特許第5764556号(P5764556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764556
(24)【登録日】2015年6月19日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】内燃機関用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20150730BHJP
   C10M 137/04 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 135/18 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 105/04 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 107/08 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 105/32 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 105/34 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 105/36 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 105/76 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 107/34 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 107/32 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 107/50 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 107/38 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 105/06 20060101ALN20150730BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20150730BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20150730BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20150730BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20150730BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20150730BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20150730BHJP
【FI】
   C10M169/04
   !C10M137/04
   !C10M137/10 A
   !C10M135/18
   !C10M139/00 Z
   !C10M105/04
   !C10M107/08
   !C10M105/32
   !C10M105/34
   !C10M105/36
   !C10M105/76
   !C10M107/34
   !C10M107/32
   !C10M107/50
   !C10M107/38
   !C10M105/06
   !C10M101/02
   C10N10:04
   C10N10:12
   C10N30:06
   C10N30:10
   C10N40:25
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-520337(P2012-520337)
(86)(22)【出願日】2011年5月18日
(86)【国際出願番号】JP2011061413
(87)【国際公開番号】WO2011158595
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2014年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2010-136278(P2010-136278)
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(72)【発明者】
【氏名】▲巽▼ 幸男
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢二
【審査官】 松波 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−080981(JP,A)
【文献】 特開2004−051758(JP,A)
【文献】 特開2001−262172(JP,A)
【文献】 特開2000−192068(JP,A)
【文献】 国際公開第96/020263(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00614837(EP,A1)
【文献】 米国特許第03492373(US,A)
【文献】 特開平05−194559(JP,A)
【文献】 特開2006−131766(JP,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を必須成分とする潤滑油組成物であって、該組成物のリン含有量が50質量ppm〜1000質量ppmであることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物:
(A)成分:ポリ−α−オレフィン、パラフィン系鉱油及びナフテン系鉱油より選択される1種又は2種以上である基油
(B)成分:下記の一般式(1)で表わされる化合物
(C)成分:金属含有酸化防止剤
【化1】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表わし、Zは、炭素数2〜20の炭化水素基を表わし、nは、1〜10の数を表わす。)
【請求項2】
(C)成分が亜鉛含有酸化防止剤及び/又はモリブデン含有酸化防止剤である、請求項1記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項3】
(C)成分が下記の一般式(2)〜(4)の化合物及び6価のモリブデンと下記一般式(5)で表わされる1級又は2級アミンとを反応させて得られるモリブデンアミンの中から選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2記載の内燃機関用潤滑油組成物:
