(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車のボディパネル等に貫通孔を形成してワイヤハーネス(複数の電線を束ねてコネクタ等を配置したもの)を挿通する際、貫通孔の縁によってワイヤハーネスが傷つくことを防止するために、当該貫通孔にグロメットが配置される。このようなグロメットは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のグロメットについて、
図9を参照して説明する。このグロメット100は、パンタグラフ式に伸縮自在に設けられたリップ101を有している。特許文献1は、リップが軸方向に引き伸ばされることにより縮径するので、グロメットをボディパネルの貫通孔に挿入する際に低い挿入力で済み、グロメットの取付作業性が向上するとしている。
【0004】
また、このグロメット100は、高い剛性を備えた円状連結部102を有している。特許文献1は、円状連結部が剛性を有することで、グロメットの本体全体を押し上げることができるとしている。即ち、仮にこの円状連結部が
剛性を備えていない場合、グロメットが簡単に変形してしまうので、ボディパネルの貫通孔にグロメットを押し込む作業が非常に困難になる。従って上記のように、グロメット100の一部に剛性を持たせる必要がある。
【0005】
また、このグロメット100は、リブ部103を有している。このリブ部103は、円状連結部に接続している。
図9に示すように、リブ部103は肉厚状に形成されており、これにより剛性を有している。このようにリブ部103を設けることにより、円状連結部102に対して、当該円状連結部102を押し上げる力を伝えることができる。仮にリブ部103が形成されていない場合、円状連結部102を押し上げる力を伝えることができないので、ボディパネルの貫通孔にグロメット100を押し込む作業が非常に困難になる。
【0006】
そして上記のように、
図9のグロメット100は剛性を有する肉厚部(円状連結部102やリブ部103など)を有しているので、グロメット100全体を押し上げることが可能となり、これによりリップ101を軸方向に引き伸ばして縮径させることができる。このように肉厚部によってリップ101を縮径させることができるので、グロメット100をボディパネルの貫通孔に挿入する際に、低い挿入力で取り付けることができるのである。
【0007】
また、このグロメットは、蛇腹部104を有している。これにより、グロメットから引き出されるワイヤハーネスを柔軟に屈曲させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、従来のグロメット100においては、剛性を有する肉厚部(円状連結部102やリブ部103など)を形成していた。しかし、このようにグロメット100に肉厚部を形成した場合、材料費がかかるだけでなく、グロメット100の重量も増大してしまうという問題がある。
【0010】
また特許文献1の場合は、肉薄の部分(リップ101)と肉厚の部分(円状連結部102及びリブ部103など)を形成するために、
図9に示すような複雑な形状の金型105が必要となり、当該金型105の脱型が困難になるという問題もある。更に、この金型を脱型させるためにはある程度の距離が必要となるため、蛇腹部104を設けることができない部分があるなど、蛇腹レイアウトに制限があった。
【0011】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、取付作業性を向上させるとともに、材料費を抑え、蛇腹レイアウトの自由度も向上させたグロメットを提供することにある。
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0013】
本発明の観点によれば、以下の構成のインナー付きグロメットが提供される。即ち、このインナー付きグロメットは、グロメットと、インナー部材と、を備える。前記グロメットは、その内部に電線を挿通可能であるとともに、弾性部材からなる。前記インナー部材は、前記グロメットの内部に配置されるとともに、前記グロメットよりも剛性の高い素材からなる。前記グロメットは、貫通孔に取り付けられる際に縮径する縮径部を有する。
前記インナー部材は、押込力伝達部を備える。前記インナー部材は、前記グロメットの内部において、前記縮径部の内周面との間に間隙を有して配置されている。前記グロメットを引き延ばした状態で、前記グロメットの内側を構成する壁面に前記インナー部材の前記押込力伝達部が当接することで、当該インナー部材が前記グロメットの内部で突っ張った状態になる。前記グロメットを通常状態に戻すと、前記壁面に前記押込力伝達部が当接しなくなる。前記グロメットの内部で前記インナー部材が突っ張ることで、前記縮径部が縮径した状態を維持可能に構成されている。
