(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5763112
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】スイッチトキャパシタ回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/45 20060101AFI20150723BHJP
【FI】
H03F3/45 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-29822(P2013-29822)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-160903(P2014-160903A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】江川 一樹
【審査官】
宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−093795(JP,A)
【文献】
特開2001−196871(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0186061(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00−3/45,3/50−3/52,3/62−3/64,3/68−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル期間に、基準電圧を基準として入力信号をコンデンサにサンプリングし、ホールド期間に、前記コンデンサでサンプリングした信号を、演算増幅器を用いて増幅するスイッチトキャパシタ回路において、
前記基準電圧は、前記演算増幅器に許容される入力コモン電圧範囲内の電圧と、前記入力信号の入力コモン電圧とアナログコモン電圧との差に比例した差分電圧と、を加算した電圧であることを特徴とするスイッチトキャパシタ回路。
【請求項2】
前記差分電圧は、前記入力信号の入力コモン電圧と前記アナログコモン電圧との差と、前記演算増幅器の入力側に接続される全てのコンデンサの容量値の和を分母、前記全てのコンデンサのうちの前記入力信号をサンプリングする全てのコンデンサの容量値の和を分子とする容量値の比との積であることを特徴とする請求項1に記載のスイッチトキャパシタ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチトキャパシタ回路に関し、特に差動で動作するスイッチトキャパシタ回路に含まれる演算増幅器の同相入力変動を抑制することの可能なスイッチトキャパシタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチトキャパシタ回路は、例えば
図3、
図4に示すように、演算増幅器A1を備えており、一般に入力信号をコンデンサにサンプルするサンプル期間と、サンプルした信号を、演算増幅器A1を用いて増幅して出力するホールド期間と、から成る。
このようなスイッチトキャパシタ回路のうち、差動で動作するスイッチトキャパシタ回路では、差動入力信号Vip、Vinの入力コモン電圧がスイッチトキャパシタ回路内のアナログコモン電圧と異なると、ホールド期間における演算増幅器A1への入力コモン電圧が変動してしまう。特に、入力信号Vip、Vinの一方が固定の基準電圧で、他方が単相信号の場合、信号レベルによって入力信号Vip、Vinの入力コモン電圧が変動し、それによってホールド期間における演算増幅器A1への入力コモン電圧も大きく変動してしまうため、低電源電圧や高速動作時の演算増幅器A1の設計を非常に困難なものにしている。
【0003】
図3〜
図6を用いて、一般的な、差動で動作するスイッチトキャパシタ回路10について説明する。
図3は、スイッチトキャパシタ回路10の一例を示す回路図であって、差動信号を入力する、正極側および負極側、それぞれN個の単位コンデンサCと、演算増幅器A1と、を備えたスイッチトキャパシタ回路10のサンプル期間における構成を示している。実際にはサンプル期間とホールド期間とで、単位コンデンサCの接続先を切り替えるスイッチが存在するが、ここでは簡単のため図示していない。
