(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記重合体(C)が、前記ポリイソブチレン樹脂(A)、前記水素添加環状オレフィン樹脂(B)及び前記重合体(C)の合計質量中、10〜80質量%含まれることを特徴とする請求項1に記載の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物。
前記重合体(C)のスチレン成分が、前記ポリイソブチレン樹脂(A)、前記水素添加環状オレフィン樹脂(B)及び前記重合体(C)の合計質量中、5〜40質量%の割合で含まれていることを特徴とする請求項3に記載の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
<有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物>
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物(以下、単に「封止材」ということもある)は、ポリイソブチレン樹脂(A)と、水素添加環状オレフィン樹脂(B)と、ラジカル重合、アニオン重合、もしくは配位重合のいずれかより得られる、ゴム弾性を示す重合体(C)とを含有している。
本発明においてポリイソブチレン樹脂(A)、水素添加環状オレフィン樹脂(B)及びゴム弾性を示す重合体(C)の3種の樹脂を併用することにより、水蒸気バリア性及び接着力に優れたものとすることができる。また、被封止物に対する追従性が優れたものとすることもできる。
【0015】
[ポリイソブチレン樹脂(A)]
本発明に用いる上記ポリイソブチレン樹脂(A)は、一般に主鎖又は側鎖としてポリイソブチレン骨格を有する樹脂であれば、特に制限されることなく使用することができる。ポリイソブチレン樹脂を、樹脂(B)及び共重合体(C)と併用すると、本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物に水蒸気バリア性及び粘着性を付与できる。ポリイソブチレン樹脂(A)は単独重合体でも共重合体でもよい。共重合体である場合には、イソブチレンモノマーと、コモノマーとしての1種又はそれ以上のオレフィン、好ましくは共役オレフィン、との共重合体が好ましい。共役オレフィンとしては、好ましくは、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。
【0016】
ポリイソブチレン樹脂は、常法により合成してもよく、市販品を用いてもよい。
合成法は、特に制限されないが、その一例として、塩化メチル等の溶媒を用い、重合開始剤の一部としてフリーデル−クラフツ触媒を用いるスラリー法が挙げられる。
本発明に好適に用いられるポリイソブチレン樹脂(A)の市販品としては、グリソパールやオパノール(B10、B12、B15、B15SFN、B30SFN、B50、B80、B100、B120、B150、B220等、いずれも商品名。BASF社製)、テトラックス(3T、4T、5T、6T等、いずれも商品名、JX日鉱日石エネルギー社製)や、ハイモール(4H、5H、6H等、いずれも商品名、JX日鉱日石エネルギー社製)、ブチルゴム(ブチル065、ブチル268、ブチル365、いずれも商品名、日本ブチル社製)等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。組み合わせは、種々の観点、例えば、被着体への追従性、コスト、粘度の観点から、選択できる。
【0017】
ポリイソブチレン樹脂(A)は、重量平均分子量(Mw)が200,000〜1,000,000であることが好ましく、300,000〜500,000であることが好ましい。
重量平均分子量が大きすぎると、水蒸気バリア性は高くなるが被着体への接着力は低下することがある。重量平均分子量が小さすぎると、接着力は高くなるが水蒸気バリア性は低下することがある。水蒸気バリア性が高くても接着力が弱すぎると、ガラスフリット等によるさらなる密閉処理を行わなければ、被着体との隙間から水蒸気や不純物が侵入して、有機電子デバイス用素子が劣化しやすくなる。一方、接着力が強くても水蒸気バリア性が低すぎると、隙間からの水蒸気等の侵入は防げても、封止層を水蒸気が透過するため、やはり有機電子デバイス用素子が劣化しやすくなる。
また、重量平均分子量が大きすぎると、被着体への追従性が低下し、封止した際に被着体との間に気泡が入り外観が損なわれることがある。
好ましくは、重量平均分子量(Mw)が200,000〜1,000,000であると、水蒸気バリア性も接着力も十分なものとなり、有機電子デバイス用素子の劣化を防止することができる。また、被着体への追従性が向上し、封止した際に気泡が巻き込まれることがなく外観も良くなる。
【0018】
重量平均分子量(Mw)は、例えば、Waters社製GPCシステム(カラム:昭和電工社製「Shodex K−804」(ポリスチレンゲル)、移動相:クロロホルム)を使用してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0019】
ポリイソブチレン樹脂(A)は、ポリイソブチレン樹脂(A)、水素添加環状オレフィン樹脂(B)及び重合体(C)の合計質量中、5〜60質量%が好ましく、10〜55質量%がより好ましい。ポリイソブチレン樹脂(A)の含有率が上記範囲内にあると、ポリイソブチレン(A)と重合体(C)との相溶性が良好であり、本組成物の水蒸気バリア性を高めることができる。
【0020】
[水素添加環状オレフィン樹脂(B)]
本発明に用いる水素添加環状オレフィン樹脂としては、1種又は2種以上の環状オレフィンの重合体の水素化物からなる樹脂であればよく、例えば、水添石油樹脂、具体的には、C5系石油樹脂の水素化物、C9系石油樹脂の水素化物、C5系石油樹脂とC9系石油樹脂との共重合樹脂、水素化ジシクロペンタジエン系石油樹脂、水素化テルペン樹脂、水素化クマロン・インデン樹脂等が挙げられる。中でも、C5系石油樹脂の水素化物、C9系石油樹脂の水素化物、C5系石油樹脂とC9系石油樹脂とを共重合して得られる石油樹脂の水素化物が、水蒸気バリア性能及び透明性が良好になる点で、好適に用いられる。
【0021】
水素添加環状オレフィン樹脂は、適宜合成してもよく、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ヤスハラケミカル社製クリアロンP、M及びKシリーズ、アシュランド社製フォーラルAX及び105、荒川化学工業社製アルコンP及びMシリーズ、ペンセルA、エステルガムH、スーパー・エステルシリーズ及びパインクリスタルシリーズ、出光興産社製アイマーブ(P−100、P−125、P−140)、エクソン・ケミカル社製エスコレッツ(ESR、5300、5400、5600シリーズ)、イーストマン・ケミカル社製イーストタックシリーズ、フォーラルシリーズ等が好適である。
【0022】
水素添加環状オレフィン樹脂(B)としては、蒸気圧式絶対分子量測定法(VPO法)による数平均分子量(Mn)が660以上1000以下のものが好適である。数平均分子量が上記範囲にあると、耐熱性が優れ、貼り付け時の柔軟性を保持して粘着付与剤としての機能を発揮する樹脂組成物となる。
また、JIS K 2207における軟化点が100℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0023】
