(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持体上に、樹脂(A1)と、該樹脂(A1)を溶解する有機溶剤(S1)とを含有し、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する第一のレジスト材料を塗布して第一のレジスト膜を形成し、該第一のレジスト膜を選択的に露光し、アルカリ現像して第一のレジストパターンを形成する工程と、
前記第一のレジストパターンが形成された前記支持体上に、樹脂(A2)と、該樹脂(A2)を溶解し且つ前記樹脂(A1)を溶解しない有機溶剤(S2)とを含有し、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する第二のレジスト材料を塗布して第二のレジスト膜を形成し、該第二のレジスト膜を選択的に露光し、アルカリ現像してレジストパターンを形成する工程と、を含むレジストパターン形成方法であって、
前記樹脂(A1)を溶解する有機溶剤(S4)に該樹脂(A1)が溶解した樹脂(A1)溶液(ただし、該樹脂(A1)の重合溶液を除く)を、該樹脂(A1)を溶解せず且つ前記樹脂(A2)を溶解する有機溶剤(W)を含有する洗浄液で洗浄することにより精製した該樹脂(A1)を、前記第一のレジスト材料に配合することを特徴とするレジストパターン形成方法。
前記有機溶剤(S2)および前記有機溶剤(W)が、それぞれ、アルコール系有機溶剤、フッ素系有機溶剤、および水酸基を有さないエーテル系有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
前記第一のレジスト材料が、露光により酸を発生する酸発生剤を含有する化学増幅型レジスト組成物であり、前記樹脂(A1)として、前記酸発生剤から発生する酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する樹脂を含有する請求項1または2に記載のレジストパターン形成方法。
前記樹脂(A1)が、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有する請求項5または6に記載のレジストパターン形成方法。
支持体上に、樹脂(A1)と、該樹脂(A1)を溶解する有機溶剤(S1)とを含有し、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する第一のレジスト材料を塗布して第一のレジスト膜を形成し、該第一のレジスト膜を選択的に露光し、アルカリ現像して第一のレジストパターンを形成する工程と、
前記第一のレジストパターンが形成された前記支持体上に、樹脂(A2)と、該樹脂(A2)を溶解し且つ前記樹脂(A1)を溶解しない有機溶剤(S2)とを含有し、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する第二のレジスト材料を塗布して第二のレジスト膜を形成し、該第二のレジスト膜を選択的に露光し、アルカリ現像してレジストパターンを形成する工程と、を含むレジストパターン形成方法にて前記樹脂(A1)を精製する方法であり、
前記樹脂(A1)を溶解する有機溶剤(S4)に該樹脂(A1)が溶解した樹脂(A1)溶液(ただし、該樹脂(A1)の重合溶液を除く)を、フッ素系有機溶剤、水酸基を有さないエーテル系有機溶剤、および、常圧下における沸点が80〜250℃のアルコール系有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する有機溶剤で洗浄することを特徴とする樹脂の精製方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明のレジストパターン形成方法は、支持体上に、樹脂(A1)と、該樹脂(A1)を溶解する有機溶剤(S1)とを含有し、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する第一のレジスト材料を塗布して第一のレジスト膜を形成し、該第一のレジスト膜を選択的に露光し、アルカリ現像して第一のレジストパターンを形成する工程(以下「パターニング工程(1)」という。)と、前記第一のレジストパターンが形成された前記支持体上に、樹脂(A2)と、該樹脂(A2)を溶解し且つ前記樹脂(A1)を溶解しない有機溶剤(S2)とを含有し、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する第二のレジスト材料を塗布して第二のレジスト膜を形成し、該第二のレジスト膜を選択的に露光し、アルカリ現像してレジストパターンを形成する工程(以下「パターニング工程(2)」という。)とを含む方法である。
以下、本発明のレジストパターン形成方法について、より詳細に説明する。
【0022】
本発明のレジストパターン形成方法においては、第一のレジスト材料と第二のレジスト材料とを用いる。
第一のレジスト材料は、樹脂(A1)と、該樹脂(A1)を溶解する有機溶剤(S1)(以下「(S1)成分」ともいう。)とを含有し、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化するものである。
第二のレジスト材料は、樹脂(A2)と、該樹脂(A2)を溶解し且つ前記樹脂(A1)を溶解しない有機溶剤(S2)(以下「(S2)成分」ともいう。)とを含有し、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化するものである。
当該レジストパターン形成方法では、上記の関係を満たすように選択された、樹脂(A1)と有機溶剤(S1)、及び樹脂(A2)と有機溶剤(S2)を、それぞれ配合した第一のレジスト材料及び第二のレジスト材料を用いる。
第一のレジスト材料と第二のレジスト材料における配合成分の具体例について、詳しくは後述する。
【0023】
本発明においては、樹脂(A1)を、該樹脂(A1)を溶解せず且つ樹脂(A2)を溶解する有機溶剤(W)(以下「(W)成分」ともいう。)を含有する洗浄液で洗浄することにより精製して第一のレジスト材料に配合し、パターニング工程(1)で、その第一のレジスト材料を用いて第一のレジストパターンの形成を行う。
【0024】
(洗浄液)
洗浄液は、前記有機溶剤(W)を含有する。
(W)成分は、樹脂(A1)を溶解せず且つ樹脂(A2)を溶解するものであればよく、後述の有機溶剤(S2)と同じであっても異なっていてもよい。
本発明において、(W)成分における「樹脂(A1)を溶解せず且つ樹脂(A2)を溶解する」とは、25℃条件下、(W)成分100gに対して樹脂(A1)の溶解する量が3g以下であり、且つ、樹脂(A2)の溶解する量が10g以上であることを示す。
なかでも、(W)成分としては、樹脂(A1)の精製に用いることによって2回目以降のパターニングの影響を受けにくいレジストパターンをより形成しやすいことから、アルコール系有機溶剤、フッ素系有機溶剤、および水酸基を有さないエーテル系有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。そのなかでも、樹脂(A1)の精製を良好に行うことができ、樹脂(A2)の溶解性も良好であることから、アルコール系有機溶剤が好ましい。
【0025】
ここで、「アルコール系有機溶剤」とは、脂肪族炭化水素の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された化合物であって、常温、常圧下で液体である化合物である。前記脂肪族炭化水素を構成する主鎖の構造は、鎖状構造であってもよく、環状構造であってもよく、該鎖状構造中に環状構造を有していてもよく、また、該鎖状構造中にエーテル結合を含むものであってもよい。
「フッ素系有機溶剤」とは、フッ素原子を含む化合物であって、常温、常圧下で液体である化合物である。
「水酸基を有さないエーテル系有機溶剤」とは、その構造中にエーテル結合(C−O−C)を有し、水酸基を有さず、かつ、常温常圧下で液体である化合物である。該水酸基を有さないエーテル系有機溶剤は、さらに、水酸基に加えてカルボニル基も有さないことが好ましい。
【0026】
アルコール系有機溶剤としては、1価アルコール、2価アルコール、2価アルコールの誘導体等が好ましい。
1価アルコールとしては、炭素数にもよるが、1級または2級の1価アルコールが好ましく、なかでも1級の1価アルコールが最も好ましい。
ここで1価アルコールとは、炭素原子および水素原子のみから構成される炭化水素化合物の水素原子の1つが水酸基で置換された化合物を意味し、2価以上の多価アルコールの誘導体は含まれない。該炭化水素化合物は、鎖状構造のものであってもよく、環状構造を有するものであってもよい。
2価アルコールとは、前記炭化水素化合物の水素原子の2つが水酸基で置換された化合物を意味し、3価以上の多価アルコールの誘導体は含まれない。
2価アルコールの誘導体としては、2価アルコールの水酸基の1つが置換基(アルコキシ基、アルコキシアルキルオキシ基等)で置換された化合物が挙げられる。
【0027】
アルコール系有機溶剤の沸点(常圧下)は、精製後の溶媒除去の点から、80〜250℃であることが好ましく、90〜220℃であることがさらに好ましく、100〜200℃であることが特に好ましい。
かかるアルコール系有機溶剤として具体的には、鎖状構造のものとして、プロピレングリコール(PG);1−ブトキシ−2−プロパノール(PGB)、n−ヘキサノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−ヘプタノール、5−メチル−1−ヘキサノール、6−メチル−2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、n−ペンチルアルコール、s−ペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、イソブタノール(イソブチルアルコール又は2−メチル−1−プロパノールとも称する。IBA。)、イソプロピルアルコール、2−エチルブタノール、ネオペンチルアルコール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)等が挙げられる。
また、環状構造を有するものとして、シクロペンタンメタノール、1−シクロペンチルエタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール(CM)、シクロヘキサンエタノール、1,2,3,6−テトラヒドロベンジルアルコール、exo−ノルボルネオール、2−メチルシクロヘキサノール、シクロヘプタノール、3,5−ジメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0028】
アルコール系有機溶剤のなかでは、鎖状構造の1価アルコールまたは2価アルコールの誘導体が好ましく、1−ブトキシ−2−プロパノール(PGB);イソブタノール(イソブチルアルコール又は2−メチル−1−プロパノールとも称する。IBA。)、4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)、n−ブタノールが好ましく、イソブタノール(2−メチル−1−プロパノール)、1−ブトキシ−2−プロパノール(PGB)が最も好ましい。
【0029】
フッ素系有機溶剤としては、たとえば、C
4F
9CH
2CH
2OH、C
3F
7CH
2OH等のフッ素原子含有アルコール系有機溶剤;CHF
2CF
2−CH
2−O−CF
2CHF
2、(C
3F
7)(C
2F
5)CH−O−CH
3等のフッ素原子含有エーテル系有機溶剤;CHF
2(CF
2)
6C(=O)OCH
3、CHF
2(CF
2)
3C(=O)OCH
3等のフッ素原子含有アルキルエステル系溶剤が挙げられる。
【0030】
水酸基を有さないエーテル系有機溶剤としては、たとえば、下記一般式(s−1)で表される化合物が好適なものとして挙げられる。
R
40−O−R
30 …(s−1)
[式中、R
40、R
30はそれぞれ独立して1価の炭化水素基であり、R
40とR
30とが結合して環を形成していてもよい。−O−はエーテル結合を示す。]
【0031】
前記式中、R
40、R
30の炭化水素基としては、たとえばアルキル基、アリール基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。なかでも、R
40、R
30のいずれもアルキル基であることが好ましく、R
40とR
30とが、同じアルキル基であることがより好ましい。
R
40、R
30の各アルキル基としては、特に制限はなく、たとえば炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。該アルキル基は、その水素原子の一部または全部がハロゲン原子等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。
該アルキル基としては、例えば所望とする沸点に制御しやすい等の理由から、炭素数1〜15であることが好ましく、炭素数1〜10であることがより好ましい。具体的には、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、n−ブチル基、イソペンチル基が特に好ましい。
前記アルキル基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子であることが好ましい。
R
40、R
30の各アリール基としては、特に制限はなく、たとえば炭素数6〜12のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部または全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。
該アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることがより好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子であることが好ましい。
また、上記式においては、R
40とR
30とが結合して環を形成していてもよい。
R
40およびR
30は、それぞれ独立に直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基)であって、R
40の末端と、R
30の末端とが結合して環を形成する。また、アルキレン基の炭素原子は、酸素原子で置換されていてもよい。
かかるエーテル系有機溶剤の具体例としては、たとえば1,8−シネオール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0032】
水酸基を有さないエーテル系有機溶剤の沸点(常圧下)は、30〜300℃であることが好ましく、100〜200℃であることがより好ましく、140〜180℃であることがさらに好ましい。前記沸点を上記範囲内とすることで、精製を容易に行うことができる。また、上限値以下であることにより、精製後の残留溶媒の除去効率が向上する。
【0033】
水酸基を有さないエーテル系有機溶剤の具体例としては、たとえば1,8−シネオール(沸点176℃)、ジブチルエーテル(沸点142℃)、ジイソペンチルエーテル(沸点171℃;DIAE)、ジオキサン(沸点101℃)、アニソール(沸点155℃)、エチルベンジルエーテル(沸点189℃)、ジフェニルエーテル(沸点259℃)、ジベンジルエーテル(沸点297℃)、フェネトール(沸点170℃)、ブチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン(沸点66℃)、エチルプロピルエーテル(沸点63℃)、ジイソプロピルエーテル(沸点69℃)、ジヘキシルエーテル(沸点226℃)、ジプロピルエーテル(沸点91℃)等が挙げられる。
水酸基を有さないエーテル系有機溶剤としては、環状または鎖状のエーテル系有機溶剤であることが好ましく、なかでも1,8−シネオール、ジブチルエーテルおよびジイソペンチルエーテル(DIAE)からなる群から選択される少なくとも一種が好ましい。
【0034】
洗浄液に用いられる(W)成分は、1種単独であってもよく、2種以上を併用してもよい。
洗浄液中の(W)成分の含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
(W)成分の含有量が下限値以上であると、樹脂(A1)の精製を良好に行うことができ、2回目以降のパターニングの影響を受けにくいレジストパターンをより形成しやすくなる。
【0035】
洗浄液は、(W)成分以外のその他成分を含有していてもよい。
その他成分としては、たとえば前記有機溶剤(S1)が挙げられる。
【0036】
有機溶剤(S1)は、樹脂(A1)を溶解するものであればよく、従来、化学増幅型レジスト組成物の有機溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
洗浄液に用いてもよい好適な有機溶剤(S1)としては、たとえば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤等が挙げられる。
上記のなかでも、ケトン類、エーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体が特に好ましい。
洗浄液中、有機溶剤(S1)は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0037】
樹脂(A1)を前記洗浄液で洗浄する方法(精製方法)としては、たとえば以下の方法が挙げられる。
精製方法(1):有機溶剤(S1)に樹脂(A1)が溶解した樹脂(A1)溶液を、有機溶剤(W)のみからなる洗浄液と混合する方法。
精製方法(2):前記樹脂(A1)溶液を、有機溶剤(W)と有機溶剤(S1)との混合溶剤からなる洗浄液と混合する方法。
精製方法(3):樹脂(A1)を直接、有機溶剤(W)と有機溶剤(S1)との混合溶剤と混合する方法。
【0038】
[精製方法(1)]
有機溶剤(S1)としては、樹脂(A1)の溶解性が高いことから、ケトン類が好ましく、メチルエチルケトンが特に好ましい。
樹脂(A1)溶液中、樹脂(A1)の含有量は、ポリマー溶解性等の点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、15〜40質量%がさらに好ましい。
樹脂(A1)溶液を洗浄液と混合する方法は、特に限定されず、たとえば、樹脂(A1)溶液を洗浄液(有機溶剤(W))に滴下する方法が挙げられる。
混合する際の温度条件は、0〜60℃が好ましく、10〜50℃がより好ましく、15〜40℃がさらに好ましい。
樹脂(A1)溶液と洗浄液との混合割合は、洗浄液100質量部に対して樹脂(A1)が1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましく、1〜15質量部であることがさらに好ましい。
樹脂(A1)の割合を上記範囲内とすることで、収率及び精製度合いの最適化がより図られる。
精製方法(1)においては、樹脂(A1)溶液を洗浄液(有機溶剤(W)のみ)と混合することにより白色析出物が得られ、当該白色析出物をろ過処理によりろ別し、乾燥することによって、樹脂(A1)の精製品が調製される。
【0039】
[精製方法(2)]
精製方法(2)は、有機溶剤(W)のみからなる洗浄液を、有機溶剤(W)と有機溶剤(S1)との混合溶剤からなる洗浄液に変更した以外は、前記精製方法(1)と同様である。
当該洗浄液における有機溶剤(S1)としては、第一のレジスト材料にも用いることが容易であり、第二のレジスト材料に対する耐性がより高まると期待されることから、エーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体が好ましく、PGMEAが特に好ましい。
混合溶剤において、有機溶剤(W)と有機溶剤(S1)との混合割合は、(W)/(S1)で表される質量比で、(W)/(S1)=99/1〜60/40であることが好ましく、99/1〜70/30であることがより好ましく、95/5〜80/20であることがさらに好ましい。
(W)/(S1)で表される質量比を上記範囲内とすることで、収率及び精製度合いの最適化がより図られる。
精製方法(2)においては、樹脂(A1)溶液を洗浄液(有機溶剤(W)と有機溶剤(S1)との混合溶剤)と混合することにより白色析出物が得られ、当該白色析出物をろ過処理によりろ別し、乾燥することによって、樹脂(A1)の精製品が調製される。
【0040】
[精製方法(3)]
樹脂(A1)を直接、混合溶剤と混合する時間は、1〜120分間が好ましく、15〜90分間がより好ましく、30〜60分間がさらに好ましい。
混合する際の温度条件は、0〜60℃が好ましく、10〜50℃がより好ましく、15〜40℃がさらに好ましい。
樹脂(A1)と洗浄液との混合割合は、洗浄液100質量部に対して樹脂(A1)が
1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましく、1〜15質量部であることがさらに好ましい。
樹脂(A1)の割合を上記範囲内とすることで、収率及び精製度合いの最適化がより図られる。
混合溶剤において、有機溶剤(W)と有機溶剤(S1)との混合割合は、(W)/(S1)で表される質量比で、(W)/(S1)=99/1〜60/40であることが好ましく、99/1〜70/30であることがより好ましく、95/5〜80/20であることがさらに好ましい。
(W)/(S1)で表される質量比を上記範囲内とすることで、収率及び精製度合いの最適化がより図られる。
当該洗浄液における有機溶剤(S1)としては、精製度合いが向上することから、ケトン類、エーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体が好ましく、メチルエチルケトン、PGMEAが特に好ましい。また、有機溶剤(S1)は、精製度合いがより向上することから、ケトン類と、エーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体とを併用することも好ましく、両者の混合割合は、質量比で、(ケトン類)/(多価アルコール類の誘導体)=1/99〜99/1であることが好ましく、10/90〜90/10であることがより好ましく、20/80〜80/20であることがさらに好ましい。
精製方法(3)においては、樹脂(A1)を直接、混合溶剤と混合することにより白色分散物が得られ、当該白色分散物を、ろ過処理によりろ別し、乾燥することによって樹脂(A1)の精製品が調製される。
【0041】
上述した精製方法(1)〜(3)においては、樹脂(A1)をより均一に洗浄でき、膜減りをより生じにくいレジストパターンを容易に形成できることから、精製方法(1)、(2)が好ましい。
また、樹脂(A1)溶液を調製する工程がなく、簡便な方法であることから、精製方法(3)が好ましい。
本発明において、樹脂(A1)を前記洗浄液で洗浄する方法(精製方法)により処理された樹脂(A1)の精製品は、第一のレジスト材料に配合される。
【0042】
[パターニング工程(1)]
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系および/または有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や多層レジスト法における下層膜が挙げられる。特に、有機膜が設けられていると、基板上に、高アスペクト比のパターンを形成でき、半導体の製造等において有用であることから好ましい。
ここで、多層レジスト法とは、基板上に、少なくとも一層の有機膜(下層膜)と、少なくとも一層のレジスト膜とを設け、上層のレジスト膜に形成したレジストパターンをマスクとして下層のパターニングを行う方法であり、高アスペクト比のパターンを形成できるとされている。多層レジスト法には、基本的に、上層のレジスト膜と、下層膜との二層構造とする方法と、これらのレジスト膜と下層膜との間に一層以上の中間層(金属薄膜等)を設けた三層以上の多層構造とする方法とに分けられる。多層レジスト法によれば、下層膜により所要の厚みを確保することにより、レジスト膜を薄膜化し、高アスペクト比の微細パターン形成が可能となる。
無機系の膜は、たとえばシリコン系材料などの無機系の反射防止膜組成物を基材上に塗工し、焼成等することにより形成できる。
有機系の膜は、たとえば、当該膜を構成する樹脂成分等を有機溶剤に溶解した有機膜形成用材料を基板上にスピンナー等で塗布し、好ましくは200〜300℃、好ましくは30〜300秒間、より好ましくは60〜180秒間の加熱条件でベーク処理することにより形成できる。
【0043】
上述した精製方法により精製した樹脂(A1)を含有する第一のレジスト材料を用いて、支持体上に当該第一のレジスト材料を塗布して第一のレジスト膜を形成する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、支持体上に、たとえば第一のレジスト材料として化学増幅型レジスト組成物等を、スピンナー等を用いる従来公知の方法により塗布し、80〜150℃の温度条件下、ベーク処理(プレベーク)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、有機溶剤を揮発させることにより第一のレジスト膜を形成できる。
第一のレジスト膜の厚さは、好ましくは30〜500nm、より好ましくは40〜400nm、さらに好ましくは50〜200nmである。この範囲内とすることにより、レジストパターンを高解像度で形成できる、エッチングに対する充分な耐性が得られる等の効果がある。
【0044】
次に、前記第一のレジスト膜を選択的に露光し、アルカリ現像して第一のレジストパターンを形成する。
具体的には、たとえば上記のようにして形成した第一のレジスト膜を、フォトマスクを介して選択的に露光し、好ましくは露光後加熱(PEB)処理を施し、アルカリ現像して第一のレジストパターンを形成する。
【0045】
露光に用いる波長は、特に限定されず、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F
2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線などの放射線を用いて行うことができる。
フォトマスクとして、たとえば、遮光部の透過率が0%のバイナリーマスク(Binary−Mask)や、遮光部の透過率が6%のハーフトーン型位相シフトマスク(HT−Mask)を用いることができる。
当該バイナリーマスクは、一般的には、石英ガラス基板上に、遮光部としてクロム膜、酸化クロム膜等が形成されたものが用いられる。
当該ハーフトーン型位相シフトマスクは、一般的には石英ガラス基板上に、遮光部としてMoSi(モリブデン・シリサイド)膜、クロム膜、酸化クロム膜、酸窒化シリコン膜等が形成されたものが用いられる。
なお、フォトマスクを介さない露光、たとえばEB等による描画により選択的露光を行ってもよい。
【0046】
第一のレジスト膜の選択的露光は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光で行ってもよい。
液浸露光では、上述したように、露光時に、従来は空気や窒素等の不活性ガスで満たされているレンズとウェーハ上のレジスト膜との間の部分を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たした状態で露光を行う。
より具体的には、液浸露光は、上記のようにして得られたレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で、所望のフォトマスクを介して露光(浸漬露光)することによって実施できる。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、当該浸漬露光によって露光される第一のレジスト膜の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、C
3HCl
2F
5、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、C
5H
3F
7等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70〜180℃のものが好ましく、80〜160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【0047】
PEB処理は、第一のレジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性を変化(増減)させ得るベーク温度で行う。
すなわち、第一のレジスト膜は、たとえば化学増幅型レジスト組成物等を用いて形成されるレジスト膜は、露光後、PEB処理を行うことで、酸発生剤から発生した酸の当該レジスト膜内での拡散と、該酸の作用による当該レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性の変化(増減)とが進行する。
具体的には、たとえば所定のパターンが形成されたフォトマスクを介して第一のレジスト膜を選択的に露光した後、80〜150℃の温度条件下、PEB処理が40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施される。
【0048】
PEB処理後、アルカリ現像して第一のレジストパターンを形成する。
アルカリ現像は、アルカリ水溶液、例えば濃度0.1〜10質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて、公知の方法により実施できる。かかるアルカリ現像により、第一のレジスト膜の露光部(ポジ型レジスト組成物を用いた場合)又は未露光部(ネガ型レジスト組成物を用いた場合)が除去されて第一のレジストパターンが形成される。
上記アルカリ現像後、水等によるリンス処理を行ってもよい。
また、上記アルカリ現像後、さらに、ベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。ポストベークは(アルカリ現像やリンス処理後の水分を除去する目的で行われるため)通常100℃程度の条件で行われ、処理時間は、好ましくは30〜90秒間である。
