(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハの加工工程において裏面研削・研磨は、半導体ウェハ表面にパターンを形成した後、半導体ウェハ裏面を所定の厚さにするために行われる。その際、研削時の応力等に対する半導体ウェハ表面の保護や、研削加工を容易にする目的で、半導体ウェハ表面に半導体加工用表面保護粘着テープを貼り合わせ、その状態でウェハ裏面が研削される。半導体加工用表面保護粘着テープとしては、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン基材樹脂フィルム上に、アクリルポリマーを主成分とした粘着剤層を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記半導体ウェハは、裏面研削により所定の厚みまで薄膜化された後、あらかじめ基材上に粘着剤と接着剤(ダイボンド用の接着シート)が積層されたダイシングダイボンドシートがウェハ裏面(研削面)に貼合されて、リングフレームでダイサーのチャックテーブルに固定してダイシングブレードにより切断されるダイシング工程で、ウェハと一括して切断されてチップ化される。その後複数のチップを積層、基板・チップ間でのワイヤー接続された後に樹脂で封止され製品となるのが一般的である(例えば、特許文献2参照)。上記シート貼合の際には、ウェハ表面に半導体加工用表面保護粘着テープが貼合されたままチャックテーブルに吸着した状態であり、シート貼合後に半導体加工用表面保護粘着テープを剥離される。また、上記ダイジングシートをウェハに密着させるため、シートの貼合時に、近年ではより高温(約80℃)での加熱をする場合がある。
【0004】
また、半導体ウェハ表面には、各種の電子回路や電極、それらを保護するポリイミドなどの保護膜、さらに半導体ウェハをチップに個片化するダイシング工程時にブレードが切り込む溝であるスクライブラインを設けるため、半導体ウェハ表面は平滑ではなく数μm〜数十μmの段差・凹凸を形成することになる。この段差の大きさや形状は半導体ウェハやデバイスの種類によって様々であるが、上記半導体加工用表面保護粘着テープは、ウェハ表面の段差に対しても、表面に追従し、密着して隙間を埋める必要がある。
【0005】
しかし、半導体ウェハの段差が大きい場合や、テープが硬い場合は半導体ウェハ表面への追従性が不足し隙間ができる。その半導体ウェハとテープの隙間に、半導体ウェハの裏面研削時や化学機械研磨時に、研削水や研磨液(スラリー)が浸入するシーページと言われる現象が発生する。このシーページが発生すると、テープがウェハから剥離し、その箇所を起点として半導体ウェハにクラックが発生して半導体ウェハの破損や、浸入水による半導体ウェハ表面の汚染や糊の付着が発生し歩留りを大きく悪化させるおそれがあった。
【0006】
このようなシーページに対しては、例えば粘着剤を厚くして、粘着剤の弾性率を下げて、半導体ウェハ表面へのテープの密着性を向上させたり(例えば特許文献3参照)、テープの粘着力を向上させる方法がある。
上記のような方法では、粘着剤と半導体ウェハ表面が強く密着することからテープ剥離時に粘着剤が凝集破壊して半導体ウェハ表面に粘着剤の一部が残る糊残りといわれる現象が発生するおそれがある。糊残りが発生すると、半導体ウェハ表面の集積回路等を汚染し後工程でのワイヤーボンディングや電気的接続において不具合を引き起こす原因となり得る。
【0007】
また、粘着剤以外の手段、例えば、基材に柔軟な樹脂を適用することで半導体ウェハ表面への追従性を向上し密着性を確保して、シーページを防ぐ手法がある。
【0008】
しかしながら、柔軟な樹脂は一般的に融点が低く、このような樹脂を基材に用いた場合、テープを半導体ウェハ形状に切断や、ダイシングダイボンドシートの貼合等でテープが加熱されると耐熱性が不足して、テープの基材が軟化・溶融することで、例えばチャックテーブルに融着し、作業性及びスループットに著しい悪影響を及ぼすことは避けがたかった。
【0009】
一方、基材の耐熱性を向上させるため、基材の粘着層を設けた面の反対側(背面側)に耐熱性の高い樹脂を積層する方法が挙げられる。しかしながら、この方法では背面側に高耐熱性の樹脂層を構成することで加熱貼合時のチャックテーブル融着を防ぐことができるが、基材の層構成が非対称となるため、樹脂の熱収縮率の違いにより基材が反りを助長する方向に収縮し、反りが悪化してしまう可能性があった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の表面保護用粘着テープは、基材と、この基材の少なくとも一方の面に設けた粘着剤層とから構成されている。
【0016】
(基材)
表面保護用粘着テープに用いられる基材は、樹脂をフィルム状に成形加工したものを用いることができる。本発明で使用する基材は、少なくとも酢酸ビニルから得られる繰返し単位を有する樹脂であり、該酢酸ビニル成分の含有量が1.9〜10.5質量%である。
少なくとも酢酸ビニルから得られる繰返し単位を有する樹脂は、上記酢酸ビニル成分の含有量を満たせば、どのような樹脂でも構わない。酢酸ビニルと組み合わせる共重合モノマーとしては、例えば、エチレンのようなオレフィンなどが挙げられる。また、2元系共重合体であっても、3元以上の共重合体であっても構わない。また、本発明の上記樹脂は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであっても構わない。