【0004】
正極側のN個のコンデンサCのうち、x個はある基準電圧VICを基準として、正極入力信号Vipをサンプルし、残りの(N−x)個のコンデンサCは前記基準電圧VICを基準として、アナログコモン電圧Vcmをサンプルする。
負極側のN個のコンデンサCのうち、x個はある基準電圧VICを基準として、負極入力信号Vinをサンプルし、残りの(N−x)個のコンデンサCは前記基準電圧VICを基準として、アナログコモン電圧Vcmをサンプルする。
前記基準電圧VICは、例えば基準電圧生成回路20で生成される。
ここで、基準電圧VICは演算増幅器A1が正常に動作することが可能な入力コモン電圧の範囲内の電圧である。例として、入力段が
図5に示すような構成を有する演算増幅器A1について説明する。
【0005】
図5に示す演算増幅器A1の入力段は、NMOSトランジスタからなる差動対M1P、M1Nと、定電流I0を流すNMOSトランジスタからなる電流源M2と、抵抗R1、R2による負荷と、を含んでいる。この時、基準電圧VICは、電流源M2と、差動対M1P、M1Nと、がともに飽和領域で動作するような電圧範囲内の電圧であり、例えば
図6に示す基準電圧生成回路20によって生成することが出来る。すなわち、定電流源E1の一端とNMOSトランジスタM3のドレインとが接続されて電源間に接続され、さらにNMOSトランジスタM3のドレインとゲートが接続され、NMOSトランジスタM3のゲート電圧が基準電圧VICとして出力される。
【0006】
ここで、
図5において、差動対M1P、M1N、および電流源M2を構成するNMOSトランジスタのオーバードライブ電圧が同一とした場合、NMOSトランジスタM3のオーバードライブ電圧は、電流源M2のオーバードライブ電圧の2倍より少し大きくなるようにサイズを決定すればよい。
図4は、
図3に示すスイッチトキャパシタ回路10の、ホールド期間における回路構成を示したものである。正極側のN個のコンデンサCの一端は演算増幅器A1の正極入力VIPに入力され、他端のうちy個は演算増幅器A1の負極出力Vopに接続されて負帰還を形成し、残りの(N−y)個がアナログコモン電圧Vcmに接続される。負極側のコンデンサCの一端は演算増幅器A1の負極入力VINに入力され、他端のうちy個は演算増幅器A1の正極出力Vonに接続されて負帰還を形成し、残りの(N−y)個がアナログコモン電圧Vcmに接続される。
【0007】
このような、スイッチトキャパシタ回路10において、入力信号Vip、Vinの入力コモン電圧をVci、演算増幅器A1の出力コモン電圧をVcoとすると、ホールド期間の演算増幅器A1への入力コモン電圧Vsumcは次式(1)で表される。
Vsumc
=VIC−(1/N)・{x・(Vci−Vcm)+y・(Vcm−Vco)}
……(1)
【0008】
通常、演算増幅器A1の出力コモン電圧Vcoは、アナログコモン電圧Vcmと等しくなるように設定することが多いため、ここでもVco=Vcmとすると、前記式(1)は次式(2)のように表される。
Vsumc
=VIC−(x/N)・(Vci−Vcm) ……(2)
式(2)から明らかなように、入力信号Vip、Vinの入力コモン電圧Vciがスイッチトキャパシタ回路10のアナログコモン電圧Vcmと異なると、ホールド時、演算増幅器A1への入力コモン電圧Vsumcが基準電圧VICから変動してしまう。この変動量が、演算増幅器A1が正常に動作することが可能な入力コモン電圧範囲を超えてしまうと、スイッチトキャパシタ回路10が正常に動作しなくなる。
【0009】
例えば、正極側のN個のコンデンサCのうち正極入力信号VipをサンプルするコンデンサCの数xを、x=10、正極側のコンデンサCの数NをN=15、スイッチトキャパシタ回路10のアナログコモン電圧VcmをVcm=1〔V〕とし、スイッチトキャパシタ回路10の負極入力Vinに固定電圧Vr=0.8〔V〕が入力され、正極入力信号Vipに固定電圧Vrを基準とした信号Vr+Vi(Vi=0〜1.5〔V〕)が入力されたとする。この時、演算増幅器A1への入力コモン電圧Vsumcは、VIC+0.13〔V〕〜VIC−0.87〔V〕と大きく変動してしまう。これは、特に微細プロセスなどの低電源電圧駆動を行う回路に適用される場合などには、深刻な問題となる。
