【文献】
Ampalavanapillai Nirmalathas, et al.,Digitized RF transmission over fiber,IEEE Microwave Magazine,米国,IEEE,2009年 6月,Vol.10, Issue.4,pages.75-81
【文献】
Yizhuo Yang, et al.,Experimental Demonstration of Multi-Service Hybrid Fiber-Radio System Using Digitized RF-Over-Fiber Technique,Journal of Lightwave Technology,米国,IEEE,2011年 7月15日,Vol.29, Issue.14,pages.2131-2137
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した技術では、受信装置において、アップコンバートによって得られたRF信号に含まれている局発信号を減衰して除去する必要があるので、
図9(B)に示すように、一点鎖線で示す通過特性を有するバンドパスフィルタを出力に設ける必要がある。
【0007】
ところで、
図9(B)に示す特性を有するバンドパスフィルタは、通過帯域の周波数が非常に高く、また、遮断特性が非常に急峻である必要がある。このようなバンドパスフィルタの設計は難しく、また、価格が高いという問題点がある。
【0008】
そこで、ダウンコンバート後の信号の周波数が高くなるように設定することで、RF信号と局発信号の間隔を広く設定することも考えられる。このような設定によれば、RF信号と局発信号の間隔が広くなることから、遮断特性が緩やかなバンドパスフィルタを用いることができる。しかしながら、そのように設定した場合、A/D変換器におけるサンプリングクロックのジッタによってSNR(Signal to Noise Ratio)が劣化するという問題点がある。すなわち、ジッタによるSNRは以下の式によって表される。.
【0009】
【0010】
ここで、finはA/D変換器に入力されるアナログ信号(IF信号)の周波数であり、Jitter
clockはA/D変換器に供給される外部クロックのジッタの実効値であり、Jitter
appertureはA/D変換器のサンプリング間の変動によるジッタの実効値である。この式から、入力されるアナログ信号の周波数が大きくなるほど、クロックのジッタによる振幅誤差が大きくなり、SNRが劣化することが分かる。
図10は、周波数finによるSNRの劣化を示す図である。この図に示すように、サンプリングクロックの時間的なジッタΔtが存在する場合、周波数が高い場合には周波数が低い場合に比較して電圧の誤差ΔVが大きくなっている。したがって、A/D変換器に入力される信号の周波数が高く設定すると、バンドパスフィルタの特性は緩やかにすることができるが、SNRが劣化してしまうという問題点がある。
【0011】
そこで、本発明は、雑音の発生が少なく、かつ、特性が緩やかなフィルタを用いることができる受信装置および送受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、送信装置において第1周波数の信号を用いてダウンコンバートされてデジタル化された信号を受信する受信装置において、前記デジタル化された信号をアナログ信号に変換する変換手段と、前記変換手段によって得られた前記アナログ信号に含まれる所定の次数のエイリアシング信号を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された前記エイリアシング信号を、前記第1周波数よりも周波数が低い第2周波数の信号を用いてアップコンバートして原信号に復元する復元手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、雑音の発生が少なく、かつ、特性が緩やかなフィルタを用いることができる受信装置を提供することができる。
【0013】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記送信装置は、前記第1周波数の信号を用いて原信号を第1ナイキストゾーンの信号にダウンコンバートし、当該ダウンコンバートした信号をオーバーサンプリングし、前記抽出手段は、第3次のエイリアシング信号を抽出することを特徴とする。
このような構成によれば、より雑音の発生を少なくすることができる。