本発明においては、特にエチレン酢酸ビニル共重合体(以下、EVAとも称す)が好ましい。
【0017】
本発明において、基材は、少なくとも酢酸ビニルから得られる繰返し単位を有する樹脂であり、該酢酸ビニル成分の含有量が1.9〜10.5質量%を満たすなら、基材樹脂は単一の樹脂で構成されていても複数の樹脂で積層されていたり、複数の樹脂を混合して使用してもよい。この場合、酢酸ビニル成分の含有量は、基材に使用されている樹脂全体の含有量である。本発明では、反りへの影響を考えると基材樹脂は単一の樹脂で構成されている基材が好ましい。なお、単層で使用する場合、例えば表面保護用粘着テープを認識・識別するための着色用顔料などを配合するなど、物性に影響が出ない範囲で部分的に添加物を加えることができる。
【0018】
複数の樹脂で積層されている場合、酢酸ビニルから得られる繰返し単位を有する樹脂以外の樹脂を使用してもよく、例えば、高密度ポリエチレン(以下、HDPEとも称す)、低密度ポリエチレン(以下、LDPEとも称す)、ポリプロピレン(以下、PPとも称す)などのポリオレフィン樹脂、エチレンアクリル酸共重合体やエチレンメタクリル酸共重合体とそれらの金属架橋体(アイオノマー)などのポリオレフィン類が挙げられる。
本発明においては、これらの中でもポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0019】
本発明の表面保護用粘着テープに用いられる基材は、JIS K 7210に基づいて測定したMFRが1.0〜2.9g/10分であり、好ましくは1.5〜2.5g/10分、より好ましくは1.8〜2.3g/10分である。
基材のMFRが上記の範囲である場合には、ロール状に巻かれた上記表面保護用粘着テープをラミネータにセットし、表面保護用粘着テープを繰出して半導体ウェハ表面に貼合する工程で、約150℃に加熱したカッター刃を半導体ウェハ外周部に沿って回転させ、テープを半導体ウェハ形状に切断する際に発生する熱で、上記表面保護用粘着テープの基材が半導体ウェハ側面を覆うように融着することができる。その結果、粘着剤と半導体ウェハの界面を基材で覆うことになりシーページを防ぐことができる。
【0020】
すなわち、MFRが2.9g/10分を超える場合には、基材の流動性が高くなるため、溶融した基材を切断するに際し、カッター刃が半導体ウェハ外周上のある一点に接触する時間は僅かであるため、基材を構成する樹脂が一度鋭利に切断されて、半導体ウェハ側面を覆うような融着をしないおそれがある。逆に、1.0g/10分未満では、基材の流動性が低くなり、半導体ウェハの界面をテープで覆うことができないおそれがある。
【0021】
基材のMFRを上記範囲にするためには、例えば、樹脂の共重合相手、酢酸ビニル含有量、分子量やその分布の調整、MFRの異なる樹脂の混合、またはこれらの方法を組み合わせることで実現することができる。
【0022】
粘着剤層を有する上記基材は、粘着剤層を有する側の反対側の面の、85℃で測定した加熱プローブタック力が、好ましくは1.1〜11.2kPaであり、より好ましくは5.9〜9.5kPaである。
ここで、加熱プローブタック力は、JIS Z 0237(1995)に準拠し、タッキング試験機を用いて、試験片の基材背面側(粘着剤塗工面と反対側)に、85℃に加熱した円柱状プローブを押し込み、停止荷重で保持後に、引き上げる際の荷重を測定した値である。
【0023】
基材の加熱プローブタック力を上記範囲にするためには、例えば、基材樹脂の分子量の増加、その分子量分布の狭分散化、高融点化、またはこれらの方法を組み合わせることで実現することができる。また、粘着剤(層)の種類によっても変化する。
【0024】
薄膜ウェハの場合、半導体ウェハの裏面研削直後にダイシングダイボンドシートを半導体ウェハの裏面(研削された面)に貼合することが多い。このとき、通常、半導体ウェハの裏面研削加工用表面保護粘着テープの粘着剤層は、半導体ウェハの表面(研削されていない面)に貼合しており、半導体ウェハの裏面研削加工用表面保護粘着テープの基材はチャックテーブルに吸着した状態であり、この状態で、半導体ウェハの裏面(研削された面)にダイシングダイボンドシートが貼合される。このダイシングダイボンドシートの貼合時に加熱する必要があり、通常70〜80℃程度でチャックテーブルが加熱される。しかし、加熱装置のオーバーシュート等により温度は85℃程度まで上昇することがある。一般的に樹脂は、例え融点まで加熱されなくても、ある程度の高温になると軟化して加熱プローブタック力が増すため、被着体(この場合はチャックテーブル)への密着性が増加する。そのため、85℃で測定した加熱プローブタック力が少なくとも15kPaを超えると、チャックテーブルに、半導体ウェハの裏面研削加工用表面保護粘着テープ、特に該表面保護粘着テープの基材、が融着して装置内での操作が困難になり、工程が停止するおそれがある。
このため、作業性をさらに高めるには、加熱プローブタック力を下げて、半導体ウェハの裏面研削加工用表面保護粘着テープの融着を防ぐことが好ましい。
【0025】
