(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法によれば、鋳塊の状態での品質を確認することで、その後の圧延工程以降で製品に不良が混入することを防止することができる。しかしながら、鋳塊を全て上述の方法で検査することは必ずしも容易ではない。
【0007】
特に、連続して長尺の鋳塊を鋳造する方法として、回転式移動鋳型がある。回転式移動鋳型は、通常のビレット・スラブ用連続鋳造と異なり、より長い鋳塊を連続して製造することが可能である。しかし、欠陥は鋳塊の端部にのみ形成されるわけではない。このため、特許文献1による方法では、ごく限られた用途に対してのみしか適用することができない。
【0008】
一方、鋳塊の品質に影響を与える要因としては、例えば、鋳型内部の溶湯のモールド高さ(以下「湯面高さ」)がある。湯面高さが変動することで、鋳塊表層のチル層の厚みや金属組織の大きさなどが安定しないばかりでなく、溶湯のあふれや、湯切れなどの鋳造トラブルの要因ともなる。
【0009】
特に、前述した回転式移動鋳型においては、スパウトからの注入量に対する鋳型内部の溶湯容量(鋳型サイズ)が極めて小さい。このため、鋳型へ注湯量のわずかな変動により、鋳型内部の湯面が大きく変動する。このように鋳造時の湯面変動が大きいと、鋳塊の品質が安定せず、特に当該鋳塊を極細銅合金線とする場合には、鋳塊の品質に起因するミクロ欠陥等の影響を受け、伸線時に破断等の恐れがある。
【0010】
また、鋳塊の品質に影響を与える他の要因としては、例えば、溶湯の成分組成がある。成分組成が基準範囲を超えると、製品として必要な性質を得ることができず、不良となる。このように、様々な鋳塊の製造条件が鋳塊の品質に影響を与える。
【0011】
しかし、このような鋳塊の品質は、前述した特許文献1の方法では検知することが困難である。また、製品加工後にその品質を検査したのでは、不良部位であった鋳塊に対しても後加工を行うこととなり、製造効率が悪い。また、例えば伸線加工後に不良であると発見されると、当該不良部位を除去し、この除去した部位を再度溶解して原料として用いる場合があるが、細かな形状となってから不良となるのは、それまでに費やした加工コストを無駄にすることとなることに加え、再溶解に当たって、異物混入リスクや分別のためのコストがかさむ。したがって、より早期に不良を検知して製品の良否判断を行う必要がある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、鋳塊の品質を確保するとともに、早期に鋳塊品質を判断することが可能な金属鋳塊製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達するために第1の発明は、溶湯を鋳型内で連続して鋳造する金属鋳塊の製造方法であって、前記鋳型で凝固させる前の溶湯情報を連続的に取得し、得られた溶湯情報
は、前記鋳型内の湯面高さ、前記鋳型内に注湯される溶湯の温度、前記溶湯の成分組成の少なくとも一つを含み、前記鋳型に溶湯を注ぐスパウトと、前記スパウトの開度を調節するピンと、前記鋳型の内部の溶湯の湯面を撮影するカメラと、前記カメラで撮影された画像を解析する解析部と、前記解析部で解析された情報に基づき、前記スパウトの開度を調節する第1の制御部と、を用い、前記解析部は、前記カメラで撮影された湯面画像に対し、所定の幅を有し、前記湯面を含み湯面の上下動方向に解析帯を設定し、前記解析帯の内部の画像を溶湯部と非溶湯部とに二値化して、前記解析帯の長手方向に対する二値データの変化率を求め、算出された変化率のピークが所定の基準値以上である位置の内、最も低い位置を湯面高さと認定し、前記第1の制御部は、前記湯面高さと基準湯面高さとを比較して、前記スパウトの開度を調整するとともに、溶湯情報である前記解析部で得られた前記鋳型内の湯面高さを、予め記憶されている基準製造条件と比較し、前記溶湯情報が前記基準製造条件から外れた場合、前記溶湯情報の取得位置および時刻から、当該溶湯情報が得られた溶湯が凝固することで形成される鋳塊の異常鋳塊位置を算出し、前記鋳型の後方の連続工程に当該情報を伝達することを特徴とする金属鋳塊の製造方法である。
【0016】
前記溶湯の比抵抗を連続的に測定する測定部と、前記測定部で測定された比抵抗から前記溶湯の成分組成を連続的に調整する第2の制御部と、を用い、前記第2の制御部は、予め把握されている各成分における比抵抗と成分量との関係から前記溶湯の成分組成を算出し、その結果に基づき前記溶湯中の成分組成を調整するとともに、前記溶湯情報である前記第2の制御部で算出された前記溶湯の成分組成を、予め記憶されている基準製造条件と比較してもよい。
【0017】