【化2】
(式中、R及びR10は、炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、aは、0〜1/3の数を表わす。)
【化3】
(式中、R11〜R14は、炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、X1〜Xは、硫黄原子又は酸素原子を表わす。)
【化4】
(式中、R15〜R18は、炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、X〜Xは、硫黄原子又は酸素原子を表わす。)
19−NH−R20 (5)
(式中、R19及びR20は、水素原子及び/又は炭素数1〜40の炭化水素基を表わすが、同時に水素原子であることはない。)
【請求項4】
一般式(1)のZが一般式(6)、一般式(7)又は一般式(8)で表わされる基である、請求項1ないし3のいずれか1項記載の内燃機関用潤滑油組成物:
【化5】
【請求項5】
一般式(1)のR〜Rが水素原子又はメチル基である、請求項1ないし4のいずれか1項記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項6】
内燃機関用潤滑油組成物中のリン含有量が200質量ppm〜1000質量ppmである、請求項1ないしのいずれか1項記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項7】
内燃機関用潤滑油組成物が非金属酸化防止剤を(A)成分に対して0.01質量%〜5質量%含有する、請求項1ないしのいずれか1項記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項8】
更に、摩耗防止剤、摩擦調整剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、腐食防止剤、及び消泡剤からなる群[但し、(B)成分及び(C)成分は除く]から選択される1種または2種以上を含有する、請求項1ないしのいずれか1項記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化防止効果及び摩耗防止効果の両方を満足できるリン含有量を低減させた内燃機関用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、エンジン油、ディーゼル油などに使用される内燃機関用の摩耗防止剤及び酸化防止剤としては、含リン化合物を使用することが一般的であり、多くのメーカーでは摩耗防止剤及び酸化防止剤として、有機亜鉛化合物や有機モリブデン化合物を添加剤と組み合わせて対応してきた(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
特許文献1には、潤滑油基油(鉱油・合成油)に対して、硫化オキシモリブデンジチオカーバメートをモリブデン(Mo)量として0.01〜0.2重量%、ジチオりん酸亜鉛をりん(P)量として0.01〜0.2重量%、および、エステル基を有するフェノール系酸化防止剤を0.2〜5重量%を含有することを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物が開示されている。
【0004】
又、特許文献2には、潤滑油基油(鉱油・合成油)に対して、清浄剤として全塩基価(TBN)165mgKOH/gを有するカルシウム・アルキサリチレート(カルシウム(Ca)含有量6.0質量%)を質量%で5.8〜8.3、酸化防止剤兼摩耗防止剤としてプライマリアルキル型ジンク・ジチオホスフェートを亜鉛(Zn)の質量%で0.09〜0.13、摩擦調整剤兼摩耗防止剤として油溶性オキシモリブデン・ジアルキルジチオホスフェートを、モリブデン(Mo)の質量%で0.02〜0.04を配合したことを特徴とする排気ガス還流装置付エンジン用ディーゼルエンジンオイルが開示されている。
【0005】
更に、特許文献3には、鉱油及び/又は合成油からなる基油に(A)コハク酸イミド系無灰分散剤を窒素元素換算量で0.08〜0.40質量%、(B)金属系清浄剤を金属元素換算量で0.06〜0.22質量%、(C)セカンダリーアルキルジチオリン酸亜鉛をリン元素換算量で0.04〜0.08質量%、(D)リン含有無灰摩耗防止剤をリン元素換算量で0.01〜0.04質量%配合し、かつ組成物中の金属元素由来の硫酸灰分量が0.3〜1.0質量%であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物が開示されている。また、リン含有無灰摩耗防止剤をリン元素換算量で0.01〜0.04質量%配合し、かつ組成物中の金属元素に由来する硫酸灰分量が0.3〜1.0質量%であることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−17883号公報
【特許文献2】特開平7−207290号公報
【特許文献3】特開2003−165992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、環境及び自動車用排出ガス浄化触媒に対しては、リン化合物が悪影響を及ぼす場合があり、国際潤滑油標準化承認委員会(ILSAC)によるGF−3規格(2001年7月導入)及びGF−4規格(2004年7月導入)では、内燃機関用潤滑油中のリン含有量の低減が求められている。
【0008】
しかしながら、現在のエンジンは高速で動作する場合も多く、使用される潤滑油も低粘度なため、摩耗に対して非常に厳しい状況となっている。従って、上記のような内燃機関用潤滑油組成物を単に低リン化させただけではこうした高性能エンジンの摩耗防止効果を満足させることはできない場合がある。そこで、リン含有量を低減させた場合でも酸化防止効果及び摩耗防止効果の両方を満足できる高性能エンジンにも対応可能な高い摩耗防止性能をもつ内燃機関用潤滑油組成物が求められている。
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、リン含有量を低減させた場合でも酸化防止効果及び摩耗防止効果の両方を満足できる内燃機関用潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明者等は鋭意検討し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を必須成分とする潤滑油組成物であって、該組成物のリン含有量が50質量ppm〜1000質量ppmであることを特徴とする内燃機関用潤滑油組成物である:
