(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5764270
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】改良豆乳及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 1/20 20060101AFI20150730BHJP
A23C 11/10 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
A23L1/20 Z
A23C11/10
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-517544(P2015-517544)
(86)(22)【出願日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】JP2014080377
【審査請求日】2015年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-236674(P2013-236674)
(32)【優先日】2013年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】高木 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】引地 進
【審査官】
松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−280276(JP,A)
【文献】
特開2009−159911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/20−1/201、1/211
A23C 11/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを有効成分として含有することを特徴とする、豆乳用風味改良剤。
【請求項2】
前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸のみから構成されている、請求項1に記載の豆乳用風味改良剤。
【請求項3】
前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数8及び/又は10の中鎖脂肪酸のみから構成されている、請求項1又は2に記載の豆乳用風味改良剤。
【請求項4】
豆乳と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の豆乳用風味改良剤とを含有することを特徴とする、改良豆乳であって、前記豆乳用風味改良剤中に含有する前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含有量が、前記豆乳の質量に対して5〜15質量%である、改良豆乳。
【請求項5】
請求項4に記載の改良豆乳を含む飲食品。
【請求項6】
豆乳と、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールとを、前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含有量が前記豆乳の質量に対して5〜15質量%となるように混合する工程を含む、改良豆乳の製造方法。
【請求項7】
前記混合工程で得られた混合物を乳化する工程をさらに含む、請求項6に記載の改良豆乳の製造方法。
【請求項8】
前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸のみから構成されている、請求項6又は7に記載の改良豆乳の製造方法。
【請求項9】
前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数8及び/又は10の中鎖脂肪酸のみから構成されている、請求項6〜8のいずれか1項に記載の改良豆乳の製造方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の製造方法によって改良豆乳を得る工程と、前記改良豆乳を飲食品原料に混合する工程とを含む、改良豆乳を含む飲食品の製造方法。
【請求項11】
豆乳と、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールとを、前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含有量が前記豆乳の質量に対して5〜15質量%となるように混合する工程を含む、豆乳の風味改良法。
【請求項12】
前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸のみから構成されている、請求項11に記載の豆乳の風味改良法。
【請求項13】
前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数8及び/又は10の中鎖脂肪酸のみから構成されている、請求項11又は12に記載の豆乳の風味改良法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された豆乳に関する。詳しくは、豆臭、青臭み、渋味などが抑制された風味の良い改良豆乳、該改良豆乳を含む飲食品及びそれらの製造方法に関する。本発明は、また、豆乳の風味改良法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の食の健康に対する関心は非常に高まっている。そのため、自然食品や機能性食品が人気を呼んでいる。その中でも、大豆を原料とする豆乳は、良質のタンパク質や植物性リノール酸を含み、ビタミンEやレシチンなどの栄養素も豊富に含むため、自然が与えてくれた機能性食品として、その消費量は年々増加している。また、大豆の一成分であるイソフラボンは、骨粗鬆症の予防、更年期障害の緩和、及び動脈硬化の予防など、様々な生理機能を持つものとして注目を集めている。