前記鋳型の後方の連続工程において、前記異常鋳塊位置に対応する部位の鋳塊または加工品を除去することが望ましい。この場合、前記鋳型の後方の連続工程には、圧延工程が設けられ、前記異常鋳塊位置に対応する部位の鋳塊を前記圧延工程の前で除去することが望ましい。
【0018】
第1の発明によれば、溶湯状態での製造条件を基準製造条件と比較して、鋳塊の良否を判断するため、早期に鋳塊の良否を知ることができる。また、溶湯情報を連続して取得することで、連続して鋳塊の品質を知ることができる。特に、鋳塊(製品)の品質に影響を与える、鋳型内の湯面高さ、鋳型内に注湯される溶湯の温度、または溶湯の成分組成によって鋳塊の良否を判断することで、確実に製品不良となる鋳塊異常部を除去することができる。
【0019】
また、湯面高さを解析する画像解析を用い、所定の幅を有する解析帯を設定し、解析帯の幅内での溶湯部と非溶湯部の二値データ(白黒)の色の変化率により湯面位置を認定するため、湯面の波立ちや湯はねなどの影響を受けにくく、正確に湯面高さを知ることができる。また、この際、万が一湯面高さが基準製造条件範囲から外れた場合には、当該部位に対応する鋳塊を異常部とすることができる。
【0020】
ここで、二値データの変化率とは、白黒の二値データを、解析帯の長手方向の長さh(幅方向に垂直であって湯面の変動方向)に対して、解析帯の幅全体でそれぞれの長手方向位置(dh)において色の変化の微分値を解析し、これにより求められる変化率である。例えば、湯面の波立ち等がなく、湯面がある高さで一定である場合における、溶湯位置と非溶湯位置との境界では、変化率は最大(100%)となる。また、溶湯部または非溶湯部の内部であって、変化がない場合には最低(0%)となる。
【0021】
また、溶湯の比抵抗を連続して測定することで、溶湯の成分組成を連続して知ることができる。このため、所望の成分組成となるように、溶湯の成分組成を連続して調整することができる。また、この際、万が一成分組成が基準製造条件範囲から外れた場合には、当該部位に対応する鋳塊を異常部とすることができる。
【0022】
第2の発明は、溶湯を鋳型内で連続して鋳造する金属鋳塊の製造装置であって、前記鋳型で凝固させる前の溶湯情報を連続的に取得する溶湯情報取得部と、前記溶湯情報取得部で得られた溶湯情報を、予め記憶部に記憶されている基準製造条件と比較する比較部と、前記溶湯情報が前記基準製造条件から外れた場合、前記溶湯情報の取得位置および時間から、当該溶湯情報が得られた溶湯が凝固することで形成される鋳塊の異常鋳塊位置を算出する異常鋳塊位置算出部と、前記鋳型の後方の連続工程において、前記異常鋳塊位置に対応する部位の鋳塊または加工品を除去する異常鋳塊除去部と、
前記鋳型に溶湯を注ぐスパウトと、前記スパウトの開度を調節するピンと、前記鋳型の内部の溶湯の湯面を撮影するカメラと、前記カメラで撮影された画像を解析する解析部と、前記解析部で解析された情報に基づき、前記スパウトの開度を調節する第1の制御部と、を具備し、前記溶湯情報取得部は、前記鋳型内の湯面高さ、前記鋳型内に注湯される溶湯の温度、前記溶湯の成分組成の少なくとも一つの溶湯情報を取得
し、前記解析部は、前記カメラで撮影された湯面画像に対し、所定の幅を有し、前記湯面を含み湯面の上下動方向に解析帯を設定し、前記解析帯の内部の画像を溶湯部と非溶湯部とに二値化して、前記解析帯の長手方向に対する二値データの変化率を求め、算出された変化率のピークが所定の基準値以上である位置の内、最も低い位置を湯面高さと認定し、前記第1の制御部は、前記湯面高さと基準湯面高さとを比較して、前記スパウトの開度を調整するとともに、前記比較部は、溶湯情報である前記解析部で得られた前記鋳型内の湯面高さを、予め記憶されている基準製造条件と比較することを特徴とする金属鋳塊の製造装置である。
【0023】
第2の発明によれば、早期に溶湯情報から鋳塊の良否を判断し、該当する異常部を確実に除去することができる。したがって、後工程の加工が進む前に該当する部位を確実に除去することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、鋳塊の品質を確保するとともに、早期に鋳塊品質を判断することが可能な金属鋳塊製造方法等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、連続鋳造圧延装置1を示す概略図である。なお、以下の説明では、連続鋳造圧延装置の例として、回転移動鋳型を用いた銅合金の連続鋳造の例を示すが、本発明はこれに限られない。例えば、本発明は、他の金属に対しても当然に適用可能であり、また、たとえば一対のベルトにより構成されるいわゆるツインベルト式(回転)移動鋳型等などの他の連続鋳造方法にも適用可能である。連続鋳造圧延装置1は、主に、シャフト炉3、樋5、混合槽6、タンディッシュ7、ホイール11等からなる回転移動鋳型、圧延機17、巻取機23等から構成される。
