特許第5764523号(P5764523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5764523-難燃性被覆管 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764523
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】難燃性被覆管
(51)【国際特許分類】
   B32B 1/08 20060101AFI20150730BHJP
   F16L 59/147 20060101ALI20150730BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20150730BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   B32B1/08 Z
   F16L59/147
   B32B27/32 C
   B32B27/28 101
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-103797(P2012-103797)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-230609(P2013-230609A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2013年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 俊之
【審査官】 中尾 奈穂子
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−059697(JP,U)
【文献】 特開平07−100984(JP,A)
【文献】 特表2009−525208(JP,A)
【文献】 特開2003−247668(JP,A)
【文献】 特開昭61−246053(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/089869(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
F16L 59/00−59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体の外周を覆うように被覆した非難燃被覆材からなる内層と、該内層の外周を覆うように被覆した難燃被覆材からなる外層とで構成する被覆層を備えた難燃性被覆管であって、
前記被覆層の厚みを、10mm〜40mmの範囲に含まれる厚みに設定するとともに、
前記内層の厚みを、前記被覆層全体の厚みに対して1/3〜2/3の厚みに設定し、
前記外層の酸素指数を25以上に設定し、
前記内層と前記外層との接合面間の一部に、該内層と外層との接合面が接合されていない非接合部を備え、
前記外層に比べて前記内層が固いことを特徴とする
難燃性被覆管。
【請求項2】
前記内層の非難燃被覆材を、ポリエチレン又はポリプロピレンで構成し、
前記外層の難燃被覆材を、エチレン酢酸ビニル共重合体で構成した
請求項1に記載の難燃性被覆管。
【請求項3】
前記非難燃被覆材の両端部を接合してなる内層のシーム部と、前記難燃被覆材の両端部を接合してなる外層のシーム部とを、前記管状体の軸芯を中心として周方向の異なる位置に配置した
請求項1または2に記載の難燃性被覆管。
【請求項4】
前記内層と前記外層とを異なる色に配色した
請求項1〜3のいずれか一つに記載の難燃性被覆管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば給湯、給水、空調機の屋外機と屋内機間の冷媒輸送等に用いられる金属管の外周面に断熱材を被覆した難燃性被覆管に関し、さらに詳しくは、高い防災性能が要求される建築物等に用いられる難燃性被覆管に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の給湯、給水、空調機用の配管材には、一般に、銅管、鋼管、ステンレス管、アルミニウム管などの金属管が用いられている。また、これら金属管は、その使用に際しては金属管の外周を断熱材で被覆した被覆断熱管として用いられている。
【0003】
上述の被覆断熱管としては、例えば管状体の外周に樹脂組成物を発泡させてなる断熱層を被覆し、その断熱層の外周に類似の樹脂組成物からなる保護層を被覆した下記の特許文献1,2に記載の難燃性被覆断熱管がある。
【0004】