一方、半導体ウェハの裏面研削加工用表面保護粘着テープは、研削後に、通常は、ダイシングダイボンドシートが半導体ウェハの裏面(研削された面)に貼合された後に、ダイシングダイボンドシートと半導体ウェハが貼合された状態で、チャックテーブルから、取り外され、ダイシングダイボンドシート側をテーブルに貼合し直した後に、半導体ウェハから剥離されるが、その際、剥離用の剥離テープを半導体ウェハ端部の表面保護用粘着テープに接着し、その部分をきっかけとしてこの表面保護粘着テープの剥離を行う。近年では、剥離テープとしてテープ状の樹脂基材を熱融着により溶かして、半導体ウェハの裏面研削加工用表面保護粘着テープと接着するヒートシール(剥離テープ)で剥離する、ヒートシール方式が増えている。この方式では、半導体ウェハの裏面研削加工用表面保護粘着テープ側の基材も融着することが求められるため、加熱プローブタック力を高めることが必要となる。
【0026】
本発明においては、チャックテーブルへの密着性とヒートシールとの密着性の相矛盾する関係から大きく脱却するためには、加熱プローブタック力を1.1〜11.2kPaとすることが好ましく、これによって作業性をさらに向上させることが可能となる。
【0027】
ここで薄膜ウェハは、特に制限されるものではないが、好ましくは研削・研磨後の厚さで、150μm〜30μm、より好ましくは100μm〜50μmの範囲である。
【0028】
本発明で使用する基材樹脂には、必要に応じて、安定剤、滑剤、酸化防止剤、顔料、ブロッキング防止剤、可塑剤、粘着付与剤、柔軟材等を含有することができる。
【0029】
上記基材の厚さは、特に限定されるものではなく、適宜に設定してよいが、好ましくは50〜200μm、より好ましくは100〜180μmである。
厚さをこの範囲とすることで、表面保護用粘着テープの形態を維持する性質に優れ、しかも取り扱う際の作業性が向上する。なお、厚みを大きくしすぎると、基材の生産性に影響を与え、製造コストの増加につながるおそれがある。
【0030】
上記基材の製造方法は特に限定されないが、カレンダー法、Tダイ押出法、インフレーション法、キャスト法等の従来の射出・押出技術により製造でき、生産性、得られる基材の厚み精度等を考慮して適宜選択することができる。
【0031】
(粘着剤層)
本発明の表面保護用粘着テープで用いられる粘着剤の材料は、特に制限されるものではなく、従来のものを用いることができる。放射線を照射することにより硬化して粘着性が低下し、ウェハから容易に剥離できる性質を持つものでもよい。具体的には(メタ)アクリル酸エステルを構成成分とする単独重合体や、(メタ)アクリル酸エステルを構成成分として有する共重合体、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステルを構成成分として含む重合体を構成する単量体成分としては、例えば、メチル、エチル、n−プルピル、イソプルピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ラウリル、トリデシル、テトラデシル、ステアリル、オクタデシル、及びドデシルなどの炭素数30以下、好ましくは炭素数4〜18の直鎖もしくは分岐のアルキル基を有する(メタ)アルキルアクリレート又は(メタ)アルキルメタクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記以外のアクリル樹脂中の構成成分としては、以下の単量体を含むことができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸や無水イタコン酸などの酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルおよび(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N−ヒドロキシメチルアミド、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート等)、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフオリン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。これらモノマー成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
また、(メタ)アクリル樹脂としては、構成成分として、以下の多官能性単量体を含むことができる。例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどを挙げることができる。また上記のアクリル酸エステルを、例えばメタクリル酸エステルに代えたものなどのメタクリル系ポリマーと硬化剤を用いてなるものを使用することができる。
【0036】
硬化剤としては、特開2007−146104号公報に記載の硬化剤を使用することができる。例えば、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)トルエン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、N,N,N,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミンなどの分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの分子中に2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート系化合物、テトラメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロール−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネートなどの分子中に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン系化合物等が挙げられる。硬化剤の含有量は、所望の粘着力に応じて調整すれば良く、主成分の樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5質量部である。