【0049】
[パターニング工程(2)]
次いで、前記第一のレジストパターンが形成された前記支持体上に、第二のレジスト材料を塗布して第二のレジスト膜を形成する。
たとえば、第一のレジストパターンがラインアンドスペースのレジストパターン(以下「L/Sパターン」という。)である場合、そのL/Sパターンにおける複数のレジストパターン間のスペース部を充填するように、第二のレジスト膜を、第一のレジスト膜と同様、従来公知の方法によって形成することができる。
第二のレジスト膜の膜厚は、少なくとも、第一のレジストパターンの高さと同じか、それよりも厚いことが好ましい。すなわち、支持体を第二のレジスト膜側から見た場合、その表面が平坦であることが好ましい。
【0050】
次に、前記第二のレジスト膜を選択的に露光し、アルカリ現像してレジストパターンを形成する。
具体的には、たとえば、第二のレジスト膜の、複数のレジストパターンが形成された位置とは異なる位置を、フォトマスクを介して選択的に露光し、PEB処理を施し、アルカリ現像してレジストパターンを形成する。
これにより、第二のレジスト材料がポジ型の場合には第二のレジスト膜の露光部、ネガ型の場合には未露光部がそれぞれ除去されて、前記L/Sパターンにおいては、複数のレジストパターン間に、それぞれ、新しく複数のレジストパターンが形成される。その結果、支持体上に、複数のレジストパターンと、第二のレジスト膜に新たに形成された複数のレジストパターンとからなるレジストパターンが形成される。
ここで、本発明においては、第一のレジストパターンと完全に一致する場合以外はすべて「第一のレジストパターンを形成した位置とは異なる位置」であり、全く重複していない場合、および一部重複している場合を含むものとする。
本発明においては、たとえば、最終的にL/Sパターンを形成する場合、第一のレジストパターンを形成した位置と、パターニング工程(2)で選択的に露光する位置とが全く重複しないことが好ましい。これにより、パターニング工程(1)で形成した第一のレジストパターンよりも、パターンの間隔(ピッチ)が狭い狭ピッチのパターンを形成することができる。
【0051】
第二のレジスト膜の選択的露光は、たとえばパターニング工程(1)で用いたフォトマスクを、露光位置を若干ずらすことにより実施できる。また、このとき、パターニング工程(1)で用いたフォトマスクとは別のフォトマスクを使用してもよい。
第二のレジスト膜から形成されるレジストパターンの位置は、第一のレジストパターンの位置と全く重複していなくてもよく、第一のレジストパターンの位置と一部重複していてもよいが、第二のレジスト膜から形成されるレジストパターンの位置と、第一のレジストパターンの位置とが全く重複していないことが好ましい。これにより、パターニング工程(1)で形成した第一のレジストパターンよりも、パターンの間隔(ピッチ)が狭い狭ピッチのレジストパターンが得られる。
【0052】
たとえばL/Sパターンを形成する場合を例に挙げると、パターニング工程(1)で、複数のラインが一定のピッチで配置されたラインアンドスペースのフォトマスクを用いてL/Sパターンを形成した後、パターニング工程(2)で、当該フォトマスクの位置を変更して、パターニング工程(1)で形成したラインパターンとラインパターンとの中間位置にラインパターンを形成することにより、最初に形成したL/Sパターン(疎パターン)よりも狭ピッチの、L/Sパターン(密パターン)が形成される。
「疎パターン」としては、L/Sパターンにおいて、ライン幅:スペース幅=1:2以上にスペース幅が広いL/Sパターンが好ましい。
【0053】
露光後、PEB処理を行う。
PEB処理は、パターニング工程(1)におけるPEB処理と同様の方法によって行うことができる。
PEB処理後、第二のレジスト膜のアルカリ現像を行う。アルカリ現像は、アルカリ水溶液、例えば濃度0.1〜10質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて、公知の方法により実施できる。かかるアルカリ現像により、第二のレジスト材料がポジ型の場合には第二のレジスト膜の露光部、ネガ型の場合には未露光部がそれぞれ除去されてレジストパターンが形成される。
上記アルカリ現像後、水等によるリンス処理を行ってもよい。
また、上記アルカリ現像後、さらに、ベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。ポストベークは(アルカリ現像やリンス処理後の水分を除去する目的で行われるため)通常100℃程度の条件で行われ、処理時間は、好ましくは30〜90秒間である。
【0054】
本発明のレジストパターン形成方法においては、狭ピッチの密なL/Sパターンを容易に形成できることから、前記第一のレジストパターンが、L/Sパターンであることが好ましい。
具体的には、例えば、ライン幅100nm、ライン幅:スペース幅=1:3のL/Sパターン(疎パターン)を形成した後、フォトマスクを、ラインの方向に対して垂直方向に200nm平行移動させ、ライン幅100nm、ライン幅:スペース幅=1:3のL/Sパターンを形成する。その結果、ライン幅100nm、ライン幅:スペース幅=1:1のL/Sパターン(密なパターン)を形成することができる。
【0055】
また、パターニング工程(1)で用いたフォトマスクを回転移動させたり、パターニング工程(1)で用いたフォトマスクとは異なるフォトマスク(たとえば、パターニング工程(1)においてラインアンドスペースのフォトマスク、パターニング工程(2)においてホールのフォトマスク等)を用いたりすること等により、微細なレジストパターン、および/または、多様な形状のレジストパターンを形成することができる。
【0056】
たとえば、パターニング工程(1)で得られた第一のL/Sパターンに対して交差した位置関係で露光し現像する、すなわちクロスラインパターニングを行うことにより、ホール状又は格子状のレジストパターンを形成することもできる。クロスラインパターニングを行う場合、ラインアンドスペースの各レジストパターンにおける、ライン幅:スペース幅の比率や、各パターンの交差角度は、最終的に得られるホール状又は格子状のレジストパターンの形状に合うように適宜制御すればよい。たとえば、交差する角度は、目的のパターンに応じて、直交させたり、斜めに(90°未満で)交差させたりすればよい。
このように、第一と第二のL/Sパターンから、ホール状(もしくは格子状)のパターンが形成されるのは、プロセス上の要因の他、第二のレジストパターン形成時に露光により発生する酸の拡散方向の不均一性(例えば、第一のL/Sパターンの存在する方向では、(そうでない方向に比べて)酸拡散が制御され得る)等に因るため、と考えられる。
【0057】
本発明のレジストパターン形成方法においては、上記パターニング工程(2)の後、さらに、上述したパターニング工程(2)と同様の操作を複数回繰り返して行ってもよい。すなわち、上記パターニング工程(2)でレジストパターンが形成された支持体上に、第三のレジスト材料を塗布してレジスト膜を形成し、該レジスト膜を選択的に露光し、アルカリ現像してレジストパターンを形成する操作を複数回行ってもよい。これにより、さらに狭ピッチのより密なパターンや複雑な形状のパターンを形成することができる。
かかる場合、第二のレジスト材料に配合される有機溶剤(S2)及び第三のレジスト材料に配合される有機溶剤(S3)の両方で洗浄(精製)した樹脂(A1)を、第一のレジスト材料に配合するとともに、第三のレジスト材料に配合される有機溶剤(S3)で洗浄(精製)した樹脂(A2)を、第二のレジスト材料に配合することが好ましい。これにより、2回目及び3回目の両方のパターニングの影響を受けにくい第一のレジストパターンと、3回目のパターニングの影響を受けにくい第二のレジストパターンとを形成できる。
【0058】
本発明のレジストパターン形成方法においては、上記パターニング工程(2)の後、形成されたレジストパターンをマスクとして用いて、支持体のエッチングを行ってもよい。このように支持体をエッチングすることにより、半導体デバイス等を製造することができる。
エッチングの方法は、公知のドライ又はウェットエッチングの方法が利用できる。たとえば有機膜(レジストパターン、有機系の反射防止膜等)のエッチングは、ドライエッチングが好ましい。特に、酸素プラズマエッチング、またはCF
4ガスもしくはCHF
3ガスを用いたエッチングが好ましく、中でも酸素プラズマエッチングが好ましい。
基板や無機系の反射防止膜のエッチングは、ハロゲンガスを用いたエッチングが好ましく、フッ化炭素系ガスを用いたエッチングが好ましく、特にCF
4ガス又はCHF
3ガスを用いたエッチングが好ましい。
【0059】
(第一のレジスト材料)
第一のレジスト材料は、樹脂(A1)と、該樹脂(A1)を溶解する有機溶剤(S1)(以下「(S1)成分」ともいう。)とを含有し、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化するものである。
かかる第一のレジスト材料は、露光により酸を発生する酸発生剤を含有する化学増幅型レジスト組成物であることが好ましく、具体的には、前記樹脂(A1)(以下「(A1)成分」という。)として、前記酸発生剤から発生する酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する樹脂と、該(A1)成分を溶解する有機溶剤(S1)((S1)成分)と、前記酸発生剤(B)(以下「(B)成分」という。)とを含有するものが好適なものとして挙げられる。
支持体上に、かかる第一のレジスト材料を用いて形成されるレジスト膜は、レジストパターン形成時に選択的露光を行うと、(B)成分から酸が発生し、該酸が(A1)成分のアルカリ現像液に対する溶解性を変化させる。その結果、当該レジスト膜の露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が変化する一方で、未露光部はアルカリ現像液に対する溶解性が変化しないため、アルカリ現像することにより、ポジ型の場合は露光部が、ネガ型の場合は未露光部が溶解除去されてレジストパターンが形成される。
かかる第一のレジスト材料は、ネガ型レジスト組成物であってもよく、ポジ型レジスト組成物であってもよい。
【0060】
<(A1)成分>
(A1)成分は、有機溶剤(S1)に溶解するもので、かつ、有機溶剤(S2)に溶解しないものであり、これまで化学増幅型レジスト用の基材成分として用いられている高分子化合物(樹脂)を1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
ここでいう「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物であり、好ましくは分子量が500以上の有機化合物が用いられる。該有機化合物の分子量が500以上であることにより、膜形成能が向上し、また、ナノレベルのレジストパターンを形成しやすい。
前記基材成分として用いられる「分子量が500以上の有機化合物」は、非重合体と重合体とに大別される。
非重合体としては、通常、分子量が500以上4000未満のものが用いられる。以下、分子量が500以上4000未満の非重合体を低分子化合物という。
重合体としては、通常、分子量が1000以上のものが用いられる。以下、分子量が1000以上の重合体を高分子化合物という。高分子化合物の場合、「分子量」としてはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、高分子化合物を単に「樹脂」ということがある。
本発明においては、(A1)成分が、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0061】
本発明における第一のレジスト材料が「ポジ型の化学増幅型レジスト組成物」である場合、(A1)成分は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂(以下「(A1−1)成分」という。)が用いられる。
該(A1−1)成分は、露光前はアルカリ現像液に対して難溶性であり、露光により前記(B)成分から酸が発生すると、該酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ポジ型の化学増幅型レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性から可溶性に変化する一方で、未露光部はアルカリ難溶性のまま変化しないため、アルカリ現像することによりレジストパターンが形成できる。
【0062】
第一のレジスト材料における(A1)成分は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂((A1−1)成分)であることが好ましい。すなわち、本発明における第一のレジスト材料は、ポジ型の化学増幅型レジスト組成物であることが好ましい。
第一のレジスト材料が「ポジ型の化学増幅型レジスト組成物」である場合、基材成分として、(A1−1)成分に加えて、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する低分子化合物成分を用いてもよい。
【0063】
[(A1−1)成分]
(A1−1)成分としては、通常、化学増幅型レジスト用の基材成分として用いられている樹脂成分(ベース樹脂)を1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
(A1−1)成分としては、アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有するものが好ましい。
【0064】
ここで、本明細書および本特許請求の範囲において、「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸エステルのほか、α位の炭素原子に置換基(水素原子以外の原子または基)が結合しているものも含む概念とする。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。
なお、アクリル酸エステルから誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことを意味する。
アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基としての炭素数1〜5のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの低級の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
また、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基として、具体的には、上記「α位の置換基としての炭素数1〜5のアルキル基」の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
本発明において、アクリル酸エステルのα位に結合しているのは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であることが好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜5のフッ素化アルキル基であることがより好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
【0065】
なかでも、特に、(A1−1)成分としては、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有することが好ましい。
また、(A1−1)成分は、構成単位(a1)に加えて、さらに、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有することが好ましい。
また、(A1−1)成分は、構成単位(a1)に加えて、又は構成単位(a1)と構成単位(a2)に加えて、さらに、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有することが好ましい。
また、(A1−1)成分は、構成単位(a1)に加えて、構成単位(a1)と構成単位(a2)に加えて、構成単位(a1)と構成単位(a3)に加えて、又は構成単位(a1)〜(a3)に加えて、さらに、その他構成単位を有してもよい。
【0066】
(構成単位(a1))
構成単位(a1)は、酸解離性溶解抑制基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
構成単位(a1)における酸解離性溶解抑制基は、解離前は(A1−1)成分全体をアルカリ現像液に対して難溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、酸により解離してこの(A1−1)成分全体のアルカリ現像液に対する溶解性を増大させるものであり、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性溶解抑制基として提案されているものを使用することができる。一般的には、(メタ)アクリル酸等におけるカルボキシ基と環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基;アルコキシアルキル基等のアセタール型酸解離性溶解抑制基などが広く知られている。
【0067】
ここで、「第3級アルキルエステル」とは、カルボキシ基の水素原子が、鎖状または環状のアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)の末端の酸素原子に、前記鎖状または環状のアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
なお、前記鎖状または環状のアルキル基は置換基を有していてもよい。
以下、カルボキシ基と第3級アルキルエステルを構成することにより、酸解離性となっている基を、便宜上、「第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基」という。
【0068】
第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基としては、脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基が挙げられる。
ここで、本特許請求の範囲及び明細書における「脂肪族分岐鎖状」とは、芳香族性を持たない分岐鎖状の構造を有することを示す。
「脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基」の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。
また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基としては、炭素数4〜8の第3級アルキル基が好ましく、具体的にはtert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘプチル基等が挙げられる。
【0069】
「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基であることを示す。
構成単位(a1)における「脂肪族環式基」は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5の低級アルキル基、炭素数1〜5の低級アルコキシ基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
「脂肪族環式基」の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。
また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。「脂肪族環式基」は、多環式基であることが好ましい。
脂肪族環式基としては、例えば、低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
【0070】
脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基としては、例えば環状のアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基を挙げることができ、具体的には2−メチル−2−アダマンチル基や、2−エチル−2−アダマンチル基等が挙げられる。あるいは、下記一般式(a1”−1)〜(a1”−6)で示す構成単位において、カルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の酸素原子に結合した基の様に、アダマンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ノルボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の脂肪族環式基と、これに結合する、第3級炭素原子を有する分岐鎖状アルキレン基とを有する基が挙げられる。
【0071】
【化1】
[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;R
15、R
16はアルキル基(直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1〜5である)を示す。]
【0072】
一般式(a1”−1)〜(a1”−6)において、Rの低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基は、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよい低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基と同様である。
【0073】
「アセタール型酸解離性溶解抑制基」は、一般的に、カルボキシ基、水酸基等のアルカリ可溶性基末端の水素原子と置換して酸素原子と結合している。そして、露光により酸が発生すると、この酸が作用して、アセタール型酸解離性溶解抑制基と、当該アセタール型酸解離性溶解抑制基が結合した酸素原子との間で結合が切断される。
アセタール型酸解離性溶解抑制基としては、たとえば、下記一般式(p1)で表される基が挙げられる。
【0074】
【化2】
[式中、R
1’,R
2’はそれぞれ独立して水素原子または低級アルキル基を表し、nは0〜3の整数を表し、Yは低級アルキル基または脂肪族環式基を表す。]
【0075】
上記式中、nは、0〜2の整数であることが好ましく、0または1がより好ましく、0が最も好ましい。
R
1’,R
2’の低級アルキル基としては、上記Rの低級アルキル基と同様のものが挙げられ、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
なかでも、R
1’,R
2’のうち少なくとも1つが水素原子であることが好ましい。すなわち、酸解離性溶解抑制基(p1)が、下記一般式(p1−1)で表される基であることが好ましい。
【0076】
【化3】
[式中、R
1’、n、Yは上記と同様である。]
【0077】
Yの低級アルキル基としては、上記Rの低級アルキル基と同様のものが挙げられる。
Yの脂肪族環式基としては、従来ArFレジスト等において多数提案されている単環又は多環式の脂肪族環式基の中から適宜選択して用いることができ、たとえば上記「脂肪族環式基」と同様のものが例示できる。
【0078】
また、アセタール型酸解離性溶解抑制基としては、下記一般式(p2)で示される基も挙げられる。
【0079】
【化4】
[式中、R
17、R
18はそれぞれ独立して直鎖状または分岐鎖状のアルキル基または水素原子であり、R
19は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基である。または、R
17およびR
19がそれぞれ独立に直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であって、R
17の末端とR
19の末端とが結合して環を形成していてもよい。]
【0080】
R
17、R
18において、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。特にR
17、R
18の一方が水素原子で、他方がメチル基であることが好ましい。
R
19は直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であり、炭素数は好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれでもよい。
R
19が直鎖状、分岐鎖状の場合は炭素数1〜5であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、特にエチル基が最も好ましい。
R
19が環状の場合は炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的にはフッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
また、上記式においては、R
17及びR
19がそれぞれ独立に直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基(好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基)であってR
19の末端とR
17の末端とが結合していてもよい。
この場合、R
17とR
19と、R
19が結合した酸素原子と、該酸素原子およびR
17が結合した炭素原子とにより環式基が形成されている。該環式基としては、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0081】
構成単位(a1)としては、下記一般式(a1−0−1)で表される構成単位および下記一般式(a1−0−2)で表される構成単位からなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0082】
【化5】
[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;X
1は酸解離性溶解抑制基を示す。]
【0083】
【化6】
[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;X
2は酸解離性溶解抑制基を示し;Y
2は2価の連結基を示す。]
【0084】
一般式(a1−0−1)において、Rの低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基は、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよい低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基と同様である。
X
1は、酸解離性溶解抑制基であれば特に限定されることはなく、例えば上述した第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基、アセタール型酸解離性溶解抑制基などを挙げることができ、第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基が好ましい。
【0085】
一般式(a1−0−2)において、Rは上記と同様である。
X
2は、式(a1−0−1)中のX
1と同様である。
【0086】
Y
2の2価の連結基としては、アルキレン基、2価の脂肪族環式基またはヘテロ原子を含む2価の連結基が挙げられる。
該脂肪族環式基としては、水素原子が2個以上除かれた基が用いられること以外は前記「脂肪族環式基」の説明と同様のものを用いることができる。
Y
2がアルキレン基である場合、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜6であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましく、炭素数1〜3であることが最も好ましい。
Y
2が2価の脂肪族環式基である場合、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、イソボルナン、アダマンタン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンから水素原子が2個以上除かれた基であることが特に好ましい。
Y
2がヘテロ原子を含む2価の連結基である場合、ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hはアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい。)、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−、「−A−O(酸素原子)−B−(ただし、AおよびBはそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。)」等が挙げられる。
【0087】
Y
2が−NH−の場合における置換基(アルキル基、アシル基等)の炭素数としては1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜5であることが特に好ましい。
Y
2が「A−O−B」である場合、AおよびBは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基である。
炭化水素基が「置換基を有する」とは、該炭化水素基における水素原子の一部または全部が、水素原子以外の基または原子で置換されていることを意味する。
【0088】
Aにおける炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基は、芳香族性を持たない炭化水素基を意味する。
【0089】
