【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 (1)社団法人映像情報メディア学会から2011年8月1日に発行された刊行物「映像情報メディア学会2011年年次大会講演予稿集」において発表 (2)社団法人映像情報メディア学会が2011年8月24日〜26日に開催した「2011年映像情報メディア学会年次大会」において2011年8月24日に文書をもって発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、総務省、情報通信研究機構「革新的な三次元映像技術による超臨場感コミュニケーション技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
小川原光一,階層的な出力メッセージの平均化に基づく近似確率伝搬法,電子情報通信学会論文誌 (J94−D) 第3号 情報・システム,日本,社団法人電子情報通信学会,2011年 3月 1日,第J94-D巻 第3号,p.593-603
【文献】
池谷健佑 外3名,階層型信頼度伝搬法を用いた視差推定の性能評価,情報処理学会 シンポジウム 画像の認識・理解シンポジウム(MIRU) 2011 [online],日本,情報処理学会,2011年 7月20日,p.1486-1493
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステレオ画像間の誤差関数と奥行き方向への距離又は視差である距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法により、前記ステレオ画像の一方である基準画像の画素ごとの前記距離指標を示す距離指標情報を推定すると共に、前記距離指標情報の信頼度を示す評価値を計算する距離指標情報推定装置であって、
前記ステレオ画像が入力されると共に、予め設定された距離指標候補ごとに、予め設定された誤差関数閾値以下となるように、入力された前記ステレオ画像の類似度である前記誤差関数を計算する誤差関数計算部と、
前記距離指標候補ごとに、予め設定されたスムーズ関数閾値以下となるように、マルコフランダムフィールドにおける隣接画素間の前記距離指標候補の差分絶対値である前記スムーズ関数を計算するスムーズ関数計算部と、
前記誤差関数計算部で計算した誤差関数と前記スムーズ関数計算部で計算したスムーズ関数とを含む前記エネルギーが集合したエネルギー集合を生成し、当該エネルギー集合内における隣接画素間で、所定の漸化式によって前記エネルギーを生成して伝搬させることで、前記距離指標候補及び前記画素ごとの前記エネルギーを更新するエネルギー伝搬部と、
前記エネルギー伝搬部で更新されたエネルギーを示す評価関数を計算する評価関数計算部と、
前記距離指標候補のうち、前記評価関数計算部で計算された評価関数が最小となる距離指標を、前記距離指標情報として推定する距離指標推定部と、
前記エネルギーが最も高くなる最大値と前記エネルギーが最も低くなる最小値との差分を前記最大値で除算することで、前記評価値として、オクルージョンに起因する推定エラーを判定するためのオクルージョン評価値を計算するオクルージョン評価値計算部と、
を備えることを特徴とする距離指標情報推定装置。
前記オクルージョン評価値計算部で計算されたオクルージョン評価値が予め設定されたオクルージョン閾値以下であるか否かを判定し、当該オクルージョン評価値が当該オクルージョン閾値以下の場合、前記オクルージョンに起因する推定エラーが生じたと判定するオクルージョン推定エラー判定部、
をさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の距離指標情報推定装置。
前記誤差関数計算部は、前記基準画像における処理対象画素と、前記ステレオ画像の他方である参照画像で前記処理対象画素に対応する対応画素との色情報の差分絶対値を求め、当該差分絶対値を予め設定した原色数で除算して重み付ける前記誤差関数を計算することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の距離指標情報推定装置。
前記隣接画素間の色情報の差分絶対値が予め設定された色情報閾値以下であるか否かによって、前記隣接画素間で前記エネルギーを伝搬できるか否かを判定するエネルギー伝搬判定部をさらに備え、
前記エネルギー伝搬部は、前記エネルギー集合内で前記エネルギーを伝搬できると判定された隣接画素間で前記エネルギーを更新する
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の距離指標情報推定装置。
ステレオ画像間の誤差関数と奥行き方向への距離又は視差である距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法により、前記ステレオ画像の一方である基準画像の画素ごとの前記距離指標を示す距離指標情報を推定すると共に、前記距離指標情報の信頼度を示す評価値を計算するために、コンピュータを、
前記ステレオ画像が入力されると共に、予め設定された距離指標候補ごとに、予め設定された誤差関数閾値以下となるように、入力された前記ステレオ画像の類似度である前記誤差関数を計算する誤差関数計算部、
前記距離指標候補ごとに、予め設定されたスムーズ関数閾値以下となるように、マルコフランダムフィールドにおける隣接画素間の前記距離指標候補の差分絶対値である前記スムーズ関数を計算するスムーズ関数計算部、
前記誤差関数計算部で計算した誤差関数と前記スムーズ関数計算部で計算したスムーズ関数とを含む前記エネルギーが集合したエネルギー集合を生成し、当該エネルギー集合内における隣接画素間で、所定の漸化式によって前記エネルギーを生成して伝搬させることで、前記距離指標候補及び前記画素ごとの前記エネルギーを更新するエネルギー伝搬部、
前記エネルギー伝搬部で更新されたエネルギーを示す評価関数を計算する評価関数計算部、
前記距離指標候補のうち、前記評価関数計算部で計算された評価関数が最小となる距離指標を、前記距離指標情報として推定する距離指標推定部、
前記エネルギーが最も高くなる最大値と前記エネルギーが最も低くなる最小値との差分を前記最大値で除算することで、前記評価値として、オクルージョンに起因する推定エラーを判定するためのオクルージョン評価値を計算するオクルージョン評価値計算部、
として機能させるための距離指標情報推定プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(本発明の概略:信頼度伝搬法による距離推定)