しかし、特許文献1,2の難燃性被覆断熱管は、管状体の外周に被覆した断熱層と、該断熱層の外周に被覆した保護層とを類似又は同一の樹脂組成物からなる難燃被覆材で構成しているが、被覆断熱管を難燃化するために、断熱層及び保護層を難燃性樹脂発泡体のみで構成した場合、難燃性樹脂発泡体は高価であるため、その難燃性樹脂発泡体で被覆した難燃性被覆断熱管の価格が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−157017号公報
【特許文献2】特開平11−170447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、被覆層全体を難燃被覆材のみで構成するよりも安価であり、かつ、その難燃被覆材で被覆層全体を構成したものとほぼ同等の難燃性を得ることができる難燃性被覆管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、管状体の外周を覆うように被覆した非難燃被覆材からなる内層と、該内層の外周を覆うように被覆した難燃被覆材からなる外層とで構成する被覆層を備えた難燃性被覆管であって、前記被覆層の厚みを、10mm〜40mmの範囲に含まれる厚みに設定するとともに、前記内層の厚みを、前記被覆層全体の厚みに対して1/3〜2/3の厚みに設定し、前記外層の酸素指数を25以上に設定し、前記内層と前記外層との接合面間の一部に、該内層と外層との接合面が接合されていない非接合部を備え、前記外層に比べて前記内層が固いことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、被覆層全体を難燃被覆材のみで構成するよりも安価であり、かつ、その難燃被覆材で被覆層全体を構成したものとほぼ同等の難燃性を得ることができる。
詳述すると、管状体の外周に被覆した内層を非難燃被覆材にて構成し、該内層の外周に被覆した外層を難燃被覆材にて構成するとともに、前記被覆層の厚みを、10mm〜40mmの範囲に含まれる厚みに設定するとともに、内層の厚みを、被覆層全体の厚みに対して1/3〜2/3の厚みに設定しているので、被覆層全体を難燃被覆材のみで構成するよりも、難燃性に優れた難燃性被覆管を安価に製造することができる。
【0009】
また、管状体の外周に被覆した非難燃被覆材からなる内層を、難燃被覆材からなる外層にて覆っているため、難燃被覆材の難燃性により非難燃被覆材まで延焼することを防止でき、難燃被覆材にて管状体の外周全体を覆ったものとほぼ同等の延焼防止効果が得られる。
【0010】
この結果、管状体の外周全体を、例えば難燃性樹脂発泡体等の難燃被覆材のみで覆うよりも安価に製造することができる。
なお、上述の管状体は、例えば銅、鉄、ステンレス等の金属材料で構成している。
【0011】
また、前記外層の酸素指数を25以上に設定することにより、難燃性被覆管の難燃性をさらに向上させることができる。
詳述すると、外層の酸素指数を25以上に設定することにより、内層を難燃性の被覆材に変更することなく、難燃性被覆管全体の難燃性を高めることができる。
この結果、難燃性が高く、安価な難燃性被覆管を得ることができる。
【0012】
また、前記内層と前記外層との接合面間の少なくとも一部に、該内層と外層との接合面が接合されていない非接合部を備えたため、内層と外層との接合面に付加される応力を緩和する効果が得られる。
【0013】
詳述すると、内層と外層とからなる2層構造の被覆層を、例えば管状体の曲がっている部分に被覆する場合、あるいは、被覆層で覆われた被覆管を曲げて施工する場合、被覆層に付与される応力が、非接合部において内層と外層とにそれぞれ分散して付与されるため、応力が接合面の一部に集中することがなく、応力を緩和する効果が得られる。
【0014】
この結果、外層に変形が生じにくく、厚み方向の変形量も少なくなるので、被覆材を、管状体の外面に対してほぼ均等な厚みに被覆された状態に維持することができる。
また、非接合部と対応する内層と外層との間に空気層が形成されるので、被覆層による断熱効果を向上させることができる。
【0015】
また、外層に比べて内層の方が固いので、被覆層を、管状体の曲がっている部分に装着する場合、あるいは、被覆層で覆われた難燃性被覆管を曲げて施工する場合、外層が、内層によって内側から支持されているため、外層が内側へ変形しにくく、また、外層の厚み変化が少ないので、管状体の外周に対してほぼ均等な厚みに被覆することができる。
この結果、管状体の外面全体を、難燃性または不燃性の被覆材にてほぼ均等に被覆することができる。
【0016】
また、この発明の態様として、前記内層の非難燃被覆材を、ポリエチレン又はポリプロピレンで構成し、前記外層の難燃被覆材を、エチレン酢酸ビニル共重合体で構成することができる。
この発明によれば、内層と外層とからなる被覆層を、管状体の外周に対して安定した状態に取り付けることができる。
【0017】
