【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、エネルギー入力装置によりインクキャリアを介してインクにエネルギーを入力することで、インクキャリアと基体を接触させることなく、インクをインクキャリアから予め定められたパターンに従って基体に転写する基体印刷方法により達成される。上記基体は、該基体の表面に帯電領域が形成されるように電場(電界)に導入される。
【0009】
帯電領域は、均一及び不均一の双方の場合がある。不均一な帯電領域は、電位勾配を有し、すなわち、例えば印刷すべきパターンに従い形成される。しかし、帯電領域は、均一であることが好ましい。
【0010】
基体の表面上において均一な帯電領域の結果、印刷イメージの改良が実現される。例えば、特に、基体において均一な帯電領域が施されていない場合と比較して、より正確な縁部分及び境界部分が形成され得る。この場合、インクがキャリアから基体に転写される部分にそもそも電気力線を不均一にする原因とする印刷ギャップがあるにもかかわらず、印刷イメージの改良が実現される。ここで、印刷ギャップとは、インクがインクキャリアから基体に転写される部分におけるインクキャリアと基体の間の隙間を意味する。
本発明ではインクキャリアが、基体と0.01〜2mmの範囲で離間している。
【0011】
更に、同様に反対の極を構成する必要が無くなる。印刷すべき基体に極めて均一な電荷像を施すことができる。値は低いが均一な電位分布を与えた場合であっても、塗布されるべきインクの噴霧化(拡散)の大きな減少が導かれる。
【0012】
従って、印刷イメージにおけるより明確な縁部分及び境界部分が得られる。基体表面に均一な帯電領域を形成するために基体に電場を与えることの他の利点は、電位が増加すると転写されるインクの質が増加することである。
【0013】
均一な帯電領域をインク転写領域における基体表面に形成するために、インクを転写する前に基体に電場を与えることが有効である。電場を形成するために、例えば、電圧を印加するか又は電流を与える。この場合、電圧の印加を接触して又は接触することなく行われる。電圧は、通常、基体に電極を設けて印加する。この場合、使用される電極は、印刷すべき基体の幅の一部分のみ、或いは全体をカバーする。この目的を達成するために、例えば、基体をガイドする棒電極を使用することが可能である。この棒電極は、基体に接触して或いは接触することなく設けることが可能である。電極は基体に接触しないことが好ましい。
【0014】
第1の実施の形態において、印刷すべき基体は、基体表面に均一な帯電領域を形成するために、電圧の印加又は電流を流すことで実質的に均一に放電される。電流を与えることで基体が放電される場合、直接又は間接的に帯電状態を解消することができる。帯電状態を解消する好適な回路は、当業者に知られている。
【0015】
基体が電圧を印加することにより放電される場合、放電電位又は接地電位が基体に施される。このようにして、基体表面の電位が減少する。基体の放電の実行を可能とするために、放電電位は、放電されるべき基体の電位よりも低くされる。電圧を印加することにより基体の放電を行うための好適な方法は、当業者により知られている。
【0016】
他の実施の形態において、基体は、電圧を印加する又は電流を流すことにより実質的に均一に帯電する。この場合、電圧を印加する又は電流を流すことは、当業者により知られる所望の方法で実行される。これを達成するために、一般的に電源又は電流源が、基体に接続される。
【0017】
他の好ましい実施の形態において、基体は最初に放電され、その後、基体に均一な帯電領域を与えるために帯電される。この場合、放電及び帯電は、上述のように実行される。初めに電圧を印加することにより放電を実行して、電流を流すことで帯電させるか、或いは電流を流すことで放電を実行して電圧を印加することで帯電させることが可能である。更に、放電及び帯電の両方を、電圧を印加する又は電流を流すことによって行うようにしても良い。
【0018】
基体に、値は低いが均一な電位分布を与えた場合であっても、塗布すべきインクの噴霧化(拡散)の大きな減少が示される。このようにして、印刷イメージにおける縁部及び境界部が、より明確化される。更に、例えば、高電圧を印加する又は高電流を流すことにより電位がより均一化されると、多量のインクを転写することができる。このようにして、インクの画線比率の改良が達成され、結果として同様に印刷イメージが良質になる。
【0019】
均一な印刷イメージを実現するために、印刷すべき基体及びインクキャリアが、印刷領域において0〜2mm
、好ましくは0.01〜1mmの印刷ギャップを有している。インクキャリアと印刷すべき基体との間の印刷ギャップをより小さくすると、液滴が印刷すべき基体に衝突した際の該液滴の広がりがより小さくなって、印刷イメージがより一様に維持される。しかし、一方で、インクが可撓性キャリアから望まない位置で印刷すべき基体に転写してしまうことを防ぐために、印刷すべき基体が、インクの塗布されている可撓性キャリアと接触しないように注意を払わなければならない。
【0020】
エネルギーがインクに入力されてインクの一部が気化することでインクの液滴が印刷対象基体に転写される領域を印刷領域として指定する。
【0021】