【0010】
そのため、従来、入力信号の同相成分の変動を防止する回路技術がいくつか提案されている(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献1の提案では、第1及び第2のクロックでスイッチトキャパシタ回路における複数のスイッチを制御して、演算増幅器に負帰還を施すコンデンサと入力信号をサンプルするコンデンサとをスイッチで切り換える構成としている。
【0011】
この提案の場合、第1のクロックがオンの時に演算増幅器の入出力をショートして、サミングノードの電位と入力電圧との差をサンプル容量にチャージしておく。そして、第2のクロックがオンの時にスイッチが動作点を決定する参照電圧に接続され、サンプル容量と帰還容量との比によって増幅し出力するサンプルホールド回路において、補正回路をさらに設け、入力信号の入力コモン電圧と参照電圧とに応じた制御信号を演算増幅器に供給し、同相入力の変動を防止するようにしている。
特許文献2の提案では、前述した従来技術の基準電圧VICを、入力信号Vip、Vinの入力コモン電圧とすることによって(つまり、VIC=Vci)、入力信号レベルによる演算増幅器への入力コモン電圧変動を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−121307号公報
【特許文献2】特開2011−188089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の技術では、サンプルホールド回路がホールドモードであるときの出力電圧から同相電圧のズレを検出するため、演算増幅器の同相入力レベルの変化分の補正は1周期後のホールドモードに行われる。このため、大信号入力時のシングル/ 差動変換において、補正が追従できず、
図3、
図4に示す従来のスイッチトキャパシタ回路10と同様に、高速の変換が困難になるという技術課題を残している。
【0014】
また、特許文献2の技術では、前記式(2)から明らかなように、VIC=Vciとしたとしても、演算増幅器への入力コモン電圧のレベル変動を大幅に抑制することは困難である。
本発明は上述のような状況に鑑みてなされたものであり、スイッチトキャパシタ回路における演算増幅器の入力コモン電圧のレベル変動を大幅に抑制し、低電源電圧での変換、または高速の変換にも対応することが可能なスイッチトキャパシタ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、サンプル期間に、基準電圧を基準として入力信号をコンデンサにサンプリングし、ホールド期間に、前記コンデンサでサンプリングした信号を、演算増幅器を用いて増幅するスイッチトキャパシタ回路において、前記基準電圧は、前記演算増幅器に許容される
入力コモン電圧範囲内の電圧と、前記入力信号の入力コモン電圧
とアナログコモン電圧との差に比例した差分電圧と、を加算した電圧であることを特徴とするスイッチトキャパシタ回路、である。
【0016】
前記差分電圧は、前記入力信号の入力コモン電圧と前記アナログコモン電圧との差と、前記演算増幅器の入力側に接続される全てのコンデンサの容量値の和を分母、前記全てのコンデンサのうちの前記入力信号をサンプリングする全てのコンデンサの容量値の和を分子とする容量値の比との積であってよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スイッチトキャパシタ回路における演算増幅器への入力コモン電圧のレベル変動を大幅に抑制し、低電源電圧での変換、または高速の変換にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態における基準電圧生成回路の一例を示す回路図である。
【
図2】本発明の第2実施形態における基準電圧生成回路の一例を示す回路図である。
【
図3】本発明を適用したスイッチトキャパシタ回路の、サンプリング期間における回路構成の一例を示す回路図である。
【
図4】本発明を適用したスイッチトキャパシタ回路の、ホールド期間における回路構成の一例を示す回路図である。