【0014】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記送信装置は、前記第1周波数の信号を用いて原信号を第3ナイキストゾーンの信号にダウンコンバートし、当該ダウンコンバートした信号を帯域制限サンプリングし、前記抽出手段は、第5次のエイリアシング信号を抽出することを特徴とする。
このような構成によれば、折り返し雑音によって原信号の特性を損なうことなく、信号を送信することができる。
【0015】
また、本発明は、原信号を第1周波数の信号を用いてダウンコンバートしてデジタル化して送信する送信装置と、前記デジタル化された信号をアナログ信号に変換する変換手段と、前記変換手段によって得られた前記アナログ信号に含まれる所定の次数のエイリアシング信号を抽出する抽出手段と、前記抽出手段によって抽出された前記エイリアシング信号を、前記第1周波数よりも周波数が低い第2周波数の信号を用いてアップコンバートして原信号に復元する復元手段と、を備える受信装置と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、雑音の発生が少なく、かつ、特性が緩やかなフィルタを用いることができる送受信システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、雑音の発生が少なく、かつ、特性が緩やかなフィルタを用いることができる受信装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0019】
(A)第1実施形態の構成の説明
図1は、本発明の第1実施形態に係る送受信システムの概略の構成例を示す図である。この図に示すように、送受信システム1は、送信装置10、光ファイバ30、および、受信装置20を主要な構成要素としている。
図1に示す第1実施形態は、携帯電話の基地局からの電波が届きにくい電波不感地帯に電波を供給するシステムとして構成されている。
【0020】
ここで、送信装置10は、図示しない基地局からの電波を受信可能な場所に配置され、基地局からの電波をアンテナ11によって捕捉する。そして、送信装置10は、受信信号(RF信号)をダウンコンバートしてデジタル化した後、光信号に変換して光ファイバ30を介して受信装置20に伝送する。また、送信装置10は、受信装置20から光ファイバ30を介して受信した光信号を電気信号に変換してアナログ信号に変換した後、アップコンバートして元のRF信号に復元し、アンテナ11を介して電波として基地局に向けて送信する。なお、
図1の例では、送信装置10と基地局とは無線で情報を授受するようにしているが、これらが有線で情報を授受するようにしてもよい。
【0021】
受信装置20は、基地局からの電波が届きにくい電波不感地帯に配置され、送信装置10から光ファイバ30を介して伝送された光信号を受信する。そして、受信装置20は、受信した光信号を電気信号に変換してアナログ信号に変換した後、アップコンバートして元のRF信号に復元し、アンテナ21を介して電波不感地帯に電波を送信する。また、受信装置20は、携帯電話から受信した電波をアンテナ21によって受信し、受信信号(RF信号)をダウンコンバートしてデジタル化した後、光信号に変換して光ファイバ30を介して送信装置10に供給する。なお、受信装置20は、実際には、電波不感帯の面積等に応じて複数個接続されているが、
図1では図面を簡略化するために1台だけ接続された状態を示している。
【0022】
以上のような構成により、携帯電話を有するユーザが電波不感帯に位置している場合であっても、携帯電話と基地局との間で、第1実施形態の送受信システム1を介して電波の授受が可能になるので、通話または通信を実行することができる。
【0023】
図2は、
図1に示す送信装置10の構成例を示す図である。なお、
図2の例では、図面を簡略化するために、下り方向(基地局から受信した電波を受信装置20に送信する方向)に関するブロック図のみを示している。
図2に示すように、送信装置10は、ミキサ101、ローパスフィルタ102、増幅部103、ADC(Analog to Digital Converter)104、信号処理部105、光送信部108、光分配部109、クロック部110、分配部(DIV)111、PLLシンセサイザ(PLLSYN)112、および、発振部113を有している。
【0024】
ここで、ミキサ101は、アンテナ11を介して供給されるRF信号と、発振部113から供給される局発信号とをミキシングし、中間周波数信号を出力する。なお、アンテナ11を介して供給される信号は、例えば、中心周波数fcが3.55GHzで、帯域幅BWが90MHzの信号とすることができる。また、発振部113から出力される局発信号は、3.5GHzの信号とすることができる。
【0025】