(A)成分:ポリ−α−オレフィン、パラフィン系鉱油及びナフテン系鉱油より選択される1種又は2種以上である基油
(B)成分:下記の一般式(1)で表わされる化合物
(C)成分:金属含有酸化防止剤
【化1】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表わし、Zは、炭素数2〜20の炭化水素基を表わし、nは、1〜10の数を表わす。)
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果は、従来知られている内燃機関用潤滑油組成物と比較して、リン含量を低減させた場合でも酸化防止効果及び摩耗防止効果を発揮する内燃機関用潤滑油組成物を提供したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物の(A)成分として使用することができる基油は、鉱油、合成油又はこれらの混合物である。基油の動粘度は特に限定されないが、好ましくは100℃で1〜50mm2/秒、40℃で10〜1,000mm2/秒程度、粘度指数(VI)は好ましくは100以上、より好ましくは120以上、最も好ましくは135以上である。
【0013】
(A)成分として使用することができる鉱油は、天然の原油から分離されるものであり、これを適当に蒸留、精製等を行って製造される。鉱油の主成分は炭化水素(多くはパラフィン類である)であり、その他1環ナフテン分、2環ナフテン分、芳香族分等を含有している。これらを水素化精製、溶剤脱れき、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水添脱ろう、接触脱ろう、水素化分解、アルカリ蒸留、硫酸洗浄、白土処理等の精製を行った基油も好ましく使用することができる。これらの精製手段は、適宜に組み合わせて行われ、同一処理を複数段に分けて繰り返し行っても有効である。例えば、(i)留出油を溶剤抽出処理するか、又は溶剤抽出処理した後に水素化処理し、次いで硫酸洗浄する方法、(ii)留出油を水素化処理した後に脱ろう処理する方法、(iii)留出油を溶剤抽出処理した後に水素化処理する方法、(iv)留出油を溶剤抽出処理した後に白土処理する方法、(v)留出油を二段或いは三段以上の水素化処理を行う、又はその後にアルカリ蒸留又は硫酸洗浄処理する方法、(vi)留出油を水素化処理するか、又は水素化処理した後に、アルカリ蒸留又は硫酸洗浄処理する方法、或いはこれらの処理油を混合する方法等が有効である。
【0014】
これらの処理を行うことにより、未精製鉱油中の芳香族成分、硫黄分、窒素分等を除去することが可能である。現在の技術では、これらの不純分は痕跡量以下に除去することが可能であるが、芳香族成分は潤滑油添加剤を溶解しやすくさせる効果があるため、3質量%〜5質量%程度残存させる場合もある。例えば、現在使用されている高度精製鉱油中の硫黄分や窒素分は0.01質量%以下であり、場合によっては0.005質量%以下である。一方、芳香族成分は1質量%以下、場合によっては0.05質量%以下のものもあれば、3質量%程度残存しているものもある。
【0015】
市販の鉱油としては、例えば、上記の処理を行ったパラフィン系鉱油、及びナフテン分を多く含有するナフテン系鉱油が挙げられる。
【0016】
又、(A)成分として使用することができる合成油とは、化学的に合成された潤滑油であって、例えばポリ−α−オレフィン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリイソブチレン(ポリブテン)、モノエステル、ヒンダードエステル、ジエステル、芳香族多価カルボン酸エステル、ケイ酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン、フッ素化化合物、アルキルベンゼン、GTL等が挙げられる。
【0017】
ポリ−α−オレフィンとしては例えば、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等をポリマー化又はオリゴマー化したもの或いはこれらを水素化したもの等が挙げられる。モノエステルとしては任意のモノカルボン酸と任意のモノアルコールから得られるエステルを使用することが可能であるが、モノカルボン酸は炭素数6〜20のモノカルボン酸が好ましく、炭素数6〜12のモノカルボン酸がより好ましく、炭素数8のモノカルボン酸が更に好ましい。モノアルコールとしては炭素数6〜20のアルキル基を有するアルコール用いることが好ましい。ジエステルとしては例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の2塩基酸と、2−エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、トリデカノール等のアルコールのジエステル等が挙げられる。ヒンダードエステルとしては例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、或いはこれらのアルキレンオキサイド付加物等のポリオールと、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸とのエステル等が挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドのブロック又はランダム共重合体のモノ又はジメチルエーテル等が挙げられる。
【0018】
これらの合成油は、各々化学的に合成されるため、単一物質か同族体の混合物である。従って、例えばポリ−α−オレフィン、ポリイソブチレン(ポリブテン)、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール等の合成油は、鉱油中に含まれる不純物であるベンゼンや多環縮合型の芳香族成分、チオフェン等の硫黄分、インドール、カルバゾール等の窒素分等は含まれていない。
【0019】
これらの鉱油及び合成油の中でも摩耗改善効果が高いことから、ポリ−α−オレフィン、パラフィン系鉱油及びナフテン系鉱油を使用することが好ましい。
【0020】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物の(B)成分は、一般式(1)で表わされる化合物である:
【化2】
(式中、R1〜R8は、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表わし、Zは、炭素数2〜20の炭化水素基を表わし、nは、1〜10の数を表わす。)
【0021】
