(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ビスアルケニル置換ナジイミド(C)の含有量は、樹脂成分(B)に対して、重量比で、0.01〜5倍であることを特徴とする請求項1に記載の導電性接着剤組成物。
【背景技術】
【0002】
従来、導電性接着剤組成物は、ハンダ代替品として電子素子などのチップ部品をリードフレームや各種基板に接着し、電気的もしくは熱的に導通させる材料として使用されている。
【0003】
電子素子などのチップ部品は、小型化・高性能化が進み、素子自体の発熱量が増大している。また、基板上の配線などは部品の製造工程や実装工程においてハンダ炉やワイヤーボンディング工程を経る際に200℃〜300℃程度の高温に曝されている。そのため、低抵抗且つ良好な耐熱性、密着性が必要とされている。
【0004】
特許文献1では、タンタル固体電解コンデンサの製造において、カーボン層の表面に銀ペーストを塗布し、銀ペースト層を形成しているように、導電性接着剤組成物には昨今では様々な被着面で接着すること、例えばカーボンペースト硬化物などとの高接着性などが要求されている。
【0005】
このような被着面への密着性、耐屈曲性、顔料分散性などに優れるという面より、ポリエステル系樹脂をバインダに使用したものが提案されている。例えば、特許文献2のような、飽和共重合ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート化合物をバインダに用いた導電性接着剤組成物が知られている。しかしながら、特許文献2ではイソシアネート化合物を硬化剤として用いているため、ハンダリフローなどの耐熱性が不十分である。
【0006】
一方、本出願人は、エポキシ樹脂を用いた導電性接着剤組成物を提案したが、耐熱性やリードフレームなどの基板への接着性は良好であるものの、カーボンペースト硬化物などのプラスチックへの接着は想定していないため十分ではないし抵抗値も高い(特許文献3)。
【0007】
こうした状況の下、低い等価直列抵抗(以下ESRと称する)が要求されるタンタル固体電解コンデンサなどのチップ部品に使用できる、低抵抗且つ、高耐熱性、高密着性、保存安定性に優れた導電性接着剤が切望されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前述した従来技術の問題点に鑑み、固体電解コンデンサなど電子素子の内部電極用として低抵抗で、カーボンペースト硬化物などの被着面との密着性に優れ且つ保存安定性の優れた導電性接着剤組成物及びそれを用いた電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、銀粉末、樹脂成分、ビスアルケニル置換ナジイミド及び硬化剤を必須成分とする導電性接着剤において、樹脂成分としてフェノール樹脂化合物を用い、銀粉末としてタップ密度が3〜6g/cm
3のものを特定量配合すると、プラスチック上で高密着性を有するだけでなく、200〜300℃程度で耐熱性をもち、かつ導電性、保存安定性に優れた導電性接着剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、銀粉末(A)、樹脂成分(B)、下記の一般式(1)で示されるビスアルケニル置換ナジイミド(C)及び硬化剤(D)を必須成分とする低抵抗で被着面との密着性に優れ、かつ保存安定性にも優れた導電性接着剤であって、
銀粉末(A)は、タップ密度が3〜6g/cm
3、かつその含有量が全量に対して60〜95重量%であ
り、また、樹脂成分(B)は、ノボラックフェノール樹脂又はレゾールフェノール樹脂、かつ含有量が全量に対して1〜20重量%であり、さらに、ビスアルケニル置換ナジイミド(C)は、含有量が全量に対して0.1〜5重量%であることを特徴とする導電性接着剤組成物銀粉末(A)、樹脂成分(B)、下記の一般式(1)で示されるビスアルケニル置換ナジイミド(C)及び硬化剤(D)を必須成分とする低抵抗で被着面との密着性に優れ、かつ保存安定性にも優れた導電性接着剤であって、
銀粉末(A)は、タップ密度が3〜6g/cm
3、かつその含有量が全量に対して60〜95重量%であ
り、また、樹脂成分(B)は、ノボラックフェノール樹脂又はレゾールフェノール樹脂、かつ含有量が、全量に対して1〜20重量%であり、さらに、ビスアルケニル置換ナジイミド(C)は、含有量が全量に対して0.1〜5重量%であることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0012】
【化1】
【0013】
[上記式(1)中、R
1及びR
2は同一でも異なっていてもよく、水素原子又はメチルであり、X
1は炭素数2〜10のアルキレン、炭素数5〜8のシクロアルキレン、炭素数6〜18の二価の芳香族、−R−C
6H
4−(R’)
m−{ここで、mは0又は1の整数で、R、R’は同一であっても異なっていてもよく、炭素数2〜10のアルキレンもしくは炭素数5〜12のシクロアルキレンを示す。}、及び−C
6H
4−A−C
6H
4−{ここで、Aは、−CH
2−、−C(CH
3)
2−、−CO−、−O−、もしくは−OC
6H
4C(CH
3)
2C
6H
4O−のいずれかを示す。}からなる群から選択されたいずれかの基を示す。]
【0015】
また、本発明の第
2の発明によれば、第1の発明において、上記銀粉末(A)は、フレーク状の銀粉末であることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第
3の発明によれば、第1の発明において、硬化剤(D)の含有量は、
全量に対して0.01〜5重量%であることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0019】
さらに、