【0027】
シャフト炉1は、例えば電気銅の地金等を還元性雰囲気で溶解する。シャフト炉1で溶解された溶湯は、樋5および混合槽6を介してタンディッシュ7内に連続的に導かれる。混合槽6等の構成については詳細を後述する。
【0028】
混合槽6からの合金溶湯は、フィルターを介してタンディッシュ7内に連続的に移送される。タンディッシュ7内の溶湯は、スパウト9を介して、不活性ガス又は還元性ガスでシールされた状態でベルト15およびホイール11により構成された回転移動鋳型内に注湯される。ベルト15は、複数のターンロール13によって移動し、ホイール11の外周の一部を覆う。ホイール11の外周に形成された凹部(図示せず)とベルトで囲まれた空間が鋳型となる。
【0029】
鋳型に注湯された溶湯は、当該鋳型内で冷却固化されて鋳塊19となる。鋳塊19は、鋳型から連続的に引き出されて、圧延機17で連続圧延されて線材21となる。線材21は、巻取機23で巻き取られる。
【0030】
ここで、本発明における鋳塊とは、本実施形態のように、連続して溶湯から直接凝固させて得られる鋳造品の全てを指す。すなわち、連続して得られる鋳造品であれば、その形態によらずすべて鋳塊と称する。
【0031】
次に、混合層6における化学組成の制御について説明する。
図2は、混合槽6近傍を示す平面概略図である。前述の通り、シャフト炉3からの溶銅が樋5を介して混合槽6へ移送される。また、添加元素溶解炉2から出湯した合金元素成分を含む高濃度溶湯が、計測樋4を介して混合槽6に流入する。なお、混合槽6の前に脱酸・脱水素ユニットを設けることが好ましい。また、添加元素溶解炉2は1基で所定量の合金を製造することができるが、より好ましくは2基以上設置し交互に出湯することで大量の合金を製造することができる。
【0032】
添加元素溶解炉2において高濃度溶湯を製造する際には、Ni、Co、Si、Sn等の添加元素又それを含有する母合金を同時に溶解炉に添加する。約1100℃以上に加熱すると急激な混合熱が生成し、局所的に1600℃以上にもなる。この熱を隣接するSi等に伝播することで、熱膨張により表面酸化膜が破壊されて容易に溶解を進めることができる。このことから、Siの還元処理などが不要となり安価なSiが使用できる。また、この混合熱が連鎖的に周辺のNiやSiの溶解に利用されることで大幅な省エネルギーで溶解が可能となる。
【0033】
また、計測樋4では、溶湯量が、例えば測定部である湯面センサ12で測定される。なお、計測樋4における溶湯量の計測はロードセルを用いる方法等どのような手段でも良い。この溶湯量から溶湯通過量が算出される。なお、傾動式の添加元素溶解炉の場合には、傾動角度とそこからの出湯量の関係は予め把握される。また、加圧式の添加元素溶解炉の場合には、加圧ガス注入量とそこからの出湯量の関係はテスト操業等により、予め把握することができる。したがって、得られた溶湯量から、所望の溶湯量となるように適宜添加元素溶解炉からの出湯量を調整することができる。
【0034】
また、
図2に示すように、測定部として、混合槽6に電気抵抗検出用の検出器8を設け、付設した溶湯の比抵抗を測定してもよい。合金溶湯の電気抵抗については、事前に各種の成分比率に調整された高濃度融体を純銅溶湯に添加し、比抵抗を求めることで、合金溶湯の比抵抗値から銅合金の成分組成を把握することができる。合金溶湯はNi、CoやSiを含有することから、これらの成分組成と比抵抗値との関係は直線性が強いからである。
【0035】
すなわち、制御部によって、予め把握している各成分の比抵抗と成分量との関係を用いてその合金溶湯中の成分組成を簡単な演算器で算出することができる。なお、純銅溶湯の比抵抗値は、例えばブランクテスト(対照試験)に用いるものである。この結果に基づいて、添加元素の添加量、添加元素の種類または銅溶湯量を制御部で変更し、合金組成を補正し、所定の合金組成とするフィードバック制御を行うことができる。すなわち、得られた成分組成から、所望の溶湯成分となるように適宜添加元素溶解炉からの出湯量を制御部によって調整することができる。
【0036】
図3では、検出部8の一例を示す。検出部8は一端閉となっている円筒状である。検出部8内には絶えず新しい溶融金属が入る必要があるため、検出部8内において加圧・排気を繰り返し、検出部8内の溶融金属の入れ替えが可能である。なお、
図3の構成では、溶融金属の静水圧によって減圧することなく検出部8内に新しい溶融金属が流入することで、構造的には簡便なものとなっている。
【0037】