ローパスフィルタ102は、ミキサ101で生成された中間周波数信号を通過させ、それ以外の帯域成分を減衰させるフィルタである。増幅部103は、ローパスフィルタ102を通過した中間周波数信号を所定のゲインで増幅して出力する。ADC104は、増幅部103によって増幅された中間周波数信号を分配部111から供給されるクロック信号に同期してサンプリングし、デジタル信号に変換して出力する。
【0026】
信号処理部105は、パラレルシリアル変換部(P/S)106、および、送信部(TXD)107を有しており、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)等によって構成され、ADC104から出力されるデジタル信号に対してパラレルシリアル変換その他のエンコード処理を施して出力する。ここで、パラレルシリアル変換部106は、分配部111から出力されるクロック信号に基づいて、ADC104から出力されるパラレル信号をシリアル信号に変換して出力する。送信部107は、パラレルシリアル変換部106から供給されるシリアル信号を、例えば、8b/10b変換してクロック信号を重畳して送信信号を生成した後、出力する。
【0027】
光送信部108は、送信部107から供給される電気信号を対応する光信号に変換して出力する。光分配部109では、光送信部108から出力される光信号が各光ファイバ30に対して分配される。
【0028】
クロック部110は、例えば、周波数が250MHzのクロック信号を生成して出力する。分配部111は、クロック部110から供給されたクロック信号を、ADC104、パラレルシリアル変換部106、送信部107、および、PLLシンセサイザ112に分配する。
【0029】
PLLシンセサイザ112は、分配部111から供給されるクロック信号に基づいて発振部113から出力される局発信号が所定の周波数になるように制御する。発振部113は、PLLシンセサイザ112から供給される制御電圧に対応した周波数の正弦波信号を発生する電圧制御発振回路(VCO:Voltage Control Oscillator)である。なお、この例では、局発信号としては3.5GHzの信号が出力される。
【0030】
図3は、
図1に示す受信装置20の詳細な構成例を示す図である。なお、
図3の例では、図面を簡略化するために、
図2と同様に、下り方向(基地局から受信した電波を受信装置20に送信する方向)に関するブロック図のみを示している。
図3に示すように、受信装置20は、光受信部(RX)201、信号処理部202、DAC(Digital to Analog Converter)205、バンドパスフィルタ206、ミキサ207、バンドパスフィルタ208、波形整形部(Cleaner)209、PLLシンセサイザ(PLLSYN)210、および、発振部211を有している。
【0031】
ここで、光受信部201は、光ファイバ30を介して送信装置10から伝送されてきた光信号を電気信号に変換して信号処理部202に供給する。
【0032】
信号処理部202は、受信部(RXD)203およびシリアルパラレル変換部(S/P)204を有しており、例えば、FPGA等によって構成され、光受信部201から出力されるシリアル信号をパラレル信号に変換してDAC205に供給するとともに、クロック信号を抽出して波形整形部209に供給する。ここで、受信部203は、光受信部201から供給される電気信号から主信号であるデジタル信号を抽出してシリアルパラレル変換部204に供給するとともに、クロック信号を抽出して波形整形部209に供給する。シリアルパラレル変換部204は、受信部203から供給されるシリアル信号を波形整形部209から供給されるクロック信号に基づいてパラレル信号に変換し、DAC205に供給する。
【0033】
DAC205は、シリアルパラレル変換部204から供給されるデジタル信号を波形整形部209から供給されるクロック信号に同期してアナログ信号に変換して出力する。バンドパスフィルタ206は、DAC205から出力されるアナログ信号から第3次のエイリアシング信号を抽出して出力する。
【0034】
波形整形部209は、受信部203によって抽出されたクロック信号を整形して、シリアルパラレル変換部204、DAC205、および、PLLシンセサイザ210に供給する。PLLシンセサイザ210は、波形整形部209から供給されるクロック信号に基づいて発振部211から出力される局発信号が所定の周波数になるように制御する。発振部211は、PLLシンセサイザ210から供給される制御電圧に対応した周波数の正弦波信号を発生する電圧制御発振回路である。なお、この例では、局発信号としては、送信装置10の局発信号である3.5GHzよりも低い周波数の3.25GHzが出力される。
