(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764107
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月12日
(54)【発明の名称】差動増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/45 20060101AFI20150723BHJP
H03K 19/0948 20060101ALI20150723BHJP
H03K 19/003 20060101ALI20150723BHJP
【FI】
H03F3/45 Z
H03F3/45 A
H03K19/094 B
H03K19/003
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-222389(P2012-222389)
(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公開番号】特開2014-75705(P2014-75705A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】野木 昭彦
【審査官】
柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−303497(JP,A)
【文献】
特開2012−054649(JP,A)
【文献】
特開2008−236211(JP,A)
【文献】
特開2003−188662(JP,A)
【文献】
特開2008−015875(JP,A)
【文献】
特開平05−291847(JP,A)
【文献】
特開平4−8011(JP,A)
【文献】
特開2008−288900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00−3/45
H03F 3/50−3/52
H03F 3/62−3/64
H03F 3/68−3/72
H03K 19/003
H03K 19/0948
H03K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタ及び第2のトランジスタを含む差動対と、それぞれのゲートとドレインが接続される第3のトランジスタ及び第4のトランジスタを有し前記差動対に接続される素子対とを備える差動増幅回路において、
前記第1のトランジスタと並列に設けられた第5のトランジスタと、
前記第2のトランジスタと並列に設けられた第6のトランジスタと、
を備え、
前記第5のトランジスタ及び第6のトランジスタは、互いに同じサイズであり、
前記第5のトランジスタ及び第6のトランジスタは、それぞれのゲート電圧を同一に保持されること特徴とする差動増幅回路。
【請求項2】
第1のトランジスタ及び第2のトランジスタを含む差動対と、それぞれのゲートとドレインが接続される第3のトランジスタ及び第4のトランジスタを有し前記差動対に接続される素子対とを備える差動増幅回路において、
前記第1のトランジスタと並列に設けられた第5のトランジスタと、
前記第2のトランジスタと並列に設けられた第6のトランジスタと、
を備え、
前記第5のトランジスタ及び第6のトランジスタは、互いに同じサイズであり、
前記第5のトランジスタ及び第6のトランジスタは、それぞれのゲートとドレインとが接続されていることを特徴とする差動増幅回路。
【請求項3】
前記第1のトランジスタ及び第2のトランジスタは、低耐圧トランジスタであることを特徴とする請求項1又は2に記載の差動増幅回路。
【請求項4】
前記差動対の一方には電圧レベルが急峻に変化する信号が入力され、他方には一定の電圧レベルを有する信号が入力されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の差動増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動増幅回路に関し、より詳細には、差動対を構成するトランジスタの耐圧を確保するとともに、特性劣化を生じさせない差動増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、差動対に低耐圧トランジスタを使用してもトランジスタの特性劣化を生じさせないようにした差動増幅回路があった。例えば、特許文献1に記載のものは、低電圧トランジスタを使用したデータ出力回路に過電圧が印加された場合でも、素子破壊を防止するようにしたものである。