Aにおける脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、通常は飽和であることが好ましい。
Aにおける脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。
【0090】
直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8がより好ましく、2〜5がさらに好ましく、2が最も好ましい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基[−(CH
2)
2−]、トリメチレン基[−(CH
2)
3−]、テトラメチレン基[−(CH
2)
4−]、ペンタメチレン基[−(CH
2)
5−]等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、具体的には、−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−等のアルキルエチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基などのアルキルアルキレン基等が挙げられる。アルキルアルキレン基におけるアルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましい。
鎖状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよく、有していなくてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0091】
環を含む脂肪族炭化水素基としては、環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子を2個除いた基)、該環状の脂肪族炭化水素基が前述した鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合するか又は鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基などが挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましい。
環状の脂肪族炭化水素基は、多環式基であってもよく、単環式基であってもよい。単環式基としては、炭素数3〜6のモノシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該モノシクロアルカンとしてはシクロペンタン、シクロヘキサン等が例示できる。
多環式基としては、炭素数7〜12のポリシクロアルカンから2個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとして具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
環状の脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5の低級アルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0092】
Aとしては、直鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状のアルキレン基がより好ましく、炭素数2〜5の直鎖状のアルキレン基がさらに好ましく、エチレン基が最も好ましい。
【0093】
Aにおける芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、1価の芳香族炭化水素基の芳香族炭化水素の核から水素原子をさらに1つ除いた2価の芳香族炭化水素基;当該2価の芳香族炭化水素基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等で、かつ、その芳香族炭化水素の核から水素原子をさらに1つ除いた芳香族炭化水素基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
【0094】
Bにおける炭化水素基としては、前記Aで挙げたものと同様の2価の炭化水素基が挙げられる。
Bとしては、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチレン基またはアルキルメチレン基が特に好ましい。
アルキルメチレン基におけるアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3の直鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0095】
構成単位(a1)として、より具体的には、下記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位が挙げられる。
【0096】
【化7】
[式中、X’は第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基を表し、Yは炭素数1〜5の低級アルキル基、または脂肪族環式基を表し;nは0〜3の整数を表し;Y
2は2価の連結基を表し;Rは前記と同じであり、R
1’、R
2’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。]
【0097】
前記式中、X’は、前記X
1において例示した第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基と同様のものが挙げられる。
R
1’、R
2’、n、Yとしては、それぞれ、上述の「アセタール型酸解離性溶解抑制基」の説明において挙げた一般式(p1)におけるR
1’、R
2’、n、Yと同様のものが挙げられる。
Y
2としては、上述の一般式(a1−0−2)におけるY
2と同様のものが挙げられる。
【0098】
以下に、上記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位の具体例を示す。
以下の各式中、R
αは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0107】
構成単位(a1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その中でも、一般式(a1−1)又は(a1−3)で表される構成単位が好ましく、具体的には、式(a1−1−1)〜(a1−1−4)、式(a1−1−16)〜(a1−1−17)、式(a1−1−20)〜(a1−1−23)、式(a1−1−26)、式(a1−1−32)〜(a1−1−33)および式(a1−3−25)〜(a1−3−28)からなる群から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。
さらに、構成単位(a1)としては、特に式(a1−1−1)〜(a1−1−3)および式(a1−1−26)の構成単位を包括する下記一般式(a1−1−01)で表されるもの;式(a1−1−16)〜(a1−1−17)、式(a1−1−20)〜(a1−1−23)および式(a1−1−32)〜(a1−1−33)の構成単位を包括する下記一般式(a1−1−02)で表されるもの;式(a1−3−25)〜(a1−3−26)の構成単位を包括する下記一般式(a1−3−01)で表されるもの、又は式(a1−3−27)〜(a1−3−28)の構成単位を包括する下記一般式(a1−3−02)で表されるものも好ましい。
【0108】
【化16】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を示し、R
11は炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【0109】
【化17】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を示し、R
12は炭素数1〜5のアルキル基を示す。n’は1〜6の整数を表す。)
【0110】
一般式(a1−1−01)において、Rについては上記と同様である。
R
11の炭素数1〜5のアルキル基は、Rにおける炭素数1〜5のアルキル基と同様であり、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0111】
一般式(a1−1−02)において、Rについては上記と同様である。
R
12の炭素数1〜5のアルキル基は、Rにおける炭素数1〜5のアルキル基と同様であり、メチル基又はエチル基が好ましく、エチル基が最も好ましい。
n’は、1又は2が好ましい。
【0112】
【化18】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を示し;R
14は炭素数1〜5のアルキル基であり、R
13は水素原子またはメチル基であり、a0は1〜10の整数である。)
【0113】
【化19】
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基を示し;R
14は炭素数1〜5のアルキル基であり、R
13は水素原子またはメチル基であり、a0は1〜10の整数であり、n’は1〜6の整数である。)
【0114】
前記一般式(a1−3−01)または(a1−3−02)において、Rについては上記と同様である。
R
13は、水素原子が好ましい。
R
14の炭素数1〜5のアルキル基は、Rにおける炭素数1〜5のアルキル基と同様であり、メチル基またはエチル基が好ましい。
a0は1〜8の整数が好ましく、2〜5の整数が特に好ましく、2が最も好ましい。
n’は上記と同様であり、1又は2が好ましい。
【0115】
(A1−1)成分中、構成単位(a1)の割合は、(A1−1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、25〜60モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際に容易にパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0116】
(構成単位(a2))
構成単位(a2)は、ラクトン含有環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
ここで、ラクトン含有環式基とは、−O−C(=O)−構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつの目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
構成単位(a2)のラクトン環式基は、(A1−1)成分をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めたり、水を含有する現像液との親和性を高めたりする上で有効なものである。
【0117】
構成単位(a2)としては、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。
具体的には、ラクトン含有単環式基としては、4〜6員環ラクトンから水素原子を1つ除いた基、たとえばβ−プロピオノラクトンから水素原子を1つ除いた基、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基、δ−バレロラクトンから水素原子を1つ除いた基が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。
【0118】
構成単位(a2)の例として、より具体的には、下記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位が挙げられる。
【0119】
【化20】
[式中、Rは水素原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;R’はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基または−COOR”であり、R”は水素原子またはアルキル基であり;R
29は単結合または2価の連結基であり、s”は0または1〜2の整数であり;A”は酸素原子もしくは硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1〜5のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子であり;mは0または1の整数である。]
【0120】
一般式(a2−1)〜(a2−5)におけるRは、前記構成単位(a1)におけるRと同様である。
R’の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
R’の炭素数1〜5のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
R’は、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
R”は、水素原子または炭素数1〜15の直鎖状、分岐鎖状もしくは環状のアルキル基であることが好ましい。
R”が直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の場合は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜5であることがさらに好ましい。
R”が環状のアルキル基の場合は、炭素数3〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
A”としては、炭素数1〜5のアルキレン基または−O−が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が最も好ましい。
R
29は単結合または2価の連結基である。2価の連結基としては、前記一般式(a1−0−2)中のY
2で説明した2価の連結基と同様であり、それらの中でも、アルキレン基、エステル結合(−C(=O)−O−)、もしくはそれらの組み合わせであることが好ましい。R
29における2価の連結基としてのアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基がより好ましい。具体的には、前記Y
2のうちAにおける脂肪族炭化水素基で挙げた直鎖状のアルキレン基、分岐鎖状のアルキレン基と同様のものが挙げられる。
s”は1〜2の整数が好ましい。
以下に、前記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位の具体例をそれぞれ例示する。
以下の各式中、R
αは、水素原子、メチル基またはトリフルオロメチル基を示す。
【0126】
(A1−1)成分において、構成単位(a2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
構成単位(a2)としては、前記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、一般式(a2−1)〜(a2−3)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。なかでも、化学式(a2−1−1)、(a2−1−2)、(a2−2−1)、(a2−2−7)、(a2−3−1)および(a2−3−5)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0127】
(A1−1)成分中の構成単位(a2)の割合は、(A1−1)成分を構成する全構成単位の合計に対して、5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることにより、構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0128】
(構成単位(a3))
構成単位(a3)は、極性基含有脂肪族炭化水素基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
(A1−1)成分が構成単位(a3)を有することにより、(A1−1)成分の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、環状の脂肪族炭化水素基(環式基)が挙げられる。該環式基としては、単環式基でも多環式基でもよく、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。該環式基としては多環式基であることが好ましく、炭素数は7〜30であることがより好ましい。
その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、またはアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから2個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの多環式基の中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基、ノルボルナンから2個以上の水素原子を除いた基、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0129】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基のときは、アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記の式(a3−1)で表される構成単位、式(a3−2)で表される構成単位、式(a3−3)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0130】
【化26】
(式中、Rは前記と同じであり、jは1〜3の整数であり、kは1〜3の整数であり、t’は1〜3の整数であり、lは1〜5の整数であり、sは1〜3の整数である。)
【0131】
式(a3−1)中、jは1又は2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。jが2の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位と5位に結合しているものが好ましい。jが1の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
jは1であることが好ましく、特に水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0132】
式(a3−2)中、kは1であることが好ましい。シアノ基は、ノルボルニル基の5位または6位に結合していることが好ましい。
【0133】
式(a3−3)中、t’は1であることが好ましい。lは1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。これらは、アクリル酸のカルボキシ基の末端に、2−ノルボルニル基または3−ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールは、ノルボルニル基の5又は6位に結合していることが好ましい。
【0134】
構成単位(a3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1−1)成分中、構成単位(a3)の割合は、当該(A1−1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、5〜50モル%であることが好ましく、10〜40モル%がより好ましい。下限値以上とすることにより、構成単位(a3)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0135】
(その他構成単位)
(A1−1)成分は、上記構成単位(a1)〜(a3)以外のその他構成単位を含んでいてもよい。
かかるその他構成単位は、上述の構成単位(a1)〜(a3)に分類されない構成単位であれば特に限定されるものではなく、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用等のレジスト用樹脂に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
その他構成単位としては、上記構成単位(a1)〜(a3)を誘導する化合物と共重合可能な化合物から誘導される構成単位が好ましく、たとえば、酸非解離性の脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(以下この構成単位を「構成単位(a4)」という。)が挙げられる。
【0136】
・構成単位(a4))について
構成単位(a4)は、酸非解離性の脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
(A1−1)成分が構成単位(a4)を有することにより、焦点深度幅(DOF)、解像性、露光余裕度(ELマージン)等のリソグラフィー特性が向上する。また、炭素密度の向上により、エッチング耐性も向上する。
該多環式基は、たとえば、前記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特に、トリシクロデシル基、アダマンチル基、テトラシクロドデシル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を置換基として有していてもよい。
構成単位(a4)として、具体的には、下記一般式(a4−1)〜(a4−5)で表される構造のものを例示することができる。
【0137】
【化27】
(式中、Rは前記と同じである。)
【0138】
構成単位(a4)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A1−1)成分が構成単位(a4)を有する場合、構成単位(a4)の割合は、当該(A1−1)成分を構成する全構成単位の合計に対し、1〜30モル%であることが好ましく、5〜20モル%がより好ましい。下限値以上とすることにより、構成単位(a4)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0139】
第一のレジスト材料において、(A1−1)成分は、構成単位(a1)を有する高分子化合物であることが好ましい。
かかる(A1−1)成分としては、たとえば、構成単位(a1)、(a2)および(a3)からなる共重合体;構成単位(a1)、(a2)、(a3)および(a4)からなる共重合体等が例示できる。
【0140】
(A1−1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A1−1)成分としては、特に下記の様な構成単位の組み合わせを含む共重合体が好ましい。
【0141】
【化28】
[式中、Rは前記と同じである。複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。R
11は上記式(a1−1−01)におけるR
11と同じである。]
【0142】
前記式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
R
11は、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0143】
(A1−1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。
また、(A1−1)成分には、上記重合の際に、たとえばHS−CH
2−CH
2−CH
2−C(CF
3)
2−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に−C(CF
3)
2−OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0144】
精製前の(A1−1)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されず、1000〜50000が好ましく、1500〜30000がより好ましく、2000〜20000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
また、精製前の(A1−1)成分の分散度(Mw/Mn)は1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.2〜2.5が最も好ましい。なお、Mnは数平均分子量であることを示す。
【0145】
第一のレジスト材料における基材成分として、(A1−1)成分に加えて、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する低分子化合物成分を用いる場合、当該低分子化合物成分は、分子量が500以上2000未満であって、上述の(A1−1)成分の説明で例示したような酸解離性溶解抑制基と親水性基とを有する低分子化合物を用いることが好ましい。具体的には、複数のフェノール骨格を有する化合物の水酸基の水素原子の一部が上記酸解離性溶解抑制基で置換されたものが挙げられる。
当該低分子化合物成分は、たとえば、非化学増幅型のg線やi線レジストにおける増感剤や、耐熱性向上剤として知られている低分子量フェノール化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性溶解抑制基で置換したものが好ましく、そのようなものから任意に用いることができる。
かかる低分子量フェノール化合物としては、たとえば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾールまたはキシレノールなどのフェノール類のホルマリン縮合物の2、3、4核体などが挙げられる。勿論これらに限定されるものではない。
酸解離性溶解抑制基も特に限定されず、上記したものが挙げられる。
当該低分子化合物成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0146】
[(A1−2)成分]
第一のレジスト材料が「ネガ型の化学増幅型レジスト組成物」である場合、(A1)成分は、アルカリ現像液に対して可溶性の樹脂(以下この第一のレジスト材料に用いられるアルカリ可溶性樹脂を「(A1−2)成分」という。)が用いられる。
かかるネガ型の化学増幅型レジスト組成物においては、基材成分として(A1−2)成分を用いるのに加えて、さらに、架橋剤成分(C)(以下「(C)成分」という。)を用いることが好ましい。
該ネガ型の化学増幅型レジスト組成物は、露光により(B)成分から酸が発生すると、当該酸が作用して(A1−2)成分と(C)成分との間で架橋が起こり、アルカリ現像液に対して難溶性へ変化する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ネガ型の化学増幅型レジスト組成物を基板上に塗布して得られるレジスト膜を選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ現像液に対して可溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することによりレジストパターンが形成できる。
【0147】
(A1−2)成分は、たとえば、特開2000−206694号公報に開示されている、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、またはα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸のアルキルエステル(好ましくは炭素数1〜5のアルキルエステル)から選ばれる少なくとも一つから誘導される単位を有する樹脂;米国特許6949325号公報に開示されている、スルホンアミド基を有する(メタ)アクリル樹脂またはポリシクロオレフィン樹脂;米国特許6949325号公報、特開2005−336452号公報、特開2006−317803号公報に開示されている、フッ素化アルコールを含有する(メタ)アクリル樹脂;特開2006−259582号公報に開示されている、フッ素化アルコールを有するポリシクロオレフィン樹脂等が、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。
なお、前記α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸は、カルボキシ基が結合するα位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸と、このα位の炭素原子にヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基)が結合しているα−ヒドロキシアルキルアクリル酸の一方または両方を示す。
【0148】
第一のレジスト材料中、(A1)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0149】
<(S1)成分>
(S1)成分としては、(A1)成分を溶解するものであり、均一な溶液として第一のレジスト材料を調製することができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
(S1)成分のなかで好適なものとしては、たとえば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0150】
(S1)成分は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
なかでも、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)が好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよく、1:9〜9:1の範囲内とすることが好ましく、2:8〜8:2の範囲内とすることがより好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
また、(S1)成分として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