ポリイソブチレン樹脂(A)と水素添加環状オレフィン樹脂(B)の混合割合(A):(B)は、質量比で90:10〜20:80であることが好ましく、特に70:30〜30:70が好ましい。水素添加環状オレフィン樹脂(B)の混合割合が10より少ないと、接着力が低下し、又は脆性が高くなるため、封止層3をガラス基板や有機EL素子の素子基板等に貼合する際の貼合加工性が低下することがある。貼合加工性が良いとは、封止材の取り扱いが容易であり、封止材の貼合温度が低くても良好な外観に封止できることをいう。
一方、ポリイソブチレン樹脂(A)の割合が20より少ないと、透水性が高くなることがあり、また、フィルムとしての形状を維持できずに割れることがある。
ポリイソブチレン樹脂(A)、水素添加環状オレフィン樹脂(B)及び重合体(C)の合計質量中、ポリイソブチレン樹脂(A)と水素添加環状オレフィン樹脂(B)の合計質量は20〜90質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。
【0024】
[ゴム弾性を示す重合体(C)]
本発明に用いるゴム弾性を示す重合体(C)は、ゴム弾性を発現する部分、例えばソフトセグメントを有する重合体である。ここで、ゴム弾性とは、個々の高分子鎖のミクロブラウン運動が原因で発生するもので、熱力学第2法則(エントロピー増大則)に則って発生する弾性のことである。ゴム弾性を示すには、分子が十分に長く、自由に動くことができ、それぞれの分子が共有結合や物理結合により架橋点を形成し、網目構造を持って互いに適度に結び付いていることが望ましい。このようなゴム弾性体はある一定までの歪みであれば、外力を除くと元の形状に復元するという性質を示す。
【0025】
また、重合体(C)は、ラジカル重合、アニオン重合又は配位重合によって重合されたものである。本発明において、このような重合体(C)を、ポリイソブチレン樹脂(A)及び水素添加環状オレフィン樹脂(B)と併用することにより、樹脂組成物中においても重合体(C)のゴム弾性を効果的に発現させることができる。そのために好ましい重量平均分子量(Mw)は5,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜500,000である。この範囲を外れると相溶性の問題から均一な樹脂組成物を作ることが困難となる。
【0026】
すなわち、本発明に用いる重合体(C)には、カチオン重合で合成された重合体を含まない。カチオン重合で合成された重合体が本発明の重合体(C)に適していない理由は明らかではないが、カチオン重合で合成された重合体は重合度が低いことや、重合度を高くするために導入される電子供与性置換基が樹脂の親水性を高めることで、透水性を高めると、考えられる。
【0027】
カチオン重合で合成された重合体としては、具体的には、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)やフェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0028】
ラジカル重合で製造される重合体(C)としては、特に制限されないが、具体的には、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体であるニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。スチレンブタジエンゴムは、乳化重合スチレン・ブタジエンゴムであることが好ましい。
本発明に好適に用いられるラジカル重合で製造される重合体(C)の市販品としては、例えば、NBRとして、JSR社製N215SL、N224SH、N230SL、N250SL(いずれも商品名)、日本ゼオン社製Nipol(DN003、1041、1042,1052J、1043、DN401、1312、DN601、1072J、いずれも商品名)などが、HNBRとして、日本ゼオン社製Zetpol(0020、1020、2020、いずれも商品名)などが、CRとして、電気化学工業社製デンカクロロプレン(M−30、A−30、90、いずれも商品名)などが、SBRとして、日本ゼオン社製Nipol(1052、1739、いずれも商品名)、JSR社製(1507、1723、いずれも商品名)などが挙げられる。
【0029】
アニオン重合で製造される重合体(C)としては、特に制限されないが、具体的には、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。スチレンブタジエンゴムは、溶液重合スチレン・ブタジエンゴムであることが好ましい。
本発明に好適に用いられるアニオン重合で製造される重合体(C)の市販品としては、例えば、SBRとして、日本ゼオン社製Nipol(NS116R、NS460、NS522、いずれも商品名)、JSR社製SL(552、563、いずれも商品名、溶液重合スチレンブタジエンゴム)およびTR(2250、商品名、スチレン・ブタジエン熱可塑性エラストマー)などが、SBSとして、旭化成ケミカルズ社製タフプレンA、アサプレン(T−437、438、いずれも商品名)などが、SISとして、日本ゼオン社製クインタック(3421、3520、3450、3433N、いずれも商品名)などが、SEBSとして、旭化成ケミカルズ社製タフテック(H1517、H1043、M1943、いずれも商品名)などが、SEPSとして、クラレ社製セプトン2002、2004、2063(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0030】
配位重合で製造される重合体(C)としては、特に制限されないが、具体的には、ブタジエンゴム(1,2−BR)、イソプレンゴム(トランス―1,4―IR)、エチレンとプロピレンとの共重合体からなるゴム(EPM)、エチレンとプロピレンとジエンとの共重合体からなるゴム(EPDM)等が挙げられる。
本発明に好適に用いられる配位重合で製造される重合体(C)の市販品としては、例えば、ブタジエンゴムとして、JSR社製BR(01、51、いずれも商品名)、日本ゼオン社製Nipol BR(1220、1250H、いずれも商品名)などが、イソプレンゴムとして、日本ゼオン社製Nipol(IR2200、2200L、いずれも商品名)などが、EPMとしてJSR社製EP(11、商品名)、EPDMとしてJSR社製EP(21、43、96、いずれも商品名)などが挙げられる。
【0031】
重合体(C)は、アニオン重合で製造されるものが好ましく、ハードセグメントとしてスチレン成分からなるスチレンセグメントを有するものがさらに好ましい。
特に好ましい重合体(C)としては、スチレンとブタジエンとのブロック共重合体(SBS)又はその水素添加体であるSEBS、あるいはスチレンとイソプレンとのブロック共重合体(SIS)又はその水素添加体であるSEPSが挙げられる。
【0032】
重合体(C)のうちスチレンセグメントを含む重合体(C)は、高温時の塑性変形に対する抵抗力の発現に寄与する。この理由は明らかではないが、スチレン成分がポリイソブチレンのような柔軟性成分に対する分子拘束成分として働くためと考えられる。この結果、高温時のせん断力が高くなり、高温時での貼り合わせ面のずれにくさを向上させる。貼りあわせ面がずれにくくなると、高温時の封止形状安定性が高くなるので、封止面の光学的ひずみが小さくなり、高温使用時の画像表示性に優れる。