【0037】
また、上記のような粘着剤層中に光重合性化合物および光重合開始剤を含ませることによって、紫外線を照射することにより硬化し、粘着剤は粘着力を低下させることができる。このような光重合性化合物としては、例えば特開昭60−196956号公報および特開昭60−223139号公報に記載されているような、光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられる。
【0038】
具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートなどが用いられる。
【0039】
光重合開始剤としては、特開2007−146104号公報または特開2004−186429号公報に記載の光重合開始剤を使用することができる。具体的にはイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ベンジルメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン等を使用することができる。これらは1種または2種以上用いてもよい。光開始剤の添加量は、上記共重合体100質量部に対して、0.1〜15質量部である。好ましくは5〜10質量部である。
【0040】
また、粘着剤層として、重合体中に光重合性炭素−炭素二重結合を有する重合体、光重合開始剤、および硬化剤を含む樹脂組成物を用いてなる光重合性粘着剤を用いることができる。重合体中に炭素−炭素二重結合を有する重合体としては、側鎖に炭素原子数が4〜12、さらに好ましくは炭素原子数8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどの単量体や共重合性改質単量体を1種または2種以上を任意の方法で単独重合または共重合した(メタ)アクリル系重合体が好ましい。
このようにして形成される光重合性粘着剤層は、表面保護用粘着テープを半導体ウェハ表面から剥離する前に、基材側から放射線を照射して、表面保護粘着テープの半導体ウェハ表面に対する粘着力を低下させる放射線、好ましくは紫外線を照射することにより、粘着力を初期のから大きく低下させて、容易に被着体から表面保護粘着テープを剥離することができる。
【0041】
さらに粘着剤には必要に応じて粘着付与剤、粘着調整剤、界面活性剤、無機化合物フィラー、その他の改質剤等を配合することができる。
【0042】
本発明において粘着剤層の厚さは、適用しようとする被着体により適宜設定することができ、特に制限するものではないが、好ましくは10〜60μm、より好ましくは20〜50μmである。なお、粘着剤層は複数の層が積層された構成であってもよい。
【0043】
粘着剤層の厚みを上記範囲に調製することで、生産性に優れ、製造コストの低下につながることがある。さらには、粘着剤層の粘着力が必要以上に上昇することがなく、裏面研削後に粘着剤層を剥離する際に剥離粘着力の上昇に伴う、半導体ウェハの破損を引き起こしたり、半導体ウェハ表面に粘着剤層に起因する汚染が生じたりすることがない。また、半導体ウェハ表面の凹凸に対する密着性に優れ、半導体ウェハの裏面を研削加工、薬液処理等する際に水や薬液が浸入して半導体ウェハの破損や半導体ウェハ表面の研削屑や薬液による汚染を生じることもなく、放射線照射後の粘着力の低下も十分であり、粘着剤層を半導体ウェハから剥離する際に半導体ウェハを破損することもない。
【0044】
本発明において、基材の片表面に粘着剤層を設ける際には、上記粘着剤を、ロールコーター、コンマコーター、ダイコーター、メイヤーバーコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター等の既知の方法によって塗布、乾燥して粘着剤層を形成する方法を用いることができる。この際、塗布した粘着剤層を環境に起因する汚染等から保護するために、塗布した粘着剤層の表面に剥離フィルムを貼着することが好ましい。
【0045】
本発明の表面保護粘着テープに使用する剥離フィルムとして、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂が挙げられる。必要に応じてその表面にシリコーン処理等が施されたものが好ましい。剥離フィルムの厚みは、通常10〜100μmである。好ましくは20〜50μmである。
【0046】
かかる構成を採用することにより、半導体ウェハ表面への優れた密着性、剥離時の優れた易剥離性を保持し、しかも低汚染性をも兼ね備えた表面保護用粘着テープが得ることができる。すなわち、上述の基材の一方の面に粘着剤層を形成するために、半導体ウェハ表面に凹凸が存在する場合であっても、半導体ウェハ表面に対する良好な密着性が得られ、半導体ウェハの裏面を研削加工、薬液処理等する際には、研削水、薬液等の浸入が防止され、これらに起因する半導体ウェハの破損、汚染を防止することができる。また、半導体ウェハ表面から表面保護用粘着テープを剥離する際には、放射線を照射することにより、粘着剤層の硬化、収縮により粘着剤層全体の粘着力が十分に低下して、良好な作業性で半導体ウェハを破損することなく表面保護粘着テープを剥離することができる。従って、本発明の表面保護用粘着テープは優れた凹凸への密着性と剥離時の易剥離性を保持したまま、低汚染性を同時に達成することができる。