【0151】
(S1)成分の使用量は、特に限定されるものではなく、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定され、一般的には、第一のレジスト材料の固形分濃度が0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0152】
<(B)成分>
第一のレジスト材料において、(B)成分は、特に限定されず、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。
このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキル又はビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
オニウム塩系酸発生剤としては、例えば下記一般式(b−1)又は(b−2)で表される化合物を用いることができる。
【0153】
【化29】
[式中、R
1”〜R
3”,R
5”〜R
6”は、それぞれ独立に、アリール基またはアルキル基を表し;式(b−1)におけるR
1”〜R
3”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよく;R
4”は、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、またはアルケニル基を表し;R
1”〜R
3”のうち少なくとも1つはアリール基を表し、R
5”〜R
6”のうち少なくとも1つはアリール基を表す。]
【0154】
式(b−1)中、R
1”〜R
3”は、それぞれ独立に、アリール基またはアルキル基を表す。なお、式(b−1)におけるR
1”〜R
3”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。
また、R
1”〜R
3”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R
1”〜R
3”のうち、2以上がアリール基であることが好ましく、R
1”〜R
3”のすべてがアリール基であることが最も好ましい。
【0155】
R
1”〜R
3”のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部または全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基等で置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていてもよいハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0156】
R
1”〜R
3”のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
【0157】
式(b−1)におけるR
1”〜R
3”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、イオウ原子を含めて3〜10員環を形成していることが好ましく、5〜7員環を形成していることが特に好ましい。
式(b−1)におけるR
1”〜R
3”のうち、いずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、残りの1つは、アリール基であることが好ましい。前記アリール基は、前記R
1”〜R
3”のアリール基と同様のものが挙げられる。
【0158】
式(b−1)で表される化合物のカチオン部の好ましいものとしては、トリフェニルメタン骨格を有する、下記式(I−1−1)〜(I−1−8)で表されるカチオンが挙げられる。
【0160】
また、オニウム塩系酸発生剤のカチオン部としては、下記式(I−1−9)〜(I−1−10)で表されるカチオンも好ましい。
下記式(I−1−9)〜(I−1−10)中、R
27、R
39は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基又は炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、水酸基である。
vは1〜3の整数であり、1または2が最も好ましい。
【0162】
R
4”は、置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、またはアルケニル基を表す。
R
4”におけるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基は、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
R
4”におけるハロゲン化アルキル基としては、前記直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
ハロゲン化アルキル基においては、当該ハロゲン化アルキル基に含まれるハロゲン原子および水素原子の合計数に対するハロゲン原子の数の割合(ハロゲン化率(%))が、10〜100%であることが好ましく、50〜100%であることが好ましく、100%が最も好ましい。該ハロゲン化率が高いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。
前記R
4”におけるアリール基は、炭素数6〜20のアリール基であることが好ましい。
前記R
4”におけるアルケニル基は、炭素数2〜10のアルケニル基であることが好ましい。
前記R
4”において、「置換基を有していてもよい」とは、前記直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、またはアルケニル基における水素原子の一部または全部が置換基(水素原子以外の他の原子または基)で置換されていてもよいことを意味する。
R
4”における置換基の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0163】
前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヘテロ原子、アルキル基、式:X−Q
1−[式中、Q
1は酸素原子を含む2価の連結基であり、Xは置換基を有していてもよい炭素数3〜30の炭化水素基である。]で表される基等が挙げられる。
前記ハロゲン原子、アルキル基としては、R
4”において、ハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子、アルキル基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
前記ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0164】
X−Q
1−で表される基において、Q
1は、酸素原子を含む2価の連結基である。
Q
1は、酸素原子以外の原子を含有してもよい。酸素原子以外の原子としては、たとえば炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
酸素原子を含む2価の連結基としては、たとえば、酸素原子(エーテル結合;−O−)、エステル結合(−C(=O)−O−)、アミド結合(−C(=O)−NH−)、カルボニル基(−C(=O)−)、カーボネート結合(−O−C(=O)−O−)等の非炭化水素系の酸素原子含有連結基;該非炭化水素系の酸素原子含有連結基とアルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。
該組み合わせとしては、たとえば、−R
91−O−、−R
92−O−C(=O)−、−C(=O)−O−R
93−O−C(=O)−(式中、R
91〜R
93はそれぞれ独立にアルキレン基である。)等が挙げられる。
R
91〜R
93におけるアルキレン基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基の炭素数は、1〜12が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。
該アルキレン基として、具体的には、たとえばメチレン基[−CH
2−];−CH(CH
3)−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
2CH
3)
2−等のアルキルメチレン基;エチレン基[−CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−等のアルキルエチレン基;トリメチレン基(n−プロピレン基)[−CH
2CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−等のアルキルトリメチレン基;テトラメチレン基[−CH
2CH
2CH
2CH
2−];−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等のアルキルテトラメチレン基;ペンタメチレン基[−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−]等が挙げられる。
Q
1としては、エステル結合またはエーテル結合を含む2価の連結基が好ましく、なかでも、−R
91−O−、−R
92−O−C(=O)−または−C(=O)−O−R
93−O−C(=O)−が好ましい。
【0165】
X−Q
1−で表される基において、Xの炭化水素基は、芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基であってもよい。
【0166】
芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素環から水素原子を1つ除いたアリール基、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。前記アリールアルキル基中のアルキル鎖の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0167】
該芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基が有する芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、当該芳香族炭化水素基が有する芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。
前者の例としては、前記アリール基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基、前記アリールアルキル基中の芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部が前記ヘテロ原子で置換されたヘテロアリールアルキル基等が挙げられる。
後者の例における芳香族炭化水素基の置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記芳香族炭化水素基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0168】
Xにおける脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
Xにおいて、脂肪族炭化水素基は、当該脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、当該脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部または全部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよい。
Xにおける「ヘテロ原子」としては、炭素原子および水素原子以外の原子であれば特に限定されず、たとえばハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む置換基は、前記ヘテロ原子のみからなるものであってもよく、前記ヘテロ原子以外の基または原子を含む基であってもよい。
炭素原子の一部を置換する置換基として、具体的には、たとえば−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hがアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい)、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−等が挙げられる。脂肪族炭化水素基が環状である場合、これらの置換基を環構造中に含んでいてもよい。
水素原子の一部または全部を置換する置換基として、具体的には、たとえばアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、シアノ基等が挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0169】
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和炭化水素基、直鎖状もしくは分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基、または環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族環式基)が好ましい。
直鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)としては、炭素数が1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等が挙げられる。
分岐鎖状の飽和炭化水素基(アルキル基)としては、炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましく、3〜10が最も好ましい。具体的には、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0170】
不飽和炭化水素基としては、炭素数が2〜10であることが好ましく、2〜5が好ましく、2〜4が好ましく、3が特に好ましい。直鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。分岐鎖状の1価の不飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
不飽和炭化水素基としては、上記の中でも、特にプロペニル基が好ましい。
【0171】
脂肪族環式基としては、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。その炭素数は3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。
具体的には、たとえば、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含まない場合は、脂肪族環式基としては、多環式基が好ましく、ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましく、アダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が最も好ましい。
脂肪族環式基が、その環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含むものである場合、該ヘテロ原子を含む置換基としては、−O−、−C(=O)−O−、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−が好ましい。かかる脂肪族環式基の具体例としては、たとえば下記式(L1)〜(L5)、(S1)〜(S4)で表される基等が挙げられる。
【0172】
【化32】
[式中、Q”は炭素数1〜5のアルキレン基、−O−、−S−、−O−R
94−または−S−R
95−であり、R
94およびR
95はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であり、mは0または1の整数である。]
【0173】
式中、Q”、R
94およびR
95におけるアルキレン基としては、それぞれ、前記R
91〜R
93におけるアルキレン基と同様のものが挙げられる。
これらの脂肪族環式基は、その環構造を構成する炭素原子に結合した水素原子の一部が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが特に好ましい。
前記アルコキシ基、ハロゲン原子はそれぞれ前記水素原子の一部または全部を置換する置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0174】
上記のなかでも、かかるXとしては、置換基を有していてもよい環式基であることが好ましい。該環式基は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であってもよく、置換基を有していてもよい脂肪族環式基であることが好ましい。
前記芳香族炭化水素基としては、置換基を有していてもよいナフチル基、または置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。
置換基を有していてもよい脂肪族環式基としては、置換基を有していてもよい多環式の脂肪族環式基が好ましい。該多環式の脂肪族環式基としては、前記ポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基、前記(L2)〜(L5)、(S3)〜(S4)で表される基等が好ましい。
【0175】
また、Xは、リソグラフィー特性、レジストパターン形状がより向上することから、極性部位を有するものが特に好ましい。
極性部位を有するものとしては、たとえば、上述したXの脂肪族環式基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基、すなわち、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hがアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい)、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−等、で置換されたものが挙げられる。
【0176】
R
4”は、置換基としてX−Q
1−を有することが好ましい。この場合、R
4”としては、X−Q
1−Y
1−[式中、Q
1およびXは前記と同じであり、Y
1は置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレン基または置換基を有していてもよい炭素数1〜4のフッ素化アルキレン基である。]で表される基が好ましい。
X−Q
1−Y
1−で表される基において、Y
1のアルキレン基としては、前記Q
1で挙げたアルキレン基のうち炭素数1〜4のものと同様のものが挙げられる。
Y
1のフッ素化アルキレン基としては、該アルキレン基の水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
Y
1として、具体的には、−CF
2−、−CF
2CF
2−、−CF
2CF
2CF
2−、−CF(CF
3)CF
2−、−CF(CF
2CF
3)−、−C(CF
3)
2−、−CF
2CF
2CF
2CF
2−、−CF(CF
3)CF
2CF
2−、−CF
2CF(CF
3)CF
2−、−CF(CF
3)CF(CF
3)−、−C(CF
3)
2CF
2−、−CF(CF
2CF
3)CF
2−、−CF(CF
2CF
2CF
3)−、−C(CF
3)(CF
2CF
3)−;−CHF−、−CH
2CF
2−、−CH
2CH
2CF
2−、−CH
2CF
2CF
2−、−CH(CF
3)CH
2−、−CH(CF
2CF
3)−、−C(CH
3)(CF
3)−、−CH
2CH
2CH
2CF
2−、−CH
2CH
2CF
2CF
2−、−CH(CF
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CF
3)CH
2−、−CH(CF
3)CH(CF
3)−、−C(CF
3)
2CH
2−;−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
2CH
3)−、−C(CH
3)
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2−、−CH(CH
3)CH(CH
3)−、−C(CH
3)
2CH
2−、−CH(CH
2CH
3)CH
2−、−CH(CH
2CH
2CH
3)−、−C(CH
3)(CH
2CH
3)−等が挙げられる。
【0177】
Y
1としては、フッ素化アルキレン基が好ましく、特に、隣接する硫黄原子に結合する炭素原子がフッ素化されているフッ素化アルキレン基が好ましい。このようなフッ素化アルキレン基としては、−CF
2−、−CF
2CF
2−、−CF
2CF
2CF
2−、−CF(CF
3)CF
2−、−CF
2CF
2CF
2CF
2−、−CF(CF
3)CF
2CF
2−、−CF
2CF(CF
3)CF
2−、−CF(CF
3)CF(CF
3)−、−C(CF
3)
2CF
2−、−CF(CF
2CF
3)CF
2−;−CH
2CF
2−、−CH
2CH
2CF
2−、−CH
2CF
2CF
2−;−CH
2CH
2CH
2CF
2−、−CH
2CH
2CF
2CF
2−、−CH
2CF
2CF
2CF
2−等を挙げることができる。
これらの中でも、−CF
2−、−CF
2CF
2−、−CF
2CF
2CF
2−、又はCH
2CF
2CF
2−が好ましく、−CF
2−、−CF
2CF
2−又は−CF
2CF
2CF
2−がより好ましく、−CF
2−が特に好ましい。
【0178】
前記アルキレン基またはフッ素化アルキレン基は、置換基を有していてもよい。アルキレン基またはフッ素化アルキレン基が「置換基を有する」とは、当該アルキレン基またはフッ素化アルキレン基における水素原子またはフッ素原子の一部または全部が、水素原子およびフッ素原子以外の原子または基で置換されていることを意味する。
アルキレン基またはフッ素化アルキレン基が有していてもよい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
【0179】
前記式(b−2)中、R
5”〜R
6”は、それぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。R
5”〜R
6”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R
5”〜R
6”のすべてが、アリール基であることが好ましい。
R
5”〜R
6”のアリール基としては、R
1”〜R
3”のアリール基と同様のものが挙げられる。
R
5”〜R
6”のアルキル基としては、R
1”〜R
3”のアルキル基と同様のものが挙げられる。
これらの中で、R
5”〜R
6”は、すべてフェニル基であることが最も好ましい。
式(b−2)中のR
4”としては、上記式(b−1)におけるR
4”と同様のものが挙げられる。
【0180】
式(b−1)、(b−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニル(1−(4−メトキシ)ナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジ(1−ナフチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−フェニルテトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メチルフェニル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−エトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−フェニルテトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート;1−(4−メチルフェニル)テトラヒドロチオピラニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。
【0181】
また、これらのオニウム塩のアニオン部を、メタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネート、1−アダマンタンスルホネート、2−ノルボルナンスルホネート等のアルキルスルホネート;d−カンファー−10−スルホネート、ベンゼンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート等のスルホネートにそれぞれ置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0182】
また、これらのオニウム塩のアニオン部を、下記式(b1)〜(b8)のいずれかで表されるアニオンに置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0183】
【化33】
[式中、yは1〜3の整数であり、q1〜q2はそれぞれ独立に1〜5の整数であり、q3は1〜12の整数であり、t3は1〜3の整数であり、r1〜r2はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、jは1〜20の整数であり、R
50は置換基であり、m1〜m5はそれぞれ独立に0または1であり、v0〜v5はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、w1〜w5はそれぞれ独立に0〜3の整数であり、Q”は前記と同じである。]
【0184】
R
50の置換基としては、前記Xにおいて、脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基、芳香族炭化水素基が有していてもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
R
50に付された符号(r1〜r2、w1〜w5)が2以上の整数である場合、当該化合物中の複数のR
50はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0185】
また、オニウム塩系酸発生剤としては、前記一般式(b−1)又は(b−2)において、アニオン部(R
4”SO
3−)を下記一般式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオンに置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は前記式(b−1)又は(b−2)におけるカチオン部と同様)。
【0186】
【化34】
[式中、X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基を表し;Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0187】
X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは炭素数3〜5、最も好ましくは炭素数3である。
Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。
X”のアルキレン基の炭素数またはY”、Z”のアルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
また、X”のアルキレン基またはY”、Z”のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。
該アルキレン基またはアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
【0188】
また、オニウム塩系酸発生剤としては、前記一般式(b−1)又は(b−2)において、アニオン部(R
4”SO
3−)を、R
a−COO
−[式中、R
aはアルキル基又はフッ素化アルキル基である。]に置き換えたオニウム塩系酸発生剤も用いることができる(カチオン部は前記式(b−1)又は(b−2)におけるカチオン部と同様)。
前記式中、R
aとしては、前記R
4”と同様のものが挙げられる。
上記「R
a−COO
−」の具体例としては、たとえばトリフルオロ酢酸イオン、酢酸イオン、1−アダマンタンカルボン酸イオン等が挙げられる。
【0189】
また、下記一般式(b−5)または(b−6)で表されるカチオン部を有するスルホニウム塩をオニウム塩系酸発生剤として用いることもできる。
【0190】
【化35】
[式中、R
81〜R
86はそれぞれ独立してアルキル基、アセチル基、アルコキシ基、カルボキシ基、水酸基またはヒドロキシアルキル基であり;n
1〜n
5はそれぞれ独立して0〜3の整数であり、n
6は0〜2の整数である。]
【0191】
R
81〜R
86において、アルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、なかでも直鎖または分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、又はtert−ブチル基であることが特に好ましい。
アルコキシ基は、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、なかでも直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
ヒドロキシアルキル基は、上記アルキル基中の一個又は複数個の水素原子がヒドロキシ基に置換した基が好ましく、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
R
81〜R
86に付された符号n
1〜n
6が2以上の整数である場合、複数のR
81〜R
86はそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
n
1は、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
n
2およびn
3は、好ましくはそれぞれ独立して0又は1であり、より好ましくは0である。
n
4は、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0又は1である。
n
5は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
n
6は、好ましくは0又は1であり、より好ましくは1である。
【0192】
式(b−5)または(b−6)で表されるカチオン部を有するスルホニウム塩のアニオン部は、特に限定されず、これまで提案されているオニウム塩系酸発生剤のアニオン部と同様のものであってよい。かかるアニオン部としては、たとえば上記一般式(b−1)または(b−2)で表されるオニウム塩系酸発生剤のアニオン部(R
4”SO
3−)等のフッ素化アルキルスルホン酸イオン;上記一般式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオン等が挙げられる。
【0193】
本明細書において、オキシムスルホネート系酸発生剤とは、下記一般式(B−1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物であって、放射線の照射(露光)によって酸を発生する特性を有するものである。この様なオキシムスルホネート系酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物用として多用されているので、任意に選択して用いることができる。
【0194】
【化36】
(式(B−1)中、R
31、R
32はそれぞれ独立に有機基を表す。)
【0195】
R
31、R
32の有機基は、炭素原子を含む基であり、炭素原子以外の原子(たとえば水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等)を有していてもよい。
R
31の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。これらのアルキル基、アリール基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、特に制限はなく、たとえばフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。ここで、「置換基を有する」とは、アルキル基またはアリール基の水素原子の一部若しくは全部が置換基で置換されていることを意味する。
アルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。アルキル基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基(以下、ハロゲン化アルキル基ということがある)が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。すなわち、ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
アリール基は、炭素数4〜20が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数6〜10が最も好ましい。アリール基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアリール基が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味し、完全にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味する。
R
31としては、特に、置換基を有さない炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好ましい。
R
32の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、アリール基またはシアノ基が好ましい。R
32のアルキル基、アリール基としては、前記R
31で挙げたアルキル基、アリール基と同様のものが挙げられる。
R
32としては、特に、シアノ基、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜8のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0196】
オキシムスルホネート系酸発生剤として、さらに好ましいものとしては、下記一般式(B−2)または(B−3)で表される化合物が挙げられる。
【0197】
【化37】
[式(B−2)中、R
33は、シアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R
34はアリール基である。R
35は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。]
【0198】
【化38】
[式(B−3)中、R
36はシアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R
37は2または3価の芳香族炭化水素基である。R
38は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。p”は2または3である。]
【0199】
前記一般式(B−2)において、R
33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
R
33としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
R
33におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが特に好ましい。
R
34のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、およびこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等が挙げられる。これらのなかでも、フルオレニル基が好ましい。
R
34のアリール基は、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。該置換基におけるアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい。また、該ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
R
35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
R
35としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
R
35におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが、発生する酸の強度が高まるため特に好ましい。最も好ましくは、水素原子が100%フッ素置換された完全フッ素化アルキル基である。
【0200】
前記一般式(B−3)において、R
36の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R
33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
R
37の2または3価の芳香族炭化水素基としては、上記R
34のアリール基からさらに1または2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
R
38の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R
35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
p”は、好ましくは2である。
【0201】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロ−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−クロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−チエン−2−イルアセトニトリル、α−(4−ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−[(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−(トシルオキシイミノ)−4−チエニルシアニド、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘプテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロオクテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−エチルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−プロピルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロペンチルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。
また、特開平9−208554号公報(段落[0012]〜[0014]の[化18]〜[化19])に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤、国際公開第04/074242号パンフレット(65〜85頁目のExample1〜40)に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、好適なものとして以下のものを例示することができる。
【0203】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、特開平11−035551号公報、特開平11−035552号公報、特開平11−035573号公報に開示されているジアゾメタン系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、特開平11−322707号公報に開示されている、1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカンなどを挙げることができる。
【0204】
(B)成分は、上述した酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、(B)成分としては、前記式(b−1)におけるアニオン部(R
4”SO
3−)、前記式(b−3)で表されるアニオンをアニオン部に有するオニウム塩系酸発生剤を用いることが好ましい。
第一のレジスト材料中、(B)成分の含有量は、(A1)成分100質量部に対し、0.5〜50質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましい。上記範囲とすることでパターン形成が充分に行われる。また、均一な溶液が得られ、保存安定性が良好となるため好ましい。
【0205】
<任意成分>
[(C)成分]
第一のレジスト材料が「ネガ型の化学増幅型レジスト組成物」である場合、第一のレジスト材料は、基材成分として上記(A1−2)成分を含有し、さらに、架橋剤成分((C)成分)を含有することが好ましい。
(C)成分としては、特に限定されず、これまでに知られている化学増幅型のネガ型レジスト組成物に用いられている架橋剤の中から任意に選択して用いることができる。
具体的には、例えば2,3−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチルノルボルナン、2−ヒドロキシ−5,6−ビス(ヒドロキシメチル)ノルボルナン、シクロヘキサンジメタノール、3,4,8(又は9)−トリヒドロキシトリシクロデカン、2−メチル−2−アダマンタノール、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンなどのヒドロキシル基又はヒドロキシアルキル基あるいはその両方を有する脂肪族環状炭化水素又はその含酸素誘導体が挙げられる。
【0206】
また、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、グリコールウリルなどのアミノ基含有化合物にホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドと低級アルコールを反応させ、該アミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基又は低級アルコキシメチル基で置換した化合物、エポキシ基を有する化合物が挙げられる。
これらのうち、メラミンを用いたものをメラミン系架橋剤、尿素を用いたものを尿素系架橋剤、エチレン尿素、プロピレン尿素等のアルキレン尿素を用いたものをアルキレン尿素系架橋剤、グリコールウリルを用いたものをグリコールウリル系架橋剤、エポキシ基を有する化合物を用いたものをエポキシ系架橋剤という。
(C)成分としては、メラミン系架橋剤、尿素系架橋剤、アルキレン尿素系架橋剤、グリコールウリル系架橋剤、およびエポキシ系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特にグリコールウリル系架橋剤が好ましい。
【0207】
メラミン系架橋剤としては、メラミンとホルムアルデヒドとを反応させて、アミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基で置換した化合物、メラミンとホルムアルデヒドと低級アルコールとを反応させて、アミノ基の水素原子を低級アルコキシメチル基で置換した化合物等が挙げられる。具体的には、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシブチルメラミン等が挙げられ、なかでもヘキサメトキシメチルメラミンが好ましい。
【0208】
尿素系架橋剤としては、尿素とホルムアルデヒドとを反応させて、アミノ基の水素原子をヒドロキシメチル基で置換した化合物、尿素とホルムアルデヒドと低級アルコールとを反応させて、アミノ基の水素原子を低級アルコキシメチル基で置換した化合物等が挙げられる。具体的には、ビスメトキシメチル尿素、ビスエトキシメチル尿素、ビスプロポキシメチル尿素、ビスブトキシメチル尿素等が挙げられ、なかでもビスメトキシメチル尿素が好ましい。
【0209】
アルキレン尿素系架橋剤としては、下記一般式(C−1)で表される化合物が挙げられる。
【0210】
【化40】
[式(C−1)中、R
5’とR
6’はそれぞれ独立に水酸基又は低級アルコキシ基であり、R
3’とR
4’はそれぞれ独立に水素原子、水酸基又は低級アルコキシ基であり、wは0又は1〜2の整数である。]
【0211】
R
5’とR
6’が低級アルコキシ基であるとき、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基であり、直鎖状でもよく分岐状でもよい。R
5’とR
6’は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。同じであることがより好ましい。
R
3’とR
4’が低級アルコキシ基であるとき、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基であり、直鎖状でもよく分岐状でもよい。R
3’とR
4’は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。同じであることがより好ましい。
wは、0又は1〜2の整数であり、好ましくは0又は1である。
アルキレン尿素系架橋剤としては、特に、wが0である化合物(エチレン尿素系架橋剤)および/またはwが1である化合物(プロピレン尿素系架橋剤)が好ましい。
【0212】
上記一般式(C−1)で表される化合物は、アルキレン尿素とホルマリンを縮合反応させることにより、また、この生成物を低級アルコールと反応させることにより得ることができる。
【0213】
アルキレン尿素系架橋剤の具体例としては、例えば、モノ及び/又はジヒドロキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジメトキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジエトキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジプロポキシメチル化エチレン尿素、モノ及び/又はジブトキシメチル化エチレン尿素等のエチレン尿素系架橋剤;モノ及び/又はジヒドロキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジメトキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジエトキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジプロポキシメチル化プロピレン尿素、モノ及び/又はジブトキシメチル化プロピレン尿素等のプロピレン尿素系架橋剤;1,3−ジ(メトキシメチル)4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリジノン、1,3−ジ(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリジノンなどを挙げられる。
【0214】
グリコールウリル系架橋剤としては、N位がヒドロキシアルキル基および炭素数1〜4のアルコキシアルキル基の一方又は両方で置換されたグリコールウリル誘導体が挙げられる。かかるグリコールウリル誘導体は、グリコールウリルとホルマリンとを縮合反応させることにより、また、この生成物を低級アルコールと反応させることにより得ることができる。
グリコールウリル系架橋剤の具体例としては、例えばモノ,ジ,トリ及び/又はテトラヒドロキシメチル化グリコールウリル;モノ,ジ,トリ及び/又はテトラメトキシメチル化グリコールウリル;モノ,ジ,トリ及び/又はテトラエトキシメチル化グリコールウリル;モノ,ジ,トリ及び/又はテトラプロポキシメチル化グリコールウリル;モノ,ジ,トリ及び/又はテトラブトキシメチル化グリコールウリルなどが挙げられる。
【0215】
エポキシ系架橋剤としては、エポキシ基を有するものであれば特に限定されず、任意に選択して用いることができる。その中でも、エポキシ基を2つ以上有するものが好ましい。エポキシ基を2つ以上有することにより、架橋反応性が向上する。
エポキシ基の数は、2つ以上であることが好ましく、より好ましくは2〜4つであり、最も好ましくは2つである。
エポキシ系架橋剤として好適なものを以下に示す。
【0217】
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第一のレジスト材料中、(C)成分の含有量は、(A1)成分100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましく、3〜30質量部がより好ましく、3〜15質量部がさらに好ましく、5〜10質量部が最も好ましい。(C)成分の含有量が下限値以上であると、架橋形成が充分に進行し、膨潤の少ない良好なレジストパターンが得られる。また、この上限値以下であると、レジスト塗布液の保存安定性が良好であり、感度の経時的劣化が抑制される。
【0218】
[(D)成分]
第一のレジスト材料は、任意の成分として、さらに、含窒素有機化合物成分(D)(以下「(D)成分」という。)を含有することが好ましい。
この(D)成分は、酸拡散制御剤、すなわち露光により前記(B)成分から発生する酸をトラップするクエンチャーとして作用するものであれば特に限定されず、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いればよい。なかでも、脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが好ましい。
脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1〜12であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、アンモニアNH
3の水素原子の少なくとも1つを、炭素数12以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンまたはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−ペンチルアミン又はトリ−n−オクチルアミンが特に好ましい。
【0219】
環式アミンとしては、たとえば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0220】
(D)成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第一のレジスト材料中、(D)成分は、(A1)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。上記範囲とすることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等が向上する。
【0221】
[(E)成分]
第一のレジスト材料には、感度劣化の防止や、レジストパターン形状、引き置き経時安定性等の向上の目的で、任意の成分として、有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(E)(以下「(E)成分」という。)を含有させることができる。
有機カルボン酸としては、たとえば、酢酸、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸としては、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられ、これらの中でもホスホン酸が特に好ましい。
リンのオキソ酸の誘導体としては、たとえば、上記オキソ酸の水素原子を炭化水素基で置換したエステル等が挙げられ、前記炭化水素基としては、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基等が挙げられる。
リン酸の誘導体としては、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸エステルなどが挙げられる。
ホスホン酸の誘導体としては、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸エステルなどが挙げられる。
ホスフィン酸の誘導体としては、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸エステルなどが挙げられる。
(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(E)成分としては、有機カルボン酸が好ましく、サリチル酸が特に好ましい。
第一のレジスト材料中、(E)成分は、(A1)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0222】
第一のレジスト材料には、さらに所望により混和性のある添加剤、たとえばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0223】
第一のレジスト材料に配合される成分の(S1)成分への溶解は、たとえば、上記各成分を通常の方法で混合、撹拌するだけでも行うことができ、また、必要に応じてディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用いて分散、混合させてもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いてろ過してもよい。
【0224】
(第二のレジスト材料)
第二のレジスト材料は、樹脂(A2)と、該樹脂(A2)を溶解し且つ前記樹脂(A1)を溶解しない有機溶剤(S2)(以下「(S2)成分」ともいう。)とを含有し、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化するものである。
かかる第二のレジスト材料は、露光により酸を発生する酸発生剤を含有する化学増幅型レジスト組成物であることが好ましく、具体的には、前記樹脂(A2)(以下「(A2)成分」という。)として、前記酸発生剤から発生する酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が変化する樹脂と、該樹脂(A2)を溶解し且つ前記樹脂(A1)を溶解しない有機溶剤(S2)((S2)成分)と、前記酸発生剤とを含有するものが好適なものとして挙げられる。
また、第二のレジスト材料は、(A2)成分、(S2)成分及び酸発生剤以外に、任意成分として架橋剤成分((C)成分)、含窒素有機化合物成分((D)成分);有機カルボン酸、並びにリンのオキソ酸及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の化合物((E)成分)を含有してもよい。
第二のレジスト材料に含有してもよい酸発生剤、(C)成分、(D)成分及び(E)成分としては、第一のレジスト材料における(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分についての説明で例示したものと同様のものが挙げられる。
かかる第二のレジスト材料は、ネガ型レジスト組成物であってもよく、ポジ型レジスト組成物であってもよい。第二のレジスト材料をネガ型又はポジ型のいずれの型とするかについては、所望とするパターン形状や、第一のレジスト材料との組合せ等の点から適宜決定すればよい。
【0225】
<(A2)成分>
(A2)成分は、有機溶剤(S2)及び有機溶剤(W)のいずれにも溶解するものであり、これまで化学増幅型レジスト用の基材成分として用いられている高分子化合物(樹脂)を1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0226】
本発明における第二のレジスト材料が「ポジ型の化学増幅型レジスト組成物」である場合、(A2)成分は、酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂(以下「(A2−1)成分」という。)が用いられる。
該(A2−1)成分は、露光前はアルカリ現像液に対して難溶性であり、露光により前記酸発生剤から酸が発生すると、該酸の作用によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ポジ型の化学増幅型レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性から可溶性に変化する一方で、未露光部はアルカリ難溶性のまま変化しないため、アルカリ現像することによりレジストパターンが形成できる。
【0227】
第二のレジスト材料が「ポジ型の化学増幅型レジスト組成物」である場合、基材成分として、(A2−1)成分に加えて、上述した低分子化合物成分を用いてもよい。
【0228】
[(A2−1)成分]
(A2−1)成分としては、通常、化学増幅型レジスト用の基材成分として用いられている樹脂成分(ベース樹脂)を1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
(A2−1)成分のなかで好適なものとしては、アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有するもの、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位を有するものが挙げられ、アクリル酸エステルから誘導される構成単位を有するものがより好ましい。
かかるアクリル酸エステルから誘導される構成単位としては、たとえば、前記の構成単位(a1)〜(a4)、後述の構成単位(a5)が挙げられる。
ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位としては、たとえば、後述の構成単位(a6)が挙げられる。
また、スチレンから誘導される構成単位(たとえば、後述の構成単位(a7))を有してもよい。
【0229】
ここで、本明細書及び本特許請求の範囲において「ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレンのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ヒドロキシスチレン」とは、ヒドロキシスチレン、及びヒドロキシスチレンのα位の水素原子がアルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。なお、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位のα位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことを意味する。
ヒドロキシスチレンにおいて、α位の置換基としてのアルキル基として、具体的には炭素数1〜5のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
「スチレンから誘導される構成単位」とは、スチレンのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
