(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764281
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】血液流動性改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20150730BHJP
A23L 1/305 20060101ALI20150730BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20150730BHJP
A61K 31/401 20060101ALI20150730BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20150730BHJP
A61K 31/4172 20060101ALI20150730BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20150730BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20150730BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20150730BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
A61K31/198
A23L1/305
A23L2/00 F
A61K31/401
A61K31/405
A61K31/4172
A61P7/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P9/12
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2008-520586(P2008-520586)
(86)(22)【出願日】2007年6月5日
(86)【国際出願番号】JP2007061364
(87)【国際公開番号】WO2007142231
(87)【国際公開日】20071213
【審査請求日】2010年4月27日
【審判番号】不服2013-8217(P2013-8217/J1)
【審判請求日】2013年5月7日
(31)【優先権主張番号】特願2006-159901(P2006-159901)
(32)【優先日】2006年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(72)【発明者】
【氏名】有田 宏行
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】越膳 浩
【合議体】
【審判長】
内田 淳子
【審判官】
穴吹 智子
【審判官】
安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】
特開平6−24977(JP,A)
【文献】
特許第2518692(JP,B2)
【文献】
特開2003−128560(JP,A)
【文献】
特開2004−123707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/327
A61K31/33-33/44
A23L1/27-1/308
CA
MEDLINE
BIOSIS
EMBASE
JSTPLUS
JMEDPLUS
JST7580
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸組成物であって、スレニオンを2〜15モル、プロリンを4〜30モル、グリシンを7〜20モル、バリンを4〜8モル、イソロイシンを3〜9モル、ロイシンを2〜12モル、チロシンを1〜9モル、フェニルアラニンを0.5〜5モル、リジンを5〜11モルの割合で含有し、かつそれぞれ5モル以下の割合で、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニンを含有し、更に1モル以下の割合のアスパラギン酸、5モル以下の割合のセリン、4モル以下の割合のグルタミン酸、12モル以下の割合のアラニンを含むことを特徴とする血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤。
【請求項2】
請求項1記載のアミノ酸組成物を1回に0.5〜5g投与することを特徴とする血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、血液流動性(血液レオロジー)を改善する組成物に関する。本願発明は、血液の流動性を高めることによる、血液疾患予防剤、血栓症予防剤などの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
1.血液流動性及びその測定方法
血管内の血液の流れやすさは、もちろん血管の収縮にも影響されるが、血液自体の流体としての特性に大きく影響される。血液は赤血球、白血球、血小板といった血球成分と、さまざまなタンパク質や脂質、無機質などが含まれている血しょう成分とに分けることができる。血液の流動性、言い換えれば血液の粘度は、特に赤血球の容積や変形能(しなやかに変形して狭いところを通過する能力)、血しょうフィブリノーゲン、白血球、血小板などの影響が大きいと考えられている。現在は採取した血液の流動性を測定する装置(MC-FAN:Micro Channel array Flow Analyzer)が開発されており、これにより、血液の流動性を測定することができる(非特許文献1〜3)。