【0014】
これにより、インナー部材によってグロメットの剛性を確保することができる。従って、グロメットの剛性を高めるために当該グロメットを肉厚にする必要がなくなるので、材料費を節約することができる。また、従来のグロメットでは、剛性を確保するための肉厚部分と、柔軟性を実現するための肉薄部分と、を形成するために金型が複雑になりがちであったが、インナー部材によって剛性を確保する構成であれば、グロメットに肉厚部分を形成する必要もなくなるので、金型を単純化することができる。
そして、グロメット内部のインナー部材が、縮径部の縮径を阻害することがない。
【0017】
上記のインナー付きグロメットは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記グロメットは、その内部の電線を屈曲させて挿通させるように断面形状が略L字状に形成される。
【0018】
これにより、電線を屈曲させて配線することができる。また、グロメットの形状をL字状にすることにより、グロメットそのものがストッパとして機能し、当該グロメットの内部でインナー部材の位置がズレにくくなる。ただし、電線の方向を規制することができれば、グロメットの形状はL字状に限らず、I字状や、く字状であっても良い。
【0019】
上記のインナー付きグロメットは、以下のように構成されていることが好ましい。即ち、前記グロメットには、蛇腹部が形成されている。そして、前記インナー部材は、前記蛇腹部の内側には配置されていない。
【0020】
これにより、インナー部材が蛇腹部の変形を阻害することがない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の一実施形態に係るインナー付きグロメット10について説明する。このインナー付きグロメット10は、例えば自動車のパネル11等に穿設された貫通孔12にワイヤハーネス(電線を束ねてコネクタ等を配置したもの)13を通す際に、当該貫通孔12の縁によってワイヤハーネス13が傷つくことを防止するためのものである。
【0023】
前記パネル11は、例えば
図2に示すように、エンジンルーム側と車室側とを仕切るように設けられている。このパネル11に貫通孔12が形成され、当該貫通孔12にインナー付きグロメット10が取り付けられる。従って、インナー付きグロメット10は、エンジンルーム側と車室側とにまたがって配置される。そして、このインナー付きグロメット10の内部には、ワイヤハーネス13を挿通させることができるように構成されている。これにより、貫通孔12の縁によってワイヤハーネス13が傷つかないように保護しつつ、当該ワイヤハーネス13をエンジンルーム側から車室側に引き出すことができる。
【0024】
図1及び
図2に示すように、インナー付きグロメット10は、グロメット14と、当該グロメット14の内側に配置されたインナー部材15と、から構成されている。
【0025】
グロメット14は、柔軟性を備えた素材、例えばEPDM(エチレン−プロピレンゴム)から構成されている。
図4等に示すようにグロメット14は中空状に形成されており、その内部に電線を挿通させることができるように構成されている。
【0026】
グロメット14は、パネル11の貫通孔12に嵌合する本体部18を有している。本体部18には、車室側凸部(縮径部)21と、エンジンルーム側凸部22と、が形成されている。通常状態(グロメット14に対して負荷が掛かっていない状態(
図2の状態)をいう。以下同じ)において、車室側凸部21とエンジンルーム側凸部22は、その外周形状が、パネル11に形成された貫通孔12の輪郭形状よりも大きくなるように形成されている。また、車室側凸部21とエンジンルーム側凸部22との間は、嵌合凹部23となっている。通常状態において、嵌合凹部23の外周形状は、パネル11の貫通孔12の輪郭形状とほぼ一致するように構成されている。
【0027】
インナー付きグロメット10を貫通孔12に取り付ける際には、当該貫通孔12の縁に対して嵌合凹部23を嵌合させる。これにより、インナー付きグロメット10が貫通孔12から抜けてしまうことを、車室側凸部21とエンジンルーム側凸部22によって阻止することができる。
【0028】
本体部18の内部は空洞状に構成されており、かつ車室側凸部21の部分は肉薄に形成されている。従って、車室側凸部21の部分は高い柔軟性を備えている。これにより、車室側凸部21の径を、拡大又は縮小させるように変形させることが可能である。インナー付きグロメット10を貫通孔12に取り付ける際には、車室側凸部21を縮径させるように変形させることで、インナー付きグロメット10をエンジンルーム側から貫通孔12に押し込むことが可能となる。