本明細書において、「スチレン」とは、スチレンおよびスチレンのα位の水素原子がアルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体(ただし、上記ヒドロキシスチレンを除く。)を含む概念とする。また、フェニル基の水素原子が炭素数1〜5のアルキル基等の置換基で置換されたもの等も包含するものとする。
【0230】
(構成単位(a1)〜(a4))
構成単位(a1)〜(a4)は、上述した(A1−1)成分における構成単位(a1)〜(a4)と同じである。また、各構成単位の好ましいもの、及び(A2−1)成分中の各構成単位の含有割合についても、(A1−1)成分における場合の説明とそれぞれ同様である。
【0231】
(構成単位(a5))
構成単位(a5)は、下記一般式(a5−1)で表される構成単位である。
【0232】
【化42】
[式(a5−1)中、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基であり;Y
5は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基であり、Zは1価の有機基であり;aは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数であり、かつ、a+b=1〜3であり;c、d、eはそれぞれ独立して0〜3の整数である。]
【0233】
前記式(a5−1)中、前記構成単位(a1)におけるRと同様である。なかでも、Rとしては、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0234】
前記式(a5−1)中、Y
5は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である。
Y
5における脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
ここで、本明細書および本特許請求の範囲において、「脂肪族炭化水素基」は、芳香族性を持たない脂肪族炭化水素基であることを示す。
また、「置換基を有していてもよい」とは、当該脂肪族炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよく、当該脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部または全部がヘテロ原子を含む置換基で置換されていてもよいことを意味する。
Y
5における「ヘテロ原子」としては、炭素原子および水素原子以外の原子であれば特に限定されず、たとえばハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を含む置換基は、前記ヘテロ原子のみからなるものであってもよく、前記ヘテロ原子と前記ヘテロ原子以外の基若しくは原子とを含む基であってもよい。具体的には、たとえば−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−NH−(Hがアルキル基、アシル基等の置換基で置換されていてもよい)、−S−、−S(=O)
2−、−S(=O)
2−O−等が挙げられる。脂肪族炭化水素基が環状である場合、これらの置換基を環構造中に含んでいてもよい。
当該脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部または全部を置換する置換基として、具体的には、たとえばアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、シアノ基、アルキル基等が挙げられる。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等のアルキル基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
前記アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基(低級アルキル基)、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0235】
Y
5が直鎖状、分岐鎖状の脂肪族炭化水素基である場合、炭素数は1〜10が好ましく、1〜5がさらに好ましく、1〜3が最も好ましい。具体的には、鎖状のアルキレン基が好適なものとして挙げられる。
【0236】
Y
5が環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族環式基)である場合、脂肪族環式基の置換基を除いた基本の環(脂肪族環)の構造は、炭素および水素からなる環(炭化水素環)であることに限定はされず、その環(脂肪族環)の構造中に酸素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。また、「炭化水素環」は飽和、不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。
脂肪族環式基は、多環式基、単環式基のいずれでもよい。脂肪族環式基としては、例えば、低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
また、当該脂肪族環式基としては、例えば、低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいテトラヒドロフラン、テトラヒドロピランから2個以上の水素原子を除いた基等も挙げられる。
構成単位(a5)における脂肪族環式基は、多環式基であることが好ましく、中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基が特に好ましい。
【0237】
前記一般式(a5−1)中、Zは1価の有機基である。
ここで、本明細書および本特許請求の範囲において、「有機基」は、炭素原子を含む基を意味し、炭素原子以外の原子(たとえば水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等)を有していてもよい。
Zの有機基としては、たとえば、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、式−Q
5−R
5で表される基(式中、Q
5は2価の連結基、R
5は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。)が挙げられる。
【0238】
Zの有機基において、脂肪族炭化水素基は、たとえば、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の飽和炭化水素基、又は、炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基が挙げられる。
【0239】
直鎖状の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
分岐鎖状の飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0240】
前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、たとえばアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、シアノ基、カルボキシ基等が挙げられる。
前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記芳香族基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等)の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0241】
環状の飽和炭化水素基としては、多環式基、単環式基のいずれでもよく、炭素数3〜20の環状の飽和炭化水素基が挙げられ、例えば、モノシクロアルカン;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
該環状のアルキル基は、置換基を有していてもよい。たとえば当該環状のアルキル基が有する環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、当該環状のアルキル基が有する環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。
前者の例としては、前記モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンの環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された複素シクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。また、前記環の構造中にエステル結合(−C(=O)−O−)を有していてもよい。具体的には、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基等のラクトン含有単環式基や、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基等のラクトン含有多環式基等が挙げられる。
後者の例における置換基としては、前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が有してもよい置換基として挙げたものと同様のもの、炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。
【0242】
直鎖状の不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。
分岐鎖状の不飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
該直鎖状若しくは分岐鎖状の不飽和炭化水素基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が有していてもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0243】
Zの有機基において、芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香族炭化水素基の炭素数は3〜30であることが好ましく、5〜30であることがより好ましく、5〜20がさらに好ましく、6〜15が特に好ましく、6〜12が最も好ましい。ただし、該炭素数には、置換基における炭素数を含まないものとする。
芳香族有機基としては、芳香環の環骨格が炭素原子のみから構成される芳香族炭化水素環を有するものであってもよく、芳香環の環骨格に炭素原子以外のヘテロ原子を含む芳香族複素環を有するものであってもよい。
芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いたアリール基;これらのアリール基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基;ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基等が挙げられる。前記アリールアルキル基中のアルキル鎖の炭素数は1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
該芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。たとえば当該芳香族炭化水素基が有する芳香環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、当該芳香族炭化水素基が有する芳香環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。
前者の例としては、前記アリール基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基、前記アリールアルキル基の環を構成する炭素原子の一部が前記ヘテロ原子で置換されたヘテロアリールアルキル基等が挙げられる。
後者の例における芳香族基の置換基としては、たとえば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、アセチル基等が挙げられる。
前記芳香族基の置換基としてのアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、およびハロゲン化アルキル基としては、前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が有してもよい置換基として挙げたものと同様のもの、炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。
【0244】
前記式−Q
5−R
5で表される基において、Q
5は2価の連結基であり、R
5は、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。
Q
5の2価の連結基としては、上記式(a1−0−2)におけるY
2の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
R
5は、上記Zにおける脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0245】
上記のなかでも、Zの有機基としては、レジスト組成物とした際、有機溶剤への溶解性がより向上することから、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を含む基であることが好ましく、前記式−Q
5−R
8’で表される基(式中、Q
5は2価の連結基であり、R
8’は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基である。)であることがより好ましく、具体的には、第3級アルキル基含有基またはアルコキシアルキル基が好適なものとして挙げられる。
【0246】
(第3級アルキル基含有基)
ここで、本明細書および特許請求の範囲において、「第3級アルキル基」は、第3級炭素原子を有するアルキル基を示す。「アルキル基」は、上述のように、1価の飽和炭化水素基を示し、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)のアルキル基および環状構造を有するアルキル基を包含する。
「第3級アルキル基含有基」は、その構造中に第3級アルキル基を含む基を示す。第3級アルキル基含有基は、第3級アルキル基のみから構成されていてもよく、第3級アルキル基と、第3級アルキル基以外の他の原子または基とから構成されていてもよい。
第3級アルキル基とともに第3級アルキル基含有基を構成する前記「第3級アルキル基以外の他の原子または基」としては、カルボニルオキシ基、カルボニル基、アルキレン基、酸素原子等が挙げられる。
【0247】
Zの第3級アルキル基含有基としては、環状構造を有さない第3級アルキル基含有基、環状構造を有する第3級アルキル基含有基等が挙げられる。
環状構造を有さない第3級アルキル基含有基は、第3級アルキル基として分岐鎖状の第3級アルキル基を含有し、かつ、その構造内に環状構造を有さない基である。
分岐鎖状の第3級アルキル基としては、たとえば下記一般式(I)で表される基が挙げられる。
【0249】
式(I)中、R
21〜R
23は、それぞれ独立して直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である。該アルキル基の炭素数は1〜5が好ましく、1〜3がより好ましい。
また、一般式(I)で表される基の全炭素数は、4〜7であることが好ましく、4〜6であることがより好ましく、4〜5であることが最も好ましい。
一般式(I)で表される基としては、tert−ブチル基、tert−ペンチル基等が好ましく挙げられ、tert−ブチル基がより好ましい。
【0250】
環状構造を有さない第3級アルキル基含有基としては、上述した分岐鎖状の第3級アルキル基;上述した分岐鎖状の第3級アルキル基が直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基に結合してなる第3級アルキル基含有鎖状アルキル基;第3級アルキル基として上述した分岐鎖状の第3級アルキル基を有する第3級アルキルオキシカルボニル基;第3級アルキル基として上述した分岐鎖状の第3級アルキル基を有する第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基等が挙げられる。
第3級アルキル基含有鎖状アルキル基におけるアルキレン基としては、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数〜2のアルキレン基がさらに好ましい。
鎖状の第3級アルキルオキシカルボニル基としては、たとえば下記一般式(II)で表される基が挙げられる。式(II)中のR
21〜R
23は、前記式(I)中のR
21〜R
23と同様である。鎖状の第3級アルキルオキシカルボニル基としては、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)、tert−ペンチルオキシカルボニル基が好ましい。
【0252】
鎖状の第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基としては、たとえば下記一般式(III)で表される基が挙げられる。式(III)中のR
21〜R
23は、前記式(I)中のR
21〜R
23と同様である。fは1〜3の整数であり、1または2が好ましい。鎖状の第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基としては、tert−ブチルオキシカルボニルメチル基、tert−ブチルオキシカルボニルエチル基が好ましい。
これらの中で、環状構造を有さない第3級アルキル基含有基としては、第3級アルキルオキシカルボニル基または第3級アルキルオキシカルボニルアルキル基が好ましく、第3級アルキルオキシカルボニル基がより好ましく、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)が最も好ましい。
【0254】
環状構造を有する第3級アルキル基含有基は、その構造内に、第3級炭素原子と環状構造とを有する基である。
環状構造を有する第3級アルキル基含有基において、環状構造は、環を構成する炭素数が4〜12であることが好ましく、5〜10であることがより好ましく、6〜10であることが最も好ましい。環状構造としては、例えばモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。好ましくは、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0255】
環状構造を有する第3級アルキル基含有基としては、例えば、第3級アルキル基として下記(1)または(2)の基を有する基等が挙げられる。
(1)環状のアルキル基(シクロアルキル基)の環を構成する炭素原子に、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が結合し、該炭素原子が第3級炭素原子となっている基。
(2)シクロアルキル基の環を構成する炭素原子に、第3級炭素原子を有するアルキレン基(分岐鎖状のアルキレン基)が結合している基。
【0256】
前記(1)の基における直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、1〜5であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1〜3であることが最も好ましい。
(1)の基としては、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−1−シクロアルキル基、1−エチル−1−シクロアルキル基等が挙げられる。
【0257】
前記(2)において、分岐鎖状のアルキレン基が結合しているシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
(2)の基としては、たとえば下記化学式(IV)で表される基が挙げられる。
【0259】
式(IV)中、R
24は、置換基を有していてもよく有していなくてもよいシクロアルキル基である。該シクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化アルキル基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
R
25、R
26は、それぞれ独立して直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、該アルキル基としては、前記式(I)中のR
21〜R
23のアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0260】
(アルコキシアルキル基)
Zのアルコキシアルキル基としては、たとえば下記一般式(V)で表される基が挙げられる。
【0262】
式中、R
41は直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基である。
R
41が直鎖状、分岐鎖状の場合は、炭素数1〜5であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、特にエチル基が最も好ましい。
R
41が環状の場合は炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。たとえば、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基等が挙げられる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
R
42は直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基である。該アルキレン基は、炭素数1〜5であることが好ましく、炭素数1〜3であることがより好ましく、炭素数1〜2であることがさらに好ましい。
Zのアルコキシアルキル基としては、特に、下記一般式(VI)で表される基が好ましい。
【0264】
式(VI)中、R
41は前記と同じであり、R
43、R
44はそれぞれ独立して直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、または水素原子である。
R
43、R
44において、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。特に、R
43、R
44の一方が水素原子で、他方がメチル基であることが好ましい。
【0265】
上記のなかでも、Zとしては、第3級アルキル基含有基が好ましく、前記一般式(II)で表される基がより好ましく、tert−ブチルオキシカルボニル基(t−boc)が最も好ましい。
【0266】
前記一般式(a5−1)中、aは1〜3の整数であり、bは0〜2の整数であり、かつ、a+b=1〜3である。
aは1であることが好ましい。
bは0であることが好ましい。
a+bは1であることが好ましい。
cは0〜3の整数であり、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
dは0〜3の整数であり、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
eは0〜3の整数であり、0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0267】
構成単位(a5)としては、特に、下記一般式(a5−1−1)又は(a5−1−2)で表される構成単位が好ましい。
【0268】
【化49】
[式中、R,Z,b,c,d,eはそれぞれ前記と同じである。]
【0269】
【化50】
[式中、R,Z,a,b,c,d,eはそれぞれ前記と同じである。c”は1〜3の整数である。]
【0270】
前記式(a5−1−2)中、c”は1〜3の整数であり、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
前記式(a5−1−2)におけるcが0の場合、アクリル酸エステルのカルボニルオキシ基(−C(=O)−O−)の末端の酸素原子は、環式基中の酸素原子に結合する炭素原子には結合していないことが好ましい。すなわち、cが0の場合、当該末端の酸素原子と当該環式基中の酸素原子との間には炭素原子が2つ以上存在する(この炭素原子の数が1である(すなわちアセタール結合となる)場合を除く)ことが好ましい。
【0271】
構成単位(a5)を誘導するモノマーは、例えば下記一般式(a5−1’)で表される化合物(1〜3個のアルコール性水酸基を有する脂肪族環式基を含有するアクリル酸エステル)の水酸基の一部または全部を、公知の手法を用いて、有機基(好ましくは、第3級アルキル基含有基またはアルコキシアルキル基)で保護することにより合成することができる。
【0272】
【化51】
[式中、R,Y
5,a,b,c,d,eはそれぞれ前記と同じである。]
【0273】
構成単位(a5)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A2−1)成分中の構成単位(a5)の割合は、(A2−1)成分を構成する全構成単位の合計に対して1〜45モル%であることが好ましく、5〜45モル%であることがより好ましく、5〜40モル%であることがさらに好ましく、5〜35モル%が最も好ましい。下限値以上とすることにより、(A2−1)成分の有機溶剤(S2)に対する溶解性が向上し、上限値以下であると、他の構成単位とのバランスが良好である。
【0274】
(構成単位(a6))
構成単位(a6)は、下記一般式(a6−1)で表される構成単位である。
【0275】
【化52】
[式中、R
20は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり;R
9は炭素数1〜5のアルキル基であり;iは1〜3の整数であり;zは0〜2の整数である。]
【0276】
前記式(a6−1)中、R
20における炭素数1〜5のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などの直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
R
20としては、水素原子またはメチル基が特に好ましい。
【0277】
iは1〜3の整数であり、好ましくは1である。
水酸基の結合位置は、フェニル基のo−位、m−位、p−位のいずれでもよい。iが1である場合は、容易に入手可能で低価格であることからp−位が好ましい。iが2または3の場合は、任意の置換位置を組み合わせることができる。
【0278】
zは0〜2の整数である。これらのうち、zは0または1であることが好ましく、特に工業上、0であることが好ましい。
R
9のアルキル基としては、R
20のアルキル基と同様のものが挙げられる。
R
9の置換位置は、zが1である場合はo−位、m−位、p−位のいずれでもよい。zが2である場合は、任意の置換位置を組み合わせることができる。このとき、複数のR
9は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0279】
構成単位(a6)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A2−1)成分中の構成単位(a6)の割合は、(A2−1)成分を構成する全構成単位の合計に対して50〜90モル%であることが好ましく、55〜85モル%であることがより好ましく、60〜80モル%であることがさらに好ましい。
構成単位(a6)の割合が該範囲の下限値以上であると、(A2−1)成分の(S2)成分に対する溶解性が良好となり、該範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスが良好である。
【0280】
(構成単位(a7))
構成単位(a7)は、下記一般式(a7−1)で表される構成単位である。
【0281】
【化53】
[式中、R
20は前記と同じであり、R
7は炭素数1〜5のアルキル基であり、xは0〜3の整数である。]
【0282】
前記一般式(a7−1)中、R
20は、上記一般式(a6−1)におけるR
20と同様である。
前記式(a7−1)中、R
7のアルキル基は、上記一般式(a6−1)におけるR
9のアルキル基と同様のものが挙げられる。
xは0〜3の整数であり、0または1であることが好ましく、工業上、0であることが特に好ましい。
xが1である場合、R
7の置換位置は、フェニル基のo−位、m−位、p−位のいずれでもよい。xが2または3である場合には、任意の置換位置を組み合わせることができる。このとき、複数のR
7は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
構成単位(a7)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A2−1)成分が構成単位(a7)を有する場合、構成単位(a7)の割合は、当該(A2−1)成分を構成する全構成単位の合計に対して10〜50モル%であることが好ましく、15〜45モル%であることがより好ましく、20〜40モル%であることがさらに好ましい。
構成単位(a7)の割合が該範囲の下限値以上であると、(A2−1)成分の(S2)成分に対する溶解性を制御できる。また、レジスト膜とした際、耐熱性やドライエッチング耐性が向上する。該範囲の上限値以下であると、他の構成単位とのバランスが良好である。
【0283】
第二のレジスト材料において、(A2−1)成分は、構成単位(a1)と構成単位(a5)とを有する高分子化合物であることが好ましい。
かかる(A2−1)成分としては、たとえば、構成単位(a1)、(a2)、(a3)および(a5)からなる共重合体等が例示できる。
【0284】
(A2−1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(A2−1)成分としては、特に下記の様な構成単位の組み合わせを含む共重合体が好ましい。