【0003】
2.血液流動性に影響を与える血液流動性改善剤
血液流動性に影響を与える化合物及び/又は組成物について研究開発されている。例えば、果実酸サプリメントを長距離走行途中で摂取すると、更に走行し続けたときの血液粘性の上昇が抑制されたことが報告されている(非特許文献4)。
【0004】
また、黒酢を長距離ランナー10人に20ml、30日間、連日で飲用させ、飲用開始の前日と最終飲用の翌日に血管機能検査と採血を行ったところ、全血通過時間、血管内皮成長因子(VEGF)とMCHCは黒酢の飲用により有意に低下し、MCVは有意に増大したことが報告されている。黒酢の赤血球変形能の亢進により微小循環が改善され、黒酢による血液流動性の亢進は活動筋への血流量、すなわち酸素輸送量を増加させ、持久性運動能力の向上に寄与すると考えられたと説明されている(非特許文献5)。
【0005】
更に、特許文献1には、L-グルタミン8〜27質量部、L-アルギニン6〜21質量部、L-ロイシン8〜25質量部、L-イソロイシン6〜20質量部及びL-バリン6〜19質量部の5種のアミノ酸を必須成分として含有(L-グルタミン0.34g、L-アルギニン0.34g、L-ロイシン0.28g、L-イソロイシン0.18g、L-バリン0.18g、L-リジン0.14g、L-メチオニン0.12g、L-スレオニン0.18g、L-ヒスチジン0.10g、L-プロリン0.10g、L-フェニルアラニン0.01g、L-トリプトファン0.03gを含有)する経口アミノ酸組成物を、服用期間を10週間として、1日3回、毎食後に1袋ずつ(必須成分である5種のアミノ酸として3.96g)摂取したところ、血液流動性が改善されたことが記載されている。
【特許文献1】特開2005−272410号
【非特許文献1】BRAINテクノニュース、第86号、Jul 15、2001
【非特許文献2】Microvasc. Res. 44:226-240、1992
【非特許文献3】Microvasc. Res. Jan;47(1):126-39、1994
【非特許文献4】日本ヘモレオロジー学会誌、2003年、第6巻 第2号 第83−88頁
【非特許文献5】日本ヘモレオロジー学会誌、2004年、第7巻、第1号、第25−31頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術は、いずれもスポーツ選手が長距離走をするなどという特殊な条件下での血液流動性改善に係る技術であり、しかも、多くは血液粘性を下げる薬剤・化合物を長期に服用して初めて効果が確認されているものである。
【0007】
本願発明は、スポーツ選手以外の健常者における、平常の生活において即効性のある血液粘性低下剤の開発を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、特定のアミノ酸組成物が、通常の健常者の経口摂取直後に、血液粘性低下効果を示すことを見出して、本願発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、通常の飲食用に常用されている安全性が高く、安価なアミノ酸を特定の組成で用いることにより、社会の高齢化に伴い今後、ますます増大すると予想される血栓症、高血圧などの血流流動性の低下が関連する疾患の治療及び/又は予防に有用であるという優れた効果を奏するものである。
【0010】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2006-159901号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実験方法の概略、アミノ酸の摂取時点と1回目及び2回目の採血時点との関係を示す。
【
図2】VAAM(アミノ酸飲料)飲用(190g)による血流への影響。同じNo.は、同一被験者を示す。
【
図3】VAAM(アミノ酸飲料)飲用(190g)による血流への影響(n=10)、10人の被験者の平均。摂取前;45.4±4.4(秒)、摂取後;41.6±3.2(秒) (mean±S.D.);**:p<0.01
【
図4】VAAM Mix.飲用(アミノ酸重量3g)による被験者6名それぞれの血流への影響。
【
図5】VAAM Mix.飲用(アミノ酸重量3g)による血流への影響(n=6)の平均。血流時間は、摂取前;45.0±1.9(秒)であったが、摂取後;42.8±1.8(秒)(mean±S.D.)に短縮した。**:p<0.01
【
図6】BCAA飲用(アミノ酸重量3g)による被験者6名それぞれの血流への影響。
【
図7】BCAA飲用(アミノ酸重量3g)による血流への影響(n=6)の平均。血流時間は、摂取前;41.1±2.7(秒)であったが、摂取後;39.8±2.4(秒)(mean±S.D.)となった。
【
図8】CAAM飲用(アミノ酸重量3g)による被験者6名それぞれの血流への影響。
【
図9】CAAM飲用(アミノ酸重量3g)による血流への影響(n=6)の平均。血流時間は、摂取前;41.6±3.0(秒)から、摂取後;41.4±1.2 (秒)(mean±S.D.)と、ほとんど変化しなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.血液流動性又は血液粘度と疾病