検出部8においては、混合槽6内の溶湯を電圧検出部10a、10bで測定する。電圧検出部10a、10bは先端のみ導体部が露出し、他の部位は絶縁部14で覆われる。検出部8によって、混合槽6内の溶湯の比抵抗を連続して測定することで、前述の通り、基準となる成分組成となるように、連続して添加元素溶解炉2からの出湯量を制御することができる。
【0038】
なお、成分組成を検出する検出部は、溶融金属の流れの経路自体(たとえば樋5の一部や計測樋4)に設けてもよい。この場合には加圧機構も不要となる。また、溶湯中の電気抵抗は、前述のような直流電流またはパルス電流を用いた4端子法で測定することが望ましいが、渦電流を用いても良い。
【0039】
また、主成分の一部が酸化、炭化等により介在物を生成するものがある。これらの介在物は一般的には絶縁体であるが、一部のものは導電体である。例えば酸素を100〜500ppm含有するSn入り銅合金の場合には、多くのSnがSnO
2を形成していることは周知の事実であるが、このSnO
2の融点が1126℃であることから、この温度以下であれば固体酸化物を形成し、この温度以上であれば液体酸化物を形成する。
【0040】
そのために、比抵抗測定を行う部位で溶湯中の温度および/または酸素濃度を例えば、熱電対やジルコニアを用いた濃淡電池形ジルコニア式酸素分析計で同時に測定し、その温度および/または溶存酸素量と比抵抗結果から溶湯中の成分量を算出することで、更に測定精度の向上を図ることができる。
【0041】
なお、溶湯の比抵抗を測定するに当たって、検出部と添加元素の添加部位が著しく近接する場合には、攪拌し成分の均一化が必要となる。このために、ガスバブリングを行なうが、30W/m
3以上の攪拌エネルギーが必要であり、より好ましくは100W/m
3以上が良く、多くても400W/m
3程度までである。ここで言うガスバブリングによる攪拌エネルギー(ε:W/m
3)は、「森、佐野ら、『鉄と鋼』、Vol.67(1981)P.672−695」にて報告されている式から算出することができる。また、機械攪拌では、20W/m
3以上の攪拌エネルギーεが必要であり、より好ましくは100W/m
3以上が良く、多くても400W/m
3程度までである。
【0042】
すなわち、高濃度溶湯と純銅溶湯とが合流する合流部において、機械攪拌又は気泡攪拌により攪拌動力を与えて均一化し、高濃度溶湯と純銅溶湯が均一に混合した合金溶湯の比抵抗値を合金溶湯の構成元素の成分組成として利用してもよい。また、高濃度溶湯を添加元素溶解炉2から出湯する際に、その出湯量の制御の精度向上のためには例えば、混合槽6までに三角堰又は四角堰のような堰を設けた計測樋4を設置し、その堰を乗り越えて溶湯が流れていくようにしてもよい。この一方または両方の値を用いて測定を行えばよい。
【0043】
ここで、制御部は、測定された比抵抗から、溶湯情報である化学組成を算出し、これが基準値となるように制御を行うと同時に、本発明では、基準製造条件(ここでは成分範囲)と常に比較して、基準製造条件から外れることがないか連続して監視する。基準条件範囲から成分組成が外れると、制御部は、成分組成の測定位置(すなわち溶湯情報の取得位置)およびその時刻から、当該溶湯が凝固して鋳塊となる位置を算出する。この異常鋳塊位置が後方の各工程に送られて、後方において該当する位置の鋳塊を除去することができる。
【0044】
例えば、
図1に示す圧延機17の前で鋳塊を除去すれば、不良部分である異常鋳塊に対して不要な加工を行うことがなく、確実に不良部を除去することができる。この際、圧延前の鋳塊は、再溶解した際に、単位重量当たりの表面積が小さいため酸化損失も小さく、効率良く再溶解することができる。
【0045】
次に、鋳型内の湯面高さの制御について説明する。
図4は、
図1のA部拡大図であり、鋳型への溶湯の注湯部近傍を示す図である。前述の通り、ターンロール13によってベルト15がホイール11の外周面に密着されて、ベルト15とホイール11外周面との空間が鋳型となる。鋳型へは、タンディッシュ7からスパウト9を介して溶湯29aが注湯される。ホイール11は、回転しながら(図中矢印B方向)連続的に内部の溶湯を冷却固化する。したがって、溶湯29aは連続的に鋳型内部へ注湯される。
【0046】
鋳型内部の溶湯の湯面27は、カメラ25により常に監視される(図中矢視C方向)。カメラ25は例えばCCDカメラである。湯面27は、略一定の速度で回転するホイール11で連続的に鋳造される量と、注湯される溶湯量29aとのバランスによって変動する。特に、本実施形態のように、回転移動鋳型は、スパウト9の内径に対する湯面の面積が小さい(湯面の面積が、スパウト内径の約5〜30倍程度)。このため、スパウト9からの出湯量のわずかな変化によっても、湯面が大きく変動する恐れがある。
【0047】
図5は、