【0047】
本発明における表面保護用粘着テープの粘着力は、0.9〜2.0N/25mmが好ましく、さらに好ましくは1.0〜1.9N/25mmである。
ここで、粘着力は、JIS Z 0237に基づいて測定した値である。
【0048】
粘着力をこの範囲に調整することで、研削中半導体ウェハから表面保護用粘着テープが剥れることがなく、これによって、シーページや半導体ウェハ割れが改善される。また、研削後の剥離も容易になり、これによって、半導体ウェハ破損や糊残りが改善される。
なお、放射線硬化型テープなど剥離のために粘着力を下げることが可能なものについては、研削工程の前、すなわち粘着力低減処理を行う以前の状態で測定したものをいう。
このような粘着力を付与するには、上記の粘着剤層における好ましい構成で達成可能であるが、特に硬化剤の配合量を調整することで、上記の範囲とすることができる。
また、これに加えて、粘着剤の粘着力は、同じ粘着剤であっても、粘着剤層の厚みや基材の種類によっても調整することができる。
【0049】
(半導体ウェハの加工方法)
本発明の表面保護粘着テープを用いた半導体ウェハの加工方法は、半導体ウェハが、その表面に形成された段差が40μm以下のものに好ましく適用される。
使用する半導体ウェは、半導体ウェハの表面に形成された段差が、10μm〜40μmが好ましい。
より具体的には、先ず、上記表面保護用粘着テープの粘着剤層から剥離フィルムを剥離し、粘着剤層の表面を露出させ、粘着剤層を介して、半導体ウェハの集積回路が組み込まれた側の面に貼着する。次いで、研削機のチャックテーブル等に表面保護粘着テープの基材層を介して半導体ウェハを固定し、半導体ウェハの裏面に対し、研削加工、薬液処理等を行う。研削加工、薬液処理等が終了した後、該表面保護粘着テープを剥離する。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
〔(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤の調製a、b〕
脱イオンを行った純水中に界面活性剤としてアリル基を付加させたポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル化合物およびポリプロピレングリコール化合物を加え、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを加えて加熱しながら攪拌した。次いでメタクリル酸メチルを17質量部、アクリル酸n−ブチルを40質量部、アクリル酸2−エチルヘキシルを41質量部、メタクリル酸グリシジルを2質量部、攪拌溶液に滴下し、さらに攪拌を続け重合を行い、アクリルエマルジョン粘着剤組成物を調製した。
上記において、メタクリル酸メチルの使用量、アクリル酸n−ブチルの使用量、アクリル酸2−エチルヘキシルの使用量、界面活性剤を、アリル基を付加させたポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルのアンモニウム塩化合物への変更により、粘着剤a、bを調製した。
【0052】
〔(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤の調製c〜g〕
溶剤中に2−エチルヘキシルアクリレート85質量部、メタクリル酸15質量部を配合し、重合開始剤を加えて加熱攪拌することで、アクリル共重合体を得た。上記で得られたアクリル共重合体100質量部に対し、硬化剤としてイソシアネート化合物及びエポキシ化合物を加え、塗工しやすいよう溶剤にて粘度を調整して粘着剤組成物Cを得た。
上記において、2−エチルヘキシルアクリレート及びメタクリル酸の使用量増減やメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートの使用、ポリイソシアネートやエポキシ化合物の配合部の変更により、c〜gの粘着剤を調製した。
【0053】
(実施例1)
MFRが1.3g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が10.5質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Aを用いて、押出成形機で押出成形することにより厚さ165μmで製膜して基材を得た。この基材上に、(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤aを、乾燥後の厚さが40μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は1.20N/25mm、基材の粘着剤層を形成した面とは反対の面の85℃での加熱プローブタック力は7.0kPaであった。
【0054】
(実施例2)
(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤bを用いた以外は、実施例1と同様の方法で表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は1.24N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は11.2kPaであった。