本発明の各実施形態では、ステレオ画像間の誤差関数と距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定されるエネルギーを最小化する手法として、信頼度伝搬法を用いている。そこで、最初に、本発明の実施形態における信頼度伝搬法の概略を説明する。
【0033】
なお、以後の各実施形態では、請求項に記載の距離指標が、奥行き方向への距離(奥行き)であることとして説明する。つまり、請求項に記載の距離指標情報として、画素ごとの距離を示す距離情報を推定することになる。
【0034】
この信頼度伝搬法(BP法:Belief Propagation法)は、距離情報にマルコフランダムフィールド(MRF:Markov Random Field)モデルを仮定し、ステレオ画像間の誤差関数とスムーズ関数とで構成(規定)されるエネルギーを最小化することにより、ノイズが少なく滑らかな距離情報を生成するものである。ここで、信頼度伝搬法は、
図1に示すように、処理対象となる画素pの隣接画素sから、メッセージと呼ばれる各画素にどの距離が割り当てられるかという確率に関するエネルギーmを受け取り、それらからメッセージを更新して隣接画素qに伝搬させる。そして、信頼度伝搬法は、この処理を画像内の全ての画素に対して繰り返し行うことで各画素の距離情報を求める。
なお、請求項に記載のエネルギーが、信頼度伝搬法ではメッセージとなる。
【0035】
ここで、
図1では、枠(白塗四角形)が基準画像の画素に対応し、矢印mが画素間のメッセージ(エネルギー)の伝搬を示している。また、
図1に示すように、このメッセージを伝搬する画素がノードとして縦横に配列されたグラフをエネルギー集合(メッセージ集合)と呼ぶ。さらに、文字「s」が付された画素sは、メッセージの伝搬元となる隣接画素を示し、文字「p」が付された画素pは、処理対象の画素を示し、文字「q」が付された画素qは、メッセージの伝搬先となる隣接画素を示す。なお、
図1では、説明を簡易にするために、一部符号のみを図示した。
【0036】
図2を参照し、信頼度伝搬法による距離推定の手順を説明する。
図2に示すように、信頼度伝搬法では、メッセージの生成に必要な画素間の誤差関数D
p(f
p)(以後、「誤差関数D
p」)を計算する(ステップS1)。本発明において、誤差関数に、SSD、SAD、ZNCC等の類似度が利用可能であり、ここでは、ステレオ画像の対応画素間で色情報の差分絶対値により類似度を示す式(1)を利用する。この式(1)によれば、画素単位で類似度を計算するため、被写体の輪郭を鮮鋭化することができる。
【0038】
ここで、pは処理対象の画素、f
pは画素pの距離候補、cは色情報、r,g,bはRGB値、d
pは距離候補f
pに対応する視差、I
cはステレオ画像の一方である基準画像での画素値、I
c´はステレオ画像の他方である参照画像での画素値、λ
dataは重み係数を表わす。
なお、距離候補(距離指標候補)とは、任意の範囲内で予め設定された距離の候補のことである(
図4等参照)。
【0039】
すなわち、式(1)は、基準画像I
cにおける処理対象の画素pの色情報I
c(p)と、参照画像I
c´における対応画素(p+d
p)の色情報I
c´(p+d
p)との差分絶対値を予め設定された原色数(例えば、3)で除算して、重み係数λ
dataで重み付けることを示す。この対応画素(p+d
p)とは、参照画像I
c´において、処理対象の画素pに対応する画素のことである。
【0040】
また、式(1)において、視差の逆数にステレオカメラの間隔(ベースライン)を乗算して距離が計算できることを利用して、距離候補f
pから視差d
pを逆算できる。このベースラインは、例えば、OpenCV等のカメラキャリブレーションで求めることができる(URL「http://opencv.jp/」)。
【0041】
続いて、信頼度伝搬法では、下記の式(2)に示すように、距離候補f
pと、画素qの距離候補f
qとの差分絶対値|f
p−f
q|で定義されるスムーズ関数V(f
p−f
q)(以後、「スムーズ関数V」)の計算を行う(ステップS2)。このスムーズ関数Vは、距離情報の滑らかさ(例えば、ノイズの少なさ)、言い換えるなら、距離の連続性を示す。ここで、qは画素pのメッセージ伝搬先となる隣接画素である。
【0043】
そして、信頼度伝搬法では、下記の式(3)で規定される生成式によって、メッセージを生成して伝搬する(ステップS3)。
【0045】
mはメッセージ、tは反復回数、N(p)\qは画素pへメッセージを渡す画素q以外の4近傍の画素集合、sはその画素集合の要素画素、minは最小値を返す関数である。この式(3)は、漸化式になっており、受け取ったメッセージをもとにメッセージを更新する処理を繰り返し行うことを示す。例えば、信頼度伝搬法では、ラスタスキャンを行うように処理対象画素pを移動させながら、その処理対象画素pでメッセージを更新することで、メッセージの伝搬を全画素で行う。
【0046】
全画素についてメッセージの更新処理を、予め設定したT回(例えば、10回)まで反復したとする。この場合、画素qの距離候補f
qに関する評価関数b
q(f
q)(以後、「評価関数b
q」)は、下記の式(4)で表すことができる。そして、信頼度伝搬法では、この評価関数b
qが最小になる距離候補f
qを、各画素の最終的な距離として推定する(ステップS4)。
【0048】
(第1実施形態)
[距離情報推定装置の構成]
以下、本発明の各実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0049】
図3を参照し、本発明の第1実施形態に係る距離情報推定装置(距離指標情報推定装置)1の構成について説明する。
距離情報推定装置1は、信頼度伝搬法により距離情報を推定して、この距離情報の信頼度を示す評価値を計算すると共に、この評価値によって、距離情報の推定エラーが生じたか否かを判定するものである。
【0050】
図3に示すように、距離情報推定装置1は、誤差関数計算部10と、スムーズ関数計算部11と、メッセージ生成・伝搬部(エネルギー伝搬部)12と、評価関数計算部13と、距離推定部(距離指標推定部)14と、評価値計算部15と、オクルージョン領域判定部(オクルージョン推定エラー判定部)17と、無テクスチャ領域判定部(テクスチャ推定エラー判定部)19とを備える。
【0051】
本実施形態では、距離情報推定装置1は、評価値として、オクルージョンに起因する推定エラーを判定するための評価値O