図4におけるカメラ25による撮影方向から見た鋳型近傍の概略図である。カメラ25は、鋳造作業等に影響を及ぼさない範囲で、鋳型の斜め上方から湯面を撮影する。すなわち、カメラ25は、鋳型の内部の湯面27を含む、出湯部の溶湯29aや、溶湯の飛沫等の溶湯29b等を撮影する。
【0048】
図6は、
図5のD部の画像であって、カメラ25の撮影視野の概念図であり、
図6(a)は、溶湯部と非溶湯部とを二値化した画像を示し、
図6(b)は、各解析枠等を重ね合わせた状態を示す画像である。
【0049】
カメラ25により撮影された画像では、溶湯の輝度が極めて高い。このため、解析部(図示省略)により、カメラ25で撮影された画像が二値化されると、
図6(a)に示すように、溶湯29a、29b、湯面27(
図5)が、それぞれ、溶湯部31a、31b、31cとして白色となり、他の部位が非溶湯部33として黒色で判断される。
【0050】
また、
図6(b)に示すように、解析部は、得られた画像に対して、解析帯35、溶湯パターン37、注湯監視部43等の各種解析枠等を設定する。解析帯35は、湯面(溶湯部31c)を含み、湯面の変動方向が長手方向(図中矢印E方向)となるように所定の幅で設定される。解析帯35の幅は、解析帯35の一部に出湯部(溶湯部31a)にかからないような範囲でできるだけ広くなるように設定される。
【0051】
解析帯35内部では、解析部によって二値データの変化率が算出される。ピーク表示部41では、算出された二値データの変化率のピークが表示される。すなわち、解析帯35の長手方向のそれぞれの位置における変化率を解析帯35に垂直な方向(図中矢印F方向)に表示する。
【0052】
図7は、解析帯35およびピーク表示部41の拡大図であり、横軸をE方向(
図6(b))、縦軸をF方向(
図6(b))とした図である。解析帯35の内部では、2値化されたデータが解析される。解析部は、溶湯部31c(白色部)と、非溶湯部33(黒色部)との境界を算出する。例えば、解析帯35内部において、図中左側(湯面が低い側)から、長手方向右側に向けて、微小範囲(dh)における色の変化率を微分して算出する。図に示す例では、湯面近傍で大きなピーク45が得られる。なお、ピーク45は、湯面の低い側からの色の変化として、白から黒への変化について変化率を算出する。すなわち、黒から白への変化部はピークとして算出しない。したがって、溶湯部(白)から非溶湯部(黒)となる境界のみを湯面として認識し、非溶湯部(例えば鋳型の影)と溶湯部との境界は湯面とは認識しない。
【0053】
実際には、湯面は多少の波立ちがあるため、解析帯35の幅全体において湯面が一定とはならない場合がある。また、本発明では、0.1秒ごとに画像を解析し、例えば6点(0.6秒間)の移動平均によりピークを算出する。したがって、解析帯35の幅全体における湯面は、常に一定とはならず、ピーク45としては100%とならない場合がある。
【0054】
本発明では、ピーク45が閾値47を超える位置の中で、最も湯面の低い側を湯面と認定する。すなわち、
図5の例では、G位置を湯面と認識する。ここで、閾値47としては、50〜80%と設定される。50%未満では、溶湯の波や飛沫を湯面と誤認識する恐れがあり、また、80%以上では、湯面の波立ち等によって湯面自体を認識できない恐れがあるためである。
【0055】
このようにすることで、湯面の波立ちの影響をできるだけ小さくすることができる。また、飛沫などの溶湯部31bは、ピークが閾値を超えることがなく、湯面の誤認識を防止することができる。以上のようにして、解析帯35内部の湯面位置を算出することができる。
【0056】
また、
図6(b)に示すように、出湯部である溶湯部31c内部において、例えば帯状の注湯監視部43が設定される。注湯監視部43はスパウト開度を調整して出湯量を絞った際にも、常に溶湯が位置する部位に設定される。通常時には、注湯監視部43の内部には、監視中、常に溶湯部(白色)が存在する
【0057】
注湯監視部43は、注湯部における溶湯部31aの溶湯幅(図中N)を監視する。注湯監視部43で得られた注湯部における溶湯部31aの溶湯幅の情報によって、スパウトから出湯される溶湯量が計算される。例えば、事前に試験等で得られた溶湯幅と出湯量との関係式から、出湯量を予測することができる。
【0058】
なお、万が一スパウトが詰まることで溶湯が注湯されなくなったり、カメラ異常や、カメラの前に障害物等が映り込むことで、正確な湯面監視ができない状況となると、注湯監視部43において、溶湯部31aの溶湯幅が0となる。この場合には、監視部は異常と認識して、異常信号を発信する。具体的には、作業者等に異常を知らせるための警報を発信したりライトを点灯させて、鋳造装置を安全に制御する。
【0059】