血液粘度は心臓血管系疾患に対する危険因子であるとされている。動脈系では、血液粘度が増すと、組織への血流量を維持するために血圧が上昇する。静脈系では、血液粘度の増大に伴い、血流量が減れば、ズリ速度が低下するので血液粘度が増して一層血流量が減る。このように血液粘度の上昇によって引き起こされる循環障害を過粘性症候群(hyperviscosity syndrome)といい、さまざまな疾患の底辺に横たわっていることが多いといわれている(日本生理学雑誌、第66巻、pp.234-244)。
【0013】
本発明の血流改善剤又は血液粘度低下剤及び血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤を含有する飲食品は、高血圧、血栓症をはじめとする心臓血管系、肩凝り、冷え性、梗塞症、
動脈硬化症などの末梢あるいは中心の血行障害・血流障害による疾患を、血流流動性を改善することにより、予防及び/又は治療することができる。
【0014】
なお、血液の流動性は例えば、液流動性測定装置(MC-FAN:Micro Channel Array Flow Analyzer、株式会社エムシー研究所)を用いて計測できる。本装置は半導体微細加工技術を用いて加工されたシリコンチップ上の微細な溝と、ガラス基盤を圧着してできた流路(マイクロチャネルアレイ)に血液を流すことにより、流路を流れる細胞の状態を顕微鏡で直接、観察および記録するものである(同社ホームページ)。
【0015】
2.血液流動性又は血液粘度の改善
上記のように、血液粘度は心臓血管系疾患など種々の疾患に対する危険因子であるから、近年増大する傾向にある心臓血管系疾患をはじめとする、これら疾患の治療及び/又は予防のためには、血液粘度を低下させる組成物又は血液流動性を改善させる組成物の開発は有用である。血液粘度が増大する要因としては、赤血球の形態変形能を低下、赤血球集合のなどが挙げられる。例えば、赤血球内のCaの蓄積とこれに起因する膜タンパク質間相互作用の変化は、本態性高血圧症の一因であるといわれている。他方、血液粘度を低下させる要因として例えば、NO生成物質が赤血球変形能を増大させるといわれている(日本生理学雑誌、第66巻、No.9、pp.287-297)。また、前記のように、果実酸や黒酢を摂取することにより、スポーツ選手のスポーツ中での血液粘性が低下することが報告されている。
【0016】
3.アミノ酸の組成(以下、アミノ酸は3文字コードで示すことがある。)
本願発明には、スレオニン、プロリン、グリシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン及びアルギニンを含むアミノ酸組成物を有効成分として含有する血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤を包含する。
【0017】
また、本願発明には、スレオニン、プロリン、グリシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン及びアルギニンに加えて、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸及びアラニンを含むアミノ酸組成物を有効成分として含有する血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤を包含する。
【0018】
本願発明には、具体的には、スレオニン、プロリン、グリシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン及びアルギニンからなるアミノ酸組成物を有効成分として含有する血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤を包含する。
【0019】
また、本願発明には、具体的には、スレオニン、プロリン、グリシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、及びアラニンからなるアミノ酸組成物を有効成分として含有する血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤を包含する。
【0020】
本願発明のアミノ酸組成物を構成する各アミノ酸は、遊離のアミノ酸でもよく、また、薬学上又は食品上許容される塩でもよい。例えば、各アミノ酸は、塩酸塩、乳酸塩などであってもよい。
【0021】
本願アミノ組成物としては次のものをあげることができる。
【0022】
3−1.スレオニン、プロリン、グリシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン及びアルギニンからなるアミノ酸組成物を有効成分として含有する血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤である。
【0023】
本願発明には、有効成分として、スレオニン、プロリン、グリシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン及びアルギニンからなるアミノ酸組成物を、アミノ酸としては重量比で、スレニオンを2〜15モル、プロリンを4〜30モル、グリシンを7〜20モル、バリンを4〜8モル、イソロイシンを3〜9モル、ロイシンを2〜12モル、チロシンを1〜9モル、フェニルアラニンを0.5〜5モル、リジンを5〜11モルの割合で含有し、かつそれぞれ5モル以下の割合で、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニンを含むことを特徴とする血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤が包含される。
