【実施例】
【0029】
次に本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
アクリル酸ブチルおよび2−ヒドロキシエチルアクリレートを7:3の割合で、酢酸エチル中で常法により共重合させて、アクリル共重合体を含む溶液(アクリル共重合体含有溶液A1)を得た。
次に、前記アクリル系共重合体含有溶液A1に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、また、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズを加えて、50℃で24時間反応させて、側鎖の末端に炭素−炭素二重結合を有するアクリルポリマー(X)を含む溶液A2を得た。
続いて、前記、側鎖の末端に炭素−炭素二重結合を有するアクリルポリマー(X)を含む溶液A2の100質量部に対して、光重合開始剤として商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製):2.5質量部と、ポリイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):0.5質量部と、ポリプロピレンオキシドとして数平均分子量4000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテル(商品名「ユニオールTG−4000」(日油株式会社製)):2質量部とを加えて、紫外線硬化性アクリル粘着剤溶液B1を得た。
【0031】
(ダイシングテープの作製)
基材樹脂フィルムとして、片面にコロナ放電処理が施された低密度ポリエチレン製フィルム(厚み:100μm)を用いた。
そして、基材樹脂フィルムのコロナ放電処理面に、前記紫外線硬化性アクリル粘着剤溶液B1を塗布し、80℃で10分間加熱して、加熱架橋させた。これにより、基材樹脂フィルム上に、放射線硬化性粘着剤層としての紫外線硬化性粘着剤層(厚さ:5μm)を形成した。次に、この紫外線硬化性粘着剤層の表面にセパレータを貼り合わせて、紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0032】
(実施例2)
ポリプロピレンオキシドとして数平均分子量5000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテル(商品名「プレミノールS3006」(AGC株式会社製))を用いた以外は実施例1と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0033】
(実施例3)
ポリプロピレンオキシドとして数平均分子量10000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテル(商品名「プレミノールS3011」(AGC株式会社製))を用い、その配合部数を0.5質量部とした以外は実施例1と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0034】
(実施例4)
ポリプロピレンオキシドとして数平均分子量10000であるポリプロピレンオキシド(商品名「プレミノールS4011」(AGC株式会社製))を用い、その配合部数を0.5質量部とした以外は実施例1と同様にして紫外線硬化型のダイシングテープを作製した。
【0035】
(実施例5)
アクリル共重合体のモノマーとして、アクリル酸エチルと2−ヒドロキシエチルアクリレートを質量比8:2として得られた紫外線硬化性アクリル粘着剤溶液E1を得た。この溶液E1を用いた以外は実施例1と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0036】
(実施例6)
アクリル共重合体のモノマーとして、アクリル酸エチルと2−ヒドロキシエチルアクリレートを質量比8:2として得られた紫外線硬化性アクリル粘着剤溶液E1(実施例5で用いたのと同じ溶液)を用いた以外は実施例3と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0037】
(実施例7)
実施例1で調製したアクリル共重合体を含む溶液(アクリル共重合体含有溶液A1)100質量部に対して、光重合開始剤として商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製):2.5質量部と、ポリイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):0.5質量部と、ポリプロピレンオキシドとして数平均分子量4000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテル(商品名「ユニオールTG−4000」(日油株式会社製)):2質量部及び放射線硬化性成分としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを10質量部加えたものを用いて、紫外線硬化性アクリル粘着剤溶液を得た。
【0038】
(ダイシングテープの作製)
基材樹脂フィルムとして、片面にコロナ放電処理が施された低密度ポリエチレン製フィルム(厚み:100μm)を用いた。
そして、基材樹脂フィルムのコロナ放電処理面に、前記紫外線硬化性アクリル粘着剤溶液を塗布し、80℃で10分間加熱して、加熱架橋させた。これにより、基材樹脂フィルム上に、放射線硬化性粘着剤層としての紫外線硬化性粘着剤層(厚さ:5μm)を形成した。次に、この紫外線硬化性粘着剤層の表面にセパレータを貼り合わせて、紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0039】
(実施例8)
放射線性硬化成分として添加したジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの配合量を60質量部とした以外は実施例7と同様にして紫外線硬化型のダイシングテープを作製した。
【0040】
(実施例9)
ポリイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)の配合部数を2.0質量部とした以外は実施例5と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0041】