q(オクルージョン評価値、以後「評価値O」)と、テクスチャに起因する推定エラーを判定するための評価値K
q(テクスチャ評価値、以後「評価値K」)とを計算する。そして、距離情報推定装置1は、評価値O及び評価値Kを用いて、距離情報の推定エラーとして、オクルージョンに起因する推定エラーと、テクスチャに起因する推定エラーとを判定することとする。
【0052】
テクスチャに起因する推定エラーとは、例えば、ステレオ画像でのテクスチャが存在しない領域(テクスチャレス領域)において、マッチング精度が低下して、距離情報の推定エラーが生じることである。
【0053】
距離情報推定装置1は、左カメラC
L及び右カメラC
R(ステレオカメラ)から、被写体(不図示)を撮影したステレオ画像(基準画像及び参照画像)が入力される。
この左カメラC
L及び右カメラC
Rは、静止画や動画を撮影可能な撮影カメラであり、
図3に示すように、一定間隔(ベースライン)だけ離して配置される。ここで、例えば、左カメラC
L及び右カメラC
Rのうち左カメラC
Lを基準カメラとし、左カメラC
Lの撮影画像を基準画像とし、右カメラC
Rの撮影画像を参照画像とする。
【0054】
誤差関数計算部10は、ステレオ画像が入力されると共に、距離候補ごとに、予め設定された誤差関数閾値T
data以下となるように、入力されたステレオ画像の類似度である誤差関数D
pを計算するものである。この誤差関数計算部10は、下記の式(5)及び式(6)を用いて、
図4に示すように画素s,p,qについて、距離候補ごとの誤差関数D
pを計算する。
ここで、ifは、後段の条件式を満たす場合、前段に記述した値を出力する関数である。
【0057】
本実施形態では、距離候補f
s,f
p,f
qがそれぞれ、
図4に示すように、0,1,・・・,K,・・・,N−1の範囲内で予め設定されたこととして説明する(但し、K,Nは、K<N−1を満たす整数)。
なお、
図4では、文字s,p,qを付した四辺形が画素s,p,qである。
【0058】
このとき、誤差関数計算部10は、式(6)に示すように、誤差関数D
pの値が誤差関数閾値T
dataを超えないように、トランケーションを行っている。具体的には、誤差関数計算部10は、誤差関数D
pの値が誤差関数閾値T
dataを超える場合、誤差関数閾値T
dataを誤差関数D
pの値としてメッセージ生成・伝搬部12に出力する。その一方、誤差関数計算部10は、誤差関数D
pの値が誤差関数閾値T
data以下の場合、メッセージ生成・伝搬部12に誤差関数D
pの値をそのまま出力する。
【0059】
スムーズ関数計算部11は、距離候補ごとに、予め設定されたスムーズ関数閾値T
smooth以下となるように、スムーズ関数Vを計算するものである。このスムーズ関数計算部11は、
図4に示すように、画素pの距離候補f
p(0〜N−1)と、画素qの距離候補f
q(0〜N−1)との全組み合わせについて、下記の式(7)を用いて、スムーズ関数Vを計算する。
【0061】
このとき、スムーズ関数計算部11は、式(7)に示すように、スムーズ関数Vの値がスムーズ関数閾値T
smoothを超えないように、トランケーションを行っている。具体的には、スムーズ関数計算部11は、スムーズ関数Vの値がスムーズ関数閾値T
smoothを超える場合、スムーズ関数閾値T
smoothをスムーズ関数Vの値としてメッセージ生成・伝搬部12に出力する。その一方、スムーズ関数計算部11は、スムーズ関数Vの値がスムーズ関数閾値T
smooth以下の場合、メッセージ生成・伝搬部12にスムーズ関数Vの値をそのまま出力する。
【0062】
ここで、マルコフランダムフィールドおよびスムーズ関数Vについて補足する。このマルコフランダムフィールドは、基準画像で互いに隣接する画素の色、輝度や距離が似ていることを示すモデルである。そして、スムーズ関数Vは、このマルコフランダムフィールドを踏まえた距離の連続性に関する関数であり、基準画像の各画素に距離候補を割り当てた際、互いに隣接する画素の距離候補が同じであればエネルギーが小さく、異なればエネルギーが大きくなる。例えば、マルコフランダムフィールドでは、ある画素の距離候補が1で、その隣接画素の距離候補が1である場合、エネルギーは0となる。また、ある画素の距離候補が1で、その画素に隣接する画素の距離候補が2である場合、例えば、エネルギーは1となる。さらに、ある画素の距離候補が1で、その隣接画素の距離候補が10である場合、例えば、エネルギーは9となる。つまり、信頼度伝搬法において、エネルギーが最小となる距離候補が最終的な距離となることを考慮すれば、このマルコフランダムフィールドにより、互いに隣接する画素は、同じような距離になり易くなる。
【0063】
メッセージ生成・伝搬部(エネルギー伝搬部)12は、誤差関数計算部10で計算された誤差関数D
pと、スムーズ関数計算部11で計算されたスムーズ関数Vとが入力される。そして、メッセージ生成・伝搬部12は、
図1と同様に、これら誤差関数D
pおよびスムーズ関数Vを含むメッセージが集合したエネルギー集合を生成するものである。
【0064】
具体的には、メッセージ生成・伝搬部12は、基準画像の画素位置に対応した位置に画素ごとのメッセージを配置することで、エネルギー集合をモデル化(生成)する。
次に、メッセージ生成・伝搬部12は、前記した式(3)を用いて、エネルギー集合内における隣接画素間で、メッセージを生成して伝搬することで、画素ごとのメッセージを更新する。まず、メッセージ生成・伝搬部12は、
図5,
図6に示すように、画素sにおいて、距離候補f
s(0〜N−1)のメッセージm
s(0)〜m
s(N−1)を生成して、画素sから画素pに伝搬させる。次に、メッセージ生成・伝搬部12は、画素pにおいて、距離候補f
p(0〜N−1)のメッセージm
p→q(0)〜m
p→q(N−1)を生成して、画素pから画素qに伝搬させる。
【0065】
評価関数計算部13は、前記した式(4)を用いて、メッセージ生成・伝搬部12で更新されたメッセージを示す評価関数b
qを計算するものである。そして、評価関数計算部13は、計算した評価関数b
qを、距離推定部14と、評価値O計算部16と、評価値K計算部18とに出力する。
【0066】
距離推定部(距離指標推定部)14は、評価関数計算部13で計算された評価関数b
qが入力される。そして、距離推定部14は、距離候補f
qのうち、この評価関数b
qが最小となる距離候補f
qを、距離情報として推定するものである。すなわち、距離推定部14は、前記した式(4)の評価関数b