【0033】
さらに重合体(C)は極性官能基を含まないことが望ましい。水酸基やカルボキシル基、アミノ基などの極性官能基は、封止用樹脂組成物の水蒸気バリア性を悪化させ、さらに、重合体(C)の極性を高めるため、非極性樹脂であるポリイソブチレンへの相溶性を悪化させる。
【0034】
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、ポリイソブチレン樹脂(A)、水素添加環状オレフィン樹脂(B)及び重合体(C)の合計質量中、重合体(C)を10〜80質量%含むことが好ましく、20〜50質量%含むことがより好ましい。重合体(C)の含有率が上記範囲内にあると、樹脂の弾性によって応力緩和が起こるため貼合追従性が高くなるという効果が得られる。また、せん断接着力が高くなるという効果が得られる。これにより、封止した素子においてコーナー部分の封止材剥離が低減され、その結果、封止した有機電子デバイス素子の劣化を抑えることができる。
上記量の重合体(C)を配合することにより、適度な弾性が付与され、剥離を起こさない好適な貼合追従性(凹凸追従性)を発現する材料とすることができる。本発明の樹脂組成物のゴム弾性はヤング率として1〜20MPaが好ましい。
【0035】
また、有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物がスチレンセグメントを含む重合体(C)を含有する場合、重合体(C)のスチレン成分が、ポリイソブチレン樹脂(A)、水素添加環状オレフィン樹脂(B)及び重合体(C)の合計質量中、5〜40質量%、さらに10〜20質量%の割合で含まれていることが好ましい。重合体(C)のスチレン成分の含有率が、上記範囲内にあると、水酸基などの透水性を高める極性基を持たずに弾性体のハードセグメントとして働くので、水蒸気バリア性を高く保ったまま、特に高温時のせん断接着力を発揮すると考えられる。その結果、封止した素子においてコーナー部分の封止材剥離が低減され、有機電子デバイス素子の劣化を抑えることができる。
【0036】
[乾燥剤]
また、本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、乾燥剤を含んでもよい。乾燥剤は、樹脂組成物を透過する水分を捕獲する目的で用いられる。水分を捕獲することで有機電子デバイス用素子の水分による劣化をより抑制することができる。
【0037】
乾燥剤は、金属酸化物系乾燥剤又は有機系乾燥剤のいずれでも良く、特に制限されるものではない。また、1種又は2種以上を配合して使用することができる。
【0038】
(金属酸化物系乾燥剤)
金属酸化物系乾燥剤は、無機酸化物乾燥剤の一種であり、通常、粉末として、樹脂組成物中に含有される。その平均粒子径は通常20μm未満の範囲とするのが好ましく、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。例えば、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化マグネシウム(MgO)、ゼオライト(モレキュラーシーブを含む)等の粉末状金属酸化物が使用可能である。後述するように、有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物をフィルム化する場合には、金属酸化物系乾燥剤はそのフィルム厚よりも十分小さくするのが好ましい。このように粒子径を調整することで、有機EL素子にダメージを与える可能性が低くなり、また、いわゆるトップエミッション構造のデバイスに供される場合でも乾燥剤粒子が画像認識を妨げる事が無くなる。なお、平均粒子径が0.01μm未満となると、乾燥剤粒子の飛散を防止するための製造コストが高くなることがある。
【0039】
(有機系乾燥剤)
有機系乾燥剤としての有機化合物としては、化学反応により水を取り込み、その反応前後で不透明化しない材料であれば良い。特に有機金属化合物はその乾燥能力から好適である(本明細書において「有機金属系の乾燥剤」ともいう)。本発明における有機金属化合物は、金属−炭素結合や金属−酸素結合、金属−窒素結合等を有する化合物であると定義する。ここで、「金属」にはケイ素等の半金属も含むものとする。水と有機金属化合物とが反応すると加水分解反応により、前述した結合が切れて金属水酸化物になる。
【0040】
本発明における好ましい有機金属化合物としては、金属アルコキシドや金属カルボキシレート、金属キレートが挙げられる。金属としては、有機金属化合物として水との反応性が良いもの、すなわち、水により前述した金属との各種結合が切れやすい金属原子を用いればよい。具体的には、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ビスマス、ストロンチウム、カルシウム、銅、ナトリウム、リチウム、マグネシウム、バリウム、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、クロム、インジウム、鉄が挙げられる。特にアルミニウムを中心金属として持つ有機金属化合物が、樹脂組成物中への分散性や水との反応性の点で、好適である。
【0041】
有機金属化合物を金属と共に形成する有機基は、その炭素原子、又は、酸素原子若しくは窒素原子で金属と結合するものであれば、特に制限されない。このような有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ヘキシル基、オクタデシル基、ステアリル基などの不飽和炭化水素、飽和炭化水素、分岐不飽和炭化水素、分岐飽和炭化水素又は環状炭化水素、これらと酸素原子とからなるアルコキシ基、これらと窒素原子とからなるアミノ基、又は、カルボキシ基、若しくは、β−ジケトナト基(アセチルアセトナト基、ジピバロイルメタナト基など)が挙げられる。有機金属化合物として、アルミニウムイソプロポキシドが好ましい。
【0042】
乾燥剤の添加量は、ポリイソブチレン樹脂(A)、水素添加環状オレフィン樹脂(B)及び重合体(C)の合計100質量部に対して、1〜50質量部が好ましい。添加量が1質量部未満では効果が現れにくく、50質量部以上では有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物の流動性が低くなり封止が困難になることがある。
【0043】
[可塑剤]
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、可塑剤を含んでもよい。可塑剤を導入することで流動性を変更することができる。可塑剤としてはワックス、パラフィン、フタル酸エステル、アジピン酸エステル等のエステル類、低分子量のポリブテンやポリイソブチレン等が挙げられる。
可塑剤としての「ポリイソブチレン」は、ポリイソブチレン樹脂(A)と次の点で異なる。すなわち、樹脂(A)、(B)及び重合体(C)の分子の間に入り込んで、それらの分子運動を容易にすることで、樹脂組成物の可塑化を行うため、可塑剤としての「ポリイソブチレン」は十分に低分子である必要性がある。具体的には、室温において液状であることが可塑剤として重要となり、この点においてポリイソブチレン樹脂(A)と異なる。可塑剤としての「ポリイソブチレン」の数平均分子量は好ましくは、300〜3,000である。