【0055】
(実施例3)
MFRが2.5g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が5.5質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Bを用いて、押出成形により厚さ165μmを製膜して基材を得た。この基材上に、(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤cを、乾燥後の厚さが40μmとなるように実施例1と同様に形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は1.88N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は8.0kPaであった。
【0056】
(実施例4)
基材に前記EVA樹脂B、(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤dを用いた以外は、実施例1と同様の方法で表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、1.28N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は9.5kPaであった。
【0057】
(実施例5)
基材に前記EVA樹脂B、(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤eを用いた以外は、実施例1と同様の方法で表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、1.36N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は9.8kPaであった。
【0058】
(実施例6)
前記EVA樹脂Bと、MFRが2.5g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が19.0質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Eを積層して押出成形により厚さ165μmの基材(樹脂Bの厚み:115μm、樹脂Eの厚み50μm)を製膜した。この基材の樹脂B側上に、前記粘着剤cを、乾燥後の厚さが40μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は1.80N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は8.0kPaであった。
【0059】
(実施例7)
前記EVA樹脂Bを用いて、押出成形により厚さ100μmを製膜して基材を得たこの基材上に、(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤fを、乾燥後の厚さが30μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、0.60N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は8.0kPaであった。
【0060】
(実施例8)
MFRが2.5g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が6.0質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Hを用いて、押出成形により厚さ100μmを製膜して基材を得たこの基材上に、(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤cを、乾燥後の厚さが30μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、1.90N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は5.9kPaであった。
【0061】
(実施例9)
MFRが2.9g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が1.9質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Iを用いて、押出成形により厚さ100μmを製膜して基材を得たこの基材上に、(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤cを、乾燥後の厚さが30μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、1.90N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は1.1kPaであった。
【0062】
(実施例10)
MFRが1.0g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が10.5質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Kを用いて、押出成形により厚さ100μmを製膜して基材を得たこの基材上に、(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤cを、乾燥後の厚さが30μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、1.80N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は6.5kPaであった。