鮮明な印刷イメージを実現するために、エネルギーは、好ましくは集中的に、可撓性キャリアを介してインクに入力される。この場合、エネルギーが集中的に与えられる場所のサイズは、基体に応じた転写されるべきドットのサイズに対応する。一般的に転写されるべきドットは、約20μm〜約200μmの範囲の径を有する。しかし、転写されるべきドットのサイズは、印刷対象基体及び印刷結果物(印刷された基体)に応じて変化させても良い。例えば、特に印刷回路基板を製造する間には、大きなフォーカスのものを選択しても良い。一方で、テキストが表されている印刷物の場合、鮮明なテキストイメージを作成するためには、一般的に小さな印刷ドットが好ましい。更に、イメージ及びグラフィックスを印刷する場合、鮮明なイメージを作成するために、可能な最も小さいドットを印刷することが有効である。
【0022】
使用されるインクキャリアは、可撓性キャリアであることが好ましい。特に、インクキャリアは印刷用インクが塗布されており、ベルトの形状で形成される。インクキャリアは、薄いシート状であることが非常に好ましい。この場合、インクキャリアの厚さは、好ましくは1μm〜およそ500μm、特に10μm〜200μmの範囲に含まれる。インクキャリアを介して与えられるエネルギーが該インクキャリア上で分散しないようにするためには、可能であればインクキャリアを薄くすることが有効であり、これにより、鮮明な印刷イメージが作成される。例えば、材料として、エネルギーが透過するポリマーフィルムを使用することが好適である。
【0023】
インクの気化及び該インクの基体への転写に用いられるエネルギー源は、好ましくはレーザーである。レーザーの利点は、レーザー光線を非常に小さい断面に集中させて使用することができる点である。従って、エネルギーの入力を目標付けて行うことができる。インクキャリアから少なくとも部分的にインクを気化させて、このインクを基体に転写させるために、レーザーからの光を熱に変換する必要がある。これを実現するために、初めに、レーザー光を吸収して熱に変換するための適切な吸収材をインクに含有させることが可能である。また、レーザー光を吸収して熱に変換する適切な吸収材でインクキャリアを被覆するか、或いはインクキャリアをこのような吸収材料から形成しても良い。しかし、レーザー光を透過する材料でインクキャリアを形成し、レーザー光を熱に変換する吸収材をインクに含有させることが好ましい。好適な吸収材は、例えば、カーボンブラック、金属亜硝酸塩、又は金属酸化物である。
【0024】
インクにエネルギーを入力するために使用可能な好適なレーザーは、例えば、基本モードで操作されるファイバーレーザーである。
【0025】
当業者に知られる任意の所望のレーザーが、本発明にしたがう方法により印刷すべき基体に転写されるインクとして好適である。液体インクを使用することが好適である。使用される液体インクは、一般的に少なくとも一種の溶媒及び色を形成する固形物(例えば、顔料)を含む。しかし、また、例えば、溶媒及び該溶媒に分散される導電性粒子を含むインクを用いても良い。この場合、例えば、このインクを使用して回路基板が印刷される。更に、エネルギーを入力するためにレーザーが使用される場合は特に、インクが、レーザー光を吸収し熱に変換する添加剤を含むことが好ましい。
【0026】
従来の印刷インクが使用される場合、印刷すべき基体は、紙であることが好ましい。しかし、他の所望のどのような基体も、本発明にしたがう方法を用いて印刷することが可能である。従って、例えば、板紙又は他の紙製品、樹脂フィルム等の樹脂製品、金属ホイル、又は複合材料ホイルも印刷することができる。この種の樹脂フィルム、金属ホイル、又は複合材料ホイルは、例えば、梱包に使用される。また、本発明の方法は、回路基板の印刷に適している。この場合、印刷すべき基体は、通常、当業者により知られる所望の任意の回路基板である。回路基板は、硬質であっても軟質であっても良い。
【0027】
更に、本発明は、印刷用インクを塗布可能なインクキャリア、及びインクにエネルギーを入力するエネルギー入力装置を有し、エネルギー入力装置が、印刷領域においてインクキャリアのインク面と反対の面にエネルギーを入力することができるように配置されて、エネルギーの作用領域においてインクがインクキャリアから印刷すべき基体に転写される印刷機に関する。基体表面に均一な帯電領域を形成する目的で電場を生成するために、電源又は電流源が含まれていても良い。
【0028】
電場を生成するための電源又は電流源として、当業者により知られている所望の任意の電源又は電流源が好適である。
【0029】
一般的に電源又は電流源は、第1の電極を含み、第1の実施の形態において、この第1の電極は基体と接触可能である。この場合、電極と基体の接触は、例えば、物理的接触である。他の実施の形態において、電源又は電流源は、第1の電極を含み、この電極は基体に接触することなく電場を施すことで、電圧を基体に印加する或いは電流を基体に流す。
【0030】
基体表面において均一な帯電領域を形成するためには、電極が基体の幅方向全域に亘って伸長していることが好ましい。電圧を印加するか又は電流を流すために電極が基体に接触している場合、電極が基体をその幅方向全域に亘ってのしかかっていることが好ましい。接触することなく電圧が印加される或いは電流が流される場合、基体表面における均一な電荷分布を実現するためには、基体と電極の距離が電極の長さ方向全域に亘って一定であることが好ましい。