【0024】
3−2.スレオニン、プロリン、グリシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン酸、及びアラニンからなるアミノ酸組成物を有効成分として含有する血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤である。
【0025】
本願発明には、アミノ酸としては重量比で、スレニオンを2〜15モル、プロリンを4〜30モル、グリシンを7〜20モル、バリンを4〜8モル、イソロイシンを3〜9モル、ロイシンを2〜12モル、チロシンを1〜9モル、フェニルアラニンを0.5〜5モル、リジンを5〜11モルの割合で含有し、かつそれぞれ5モル以下の割合で、メチオニン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニンを含み、更に1モル以下の割合のアスパラギン酸、5モル以下の割合のセリン、4モル以下の割合のグルタミン酸、12 モル以下の割合のアラニンを含むアミノ酸組成物を有効成分とする血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤が包含される。
【0026】
より具体的には、本願発明には、スレニオンが6.92重量%、プロリンが16.79重量%、グリシンが11.60重量%、バリンが5.56重量%、イソロイシンが4.79重量%、ロイシンが6.53重量%、チロシンが6.93重量%、フェニルアラニンが5.12重量%、リジンが塩酸リジンとして12.75重量%、メチオニンが0.64重量%、トリプトファンが3.63重量%、ヒスチジンが3.23重量%、アルギニンが4.96重量%、アスパラギン酸がアスパラギン酸Naとして0.22重量%、セリンが2.11量%、グルタミン酸が3.81重量%、及びアラニンが4.41重量%からなるアミノ酸組成物を有効成分とする血液流動性改善剤又は血液粘度低下剤が包含される。
【0027】
4.本願発明の組成物の使用の形態
本願発明のアミノ酸組成物の使用形態は特に限定されないが、医療用としても、飲食用、栄養補助飲食用としても用いることができる。
【0028】
医療用については、経口投与、直腸投与、注射、輸液による投与等の一般的投与経路により使用することができる。経口投与の場合には、上記組成物自体あるいは薬学上許容される担体、賦形剤、希釈剤等とともに混合し、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤等とすることもできる。また、注射剤としては、適当な緩衝剤、等張剤等を添加し、滅菌蒸留水に溶解したものを用いればよい。
【0029】
本願発明の組成物は極めて安全であるので、その投与量は非常に広範に設定でき、更に、投与方法、使用目的により異なるが、通常1回に0.5〜5g、1日投与量として1〜20g、好ましくは5〜10gとすることができる。これらの溶液剤とする場合には、0.5〜10wt%溶液として10〜1000ml、好ましくは1〜4重量%溶液として100〜400mlを1回投与量とすればよい。
【0030】
食用とする場合には、本願アミノ酸組成物は、そのまま食用できるが各種食品への添加物とすることもできる。また、本願発明の組成物は水に溶解して飲料とすることもでき、その場合には、他の栄養成分、例えば、水溶液ビタミン類、タウリンなどを更に添加することもできる。また、嗜好性の改善のために、塩化ナトリウムなどの塩類、クエン酸等の酸類及び/又は他の適当な風味を加えて飲料とすることもできる。安定性のために、pH調整剤、キレート剤を更に添加することもできる。
【実施例】
【0031】
[実施例1]アミノ酸飲料(VAAM)を飲用した際の血流改善効果の確認
試料としてアミノ酸飲料(VAAM、190g、明治乳業(株))を用い、プラセボとして水(190 g)を用いた。アミノ酸飲料1には、アミノ酸として、AspNa・H
2Oが7mg、Thrが207mg、Serが63mg、Gluが114mg、Glyが347mg、Alaが132mg、Valが166mg、Metが19mg、Ileが143mg、Leuが196mg、Tyrが208mg、Pheが153mg、Trpが109mg、LysHClが382mg、Hisが97mg、Argが149mg、及びProが503mgで含有されている。
【0032】
10名の被験者から試料の飲用前に一度、採血した。採血直後に試料を飲用させ、1時間経過後に再度、採血した。この1時間を被験者は安静状態とした。実験のタイムテーブルは
図1に示した。試料の飲用前後での血液通過時間を測定し、比較することで、血流改善効果を確認した。10名の被験者のうちの4名にて更にプラセボ試験(水飲用)を行った。
【0033】
なお、採血は真空採血管に予めヘパリン0.25ml(全血に対し5%量)を添加しておき、被験者より5mlを採血する方法で行なった。得られた鮮血は直ちに測定試料として用いた。測定にはMC-FAN(Micro Channel Array Flow Analyzer)を用いた。MC-FANでは流路系に20cm水柱の圧力をかけ、この一定圧の下に全血100μlの流れる速度を測定した。各測定時におけるバラツキは、各々の測定時に生理食塩水100μlの流速を測定することで補正した。MC-FANに装着するマイクロチップには、Bloody 6-7(チップサイズ:15mm×15mm、厚さ:500μm、流路部:幅×長さ×深さ=7μm×30μm×4.5μm)を用いた。