【0029】
なお、
図4に示すように、中空状に形成された本体部18の内側を構成する壁面のうち、エンジンルーム側を構成する壁面を本体部底面20、車室側を構成する壁面を本体部天井面24と呼ぶ。ただしこれは便宜
上の呼称であって、本体部天井面24が上方、本体部底面20が下方に位置することを意味する訳ではない。
【0030】
図2に示すように、本実施形態のインナー付きグロメット10は、ワイヤハーネス13を略L字状に屈曲させて挿通させるように構成されている。具体的には、エンジンルーム側からパネル11の平面に対して略直交するようにワイヤハーネス13を通したのち、車室側に引き出されたワイヤハーネス13をパネル11に沿った方向に屈曲させて案内する。このため、グロメット14は、
図4に示すように断面形状が略L字状に形成されている。
【0031】
より具体的には、グロメット14は、平行案内部16と、垂直案内部17と、を備えている。平行案内部16は、パネル11よりも車室側に位置しており、その内部にワイヤハーネス13を挿通させることが可能に構成されるとともに、ワイヤハーネス挿通方向がパネル11の平面と略平行となるように形成されている。垂直案内部17は、パネル11よりもエンジンルーム側に位置しており、その内部にワイヤハーネス13を挿通させることが可能に構成されるとともに、ワイヤハーネス挿通方向がパネル11の平面に対して略垂直になるように形成されている。
【0032】
平行案内部16と垂直案内部17は、本体部18から突出して設けられている。
図4に示すように、平行案内部16の内部空間は本体部18の内部空間に連通しており、平行案内部16の内周壁の一部が、本体部天井面24に接続している。また
図4に示すように、垂直案内部17の内部空間は本体部18の内部空間に連通しており、垂直案内部17の内周壁は本体部底面20に接続している。
【0033】
また、垂直案内部17には、蛇腹状に形成された蛇腹部19が設けられている。これにより、エンジンルーム側において、ワイヤハーネス13を屈曲させることができる。なお、特許文献1の構成は、垂直案内部の付け根部分において複雑な金型が必要であり、当該金型離型の関係状、垂直案内部に蛇腹を形成できない部分があった。この点、本実施形態の構成は、垂直案内部の付け根部分に複雑な金型を必要としないので、蛇腹を形成できない部分もない。従って、蛇腹部19を自由にレイアウトすることができる。
【0034】
続いてインナー部材15について説明する。インナー部材15は、グロメット14よりも剛性のある素材、例えばPP(ポリプロピレン)から構成されている。
【0035】
図2に示すように、インナー部材15は、グロメット14の内側に配置される。
図5及び
図6に示すように、インナー部材15は、固定部25、ワイヤハーネス案内部26、押込力伝達部27から構成されている。
【0036】
固定部25は、グロメット14の本体部18の内部に収容される。また、固定部25は、本体部天井面24に当接するようにして配置されている。
図5及び
図6に示すように、固定部25にはランス28が形成されている。一方、
図3に示すように、グロメット14の本体部18には、前記ランス28を係合させるための係合孔29が形成されている。ランス28を係合孔29に係合させることにより、グロメット14に対してインナー部材15が固定される。
【0037】
図3及び
図4等に示すように、グロメット14の本体部天井面24及び平行案内部16には、スリット30が形成されている。このスリット30を広げるようにグロメット14を変形させることで、当該広げた部分から、インナー部材15をグロメット14の内部に入れることができる。
【0038】
ただしこのように平行案内部16にスリット30を設けていると、当該スリット30を介してワイヤハーネス13が外部に出てしまうので、ワイヤハーネス13をパネル11の平面と略平行に案内するという平行案内部16の機能を発揮させることができない。そこでインナー部材15が有するワイヤハーネス案内部26は、平行案内部16の長手方向に沿って形成され、当該平行案内部16の内側からスリット30の部分を塞ぐように配置されている。これにより、インナー付きグロメット10の内部に挿通されたワイヤハーネス13が、スリット30を介して外に出てしまうことがない。
【0039】
またインナー部材15は、固定部25から延伸して設けられた押込力伝達部27を有している。押込力伝達部27は、グロメット14の本体部18の内部において、垂直案内部17の軸線方向(ワイヤハーネス挿通方向)に沿って配置される。
【0040】