(実施例10)
ポリイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)の配合部数を1.0質量部とした以外は実施例6と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0042】
(実施例11)
数平均分子量4000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテルの量を0.25質量部、ポリイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)の配合部数を0.25質量部とした以外は実施例1と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0043】
(実施例12)
放射線性硬化成分として添加したジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの配合量を100質量部、数平均分子量4000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテルの量を1.0質量部、ポリイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)の配合部数を0.25質量部とした以外は実施例7と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0044】
(比較例1)
ポリプロピレンオキシドの添加を行わない以外は、実施例1と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0045】
(比較例2)
ポリプロピレンオキシドの代わりに、数平均分子量2000のポリプロピレングリコール(商品名「ポリプロピレングリコール2000」(純正化学株式会社製))を用いた以外は、実施例1と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0046】
(比較例3)
数平均分子量2000のポリプロピレングリコールの量を5質量部とした以外は、比較例2と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0047】
(比較例4)
数平均分子量2000のポリプロピレングリコールの量を10質量部とした以外は、比較例2と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0048】
(比較例5)
ポリプロピレンオキシドとして数平均分子量3000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテル(商品名「ユニオールTG−3000」(日油株式会社製))を用い、その量を5質量部とした以外は、実施例1と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0049】
(比較例6)
ポリプロピレンオキシドとして分子量10000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテル(商品名「プレミノールS3011」(旭硝子株式会社製))を用いた以外は実施例1と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0050】
(比較例7)
ポリプロピレンオキシドとして数平均分子量10000であるポリプロピレンオキシド(商品名「プレミノールS4011」(旭硝子株式会社製))を用いた以外は実施例1と同様にして紫外線硬化型のダイシングテープを作製した。
【0051】
(比較例8)
ポリイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)を6.0質量部とした以外は比較例1と同様にして紫外線硬化型のダイシングテープを作製した。
【0052】
(比較例9)
ポリプロピレンオキシドとして数平均分子量3000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテル(商品名「ユニオールTG−3000」(日油株式会社製))を用いた以外は実施例1と同様にして紫外線硬化型のダイシングテープを作製した。
【0053】
(比較例10)
数平均分子量10000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテル(商品名「プレミノールS3011」(旭硝子株式会社製))の量を1.5質部とした以外は実施例3と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0054】
(比較例11)
数平均分子量4000であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテルの量を0.1質量部とした以外は実施例11と同様にして紫外線硬化性のダイシングテープを作製した。
【0055】
(比較例12)
放射線性硬化成分として添加したジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの配合量を150質量部とした以外は実施例12と同様にして紫外線硬化型のダイシングテープを作製した。
【0056】
実施例1〜12および比較例1〜12で得られたダイシングテープについて、以下試験を行い、その評価結果を表1〜4に示す。
【0057】
<剥離力評価方法>
23℃、50%RHの条件下において、幅25mmの試験片をSiミラーウエハ上に19.6Nのゴムローラーを3往復かけて貼合し、同条件下において24時間放置した後、同じく23℃、50%RHの条件下において、引張試験機を用いて、角度90度、引張速さ50mm/minで試験片を引剥し剥離時の荷重を求めた。これを3回繰り返し、平均値を求めることで剥離力を評価した。
【0058】
<ピックアップ性の評価試験>
実施例1〜12および比較例1〜12で得られたダイシングテープについて、以下の手順に従って試験を行い、ピックアップ性の評価試験を行った。
(1)8インチの半導体ウエハを厚さ50μmまで研削した。
グラインダー:DISCO社製の「DFG−840」