具体的には、第1トランジスタと第2トランジスタとを有する差動対と、第1カスコードトランジスタと、第2カスコードトランジスタと、接地線に接続される第1抵抗成分と、電源線に接続される第2抵抗成分とを備え、そして、第1カスコードトランジスタのゲートと、第2カスコードトランジスタのゲートは互いに接続された状態にし、各々のゲートには、第1抵抗成分と第2抵抗成分によって定まる電位のバイアスが供給し、そのうえで、第1トランジスタは、第1カスコードトランジスタを介して第1出力信号を出力し、第2トランジスタは、第2カスコードトランジスタを介して第2出力信号を出力する、というものである。
【0003】
また、例えば、特許文献2に記載のものは、低耐圧の高速対応のMOSトランジスタを差動対に使用し、このMOSトランジスタの耐圧より所定値高い電源電圧で使用しても、素子耐圧を確保しつつ起動電圧を低くすることのできる差動増幅回路である。具体的には、一対のNチャネル型MOSトランジスタを差動対とし、一対のPチャネル型MOSトランジスタを能動負荷とする差動増幅回路50で、高速化対応のため差動対のMOSトランジスタに低耐圧素子を使用し、その素子の耐圧確保のためにNチャネル型MOSトランジスタを挿入した回路において、負荷MOSを利用したMOSインバータとCMOSインバータにより耐圧確保のための一対のMOSトランジスタとを、ショート及び有効にする一対のNチャネル型MOSトランジスタをON、OFFすることで、耐圧を確保すると同時に低電圧からの起動を可能とした、というものである。
【0004】
図1は、従来の差動増幅回路の構成を説明するための回路図である。
図1に示す従来のものは、低耐圧のMOSトランジスタを差動対に使用した差動増幅回路において、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2の特性劣化を生じさせないようにした差動増幅回路である。
図1に示すように、差動増幅回路10は、最高電位である電源電圧VDDから最低電位である基準電位VSSまでの間に、複数の第1及び第8のトランジスタQ1,Q2,Q3,Q4,Q7,Q8と、定電流源11とを、以下の順に接続して構成されている。すなわち、電源電圧VDDから能動負荷対9、電圧降下用の素子対Y、差動対X、及び定電流源11の順に接続して構成されている。
【0005】
能動負荷対9は、PMOSトランジスタQ7,Q8で構成されている。また、素子対Yは、NMOSトランジスタQ3,Q4で構成されている。能動負荷対9は、電源電圧VDDと、トランジスタQ3,Q4のドレインDとの間に、ソースSとドレインDとで接続されており、カレントミラー構成である。また、トランジスタQ7は、そのドレインD−ゲートGがショートされ、そのドレインD−ゲートGが、トランジスタQ8のゲートGに接続されている。
【0006】
差動増幅回路10は、入力端子PINと入力端子NINとに入力された信号の差分を増幅して出力する回路であり、オペアンプによく利用されている。より具体的には、VDD
=5Vの時、高速化及び小サイズになることから差動対Xに耐圧が約3Vの低耐圧トランジスタQ1,Q2を利用することがある。以下、差動増幅回路10の動作を説明する。
まず、
図1に記載されたトランジスタQ3,Q4が無い場合の現象を説明する。すなわち、これらトランジスタQ3,Q4それぞれのドレインD−ソースS間に該当する箇所を、
図1の破線7,8にて直結させた場合、その該当箇所で生じていた電圧降下1Vがなくなる。その結果、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2のドレインD−ソースS間に、その耐圧3Vを超える電圧が加わることにより、トランジスタQ1,Q2の特性が劣化する危険性がある。なお、トランジスタQ3,Q4のソースSは、不図示のバルクに接続されている。なお、バルクとはNMOSトランジスタの基板のことであり、特に指定無き場合は、そのトランジスタのソースに接続されている。
【0007】
次に、
図1に記載されたとおりに、トランジスタQ3,Q4がある場合では定常状態時、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2はONであり、トランジスタQ1,Q2に電流が流れているため、トランジスタQ3,トランジスタQ4にて約1Vの電圧降下が生じる。そのため、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2のドレインD−ソースS間に3V以上の電圧が加わることはなく、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2の特性劣化が生じない。