qが最小となる距離候補f
qを、基準画像の画素qの最終的な距離情報として推定する。
【0067】
ここでは、距離推定部14は、距離情報として、画素の距離が手前側である程、その画素の輝度が高く、画素の距離が奥側である程、その画素の輝度が低くなる距離画像を生成して出力する。この距離画像は、例えば、被写体の3次元立体モデルの生成に利用できる。
【0068】
評価値計算部15は、評価関数b
qにおけるエネルギー分布の形状により、評価値を求めるものであり、評価値O計算部(オクルージョン評価値計算部)16と、評価値K計算部(テクスチャ評価値計算部)18とを備える。
【0069】
評価値O計算部(オクルージョン評価値計算部)16は、評価関数計算部13で計算された評価関数b
qが入力される。この評価関数b
qは、基準画像の各画素について、距離候補f
qごとのメッセージを示す情報、つまり、距離候補f
qとメッセージとを対応付けたエネルギー分布(メッセージ分布)と言える。
【0070】
具体的には、評価値O計算部16は、メッセージが最も高くなる最大値とメッセージが最も低くなる最小値との差分をこの最大値で除算することで、評価値Oを計算するものである。具体的には、評価値O計算部16は、下記の式(8)を用いて評価値Oを計算して、オクルージョン領域判定部17に出力する。
【0072】
ここで、maxは、最大値を返す関数である。従って、max(b
q(f
q))は、画素qにおけるメッセージの最大値を示す。また、min(b
q(f
q))は、画素qにおけるメッセージの最小値を示す。
【0073】
オクルージョン領域判定部(オクルージョン推定エラー判定部)17は、評価値O計算部16から評価値Oが入力される。そして、オクルージョン領域判定部17は、この評価値Oが予め設定されたオクルージョン閾値T
o以下であるか否かを判定し、評価値Oがオクルージョン閾値T
o以下の場合、オクルージョンに起因する推定エラーが生じたと判定するものである。
【0074】
ここで、オクルージョンに起因する推定エラーが生じていない画素では、
図7(a)のエネルギー分布のように、メッセージの最大値maxと最小値minとの差分ΔE
Oが、大きくなる。一方、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素では、
図7(b)のエネルギー分布のように、差分ΔE
Oが
図7(a)よりも小さくなる。
【0075】
また、
図7の差分ΔE
Oは、式(8)の分子であることから、評価値Oに比例する。つまり、オクルージョン領域判定部17は、評価値Oが、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素で、オクルージョンに起因する推定エラーが生じていない画素よりも小さくなる性質を利用して、オクルージョンに起因する推定エラーを判定している。そして、オクルージョン領域判定部17は、評価値Oがオクルージョン閾値T
o以下と判定された画素領域をオクルージョン領域として出力する。このオクルージョン領域は、例えば、被写体の3次元立体モデルを生成する際、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた領域を把握するために利用できる。
なお、オクルージョン領域判定部17は、評価値Oが閾値T
oを超える場合、オクルージョンに起因する推定エラーが生じていないと判定することは言うまでもない。
【0076】
評価値K計算部(テクスチャ評価値計算部)18は、評価関数計算部13で計算された評価関数b
qが入力される。そして、評価値K計算部18は、基準画像の各画素について、このエネルギー分布の尖度を評価値Kとして計算するものである。
【0077】
具体的には、評価値K計算部18は、下記の式(9)に示すように、距離候補f
qの個数n
f(例えば、0〜N−1までの合計N個)と、メッセージと、メッセージの平均値b
q ̄と,メッセージの標準偏差σ(b
q)とに基づいて、評価値Kを計算する。そして、評価値K計算部18は、計算した評価値Kを、無テクスチャ領域判定部19に出力する。
【0079】
無テクスチャ領域判定部(テクスチャ推定エラー判定部)19は、評価値K計算部18から、評価値Kが入力される。そして、無テクスチャ領域判定部19は、この評価値Kが予め設定されたテクスチャ閾値T
K以下であるか否かを判定し、評価値Kがテクスチャ閾値T
K以下の場合、テクスチャに起因する推定エラーが生じたと判定するものである。
【0080】
ここで、テクスチャに起因する推定エラーが生じていない画素では、
図8(a)に示すように、エネルギー分布が尖っており、その尖度を示す評価値Kが大きくなる。一方、テクスチャに起因する推定エラーが生じた画素では、
図8(b)に示すように、エネルギー分布が尖っておらず、評価値Kが
図8(a)よりも小さくなる。
【0081】
この尖度(Kurtosis)は、エネルギー分布の尖り具合を示すものであり、正規分布と比べて、以下のような特徴がある。すなわち、尖度が大きくなるほど、鋭いピークと長い尾とを有するエネルギー分布になる(
図8(a)参照)。その一方、尖度が小さくなるほど、より丸みがかったピークと短い尾とを有するエネルギー分布になる(
図8(b)参照)。
なお、尾とは、
図8において、トランケーションによって形成される、メッセージの上限となる平坦部である。
【0082】
つまり、無テクスチャ領域判定部19は、評価値Kが、テクスチャに起因する推定エラーが生じた画素で、テクスチャに起因する推定エラーが生じていない画素よりも小さくなる性質を利用して、テクスチャに起因する推定エラーを判定している。そして、無テクスチャ領域判定部19は、評価値Kがテクスチャ閾値T
K以下と判定された画素領域を無テクスチャ領域として出力する。このオクルージョン領域は、例えば、被写体の3次元立体モデルを生成する際、テクスチャに起因する推定エラーが生じた領域を把握するために利用できる。
なお、無テクスチャ領域判定部19は、評価値Kがテクスチャ閾値T
Kを超える場合、テクスチャに起因する推定エラーが生じていないと判定することは言うまでもない。
【0083】
[距離情報推定装置の動作]
図9を参照し、距離情報推定装置1の動作について説明する(適宜
図3参照)。
距離情報推定装置1は、誤差関数計算部10によって、距離候補ごとに、誤差関数閾値T
data以下となるように誤差関数D
pを計算する。つまり、誤差関数計算部10は、前記した式(5)及び式(6)を用いて、誤差関数D