そこで、従来から、豆乳及びその製造方法についての研究は数多くなされているが、大豆の磨砕抽出工程において生成する大豆特有の豆臭、青臭み、渋味などによって、豆乳は、万人に向いている飲料とは言い難いものであった。この大豆特有の豆臭、青臭みはリポキシゲナーゼの働きが主な原因であると考えられているため、この働きを抑えるために、高温条件下や無酸素条件下での磨砕を行う製造方法や、リポキシゲナーゼ欠損大豆を利用する製造方法なども提案されているが、いずれも簡便な方法であるとは言い難かった。
【0003】
他方、簡便に食品添加物を利用して、大豆特有の豆臭、青臭み、渋味を抑制する研究も数多く行われている。例えば、特許文献1には、乳清蛋白質を添加して、大豆特有の青臭みや渋味を低減し、風味の良好な食べやすい大豆食品を得る技術が提案されている。また、特許文献2には、パラチノースを添加して、大豆に由来する異味異臭を低減し、さっぱりとした味で、後味の良い豆乳を得る技術が提案されている。さらに、特許文献3には、馬鈴薯由来のリン酸化糖を添加して苦味、渋味、青臭みなどの味質や匂いなどを軽減あるいは改善することによって、食品の用途や栄養学的価値の拡大を図る技術が提案されている。
しかしながら、十分に満足できる結果が得られているとはいえず、より簡便に、大豆特有の豆臭、青臭み、渋味を抑制する技術が求められていた。
【0004】
一方、中鎖脂肪酸及び/又は中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドは、体内に摂取されると速やかに吸収されかつ肝臓ですぐに燃やされエネルギーになりやすいため、例えば、特許文献4では、この中鎖脂肪酸及び/又は中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドを含む飲食物が提案されている。しかし、この中鎖脂肪酸及び/又は中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドを含む豆乳についてはほとんど報告がない。例えば、特許文献5には、リグナン類化合物を中鎖脂肪酸トリグリセリドに溶解し、この溶解液を豆乳に加えて、乳飲料を製造する方法が提案されているが、この発明は、リグナン類化合物を十分に摂取できる実用的な飲料の開発を目的とするものであって、中鎖脂肪酸トリグリセリドは、リグナン類を溶かす溶媒として加えられているにとどまる。そして、中鎖脂肪酸トリグリセリドが、豆乳の官能的評価に与える影響については何ら触れられていない。したがって、中鎖脂肪酸トリグリセリドが、豆乳の豆臭、青臭み、渋味などを抑制することについてはこれまで何ら知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−173050号公報
【特許文献2】特開2003−230365号公報
【特許文献3】特開2002−253164号公報
【特許文献4】特開2004−075653号公報
【特許文献5】特開2006−280276号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明の課題は、豆臭、青臭み、渋味などが抑制された風味の良い改良された豆乳、該改良豆乳を含む飲食品、それらの製造方法、並びに豆乳の風味改良法を提供することである。
【0007】
本発明者らは、様々な油脂を添加して、豆臭、青臭み、渋味などが抑制された豆乳が得られるかどうかについて鋭意研究を行ったところ、驚くべきことに、豆乳に対し、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを特定量配合することにより、本課題が解決できることを見いだし、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の態様であり得る。
【0008】
〔1〕構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを有効成分として含有することを特徴とする、豆乳用風味改良剤。
〔2〕前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸のみから構成されている、前記〔1〕に記載の豆乳用風味改良剤。
〔3〕前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数8及び/又は10の中鎖脂肪酸のみから構成されている、前記〔1〕又は〔2〕に記載の豆乳用風味改良剤。
〔4〕豆乳と、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の豆乳用風味改良剤とを含有することを特徴とする、改良豆乳。
〔5〕前記豆乳用風味改良剤中に含有する前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含有量が、前記豆乳の質量に対して5〜15質量%である、前記〔4〕に記載の改良豆乳。
〔6〕前記〔4〕又は〔5〕に記載の改良豆乳を含む飲食品。
〔7〕豆乳と、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールとを、前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含有量が前記豆乳の質量に対して5〜15質量%となるように混合する工程を含む、改良豆乳の製造方法。
〔8〕前記混合工程で得られた混合物を乳化する工程をさらに含む、前記〔7〕に記載の改良豆乳の製造方法。