詳述すると、外層に比べて内層の方が固いので、被覆層を、例えば管状体の曲がっている部分に装着する場合、あるいは、被覆層で覆われた被覆管を曲げて施工する場合、外層が、内層によって内側から支持されているため、外層が内側へ変形しにくく、また、外層の厚み変化が少ないので、管状体の外周に対してほぼ均等な厚みに被覆することができる。
この結果、管状体の外面全体を、難燃性または不燃性の被覆材にてほぼ均等に被覆することができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記非難燃被覆材の両端部を接合してなる内層のシーム部と、前記難燃被覆材の両端部を接合してなる外層のシーム部とを、前記管状体の軸芯を中心として周方向の異なる位置に配置することができる。
【0019】
この発明によれば、内層のシーム部と外層のシーム部とに応力を分散させて、該各層のシーム部が同時に剥離することを防止できる。
詳述すると、2層構造の被覆層を、例えば管状体の曲がっている部分に被覆する場合、あるいは、被覆層で覆われた被覆管を曲げて施工する場合、内層のシーム部と外層のシーム部とが周方向の同一位置に配置されていると、上述の曲げによる応力が各層のシーム部に対して集中して付与されるため、同時に剥離が生じ易い。
【0020】
これに対して本発明は、内層のシーム部と外層のシーム部とを周方向の異なる位置に配置しているため、上述の曲げによる応力が各層のシーム部に対して分散して付与されることになり、内層のシーム部と外層のシーム部とが同時に剥離するリスクを回避することができる。
この結果、管状体の外周面に内層が被覆され、該内層の外周に外層が被覆された状態を確実に維持することができる。
【0021】
また、この発明の態様として、前記内層と前記外層とを異なる色に配色することができる。
この発明によれば、難燃性被覆管の製造時において、内層用の非難燃被覆材と、外層用の難燃被覆材の取り扱いが容易かつ的確に行えるとともに、被覆材の配置間違いが起きることを防止できる。
【0022】
詳述すると、例えば紫色、橙色、赤色、青色、黄色、緑色等の中から選択した色にて、内層を構成する非難燃被覆材と、外層を構成する難燃被覆材とを異なる色に予め配色しておくことで、その被覆材の色を見るだけで、内層用の非難燃被覆材であるか、外層用の難燃被覆材であるか即見分けることができる。
これにより、非難燃被覆材からなる内層を管状体の外周に被覆し、該内層の外周に難燃被覆材からなる外層を被覆する作業が的確に行え、製造作業の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、被覆層全体を難燃被覆材のみで構成するよりも安価であり、かつ、その難燃被覆材で被覆層全体を構成した難燃性被覆管とほぼ同等の難燃性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態の難燃性被覆管の断面図。
図2】第2実施形態の非接合部を設けた難燃性被覆管の断面図。
図3】垂直トレイ式難燃試験による難燃試験の経過写真。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の難燃性被覆管1の断面図である。
【0026】
第1実施形態における難燃性被覆管1は、断面丸形状を有する銅製の管状体2と、管状体2の外周全体を覆うように被覆した非難燃被覆材からなる内層3と、該内層3の外周全体を覆うように被覆した難燃被覆材からなる外層4と、内層3と外層4とを接合してなる被覆層5とで構成している。
被覆層5は、内層3と外層4との接合面全周を、図示しない熱溶着手段にて一体的に熱溶着して構成している。なお、内層3と外層4との接合面全周を接着材で接着してもよい。
【0027】
管状体2は、金属材料の一例として銅で構成しているが、銅以外に、例えば鉄やステンレス等の金属材料で構成してもよい。また、管状体2の外径は、φ6mm〜φ55mmの範囲に含まれる外径に設定している。
なお、管状体2の肉厚は、用途上必要な耐圧や腐れ代、その他の用途や規格に基づいて設定している。
【0028】
内層3の厚みT1は、内層3と外層4とで構成する被覆層5全体の厚みT3に対して1/3〜2/3の範囲に含まれる厚みに設定している。
外層4の厚みT2は、被覆層5全体の厚みT3から内層3の厚みT1を減算した残りの厚みに設定している。また、外層4を酸素指数が25以上の難燃被覆材で構成している。
被覆層5全体の厚みT3は、10mm〜40mmの範囲に含まれる厚みに設定している。
【0029】
内層3の非難燃被覆材は、ポリエチレン(PE)からなる非難燃性樹脂発泡体で構成している。また、外層4の難燃被覆材は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる難燃性樹脂発泡体で構成している。
【0030】