pを計算して、トランケーションを行う(ステップS10)。
【0084】
距離情報推定装置1は、スムーズ関数計算部11によって、距離候補ごとに、スムーズ関数閾値T
smooth以下となるように、スムーズ関数Vを計算する。つまり、スムーズ関数計算部11は、前記した式(7)を用いて、スムーズ関数Vを計算して、トランケーションを行う(ステップS11)。
【0085】
距離情報推定装置1は、メッセージ生成・伝搬部12によって、
図1と同様にエネルギー集合を生成する。そして、メッセージ生成・伝搬部12は、前記した式(3)を用いて、エネルギー集合内における隣接画素間で、メッセージを生成して伝搬する(ステップS12)。
【0086】
距離情報推定装置1は、評価関数計算部13によって、前記した式(4)を用いて、距離候補ごとに評価関数b
qを計算する(ステップS13)。そして、距離情報推定装置1は、距離推定部14によって、距離候補のうち、この評価関数b
qが最小となる距離を、距離情報として推定する(ステップS14)。
【0087】
距離情報推定装置1は、評価値O計算部16によって、評価値Oを計算する。つまり、評価値O計算部16は、前記した式(8)を用いて、メッセージの最大値とメッセージの最小値との差分をこの最大値で除算することで、評価値Oを計算する(ステップS15)。
【0088】
距離情報推定装置1は、オクルージョン領域判定部17によって、評価値Oがオクルージョン閾値T
o以下であるか否かを判定し、評価値Oがオクルージョン閾値T
o以下の場合、オクルージョンに起因する推定エラーが生じたと判定する。(ステップS16)。
【0089】
距離情報推定装置1は、評価値K計算部18によって、エネルギー分布の尖度である評価値Kを計算する。つまり、評価値K計算部18は、前記した式(9)に示すように、距離候補の個数n
fと、メッセージと、メッセージの平均値b
q ̄と、メッセージの標準偏差σ(b
q)とに基づいて、評価値Kを計算する(ステップS17)。
【0090】
距離情報推定装置1は、無テクスチャ領域判定部19によって、評価値Kがテクスチャ閾値T
K以下であるか否かを判定し、評価値Kがテクスチャ閾値T
K以下の場合、テクスチャに起因する推定エラーが生じたと判定する(ステップS18)。
【0091】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る距離情報推定装置1は、メッセージの最小値だけでなくメッセージの最大値も考慮して評価値Oを計算すると共に、エネルギー分布の尖度である評価値Kを計算する。そして、距離情報推定装置1は、オクルージョンやテクスチャに起因する推定エラーが生じた画素で、評価値O及び評価値Kが小さくなる性質を利用して、これら推定エラーを判定する。これによって、距離情報推定装置1は、オクルージョン及びテクスチャに起因する推定エラーの判定精度を向上させて、これら推定エラーが生じた領域を正確に提示することができる。
【0092】
さらに、距離情報推定装置1は、
図7,
図8に示すように、トランケーションによって、メッセージの上限が設けられるため、評価関数b
qのばらつきが一定範囲に収まって、距離情報の精度を向上させることができる。
【0093】
(第2実施形態)
[距離情報推定装置の構成]
図10を参照し、本発明の第2実施形態に係る距離情報推定装置1Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。この距離情報推定装置1Bは、オクルージョン及びテクスチャに起因する推定エラーを抑制する点が、第1実施形態と異なる。このため、距離情報推定装置1Bは、テクスチャ推定エラー抑制部20をさらに備える。
【0094】
図10に示すように、距離情報推定装置1Bは、左カメラC
L及び中央カメラC
Cの撮影画像である左ステレオ画像と、右カメラC
R及び中央カメラC
Cの撮影画像である右ステレオ画像とが入力される。
【0095】
この中央カメラC
Cは、左カメラC
L及び右カメラC
Rと同様、静止画や動画を撮影可能な撮影カメラである。また、左カメラC
L及び右カメラC
Rは、それぞれ、中央カメラC
Cから一定間隔離して左右に配置される。ここでは、中央カメラC
Cを基準カメラとし、中央カメラC
Cの撮影画像を基準画像とし、左カメラC
L及び右カメラC
Rの撮影画像を参照画像とする。
【0096】
誤差関数計算部10と、スムーズ関数計算部11と、メッセージ生成・伝搬部12と、評価関数計算部13と、距離推定部14とは、左ステレオ画像及び右ステレオ画像それぞれの処理を行う以外、
図3の各手段と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0097】
ここで、後記するオクルージョンに起因する推定エラーの抑制には、左ステレオ画像及び右ステレオ画像の両方(以下、「両ステレオ画像」)から求めた評価関数b
qが必要になる。このため、評価関数計算部13は、両ステレオ画像から求めた評価関数b
qを評価値O計算部16Bに出力する。さらに、距離推定部14は、両ステレオ画像から求めた距離情報(距離画像)を、評価値O計算部16Bに出力する。
【0098】
一方、後記するテクスチャに起因する推定エラーの抑制には、左ステレオ画像及び右ステレオ画像の何れか一方から求めた評価関数b
qがあればよい。従って、評価関数計算部13は、左ステレオ画像から求めた評価関数b
qを、評価値K計算部18に出力する。
【0099】
評価値O計算部16Bは、両ステレオ画像から評価値Oを計算して、オクルージョン領域判定部17に出力する。また、評価値O計算部16Bは、両ステレオ画像から計算した評価値Oと、両ステレオ画像の距離情報とを用いて、オクルージョンに起因する推定エラーを抑制する。
なお、評価値Oの計算は、
図3の評価値O計算部16と同様のため、説明を省略する。
【0100】
具体的には、評価値O計算部16Bは、基準画像の各画素について、左ステレオ画像から計算した評価値Oと、右ステレオ画像から計算した評価値Oとを比較する。この比較結果に基づいて、評価値O計算部16Bは、両ステレオ画像の距離情報のうち、評価値Oが大きい側の距離情報を、その画素の距離情報として、テクスチャ推定エラー抑制部20に出力する。すなわち、評価値O計算部16Bは、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素で評価値Oが小さくなることを利用して、距離推定部14で生成された両ステレオ画像の距離情報を、この推定エラーを抑制した1つの距離情報に統合する。