【0008】
(スルーイング状態)
差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2がOFFする一例として、非特許文献1に、差動対を使用したオペアンプにおいて矩形波24が入力された場合、スルーイング(slewing)の状態では、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2がOFFすることが記載されている。
【0009】
図2は、反転増幅回路におけるスルーイング状態を説明するための回路図である。
図3は、
図2に示す反転増幅回路でのスルーイング状態における入出力信号24,25の波形図である。
図2に示すように、オペアンプA2を用いた反転増幅回路20は、入力端子Vinへの入力信号23,24(単に矩形波24ともいう)に対して反転した出力信号25を出力端子Voutから出力する。そして、
図3に示すように、矩形波24の入力信号が立ち上がるタイミングt1と、立ち下がるタイミングt2とにおいて、出力信号25にはそれぞれスルーイング状態の発生が見られる。
【0010】
図4は、スルーイング(slewing)状態を説明するためのより具体的な回路図である。
図4に示すように、反転増幅回路40は、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2の後段に、オペアンプA2を接続した回路構成である。
図2及び
図4に示した反転増幅回路20,40において、その反転入力端子Vinに、矩形波24が入力された場合、矩形波24のエッジ部において、急峻な入力信号の変化に対する出力信号25が、過渡的変化した後で、定常状態になるまでの時間を、スルーイングと呼ぶ。以下にスルーイング状態の動作を説明する。
【0011】
図4に示す入力端子Vinへの入力信号=0の時、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2にはIo/2の電流が流れている。入力端子Vinに矩形波23が入力されると、トランジスタQ1のゲート電位が上昇し、トランジスタQ1に流れる電流が増加し、交点Vxの電位も上昇する。交点Vxの上昇により、トランジスタQ2のゲートG−ソースS間電圧が下がるため、トランジスタQ2がOFFし、トランジスタQ1,トランジスタQ3にIoが流れる。トランジスタQ3とトランジスタQ4とは、それぞれのゲートG−ソースS間電圧が同一のカレントミラー接続のため、トランジスタQ4にもトランジスタQ3と同一のIoが流れ、コンデンサCcをチャージする。そして、出力端子Voutから、出力波形44に示すように0から−V1に向かって過渡的変化しながら出力される。この時の出力電圧の傾きがスルーレートとして定義される。すなわち、下式の関
係で定義される。
【0012】
dVout/dt = 1/Cc * dQc/dt = Io/Cc
【0013】
Voutが0から−V1に変化するとトランジスタQ1ゲート電圧を下げることになり交点Vxの電位が下降し、Q2にも電流が流れる様になる。この矩形波24が入力されたスルーイングの状態では、トランジスタQ2がOFFしている。先に述べた差動対Xに低耐圧トランジスタQ1,Q2を使用した回路を使用した場合、トランジスタQ2がOFFになるとQ2に電流が流れず、トランジスタに耐圧を超える電圧が印加される場合が生じる。その場合は、トランジスタQ2の特性劣化につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−286683号公報