【0285】
【化54】
[式中、Rは上記と同じであり、複数のRは相互に同じであっても異なっていてもよい。R
11は式(a1−1−01)におけるR
11と同じである。R
21〜R
23は上記式(II)におけるR
21〜R
23とそれぞれ同じであり、eは上記式(a5−1)におけるeと同じである。]
【0286】
(A2−1)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。
また、(A2−1)成分には、上記重合の際に、たとえばHS−CH
2−CH
2−CH
2−C(CF
3)
2−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に−C(CF
3)
2−OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0287】
精製前の(A2−1)成分における質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定されず、1000〜50000が好ましく、1500〜30000がより好ましく、2000〜20000が最も好ましい。この範囲の上限値以下であると、レジストとして用いるのに充分なレジスト溶剤への溶解性があり、この範囲の下限値以上であると、耐ドライエッチング性やレジストパターン断面形状が良好である。
また、精製前の(A2−1)成分における分散度(Mw/Mn)は1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.2〜2.5が最も好ましい。
【0288】
[(A2−2)成分]
第二のレジスト材料が「ネガ型の化学増幅型レジスト組成物」である場合、(A2)成分は、アルカリ現像液に対して可溶性の樹脂(以下この第二のレジスト材料に用いられるアルカリ可溶性樹脂を「(A2−2)成分」という。)が用いられる。
かかるネガ型の化学増幅型レジスト組成物においては、基材成分として(A2−2)成分を用いるのに加えて、さらに、架橋剤成分(C)((C)成分)を用いることが好ましい。
該ネガ型の化学増幅型レジスト組成物は、露光により酸発生剤から酸が発生すると、当該酸が作用して(A2−2)成分と(C)成分との間で架橋が起こり、アルカリ現像液に対して難溶性へ変化する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ネガ型の化学増幅型レジスト組成物を基板上に塗布して得られるレジスト膜を選択的に露光すると、露光部はアルカリ現像液に対して難溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ現像液に対して可溶性のまま変化しないので、アルカリ現像することによりレジストパターンが形成できる。
【0289】
(A2−2)成分のなかで好適なものとしては、有機溶剤(S2)に対する溶解性に優れることから、たとえば、後述する一般式(a1−1−1)で表される、フッ素化されたヒドロキシアルキル基を有するアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
かかるフッ素化されたヒドロキシアルキル基を有するアルカリ可溶性樹脂として具体的には、たとえば、フッ素化されたヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基を主鎖に有する構成単位(a1’)と、好ましくは、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a2’)とを有する高分子化合物(A2−2−10)(以下「(A2−2−10)成分」という。)が挙げられる。
また、かかるフッ素化されたヒドロキシアルキル基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、たとえば、フッ素化されたヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基を含有する構成単位(a1”)と、好ましくは、さらに、水酸基含有脂肪族環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2”)および/または環式構造を有さず、かつ、側鎖にアルコール性水酸基を有するアクリル酸から誘導される構成単位(a3”)とを含む高分子化合物(A2−2−20)(以下「(A2−2−20)成分」という。)も挙げられる。
【0290】
・・高分子化合物(A2−2−10)について
(A2−2−10)成分は、フッ素化されたヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基を主鎖に有する構成単位(a1’)を有する。
また、(A2−2−10)成分は、構成単位(a1’)に加え、さらに、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a2’)(以下「構成単位(a2’)」と略記する。)を有することが好ましい。
【0291】
・・・構成単位(a1’)について
(A2−2−10)成分は、フッ素化されたヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基を主鎖に有する構成単位(a1’)を有する。
かかる構成単位(a1’)において、「フッ素化されたヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基」とは、脂肪族環式基の環を構成する炭素原子に、フッ素化されたヒドロキシアルキル基が結合した基を意味する。
また、「脂肪族環式基を主鎖に有する」とは、該脂肪族環式基の環上の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上の炭素原子が、(A2−2−10)成分の主鎖を構成することを意味する。
(A2−2)成分が構成単位(a1’)を有する(A2−2−10)成分を含有することにより、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解性が高まって、解像性、レジストパターン形状、ラインエッジラフネス(LER)等のリソグラフィー特性が向上する。また、脂肪族環式基(たとえば、ノルボルナンまたはテトラシクロドデカンの構造など)を主鎖に有することにより、炭素密度が高まってエッチング耐性も向上する。
【0292】
ここで、「フッ素化されたヒドロキシアルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部がヒドロキシ基で置換されたヒドロキシアルキル基において、当該ヒドロキシアルキル基中の残りの水素原子の一部または全部がフッ素原子によって置換されているものである。
フッ素化されたヒドロキシアルキル基においては、フッ素化によって、ヒドロキシ基の水素原子が遊離しやすくなっている。
フッ素化されたヒドロキシアルキル基において、アルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。
該アルキル基の炭素数は、特に限定されるものではなく、1〜20が好ましく、4〜16がより好ましく、4〜12であることが最も好ましい。
ヒドロキシ基の数は、特に限定されるものではなく、1つであることが好ましい。
フッ素化されたヒドロキシアルキル基としては、なかでもヒドロキシ基が結合した炭素原子(ここではヒドロキシアルキル基のα位の炭素原子を指す。)に、フッ素化アルキル基および/またはフッ素原子が結合しているものが好ましい。
ここで、当該α位に結合するフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子の全部がフッ素原子で置換されていることが好ましい。また、該フッ素化アルキル基のアルキル基としては、炭素数が1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1であることがより好ましい。
【0293】
「フッ素化されたヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基」における「脂肪族」とは、芳香族性に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。脂肪族環式基は、単環であっても多環であってもよい。
「単環の脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基であることを意味し、「多環の脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない多環式基であることを意味する。
構成単位(a1’)において、脂肪族環式基は、エッチング耐性等に優れることから、多環であることが好ましい。
脂肪族環式基は、炭素及び水素からなる炭化水素基(脂環式基)、および該脂環式基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロ環式基等が含まれる。これらの脂肪族環式基は置換基を有していてもよく、該置換基としては炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。
ここで、「置換基を有する」とは、脂肪族環式基の環を構成する炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が置換基(水素原子以外の原子または基)で置換されていることを意味する。脂肪族環式基としては、脂環式基であることが好ましい。
脂肪族環式基は、飽和または不飽和のいずれでもよいが、ArFエキシマレーザー等に対する透明性が高く、解像性や焦点深度幅(DOF)等にも優れることから、飽和であることが好ましい。
脂肪族環式基の炭素数は、5〜15であることが好ましい。
【0294】
脂肪族環式基の具体例としては、以下のものが挙げられる。
単環式基としては、シクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサンから2個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。
多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等から2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから2個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
なお、この様な脂肪族環式基は、例えばArFエキシマレーザープロセス用のホトレジスト組成物用樹脂において多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
これらの中でも、工業上入手しやすいことから、シクロペンタン、シクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
これら例示した脂環式基の中でも、後述する構成単位(a1’−1)のように、ノルボルナンまたはテトラシクロドデカンから3個の水素原子を除いた基が好ましく、特にノルボルナンから3個の水素原子を除いた基が好ましい。
【0295】
かかる構成単位(a1’)に含まれるものとしては、なかでも下記一般式(a1’−1)で表される構成単位(a1’−1)が好ましく例示できる。当該構成単位(a1’−1)を有することにより、特にアルカリ現像液に対する溶解性が向上する。また、解像性等のリソグラフィー特性も向上する。
【0296】
【化55】
[式(a1’−1)中、Z’はフッ素化されたヒドロキシアルキル基であり、r”は0又は1である。]
【0297】
式(a1’−1)中、r”は0又は1であり、工業上入手が容易であることから、0であることが好ましい。
【0298】
また、式(a1’−1)中、Z’で表される「フッ素化されたヒドロキシアルキル基」は、上述と同様である。なかでも、Z’としては、レジストパターン形状に優れ、ラインエッジラフネス(LER)等が低減されることから、下記一般式(a1’−1−0)で表される基であることが特に好ましい。
なお、「ラインエッジラフネス(LER)」とは、ライン側壁の不均一な凹凸のことをいう。
【0299】
【化56】
[式(a1’−1−0)中、R
11”,R
12”はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜5の低級アルキル基であり;m”,n”はそれぞれ独立して1〜5の整数であり、qは1〜5の整数である。]
【0300】
式(a1’−1−0)中、R
11”,R
12”は、それぞれ独立して水素原子又は低級アルキル基である。
低級アルキル基としては、炭素数5以下の直鎖状又は分岐鎖状の低級アルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられ、メチル基が好ましい。
なかでも、R
11”,R
12”が共に水素原子であることが好ましい。
qは1〜5の整数であり、1〜3の整数であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
m”およびn”は、それぞれ独立して1〜5の整数であり、1〜3の整数であることが好ましい。特に、合成上の面において優れていることから、m”およびn”がいずれも1であるものが好ましい。
【0301】
構成単位(a1’)は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
(A2−2−10)成分中の構成単位(a1’)の含有割合は、(A2−2−10)成分を構成する全構成単位の合計に対して、50〜90モル%が好ましく、55〜90モル%がより好ましく、60〜80モル%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、構成単位(a1’)を含有することによる効果が向上し、上限値以下であることにより、他の構成単位とのバランスが良好となる。
【0302】
・・・構成単位(a2’)について
(A2−2−10)成分は、構成単位(a1’)に加えて、さらに、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位(a2’)を有することが好ましい。
(A2−2)成分が構成単位(a2’)を含む(A2−2−10)成分を有することにより、アルカリ現像液に対する溶解性が向上する。また、(C)成分との架橋性が高まり、露光部と未露光部とのアルカリ現像液に対する溶解性の差(コントラスト)が大きくなって、ネガ型レジストとしてより充分に機能することができる。
かかる構成単位(a2’)としては、たとえば、ヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基を主鎖に有する構成単位(a210)、水酸基含有アルキル基を有するアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a220)等が好ましく用いられる。
【0303】
・・・・構成単位(a210)について
構成単位(a210)は、ヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基を主鎖に有する構成単位をいう。
構成単位(a210)としては、前記構成単位(a1’)の「フッ素化されたヒドロキシアルキル基」において、フッ素化されていないヒドロキシアルキル基、すなわちアルキル基の水素原子の一部がヒドロキシ基で置換されたヒドロキシアルキル基中の残りの水素原子がフッ素原子によって置換されていない以外は、前記構成単位(a1’)と同様の構成単位が好適なものとして挙げられる。
かかる構成単位(a210)に含まれるものとしては、下記一般式(a2’−1)で表される構成単位(以下「構成単位(a2’−1)」という。)が好ましく例示できる。当該構成単位(a2’−1)を有することにより、解像性、レジストパターン形状、ラインワイズラフネス(LWR)等のリソグラフィー特性が向上する。また、良好なコントラストが得られやすく、エッチング耐性も向上する。
【0304】
【化57】
[式(a2’−1)中、R
13”、R
14”はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜5の低級アルキル基であり、Y’は水素原子又はヒドロキシアルキル基であり、rは0又は1であり、pは1〜3の整数である。]
【0305】
前記一般式(a2’−1)で表される構成単位(a2’−1)は、ヒドロキシアルキル基を有するノルボルナンまたはテトラシクロドデカンの構造を主鎖に有する構成単位である。
式(a2’−1)中、R
13”、R
14”は、それぞれ独立して水素原子または低級アルキル基である。低級アルキル基としては、前記式(a1’−1−1)中のR
11”,R
12”で表される低級アルキル基と同様のものが挙げられる。なかでも、R
13”、R
14”が共に水素原子であることが好ましい。
Y’は、水素原子又はヒドロキシアルキル基である。
ヒドロキシアルキル基としては、炭素数が10以下の直鎖状または分岐鎖状のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、炭素数8以下の直鎖状または分岐鎖状のヒドロキシアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜3の直鎖状の低級ヒドロキシアルキル基であることがさらに好ましい。
ヒドロキシアルキル基における水酸基の数と結合位置は、特に限定されるものではなく、通常は1つであり、また、アルキル基の末端に結合していることが好ましい。
Y’としては、なかでも特に水素原子が好ましい。
rは0または1であり、0が好ましい。
pは1〜3の整数であり、1または2が好ましく、1が最も好ましい。
【0306】
かかる構成単位(a2’−1)の具体例としては、下記化学式(a2’−1−1)〜(a2’−1−7)が挙げられる。
【0308】
これらの中でも、上記化学式(a2’−1−1)、(a2’−1−2)、(a2’−1−3)が好ましい。
構成単位(a210)は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
(A2−2−10)成分中の構成単位(a210)の含有割合は、(A2−2−10)成分を構成する全構成単位の合計に対して、10〜50モル%が好ましく、15〜50モル%がより好ましく、20〜45モル%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、アルカリ溶解性が向上し、良好なコントラストが得られやすくなる等の構成単位(a210)を含有することによる効果が向上する。他方、上限値以下であることにより他の構成単位とのバランスが良好となる。
【0309】
・・・・構成単位(a220)について
構成単位(a220)は、水酸基含有アルキル基を有するアクリル酸エステルから誘導される構成単位である。
【0310】
構成単位(a220)が水酸基含有環状アルキル基を有する構成単位(以下この構成単位を「構成単位(a221)」と略記する。)の場合、レジストパターンの膨潤抑制効果が高くなる。また、解像性も向上する。さらに、良好なコントラストやエッチング耐性も得られやすくなる。
構成単位(a221)としては、たとえば、後述の(A2−2−20)成分を構成する「水酸基含有脂肪族環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2”)」についての説明において例示する構成単位のうち、脂肪族環式基が飽和炭化水素基であるものが挙げられる。なかでも、アクリル酸エステルのα位に結合している置換基が、フッ素化アルキル基であるものが特に好ましく、トリフルオロメチル基(−CF
3)であるものが最も好ましい。
【0311】
また、構成単位(a220)が水酸基含有鎖状アルキル基を有する構成単位(以下この構成単位を「構成単位(a222)」と略記する。)の場合、(A2−2−10)成分全体の親水性が高くなってアルカリ現像液に対する溶解性が高まり、解像性が向上する。また、レジストパターン形成時の架橋反応の制御性が良好となり、パターン形状や解像性が向上する。さらに、膜密度が向上する傾向があり、これにより、エッチング時の膜減りが抑制でき、耐熱性も向上する傾向がある。
構成単位(a222)としては、たとえば、後述の(A2−2−20)成分を構成する「環式構造を有さず、かつ、側鎖にアルコール性水酸基を有するアクリル酸から誘導される構成単位(a3”)」についての説明において例示する構成単位のうち、ヒドロキシアルキル基を有するものが挙げられる。なかでも、アクリル酸エステルのエステル部にヒドロキシアルキル基を有するものが好ましく、そのなかでもアクリル酸エステルのα位に結合している置換基がフッ素化アルキル基であるものが特に好ましく、トリフルオロメチル基(−CF
3)であるものが最も好ましい。
【0312】
構成単位(a220)は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
(A2−2−10)成分中の構成単位(a220)の含有割合は、(A2−2−10)成分を構成する全構成単位の合計に対して、10〜80モル%が好ましく、15〜60モル%がより好ましく、20〜55モル%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより構成単位(a220)を含有することによる効果が得られ、上限値以下であることにより他の構成単位とのバランスが良好となる。
【0313】
なお、構成単位(a220)が、前記構成単位(a221)と前記構成単位(a222)との両方を含む場合、両者の混合割合はモル比で、構成単位(a221):構成単位(a222)=9:1〜1:9であることが好ましく、8:2〜2:8であることがより好ましく、6:4〜7:3であることがさらに好ましい。
構成単位(a221)と構成単位(a222)とを、前記混合割合でバランスよく配合することによって良好な露光余裕度が得られる。また、適度なコントラストが得られ、解像性が向上する。さらに、エッチング耐性も向上する。
【0314】
・・・その他の構成単位について
(A2−2−10)成分は、前記の各構成単位(a1’)、(a2’)以外の構成単位として、従来化学増幅型レジスト組成物用として公知の樹脂成分に用いられている構成単位を適宜用いることができる。
上記の中でも、(A2−2−10)成分としては、構成単位(a1’)と構成単位(a2’)とを有する高分子化合物であることが好ましく、構成単位(a1’)及び(a2’)を主成分とする高分子化合物であることがより好ましい。
【0315】
ここで、「主成分」とは、構成単位(a1’)と構成単位(a2’)との合計の割合が、(A2−2−10)成分を構成する全構成単位の合計に対して70モル%以上を占めることを意味し、80モル%以上を占めることがより好ましく、100モル%であってもよい。なかでも、(A2−2−10)成分としては、構成単位(a1’)と構成単位(a2’)とからなる高分子化合物であることが最も好ましい。
(A2−2−10)成分における構成単位(a1’)と構成単位(a2’)との組合せとしては、構成単位(a1’)と構成単位(a210)との組み合わせが好ましい。
(A2−2−10)成分としては、たとえば下記化学式(A2−2−11)〜(A2−2−14)で表される構成単位の組合せを含むものが好ましく挙げられる。
【0317】
上記のなかでも、(A2−2−10)成分としては、前記化学式(A2−2−11)〜(A2−2−14)で表される構成単位の組合せからなる群から選択される少なくとも一種の組合せを含む高分子化合物が好ましく、前記化学式(A2−2−11)で表される構成単位の組合せを含む高分子化合物が最も好ましい。
【0318】
精製前の(A2−2−10)成分における質量平均分子量(Mw;ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値)は2000〜10000であることが好ましく、3000〜6000であることがさらに好ましく、3000〜5000であることが特に好ましい。
上記範囲の下限値以上であることにより良好なコントラストを得ることができ、上限値以下であることによりレジストパターンの膨潤を抑制することができる。その結果、解像性が向上する。また、パターンの膨潤を抑制できることから、焦点深度幅(DOF)特性の向上効果や、ラインエッジラフネス(LER)の抑制効果を得ることができる。また、上記質量平均分子量をこの範囲とすることは、レジストパターンの膨潤抑制効果も高い点から好ましい。質量平均分子量は、この範囲内において低い方が、良好な特性が得られる傾向がある。
また、精製前の(A2−2−10)成分における分散度(Mw/Mn)は、1.0〜5.0であることが好ましく、1.0〜2.5であることがさらに好ましい。
【0319】
(A2−2)成分を用いる場合、上記(A2−2−10)成分の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
ただし、(A2−2−10)成分を用いる場合、(A2−2)成分中に含まれる(A2−2−10)成分の割合は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。
【0320】
・・高分子化合物(A2−2−20)について
(A2−2−20)成分は、フッ素化されたヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基を含有する構成単位(a1”)を含む。
また、当該(A2−2−20)成分は、構成単位(a1”)に加え、さらに、水酸基含有脂肪族環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2”)を含むことが好ましい。
また、当該(A2−2−20)成分は、構成単位(a1”)に加え、または、構成単位(a1”)と構成単位(a2”)とに加え、さらに、環式構造を有さず、かつ、側鎖にアルコール性水酸基を有するアクリル酸から誘導される構成単位(a3”)を含むことが好ましい。
【0321】
・・・構成単位(a1”)について
構成単位(a1”)は、フッ素化されたヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基を含有する構成単位である。構成単位(a1”)を含むことにより、アルカリ現像液に対する溶解性が向上する。また、レジストパターンの膨潤が抑制されて、解像性、パターン形状、LWR等のリソグラフィー特性が向上する。
【0322】
フッ素化されたヒドロキシアルキル基を有する脂肪族環式基は、前記構成単位(a1’)についての説明において例示したものと同様であり、脂肪族環式基(フッ素化されたヒドロキシアルキル基が結合する前の状態)としては、なかでもシクロヘキサン、アダマンタン、ノルボルナン、テトラシクロドデカンから2個の水素原子を除いた基が工業上入手しやすく、好ましい。
これら例示した単環式基、多環式基の中でも、特にノルボルナンから2個の水素原子を除いた基が好ましい。
【0323】
構成単位(a1”)は、アクリル酸から誘導される構成単位であることが好ましく、特に、アクリル酸エステルのカルボニルオキシ基[−C(=O)−O−]の末端の酸素原子(−O−)に上記脂肪族環式基が結合した構造(アクリル酸のカルボキシ基の水素原子が上記脂肪族環式基で置換されている構造)が好ましい。
【0324】
構成単位(a1”)としてより具体的には、下記一般式(1)で表される構成単位(a1”−1)が好ましい。
【0325】
【化60】
[式(1)中、Rは水素原子、低級アルキル基、又はハロゲン化低級アルキル基であり;u、t、t”はそれぞれ独立して1〜5の整数である。]
【0326】
式(1)中、Rは水素原子、低級アルキル基、又はハロゲン化低級アルキル基である。
Rの低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基については、上記アクリル酸エステルのα位に結合していてよい低級アルキル基又はハロゲン化アルキル基と同様である。
Rは、水素原子または低級アルキル基であることが好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基であることがより好ましい。
uは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、1〜3の整数であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
tは1〜5の整数であり、1〜3の整数であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
t”は1〜5の整数であり、1〜3の整数であることが好ましく、1〜2の整数であることがより好ましく、1であることが最も好ましい。
前記一般式(1)で表される構成単位(a1”−1)は、(α−低級アルキル)アクリル酸のカルボキシ基の末端に、2−ノルボルニル基または3−ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールは、ノルボルニル基の5又は6位に結合していることが好ましい。
【0327】
構成単位(a1”)は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
(A2−2−20)成分中の構成単位(a1”)の含有割合は、(A2−2−20)成分を構成する全構成単位の合計に対して、10〜90モル%が好ましく、20〜90モル%がより好ましく、40〜90モル%が特に好ましく、45〜85モル%が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、構成単位(a1”)を含有することによる効果が得られ、上限値以下であることにより、他の構成単位とのバランスが良好である。
【0328】
・・・構成単位(a2”)について
(A2−2−20)成分は、構成単位(a1”)に加えて、さらに水酸基含有脂肪族環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2”)を有することが好ましい。