【0101】
オクルージョン領域判定部17は、
図3と同様、両ステレオ画像のオクルージョン領域を出力するため、詳細な説明を省略する。
なお、このオクルージョン領域は、オクルージョンに起因する推定エラーの抑制に必要ではなく、参考情報として提示される。
【0102】
評価値K計算部18は、
図3と同様、左ステレオ画像についての評価値Kを計算するため、詳細な説明を省略する。
無テクスチャ領域判定部19は、
図3と同様、左ステレオ画像についての無テクスチャ領域を生成して、テクスチャ推定エラー抑制部20に出力する。
【0103】
テクスチャ推定エラー抑制部20は、評価値O計算部16Bから距離情報が入力され、無テクスチャ領域判定部19から無テクスチャ領域が入力される。そして、テクスチャ推定エラー抑制部20は、この無テクスチャ領域を用いて、この距離情報から、テクスチャに起因する推定エラーを抑制するものである。
【0104】
図11,
図12を参照して、テクスチャに起因する推定エラーの抑制について説明する(適宜
図10参照)。
説明を簡易にするため、
図11に示すように、土俵Aの上で二人の被写体(力士)O
1,O
2が取組を行っている例をあげて説明する。この場合、
図10の中央カメラC
Cは、土俵Aの正面中央に位置し、取組を行っている被写体O
1,O
2の側面方向(
図11の矢印方向)から基準画像Pを撮影したこととする。
【0105】
なお、
図11では、基準画像Pに含まれない土俵Aと被写体O
1,O
2との一部を破線で図示した。また、
図11では、基準画像Pのうち、土俵Aの奥側地面となる背景Bの領域が無テクスチャ領域TXであり、ハッチングで図示した。この例では、テクスチャ推定エラー抑制部20は、
図11のハッチング部分に対して、テクスチャに起因する推定エラーの抑制処理を行うことになる。
【0106】
ここで、中央カメラC
Cと、土俵Aと、被写体O
1,O
2とを上側より見ると、これらの位置関係は、
図12のようになる。
図12では、土俵A及び被写体O
1,O
2を破線で図示すると共に、後記する距離Dを一転鎖線で図示した。また、
図11のハッチング部分(無テクスチャ領域TX)は、球表面の一部を切り取った曲面形状になる(
図12の吹き出し)。
【0107】
まず、テクスチャ推定エラー抑制部20は、左カメラC
Lと、中央カメラC
Cと、右カメラC
Rとの光軸LAが交わる光軸交点CEを、カメラキャリブレーションにより計算する。ここで、テクスチャ推定エラー抑制部20は、全てのカメラで光軸交点CEを求める必要がなく、基準画像を撮影する中央カメラC
Cが含まれていればよい。つまり、テクスチャ推定エラー抑制部20は、中央カメラC
Cと左カメラC
Lとの組、又は、中央カメラC
Cと右カメラC
Rとの一方の組から、光軸交点CEを求めてもよい。
【0108】
次に、テクスチャ推定エラー抑制部20は、予め設定された半径rの仮想球VCを、光軸交点CEを中心に生成する。ここで、テクスチャ推定エラー抑制部20は、全ての被写体(例えば、土俵A、被写体O
1,O
2)が仮想球VCに含まれるように、半径rが予め設定されている。そして、テクスチャ推定エラー抑制部20は、中央カメラC
Cから仮想球VCの奥側表面までの距離Dを計算し、この距離Dを、無テクスチャ領域TX内の各画素の距離情報として割り当てる。
【0109】
すなわち、無テクスチャ領域TX内の各画素の距離情報は、下記の計算式を用いて割り当てることができる。まず、テクスチャ推定エラー抑制部20は、下記の(10)及び式(11)の連立方程式により、仮想球VCと中央カメラC
Cの光軸LAとの交点(X,Y,Z)を計算する。
【0112】
前記した式(10)は、仮想球VCを表した方程式である。ここで、a,b,cが仮想球VCの中心の世界座標(光軸交点CEの世界座標)であり、rが仮想球VCの半径である。
前記した式(11)は、中央カメラC
Cの光学主点と無テクスチャ領域TX内の各画素とを通過する直線を表した方程式である。ここで、e,g,iが無テクスチャ領域TX内の各画の世界座標と光学主点の世界座標とにより計算される傾き(既知)であり、f,h,jが光学主点の世界座標(既知)である。
【0113】
そして、テクスチャ推定エラー抑制部20は、下記の(12)により、中央カメラC
Cから仮想球VCの奥側表面までの距離Dを計算する。ここで、zは仮想球VCの奥側表面までの距離Dであり、i,jは基準画像の座標(既知)であり、Aはカメラキャリブレーションにより計算される内部パラメータ(既知)であり、Rはカメラキャリブレーションにより計算される回転行列(既知)であり、Uはカメラキャリブレーションにより計算される並進行列(既知)である。
【0115】
[距離情報推定装置の動作]
図13を参照し、距離情報推定装置1Bの動作について説明する(適宜
図10参照)。
ステップS20〜S24の処理は、
図9のステップS10〜S14と同様のため、説明を省略する。
【0116】
距離情報推定装置1Bは、評価値O計算部16Bによって、無テクスチャ領域及び距離情報を用いて、オクルージョンに起因する推定エラーを抑制する。つまり、評価値O計算部16Bは、両ステレオ画像から評価値Oを計算し、これら評価値Oを比較して、評価値Oが大きい側のステレオ画像から生成した距離情報を、基準画像での各画素の距離情報として出力する(ステップS25)。
【0117】
ステップS26〜S28の処理は、
図9のステップS16〜S18と同様のため、説明を省略する。
【0118】
距離情報推定装置1Bは、テクスチャ推定エラー抑制部20によって、無テクスチャ領域を用いて、距離情報から、テクスチャに起因する推定エラーを抑制する。つまり、テクスチャ推定エラー抑制部20は、左カメラC
Lと、中央カメラC
Cと、右カメラC
Rとの光軸交点CEをカメラキャリブレーションにより計算する。そして、テクスチャ推定エラー抑制部20は、半径rの仮想球VCを、光軸交点CEを中心に生成する。さらに、テクスチャ推定エラー抑制部20は、中央カメラC
Cから仮想球VCの奥側表面までの距離Dを計算して、無テクスチャ領域TX内の各画素の距離情報として割り当てる(ステップS29)。
【0119】
以上のように、本発明の第2実施形態に係る距離情報推定装置1Bは、オクルージョン及びテクスチャに起因する推定エラーを抑制して、精度が高い距離情報を生成することができる。この距離情報を用いれば、例えば、奥行き感が高い、インテグラルフォトグラフィ(IP)方式の立体映像を生成することができる。
【0120】
(第3実施形態)