【
図5】
図3、
図4に示す演算増幅器の一例を示す回路図である。
【
図6】
図3、
図4に示す基準電圧生成回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明のスイッチトキャパシタ回路を説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態を説明する。
本発明は、差動で動作するスイッチトキャパシタ回路で用いられる基準電圧VICの生成回路に関するものである。スイッチトキャパシタ回路の機能構成は、
図3、
図4に示す従来の構成と同一である。
図1は、第1実施形態における基準電圧生成回路1の一例を示す回路図である。
【0021】
この基準電圧生成回路1は、
図3、
図4に示すスイッチトキャパシタ回路10の基準電圧生成回路20として適用される。なお、この基準電圧生成回路1は、
図3、
図4に示すスイッチトキャパシタ回路10内に配置されていてもよく、あるいはスイッチトキャパシタ回路10とは別体として設けられており、外部で生成された基準電圧VIC1を、スイッチトキャパシタ回路10に基準電圧として入力するようにしてもよい。
【0022】
基準電圧生成回路1は、前記
図6に示す従来の基準電圧生成回路20からなる基準電圧生成部11を備え、この基準電圧生成部11で生成された基準電圧VICをもとに新たな基準電圧VIC′を生成し、これが
図3に示す基準電圧VICとして各コンデンサC(単位コンデンサ)の一端に供給される。
基準電圧生成回路1は、コンデンサC1〜C3と、スイッチsw1〜sw5と、ボルテージフォロアA2と、基準電圧生成部11と、を含んでいる。スイッチsw1は、スイッチトキャパシタ回路10のアナログコモン電圧Vcmの入力端とコンデンサC1の一端との間に接続される。スイッチsw2は、正極入力信号Vipの入力端とコンデンサC1の一端との間に接続される。
【0023】
スイッチsw3は、アナログコモン電圧Vcmの入力端とコンデンサC2の一端との間に接続される。スイッチsw4は、負極入力信号Vinの入力端とコンデンサC2の一端との間に接続される。
コンデンサC1の他端と、コンデンサC2の他端と、コンデンサC3の一端とは共通に接続されて、ボルテージフォロアA2の非反転入力端子に接続される。コンデンサC3の他端は接地される。
スイッチsw5の一端は、コンデンサC1〜C3の共通接続点およびボルテージフォロアA2の非反転入力端子を結ぶライン間に接続され、他端に、基準電圧生成部11で生成された基準電圧VICが供給される。
そして、ボルテージフォロアA2の出力が基準電圧VIC1として出力される。
【0024】
これらスイッチsw1〜sw5は、システムコントローラ3からの制御信号に応じて制御される。このシステムコントローラ3は、たとえば、基準電圧生成回路1の各スイッチsw1〜sw5を制御する制御信号を生成するとともに、
図3、
図4に示す、スイッチトキャパシタ回路10に含まれる図示しないスイッチなど、スイッチトキャパシタ回路10に関連した回路系を統括的に制御する制御信号も生成するようになっており、このようなシステムコントローラ3によって、各スイッチsw1〜sw5のオンオフを制御することによって、関連した回路系全体の動作タイミングが最適化されるようになっている。
【0025】
ここで、
図1中のコンデンサC1、C2、C3は、その容量が次式(3)を満たす比となるように設定する。
C1=C2
C3=2・{(N/x)−1}・C1 ……(3)
【0026】
次に、
図1、
図3、
図4を用いて第1実施形態の動作について説明する。
スイッチトキャパシタ回路10が
図3に示すようにホールド期間の構成の状態にある時、
図1に示す基準電圧生成回路1では、スイッチsw1、sw3、およびsw5が短絡し、sw2およびsw4が開放される。これにより、コンデンサC1、C2により、基準電圧生成部11で生成された基準電圧VICを基準として、アナログコモン電圧Vcmがサンプルされ、コンデンサC3により、前記基準電圧VICを基準として、グランドレベルがサンプルされる。
【0027】
ここで、基準電圧生成部11で生成される基準電圧VICは、
図3、