【0034】
(結果)
10名の被験者についてアミノ酸飲料(VAAM)の血流改善効果を評価した。その結果、8名において血流時間は短縮し、残りの2名では変化が見られなかった(
図2)。プラセボ群の3名において血流時間の変化は認められなかったが、1名において大幅な延長が認められた。この1名については明らかにイレギュラーな測定値だと考えるのが妥当である。飲料摂取前の100μlの血流時間は45.4±4.4秒(mean±S.D.)であったのに対して、摂取1時間後では41.6±3.2秒であり、有意に短縮された(student’s t-検定)(
図3)。他方、水飲用では血液流動性に影響を及ぼさなかった。つまり、アミノ酸飲料(VAAM)の単回摂取により認められた血流改善効果は、VAAMの有効成分となるアミノ酸混合物によるものだと推察できる。
【0035】
[実施例2] アミノ酸混合物(VAAM Mix.)を摂取した場合の血液流動性改善効果の確認
試料としてアミノ酸混合物(VAAM Mix.)(3.0 g、明治乳業(株))を用いた。VAAM Mix.には、アミノ酸としてAspが7mg、Thrが207mg、Serが63mg、Gluが114mg、Glyが347mg、Alaが132mg、Valが166mg、Metが19mg、Ileが143mg、Leuが196mg、Tyrが208mg、Pheが153mg、Trpが109mg、LysHClが382mg、Hisが97mg、Argが149mg、及びProが503mgで含有されている。これを、オブラート(ピップトウキョウ(株)製)に包んで、50gの軟水で6名の被験者に飲用させた。VAAM Mix.の組成(重量%)は表1のとおりである。
【0036】
6名の被験者から試料の飲用前に一度、採血した。採血直後に試料を飲用させ、1時間経過後に再度、採血した。この1時間を被験者は安静状態とした。試料の飲用前後での血液通過時間を測定し、比較することで、血流改善効果を確認した。なお、各血液試料について2回ずつ測定した。
【0037】
また、採血は真空採血管に予めヘパリン0.25ml(全血に対し5%量)を添加しておき、被験者より5mlを採血する方法で行なった。得られた鮮血は直ちに測定試料として用いた。測定にはMC-FAN(Micro Channel Array Flow Analyzer)を用いた。MC-FANでは流路系に20cm水柱の圧力をかけ、この一定圧の下に全血100μlの流れる速度を測定した。各測定時におけるバラツキは、各々の測定時に生理食塩水100μlの流速を測定することで補正した。MC-FANに装着するマイクロチップには、Bloody 6-7(チップサイズ:15mm×15mm、厚さ:500μm、流路部:幅×長さ×深さ=7μm×30μm×4.5μm)を用いた。
【0038】
(結果)
VAAM Mix.を飲用した場合、6名すべての被験者において血流時間は短縮した(
図4)。試料摂取前の100μlの血流時間は45.0±1.9秒(mean±S.D.)であったのに対して、摂取1時間後では42.8±1.8秒であり、有意に短縮された(student’s t-検定)(
図5)。これまでの検討ではアミノ酸飲料(VAAM、明治乳業(株))の血流改善効果を確認している。今回の検討において、アミノ酸混合物(Mix.)の飲用により血流改善効果が認められたことで、アミノ酸がVAAMの血流改善効果の原因物質として寄与していると考えられる。
【表1】
【0039】
試料としてアミノ酸混合物(BCAA及びCAAM)(3.0g、明治乳業(株)支給)を用いた。試料はオブラート(ピップトウキョウ(株)製)に包み、50gの軟水で6名の被験者に飲用させた。なお、BCAAでは、バリンが750mg、ロイシンが1500mg、及びイソロイシンが750mgであった。CAAMの組成(重量%)は表2のとおりである。
【0040】
試料の飲用前に一度、採血した。採血直後に試料を飲用させ、1時間経過後に再度、採血した。この1時間を被験者は安静状態とした。試料の飲用前後での血液通過時間を測定し、比較することで、血流改善効果を確認した。なお、採血は真空採血管に予めヘパリン0.25ml(全血に対し5%量)を添加しておき、被験者より5mlを採血する方法で行った。得られた鮮血は直ちに測定試料として用いた。
【0041】
(結果)
BCAAを飲用した場合、4名の被験者において血流時間は短縮し、2名において延長した(
図6)。試料摂取前の100μlの血流時間は41.1±2.7秒であったのに対して、摂取1時間後では39.8±2.4秒であり、血流時間に有意差は認められなかった(
図7)。
【0042】
CAAMを飲用した場合、3名の被験者において血流時間は短縮し、3名において延長した(
図8)。試料摂取前の100μlの血流時間は41.6±3.0秒であったのに対して、摂取1時間後では41.4±1.2秒であり、血流時間に有意差は認められなかった(
図9)。
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0043】
本願発明は、食品、飲料、栄養補助食品及び医療の分野で使用することができる。
【0044】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。