【0044】
[その他の添加剤]
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤を用いることで被着体への化学結合量が増加し、粘着特性が向上する。
【0045】
シランカップリング剤としては、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は2種類以上を混合してもよい。シランカップリング剤の含有量は、ポリイソブチレン樹脂(A)、水素添加環状オレフィン樹脂(B)及び重合体(C)の合計樹脂組成物100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜1質量部がより好ましい。
【0046】
本発明では、本発明の目的を達成可能な限り、さらにその他の成分、例えば保存安定剤、酸化防止剤、無機フィラー、タック調整剤や樹脂安定剤等を用いることも可能である。他の成分を用いる場合、これら成分中の水分や不純物によって、画像表示装置の視認性が悪化する可能性があるため、注意が必要である。
【0047】
(有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物の特性)
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物の特性について以下に述べる。
【0048】
(水蒸気透過率)
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、後述の試験法による、100μm厚のフィルムを形成した場合の25℃/50%RHの透湿度が2g/m
2・day以下であることが好ましく、より好ましくは1g/m
2・day以下である。また、40℃/90%RHの透湿度が10g/m
2・day以下であることが好ましく、より好ましくは8g/m
2・day以下、より好ましくは4g/m
2・24h以下である。
水蒸気透過率が上記範囲内にあると、封止材内部を通ってくることにより起こる、有機電子デバイス素子への水分浸入を十分に抑えることが可能であり、有機電子デバイス素子封止に好適に用いられる。
水蒸気透過率は、ポリイソブチレン樹脂(A)の重量平均分子量や添加量を調整すること、さらには無機フィラーを添加することにより、調整できる。
【0049】
(貼合追従性)
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、後述の試験法による貼合試験において、最大幅0.1mm以上の気泡を含まないことが好ましい。
貼合試験において上記気泡を含まないと、外観的に良好なだけでなく、均一に封止された有機電子デバイス素子が提供されることになり、さらに透湿によるデバイス劣化も均一にゆっくり進むので、有機電子デバイス素子封止に好適に用いられる。
【0050】
(せん断接着力)
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、後述の試験法による、せん断接着力試験において、25℃におけるせん断接着力が10kgf(98N)以上であることが好ましく、より好ましくは15kgf(147N)以上である。
また、85℃におけるせん断接着力が0.1kgf(0.98N)以上であることが好ましく、0.2kgf(1.96N)以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.5kgf(4.9N)以上である。
両せん断接着力が、それぞれ、上記範囲内にあると、製品の通常使用時において封止機構を破壊することが容易ではなく、高温加速試験時にも封止が破壊されることがないため、有機電子デバイス素子封止に好適に用いられる。
また、せん断接着力は、極性基を多く持つ樹脂の添加やシランカップリング剤の添加により、調整できる。しかし、極性基自身の効果やシランカップリング剤より放出されるアルコール成分により、封止材の水蒸気バリア性が悪化することがあるため、注意の必要がある。
【0051】
(デバイス封止性)
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、後述の試験法(カルシウム試験残存率の測定)によるデバイス封止性試験において、カルシウム層の残存率(面積)が60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上である。
デバイス封止性が上記範囲内にあると、実際にこの樹脂を用いてデバイスを封止した場合の水分のデバイス内部への浸入が十分に少ないということであり、有機電子デバイス素子封止に好適に用いられる。
デバイス封止性は、ポリイソブチレン樹脂(A)の重量平均分子量や添加量を調整すること、さらには無機フィラーを添加することにより、調整できる。
【0052】
(有機ELの耐久性)
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、有機EL素子に用いられた場合、有機EL素子の耐久性を向上させることができる。例えば、後述する試験法によって確認すると、200時間以上であることが好ましく、より好ましくは400時間以上である。
【0053】
(含水量)
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、JIS K 0068に規定される水分気化−電量滴定法によるカールフィッシャー法による含水量が500ppm以下であることが好ましい。カールフィッシャー法による含水量が500ppm以下であると、封止された有機電子デバイス用素子の劣化をより遅らせることが可能となる。
【0054】
含水量を500ppm以下とするためには、コニカルドライヤーやエバポレーター等の乾燥機、フィルム状に加工した場合は乾燥炉で、樹脂組成物中の水分を除去するとよい。
なお、保管中に、有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物が空気中の水分を吸水して含水量が多くなってしまわないように、JIS Z 0222による水蒸気透過度が0.1g/(m
2・d)以下のアルミラミネート袋に充填し、これを更なる袋にシリカゲルや酸化カルシウムや塩化カルシウムなどの乾燥剤と共に密閉し、保管するとよい。また、水分等除去後の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物を、ガラス瓶やポリ瓶、金属缶等に充填、密閉し、これをJIS Z 0222による水蒸気透過度が0.1g/(m
2・d)以下のアルミラミネート袋に、シリカゲル、酸化カルシウムや塩化カルシウム等の乾燥剤と共に密閉し、保管するとよい。
【0055】
(アウトガス量)
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、構成部材から発生する有機ガス(以後「アウトガス」ともいう。水分を除く。)の発生量を少なくできる。具体的には、JIS K 0114 で規定されるガスクロマトグラフ分析法により測定される、85℃で1時間加熱した際のアウトガス発生量が500ppm以下であることが好ましい。アウトガス発生量を500ppm以下とすると、封止された有機電子デバイス用素子の劣化をより抑制することができる。