図4に示す演算増幅器A1が正常に動作することが可能な入力コモン電圧範囲内の電圧であり、
図6で説明した従来の基準電圧VICと同等の特性を有する電圧である。
次に、スイッチトキャパシタ回路10が
図3のサンプル期間の構成の状態にある時、
図1のスイッチsw1、sw3、sw5が開放され、sw2、sw4が短絡する。この時、ボルテージフォロアA2の出力電圧、すなわち基準電圧VIC1は次式(4)で表される。
VIC1
=VIC+(x/N)・(Vci−Vcm) ……(4)
【0028】
式(4)中の(x/N)は、
図3、
図4に示す演算増幅器A1の入力側に接続されるコンデンサ、すなわち単位コンデンサの容量をCとしたとき、演算増幅器A1の入力側に接続される全てのコンデンサの容量値の和(N・C)と、演算増幅器A1の入力側に接続される全てのコンデンサのうちの入力信号Vipをサンプリングする全てのコンデンサの容量値の和(x・C)との比を表す。したがって、基準電圧VIC1は、演算増幅器A1の入力側に接続される全てのコンデンサの容量値の和と、演算増幅器A1の入力側に接続される全てのコンデンサのうちの入力信号Vipをサンプリングする全てのコンデンサの容量値の和との比(x/N)と、入力信号Vipの入力コモン電圧Vciとスイッチトキャパシタ回路10のアナログコモン電圧Vcmとの差分電圧(Vci−Vcm)との積と、基準電圧生成部11で生成される基準電圧VICとの和で表される。
【0029】
この、基準電圧VIC1が、
図3に示す基準電圧VICとして、各コンデンサCの一端に供給される。これにより、ホールド期間における演算増幅器A1への入力コモン電圧Vsumcは、前記式(2)中のVICに、前記式(4)で表されるVIC1を代入することにより、次式(5)で表すことができる。
Vsumc
=VIC1−(x/N)・(Vci−Vcm)
=VIC+(x/N)・(Vci−Vcm)−(x/N)・(Vci−Vcm)
=VIC ……(5)
以上から、ホールド期間における演算増幅器A1への入力コモン電圧Vsumcを、
図3、
図4に示すスイッチトキャパシタ回路10への入力信号Vipの入力コモン電圧Vciの電圧レベルに依存せずに、より高精度に所望する基準電圧に制御することができる。
【0030】
なお、コンデンサC1、C2、C3の容量の関係が、前記式(3)の関係から多少ずれたとしても演算増幅器A1への入力コモン電圧Vsumcの電圧レベルの変動抑制効果があることは当然である。
このように、第1実施形態におけるスイッチトキャパシタ回路10では、入力コモン電圧Vsumcを、高精度に所望の基準電圧に制御することができ、すなわち、入力コモン電圧Vsumcの変動を抑制することができる。そのため、低電源電圧や高速動作を行う演算増幅器A1を容易に実現することができ、低電源電圧での変換、または高速の変換にも対応することが可能なスイッチトキャパシタ回路10を提供することができる。
【0031】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
この第2実施形態は、上記第1実施形態と、基準電圧生成回路2の構成が異なること以外は、上記第1実施形態と同様である。すなわち、この第2実施形態は、前記式(4)で表される、基準電圧VIC1の生成方法が、第1実施形態と異なる。なお、スイッチトキャパシタ回路10の機能構成は、
図3、
図4に示す従来の構成と同一である。なお、この基準電圧生成回路2は、
図3、
図4に示すスイッチトキャパシタ回路10内に配置されていてもよく、あるいはスイッチトキャパシタ回路10とは別体として設けられており、外部で生成された基準電圧VIC1を、スイッチトキャパシタ回路10に基準電圧として入力するようにしてもよい。
【0032】
基準電圧生成回路2は、前記
図6に示す従来の基準電圧生成回路20からなる基準電圧生成部11を含み、この基準電圧生成部11で生成された基準電圧VICをもとに新たな基準電圧VIC1を生成し、この新たな基準電圧VIC1が、
図3に示す基準電圧VICとして各コンデンサCの一端に供給される。
基準電圧生成回路2は、抵抗R11、R12と、コンデンサC4、C5と、スイッチsw6〜sw8と、ボルテージフォロアA3と、基準電圧生成部11と、を含んでいる。