構成単位(a2”)を含む(A2−2−20)成分をネガ型の化学増幅型レジスト組成物に配合すると、この構成単位(a2”)の水酸基(アルコール性水酸基)が、(B)成分から発生する酸の作用によって、(C)成分と反応し、これにより(A2−2−20)成分がアルカリ現像液に対して可溶性の性質から不溶性の性質に変化する。
【0329】
「水酸基含有脂肪族環式基」とは、脂肪族環式基に水酸基が結合している基である。
脂肪族環式基に結合している水酸基の数は、1〜3個が好ましく、1個がさらに好ましい。
脂肪族環式基は、単環でも多環でもよいが、多環式基であることが好ましい。また、脂環式炭化水素基であることが好ましい。また、飽和であることが好ましい。また、脂肪族環式基の炭素数は5〜15であることが好ましい。
脂肪族環式基(水酸基が結合する前の状態)の具体例としては、上記構成単位(a1”)の脂肪族環式基と同様のものが挙げられる。
構成単位(a2”)の脂肪族環式基としては、なかでも、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロドデシル基が工業上入手しやすいことから、好ましい。そのなかでも、シクロヘキシル基、アダマンチル基がより好ましく、特にアダマンチル基が好ましい。
脂肪族環式基には、水酸基以外に、炭素数1〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が結合していてもよい。
【0330】
構成単位(a2”)において、水酸基含有脂肪族環式基は、アクリル酸エステルのエステル基(−C(=O)−O−)の末端の酸素原子と結合していることが好ましい。
この場合、構成単位(a2”)において、アクリル酸エステルのα位(α位の炭素原子)には、水素原子に代わって、他の置換基が結合していてもよい。置換基としては、好ましくは、低級アルキル基又はハロゲン化低級アルキル基が挙げられる。
これらの説明は、上記構成単位(a1”)の一般式(1)中のRの説明と同様であって、α位に結合可能なもののうち、好ましいものは水素原子または低級アルキル基であって、特に水素原子またはメチル基が好ましい。
【0331】
構成単位(a2”)の具体例として、例えば下記一般式(2)で表される構成単位(a2”−1)が好ましい。
【0332】
【化61】
[式(2)中、Rは前記と同じであり;R
6は水素原子、低級アルキル基、または炭素数1〜5のアルコキシ基であり;r’は1〜3の整数である。]
【0333】
Rは、上記一般式(1)におけるRの説明と同様である。
R
6の低級アルキル基は、Rの低級アルキル基と同じである。
前記一般式(2)において、R、R
6はいずれも水素原子であることが最も好ましい。
r’は1〜3の整数であり、1であることが好ましい。
水酸基の結合位置は、特に限定されないが、アダマンチル基の3位の位置に結合していることが好ましい。
【0334】
構成単位(a2”)は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
(A2−2−20)成分中の構成単位(a2”)の割合は、(A2−2−20)成分を構成する全構成単位の合計に対して、10〜70モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましく、20〜40モル%がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、構成単位(a2”)を含有することによる効果が得られ、上限値以下であることにより、他の構成単位とのバランスが良好である。
【0335】
・・・構成単位(a3”)について
(A2−2−20)成分は、構成単位(a1”)に加えて、または、構成単位(a1”)および構成単位(a2”)に加えて、さらに、環式構造を有さず、かつ、側鎖にアルコール性水酸基を有するアクリル酸から誘導される構成単位(a3”)を有することが好ましい。
構成単位(a3”)を含む(A2−2−20)成分をネガ型の化学増幅型レジスト組成物に配合すると、構成単位(a3”)のアルコール性水酸基が、前記構成単位(a2”)の水酸基とともに、(B)成分から発生する酸の作用によって(C)成分と反応する。
そのため、(A2−2−20)成分が、アルカリ現像液に対して可溶性の性質から不溶性の性質に変化しやすくなり、解像性等のリソグラフィー特性向上の効果が得られる。また、膜減りが抑制できる。また、パターン形成時の架橋反応の制御性が良好となる。さらに、膜密度が向上する傾向がある。これにより、耐熱性が向上する傾向がある。さらにはエッチング耐性も向上する。
【0336】
構成単位(a3”)において、「環式構造を有さない」とは、脂肪族環式基や芳香族基を有さないことを意味する。
構成単位(a3”)は、環式構造を有さないことにより、前記構成単位(a2”)と明らかに区別される。
側鎖にアルコール性水酸基を有する構成単位としては、例えば、ヒドロキシアルキル基を有する構成単位が挙げられる。
ヒドロキシアルキル基としては、上記構成単位(a1”)の「フッ素化されたヒドロキシアルキル基」におけるヒドロキシアルキル基と同様のものが挙げられる。
ヒドロキシアルキル基は、例えば主鎖(アクリル酸のエチレン性二重結合が開裂した部分)のα位の炭素原子に直接結合していてもよいし、アクリル酸のカルボキシ基の水素原子と置換してエステルを構成していてもよい。
構成単位(a3”)においては、これらのうち少なくとも一方あるいは両方が存在していることが好ましい。
なお、α位にヒドロキシアルキル基が結合していない場合、α位の炭素原子には、水素原子に代わって、低級アルキル基又はハロゲン化低級アルキル基が結合していてもよい。
これらについては、一般式(1)中のRの説明と同様である。
【0337】
構成単位(a3”)としては、下記一般式(3)で表される構成単位(a3”−1)が好ましい。
【0338】
【化62】
[式(3)中、R
3は水素原子、低級アルキル基、ハロゲン化低級アルキル基、またはヒドロキシアルキル基であり;R
4は、水素原子、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基であり、かつR
3、R
4の少なくとも一方はヒドロキシアルキル基である。]
【0339】
R
3におけるヒドロキシアルキル基は、炭素数が10以下のヒドロキシアルキル基であることが好ましく、直鎖状、分岐鎖状であることがより好ましく、炭素数2〜8のヒドロキシアルキル基であることがさらに好ましく、ヒドロキシメチル基またはヒドロキシエチル基であることが最も好ましい。
水酸基の数、結合位置は、特に限定されるものではなく、通常は1つであり、また、アルキル基の末端に結合していることが好ましい。
R
3における低級アルキル基は、炭素数が10以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数2〜8のアルキル基であることがさらに好ましく、エチル基、メチル基であることが最も好ましい。
R
3におけるハロゲン化低級アルキル基は、好ましくは、炭素数が5以下の低級アルキル基(好ましくはエチル基、メチル基)において、その水素原子の一部または全部がハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換された基である。
R
4におけるアルキル基、ヒドロキシアルキル基としては、R
3の低級アルキル基、ヒドロキシアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0340】
一般式(3)で表される構成単位(a3”−1)として、具体的には、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸から誘導される構成単位(ただし、ここではアクリル酸エステルから誘導される構成単位は含まない。)、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルから誘導される構成単位、(α−アルキル)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルから誘導される構成単位が挙げられる。
これらの中で、構成単位(a3”)が、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキルエステルから誘導される構成単位を含むと、膜密度の向上の点から好ましく、中でもα−(ヒドロキシメチル)−アクリル酸エチルエステルまたはα−(ヒドロキシメチル)−アクリル酸メチルエステルから誘導される構成単位が好ましい。
また、構成単位(a3”)が、(α−アルキル)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルから誘導される構成単位を含むと、架橋効率の点で好ましい。中でも、α−メチル−アクリル酸ヒドロキシエチルエステルまたはα−メチル−アクリル酸ヒドロキシメチルエステルから誘導される構成単位が好ましい。
【0341】
構成単位(a3”)は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
(A2−2−20)成分中の構成単位(a3”)の割合は、(A2−2−20)成分を構成する全構成単位の合計に対して、5〜50モル%が好ましく、5〜40モル%がより好ましく、5〜30モル%が特に好ましく、10〜25モル%が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、構成単位(a3”)を含有することによる効果が得られ、上限値以下であることにより、他の構成単位とのバランスが良好となる。
【0342】
・・・その他構成単位について
(A2−2−20)成分は、前記の各構成単位(a1”)〜(a3”)以外の構成単位として、共重合可能なその他構成単位を有していてもよい。
かかるその他構成単位としては、従来化学増幅型レジスト組成物用として公知の樹脂成分に用いられている構成単位が使用でき、たとえば、ラクトン含有単環または多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a4”)が挙げられる。
構成単位(a4”)としては、特に限定されるものではなく、任意のものが使用可能である。具体的には、ラクトン含有単環式基としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。
構成単位(a4”)は、1種または2種以上を混合して用いることができる。
構成単位(a4”)を(A2−2−20)成分に含有させる場合、(A2−2−20)成分中の構成単位(a4”)の割合は、(A2−2−20)成分を構成する全構成単位の合計に対して、10〜70モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましく、10〜25モル%が最も好ましい。上記範囲の下限値以上であることにより、構成単位(a4”)を含有することによる効果が得られ、上限値以下であることにより、他の構成単位とのバランスが良好となる。
【0343】
ただし、(A2−2−20)成分は、特に構成単位(a1”)〜(a3”)を主成分とする高分子化合物であることが好ましい。
ここでいう「主成分」とは、構成単位(a1”)〜(a3”)の合計が50モル%以上を占めることを意味し、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上である。最も好ましくは100モル%、すなわち(A2−2−20)成分は、構成単位(a1”)、構成単位(a2”)および構成単位(a3”)からなる高分子化合物であることが好ましい。
【0344】
(A2−2−20)成分としては、特に下記式(A2−2−21)の様な構成単位の組み合わせを含むものが好ましい。
【0345】
【化63】
[式中、Rは前記と同じである。複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。]
【0346】
精製前の(A2−2−20)成分における質量平均分子量(Mw)は、2000〜30000であることが好ましく、2000〜10000であることがより好ましく、3000〜8000であることがさらに好ましい。この範囲とすることにより、アルカリ現像液に対する良好な溶解速度が得られ、高解像性の点からも好ましい。当該質量平均分子量は、この範囲内において低い方が、良好な特性が得られる傾向がある。
また、精製前の(A2−2−20)成分における分散度(Mw/Mn)は、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜2.5がより好ましい。
【0347】
(A2−2)成分を用いる場合、上記(A2−2−20)成分の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
ただし、(A2−2−20)成分を用いる場合、(A2−2)成分中に含まれる(A2−2−20)成分の割合は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。
【0348】
(A2−2−10)成分又は(A2−2−20)成分は、いずれも、例えば国際公開第2004/076495号パンフレットに記載の方法、各構成単位を誘導するモノマーを常法によりラジカル重合する方法等により合成することができる。
【0349】
(A2−2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、(A2−2)成分は、(A2−2−10)成分、(A2−2−20)成分以外に、従来のネガ型レジスト組成物に用いられている他の高分子化合物(ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂など)等を用いることもできる。
【0350】
第二のレジスト材料中、(A2)成分の含有量は、形成しようとするレジスト膜厚等に応じて調整すればよい。
【0351】
<(S2)成分>
(S2)成分としては、(A2)成分を溶解し且つ前記(A1)成分を溶解しないものであり、均一な溶液として第二のレジスト材料を調製することができるものであればよく、なかでも、アルコール系有機溶剤、フッ素系有機溶剤、および水酸基を有さないエーテル系有機溶剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、第二のレジスト材料の塗布性や経時に伴う液安定性が良好であることから、アルコール系有機溶剤が特に好ましい。
(S2)成分として好適なアルコール系有機溶剤、フッ素系有機溶剤、水酸基を有さないエーテル系有機溶剤については、上述した(W)成分についての説明におけるアルコール系有機溶剤、フッ素系有機溶剤、水酸基を有さないエーテル系有機溶剤とそれぞれ同様である。
(S2)成分は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
(S2)成分の使用量は、特に限定されるものではなく、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定され、一般的には、第二のレジスト材料の固形分濃度が0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0352】
第二のレジスト材料には、さらに所望により混和性のある添加剤、たとえばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0353】
≪樹脂の精製方法≫
本発明の「樹脂の精製方法」は、上述した本発明のレジストパターン形成方法にて前記樹脂(A1)を精製する方法であり、第一のレジスト材料に配合される前記樹脂(A1)を、該樹脂(A1)を溶解せず且つ前記樹脂(A2)を溶解する有機溶剤(W)を含有する洗浄液で洗浄する方法と同じである。具体的には、たとえば上述した精製方法(1)〜(3)が挙げられる。
【0354】
後述の
図1で示すように、樹脂(A1)の精製品は、精製前に比べて高分子量化している。これは、有機溶剤(W)を含有する洗浄液で樹脂(A1)を洗浄することにより、樹脂(A1)に含まれている未反応モノマー及び低分子量体等の不純物が除去されるため、と考えられる。
ダブルパターニングプロセスにおいては、第一のレジストパターンが形成された支持体上に、第二のレジスト材料が塗布されると、第一のレジストパターンに含まれる前記不純物の存在が、第二のレジスト材料に配合されている有機溶剤(S2)に対する第一のレジストパターンの溶解性を高くしているため、第一のレジストパターンは膜減り等を生じて、レジストパターン形状やリソグラフィー特性が悪くなる、と推測される。
本発明においては、樹脂(A1)を前記洗浄液で洗浄して、樹脂(A1)から前記不純物が予め除去されているため、2回目以降のパターニングに用いられるレジスト材料に配合される有機溶剤に第一のレジストパターンが溶解されにくい。そのため、本発明のレジストパターン形成方法によれば、2回目以降のパターニングの影響を受けにくいレジストパターンを形成できる。そして、これにより膜減りが抑制され、レジストパターン形状、リソグラフィー特性の良好なレジストパターンが形成される。
【実施例】
【0355】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0356】
<樹脂の精製>
比較例1、2の樹脂は、下記合成法により得られた樹脂である。
実施例1〜4の樹脂は、以下に示す精製方法により処理された精製高分子化合物である。
ただし、実施例3、4は参考例である。
【0357】
(比較例1、2)
温度計、還流管を繋いだ3つ口フラスコ内で、下記モノマー(1)〜(3)を、PGMEAに溶解させ、さらに重合開始剤としてアゾビスイソ酪酸ジメチル(V−601)を添加して溶解させた。これを窒素雰囲気下、1時間かけて、80℃に加熱したPGMEA中で滴下重合させた後、メタノールを用いて再沈精製を行い、下記化学式(A1−1−11)で表される構造を有する樹脂(1)、樹脂(2)をそれぞれ得た。
GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)、分子量分散度(Mw/Mn)、およびカーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_
13C−NMR)により求められた共重合組成比(化学式中の各構成単位の割合(モル比))を下記表1に示す。
【0358】
【化64】
【0359】
【化65】
【0360】
(実施例1)
前記樹脂(1)30gをメチルエチルケトン(MEK)90gに溶解した。次いで、このMEK溶液を1−ブトキシ−2−プロパノール(PGB)600gに滴下した。その後、沈殿してきた白色粉体をろ別、乾燥し、目的物である精製高分子化合物1を得た。
この精製高分子化合物1について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は10500であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.44であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_
13C−NMR)により求められた共重合組成比(化学式中の各構成単位の割合(モル比))は、a2/a1/a3=51.5/30.7/17.8であった。
【0361】
(実施例2)
前記樹脂(1)30gをメチルエチルケトン(MEK)90gに溶解した。次いで、このMEK溶液を、1−ブトキシ−2−プロパノール(PGB)540gとPGMEA 60gとの混合溶媒に滴下した。その後、沈殿してきた白色粉体をろ別、乾燥し、目的物である精製高分子化合物2を得た。
この精製高分子化合物2について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は11000であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.44であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_
13C−NMR)により求められた共重合組成比(化学式中の各構成単位の割合(モル比))は、a2/a1/a3=52.5/29.8/17.7であった。
【0362】
(実施例3)
前記樹脂(1)30gに、1−ブトキシ−2−プロパノール(PGB)540gとPGMEA60gとを加えて30分間撹拌した。その後、白色粉体をろ別、乾燥し、目的物である精製高分子化合物3を得た。
この精製高分子化合物3について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は7600であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.54であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_
13C−NMR)により求められた共重合組成比(化学式中の各構成単位の割合(モル比))は、a2/a1/a3=49.0/32.7/18.3であった。
【0363】
(実施例4)
前記樹脂(1)30gに、1−ブトキシ−2−プロパノール(PGB)540gとPGMEA60gとMEK90gとを加えて30分間撹拌した。その後、白色粉体をろ別、乾燥し、目的物である精製高分子化合物4を得た。
この精製高分子化合物4について、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は8000であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.55であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(600MHz_
13C−NMR)により求められた共重合組成比(化学式中の各構成単位の割合(モル比))は、a2/a1/a3=49.4/32.4/18.2であった。
【0364】
表1に、各例の樹脂における構成単位の割合(モル比)、質量平均分子量(Mw)、分子量分散度(Mw/Mn)を示す。
また、比較例1の高分子化合物と、実施例1、2の精製方法を行った高分子化合物とについて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したクロマトグラムを
図1に示す。
【0365】
【表1】
【0366】
表1及び
図1より、実施例1、2の精製方法により精製された精製高分子化合物1、2は、比較例1の未処理の樹脂(1)に比べて高分子量化していることが分かる。
また、実施例3、4の精製方法により精製された精製高分子化合物3、4も、比較例1の未処理の樹脂(1)に比べて高分子量化していることが分かる。
実施例1〜4の対比から、有機溶剤(S1)にいったん溶解した樹脂溶液(液体)を有機溶剤(W)に滴下して洗浄する方が、当該樹脂自体(固体)を有機溶剤(W)に分散して洗浄するよりも、より高分子量化していることが分かる。これは、樹脂溶液(液体)とした方がより均一に洗浄されるため、と考えられる。
【0367】
<第一のレジスト材料の調製>
表2に示す各成分を混合して溶解し、第一のレジスト材料としてポジ型の化学増幅型レジスト組成物を調製した。
【0368】
【表2】
【0369】
表2中の各略号は以下の意味を有する。また、[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A1)−1:前記樹脂(1)。
(A1)−2:前記樹脂(2)。
(A1)−3:前記精製高分子化合物1。
(A1)−4:前記精製高分子化合物2。
(A1)−5:前記精製高分子化合物3。
(A1)−6:前記精製高分子化合物4。
(B)−1:下記化学式(B1)で表される化合物からなる酸発生剤。
(B)−2:下記化学式(B2)で表される化合物からなる酸発生剤。
【0370】
【化66】
【0371】
(D)−1:トリ−n−ペンチルアミン。
(E)−1:サリチル酸。
(S)−1:PGMEAとPGMEとの混合溶剤(PGMEA:PGME=6:4(質量比))。
【0372】
<レジスト膜での膜減り評価>
8インチのシリコンウェーハ上に、上記第一のレジスト材料を、スピンナーを用いてそれぞれ塗布し、ホットプレート上で、150℃で60秒間のハードベークを行い、乾燥することにより、膜厚90nmのレジスト膜(第一のレジスト膜)を形成した。
次いで、前記第一のレジスト膜の全面に、1−ブトキシ−2−プロパノール(PGB)3gを滴下して60秒間静置した。
その後、スピンコートすることによって振り切り乾燥を行い、第一のレジスト膜の膜厚をNanospec 6100A(ナノメトリクス社製)を用いることにより測定し、下記の基準に基づいて、レジスト膜での膜減り評価を行った。その結果を表3に示す。
(基準)
◎:初期の膜厚90nmからの膜減りがほとんど認められなかった。
○:初期の膜厚90nmからの膜減り量が3nm未満であった。
×:初期の膜厚90nmからの膜減り量が3nm以上であった。
【0373】
【表3】
【0374】
表3の結果より、予め精製した樹脂を含有するレジスト材料(3)〜(6)を用いた試験例3〜6は、膜減りの発生が抑制されていることが確認できた。
試験例2と試験例3、4との対比から、膜減りの発生が抑制されるのは、主として、樹脂の質量平均分子量に起因するものではないことが分かる。
試験例3〜6の対比から、樹脂をいったん溶解して精製を行った方が、膜減りの発生がより抑制されることが分かる。
【0375】
<レジストパターンの形成>
有機系反射防止膜組成物「ARC95」(商品名、ブリュワーサイエンス社製)を、スピンナーを用いて8インチのシリコンウェーハ上に塗布し、ホットプレート上で、205℃で60秒間焼成して乾燥させることにより、膜厚90nmの有機系反射防止膜を形成した。
該有機系反射防止膜上に、上記レジスト材料(1)、(3)、(4)を、スピンナーを用いてそれぞれ塗布し、ホットプレート上で、120℃で60秒間のプレベーク(PAB)を行い、乾燥することにより、膜厚100nmのレジスト膜(第一のレジスト膜)を形成した。
次に、それぞれの前記第一のレジスト膜上に、保護膜形成用塗布液「TILC−057」(商品名、東京応化工業株式会社製)を、スピンナーを用いて塗布し、90℃で60秒間加熱することにより、膜厚35nmのトップコートを形成した。
次に、該トップコートが形成された第一のレジスト膜に対して、ArF露光装置NSR−S609B(ニコン社製;NA(開口数)=1.07,Dipole(0.78/0.97))により、ライン幅50nm/ピッチ100nmのラインアンドスペースのレジストパターン(L/Sパターン)をターゲットとするフォトマスク(6%ハーフトーン)を介して、前記第一のレジスト膜に対してArFエキシマレーザー(193nm)を選択的に照射した。
そして、110℃で60秒間の露光後加熱(PEB)処理を行い、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液「NMD−3」(商品名、東京応化工業社製)を用いて10秒間のアルカリ現像を行った。
その結果、前記第一のレジスト膜に、幅50nmのラインが等間隔(ピッチ100nm)に配置されたL/Sパターンが形成された。かかるL/Sパターンの形成における最適露光量Eop(mJ/cm
2、感度)をそれぞれ求めた。その結果を表4に示す。
【0376】
このようにして形成されたL/Sパターンについて、残膜量、露光余裕度(ELマージン)、ラインワイズラフネス(LWR)、ラインエッジラフネス(LER)をそれぞれ評価した。それらの結果を表4に示す。
【0377】
[残膜量]
残膜量は、SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧800V、商品名:S−9220、日立製作所社製)の断面写真から求めた。
【0378】
[露光余裕度(ELマージン)]
前記Eopで、L/Sパターンのラインがターゲット寸法(ライン幅50nm)の±5%(47.5nm〜52.5nm)の範囲内で形成される際の露光量を求め、次式によりELマージン(単位:%)を求めた。
ELマージン(%)=(|E1−E2|/Eop)×100
E1:ライン幅47.5nmのL/Sパターンが形成された際の露光量(mJ/cm
2)
E2:ライン幅52.5nmのL/Sパターンを形成された際の露光量(mJ/cm
2)
なお、ELマージンは、その値が大きいほど、露光量の変動に伴うパターンサイズの変化量が小さいことを示す。
【0379】
[ラインワイズラフネス(LWR)]
前記Eopにて形成されたライン幅50nm、ピッチ100nmのL/Sパターンにおいて、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧800V、商品名:S−9220、日立製作所社製)により、ライン幅を、1個のラインの長手方向に400箇所測定し、その結果から標準偏差(s)の3倍値(3s)を求め、そのなかで5個のラインの3sについて平均化した値を、LWRを示す尺度として算出した。
この3sの値が小さいほど、その線幅のラフネスが小さく、より均一幅のL/Sパターンが形成されたことを意味する。
【0380】
[ラインエッジラフネス(LER)]
L/Sパターンのラインごとの寸法ばらつきを評価した。
具体的には、測長SEM(走査型電子顕微鏡、加速電圧800V、商品名:S−9220、日立製作所社製)により、16個のラインのライン幅を計測し、その結果から算出した標準偏差(s)の3倍値(3s)を求めた。
このようにして求められる3sは、その値が小さいほどラフネスが小さく、均一な幅のL/Sパターンが得られたことを意味する。
【0381】
【表4】
【0382】
表4の結果から、予め精製した樹脂を含有するレジスト材料(3)、(4)を用いた試験例8、9は、未処理の樹脂を含有するレジスト材料(1)を用いた試験例7に比べて、残膜量が多いことから膜減りが抑制されており、ELマージンが良好で、LWR及びLERがいずれも低減していることが確認できた。
なお、レジスト材料(6)について同様の評価を行ったところ、ELマージンは試験例8〜9と比較して同程度に良好であったが、LWR及びLERがいずれも劣っていた。
これは、レジスト材料(3)、(4)においては、樹脂の精製によってモノマー、オリゴマー等の不純物が除去され且つ分子量分散度の小さい樹脂が配合されているため、と考えられる。