【特許文献2】特開2003−188662号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「R. Gregorian and G. Temes,Analog MOS Integrated Circuits for Signal Processing,Wiley,1986.」の4.9 FREQUENCY RESPONSE,TRANSIENT RESPONSE,AND SLEWRATE OF THE COMPENSATED CMOS OP―AMPの章、第182頁乃至第183頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した特許文献1に記載された差動増幅回路は、第1トランジスタと第2トランジスタとを有する差動対と、第1カスコードトランジスタと、第2カスコードトランジスタを備え、低電圧トランジスタを使用したデータ出力回路において、ボードに発生する信号の競合による過電圧や、電源プラグの抜き差し、その他の原因によるサージ電圧が印加された場合でも、素子破壊を防止するようにしたものである。しかしながら。電源電圧より低い耐圧のトランジスタをオペアンプ差動対に使用した場合に、オペアンプの任意の入力に対して差動対の耐圧を保証できず、差動対Xを構成するトランジスタの特性劣化を防ぎ得るものではなかった。
【0017】
また、特許文献2に記載された差動増幅回路でも、電源電圧より低い耐圧のトランジスタをオペアンプ差動対に使用した場合に、オペアンプの任意の入力に対して差動対の耐圧を保証できず、差動対Xを構成するトランジスタの特性劣化を防ぎ得るものではなかった。
また、
図1及び
図2に示した従来例の差動増幅回路10でも、電源電圧より低い耐圧のトランジスタをオペアンプ差動対に使用した場合に、オペアンプの任意の入力に対して差動対の耐圧を保証できず、差動対Xを構成するトランジスタQ1,Q2の特性劣化を防ぎ得るものではなかった。
【0018】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電源電圧より低い耐圧のトランジスタをオペアンプ差動対に使用した場合に、オペアンプの任意の入力に対して差動対の耐圧を確保するとともに、差動対を構成するトランジスタの特性劣化を生じさせない差動増幅回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、第1のトランジスタ(Q1)及び第2のトランジスタ(Q2)を含む差動対(X)と、それぞれのゲート(G)とドレイン(D)が接続される第3のトランジスタ(Q3)及び第4のトランジスタ(Q4)を有し前記差動対(X)に接続される素子対(Y)とを備える差動増幅回路において、
前記第1のトランジスタ(Q1)と並列に設けられた第5のトランジスタ(Q5)と、前記第2のトランジスタ(Q2)と並列に設けられた第6のトランジスタ(Q6)と、を備え、前記第5のトランジスタ(Q5)及び第6のトランジスタ(Q6)は、互いに同じサイズであり、前記第5のトランジスタ(Q5)及び第6のトランジスタ(Q6)は、それぞれのゲート電圧(V1)を同一に保持されることを特徴とする。(
図5、
図6)
【0020】
また、請求項
2に記載の発明は、
第1のトランジスタ(Q1)及び第2のトランジスタ(Q2)を含む差動対(X)と、それぞれのゲート(G)とドレイン(D)が接続される第3のトランジスタ(Q3)及び第4のトランジスタ(Q4)を有し前記差動対(X)に接続される素子対(Y)とを備える差動増幅回路において、前記第1のトランジスタ(Q1)と並列に設けられた第5のトランジスタ(Q5)と、前記第2のトランジスタ(Q2)と並列に設けられた第6のトランジスタ(Q6)と、を備え、前記第5のトランジスタ(Q5)及び第6のトランジスタ(Q6)は、互いに同じサイズであり、前記第5のトランジスタ(Q5)及び第6のトランジスタ(Q6)は、それぞれのゲート(G)とドレイン(D)とが接続されていることを特徴とする。(
図6)
【0021】
また、請求項
3に記載の発明は、請求項1
又は2に記載の差動増幅回路において、前記第1のトランジスタ(Q1)及び第2のトランジスタ(Q2)は、低耐圧トランジスタであることを特徴とする。(
図5、
図6)
また、請求項
4に記載の発明は、請求項1乃至
3のいずれかに記載の差動増幅回路において、前記差動対(X)の一方には電圧レベルが急峻に変化する信号が入力され、他方には一定の電圧レベルを有する信号が入力されることを特徴とする。(
図4、
図5、
図6)
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電源電圧より低い耐圧のトランジスタをオペアンプ差動対に使用した場合に、オペアンプの任意の入力に対して差動対の耐圧を確保するとともに、差動対を構成するトランジスタの特性劣化を生じさせない差動増幅回路が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来の差動増幅回路の構成を説明するための回路図である。