また、解析部は溶湯パターン37を記憶する。溶湯パターン37は、鋳型内部の溶湯部31cの先端部のカメラ画像視野における形状と一致する。すなわち、溶湯パターン37は、少なくとも常に溶湯があるべき部位の白色部の形状の一部である。解析部は、溶湯パターン37をパターン制御範囲39内部の所定の位置に設定する。
【0060】
図8は、溶湯パターンによる制御を示す概念図である。
図8(a)に示すように、溶湯パターン37は、溶湯部31cの先端側(低湯面側)の先端形状と一致する。解析部は、パターン制御範囲39内において、溶湯パターン37と一致する溶湯部(白色部)を探し、当該部位に溶湯パターン37を配置する。この際、解析帯35等の他の解析枠は、溶湯パターン37の位置に応じて設定される。
【0061】
図8(b)は、
図8(a)の状態から溶湯部31cの位置がずれた状態(図中矢印H方向)を示す図である。このような状況としては、例えば、カメラや鋳型の振動の影響や、鋳型のサイズ変更や鋳型の摩耗等に伴う湯面(鋳型)位置の変動の影響を受ける場合である。
図8(b)に示すように、溶湯部31cの位置が変動することで、解析帯35内部における湯面の算出ができなくなる。
【0062】
これに対し、本発明では、
図8(c)に示すように、パターン制御範囲39内部において、常に溶湯パターン37の位置を溶湯部31cに追従させるため、溶湯部31cの位置が変動しても、この溶湯部31cの位置に応じて解析帯35等の解析枠の位置が常に適切な位置に補正される(図中矢印I方向)。したがって、溶湯部31cの位置変動によらず、常に正確な湯面位置を把握することができる。
【0063】
なお、パターン制御範囲39は、溶湯パターン37の位置の誤認識がない範囲で設定される。例えば、
図6(a)に示すように、溶湯部31cの先端部形状は、溶湯部31a先端部形状と近似する。このため、パターン制御範囲を設定せず、またはパターン制御範囲が大きすぎると、溶湯パターン37の位置を溶湯部31aの先端位置と誤認識する恐れがある。このため、パターン制御範囲39は、溶湯パターン37が移動する可能性のある範囲(溶湯部31aが映り込まない範囲)であらかじめ設定される。
【0064】
本発明では、上述のようにカメラの振動等の影響を受けることがないため、カメラを鋳造装置の近くに配置することができる。このため、撮影視野の光量を十分確保することができる。このため、シャッタースピードを上げることができる。このため、振動による画像ブレの影響をより小さくすることができる。また、溶湯部の近くで撮影することで、高い解像度を得ることができる。
【0065】
ここで、制御部は、解析により求められた溶湯情報である鋳型内の湯面高さから、これが基準値となるようにスパウト開度の制御を行うと同時に、本発明では、基準製造条件範囲(ここでは鋳型内湯面高さ範囲)と常に比較して、基準製造条件から外れることがないか連続して監視する。基準製造条件範囲から湯面高さが外れると、制御部は、湯面高さの測定位置である鋳型の配置(すなわち溶湯情報の取得位置)およびその時刻から、当該溶湯が凝固して鋳塊となる位置を算出する。この異常鋳塊位置が後方の各工程に送られて、後方において該当する位置の鋳塊を除去することができる。
【0066】
例えば、前述した成分組成異常の場合と同様に、
図1に示す圧延機17の前で鋳塊を除去すれば、不良部分の鋳塊に対して不要な加工を行うことがなく、確実に不良部を除去することができる。
【0067】
次に、本発明の溶湯の化学組成制御を用いた金属鋳塊製造工程を説明する。
図9は溶湯成分組成による鋳塊良否判断工程を示すフローチャートである。まず、測定部は鋳型より前の工程において溶湯の比抵抗を測定する(ステップS10)。
【0068】
次に、制御部は、得られた溶湯の比抵抗から溶湯の化学組成を算出する。(ステップS11)。なお、溶湯の比抵抗と各成分組成の関係は、予め求められおり、記憶部等に記憶されている。制御部は、記憶部に記憶された情報と得られた比抵抗とを比較して、各成分組成を算出する。
【0069】
次に、制御部は、算出された溶湯の化学組成を基準成分組成と比較する。基準成分組成は、例えば、基準製造条件範囲(許容化学組成範囲)の中心である。制御部は、比較の結果に応じて、添加元素の高濃度溶湯の添加量(添加元素溶解炉からの出湯量)を制御する(ステップS12)。
【0070】
さらに、制御部は、算出された化学組成が基準製造条件範囲内であるかどうかを判断する(ステップS13)。化学成分が基準製造条件範囲内であれば、ステップ10に戻り、上記の工程を連続して繰り返す。
【0071】
一方、算出された化学組成が基準製造条件範囲外である場合には、制御部は、当該溶湯成分組成の測定位置と時刻とから、当該溶湯が凝固して鋳塊となる位置(すなわち異常鋳塊位置)を算出する(ステップS14)。なお、異常鋳塊位置は、測定部の配置や、測定位置から鋳型内までの溶湯量等に応じて適切に設定される。
【0072】