一般式(1)において、R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表わし、こうしたアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ペンチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ドデシル(ラウリル)基、トリデシル基、テトラデシル(ミリスチル)基、ペンタデシル基、ヘキサデシル(パルミチル)基、へプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル)基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。R1〜R8は摩耗防止効果が高いことから、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0022】
一般式(1)において、Zは炭素数2〜20の炭化水素基を表わし、こうした基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、及びアリーレン基とアルキレン基からなる炭化水素基等が挙げられ、アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基、イコサレン基等が挙げられる。
シクロアルキレン基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、ジシクロペンチレン基、トリシクロペンチレン基等が挙げられる。
【0023】
アリーレン基としては、例えば、一般式(6)で表わされる基、一般式(8)で表わされる基、ナフチレン基等が挙げられ、一般式(6)の基の場合、結合する箇所によってオルト体、メタ体及びパラ体の3つの構造になるが、いずれの構造であってもよく、これらの違いによって性能は変わらない。アリーレン基とアルキレン基からなる炭化水素基としては、一般式(7)で表わされる基、1,2−ジフェニルエチレン基等が挙げられる。Zはこれらの中でも、摩耗防止効果が高いことからアリーレン基を1つ以上含有することが好ましく、一般式(6)、一般式(7)、一般式(8)のいずれかで表わされる基がより好ましく、一般式(6)、一般式(7)のいずれかで表わされる基が更に好ましい:
【0024】
【化3】
【0025】
一般式(1)で表わされる化合物のnは重合度を表わし、本発明の内燃機関用潤滑油組成物の(B)成分として、摩耗防止効果を十分に発揮させるためには、nは1〜10の数、好ましくは1〜5の数である。
【0026】
なお、(B)成分には、一般式(1)で表わされる化合物のnがゼロである化合物、又はnが11以上の化合物が不純物として混入することもあるが、これらの含有量は(B)成分100質量部に対して10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい。10質量部を超えると、(B)成分の摩耗防止効果が低くなるために好ましくない。
【0027】
又、nの平均、すなわち、平均重合度は一般式(1)で表わされる化合物のモル比から計算され、例えば、n=1の化合物が50モル%、n=2の化合物が50モル%の組成ならば、平均重合度は1.5となる。なお、nの値は高速液体クロマトグラフィーの測定結果から算出できる。
【0028】
(B)成分である一般式(1)で表わされる化合物のnの平均、即ち、平均重合度は、特に制限はないが摩耗防止効果を高めるためには、1.0〜4.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましい。4.0を超える場合は(A)成分への溶解が困難になる場合や摩耗防止効果が低くなる場合があるために好ましくない。なお、一般式(1)のnがゼロである化合物やnが11以上の化合物が混入している場合、本発明の(B)成分のnの平均、即ち、平均重合度を算出する際に、これらの化合物のnの値を含めないものとする。
【0029】
一般式(1)で表わされる化合物を製造する方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法を使用してもよく、例えば、以下の方法により目的物を得ることができる:
方法1
Zが一般式(6)で表わされ、R1〜R8が全て水素原子、一般式(1)のnの値が1〜5の化合物を製造する場合には、1モルの1,3−ベンゼンジオールと2モルのオキシ塩化リンとを反応させた後に、4モルのフェノールを反応させればよい。この場合、各原料のモル比を変えることによってnの値の異なった化合物を製造することができるが、通常いずれのモル比で合成しても、精製を行わなければnの値が異なった化合物の混合物が得られる。
【0030】
方法2
Zが一般式(6)で表わされ、R1〜R8が全て水素原子、一般式(1)のnの値が1の化合物を製造する場合には、1モルの1,3−ベンゼンジオールと2モルのクロロリン酸ジフェニルとを反応させることにより得られる。
【0031】
又、(B)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0032】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物の(C)成分は、金属含有酸化防止剤である。金属を含有する酸化防止剤は、酸化防止効果を示すだけでなく、摩耗防止効果を示す。又、酸化防止効果はフェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤のような非金属酸化防止剤と併用すると相乗効果を示すことが知られている。こうした金属含有酸化防止剤としては、例えば、亜鉛ジチオホスフェート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンアミン、銅ジチオホスフェート、銅ジチオカルバメート等が挙げられ、摩耗防止効果及び酸化防止効果が高いため、一般式(2)で表わされる亜鉛ジチオホスフェート、一般式(3)で表わされるモリブデンジチオカーバメート、一般式(4)で表わされるモリブデンジチオホスフェート、及び6価のモリブデンと一般式(5)で表わされる1級又は2級アミンとを反応させて得られるモリブデンアミンが好ましく、一般式(2)で表わされる亜鉛ジチオホスフェート及び一般式(3)で表わされるモリブデンジチオカーバメートがより好ましく、一般式(2)で表わされる亜鉛ジチオホスフェートが更に好ましい。
【0033】
まず、一般式(2)で表わされる亜鉛ジチオホスフェートについて説明する:
【化4】
(式中、R9及びR10は、炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、aは、0〜1/3の数を表わす。)
【0034】