【0035】
ミキサ207は、バンドパスフィルタ206から出力される第3次のエイリアシング信号と、発振部211から供給される局発信号とをミキシングすることでアップコンバートを実行し、RF信号を生成して出力する。なお、バンドパスフィルタ206から出力される第3次のエイリアシング信号は、例えば、中心周波数fcが305MHzで、帯域幅BWが90MHzの信号である。また、発振部211から供給される局発信号は、前述のように3.25GHzの信号である。これらの信号のミキシングにより、中心周波数fcが3.55GHzであり、帯域幅BWが90MHzのRF信号が生成される。バンドパスフィルタ208は、ミキサ207から出力される信号に含まれているRF信号を通過させ、それ以外の周波数成分を減衰して出力する。
【0036】
(B)第1実施形態の動作の説明
つぎに、第1実施形態の動作について説明する。図示しない基地局から送信された電波は、送信装置10のアンテナ11によって捕捉され、例えば、中心周波数fcが3.55GHzで、帯域幅BWが90MHzのRF信号としてミキサ101に供給される。ミキサ101は、発振部113から供給される3.5GHzの局発信号とRF信号とをミキシングして出力する。
図4(A)はミキサ101に入力されるRF信号(台形形状の信号)と局発信号(矢印形状の信号)との関係を示す図である。なお、この図の横軸は周波数を示し、縦軸は振幅を示している。
図4(A)に示すように、局発信号はRF信号よりも約50MHz低い周波数に設定されている。このような2つの信号をミキサ101によってミキシングすることにより、
図4(B)に示すように、これらの周波数の差分に対応する中心周波数fc55MHzを有する、ダウンコンバートされたIF信号(図中実線で示す信号)が得られる。
【0037】
ミキサ101から出力されたIF信号は、ローパスフィルタ102に供給され、そこで、IF信号以外の周波数成分が減衰されて増幅部103に出力される。増幅部103では、ローパスフィルタ102から出力されたIF信号が所定のゲインで増幅されて出力される。
【0038】
ADC104は、分配部111から供給されるクロック信号に同期して増幅部103から供給されるIF信号をサンプリングして量子化し、デジタル信号に変換する。
図4(B)に示すように、IF信号は帯域幅BWが90MHzであり、ADC104のサンプリング周波数Fsは250MHzであるので、IF信号の帯域幅の2倍以上のサンプリング周波数によってオーバーサンプリングが実行され、例えば、12ビットのデジタル信号に変換された後、信号処理部105に出力される。
【0039】
信号処理部105のパラレルシリアル変換部106は、ADC104から出力されたデジタル信号を分配部111から供給されるクロック信号に基づいてシリアル信号に変換して送信部107に出力する。送信部107は、パラレルシリアル変換部106から供給されるシリアル信号を、例えば、8b/10b変換してクロック信号を重畳した後に、光送信部108に出力する。
【0040】
光送信部108は、送信部107から供給される電気信号を対応する光信号に変換し、光分配部109および光ファイバ30を介して受信装置20に送信する。
【0041】
以上の動作により、アンテナ11によって捕捉された基地局からの電波が、局発信号によってダウンコンバートされた後にデジタル化される。そして、デジタル化された信号は、シリアル信号に変換されて光信号に変換され、光ファイバ30に送出される。
【0042】
送信装置10から送信された光信号は、受信装置20の光受信部201によって受信され、対応する電気信号に変換された後、信号処理部202に出力される。信号処理部202の受信部203は、光受信部201から供給される信号に含まれているクロック信号を抽出して波形整形部209に供給するとともに、主信号であるデジタル信号をシリアルパラレル変換部204に供給する。シリアルパラレル変換部204は、受信部203から供給されるデジタル信号(シリアル信号)を、波形整形部209から供給されるクロック信号に基づいてパラレル信号に変換し、DAC205に出力する。
【0043】
DAC205は、シリアルパラレル変換部204から出力されるデジタル信号を、波形整形部209から供給されるクロック信号に同期してアナログ信号に変換し、バンドパスフィルタ206に出力する。バンドパスフィルタ206は、DAC205から出力される信号から第3次エイリアシング信号を抽出する。
図5はエイリアシング信号を説明する図である。この
図5において横軸は、信号周波数をサンプリング周波数で規格化した規格化周波数を示す。すなわち、規格化周波数の「1」は、信号周波数とサンプリング周波数が等しいことを示す。また、縦軸は振幅を示し、各帯域の信号に付されている数字は、ナイキストゾーン番号を示している。
