4に進むことができず、モータの同期始動ができない。そこで、上述したように、タイマーにより計測された時間が予め設定した時間を過ぎたときは、角周波数ω
nが0であると仮定してモータが始動される(
図8のステップ9,5参照)。具体的には、パルスエッジが所定時間内に検出されなかった場合は、角周波数ω
nが0に設定される。このような処理ステップを処理フローに組み入れることにより、モータの回転速度が0または非常に低いときであってもモータが始動される。
【0046】
本実施形態では、2つのパルス信号P
UVおよびパルス信号P
VWが生成されるので、誘起電圧の1周期内には、4つのパルスエッジE1,E2,E3,E4が現れる。このパルスエッジが現れる順序から、モータの回転方向を決定することができる。具体的には、モータが正方向に回転しているときは、E1,E3,E2,E4の順にパルスエッジが現れる。一方、具体的には、モータが逆方向に回転しているときは、E4,E2,E3,E1の順にパルスエッジが現れる。したがって、速度算出部55は、パルスエッジの順序からモータの回転方向を決定することができる。
【0047】
1つのパルス信号からはモータの回転方向を決定することはできないが、モータの位相θ
nおよび角周波数ω
nを決定することはできる。
図9は、U相およびV相の電圧信号と、U−V相の線間電圧を示すパルス信号P
UVを表すグラフである。
図9から分かるように、モータの出力電圧の1周期内に2つのパルスエッジE1,E2が現れる。したがって、パルスエッジE1,E2から位相θ
nを特定し、さらに上記式(1)を用いて角周波数ω
nを算出することができる。
【0048】
図10は、モータの同期始動動作の他の実施形態を示すフローチャートである。この実施形態では、ステップ3にて、上記式(1)を用いて角周波数ω
nが算出され、さらに、検出されたパルスエッジに基づいて位相θ
nが特定される。さらに、ステップ4にて、角周波数ω
nから求められる周波数f
n(以下、推定周波数f
nという)と、モータの出力電圧(誘起電圧)の周波数f
i(以下、出力周波数f
iという)との差に基づいて、算出された角周波数ω
nおよび位相θ
nを破棄して、これらを0に設定するか否かが速度算出部55により判断される。ステップ3,4以外のステップは、
図8に示すステップと同じである。
【0049】
推定周波数f
nは、算出された角周波数ω
nと、公知の式ω=2πfとから算出することができる。一方、出力周波数f
iは、ADコンバータ55aに入力されたモータの出力電圧の測定値と、既知の比例定数V/fとから求めることができる。具体的には、モータの出力電圧の測定値を比例定数V/fで割ることにより、出力周波数f
iを求めることができる。この比例定数V/fは、モータに固有の定数であり、モータの定格電圧をモータの定格周波数で割ることにより求められる。
【0050】
次に、推定周波数f
nと出力周波数f
iとの差の絶対値(大きさ)が所定の値と比較される(ステップ4)。推定周波数f
nと出力周波数f
iとの差の絶対値が所定の値以上である場合には、算出された角周波数ω
nおよび位相θ
nは破棄され、角周波数ω
nおよび位相θ
nは0に設定される(ステップ5)。そして、0に設定された角周波数ω
nおよび位相θ
nがベクトル制御部30に送られる(ステップ6)。
【0051】
一方、推定周波数f
nと出力周波数f
iとの差の絶対値が所定の値よりも小さい場合には、算出された角周波数ω
nおよび特定された位相θ
nがベクトル制御部30に送られる(ステップ6)。ベクトル制御部30は、角周波数ω
nおよび位相θ
nに基づいてインバータ10への電圧指令値Vu*,Vv*、Vw*を生成する。インバータ10は、自由回転しているモータの誘起電圧の位相および周波数に同期した電圧をモータに出力する。
【0052】
図11は、モータの同期始動動作のさらに他の実施形態を示すフローチャートである。この実施形態では、ステップ3にて、上記式(1)を用いて角周波数ω
nが算出され、さらに、検出されたパルスエッジに基づいて位相θ
nが特定される。さらに、ステップ4にて、角周波数ω
nから求められる推定電圧V
nと、ADコンバータ55aに入力されたモータの出力電圧V
iとの差に基づいて、算出された角周波数ω
nおよび位相θ
nを破棄して、これらを0に設定するか否かが速度算出部55により判断される。ステップ3,4以外のステップは、
図8に示すステップと同じである。
【0053】
推定電圧V
nは、算出された角周波数ω
nと、公知の式ω=2πfと、既知の定数V/fとから算出することができる。次に、推定電圧V
nと出力電圧V
iとの差の絶対値(大きさ)が所定の値と比較される(ステップ4)。推定電圧V
nと出力電圧V
iとの差の絶対値(大きさ)が所定の値以上である場合には、算出された角周波数ωおよび位相θ
nは破棄され、角周波数ω
nおよび位相θ
nは0に設定される(ステップ5)。そして、0に設定された角周波数ω
nおよび位相θ
nがベクトル制御部30に送られる(ステップ6)。
【0054】
一方、推定電圧V
nと出力電圧V
iとの差の絶対値が所定の値よりも小さい場合には、算出された角周波数ω
nおよび特定された位相θ
nがベクトル制御部30に送られる(ステップ6)。ベクトル制御部30は、角周波数ω
nおよび位相θ
nに基づいてインバータ10への電圧指令値Vu*,Vv*、Vw*を生成する。インバータ10は、自由回転しているモータの誘起電圧の位相および周波数に同期した電圧をモータに出力する。
【0055】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。