一般式(2)において、R9及びR10は炭素数1〜20の炭化水素基を表わす。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、一般式(1)で前述したものが挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、イソペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、トリデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p−クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、メチルシクロペンテニル基、メチルシクロヘキセニル基、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
【0035】
一般式(2)において、R9及びR10は、アルキル基が好ましく、2級アルキル基がより好ましい。炭素数は、3〜14であることが好ましく、3〜10であることがより好ましく、3〜8であることが更に好ましい。R9及びR10は、同一の炭化水素基でも異なる炭化水素基でもよい。
【0036】
又、一般式(2)において、a=0の場合、中性亜鉛ジチオホスフェート(中性塩)と呼ばれ、a が1/3の場合は、塩基性亜鉛ジチオホスフェート(塩基性塩)と呼ばれている。亜鉛ジチオホスフェートは、これら中性塩と塩基性塩の混合物であるため、aは0〜1/3の数で表わされる。aの数は亜鉛ジチオホスフェートの製法によって異なるが、0.01〜0.3が好ましく、0.01〜0.25がより好ましく、0.03〜0.2 が更に好ましい。aが0.3より大きくなると、加水分解安定性が悪くなる場合があり、aが0.01より小さくなると、内燃機関用潤滑油組成物の耐摩耗性が悪くなる場合がある。
【0037】
次に、一般式(3)で表わされるモリブデンジチオカーバメートについて説明する:
【化5】
(式中、R11〜R14は、炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、X1〜X4は、硫黄原子又は酸素原子を表わす。)
【0038】
一般式(3)において、R11〜R14は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等である。アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては、例えば、一般式(1)、一般式(2)で前述したものが挙げられる。なお、R11〜R14はアルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。炭素数があまりに少ないと、(A)成分への溶解性が乏しくなり、あまりに炭素数が多いと、融点が高くなるとともに活性が低くなることから、炭素数6〜18のアルキル基が好ましく、炭素数8〜15のアルキル基がより好ましく、炭素数8〜13のアルキル基が更に好ましい。R11〜R14は、互いに同一でも異なってもよいが、本発明の内燃機関用潤滑油組成物のロングドレイン化を図る上で、R11〜R14は互いに異なっているのが好ましい。
【0039】
また、一般式(3)において、X1〜X4は、硫黄原子又は酸素原子であり、X1〜X4の全てが硫黄原子又は酸素原子であってもよく、4つのX1〜X4が硫黄原子と酸素原子の混合であってもよいが、潤滑性及び腐食性を考慮した場合、硫黄原子/ 酸素原子の存在比が1/3〜3/1であるのが特に好ましい。
【0040】
次に、一般式(4)で表わされるモリブデンジチオホスフェートについて説明する:
【化6】
(式中、R15〜R18は、炭素数1〜20の炭化水素基を表わし、X5〜X8は、硫黄原子又は酸素原子を表わす。)
【0041】
一般式(4)において、R15〜R18は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等である。アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては、例えば、一般式(1)、一般式(2)で前述したものが挙げられる。R15〜R18はアルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基が更に好ましい。炭素数があまりに少ないと、(A)成分への溶解性が乏しくなり、あまりに炭素数が多いと、融点が高くなるとともに活性が低くなることから、炭素数6〜13のアルキル基が好ましい。これは、あまりに炭素数が少ないと油溶性に乏しくなるためであり、あまりに炭素数が多くなると融点が高くなりハンドリングが悪くなるとともに活性が低くなるためである。
【0042】
一般式(4)において、X5〜X8は、各々硫黄原子又は酸素原子であり、X5〜X8の全てが硫黄原子又は酸素原子であってもよく、X5〜X8がそれぞれ硫黄原子又は酸素原子であってもよいが、潤滑性及び腐食性を考慮した場合、硫黄原子/酸素原子の存在比が1/3〜3/1であるのが特に好ましい。
【0043】
上記モリブデンアミンは、6価のモリブデンと下記一般式(5)で表わされる1級又は2級アミンとを反応させて得られる生成物である:
19−NH−R20 (5)
(式中、R19及びR20は、水素原子及び/又は炭素数1〜40の炭化水素基を表わすが、同時に水素原子であることはない。)
【0044】
一般式(5)において、R19及びR20は、水素原子及び/又は炭素数1〜40の炭化水素基を表わし、こうした炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、一般式(1)で前述したアルキル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、一般式(2)で前述したアルケニル基、ヘンイコセニル基、ヘンエイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、トリアコンテニル基、トリアコンチル基等が挙げられる。アリール基、シクロアルキル基としては、例えば、一般式(2)で前述したものが挙げられる。
【0045】
なお、R19及びR20は同時に水素原子であることはなく、R19及びR20は共に炭化水素基であることが好ましく、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であることがより好ましく、炭素数8〜18のアルキル基、アルケニル基又はアリール基であることが更に好ましい。
【0046】