【0063】
(比較例1)
MFRが3.0g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が9.5質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Cを用いて、押出成形により厚さ165μmを製膜して基材を得た。この基材上に、前記(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤dを、乾燥後の厚さが40μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は0.57N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は18.6kPaであった。
【0064】
(比較例2)
MFRが9.0g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が10.0質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Dを基材に用いた以外は、比較例1と同様にして表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、0.55N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は23.6kPaであった。
【0065】
(比較例3)
前記(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤cを用いた以外は、比較例1と同様の方法で、表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、1.76N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は18.6kPaであった。
【0066】
(比較例4)
MFRが2.5g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が19質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Eを用いて、押出成形により厚さ165μmを製膜して基材を得た。この基材上に、前記(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤eを、乾燥後の厚さが40μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、0.88N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は185.5kPaであった。
【0067】
(比較例5)
MFRが3.1g/10分であるLDPE樹脂Gを用いて、押出成形により厚さ165μmを製膜して基材を得た。この基材上に、(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤gを、乾燥後の厚さが40μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は0.68N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は0.9kPaであった。
【0068】
(比較例6)
前記EVA樹脂DとMFRが5.5g/10分であるHDPE樹脂Fを積層して押出成形により厚さ165μmの基材(樹脂Dの厚み:115μm、樹脂Fの厚み50μm)を製膜した。この基材の樹脂D側上に、前記(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤gを、乾燥後の厚さが40μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、0.65N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は7.7kPaであった。
【0069】
(比較例7)
前記EVA樹脂Dと前記LDPE樹脂Gを積層して押出成形により厚さ165μmを製膜して基材(樹脂Dの厚み:115μm、樹脂Gの厚み50μm)を得た。この基材の樹脂D側上に、前記(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤gを、乾燥後の厚さが40μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は、0.65N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は0.8kPaであった。
【0070】
(比較例8)