1軸:♯600砥石(回転数:4800rpm、ダウンスピード:P1:3.0μm/sec、P2:2.0μm/sec)
2軸:♯2000砥石(回転数:5500rpm、ダウンスピード:P1:0.8μm/sec、P2:0.6μm/sec)
シリコンウエハの裏面を2軸にて30μm研削後、シリコンウエハの最終厚みが50μmとなるように研削した。
【0059】
(2)(1)の研削終了後5分以内に、各例のダイシングテープを、前記(1)で得られた半導体ウエハの研削面に貼着すると共に、リングフレームに固定した。
(3)(2)でリングフレームに固定された半導体ウエハを、ダイシング装置(ディスコ社製DAD340)を用いて、設定した分割予定ラインに沿って15×10mm角にフルカットした。
(ダイシング条件)
ダイサー:DISCO社製の「DFD−340」
ブレード:DISCO社製の「27HECC」
ブレード回転数:40000rpm
ダイシング速度:100mm/sec
ダイシング深さ:25μm
カットモード:ダウンカット
ダイシングサイズ:15.0×10.0mm
【0060】
(4)ダイシングテープを貼着してから7日間経過した後、ダイシングテープの基材樹脂フィルム側から、紫外線を100mJ/mm
2照射して粘着剤層を硬化させた後、個片化した半導体チップを、ダイスピッカー装置(キャノンマシナリー社製CAP−300II)を用いてピックアップした。任意の半導体チップ50個を、下記のピックアップ条件でピックアップし、ピックアップが成功した半導体チップ数をカウントし、50個全ての半導体チップのピックアップが成功した場合を○、45〜49個の半導体チップのピックアップが成功した場合を△とし、それ以外は×として、ピックアップ性を評価した。○の評価のみが、ピックアップ性が合格であり、それ以外は不合格である。
(ピックアップ条件)
ダイボンダー:NEC社製「CPS−100」
ピン数:4本
ピンの間隔:7.8×7.8mm
ピン先端曲率:0.25mm
ピン突き上げ量:0.40mm
【0061】
<耐ダスト浸入性>
ピックアップ評価においてピックアップしたチップについて、光学顕微鏡を用いてチップの裏面を観察し、端部に切削ダストの付着が見られるチップの数をカウントし、50個全ての半導体チップで切削ダストの付着が見られなかった場合を○、45〜49個の半導体チップで切削ダストの付着が見られなかった場合を△とし、それ以外は×として、ダスト浸入の評価とした。○の評価のみが、ピックアップ性が合格であり、それ以外は不合格である。
【0062】
<耐汚染性>
実施例1〜12および比較例1〜12で得られたダイシングテープについて、以下の手順に従って試験を行い、汚染性の評価試験を行った。
(1)5インチの半導体ウエハにダイシングテープを貼合した。
(2)ダイシングテープ貼合から7日間経過した後、ダイシングテープの基材フィルム側から、紫外線を100mJ/mm
2照射して粘着剤層を硬化させた後、ダイシングテープを剥離した。
(3)下記の条件でX線光電子分光分析を実施、元素ピークの強度比から有機物汚染物量の反定量分析を行い、C1sのatom%が30%未満のものを○、30%以上60%未満のものを△、60%以上のものを×とした。△の場合でも実質的には問題がないため、○及び△の評価が汚染性合格である。
励起X線:単色化AlKα線(1486.6eV)
脱出角:45°
wide scan:1350〜0eV
narrow scan:C1s、N1s、O1s、Si2p
測定領域:1.1mmφ
【0063】
<耐粘着剤膨潤性>
実施例1〜12および比較例1〜12で得られたダイシングテープについて、以下の手順に従って試験を行い、粘着剤層の膨潤汚染性の評価試験を行った。
(1)ダイシングテープを、8インチ、厚さ50μmの半導体ウエハの研削面に貼着すると共に、リングフレームに固定した。
(2)(1)でリングフレームに固定された半導体ウエハを、ダイシング装置(ディスコ社製DAD340)を用いて、設定した分割予定ラインに沿って2×2mm角にフルカットした。
(ダイシング条件)
ダイサー:DISCO社製の「DFD−340」
ブレード:DISCO社製の「27HECC」
ブレード回転数:40000rpm
ダイシング速度:10mm/sec
ダイシング深さ:25μm
カットモード:ダウンカット
ダイシングサイズ:2.0×2.0mm
(3)ダイシング終了後、10分以内に、ダイシングされた半導体ウエハのダイシングラインを光学顕微鏡により観察する。任意の50ラインのうち、粘着剤の膨潤により蛇行したダイシングラインの数をカウントし、50ライン全てのダイシングラインで蛇行が見られなかった場合を○、1〜5のダイシングラインで蛇行が見られた場合を△とし、それ以外は×として、粘着剤の膨潤を評価した。○及び△の評価が粘着剤膨潤性合格である。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
表1〜4に示されるように、粘着剤層にポリプロピレンオキシドを含まない場合はピックアップ性が不合格となり(比較例1、8)、ポリプロピレンオキシドを含む場合でも、シリコンミラー面に貼合した後、23℃で50%RHの条件下で24時間経過後の、放射線硬化前における剥離力が3.5N/25mmよりも大きい場合は僅かながらピックアップミスが発生した(比較例11,12)。また、ポリプロピレンオキシドを含む場合でも、その数平均分子量が3000以下である場合は、粘着剤の膨潤といった問題があり(比較例2〜5、9)、ポリプロピレンオキシドを含む場合でもシリコンミラー面に貼合した後、23℃で50%RHの条件下で24時間経過後の、放射線硬化前における剥離力が0.5N/25mmよりも小さい場合はダスト浸入が発生し、不合格となった(比較例3〜8、10)。
これに対して、数平均分子量が3000よりも大きく10000以下であるポリプロピレンオキシドを用い、シリコンミラー面に貼合した後、23℃で50%RHの条件下で24時間経過後の、放射線硬化前における剥離力が0.5〜3.5N/25mmである実施例では、いずれの評価項目にも合格し、優れた特性を示したが、ポリプロピレンオキシド分子内の水酸基数が2である場合(実施例4)よりも、ポリプロピレンオキシドとして分子内の水酸基数が3であるポリオキシプロピレン−グリセリルエーテルを用いた場合において汚染が少なく、更に良好な結果であった(実施例1〜3、5〜12)。