6価のモリブデン化合物としては、例えば、三酸化モリブデン又はその水和物(MoO3・nH2O)、モリブデン酸(H2MoO4)、モリブデン酸アルカリ金属塩(M2MoO4)、モリブデン酸アンモニウム{(NH42MoO4又は(NH46[Mo724]・4H2O}、MoOCl4、MoO2Cl2 、MoO2Br2、Mo23Cl6等が挙げられるが、入手しやすい三酸化モリブデン又はその水和物、モリブデン酸、モリブデン酸アルカリ金属塩、モリブデン酸アンモニウム等が好ましい。
【0047】
上記モリブデンアミンは、三酸化モリブデン、モリブデン酸(H2MoO4)、モリブデン酸塩等の6価のモリブデン化合物と、1級又は2級のアミンの塩であって、製造方法は特に限定されないが、例えば、特開昭61−285293号に記載されたように、6価のモリブデン化合物と、1級又は2級のアミンを室温から100℃の間で反応させることにより得ることができる。6価のモリブデン化合物と、1級又は2級のアミンの反応比は、モリブデン1原子に対してアミンのモル数が、0.2〜2.0であり、0.4〜1.5が好ましく、0.5〜1.2が更に好ましく、反応比が0.2未満の場合は潤滑油への溶解性が不十分であり、低温においてモリブデンアミンが、分離・析出する場合があり、反応比が2.0を超える場合はシール材適合性が不充分となることがある。
【0048】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物の(C)成分として、モリブデン含有酸化防止剤を使用する場合、内燃機関用潤滑油組成物中のモリブデン含有量は特に限定されないが、1000質量ppm以下が好ましく、700質量ppm以下がより好ましい。モリブデンの濃度が1000質量ppmを超えると添加量に見合った効果が期待できないとともに、高温デポジットの原因となる恐れがある。なお、(C)成分は1種単独で使用してもよいし、2種以上の組み合わせで使用してもよい。
【0049】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物中のリン含有量は、50質量ppm〜1000質量ppmであり、200質量ppm〜1000質量ppmが好ましく、200質量ppm〜800質量ppmがより好ましく 、300質量ppm〜800質量ppmが更に好ましく、400質量ppm〜800質量ppmが最も好ましい。内燃機関用潤滑油組成物全量に対する、リン含有量が50質量ppm未満では、摩耗防止効果及び酸化防止効果が不充分となり、1000質量ppmを超えると、排ガス浄化触媒の活性低下が起こり易くなる。
【0050】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物の(B)成分とジチオリン酸亜鉛のようなリンを含有する(C)成分との割合は、特に限定されないが、摩耗防止性効果と酸化防止性効果の両方の効果のバランスを考えるとリン含有量比で、(B)/(C)=9/91〜91/9が好ましく、9/91〜38/62がより好ましく、20/80〜30/70が更に好ましい。
【0051】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、公知の潤滑油添加剤の添加を拒むものではなく、使用目的に応じて、本発明に配合される成分以外の摩耗防止剤、摩擦調整剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、非金属酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、腐食防止剤、極圧添加剤、消泡剤、金属不活性化剤、乳化剤、抗乳化剤、かび防止剤等を本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0052】
(B)成分、(C)成分以外の摩耗防止剤としては、例えば、硫化油脂、オレフィンポリスルフィド、ジベンジルスルフィド等の硫黄系添加剤;モノオクチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリフェニルフォスファイト、トリブチルフォスファイト、チオリン酸エステル等のリン系化合物等が挙げられるが、リンを含有しない摩耗防止剤を使用することが好ましい。
【0053】
上記摩擦調整剤としては、例えば、オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸類;オレイルグリセリンエステル、ステアリルグリセリンエステル、ラウリルグリセリンエステル等のエステル類;ラウリルアミド、オレイルアミド、ステアリルアミド等のアミド類;ラウリルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン等のアミン類;ラウリルグリセリンエーテル、オレイルグリセリンエーテル等のエーテル類が挙げられる。これら摩擦調整剤の好ましい配合量は、(A)成分に対して0.1質量%〜5質量%、より好ましくは0.2質量%〜3質量%である。
【0054】
上記金属系清浄剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のスルフォネート、フェネート、サリシレート、フォスフェート及びこれらの過塩基性塩が挙げられる。これらの中でも過塩基性塩が好ましく、過塩基性塩の中でもTBN(トータルベーシックナンバー)が30mgKOH/g〜500mgKOH/gのものがより好ましい。これらの金属系清浄剤の好ましい配合量は、(A)成分に対して0.5質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜8質量%であるが、リンを含有しない金属系清浄剤を使用することが好ましい。
【0055】
上記無灰分散剤としては、例えば、重量平均分子量約500〜3000のアルキル基またはアルケニル基が付加されたコハク酸イミド、コハク酸エステル、ベンジルアミン又はこれらのホウ素変性物等が挙げられる。これらの無灰分散剤の好ましい配合量は、(A)成分に対して0.5質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜8質量%である。
【0056】