MFRが3.0g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が9.0質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Jを用いて、押出成形により厚さ165μmを製膜して基材を得た。この基材上に、前記(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤cを、乾燥後の厚さが40μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は1.85N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は13.0kPaであった。
【0071】
(比較例9)
MFRが2.1g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が1.7質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Lを用いて、押出成形により厚さ165μmを製膜して基材を得た。この基材上に、前記(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤cを、乾燥後の厚さが40μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は1.78N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は0.9kPaであった。
【0072】
(比較例10)
MFRが0.8g/10分で、酢酸ビニル成分の含有量が6.0質量%のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂Mを用いて、押出成形により厚さ165μmを製膜して基材を得た。この基材上に、前記(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする粘着剤cを、乾燥後の厚さが40μmとなるように形成して表面保護用粘着テープを得た。このテープの粘着力は1.82N/25mm、基材の上記の加熱プローブタック力は8.5kPaであった。
【0073】
(表面保護用粘着テープの性能評価)
上記実施例1〜10と比較例1〜10で得られた各表面保護用粘着テープについて、以下の試験を行い、その性能を評価し、下記表1、2に示す結果を得た。
【0074】
(加熱プローブタック力)
JIS Z 0237(1995)に準拠し、タッキング試験機(商品名:TACII、レスカ製)を用いて、温度23℃、湿度50%RHの条件下で試験片の基材背面側(粘着剤塗工面と反対側)に、85℃に加熱した3mmφ円柱状プローブを30mm/分の速度で押し込み、停止荷重100gで1秒間保持後に600mm/分の速度で引き上げる際の荷重を測定し、その値を加熱プローブタック力とした。なお、下記表1、2では、単にタック力と記載した。
【0075】
(MFR測定)
MFRは、JIS K 7210に基づく方法で測定し、その値をMFRとした。試験温度:190℃、試験荷重:21.18Nである。
【0076】
(粘着力)
JIS Z 0237に基づき、#280の耐水研磨紙で均一に水研ぎした後、水洗・脱脂したSUS 304 鋼板を用い、研磨後1時間放置してから試験板の表面に2kgの荷重のゴムローラを3往復させて試験片を貼合し、さらに1時間放置して剥離時の荷重を求め、その値を粘着力とした。剥離角度は180度、引張速さ300mm/分である。
【0077】
(シーページ)
表面の全面にわたって幅50μm、深さ30μmの溝が5mm間隔で形成された直径8インチのシリコンウェハの、溝を形成した面にラミネータ(商品名:DR−8500II、日東電工製)を用いて表面保護用粘着テープを貼合した。表面保護用粘着テープが貼合された半導体ウェハを、グラインダー(商品名:DGP8760、DISCO製)で50μmまで裏面研削を行い、研削後の半導体ウェハ外周部から溝への切削水の浸入を調査した。浸入が見られなかったものを○、浸入が見られたものを×とした。
【0078】
(C/T剥離性)
半導体ウェハを50μmまで研削した後、インラインウェハマウンター(商品名:DFM−2700、リンテック製)でチャックテーブルを85℃に加熱してリングフレームとダイシングダイボンドシート(ダイシングダイアタッチフィルム)を貼合した。貼合後、マウンター内の機構(アーム)により、チャックテーブルから表面保護用粘着テープが剥離できたものを○、剥離できなかったものを×とした。
【0079】
(ヒートシール剥離性)
半導体ウェハを50μmまで研削した後、インラインウェハマウンター(商品名:DFM−2700、リンテック製)でヒートシールテープを熱融着し、表面保護粘着テープを剥離できたものを○、剥離できなかったものを×とした。
なお、下記表1、2には、ヒートシール性と記載した。
【0080】
(反り)
上述の研削において、8インチ径のシリコンベアウェハを50μmの厚さまで研削した際、表面保護用粘着テープ付きの半導体ウェハが反ることにより発生した凸側を下にして、表面保護用粘着テープ付きの半導体ウェハを水平な台に静置した。該半導体ウェハの両端の反りを測定し、その平均値を半導体ウェハの反りとした。その反りが30mm以上を×、25mm以上30mm未満を△、25mm未満を○とした。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
表1、2の結果から、実施例1〜10は、比較例1〜10と比較し、シーページが発生することなく、C/T剥離性、ヒートシール剥離性および反り等が良好で、作業性に優れることがわかる。