【
図2】反転増幅回路におけるスルーイング(slewing)状態を説明するための回路図である。
【
図3】
図2に示す反転増幅回路でのスルーイング状態における入出力信号の波形図である。
【
図4】スルーイング状態を説明するためのより具体的な回路図である。
【
図5】本発明に係る差動増幅回路の実施例1を説明するための回路図である。
【
図6】本発明に係る差動増幅回路の実施例2を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0025】
図5は、本発明に係る差動増幅回路の実施例1を説明するための回路図である。
図5に示すように、差動増幅回路50は、最高電位である電源電圧VDDから最低電位である基準電位VSSまでの間に、第1乃至第8のトランジスタQ1乃至Q8と、定電流源11とを、以下の順に接続して構成されている。すなわち、電源電圧VDDから能動負荷対9、電圧降下用の素子対Y、差動対X、及び定電流源11の順に接続して構成されている。また、差動対Xには電流パスZが付設されている。
【0026】
差動増幅回路50は、第1のトランジスタQ1及び第2のトランジスタQ2を含む差動対Xと、それぞれのゲートGとドレインDが接続される第3のトランジスタQ3及び第4のトランジスタQ4を含み差動対Xに接続される素子対Yとを備える。この差動増幅回路50において、第1のトランジスタQ1及び第2のトランジスタQ2と並列に第1及び第2の電流パスZ1,Z2が、それぞれ設けられている。
【0027】
また、差動増幅回路50において、第1のトランジスタQ1及び第2のトランジスタQ2は、低耐圧トランジスタである。
能動負荷対9は、PMOSトランジスタQ7,Q8で構成されている。また、素子対Yは、NMOSトランジスタQ3,Q4で構成されている。能動負荷対9は、電源電圧VDDと、トランジスタQ3,Q4のドレインDとの間に、ソースSとドレインDとで接続されており、カレントミラー構成である。また、トランジスタQ7は、そのドレインD−ゲートGがショートされ、そのドレインD−ゲートGが、トランジスタQ8のゲートGに接続されている。
【0028】
また、トランジスタQ1,Q2には、それらと同一サイズであって、電流パスZを構成するNMOSトランジスタQ5,Q6が、ドレインDと、ソースSとを、それぞれ共通に接続されている。すなわち、差動増幅回路50において、第1電流パスZ1及び第2の電流パスZ2は、互いに同じサイズの第5のトランジスタQ5及び第6のトランジスタQ6から構成されている。なお、第5のトランジスタQ5及び第6のトランジスタQ6を単に、トランジスタQ5,Q6ともいう。
【0029】
そして、トランジスタQ5,Q6それぞれのゲートGは、ゲート電圧設定端子V1に共通に接続されている。また、トランジスタQ1,Q2,Q5,Q6それぞれのソースSは、定電流源11に共通に接続されている。その定電流源11は、トランジスタQ1,Q2,Q5,Q6のソースSと、基準電位VSSとの間に接続され、動作電流を決定する。
また、トランジスタQ1のゲートGは入力端子PINに接続されている。また、トランジスタQ2のゲートGは、入力端子NINに接続されている。すなわち、差動増幅回路50は、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2のうち、一方のトランジスタQ1のゲートDに供給された入力信号と、他方のトランジスタQ2に供給された入力信号との差を増幅してVoutから出力する。
【0030】
この差動増幅回路50は、電気信号を増幅する演算増幅器や電気信号を閾値電圧と比較する比較器等を構成する回路として、広く用いられている。以下、反転増幅回路50の動作を説明する。
反転増幅回路50の入力端子PIN,NINに、矩形波24(
図3参照)が入力されることによって、スルーイング状態になると、差動対Xを構成するトランジスタQ1,Q2の一方がOFFになる。トランジスタQ1,Q2のOFFにより、電圧降下用の素子対Yには電流が流れず、規定の電圧降下が得られない。その結果、OFFになった方のトランジスタQ1,Q2は、それらの耐電圧を超える電圧が印加される害を受ける。
【0031】