また、内層3と外層4とは、目視により識別し易い色に配色している。例えば紫色、橙色、赤色、青色、黄色、緑色等の中から選択した異なる色にて、内層3を構成する非難燃被覆材と、外層4を構成する難燃被覆材とを配色している。
【0031】
内層3は、非難燃被覆材を、管状体2の外周を覆うように被覆する際、該非難燃被覆材の幅方向両端部が互いに当接される方向に向けて湾曲するとともに、その幅方向両端部の対向端面を熱溶着により一体的に接合して筒状に形成している。
【0032】
外層4は、難燃被覆材を、筒状に成形した内層3の外周を覆うように被覆する際、該難燃被覆材の幅方向両端部が互いに当接される方向に向けて湾曲して、幅方向両端部の端面を熱溶着により一体的に接合して筒状に形成している。
【0033】
また、非難燃被覆材の幅方向両端部を接合してなる内層3のシーム部3aと、難燃被覆材の幅方向両端部を接合してなる外層4のシーム部4aとは、管状体2の軸芯を中心として周方向Xの異なる位置に配置している。
なお、内層3のシーム部3aと外層4のシーム部4aとは、管状体2の長手方向と対応して、内層3と外層4との長手方向の一端から他端に至る全長にそれぞれ配置している。
【0034】
上述のように構成した難燃性被覆管1は、管状体2の外周を覆うように被覆した内層3を非難燃被覆材にて構成し、該内層3の外周を覆うように被覆した外層4を難燃被覆材にて構成するとともに、被覆層5全体の厚みT3を10mm〜40mmの範囲に含まれる厚みに設定し、内層3の厚みを、被覆層5全体の厚みに対して1/3〜2/3の範囲に含まれる厚みに設定している。
【0035】
この結果、管状体2の外周全体を、例えば難燃性樹脂発泡体等の難燃被覆材のみで被覆するよりも、難燃性に優れた難燃性被覆管1を安価に製造することができる。かつ、その難燃被覆材で被覆層5全体を構成したものとほぼ同等の難燃性を得ることができる。
【0036】
また、管状体2の外周に被覆した非難燃被覆材からなる内層3を、難燃被覆材からなる外層4にて覆っているため、難燃被覆材の難燃性により非難燃被覆材まで延焼することを防止でき、難燃被覆材にて管状体2の外周全体を覆ったものと同等の延焼防止効果が得られる。
【0037】
また、外層4の酸素指数を25以上に設定することにより、内層3を難燃性の被覆材に変更することなく、難燃性被覆管1全体の難燃性を高めることができ、難燃性が高く、安価な難燃性被覆管1を得ることができる。
【0038】
また、内層3の非難燃被覆材をポリエチレンで構成し、外層4の難燃被覆材をエチレン酢酸ビニル共重合体で構成しているので、内層3と外層4とからなる被覆層5を、管状体2の外周に対して安定した状態に取り付けることができる。
【0039】
詳述すると、外層4に比べて内層3の方が固いので、被覆層5を、管状体2の曲がっている部分に装着する場合、あるいは、被覆層5で覆われた難燃性被覆管1を曲げて施工する場合、外層4が、内層3によって内側から支持されているため、外層4が内側へ変形しにくく、また、外層4の厚み変化が少ないので、管状体2の外周に対してほぼ均等な厚みに被覆することができる。
この結果、管状体2の外面全体を、難燃性または不燃性の被覆材にてほぼ均等に被覆することができる。
【0040】
また、内層3のシーム部3aと外層4のシーム部4aとを周方向Xの異なる位置に配置しているため、内層3のシーム部3aと外層4のシーム部4aとに応力を分散させて、該各層3,4のシーム部3a,4aが同時に剥離することを防止できる。
【0041】
詳述すると、2層構造の被覆層5を、例えば管状体の曲がっている部分に被覆する場合、あるいは、被覆層で覆われた被覆管を曲げて施工する場合、内層3のシーム部3aと外層4のシーム部4aとが周方向Xの同一位置に配置されていると、上述の曲げによる応力が各層3,4のシーム部3a,4aに対して集中して付与されるため、同時に剥離が生じ易い。
【0042】
これに対して、本発明の難燃性被覆管1は、内層3のシーム部3aと外層4のシーム部4aとを周方向Xの異なる位置に配置しているため、上述の曲げによる応力が各層3,4のシーム部3a,4aに対して分散して付与されることになり、内層3のシーム部3aと外層4のシーム部4aとが同時に剥離するリスクを回避することができる。
この結果、管状体2の外周面に内層3が被覆され、該内層3の外周に外層4が被覆された被覆された状態を確実に維持することができる。
【0043】
また、内層3と外層4とを異なる色に配色しているので、難燃性被覆管1の製造時において、内層3用の非難燃被覆材と、外層4用の難燃被覆材の取り扱いが容易かつ的確に行えるとともに、被覆材の配置間違いが起きることを防止できる。
【0044】
詳述すると、例えば紫色、橙色、赤色、青色、黄色、緑色等の中から選択した色にて、内層3を構成する非難燃被覆材と、外層4を構成する難燃被覆材とを異なる色に予め配色しておくことで、その被覆材の色を見るだけで、内層3用の非難燃被覆材であるか、外層4用の難燃被覆材であるか即見分けることができる。