図2に示すように、通常状態において、押込力伝達部27の先端は、垂直案内部17の内部に若干入り込んだ状態となっている。即ち、押込力伝達部27の先端は、本体部底面20から若干突出しており、本体部底面20に当接していない。
【0041】
また通常状態において、インナー部材15は、蛇腹部19の内側に位置しないように配置されている。これにより、蛇腹部19が柔軟に変形することができるので、エンジンルーム側においてワイヤハーネス13を柔軟に屈曲させることができる。
【0042】
次に、このように構成されたインナー付きグロメット10を、パネル11に形成された貫通孔12に取り付ける際の作業について説明する。
【0043】
まず、ワイヤハーネス13の組み立て時、或いはワイヤハーネス13を車体に組み付ける際に、当該ワイヤハーネス13の適宜の箇所にインナー付きグロメット10を予め取り付けておく。
【0044】
インナー付きグロメット10を貫通孔12に取り付ける際には、作業者は、垂直案内部17の軸線方向でグロメット14を引き伸ばすようにして、当該グロメット14を変形させる。このようにグロメット14を引き伸ばすことにより、車室側凸部21が縮径する(
図7参照)。なお、
図2に示すように、通常状態において、インナー部材15と、車室側凸部21の内周面と、の間には間隙が形成されている。従って、車室側凸部21の縮径をインナー部材15が阻害することはない。
【0045】
上記のようにグロメット14を引き伸ばす作業を行い易くするため、グロメット14の本体部18を挟んで垂直案内部17の反対側には、作業者が指でつまむことができるツマミ部31を有している。作業者は、このツマミ部31と、垂直案内部17と、を手で持ってグロメット14を引き伸ばすことにより、車室側凸部21を容易に縮径させることができる。
【0046】
グロメット14を上記のように変形させることにより、インナー部材15は、グロメット14の本体部18に連れられて、垂直案内部17から離れる方向に移動する。この結果、インナー部材15の押込力伝達部27の先端が、垂直案内部17から引き出されて、本体部18の内部に完全に引き込まれる。この状態で、作業者は、垂直案内部17と本体部18との接続部近傍を指で押し潰すように変形させる。これにより、
図7に示すように、押込力伝達部27の先端を、本体部底面20に当接させることができる。
【0047】
ここで前述のように、インナー部材15は、ある程度の剛性を備えた素材として構成されている。従って、押込力伝達部27が本体部底面20に当接した状態においては、本体部18の内部において、本体部天井面24と本体部底面20との間でインナー部材15が突っ張った状態となる。従ってこの状態で作業者がツマミ部31から手を離しても、グロメット14が引き伸ばされた状態(即ち車室側凸部21が縮径した状態)を維持できる。
【0048】
作業者は、上記のようにして車室側凸部21を縮径させた状態で、当該車室側凸部21を貫通孔12に押し込むことにより、少ない挿入力でインナー付きグロメット10を取り付けることができる。しかも、グロメット14の内部においてインナー部材15が突っ張った状態となることにより、作業者がインナー付きグロメット10を押す力を、本体部天井面24に伝達することができる。これにより、当該押し込み作業をスムーズに行うことができる。このように、インナー部材15が、従来のグロメットの肉厚部(
図9の円状連結部102やリブ部103など)と同じ役割(グロメット14を引き伸ばすことにより車室側凸部21を縮径させる役割)を有しているので、インナー付きグロメット10を低挿入力で取り付けることができる。
【0049】
また、本実施形態のグロメット14及びインナー部材15は略L字状に形成されているので、作業者による押し込み力を確実に伝達することができる。即ち、仮にグロメット及びインナー部材が直線状に形成されていた場合、ワイヤハーネスの挿通方向でインナー部材がズレ易くなってしまい、前記押し込み力を確実に伝達することができない。この点、本実施形態のようにグロメット14及びインナー部材15を略L字状に形成することにより、グロメット14の形状自体がストッパとしての機能を有する。即ち、グロメット14の内部でインナー部材15が
図2の上側に向かって動こうとした場合であっても、インナー部材15の固定部25が、グロメット14の本体部18の内側から本体部天井面24に当接することにより、当該インナー部材15がそれ以上移動することを阻止する。このように、グロメット14の内部のインナー部材15の位置がズレてしまうことがないので、作業者による押し込み力を確実に伝達することができる。
【0050】