次に、制御部は、得られた異常鋳塊位置の情報を後工程に発信する(ステップS15)。ここで、後工程とは、当該鋳造により得られた鋳塊がそのまま連続して検査・加工などを受ける工程であり、例えば連続した同一ライン上に設置される工程を指す。例えば、
図1の例では、圧延機17、巻取機23等である。異常鋳塊位置を受け取った各工程においては、自動または手動で当該部位が除去される。例えば、圧延工程前に当該部位が切断除去される。
【0073】
なお、製品に加工した後に該当する部位を除去しても良く、または、当該情報を製品の品質ランク付けの基準として用いても良い。以上の制御を連続して行うことで、連続して全長にわたって鋳塊(製品)の品質を確保できるとともに、早期に異常部を発見し、除去することができる。
【0074】
次に、本発明の湯面制御方法を用いた金属鋳塊製造工程を説明する。
図10は湯面制御による鋳塊良否判断工程を示すフローチャートである。まず、解析部は解析帯および閾値を設定する(ステップS20)。解析帯の幅および長さと、閾値は、例えば記憶部に記憶された情報を読み出せばよい。
【0075】
次いで、溶湯を鋳型に注湯してカメラによる解析を開始する。まず、溶湯部先端形状のパターンを認識し、解析帯や注湯監視部等の位置を設定する(ステップS21)。この状態で、解析帯内部の白黒の変化率を算出しピークを解析する(ステップS22)。なお、ピークの算出としては、例えば6点の移動平均を取る。また、ピークの解析毎にステップS21を実施してもよい。
【0076】
次に、解析部は、算出されたピークと閾値とを比較し、最も湯面の低い側の閾値よりも高いピーク位置を湯面高さと認定する(ステップS23)。
【0077】
次に、制御部は、得られた湯面高さと基準湯面高さとを比較し、その差に応じてスパウトの開度制御量を算出する(ステップS25)。なお、スパウト開度制御はPID制御のゲインを最適化して、ハンチング等を防止する。ここで、湯面高さが湯面上限(設備上の上限値)よりも高い場合には、スパウトの開度を絞り、所定時間後(例えば2秒後)の湯面位置を検出し、湯面高さが湯面上限よりも低くならない場合には、異常信号を発信してもよい。
【0078】
スパウト開度が上限以上となる場合には(ステップS26)、スパウトにスラグなどの異物が付着した可能性があるため、後工程にその旨の警報を発信する(ステップS27)。
【0079】
次いで、算出されたスパウト開度制御量に基づいて、制御部はスパウトの開度を制御する(ステップS28)。制御部は、例えばサーボモータを用いた電動シリンダにより、スパウトに設けられるストッパーを上下させて、スパウトの開度を調整する。なお、電動シリンダは、例えば200N程度の高トルクのものであり、かつ、0.02mm程度の高分解能を有するものが望ましい。
【0080】
さらに、制御部は、得られた湯面高さが基準製造条件範囲内であるかどうかを判断する(ステップS29)。湯面高さが基準製造条件範囲内であれば、ステップ21に戻り、上記の連続して繰り返す。
【0081】
一方、湯面高さが基準製造条件範囲外である場合には、制御部は、当該鋳型位置と時刻とから、当該溶湯が凝固して鋳塊となる位置(すなわち異常鋳塊位置)を算出する(ステップS30)。
【0082】
次に、制御部は、得られた異常鋳塊位置の情報を後工程に発信する(ステップS31)。すなわち、前述の場合と同様に、異常鋳塊位置を後工程で除去することができる。以上を連続して繰り返し、湯面位置の算出とスパウト開度を制御して湯面を所定の位置に一定にするとともに、万が一湯面高さが基準製造条件範囲をから外れた場合には、異常部と判定して早期に異常位置を発見し除去することができる。
【0083】
なお、鋳型内の湯面高さに応じたスパウトの開度調整を行う際(ステップS28)、前述した注湯監視部43により得られる注湯部における溶湯幅によって、スパウト開度の微調整(開度の補正)を行ってもよい。
【0084】
例えば、解析部によって、スパウトの基準開度に対する基準注湯部溶湯幅を記憶しておき、注湯監視部43により得られた溶湯幅と比較する。予想される溶湯幅よりも得られた実際の溶湯幅が狭い場合には、スパウトにノロが堆積したり、溶湯の流れがスムーズでない等の問題が考えられる。逆に、予想される溶湯幅よりも得られた実際の溶湯幅が広い場合には、スパウトその他の耐火材の摩耗や欠け等が生じている恐れが考えられる。
【0085】
そこで解析部は、実際の溶湯幅が想定される溶湯幅と異なる場合(あるいは、スパウトの開度を調整した場合における溶湯幅の変化量が想定される変化量と異なる場合)には、スパウトの開度をわずかに調整する。具体的には、想定される溶湯幅に対して実際の溶湯幅が狭い場合には、スパウト開度をわずかに開く方向に補正する。同様に、想定される溶湯幅に対して実際の溶湯幅が広い場合には、スパウト開度をわずかに閉じる方向に補正する。なお、この制御は、前述の鋳型内湯面高さによる制御と常に同じタイミングで行ってもよく、または、所定の間隔で行ってもよい。