【0044】
ここで、標本化定理で知られるように、サンプリング周波数の1/2の周波数(規格化周波数0〜0.5)の信号をサンプリングして復元した場合、
図5に示すように、原信号以外の信号(エイリアシング信号)が現れる。すなわち、
図5では原信号(ナイキストゾーン番号が1の信号)以外にも、2〜6次の信号が示されている。なお、奇数次の信号と、偶数次の信号では、周波数関係が反転している。バンドパスフィルタ206では、
図5に示す第3次エイリアシング信号(ナイキストゾーン番号が3の信号)が抽出されて、ミキサ207に供給される。
【0045】
ミキサ207は、発振部211から供給される局発信号と、バンドパスフィルタ206から供給される信号をミキシングして出力する。
図6はバンドパスフィルタ206とミキサ207の動作を説明するための図である。
図6(A)はバンドパスフィルタ206によって抽出される信号を示している。この図に示すように、バンドパスフィルタ206では、サンプリング周波数Fsの右側に実線で示す第3次エイリアシング信号(中心周波数が約305MHz(=250+55MHz)の信号)を抽出する。つぎに、ミキサ207は、
図6(B)に示すように、バンドパスフィルタ206から出力される第3次エイリアシング信号と、発振部211から供給される3.25GHzの局発信号とをミキシングし、アップコンバートすることにより、中心周波数fcが3.55GHzの元のRF信号(実線で示す信号)を得る。このようにして得られたRF信号は、バンドパスフィルタ208によってRF信号以外の成分が減衰された後、アンテナ21を介して電波として送信される。受信装置20の通信エリア内に存在している携帯電話では、基地局から送信されたものと同じ電波を受信することができる。
【0046】
なお、受信装置20は、2つのバンドパスフィルタ206,208を有しているが、バンドパスフィルタ206は通過帯域が300MHz程度であるので、
図9(B)に示す従来技術における3GHz帯域の通過帯域のバンドパスフィルタに比較すると、フィルタ素子を構成する能動素子および受動素子として低い周波数特性の素子を用いることができることから、簡易かつ低コストで構成することができる。一方、バンドパスフィルタ208は、3.25GHzの局発信号と、3.55GHzのRF信号との間隔が、
図9(B)の従来技術の場合に比較すると広いため、
図6(B)に一点鎖線で示すような遮断特性が緩やかなバンドパスフィルタを用いることができる。このため、設計を簡略化するとともに、装置のコストを抑えることができる。
【0047】
以上に説明したように、本発明の第1実施形態によれば、送信装置10において第1周波数である3.5GHzの信号を用いてダウンコンバートされてデジタル化された信号を光信号に変換して送信し、受信装置20において、電気信号に変換した後にアナログ信号に変換し、このアナログ信号に含まれる第3次エイリアシング信号を抽出して、第2周波数である3.25GHzの信号を用いてアップコンバートして元の信号に復元するようにした。これにより、局発信号とRF信号との周波数軸上における間隔を広くすることができるので、遮断特性が緩やかなバンドパスフィルタ208の使用が可能になり、設計を簡易化するとともに、製造コストを低減できる。
【0048】
また、第1実施形態では、送信装置10においてダウンコンバートする際の局発信号は、
図8と同じ3.5GHzの信号を用いて中心周波数fcが約55MHzの信号にコンバートするようにしたので、ADC104におけるジッタ雑音の発生を増加させることなく、バンドパスフィルタ208として遮断特性が緩やかなフィルタを用いることが可能となる。なお、バンドパスフィルタ206では第3次エイリアシング信号を抽出しているが、この第3次エイリアシング信号は第1ナイキストゾーン信号の高調波成分であるので、第3次エイリアシング信号が有するジッタ雑音は、第1ナイキストゾーン信号である約55MHzの信号と同じである。このため、ジッタ雑音を増加させることなく、バンドパスフィルタ208として遮断特性が緩やかなフィルタを用いることが可能となる。
【0049】
また、第1実施形態では、送信装置10と受信装置20において、異なる周波数の局発信号に基づいてダウンコンバートおよびアップコンバートを実行しているが、これらはクロック部110によって発生された同じ周波数のクロック信号に基づいて生成されていることから、異なる周波数によってコンバートを行った場合であっても、復元されるRF信号の周波数偏差を抑えることが可能になる。
【0050】
(C)第2実施形態の構成の説明