〔9〕前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸のみから構成されている、前記〔7〕又は〔8〕に記載の改良豆乳の製造方法。
〔10〕前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数8及び/又は10の中鎖脂肪酸のみから構成されている、前記〔7〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の改良豆乳の製造方法。
〔11〕
請求項〔7〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の製造方法によって改良豆乳を得る工程と、前記改良豆乳を飲食品原料に混合する工程とを含む、改良豆乳を含む飲食品の製造方法。
〔12〕豆乳と、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールとを、前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含有量が前記豆乳の質量に対して5〜15質量%となるように混合する工程を含む、豆乳の風味改良法。
〔13〕前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸のみから構成されている、前記〔12〕に記載の豆乳の風味改良法。
〔14〕前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの構成脂肪酸が、炭素数8及び/又は10の中鎖脂肪酸のみから構成されている、前記〔12〕又は〔13〕に記載の豆乳の風味改良法。
【0009】
本発明によれば、豆乳に、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを含有させることにより、大豆特有の豆臭、青臭み、渋味が抑制された、風味の良い改良された豆乳(改良豆乳)を簡便に製造することができる。本発明の改良豆乳は、大豆特有の豆臭、青臭み、渋味が抑制された風味を有するため、従来の豆乳では満足できなかった人々の需要を満足することができる。また、中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを含むため、効果的なエネルギー補給用の飲料として、又は中鎖脂肪酸が生体内で薬理作用を発揮するための飲料として利用することができる。さらに、当該トリアシルグリセロールの含有量を適度に調節することにより、喉への刺激性を低減し、かつ口に含んだ時の油っぽさ(油性感)のない改良豆乳を提供することができる。更に本発明は、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを有効成分とする、豆乳用風味改良剤や豆乳の風味改良法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[豆乳用風味改良剤]
本発明の一態様は、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを有効成分とする、豆乳用風味改良剤である。以下、当該豆乳用風味改良剤について説明する。
[構成脂肪酸]
本発明の豆乳用風味改良剤は、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロール(即ち、油脂)を含有する。当該中鎖脂肪酸の炭素数は、より好ましくは8〜12、さらに好ましくは、8及び/又は10の組み合わせであることが適当である。当該トリアシルグリセロールは、構成脂肪酸を炭素数6〜12、より好ましくは8〜12、さらに好ましくは、8及び/又は10等の中鎖脂肪酸のみとするトリアシルグリセロールであってもよい。さらに、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸と他の脂肪酸を含む混酸基トリアシルグリセロールであってもよい。ここで、各々の中鎖脂肪酸のグリセリンへの結合位置は、特に限定されない。また、混酸基トリアシルグリセロールである場合には、構成脂肪酸の一部に炭素数6〜12以外の脂肪酸を含んでいてもよく、例えば、炭素数が14以上の長鎖脂肪酸を含んでいてもよい。
また、本発明において用いられる中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールは、例えば、トリオクタノイルグリセロールとトリデカノイルグリセロールとの混合物等、複数の異なる分子種の油脂が混ざり合った混合物であってもよいし、液体状、固体状、または粉末体状など、その形態は問わない。ここで、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸は、直鎖状の飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0011】
本発明で使用され得る中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールとしては、構成脂肪酸が炭素数6〜12の中鎖脂肪酸のみからなるトリアシルグリセロール(以下「MCT」とも表す。)が好ましく、特に、構成脂肪酸が炭素数8及び/又は10の中鎖脂肪酸のみからなるトリアシルグリセロールがより好ましい。
本発明で使用され得る中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールは、従来公知の方法で製造できる。例えば、炭素数6〜12の脂肪酸とグリセロールとを、触媒下、好ましくは無触媒下で、また、好ましくは減圧下で、50〜250℃、より好ましくは120〜180℃に加熱し、脱水縮合させることにより製造できる。
ここで、触媒としては、特に限定されるものではなく、例えば、通常のエステル交換に用いられる酸触媒又は塩基触媒等を使用することができる。減圧下とは、例えば、0.01〜100Pa、好ましくは、0.05〜75Pa、より好ましくは、0.1〜50Paである。このとき系内の水分は少ない方が好ましく、更に好ましくは0.2重量%以下である。