さて、作業者は、車室側凸部21を貫通孔12に押し込むと、インナー付きグロメット10から手を離す。これにより、グロメット14の弾性力によって、当該グロメット14が通常状態の形状に戻る。これにより、縮径していた車室側凸部21が通常状態に戻るので、インナー付きグロメット10が貫通孔12から抜けてしまうことを防止できる。
【0051】
また、グロメット14が通常状態に戻ることにより、押込力伝達部27の先端が垂直案内部17の中に入り込み、本体部底面20に当接しなくなる(
図2の状態)。このように、通常状態において、インナー部材15は、グロメット14内部において突っ張った状態とはならない。従って、通常状態において、インナー部材15が押込力を伝達することはない。このため、パネル11に取り付けられた状態のインナー付きグロメット10に対して、車室側から押し付けるような力が発生した場合(本体部18が
図2の下向きに押さえ付けられるような場合)、グロメット14内部でインナー部材15が突っ張っていないので、グロメット14は潰れるようにして変形することができる。このようにグロメット14が変形することにより、車室側凸部21の径が拡大する(
図8の状態)ので、前記押し付け力によってインナー付きグロメット10がパネル11から外れてしまうことを防止できる。
【0052】
以上で説明したように、本実施形態のインナー付きグロメット10は、グロメット14と、インナー部材15と、を備えている。グロメット14は、その内部にワイヤハーネス13を挿通可能であるとともに、弾性部材からなる。インナー部材15は、グロメット14の内部に配置されるとともに、前記グロメット14よりも剛性の高い素材からなる。
【0053】
これにより、インナー部材15によってインナー付きグロメット10の剛性を確保することができる。従って、グロメット14の剛性を高めるために当該グロメット14を肉厚にする必要がなくなるので、材料費を節約することができる。また、従来のグロメット14では、剛性を確保するための肉厚部分と、柔軟性を実現するための肉薄部分と、を形成するために金型が複雑になりがちであったが、インナー部材15によって剛性を確保する構成であれば、グロメット14に肉厚部分を形成する必要もなくなるので、金型を単純化することができる。
【0054】
また本実施形態のインナー付きグロメット10において、グロメット14は、貫通孔12に取り付けられる際に縮径する車室側凸部21を有している。そしてインナー部材15は、グロメット14の内部において、車室側凸部21の内周面との間に間隙を有して配置されている。
【0055】
これにより、グロメット14内部のインナー部材15が、車室側凸部21の縮径を阻害することがない。
【0056】
また本実施形態のインナー付きグロメット10において、グロメット14は、その内部のワイヤハーネス13を屈曲させて挿通させるように断面形状が略L字状に形成されている。
【0057】
これにより、ワイヤハーネス13を屈曲させて配線することができる。また、グロメット14の形状をL字状にすることにより、グロメット14そのものがストッパとして機能し、当該グロメット14の内部でインナー部材15の位置がズレにくくなる。
【0058】
また本実施形態のインナー付きグロメット10において、グロメット14には、蛇腹部19が形成されている。そして、インナー部材15は、蛇腹部19の内側には配置されていない。
【0059】
これにより、インナー部材15が蛇腹部19の変形を阻害することがない。
【0060】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0061】
上記実施形態のインナー付きグロメット10は、車体の車室側とエンジンルーム側にまたがって配置するとして説明したが、必ずしもこのように配置される必要はない。また、車体のパネルに限らず、例えば建築物の壁面パネルに形成された貫通孔にインナー付きグロメットを配置しても良い。このように、本願発明のインナー付きグロメットは、貫通孔に電線を挿通させる際に広く利用することができる。
【0062】
インナー部材15はPP等の合成樹脂からなるとして説明したが、グロメット14よりも剛性が高い素材であれば良く、インナー部材15の素材は特に限定されない。ただし、合成樹脂であればインナー部材15の形状を比較的自由に形成できるうえ、軽量化も実現できるので好適である。また、グロメット14の素材も、柔軟性を備えた素材であれば良く、特に限定されない。
【0063】
上記実施形態のインナー付きグロメット10は、ワイヤハーネス13をL字状に屈曲させて挿通させる構成としたが、これに限らず、例えば略く字状に屈曲させて挿通させる構成でも良い。また、本発明の特徴はグロメットの内部にインナー部材を配置したことにあるので、ワイヤハーネス13を屈曲させる構成に限らず、ワイヤハーネス13を直線状に挿通させる構成にも本発明を適用することができる。