上記非金属酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−ターシャリーブチルフェノール(以下、ターシャリーブチルをt−ブチルと略記する。)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールジエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールジエステル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル}イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス{2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル}サルファイド、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3―ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル−ジ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルサルファイド)、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5―トリアジン、2,2−チオ−{ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)}プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−リン酸ジエステル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイド、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル等のフェノール系酸化防止剤;1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、p−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、p−ノニルフェニル−1−ナフチルアミン、p−ドデシルフェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤;N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジオクチル−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系酸化防止剤;ジピリジルアミン、ジフェニルアミン、p,p’−ジ−n−ブチルジフェニルアミン、p,p’−ジ−t−ブチルジフェニルアミン、p,p’−ジ−t−ペンチルジフェニルアミン、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、p,p’−ジノニルジフェニルアミン、p,p’−ジデシルジフェニルアミン、p,p’−ジドデシルジフェニルアミン、p,p’−ジスチリルジフェニルアミン、p,p’−ジメトキシジフェニルアミン、4,4’−ビス(4−α,α−ジメチルベンゾイル)ジフェニルアミン、p−イソプロポキシジフェニルアミン、ジピリジルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、フェノチアジンカルボン酸エステル、フェノセレナジン等のフェノチアジン系酸化防止剤等が挙げられる。これら非金属酸化防止剤の好ましい配合量は、(A)成分に対して0.01質量%〜5質量%、より好ましくは0.05質量%〜4質量%であり、リンを含有しない非金属酸化防止剤を使用することが好ましい。
【0057】
上記粘度指数向上剤としては、例えば、ポリ(C1〜18)アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート/(C1〜18)アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート/(C1〜18)アルキル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン/(C1〜18)アルキル(メタ)アクリレート共重合体、ポリイソブチレン、ポリアルキルスチレン、エチレン/プロピレン共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体、スチレン/イソプレン水素化共重合体等が挙げられる。あるいは、分散性能を付与した分散型もしくは多機能型粘度指数向上剤を用いてもよい。重量平均分子量は10,000〜1,500,000、好ましくは20,000〜500,000程度である。これらの粘度指数向上剤の好ましい配合量は、(A)成分に対して0.1質量%〜20質量%、より好ましくは0.3質量%〜15質量%である。
【0058】
上記流動点降下剤としては、例えば、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリスチレン−(メタ)アクリレート、ポリビニルアセテート、ポリエチレン−酢酸ビニル等が挙げられ、重量平均分子量は1000〜100,000、好ましくは5000〜50,000程度である。これらの流動点降下剤の好ましい配合量は、(A)成分に対して0.005質量%〜3質量%、より好ましくは0.01質量%〜2質量%である。
【0059】
上記防錆剤としては、例えば、亜硝酸ナトリウム、酸化パラフィンワックスカルシウム塩、酸化パラフィンワックスマグネシウム塩、牛脂脂肪酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアミン塩、アルケニルコハク酸又はアルケニルコハク酸ハーフエステル(アルケニル基の分子量は100〜300程度)、ソルビタンモノエステル、ノニルフェノールエトキシレート、ラノリン脂肪酸カルシウム塩等が挙げられる。これらの防錆剤の好ましい配合量は、(A)成分に対して0.01質量%〜3質量%、より好ましくは0.02質量%〜2質量%である。
【0060】
上記腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、テトラアルキルチウラムジサルファイド等が挙げられる。これら腐食防止剤の好ましい配合量は、(A)成分に対して0.01質量%〜3質量%、より好ましくは0.02質量%〜2質量%である。
【0061】
上記消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシリコーン、トリフルオロプロピルメチルシリコーン、コロイダルシリカ、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、アルコールエトキシ/プロポキシレート、脂肪酸エトキシ/プロポキシレート、ソルビタン部分脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの消泡剤の好ましい配合量は、(A)成分に対して0.001質量%〜0.1質量%、より好ましくは0.001質量%〜0.01質量%である。