アウトガス発生量を500ppm以下とするためには、コニカルドライヤーやエバポレーター等の乾燥機、フィルム状に加工した場合は乾燥炉で、樹脂組成物中の溶媒、揮発性有機分子を除去するとよい。
【0056】
(光透過率)
有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、400〜800nmの可視領域で透明であるのが好ましく、0.1mm厚みにおける550nmの波長を持つ光に対する光透過率が85%以上であることが好ましい。550nmの光透過率が85%を下回ると視認性が低下するためである。透明には、無色透明に加えて、上記光透過率に影響しない範囲で有色透明も含むものとする。
光透過率は、樹脂(A)、樹脂(B)又は重合体(C)を適宜に選定することで、調整できる。
【0057】
(有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物の調製)
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、樹脂(A)、樹脂(B)及び重合体(C)、所望により添加剤を混合することにより、調製できる。
好ましい調製方法としては、樹脂(A)、(B)および重合体(C)をトルエン等の有機溶媒に溶解して混合することにより、封止用樹脂溶液を作成し、その後、不要の有機溶媒をコニカルドライヤーやエバポレーター等の乾燥機で溜去する事で封止用樹脂組成物を得ることができる。また、封止用樹脂組成物をフィルム状に加工する場合は、封止用樹脂溶液を剥離処理したPETフィルムにコーティングし、例えば100℃のオーブンで乾燥することでフィルム状の封止用樹脂組成物を得ることができる。
【0058】
<有機電子デバイス素子封止用樹脂シート>
上記の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物はフィルム又はシートに成形でき、これを用い有機電子デバイス素子を組み立てることができる。また、シート状に成形せず、有機電子デバイス素子に直接塗布して使用することもできる。
【0059】
以下、本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂シートについて、詳細に説明する。
【0060】
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂シートは、上記に記載の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物で形成された封止層を少なくとも1層有することを特徴とする。より好ましくは、基材シートを有し、基材シートの少なくとも片側に、少なくとも1層の上記の封止層が形成されている。
図1は、本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂シートの好ましい実施態様を示す概略断面図である。
図1に示すように、有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1は、基材シート2を有しており、基材シート2上には封止層3が形成されている。また、有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1は、封止層3上に、封止層3を保護するための離型フィルム4をさらに備えている。
【0061】
以下、本実施形態の樹脂シート1の各構成要素について詳細に説明する。
【0062】
(基材シート2、離型フィルム4)
基材シート2は、封止層3を構成する樹脂組成物をフィルム状にする際、取り扱い性を良くする目的で樹脂組成物を仮着させるものである。また、離型フィルム4は、封止層3を保護する目的で用いられる。
【0063】
基材シート2及び離型フィルム4は、特に制限されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が挙げられる。またこれらの架橋フィルムも用いられる。さらにこれらの積層フィルムであってもよい。そして、これらのフィルムにシリコーンやフッ素化合物からなる剥離剤を塗布し、離型層を付与したフィルムであっても良い。特にコスト、取り扱い性等の面からポリエチレンテレフタレートフィルム、およびその離型層付与フィルムを使用することが好ましい。
【0064】
紙に剥離剤をコートした剥離紙は、基材シート2及び離型フィルム4として好ましくない。その理由は、紙中を水蒸気が通過して封止層3に到達するので、封止層3が吸湿してしまうからである。その結果、封止時等に封止層3から有機電子デバイスに水分が移行しやすく、有機電子デバイスの劣化を早めることになる。また、剥離紙は、アウトガス発生量が多くなる点でも、好ましくない。
【0065】
基材シート2及び離型フィルム4から封止層3を剥離する際の剥離力の例としては、0.3N/20mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2N/20mm以下である。剥離力の下限に特に制限はないが、0.005N/20mm以上が実際的である。また、両面に剥離フィルムを仮着させる場合には、取り扱い性を良くするために、剥離力の異なるものを使用することが好ましい。
【0066】
基材シート2及び離型フィルム4の膜厚は、通常は5〜300μm、好ましくは10〜200μm、特に好ましくは20〜100μm程度である。
【0067】
(封止層3)
封止層3は、本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物を使用して形成する。
【0068】
有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物を塗工する際に、樹脂組成物を溶剤で希釈してもよい。このような溶剤としては、特に制限されず、例えば、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、これらの混合溶液等の有機溶剤が挙げられ、メチルエチルケトン、トルエンが特に好ましい。このような溶剤に樹脂組成物に用いる各成分を加え、混合分散し、得られた樹脂溶液を、基材シート2の剥離面上にロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ダイコート法、コンマコート法など一般に公知の方法にしたがって直接又は転写によって塗工し、乾燥させて封止層3を得ることができる。
【0069】
また、溶剤を使用せずにフィルム状の封止層3を得ることもできる。例えば、有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物を高温にて溶融させ、ホットメルトコーターなどの一般に公知の手法で押し出し、その後冷却する方法により、封止層3を形成できる。
【0070】
封止層3は、上記のように所望により溶剤を用いて形成された場合であっても、溶剤を除去した後は、本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物と同様の特性を有するのが好ましい。特に、含水量及びアウトガス発生量が上記範囲内となるように、塗布した樹脂溶液の乾燥等を十分に行う。乾燥条件としては、特に制限されないが、例えば、乾燥炉で行う場合は100〜130℃の温度で5〜30分(100℃/30分、120℃/10分、130℃/5分など)で行うことができる。