図7は、本発明の第2実施形態について説明するための図である。第2実施形態では、受信装置の構成が第1実施形態と異なっており、システムとしての構成および送信装置10の構成は第1実施形態の場合と同様である。なお、この
図7において、
図3と対応する部分については同一の符号を付してあるので、その説明は省略する。
図3と比較すると、
図7に示す受信装置20Aでは、PLLシンセサイザ210、発振部211、ミキサ207、および、バンドパスフィルタ206が除外されている。また、信号処理部202に、バンドパスフィルタ220が新たに追加されて信号処理部202Aとされるとともに、バンドパスフィルタ208がバンドパスフィルタ221に置換されている。それ以外の構成は、
図3の場合と同様である。
【0051】
ここで、バンドパスフィルタ220は、デジタルフィルタであり、シリアルパラレル変換部204から出力されるデジタル信号に含まれるエイリアシング信号から、RF信号に対応する周波数を有する信号(3.5GHz)の信号を抽出して出力する。バンドパスフィルタ221は、DAC205から出力される信号からRF信号に対応する信号を通過させ、それ以外は減衰させる。
【0052】
(D)第2実施形態の動作の説明
第2実施形態では、受信装置20Aにおいてアップコンバートがされずに、RF信号に対応する帯域のエイリアシング信号が抽出されることを特徴とする。より詳細に説明する。送信装置10では、第1実施形態の場合と同様に、基地局から受信したRF信号をダウンコンバートし、デジタル信号に変換して光信号に変換した後に、光ファイバ30を介して送信する。なお、第2実施形態においては、送信装置10におけるダウンコンバートする際の局発信号の周波数は、受信装置20AにおけるDAC205から出力される所定の次数のエイリアシング信号の周波数がRF信号と同じ周波数となるように設定されている。
【0053】
このような光信号を受信した受信装置20Aは、光受信部201において対応する電気信号に変換し、受信部203に供給する。受信部203では、クロック信号を抽出して波形整形部209に供給し、デジタル信号をシリアルパラレル変換部204に供給する。波形整形部209は、クロック信号の波形を整形した後、シリアルパラレル変換部204、バンドパスフィルタ220、および、DAC205に供給する。
【0054】
シリアルパラレル変換部204は、波形整形部209から供給されるクロック信号に基づいて受信部203から供給されるデジタル信号(シリアル信号)をパラレル信号に変換する。バンドパスフィルタ220は、パラレル信号に変換されたデジタル信号に対して、例えば、IIR(Infinite Impulse Response)等のフィルタリング処理を施し、RF信号と同じ周波数帯域(この例では3.55GHz)の信号を選択的に通過させる。
【0055】
DAC205は、バンドパスフィルタ220から出力されたデジタル信号を、波形整形部209から供給されるクロック信号に同期してアナログ信号に変換し、出力する。バンドパスフィルタ221は、DAC205から出力されるアナログ信号のうち、RF信号に対応する周波数帯域(この例では3.55GHz)の信号を通過し、それ以外の帯域については減衰して出力する。バンドパスフィルタ221を通過したRF信号は、アンテナ21を介して携帯電話に対して送信される。
【0056】
以上に説明したように、本発明の第2実施形態では、受信装置20Aにおいて、アップコンバートを行わずに、RF信号に対応する帯域のエイリアシング信号を抽出するようにしたので、アップコンバートに関係する構成部を省略することで装置を簡略化することができる。
【0057】
また、第2実施形態では、DAC205の前段においてデジタルフィルタであるバンドパスフィルタ220によりRF信号に対応する帯域のエイリアシング信号を抽出するようにした。前述したように、デジタルフィルタは、フィルタ定数を調整することにより、急峻な特性を簡単に実現することができる。したがって、DAC205の前段においてバンドパスフィルタ220による処理を実行することで、アナログフィルタであるバンドパスフィルタ221として
図9と比較して緩やかな特性のフィルタを用いることができるので、装置の構成を簡略化するとともに設計を簡易化することができる。
【0058】