このようなスルーイング状態における、差動対Xへの過電圧印加の害を避けるため、差動対Xに電流パスZが並列接続されている。すなわち、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2と同サイズのMOSトランジスタQ5,Q6を、電流パスZとして、トランジスタQ1,Q2それぞれのドレインD−ソースS間に並列接続するように構成されている。このように、電流パスZを構成するトランジスタQ5,Q6が、ONする電圧を、それぞれのゲートGに印加する。ここで、両トランジスタQ5,Q6は、同一サイズで同一ゲート電圧V1を加えることが必要である。すなわち、第5のトランジスタQ5及び第6のトランジスタQ6は、それぞれのゲート電圧V1を同一に保持されるように、ゲ
ートGが共通接続されている。
【0032】
反転増幅回路50にて矩形波24が入力されると、入力端子NINが接続されたトランジスタQ2がOFFする。もし、トランジスタQ2のドレインD−ソースS間に並列接続したトランジスタQ6がない場合、入力端子NINが接続されたトランジスタQ2に電流が流れないので、それらの耐電圧を超える電圧が印加される害が生ずる。
【0033】
しかし、差動増幅回路50において、入力端子PINが接続されたトランジスタQ1がOFFとなっても、そのトランジスタQ1に並列接続されたトランジスタQ5に電流が流れるので、トランジスタQ3で電圧降下を生じ、トランジスタQ1には耐圧を超える過電圧は印加されない。同様に、入力端子NINが接続されたトランジスタQ2がOFFとなっても、そのトランジスタQ2に並列接続されたトランジスタQ6に電流が流れるので、トランジスタQ4で電圧降下を生じ、入力端子トランジスタQ2には、耐圧を超える過電圧は印加されない。
【0034】
また、反転増幅回路50における差動対Xは、入力信号の差の電圧を増幅して出力する機能を有する。反転増幅回路50において、電流パスZとして追加したトランジスタQ5,Q6は、差動対Xを構成するNMOSトランジスタQ1,Q2と同じサイズである。したがって、入力信号に相当するゲート電圧も両トランジスタQ1,Q2,Q5,Q6で同一であるため入力信号の差も零であり何も出力されない。その結果、差動対Xの動作には、何らの影響も及ぼさない。
【実施例2】
【0035】
図6は、本発明に係る差動増幅回路の実施例2を説明するための回路図である。
図6に示すように、差動増幅回路60は、
図5に示した差動増幅回路50の主要構成とほぼ同じであるが、差動対Xを構成するトランジスタQ1,Q2にそれぞれ並列接続した同じサイズのトランジスタQ5,Q6の接続形態のみが相違する。すなわち、トランジスタQ5,Q6のゲートGは、共通接続とせず、各自のドレインDにそれぞれ接続され、かつ、素子対Yを構成するNMOSトランジスタQ3,Q4それぞれのソースSに接続されている。このように差動増幅回路60は、第5のトランジスタQ5及び第6のトランジスタQ6は、それぞれのゲートGとドレインDとが接続されている。
【0036】
差動増幅回路60においても、入力端子PINが接続されたトランジスタQ1がOFFとなっても、そのトランジスタQ1に並列接続されたトランジスタQ5に電流が流れるので、トランジスタQ3で電圧降下を生じ、トランジスタQ1には耐圧を超える過電圧は印加されない。同様に、入力端子NINが接続されたトランジスタQ2がOFFとなっても、そのトランジスタQ2に並列接続されたトランジスタQ6に電流が流れるので、トランジスタQ4で電圧降下を生じ、入力端子トランジスタQ2には、耐圧を超える過電圧は印加されない。
【0037】
上述した実施例においては、差動対Xを構成するトランジスタQ1,Q2に関し、NMOSトランジスタを用いた回路について説明したが、これらのトランジスタQ1,Q2を、PMOSトランジスタ、また、バイポーラトランジスタに変更しても構わない。
以上説明したように、本実施形態によれば、電源電圧より低い耐圧のトランジスタをオペアンプ差動対に使用した場合に、オペアンプの任意の入力に対して差動対の耐圧を確保するとともに、差動対を構成するトランジスタの特性劣化を生じさせない差動増幅回路を実現できる。
【符号の説明】
【0038】
7,8 破線
9 能動負荷対
23,24 矩形波の入力信号
25 出力信号
44 出力波形
Cc コンデンサ
PIN,NIN 入力端子
V1 ゲート電圧設定端子、ゲート電圧
VDD 電源電圧
Q1 第1のトランジスタ
Q2 第2のトランジスタ
Q3 第3のトランジスタ
Q4 第4のトランジスタ
Q5 第5のトランジスタ
Q6 第6のトランジスタ
Vx 交点
X 差動対
Y 素子対
Z 電流パス
Z1 第1の電流パス
Z2 第2の電流パス