【0071】
封止層3の厚さは、特に制限されるものではなく、用途に応じて、適宜選択することができる。通常、10〜30μmであり、好ましくは15〜25μmである。厚みが10μm未満であると、十分な接着強度が得られない場合がある。また、厚みが30μmを超えると、封止後に空気に暴露される封止材の側面の面積が広くなるので側面からの吸水量が増えてしまい、性能に比較してコスト高となる。
【0072】
また、封止層3と当該封止層3が接触する貼合対象の表面粗さRaが共に2μm以下であることがさらに好ましい。この表面粗さが2μmを超えた場合、有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物自体の追従性が高かったとしても、封止層3が貼合対象の表面に追従しきれない可能性が上がってしまう。これに対し、表面粗さが適切な範囲であれば、封止層3と貼合対象とが密着するため、視認性が向上する。貼合対象の表面粗さは研磨や、表面処理によって変えることができる。また、封止層3の表面粗さはフィルム状に形成する際に冷却ロールの表面粗さを変えることや離型フィルム4の表面粗さを変えることで変更することが出来る。表面粗さRaは、JIS B 0601:2001に規定の方法及び条件により測定する。
【0073】
有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1は、2層以上の封止層3を有してもよく、封止層3以外の層を有してもよい。封止層3以外の層として、例えば、封止層3の基材シート2とは反対側の面に設けられる、ガスバリアフィルム、ガラス板、金属板又は金属箔等が挙げられる。これらを設ける場合、離型フィルム4は設けなくてよい。
【0074】
(封止方法)
次に、有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1を用いた封止方法について説明する。
【0075】
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1は、有機EL素子6等の有機電子デバイス用素子を封止するために用いられる。より詳細には、素子基板5上(
図2、3参照)に設けられた有機EL素子6等の有機電子デバイス用素子と封止基板8(
図2、3参照)との間に配設し、有機電子デバイス用素子6を素子基板5と封止基板8とで気密封止して、固体密着封止構造の各種有機電子デバイス6を得るために好ましく用いられる。有機電子デバイスとしては、有機ELディスプレイ、有機EL照明、有機半導体、有機太陽電池等が挙げられる。
【0076】
有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1を使用して封止する際に、貼合時のガラス基板や封止樹脂の温度を上下させて樹脂の柔軟性を調整することにより、基板表面の粗さや電極配線等で形成される凹凸の状態に合わせることができる。
【0077】
本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1が、有機電子デバイス素子を封止して、耐久性が高く、好ましくは外観にも優れる有機電子デバイスとすることができる理由は明らかではないが、次のように考えられる。すなわち、本発明の有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1は、樹脂(A)、樹脂(B)及び重合体(C)を含有する本発明の有機電子デバイス素子用樹脂組成物で形成されている。この樹脂シート1は強い接着力で、好ましくは高い追従性で有機電子デバイス素子に貼合可能となり、加えて樹脂シート1自体の水蒸気バリア性も高い。
【0078】
なお、有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1を用いた封止方法を説明したが、本発明では、有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物をシート状に成形することなく、そのまま用いて有機EL素子6と封止基板8とを封止することもできる。有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物をそのまま用いても、有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1と同様の効果を奏する。
【0079】
<有機エレクトロルミネッセンス素子及び画像表示装置>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、本発明の樹脂組成物で封止されていることを特徴とする。
【0080】
本発明の画像表示装置は、上記有機エレクトロルミネッセンス素子を有することを特徴とする。
本発明の画像表示装置は、有機エレクトロルミネッセンス素子を本発明の樹脂組成物により封止した構造を有しており、それ以外は公知の構造を適宜に採用できる。
【0081】
以下に、有機電子デバイスの例として、本発明の好ましい画像表示装置としての有機ELディスプレイについて説明するが、本発明はこれに制限されない。
有機ELディスプレイ10は、
図2に示すように、素子基板5上に設けられた有機EL素子6が、有機電子デバイス素子封止用樹脂層(以下、封止樹脂層ともいう)7と封止基板8により封止されている。
【0082】
有機EL素子6は、例えば、
図2に示すように、ガラス基板等からなる素子基板5上に、導電材料をパターニングして形成された陽極61と、陽極61の上面に積層された有機化合物材料の薄膜による有機層62と、有機層62の上面に積層され透明性を有する導電材料をパターニングして形成された陰極63とを有する。なお、陽極61及び陰極63の一部は、素子基板5の端部まで引き出されて図示しない駆動回路に接続されている。有機層62は、陽極61側から順に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層を積層してなり、発光層は、青色発光層、緑色発光層、赤色発光層を積層してなる。なお、発光層は、青色、緑色、赤色の各発光層間に非発光性の中間層を有していてもよい。
【0083】
この有機ELディスプレイ10は、封止樹脂層7の封止側面が露出しているが、ガラスフリット等による密閉処理が行なわれていなくともよい。本発明による有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物は、ガラスフリット等による密閉処理を行わなくても、高い水蒸気バリア性と接着性を兼ね備えるからである。したがって、構造を簡略化し、低コスト化することができる。
【0084】
封止基板8は、有機ELディスプレイ10の表示内容の視認性を大きく阻害することがない性質を有する材料であればよく、例えば、ガラス、樹脂等を用いることができる。本発明の樹脂組成物は接着力が高く、また必要により優れた追従性を有し、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板や封止基板が柔軟性を有する場合にも好適に使用することができる。
【0085】
封止樹脂層7は封止基板8上に対し、スクリーン印刷やスリットダイ、ディスペンサーなどを用いて形成することができる。