なお、以上の第2実施形態では、シリアルパラレル変換部204の出力をバンドパスフィルタ220に直接入力するようにしたが、例えば、シリアルパラレル変換部204とバンドパスフィルタ220の間にアップサンプラを挿入するようにしてもよい。ここで、アップサンプラとは、シリアルパラレル変換部204から出力されるデジタル信号を元のサンプリング周波数(この例では、250MHz)よりも高い周波数(例えば、1GHz)でアップサンプリングするとともに、アップサンプリングによって生じるエイリアスを抑制するためにインタポーレーションを実行して出力する。このようなアップサンプラを挿入することにより、同じナイキスト領域内におけるエイリアシング信号を抑制することができるので、送信装置10におけるサンプリング周波数を低く設定することができる。
【0059】
(E)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の各実施形態では、
図1に示すように送信装置10はアンテナ11にて基地局との間で無線にて情報を授受するようにしたが、基地局と有線接続して情報を授受するようにしてもよい。また、
図1では、受信装置20は1台だけとしたが、電波不感帯のエリアサイズに応じて複数の受信装置20を接続するようにしてもよい。
【0060】
また、以上の各実施形態では、簡略化のために下り方向(送信装置10から受信装置20への方向)の構成のみを示したが、上り方向(受信装置20から送信装置10への方向)の構成として、
図2,3,7と同様の構成を付加するようにしてもよい。
【0061】
また、以上の第1実施形態では、第3次エイリアシング信号を、アナログフィルタであるバンドパスフィルタ206を用いて抽出するようにしたが、例えば、DAC205とシリアルパラレル変換部204の間にデジタルフィルタを挿入し、このようなデジタルフィルタによって第3次エイリアシング信号を抽出するようにしてもよい。なお、このようなデジタルフィルタを単独で使用してもよいし、あるいは、バンドパスフィルタ206と組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0062】
また、以上の第1実施形態では、第3次エイリアシング信号を抽出するようにしたが、これ以外の次数のエイリアシング信号を用いることも可能である。例えば、エイリアシング信号の次数をnとし、サンプリング周波数をFsとし、発振部113の局発信号の周波数をFdとし、発振部211の局発信号の周波数をFuとした場合、これらの間に以下の関係が成立するように各パラメータを設定すればよい。
Fu=Fd−Fs×(n−1)/2 ・・・(1)
【0063】
また、以上の各実施形態では、送信装置10では、IF信号が第1ナイキストゾーン内に収まるように構成したが、例えば、第3または第5ナイキストゾーンに収まるように構成してもよい。例えば、ADC104の入力信号周波数のナイキストゾーンの次数をmとし、DAC205の出力信号周波数のナイキストゾーンの次数をnとすると、前述した式(1)は以下の式(2)のように拡張することができる。
Fu=Fd−Fs×(n−m)/2 ・・・(2)
【0064】
また、以上の各実施形態で挙げた周波数等の数値は、一例であって、これ以外の数値を採用してもよい。
【0065】
また、以上の各実施形態では、送信装置と受信装置とを光ファイバで接続するようにしたが、これ以外の伝送媒体(例えば、伝送ケーブル)等によって接続するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0066】
なお、以上の実施形態に関連して付記を以下に記載する。
【0067】
(付記1)
送信装置においてダウンコンバートされてデジタル化された信号を受信する受信装置において、
前記デジタル化された信号をアナログ信号に変換する変換手段と、
前記変換手段によって得られた前記アナログ信号に含まれる所定の次数のエイリアシング信号であって、前記送信装置においてダウンコンバートされる前の原信号に対応する周波数帯域を有するエイリアシング信号を抽出する抽出手段と、
を有することを特徴とする受信装置。
【0068】
(付記2)
前記変換手段の前段に、前記ダウンコンバートされる前の原信号に対応する周波数帯域を有するエイリアシング信号を通過帯域とするデジタルフィルタを有していることを特徴とする付記1に記載の受信装置。
【0069】
(付記3)
前記デジタルフィルタの前段に、前記送信装置におけるサンプリング周波数よりも高い周波数に変更するアップサンプラを有していることを特徴とする付記2に記載の受信装置。
【0070】
(付記4) 原信号をダウンコンバートしてデジタル化して送信する送信装置と、
前記デジタル化された信号をアナログ信号に変換する変換手段と、前記変換手段によって得られた前記アナログ信号に含まれる所定の次数のエイリアシング信号であって、前記送信装置においてダウンコンバートされる前の原信号に対応する周波数帯域を有するエイリアシング信号を抽出する抽出手段と、を備える受信装置と、
を有することを特徴とする送受信システム。