【0012】
本発明の豆乳用風味改良剤は、有効成分であると上述した炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを含有したものであればよく、この他に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分、例えば、大豆油、菜種油などの油脂、デキストリン、澱粉等の賦形剤、他の品質改良剤等を含有させたものであってもよい。
【0013】
本発明の好ましい態様は、豆乳と、上記豆乳用風味改良剤とを含有することを特徴とする、改良豆乳を含む。ここで、豆乳は、一般的に市場で入手可能な各種豆乳が含まれる。
本発明において「豆乳」とは、大豆を原料とするものであれば特に制限されないが、豆乳類の日本農林規格(制定:昭和56年11月16日農林水産省告示第1800号、最終確認:平成24年7月17日農林水産省告示第1679号)第2条によれば、「豆乳」とは、大豆(粉末状のもの及び脱脂したものを除く。以下同じ。)から熱水等によりたん白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料(以下「大豆豆乳液」という。)であつて大豆固形分が8%以上のものをいう。したがって、本発明の「豆乳」とは、少なくとも粉末状の大豆及び脱脂した大豆以外の大豆原料から製造される、繊維質を含まない乳状の飲料を言う。いわゆる大豆飲料にはオカラ(繊維質)が含まれるが、豆乳にはオカラ(繊維質)が含まれない点で、両者は区別される。本発明の「豆乳」は、例えば、無調整豆乳、調整豆乳、豆乳飲料のいずれであっても構わない。
【0014】
ここで、上記「無調整豆乳」は、上記「豆乳」そのものであって、両者は同一のものである。
そして、上記「調整豆乳」とは、上記豆乳類の日本農林規格によれば、[1]大豆豆乳液に大豆油その他の植物油脂及び砂糖類、食塩等の調味料を加えた乳状の飲料(以下「調製豆乳液」という。)であつて大豆固形分が6%以上のもの、または、[2]脱脂加工大豆(大豆を加えたものを含む。)から熱水等によりたん白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られたものに大豆油その他の植物油脂及び砂糖類、食塩等の調味料を加えた乳状の飲料(以下「調製脱脂大豆豆乳液」という。)であつて大豆固形分が6%以上のものを言う。
また、上記「豆乳飲料」とは、上記豆乳類の日本農林規格によれば、[1]調製豆乳液又は調製脱脂大豆豆乳液に粉末大豆たん白(大豆豆乳液、調製豆乳液若しくは調製脱脂大豆豆乳液を乾燥して粉末状にしたもの又は大豆を原料とした粉末状植物性たん白のうち繊維質を除去して得られたものをいう。以下同じ。)を加えた乳状の飲料(調製豆乳液又は調製脱脂大豆豆乳液を主原料としたものに限る。以下「調製粉末大豆豆乳液」という。)であつて大豆固形分が4%以上のもの、または、[2]調製豆乳液、調製脱脂大豆豆乳液又は調製粉末大豆豆乳液に果実の搾汁(果実ピユーレー及び果実の搾汁と果実ピユーレーとを混合したものを含む。以下同じ。)、野菜の搾汁、乳又は乳製品、殻類粉末等の風味原料を加えた乳状の飲料(風味原料の固形分が大豆固形分より少なく、かつ、果実の搾汁を加えたものにあっては果実の搾汁の原材料に占める重量の割合が10%未満であり、乳又は乳製品を加えたものにあっては乳固形分が3%未満であり、かつ、乳酸菌飲料でないものに限る。)であつて大豆固形分が4%以上(果実の搾汁の原材料に占める重量の割合が5%以上10%未満のものにあっては2%以上)のもの、を言う。
【0015】
また、本発明で用いる豆乳は、通常の豆腐製造時に使用されるものと同じでもよく、例えば、原料となる大豆を水洗し、8〜20時間にわたり水に浸漬して膨潤させたうえでグラインダー等により磨砕し、これを加熱してオカラのような繊維質を分離・除去することにより製造したものが含まれる。ここで、「オカラ」とは、豆腐を作る際、豆乳を絞った残りかすを言い、これには、大豆から熱水等によりタンパク質その他の水溶性成分を溶出させた後に残る繊維質や他の非水溶性固形成分が含まれる。
また、大豆に含まれる青臭みや渋味を軽減し、風味を改良するため、青臭みの発生原因であるリポキシゲナーゼを失活させる条件で製造された豆乳や、リポキジゲナーゼ欠損大豆を原料として利用した豆乳なども、本発明の豆乳に含まれる。
【0016】
[改良豆乳]
本発明の改良豆乳は、上記豆乳と、上記豆乳用風味改良剤とを含有する。特に、豆乳用風味改良剤中に含有する炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールが、前記豆乳の質量に対して、例えば、5〜15質量%であることが適当である。また、後述するように、前述のトリアシルグリセロールは喉への刺激性があるため、15質量%程度までとすることが好ましい。そこで、本発明の改良豆乳に含まれる前記トリアシルグリセロール含量は、前記豆乳の質量に対して、好ましくは8〜15質量%であり、より好ましくは8〜12質量%である。
そして、改良豆乳に含まれる炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含量が上記範囲内にあると、大豆特有の豆臭、青臭み、渋味が抑制された、風味の良い改良豆乳が得られるので好ましい。なお、本発明において、5質量%未満の含量であっても大豆特有の豆臭、青臭み、渋味の抑制効果はある程度期待できると思われる。
【0017】