封止樹脂層7は、上述の有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1を用いて形成されたものであることが好ましい。この場合は、封止樹脂層7は、以下の工程により形成することができる。まず、
図3(A)に示すように、あらかじめ所望のサイズに裁断された有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1の離型フィルム4を剥離し、
図3(B)に示すように、封止層3を封止基板8にロール貼合する。次に、
図3(C)に示すように、封止基板8に貼合された有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1の基材シート2を剥離する。その後、
図3(D)に示すように、封止基板8に貼合された有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1の封止層3を有機EL素子6の陰極63側にラミネートする。有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1の封止層3が、有機ELディスプレイ10における封止樹脂層7となる。
【0086】
上記貼合及びラミネートは100℃以下の温度で行われることが好ましい。100℃を超えると有機EL素子6の構成材料が劣化し、発光特性が低下するおそれがある。
【0087】
なお、封止樹脂層7の形成工程では、最初に有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1を封止基板8にロール貼合するようにしたが、有機EL素子6に貼合するようにして、封止層3付きの有機EL素子を作製してもよい。この場合、有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1の基材シート2を剥離した後、封止層3を封止基板8にラミネートすることになる。
【0088】
また、封止層3と封止基板8の間にガスバリアフィルムを介在させてもよいし、予め封止層3の基材シート2とは反対側の面にガスバリアフィルムが貼り合わされている有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1を用いてもよい。予め封止層3の基材シート2とは反対側の面にガスバリアフィルムが貼り合わされている有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1を用いる場合、基材シート2を剥離した後、封止層3を有機EL素子6に貼合するようにして、ガスバリアフィルム及び封止層3付きの有機EL素子を作製する。
【0089】
封止層3で封止された有機EL素子6を有する有機ELディスプレイ10は、外観が優れ、劣化しにくく優れた耐久性を発揮する。
【実施例】
【0090】
以下、実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
<ポリイソブチレン樹脂(PIB)(A)等>
A1:重量平均分子量75,000(BASF社、Oppanol B15SFN(登録商標))
A2:重量平均分子量200,000(BASF社、Oppanol B30SFN(登録商標))
A3:重量平均分子量750,000(BASF社製、Oppanol B80(登録商標))
A4:重量平均分子量1,100,000(BASF社、Oppanol B100(登録商標))
【0092】
<水素添加環状オレフィン樹脂(B)等>
B1:水素化石油樹脂、軟化点100℃(出光興産社製、アイマーブ(登録商標)P−100)
【0093】
<重合体(C)等>
C1:NBR樹脂、スチレン量0%(日本ゼオン社製、Nipol(登録商標)1072J)
C2:SEBS樹脂、スチレン量43%(旭化成ケミカルズ社製、タフテック(登録商標)H1517)
C3:SEBS樹脂、スチレン量67%(旭化成ケミカルズ社製、タフテック(登録商標)H1043)
C4:SBS樹脂、スチレン量52%(JSR社製、TR(商品名)2250)
C5:SIS樹脂、スチレン量16%(日本ゼオン社製、クインタック(登録商標)3433N)
C6:SEPS樹脂、スチレン量30%(クラレ社製、セプトン(登録商標)2004)
C7:SIBS樹脂、スチレン量30%(株式会社カネカ製、SIBSTAR(登録商標)103T)
<樹脂>
C8:フェノキシ樹脂、スチレン量45%(新日鉄住金化学社製、YP−50)
【0094】
(実施例1)
下記成分を混合してなる有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物を溶剤に溶解して塗工液を調製し、この塗工液を用いて
図1に示される有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1を作製した。
ポリイソブチレン樹脂(A)として重量平均分子量
200,000のポリイソブチレン樹脂(BASF社製、Oppanol
B30SFN)
54質量部、水素添加環状オレフィン樹脂(B)としての水素化石油樹脂(出光興産社製、アイマーブ(登録商標)P−100、軟化点100℃)
36質量部、及び、重合体(C)としてのNBR(日本ゼオン社製、Nipol(登録商標)1072J)
10質量部を、トルエン200質量部に溶解させ、透明な塗工液を得た。
次に、基材シート2としての厚み38μmの、シリコーン系剥離剤塗布ポリエステルフィルム(三井化学東セロ社製、SP−PET−03)の剥離処理面上に、乾燥後の膜厚が30μmとなるように上記塗工液をアプリケータにより全面塗工した後、乾燥オーブンにより120℃で2分間乾燥させ、封止層3を形成した。こうして得られた封止層3に更に離型フィルム4としての厚み38μmのシリコーン系剥離剤塗布ポリエステルフィルム(三井化学東セロ社製、SP−PET−01)を剥離処理面でラミネートし、実施例1に係る有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1を作製した。
【0095】
(
実施例2、
実施例20〜29)
表1
又は表3に示す配合組成(質量部)で塗工液を調製した以外は実施例1と同様にして、
実施例2、実施例20〜29に係る有機電子デバイス素子封止用樹脂シートを作製した。
【0096】
(比較例1
〜6、参考例1及び2、比較例11〜16)
表1又は表2に示す配合組成(質量部)で塗工液を調製した以外は実施例1と同様にして、比較例1
〜6、参考例1及び2、比較例11〜16に係る有機電子デバイス素子封止用樹脂シートを作製した。
比較例4は上記特許文献2(特開2012−193335号)の実施例24に相当する。
【0097】
(評価方法)
以下の評価方法に従い評価を行った。その結果を表1〜3に示す。
【0098】
〔水蒸気透過率(WVTR)の測定〕
各実施例、比較例に係る有機電子デバイス素子封止用樹脂シートの水蒸気バリア性を水蒸気透過率により評価した。
具体的には、実施例1と同様の手順で20μm厚に作成した有機電子デバイス素子封止用樹脂シートの封止層部分を重ね合わせて貼り合わせ、100μm厚の測定用サンプルを作成した。このフィルムを用いてJIS Z 0208の塩化カルシウムカップ法に準じ、25℃/50%RH又は40℃/90%RHで24時間放置した後に、フィルムを透過した水蒸気の質量を測定した。なお、40℃/90%RHの恒温槽に投入した際には、カップ内空気の体積変化によりフィルムが膨張して、表面積やサンプルフィルムの厚み変化し、測定値が不正確になる恐れがあるので、サンプルには30μm厚のセロハンで補強を行った。(このセロハンの20μm厚の透湿度(文献値)は、40℃/90%RHの条件で700g/m