【0031】
第1の電極が、基体の幅方向全域に亘って接触する場合、電極は棒状に形成されることが好ましい。この場合、電極は、例えば円形又は長方形断面を有する。しかし、電極は、他の所望のどんな断面形状に形成されても良い。また、例えば、電極は、所望により、楕円形断面、又は多数の角を有する多角形断面に形成されても良い。例えば、電極としてプレートを使用することも可能である。更に、プレートを使用する場合には、基体表面上に形成される帯電領域を均一にするには、電極が基体の幅方向全域に伸長することが有効である。更に、電極を櫛状又はブラシ状に形成して、同様に基体の幅方向全域を覆うことが好ましい。
【0032】
基体表面に均一な帯電領域を形成するために、必ずしも対向電極を設ける必要はない。しかし、一つの実施の形態において、電源が第2の電極を含むようにして、該電極を基体に接触させるようにしても良い。この場合、電流が基体を流れるように例えば、第1の電極を基体の一方側に設け、第2の電極を基体の他方側に設けても良い。このようにして、基体表面上に均一な帯電領域を形成することが可能となる。
【0033】
既に上述したように、エネルギー入力装置は、レーザーであることが好ましい。
【0034】
印刷用インクによりコーティングされるインクキャリアは、好ましくは可撓性キャリアである。
【0035】
印刷機の一つの実施の形態において、インクキャリアは、適切な装置に貯蔵される。この目的のために、例えば、インクが塗られているインクキャリアをローラに巻き上げることが可能である。印刷を行うために、インクが塗られているインクキャリアは巻き上げられ、印刷領域の上方に誘導され、エネルギー入力装置によりインクが印刷すべき基体に転写される。そして、インクキャリアは、再びローラに巻き上げられ、例えば廃棄工程に送り出すことが可能である。しかし、インクキャリアは、循環ベルトとして形成されることが好ましい。この場合、インクキャリアの部分が印刷位置(エネルギーの入力によりインクがインクキャリアから印刷すべき基体に転写される位置)に到達する前に、該インクキャリアの部分に、好適な塗布装置を用いてインクが塗布される。印刷操作の後、インクの一部は、インクキャリアから基体に転写された状態となる。これにより、もはやインクキャリアには、均一なインクの層がなくなる。従って、次の印刷操作のためには、インクキャリアに再びインクを塗る必要がある。このインクの塗布は、次にインク塗布装置における塗布位置を通過する際に実行される。インクキャリアにおけるインクの乾燥を避けるため、及び各々の場合においてインクキャリアに一様なインク層を形成するために、インクキャリアへの次のインク塗布工程の前に、初めにインクキャリアからインクを除去することが有効である。インクの除去は、例えば、ローラ又はドクターを用いて実行される。インクの除去にローラが使用される場合、インクをインクキャリアに塗布するために用いるローラと同一のローラを使用することが可能である。これを実現するために、ローラの回転方向が、インクキャリアの移動方向と反対であると良い。そして、インクキャリアから除去されたインクを、再びインク供給部に送ることが可能である。インクを除去するためのローラが設けられている場合、勿論、インクを除去するための一つのローラを設けるとともに、インクを塗布するための一つのローラを設けることが可能である。
【0036】
ドクターを用いてインクをインクキャリアから除去する場合、当業者により知られる所望のどんなドクターを使用しても良い。
【0037】
インクを塗布する工程又はインクを除去する工程において、インクキャリアが損傷を受けてしまうことを避けるために、インクキャリアを、適用ローラ(インクをインクキャリアに塗るローラ、インクをインクキャリアから除去するローラ、又はインクをインクキャリアから除去するドクター)に対向している支持ローラを用いて加圧しても良い。この場合、支持圧は、インクキャリアを損傷させることなく、インクをほぼ完全に除去することができるように調節される。
【0038】
更に、印刷イメージを改良するために、印刷機がインクキャリアに張力を与える張力装置を有するとより効果的である。インクキャリアに張力を与えることにより、インクキャリアに生じ得る歪んだうねりが、伸ばされる。このようにして、印刷領域における均一な表面が実現される。従って、例えば、インクキャリアのうねりによって生じ得る印刷ギャップの差が防止されて、印刷イメージが改良される。更に、例えば、張力装置を印刷すべき基体の方向又は基体から離して配置することによって、印刷ギャップを調節することが可能である。好適な張力装置は、例えば、少なくとも2つのガイド要素を含み、このガイド要素は、エネルギー入力装置の両側に配置される。好適なガイド要素は、例えば、張力ローラ、エアクッション、又は不動ローラである。或いは、張力装置が、使用されるエネルギーを透過するガイド要素を含んでいても良い。この場合、使用されるエネルギーを透過するガイド要素は、印刷領域に直接配置される。これは、ガイド要素がエネルギー入力装置と可撓性キャリアの間に配置されることを意味し、このような配置により、インクを気化してキャリアから基体に転写するためのエネルギーが、ガイド要素を通して導かれる。