この結果、非難燃被覆材からなる内層3を管状体2の外周に被覆し、該内層3の外周に難燃被覆材からなる外層4を被覆する作業が的確に行え、製造作業の向上を図ることができる。
【0045】
次に、図3の写真(a)〜(g)と、下記の表1とを用いて、上述のように構成した難燃性被覆管1について、垂直トレイ式難燃試験(JIS C3521「通信ケーブル用難燃シース燃焼性試験方法」)により実施した効果確認試験について説明する。
上述の垂直トレイ式難燃試験は、規定本数の難燃性被覆管1を、梯子状の垂直に設置されたトレイに規定の方法で設置(トレイの中央部に試料外径の1/2間隔で150mm以上となるよう取り付ける)する。この後、トレイ下方より規定のバーナにより難燃性被覆管1を燃焼させ、トレイ上方への延焼性を評価する方法である。
【0046】
本試験を実施するにあたり、管状体2の外径を19.05mmに設定し、内層3の厚みT1と外層4の厚みT2を下記の表1に示す厚み(mm)に設定し、被覆層5全体の厚みT3を10mm〜40mmの範囲に含まれる厚みに設定した試験品A〜Fについて垂直トレイ式難燃試験を実施した。なお、外層4を酸素指数が25以上の難燃被覆材で構成している。
【0047】
上記の垂直トレイ式難燃試験にて試験品A〜Fの難燃試験を行った際、図3の経過写真(a)〜(g)に示すように、試験品A〜Fは、時間経過に伴ってトレイ上方へ延焼するため、その延焼性を評価した結果、下記の表1に示すような結果が得られた。
【0048】
下記の表1は、試験品A〜Fを、垂直トレイ式難燃試験により難燃性について試験した結果を示す。
【0049】
【表1】
上記試験結果から見ても明らかなように、試験品A〜Fの延焼性について評価すると、試験品E,Fは、内層3よりも外層4の肉厚が薄く、難燃被覆材の外層4による内層3への延焼を防止する効果が低いため、垂直トレイ式難燃試験に合格できるレベルの被覆管を得ることができない。
【0050】
これに対して、試験品A〜Dは、被覆層5全体の厚みT3を10mm〜40mmの範囲に含まれる厚みに設定するとともに、内層3の厚みT1を、被覆層5全体の厚みT3に対して1/3〜2/3の範囲に含まれる厚みに設定している。
つまり、外層4の肉厚が内層3よりも薄いか、該内層3とほぼ同等の厚みを有するため、難燃被覆材の外層4による内層3への延焼を防止する効果が高く、垂直トレイ式難燃試験に合格できるレベルの難燃性被覆管1を得ることができる。
【0051】
(第2実施形態)
図2は第2実施形態の非接合部6を設けた難燃性被覆管1の断面図である。詳述すると、図2[a]は非接合部6を1箇所設けた難燃性被覆管1の断面図、図2[b]は非接合部6を複数箇所設けた難燃性被覆管1の断面図である。
【0052】
図2[a]の難燃性被覆管1は、内層3と外層4とが接合されていない非接合部6を、内層3と外層4との接合面間において周方向Xの1箇所に設けている。
【0053】
図2[b]の難燃性被覆管1は、上述の非接合部6を、内層3と外層4との接合面間において周方向Xの2箇所に設けている。
【0054】
上述の非接合部6は、内層3と外層4との接合面において周方向Xのほぼ1/4の範囲に設けている。また、その非接合部6は、被覆層5の長手方向の一端から他端に至る全長に配置している。
【0055】
詳述すると、内層3と外層4とからなる2層構造の被覆層5を、管状体2の曲がっている部分に被覆する場合、あるいは、被覆層5で覆われた難燃性被覆管1を曲げて施工する場合、被覆層5に付与される応力が、非接合部6において内層3と外層4とにそれぞれ分散して付与されるので、応力が接合面の一部に集中することがなく、内層3と外層4との接合面に付加される応力を全周にて緩和する効果が得られる。
【0056】
この結果、外層4に変形が生じにくく、厚み方向の変形量も少なくなるので、難燃被覆材を、管状体2の外面に対してほぼ均等な厚みに被覆することができる。
また、内層3と外層4との対向面間の非接合部6と対応する部分に空間部が形成されるため、その空間部に流入した空気層によって断熱効果を向上させることができる。かつ、前記実施形態と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0057】
なお、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
上述の非接合部6を、難燃性被覆管1の周方向Xに対して所定間隔を隔てて複数箇所配置してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…難燃性被覆管
2…管状体
3…内層
4…外層
3a,4a…シーム部
5…被覆層
6…非接合部

図1
図2
図3