【0033】
抵抗R11およびR12は直列に接続され、抵抗R11の一端は正極入力信号Vipの入力端に接続され、抵抗R12の一端は、負極入力信号Vinの入力端に接続される。
スイッチsw6は、スイッチトキャパシタ回路10のアナログコモン電圧Vcmの入力端とコンデンサC4の一端との間に接続される。スイッチsw7は、前記抵抗R11およびR12の接続点とコンデンサC4の一端との間に接続される。
【0034】
コンデンサC4の他端と、コンデンサC5の一端とは共通に接続されて、ボルテージフォロアA3の非反転入力端子に接続される。コンデンサC5の他端は接地される。
スイッチsw8の一端は、コンデンサC4およびC5の共通接続点とボルテージフォロアA3の非反転入力端子とを結ぶライン間に接続され、他端に、基準電圧生成部11で生成された基準電圧VICが供給される。
【0035】
そして、ボルテージフォロアA3の出力が基準電圧VIC1として出力される。
これらスイッチsw6〜sw8は、システムコントローラ3からの制御信号に応じて制御される。このシステムコントローラ3は、たとえば、基準電圧生成回路2の各スイッチsw6〜sw8を制御する制御信号を生成するとともに、
図3、
図4に示す、スイッチトキャパシタ回路10に含まれる図示しないスイッチなど、スイッチトキャパシタ回路10に関連した回路系を統括的に制御する制御信号も生成するようになっており、このようなシステムコントローラ3によって、各スイッチsw6〜sw8のオンオフを制御することによって、関連した回路系全体の動作タイミングが最適化されるようになっている。
【0036】
ここで、
図2中の抵抗R11、R12はその抵抗値が次式(6)を満足するように設定される。また、コンデンサC4、C5は、その容量が次式(7)を満たす比となるように設定される。
R11=R12 ……(6)
C5={(N/x)−1}・C4 ……(7)
【0037】
次に、
図2、
図3、
図4を用いて第2実施形態におけるスイッチトキャパシタ回路の動作を説明する。
スイッチトキャパシタ回路10が
図3に示すようにホールド期間の構成の状態にある時、
図2に示す基準電圧生成回路2のスイッチsw6およびsw8が短絡し、スイッチsw7が開放され、コンデンサC4により、基準電圧生成部11で生成された基準電圧VICを基準として、アナログコモン電圧Vcmがサンプルされ、コンデンサC5により、前記基準電圧VICを基準としてグランドレベルがサンプルされる。
【0038】
ここで、基準電圧VICは、
図3、
図4に示すスイッチトキャパシタ回路10の演算増幅器A1が正常に動作することが可能な入力コモン電圧範囲内の電圧であり、従来技術で説明した基準電圧VICと同等の特性を有する電圧である。
スイッチトキャパシタ回路10が
図3のサンプル期間の構成の状態にある時、
図2のスイッチsw6およびsw8が開放され、スイッチsw7が短絡する。この時、ボルテージフォロアA3の出力電圧つまり基準電圧VIC1は次式(8)となる。
VIC1=VIC+(x/N)・(Vci−Vcm) ……(8)
【0039】
よって、この第2実施形態における基準電圧生成回路2においても、第1実施形態における基準電圧生成回路1で生成される基準電圧VIC1と同等の特性を有する基準電圧VIC1を生成することができる。
したがって、この第2実施形態における基準電圧生成回路2においても、第1実施形態における基準電圧生成回路1と同等の作用効果を得ることができる。
【0040】
なお、上記各実施形態においては、基準電圧生成回路1、2を、
図3、
図4に示す回路構成を有するスイッチトキャパシタ回路に適用する場合について説明したが、これに限るものではなく、基本的な回路構成が
図3、
図4に示す回路構成となるスイッチトキャパシタ回路であれば適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1、2 基準電圧生成回路
3 システムコントローラ
10 基準電圧生成回路
11 基準電圧生成部
A1 演算増幅器
A2、A3 ボルテージフォロア
E1 定電流源
M1P,M1N 差動対
M2 電流源
M3 NMOSトランジスタ
R11、R12 抵抗
C1〜C5 コンデンサ
sw1〜sw8 スイッチ