[距離情報推定装置の構成]
図14を参照し、本発明の第3実施形態に係る距離情報推定装置1Cの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。この距離情報推定装置1Cは、メッセージ伝搬の際、隣接画素間で色が大きく異なるときにその伝搬を制限する点が、第1実施形態と異なる。このため、距離情報推定装置1Cは、メッセージ伝搬制限判定部(エネルギー伝搬判定部)21をさらに備える。
【0121】
ここで、誤差関数計算部10と、スムーズ関数計算部11と、評価値計算部15と、オクルージョン領域判定部17と、無テクスチャ領域判定部19とは、
図3の各手段と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0122】
メッセージ伝搬制限判定部(エネルギー伝搬判定部)21は、基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が予め設定された色情報閾値T
c以下であるか否かによって、隣接画素間でメッセージを伝搬できるか否かを判定するものである。
【0123】
このメッセージ伝搬制限判定部21は、メッセージの伝搬の制限を判定するために、隣接画素間の色情報の差分絶対値に関する色情報閾値T
cが予め設定される。このとき、色情報閾値T
cの値が小さくなってメッセージ伝搬の制限が強くなると、重み係数λ
dataの値も小さくなってスムーズ関数の影響が大きくなるように、色情報閾値T
c及び重み係数λ
dataを予め設定することが好ましい。
【0124】
また、メッセージ伝搬制限判定部21は、メッセージ伝搬元の画素sと処理対象の画素pとの色情報の差分絶対値が色情報閾値T
c以下であるか否かによって、メッセージ伝搬元の画素sと処理対象の画素pとの間でメッセージを伝搬できるか否かを判定する。具体的には、メッセージ伝搬制限判定部21は、下記の式(13)に示すように、画素s,pの色情報の差分絶対値と色情報閾値T
cとを比較することにより、メッセージ伝搬元の重み係数λ
s,pを計算する。
【0126】
ここで、メッセージ伝搬制限判定部21は、式(13)に示すように、画素s,pの色情報の差分絶対値が色情報閾値T
c以下の場合、画素s,p間でメッセージを伝搬できると判定し、重み係数λ
s,pを1として計算する。一方、メッセージ伝搬制限判定部21は、画素s,pの色情報の差分絶対値が色情報閾値T
cを超える場合、画素s,p間でメッセージを伝搬できないと判定し、重み係数λ
s,pを0として計算する。そして、メッセージ伝搬制限判定部21は、計算した重み係数λ
s,pをメッセージ生成・伝搬部12Cに出力する。
【0127】
また、メッセージ伝搬制限判定部21は、メッセージ伝搬先の画素qと処理対象の画素pとの色情報の差分絶対値が色情報閾値T
c以下であるか否かによって、メッセージ伝搬先の画素qと処理対象の画素pとの間でメッセージを伝搬できるか否かを判定する。具体的には、メッセージ伝搬制限判定部21は、下記の式(14)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値と色情報閾値T
cとを比較することにより、メッセージ伝搬先の重み係数λ
p,qを計算する。
【0129】
ここで、メッセージ伝搬制限判定部21は、式(14)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値が色情報閾値T
c以下の場合、画素p,q間でメッセージを伝搬できると判定し、重み係数λ
p,qを1として計算する。一方、メッセージ伝搬制限判定部21は、画素p,qの色情報の差分絶対値が色情報閾値T
cを超える場合、画素p,q間でメッセージを伝搬できないと判定し、重み係数λ
p,qを0として計算する。そして、メッセージ伝搬制限判定部21は、計算した重み係数λ
p,qを評価関数計算部13Cに出力する。
【0130】
メッセージ生成・伝搬部12Cは、メッセージ伝搬制限判定部21からメッセージ伝搬元の重み係数λ
s,pが入力される。そして、メッセージ生成・伝搬部12Cは、下記の式(15)を用いて、メッセージを生成して伝搬する。
【0132】
このとき、メッセージ生成・伝搬部12Cは、式(15)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値と色情報閾値T
cとを比較して、メッセージを伝搬するか又は制限するかを判定する。具体的には、メッセージ生成・伝搬部12Cは、画素p,qの色情報の差分絶対値が色情報閾値T
c以下の場合、画素pから画素qへのメッセージを伝搬させる。一方、メッセージ生成・伝搬部12Cは、色情報の差分絶対値が色情報閾値T
cを超える場合、画素pから画素qへメッセージを伝搬させない。
【0133】
図15,
図16を参照して、メッセージの伝搬の制限について詳細に説明する(適宜
図14参照)。この
図15,
図16では、
図1と同様のエネルギー集合において、枠(白塗四角形)が明るい色の画素であり、ハッチングされた枠が暗い色の画素である。ここでは、明るい色の画素と暗い色の画素との色情報の差分絶対値が色情報閾値T
cを超えることとして説明する。
【0134】
例えば、被写体と背景との境界といったように、隣接画素間で色が大きく異なる場合を考える。
図15(a)に示すように、画素s,pで色が大きく異なる場合、距離情報推定装置1Cは、前記した式(13)よりメッセージ伝搬元の重み係数λ
s,pを0として、これら2画素s、pでのメッセージ伝搬を制限する。また、
図15(b)に示すように、画素p,qで色が大きく異なる場合、距離情報推定装置1Cは、前記した式(14)よりメッセージ伝搬先の重み係数λ
p,qを0として、これら2画素p、qでのメッセージ伝搬を制限する。
【0135】
一方、
図16(a)に示すように画素s,p,qの全てが明るい色、又は、
図16(b)に示すように画素s,p,qの全てが暗い色の場合、距離情報推定装置1Cは、前記した式(13)及び式(14)より重み係数λ
s,p,λ
p,qを1として、画素s,p,q間でメッセージを伝搬する。
【0136】
つまり、距離情報推定装置1Cでは、メッセージ伝搬元の重み係数λ
s,pの値によって、画素sから画素pへのメッセージ伝搬を制御し、メッセージ伝搬先の重み係数λ
p,qの値によって、画素pから画素qへのメッセージ伝搬を制御する。
【0137】
評価関数計算部13Cは、メッセージ伝搬制限判定部21で計算された重み係数λ