本発明の改良豆乳は、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを好適な量で含む限り、他のどのような油脂原料をさらに含有していてもよい。例えば、本発明の改良豆乳は、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン等)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂、ココアバター等やこれらの混合油、加工油脂等をさらに含有することができる。
【0018】
本発明の改良豆乳は、上記トリアシルグリセロール以外にも、豆乳に一般的に配合される原材料を含有することができる。具体的には、例えば、糖類、甘味料、酸味料、塩類、ミネラル、安定剤、pH調整剤、増粘多糖類、乳化剤、香料、フレーバー、着色料、果実、果汁、紅茶、コーヒー、麦芽、抹茶、胡麻、小豆、甘藷、栗、ココア、チョコレート等を含有することができる。
【0019】
[飲食品]
その他、上記改良豆乳は、該改良豆乳を含む飲食品としても利用され得る。本発明の飲食品の原料としては、例えば、調整豆乳、豆乳飲料のほか、大豆蛋白飲料、乳酸菌飲料、酸乳飲料およびその他の飲料、豆腐等の大豆食品、アイスクリーム等の冷菓、プリン、ゼリー、シュークリーム、ケーキ等の生菓子、アメ、チョコレート、ビスケット等の菓子、ヨーグルト、チーズ、バター、クッキー、ビスケット、パン、シチュー、スープ、ソース、ドレッシングやその他の飲食品あるいは健康食品等が挙げられる。
また、通常牛乳で製造する飲食品であって、当該牛乳を豆乳で代用した飲食品も含まれる。
【0020】
[改良豆乳の製造方法]
以下、本発明の改良豆乳の製造方法について順を追って記述する。
本発明の改良豆乳の製造方法は、上述したような豆乳を原料とし、該豆乳と、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールとを、前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含有量が前記豆乳の質量に対して5〜15質量%となるように混合する工程を含み、任意に前記混合工程で得られた混合物を乳化する工程をさらに含む。
ここで、原料となる豆乳、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロール、当該中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含有量の定義や好ましい範囲については、上述したとおりである。
本発明の豆乳と炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールとの混合は、従来から公知の方法にしたがって行うことができる。具体的には、例えば、まず、従来公知の方法で豆乳を用意する。ここで、前記豆乳は、上述したとおり、無調整豆乳、調整豆乳、豆乳飲料のいずれであってもよいが、本発明の目的を考慮すると、大豆特有の豆臭、青臭み、渋味が残っている、無調整豆乳が好ましい。そして、この豆乳に、上記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを添加し、例えば、良く撹拌混合して、前記トリアシルグリセロールが乳化された状態の豆乳を製造する方法が挙げられる。ここで、混合の温度は、常温(25℃)程度であればよく、撹拌には、通常の撹拌で常用されるミキサー、パドルミキサー、ホモジナイザーなどが用いられる。
本発明の豆乳の混合物を乳化させる方法は、通常の乳化方法でよく、特に制限されないが、ミキサー、コロイドル、パドルミキサー、アジテーター、ホモジナイザーなどが用いられる。さらに、例えば、高圧ホモゲナイザー、マントンゴーリン均質機、マルテイフロー均質機等の均質機を利用することがより好ましい。
【0021】
[飲食品の製造方法]
本発明の改良豆乳を含む飲食品は、さらに、上述した改良豆乳を得る工程と、当該得られた改良豆乳を飲食品原料に混合する工程とを含む方法によって製造され得る。ここで、飲食品原料とは、改良豆乳を加える前の飲食品、例えば、上述した調整豆乳、豆乳飲料、大豆蛋白飲料、乳酸菌飲料、酸乳飲料およびその他の飲料、豆腐等の大豆食品、アイスクリーム等の冷菓、プリン、ゼリー、シュークリーム、ケーキ等の生菓子、アメ、チョコレート、ビスケット等の菓子、ヨーグルト、チーズ、バター、クッキー、ビスケット、パン、シチュー、スープ、ソース、ドレッシングやその他の飲食品あるいは健康食品等が挙げられる。また、通常牛乳で製造する飲食品であって、当該牛乳を豆乳で代用した飲食品の豆乳を加える前の原料も当該飲食品原料に含まれる。
【0022】
[豆乳の風味改良法]
ところで、以上述べたように、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを豆乳に添加すると、大豆特有の豆臭、青臭み、渋味が抑制された、風味の良い豆乳に改変できることから、本発明は、豆乳と、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールとを、前記中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含有量が前記豆乳の質量に対して5〜15質量%となるように混合する工程を含む、豆乳の風味改良法にも関する。以下に示すように、本発明の豆乳用風味改良剤を改良豆乳の製造に用いることにより、従来の豆乳を、大豆特有の豆臭、青臭み、渋味が抑制された、風味の良いものへと改良することができる。ここで、上記原料として用いられる豆乳、炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロール、当該中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールの含有量の定義や好ましい範囲については、上述したとおりである。
【実施例】
【0023】
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0024】