【0062】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物を使用可能な内燃機関は、内燃機関として使用されているものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、直噴エンジン、ガスエンジン等が挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。尚、以下の実施例等において「%」及び「ppm」は、特に記載が無い限り質量基準である。
以下に、本発明品及び比較品を示す。
(A)成分
鉱油系高VI油。動粘度4.1mm2/秒(100℃)、18.3mm2/秒(40℃)、粘度指数(VI)=126。
【0064】
(B)成分
以下に、(B)成分の合成例を示す:
合成例1<B−1>
攪拌機、温度計、窒素導入管を備えた1000ml4つ口フラスコに、水スクラバーを連結したコンデンサーを取り付け、1,3−ベンゼンジオール1.0mol(110g)、オキシ塩化リン3.0mol(460g)及び塩化マグネシウム0.005mol(0.5g)を仕込み、反応装置内の雰囲気を窒素で置換後、温度を徐々に100℃まで5時間かけて昇温させた。同温度にて2時間熟成後、減圧の上130℃に昇温し、上記反応において消費されなかった過剰のオキシ塩化リンを留去した。この反応液にフェノール4.0mol(376g)を添加して熟成させ、反応を終了した。その後、常法により触媒を除去し、140℃にて減圧乾燥し、一般式(9)で表わされるB−1を得た:
【0065】
【化7】
【0066】
合成例2<B−2>
B−2は、上記B−1の合成において1,3−ベンゼンジオールの代わりに4,4'−(プロパン−2,2−ジイル)ジフェノールを使用した他は、B−1と同様の製法で製造し、一般式(10)で表わされるB−2を得た:
【0067】
【化8】
【0068】
合成例3<B−3>
攪拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管を備えた1000ml4つ口フラスコに、水スクラバーを連結したコンデンサーを取り付け、2,6−ジメチルフェノール2.0mol(244g)、及び塩化マグネシウム0.016mol(1.5g)を仕込み、反応装置内の雰囲気を窒素で置換後、温度を120℃まで昇温させた。同温度にてオキシ塩化リン1.0mol(153g)を2時間かけて滴下した。滴下終了後、180℃まで2時間かけて昇温し、ジ(2,6−キシリル)ホスホロクロリデートを得た。フラスコ内を20℃まで冷却し、フラスコに1,3−ベンゼンジオール0.5mol(55g)、及び塩化マグネシウム0.016mol(1.5g)を仕込み、2時間かけて180℃まで昇温し、2時間熟成した。その後、常法により触媒を除去し、140℃にて減圧乾燥し、一般式(11)で表わされるB−3を得た:
【0069】
【化9】
【0070】
合成例4<B−4>
B−4は上記B−1の合成において、1,3−ベンゼンジオールの代わりに4,4’−ビフェノールを使用した他は、B−1と同様の製法で製造し、一般式(12)で表わされるB−4を得た。
【0071】
【化10】
【0072】
(B)成分の平均重合度及び化合物中のリン含有量を下記表1に示す:
【表1】
【0073】
比較品
b−1:東京化成工業製、商品名:りん酸トリフェニル
(リン含有量は9.5%)
【0074】
(C)成分
C−1:亜鉛ジチオホスフェート[一般式(2)において、aの値は
0.08、リン含有量は7.8%、R9及びR10は炭素数4〜6の
第2級アルキル基を有する混合物]
C−2:モリブデンジチオカーバメート[一般式(3)において、R11〜R14
はイソオクチル基とイソトリデシル基の混合物(混合比1:1モル
)、X1及びX2は硫黄原子、X3及びX4は酸素原子、モリブデン含有
量は10%になるように鉱物油で希釈]
C−3:モリブデンジチオホスフェート[一般式(4)において、R15〜R18
はイソオクチル基、X5およびX6は硫黄原子、X7およびX8は酸素原
子、モリブデン含有量9.0%になるように鉱物油で希釈]
C−4:モリブデンアミン[三酸化モリブデンと2級アミン(一般式(5)
において、R19及びR20はイソトリデシル基)との反応物。反応比は
三酸化モリブデン:アミン=1:1(モル比)。モリブデン含有量
は22%]
【0075】
下記に試験で使用した本発明品の内燃機関用潤滑油組成物及び比較発明品の内燃機関用潤滑油組成物の調製方法及び試験条件を示す:
実施例及び比較例には下記の試験油配合表の試験油を調製して使用した。
<試験油配合表>
(A)成分 100質量部
メタクリレート系粘度指数向上剤 3.0質量部
カルシウムサリシレート系清浄剤 2.8質量部
コハク酸イミド系分散剤 5.0質量部
フェノール系酸化防止剤 0.25質量部
アミン系酸化防止剤 0.25質量部
【0076】
[試験条件]
耐摩耗試験
200mlビーカーに上記試験油、表2の記載の濃度になるように(B)成分、(C)成分を取り、90℃で1時間撹拌し、内燃機関用潤滑油組成物を調製した。得られた内燃機関用潤滑油組成物を使用し、高速4球試験機を用いてASTM D4172に準拠して耐摩耗試験を行った。試験後のボールの摩耗痕径(mm)を測定した。摩耗痕径が小さいほど耐摩耗性が高いことを示す。
耐摩耗試験条件
試験機器:シェル式高速4球試験機
回転数:1500rpm
荷重:490N
試験温度:85℃
試験時間:60分
【0077】
酸化安定性試験
200mlビーカーに上記試験油、表2の記載の濃度になるように(B)成分、(C)成分を取り、90℃で1時間撹拌し、内燃機関用潤滑油組成物を調製した。調製した内燃機関用潤滑油組成物を使用し、熱分析システムを用いてASTM D5483に準拠して酸化安定性試験を行った。試験油の激しい酸化が開始するまでの酸化誘導期間(分)を測定した。酸化誘導期間が長いほど酸化安定性が高いことを示す。
酸化安定性試験条件
試験機:ティー・エイ・インスツルメント社製熱分析システム
(DSC2920)
気圧:3.5MPa
雰囲気:酸素
流速:100ml/分
試験温度:180℃
【0078】
耐摩耗試験の結果を試験1、酸化安定性試験結果を試験2として、表2に示した。なお、表2には内燃機関用潤滑油組成物中の(B)成分及び(C)成分の濃度とリン(P)濃度及びモリブデン(Mo)濃度を示した。なお、欧州自動車工業会が定めたエンジン油の規格(ACEA規格)において、高負荷ディーゼルエンジン用の規格であるE7−08では、酸化誘導期間は35分以上が求められる。
【0079】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の内燃機関用潤滑油組成物は、内燃機関として使用されているものでいずれのものにも使用することができ、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、直噴エンジン、ガスエンジン等に好適に使用することができる。