p,qが入力され、下記の式(16)で定義される評価関数b
qを計算する。そして、評価関数計算部13Cは、計算した評価関数b
qを、距離推定部14Cと、評価値O計算部16と、評価値K計算部18とに出力する。
【0139】
距離推定部14Cは、
図3の距離推定部14と同様、距離情報を推定する。
また、距離推定部14Cは、ノイズ除去フィルタ14aを備える。このノイズ除去フィルタ14aは、距離推定部14Cが推定した距離情報(距離画像)にメディアンフィルタ等のノイズ除去処理を施すものである。このようにして、ノイズの影響が少ない滑らかな距離情報を推定することができる。
【0140】
[距離情報推定装置の動作]
図17を参照し、距離情報推定装置1Cの動作について説明する(適宜
図14参照)。
ステップS30,S31の処理は、
図9のステップS10〜S11と同様のため、説明を省略する。
【0141】
距離情報推定装置1Cは、メッセージ伝搬制限判定部21によって、隣接画素間の色情報の差分絶対値が色情報閾値T
c以下であるか否かによって、隣接画素間でメッセージを伝搬できるか否かを判定する。具体的には、メッセージ伝搬制限判定部21は、前記した式(13)に示すように、画素s,pの色情報の差分絶対値と色情報閾値T
cとを比較することにより、画素s,p間におけるメッセージ伝搬の判定結果として、メッセージ伝搬元の重み係数λ
s,pを計算する。さらに、メッセージ伝搬制限判定部21は、前記した式(14)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値と色情報閾値T
cとを比較することにより、画素p,q間におけるメッセージ伝搬の判定結果として、メッセージ伝搬先の重み係数λ
p,qを計算する(ステップS32)。
【0142】
距離情報推定装置1Cは、メッセージ生成・伝搬部12Cによって、前記した式(15)を用いて、メッセージを生成して伝搬する(ステップS33)。
距離情報推定装置1Cは、評価関数計算部13Cによって、前記した式(16)で定義される評価関数b
qを計算する(ステップS34)。
なお、ステップS35〜S39の処理は、
図9のステップS14〜S28と同様のため、説明を省略する。
【0143】
以上のように、本発明の第3実施形態に係る距離情報推定装置1Cは、隣接画素間の色情報の差分絶対値が大きいときにメッセージの伝搬を制限する。これによって、距離情報推定装置1Cは、被写体の膨張を抑制して被写体の輪郭を鮮鋭化し、精度が高い距離情報を生成することができる。
【0144】
なお、各実施形態では、誤差関数とスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法の一例として信頼度伝搬法を説明したが、本発明は、これに限定されない。本発明では、この手法として、例えば、ビタビアルゴリズムを用いることもできる。
【0145】
なお、各実施形態では、距離指標情報として距離情報を推定することとして説明したが、本発明は、これに限定されない。つまり、本発明は、前記した距離候補を視差候補に置き換えれば、視差情報を推定する視差情報推定装置を実現することができる。
【0146】
なお、各実施形態では、評価値として評価値K,Oを計算することとして説明したが、本発明は、これに限定されない。
また、各実施形態では、評価値K,Oの両方を計算することとして説明したが、本発明は、評価値K,Oの何れか一方のみを計算してもよい。この場合、本発明は、テクスチャ又はオクルージョンに起因する推定エラーの何れか一方だけを抑制してもよい。
【0147】
(変形例1)
以下、
図18を参照して、本発明の変形例1に係る距離情報推定装置1Dについて説明する。
図18に示すように、距離情報推定装置1Dは、
図10の距離情報推定装置1Bに、
図14のメッセージ伝搬制限判定部21を付加したものである。従って、距離情報推定装置1Dは、オクルージョン及びテクスチャに起因する推定エラーを抑制すると共に被写体の膨張を抑制し、精度が高い距離情報を生成することができる。
なお、
図18の各手段は、
図10,
図14と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【実施例】
【0148】
以下、本発明の実施例として、推定エラーの判定精度を実験した結果について説明する。
本実施例では、
図3の距離情報推定装置1を用いて実験を行った。また、この距離情報推定装置1に入力するステレオ画像として、力士(被写体)の取組を撮影した画像を準備した。左カメラC
Lが撮影した基準画像を
図19(a)に示し、右カメラC
Rが撮影した参照画像を
図19(b)に示す。このとき、左カメラC
L及び右カメラC
Rは、互いに2メートルだけ離した。また、左カメラC
Lから被写体までの距離が25メートルであり、距離候補を2センチメートルごとに設定した。さらに、λ
dataを0.07、誤差関数閾値T
dataを15、スムーズ関数閾値T
smoothを1.7に設定した。
【0149】
図19のステレオ画像から、距離情報推定装置1が生成した距離画像を
図20(a)に示す。
図20(a)の距離画像には、オクルージョンに起因する推定エラーを生じた領域を赤色で図示した。また、テクスチャに起因する推定エラーを生じた領域を青色で図示した。
【0150】
図20(a)の距離画像から、距離情報推定装置1が、評価値Oを用いてオクルージョン領域を出力した結果を、
図20(b)に示す。
図20(b)の画像において、輝度値の低い領域がオクルージョンに起因する推定エラー領域が生じた領域(オクルージョン領域)であり、
図20(a)の赤色領域とほとんど一致している。このことより、距離情報推定装置1は、オクルージョンに起因する推定エラーの判定精度が高いことが分かる。
【0151】
また、
図20(a)の距離画像に対し、距離情報推定装置1が、オクルージョンに起因する推定エラーの抑制処理を行った。この推定エラーを抑制した後の距離画像を
図21(a)に示す。ここで、
図21(a)の距離画像にも、
図20(a)と同様に赤色と、青色とを図示した。
【0152】
そして、
図21(a)の距離画像から、距離情報推定装置1が、評価値Kを用いて無テクスチャ領域を出力した結果を、
図21(b)に示す。
図21(b)の画像において、輝度値の低い領域がテクスチャに起因する推定エラー領域が生じた領域(例えば、土俵奥の地面)であり、
図21(a)の青色領域とほとんど一致している。このことより、距離情報推定装置1は、テクスチャに起因する推定エラーの判定精度が高いことが分かる。