2・24h(色材協会誌、Vol.58(1985)、No.12、p.718−724)と、各実施例、比較例のサンプルに比べ十分に大きく、測定の妨げにはならなかった。)
水蒸気透過率は、その値が小さいほど水蒸気バリア性が優れ、本発明においては、25℃/50%RHでの水蒸気透過率が1g/m
2・24h以下であるものを合格とした。また、40℃/90%RHでの水蒸気透過率が4g/m
2・24h以下であれば、高温多湿環境下の場合にも好ましく使用することができる。
【0099】
<貼合追従性の測定>
有機電子デバイス素子封止用樹脂シートの追従性は、ガラス基板と貼り合わせたときに貼り合わせ面に気泡が混入するか否か(貼合追従性)で、評価した。
具体的には、各実施例、比較例に係る有機電子デバイス素子封止用樹脂シートの離型フィルムを剥離し、封止層側を厚み0.5mmのLCD用無アルカリガラス(日本電気硝子社製 OA−10G)に60℃、0.1MPaの条件でロール貼合した。その後、基材シートを剥離してその剥離面をA4サイズのガラス基板(日本電気硝子社製 OA−10G)に対して60℃、0.2MPa、2秒の条件で真空貼合して、ガラス貼合試料を作製した。得られたガラス貼合試料について、目視にて外観の評価を行った。
貼合追従性の評価は、最大幅0.1mm以上の気泡が含まれていないものを良品として「○」、最大幅0.1mm以上の気泡が含まれているものを不良品として「×」で示した。真空貼合直後は最大幅0.1mm以上の気泡が含まれていたが、24時間後の観察で気泡が消滅していたものを「△」で示した。真空貼合で発生する「気泡」の内部は真空なので、封止樹脂の柔軟性によっては時間経過と共に「気泡」のサイズが小さくなり消滅したものと考えられる。
【0100】
<せん断接着力の測定>
各実施例、比較例に係る有機電子デバイス素子封止用樹脂シートの離型フィルムを剥離し、封止層側を厚み0.5mmのLCD用無アルカリガラス(日本電気硝子社製 OA−10G)に80℃、0.1MPaの条件でロール貼合した。その後、基材シートを剥離し、厚さ0.5mm、5mm角のガラスチップを乗せて100℃に加熱しながら0.1N/m
2の圧力で10秒加圧し接着力測定試料を得た。この測定試料をボンドテスター(デイジジャパン製、万能型ボンドテスター4000Plus)を用い、測定温度25℃又は85℃、せん断速度50μm/s、せん断高さ75μmの条件でせん断接着力について評価した。
本発明において、25℃でのせん断接着力が10kgf(98N)以上であるものを、「通常使用時の封止安定性」の点で、合格とした。
また、85℃でのせん断接着力が0.1kgf(0.98N)以上であるものを、「高温恒湿試験時の封止安定性」の点で、合格とした。
【0101】
<カルシウム試験残存率の測定>
市販のガラス基板を45℃10分間超音波洗浄とUVオゾン洗浄を行った。引き続きこのガラス基板上に真空蒸着機により金属カルシウム層を10mm×11mm角で形成し、カルシウム試験片を作製した。次いで、実施例及び比較例で製造した有機電子デバイス素子封止用樹脂シートの離型フィルムを剥離し、封止層面に厚さ17μmのアルミ箔(三菱アルミニウム社製、三菱ホイルタフ)と80℃、0.1MPaの条件でロール貼合した。その後、基材シートを剥離して、封止層面を金属カルシウム層の上面を覆うように配置し、80℃、0.1MPaの条件でロール貼合した。このとき、封止用樹脂シートの大きさは20mm×21mm角であり、封止端面の一辺から金属カルシウム層の一辺までの距離は、四方とも均等に5mmとした。得られた試験片を60℃、90%RHの高温高湿下保存を行い、100時間経過後の金属カルシウム部分の面積を測定し、残存率を得た。
残存率が60%以上であるものを合格とした。
【0102】
<有機EL素子の耐久性評価>
各実施例及び比較例で作製した有機電子デバイス素子封止用樹脂シートを用いて、
図2に示す有機ELディスプレイ10を製造し、その耐久性を評価した。
市販のITO付きガラス基板5を用い、電極61部分を残してエッチングを行い、その後45℃10分間超音波洗浄とUVオゾン洗浄を行った。引き続き真空蒸着機で、有機層62及び陰極63を形成し、19mm角の有機EL素子6を作製した。有機EL素子構成は、ガラス基板/ITO(300nm)/NPB(30nm)/Alq3(40nm)/Al−Li(40nm)/Al(100nm)とした。
次いで、実施例・比較例で製造した有機電子デバイス素子封止用樹脂シート1の離型フィルム4を剥離し、封止層3面に厚さ17μmのアルミ箔(三菱アルミニウム社製、三菱ホイルタフ)と貼り合わせた。その後、基材シート2を剥離して、封止層3面を有機EL素子6の陰極63の上面に配置し、80℃において0.1MPaの圧力で1分間加圧し、有機ELディスプレイ10のモデルを作製した。作製したモデルについて、60℃/90%RHの恒温恒湿槽に投入し、有機EL発光効率測定装置(EL1003、プレサイスゲージ社製)を使用して、電流量2mAにおける初期輝度が半分になる半減期(単位:時間(h))を500時間まで求めた。
半減期が200時間以上であるものを合格とした。
【0103】
<外観評価>
上記<有機EL素子の耐久性評価>と同様にして製造した有機ELディスプレイ10のモデルにつき、外観を評価した。具体的には、貼合追従性の評価と同様に、最大幅0.1mm以上の気泡が含まれていないものを良品として「○」、最大幅0.1mm以上の気泡が含まれているものを不良品として「×」で示した。真空貼合直後は0.1mm以上の気泡が含まれていたが、24時間後の観察で気泡が消滅していたものを「△」で示した。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
表1〜3から明らかなように、実施例は、いずれも、有機EL素子の外観及び耐久性が優れていた。このように、有機電子デバイス素子封止用樹脂シートは、樹脂(A)、樹脂(B)及び重合体(C)を含有し、水蒸気透過率(水蒸気バリア性)及び接着力が優れていた。さらに追従性にも優れていた。
実施例の有機電子デバイス素子封止用樹脂シートを用いて製造した画像形成装置は、いずれも、耐久性が高く、外観にも優れることが分かった。
【0108】
これに対して、樹脂(A)、樹脂(B)及び重合体(C)のいずれかを含有しない比較例1〜4は、いずれも、画像形成装置の耐久性が劣った。特に、比較例1、2および4は貼り合わせの際に気泡を生じてしまい外観不良も生じた。
【課題】水蒸気バリア性及び接着力が優れた有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物、この樹脂組成物を利用した、有機電子デバイス素子封止用樹脂シート、有機エレクトロルミネッセンス素子及び画像表示装置を提供する。
【解決手段】ポリイソブチレン樹脂(A)と、水素添加環状オレフィン樹脂(B)と、ラジカル重合、アニオン重合、もしくは配位重合のいずれかより得られる、ゴム弾性を示す重合体(C)とを含有することを特徴とする有機電子デバイス素子封止用樹脂組成物、これを用いた樹脂シート、有機エレクトロルミネッセンス素子、及び画像表示装置。