【0086】
また、タンディッシュから出湯される溶湯量は、タンディッシュ内の湯面高さにも依存する。すなわち、タンディッシュ内湯面高さが高ければ、同じスパウト開度であっても、より多くの溶湯が出湯される。したがって、前述のように、ノロの体積やスパウトの設置状態、出湯部付近の耐火材の摩耗などによる出湯量の変動以外に、タンディッシュ内の湯面高さ(溶湯量)によっても、出湯量(溶湯幅)が変動する。
【0087】
そこで、解析部は、タンディッシュ内の湯面高さを監視し、タンディッシュ内の湯面高さに応じて、スパウト開度の微調整(開度の補正)を行ってもよい。例えば、解析部によって、タンディッシュ内の基準湯面高さに対する実際の湯面高さを検出し、スパウトの開度をわずかに調整してもよい。
【0088】
具体的には、基準湯面高さよりも実際の湯面高さが低い場合には、スパウト開度をわずかに開く方向に補正する。同様に、基準湯面高さよりも実際の湯面高さが高い場合には、スパウト開度をわずかに閉じる方向に補正する。なお、この制御は、前述の鋳型内の湯面高さによる制御と常に同じタイミングで行ってもよく(例えばステップS28の前または後)、または、所定の間隔(例えば
図10のフローに対して数サイクルに1回)で行ってもよい。
【0089】
なお、タンディッシュ内の湯面高さは、タンディッシュ内の溶湯量(重量)で把握することができる。例えば、タンディッシュ全体の重量をロードセルにより監視し、得られた重量からタンディッシュ内の溶湯量を算出することができる。したがって、タンディッシュ内の溶湯量に応じた湯面高さを知ることができる。
【0090】
なお、出湯部の溶湯幅によるスパウト開度補正および、タンディッシュ内湯面高さによるスパウト開度補正は、それぞれ一方のみであってもよく、両者を組み合わせてもよい。また、それらをPID制御により制御してもよい。
【0091】
また、スパウト開度に対する出湯部溶湯幅が、あらかじめ設定された所定範囲内にないと判断すると、異常信号を発信してもよい。または、あるスパウト開度においてタンディッシュ内溶湯量に対する出湯量が、あらかじめ設定された所定範囲内にないと、異常信号を発信してもよい。すなわち、スパウトの詰まりや割れ等の異常によって、スパウト開度の調整による出湯量の調整が困難となった場合には、異常信号を発信してもよい。
【0092】
本発明によれば、極めて安定した品質の鋳塊を得ることができる。また、例えば、鋳造トラブルの発生を防止でき、また、湯面変動に伴う鋳塊の品質ばらつきを抑えることができる。また、得られた溶湯情報に基づいて鋳塊の品質を把握するため、溶湯の凝固前に凝固後の異常部を知ることができる。このため、早期に異常部を連続して把握することができ、より上工程で異常部を除去することもできる。
【0093】
また、成分組成を溶湯の比抵抗により得るため、成分組成を正確にかつ連続して知ることができる。また、鋳型内の湯面高さを測定する解析帯が、所定の幅を有し、解析帯内部全体で湯面算出を行うとともに、所定回数の移動平均によって湯面を認定するため、局所的な湯面の波立ちや飛沫等の影響を小さくし、より正確な湯面位置を検出することができる。
【0094】
また、湯面パターンを認識し、湯面の解析を行う解析帯の位置を常に適切な位置に配置するため、振動の影響や鋳型の摩耗等の影響を受けることがない。また、鋳型サイズを変更した場合でも、その都度カメラ位置等を設定する必要がない。
【0095】
また、注湯部の溶湯を常に監視し、注湯部が非溶湯部と判断すると異常と判断するため、スパウト詰まり等の異常を検出できるとともに、カメラの異常や、カメラ前に作業者等が映り込んだ場合に、誤作動を起こすことがない。
【0096】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0097】
たとえば、本実施例では、溶湯情報として、溶湯の化学組成と鋳型内の湯面高さについて説明したが、本発明はこれに限られない。鋳型内で凝固する前の溶湯の情報であって、鋳塊(製品)品質に影響を与えるものであれば、その他の溶湯情報に対して同様の制御を行っても良い。例えば、溶湯の温度を監視し、一定の温度となるように、制御するとともに、溶湯温度が基準製造条件範囲から外れると当該位置に対応する鋳塊の位置を異常鋳塊位置として認識してもよい。
【0098】
また、各溶湯情報による制御は、単独で行ってもよく、または複数の溶湯情報を組み合わせて同時に行ってもよい。この場合、制御部は同一の機器に設けてもよく、または別の機器によりそれぞれの溶湯情報による制御を行ってもよい。