以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
油脂のトリアシルグリセロール組成の分析は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS、vol70、11、1111−1114(1993)準拠)を用いて行った。
油脂の構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)を用いて行った。
【0025】
<原料油脂>
〔MCT1〕:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸が、オクタン酸(炭素数8)とデカン酸(炭素数10)であり、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸の割合(質量比)がオクタン酸:デカン酸=30:70である炭素数8及び10の中鎖脂肪酸のみから構成されているトリアシルグリセロール(日清オイリオグループ株式会社社内製、商品名:MCT−C10R)をMCT1とした。
〔MCT2〕:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸が、オクタン酸(炭素数8)とデカン酸(炭素数10)であり、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸の割合(質量比)がオクタン酸:デカン酸=75:25である炭素数8及び10の中鎖脂肪酸のみから構成されているトリアシルグリセロール(日清オイリオグループ株式会社社内製、商品名:O.D.O)をMCT2とした。
〔米油〕:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸が、パルミチン酸(炭素数16)、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)及びその他であり、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸の割合(質量比)がパルミチン酸:オレイン酸:リノール酸:その他=約17:42:36:5である米油(日清オイリオグループ株式会社社内製、商品名:日清おいしい米油)を米油として用いた。
〔キャノーラ油〕:トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸が、パルミチン酸(炭素数16)、オレイン酸(炭素数18)、リノール酸(炭素数18)及びその他であり、トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸の割合(質量比)がパルミチン酸:オレイン酸:リノール酸:その他=約4:61:20:15であるキャノーラ油(日清オイリオグループ株式会社社内製、商品名:日清キャノーラ油)をキャノーラ油として用いた。
【0026】
[実施例1]
試験管内に上記MCT1又はMCT2を、下記の無調整豆乳に対して0質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%となるように分注した。そして、市販の無調整豆乳(紀文おいしい無調整豆乳:キッコーマン飲料株式会社製)を試験管内に50mlとなるように分注した。この溶液を良く撹拌混合して、乳化された状態の試験用豆乳を製造した。
【0027】
[比較例1]
市販の無調整豆乳(紀文おいしい無調整豆乳:キッコーマン飲料株式会社製)を試験管に50mlずつ分注した。そして、この試験管内に上記米油又はキャノーラ油を、上記無調整豆乳に対して0質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%となるように添加し、この溶液を良く撹拌混合して、乳化された状態の試験用豆乳を製造した。
【0028】
[官能評価]
上記で得られた豆乳について、10名のパネラーによる官能評価を行った。評価は、評点の多い方が良好であることを示す。なお、評点は、パネラー10名の平均値を示す。
豆臭、青臭さ、渋味、喉への刺激性、油性感の評点は3点法で行った。
3点:全く感じない
2点:やや感じる
1点:はっきり感じる。
総合評価の評点は5点法で行った。
5点:風味が良くておいしい。
4点:風味の良さをやや欠くがおいしく飲める
3点:風味の良さを欠くが商品としては適する
2点:不快な風味が生じ商品として適さない
1点:不快な風味が強く飲用できない
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
上記表1及び表2の結果から明らかであるように、MCT1又はMCT2を添加した改良豆乳は、大豆特有の豆臭、青臭さ、渋味が抑制されたものとなった。また、MCT1又はMCT2を添加した改良豆乳は、油性感がなく、むしろ清涼感があり、スッキリとした飲みごたえの飲料となった。
【0034】
また、上記表3及び表4の結果から明らかであるように、米油又はキャノーラ油を添加した試験用豆乳は、大豆特有の豆臭、青臭さがある程度抑制されたものとなったが、渋味はあまり抑制されなかった。また、米油又はキャノーラ油を添加した試験用豆乳は、スッキリとした飲みごたえはあるものの、独特の油性感があり、総合的に評価して、飲料としてはあまり適していなかった。
【要約】
本発明の課題は、豆臭、青臭み、渋味などが抑制された風味の良い豆乳及びその製造方法を提供することである。具体的には、豆乳に、構成脂肪酸として炭素数6〜12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールを有効成分とする豆乳用風味改良剤、当該豆乳用風味改良剤と豆乳とを含有する改良豆乳、当該改良豆乳を含む飲食品を提供する。また、当該改良豆乳の製造方法も提供する。