本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、ビスアルケニル置換ナジイミド(C)の含有量は、樹脂成分(B)に対して、重量比で、0.01〜5倍であることを特徴とする導電性接着剤組成物が提供される。
【0020】
一方、本発明の第
5の発明によれば、第1〜
4の発明のいずれかの導電性接着剤を用いてなる電子素子。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の導電性接着剤組成物などについて、その実施形態を詳細に説明する。
【0022】
I.導電性接着剤組成物
本発明に係る導電性接着剤組成物は、銀粉末(A)、樹脂成分(B)、下記の一般式(1)で示されるビスアルケニル置換ナジイミド(C)及び硬化剤(D)を必須成分とする低抵抗で被着面との密着性に優れ、かつ保存安定性にも優れた導電性接着剤であって、
銀粉末(A)は、タップ密度が3〜6g/cm
3、かつその含有量が全量に対して60〜95重量%であ
り、また、樹脂成分(B)は、ノボラックフェノール樹脂又はレゾールフェノール樹脂、かつ含有量が全量に対して1〜20重量%であり、さらに、ビスアルケニル置換ナジイミド(C)は、含有量が全量に対して0.1〜5重量%であることを特徴とする。
【0023】
1.銀粉末(A)
本発明において銀粉末は、導電性接着剤組成物の導電性成分である。銀粉末は、タップ密度によって特性が異なることから、本発明においては、低抵抗で被着面との密着性を高めるために、タップ密度3〜6g/cm
3の銀粉末を使用する必要がある。なお、上記を満たすのであれば、銀粉末を2種類以上いれても差し支えない。
【0024】
ここで、タップ密度とは、金属粉末などの粉体の嵩密度であり、JIS Z2500に準拠し、シリンダー容量:20mm、タップストローク:20mm、ストローク回数:50回の条件で測定した数値である。また、平均粒径は、マイクロトラックで測定した時の値を示す。銀粉末のタップ密度が3〜6g/cm
3であると樹脂成分への分散性が優れている。一方、3g/cm
3より小さいと樹脂成分への分散性が劣るので、樹脂接着剤組成物中に高充填できない。タップ密度は、粒子の形状に関係しており、球状のものよりもフレーク状のもののほうが好ましい。
本発明において銀粉末の粒径は、特に制限されるわけではないが、フレーク状のものであっても0.1〜30μmと幅広いとより分散性が優れたものとなる。
【0025】
また、銀粉末の配合量は、特に制限されるわけではないが、60〜95重量%の範囲内に設定することが好ましい。60重量%未満であると電気伝導性や熱伝導性が劣り、95重量%を超えると密着力が著しく低下し、接着剤組成物としての役割を果たさなくなることがある。好ましい配合量は65〜95重量%、より好ましい配合量は70〜95重量%である。
【0026】
通常、銀粉末は鉛を含まない純粋な銀を用いるが、本発明の目的を損なわない範囲でスズ、ビスマス、インジウム、パラジウム、ニッケル、銅,カーボン等やそれらの合金を採用しても良い。
【0027】
2.樹脂成分(B)
本発明においては、樹脂成分としてフェノール樹脂化合物を使用する。フェノール樹脂化合物は、その構造や製法、軟化点などによって制限されるものではないが、軟化点が50℃以上のノボラックフェノール樹脂、レゾールフェノール樹脂が使用できる。
【0028】
ノボラックフェノール樹脂は、なかでも下記一般式(2)で表わされるフェノール型、アルキル変性フェノール型等が好ましい。これらは単独もしくは2種以上混合して使用することが出来る。
【0030】
(ここでnは0以上の整数であり、0〜5の整数が好ましく、さらには0〜3の整数が好ましい。またR
3は水素または炭素数1〜6のアルキル基を示す。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル、ブチル、イソペンチルなどがある。)
【0031】
また、レゾール型フェノール樹脂は、一般に市販されているものを使用することができ、その製造方法も特に限定されることはない。分子量としては500〜3,000の範囲が好ましい。分子量が500未満では粘度が低くなるため、導電性接着剤組成物の必須成分である有機溶剤を加えることが困難となり、また、分子量が3,000を超えると所望の粘度を得るために大量の溶剤添加が不可欠となり、めっき面への密着強度の低下などの特性低下が生じる場合がある。分子構造上の制限も特にないが、分子構造中にジメチレン結合を有しているものは保存性が向上するため好ましい。
【0032】
フェノール樹脂化合物としてより好ましいのは、軟化点が80℃以上のノボラックフェノール樹脂である。軟化点は、溶媒への溶解性から70〜200℃、好ましくは80〜200℃が良い。ノボラックフェノール樹脂が好ましいのは、安価であるというだけでなく、保存安定性に優れているからであり、レゾールフェノール樹脂では、保存安定性がやや悪くなる場合があるからである。
【0033】
なお、ノボラックフェノール樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂など公知の熱硬化性樹脂を配合してもよい。しかし、その配合量が30%以下、特に10%以下でなければならない。
【0034】
本発明において、フェノール樹脂化合物の配合割合は、フェノール樹脂化合物の効果が発揮される範囲であれば制限されないが、全量に対して1〜20重量%配合することが好ましく、1〜10重量%配合することがより好ましく、1〜8重量%配合することが特に好ましい。1重量%未満では接着性が低下することがあり、また、20重量%を超えると塗布性や体積抵抗率が悪化するなどの弊害が生じることがある。
【0035】
3.ビスアルケニル置換ナジイミド(C)
ビスアルケニル置換ナジイミドは、下記の一般式(1)で示される耐熱性成分である。
【0037】
[上記式(1)中、R
1及びR
2は同一でも異なっていてもよく、水素原子又はメチルであり、X
1は炭素数2〜10のアルキレン、炭素数5〜8のシクロアルキレン、炭素数6〜18の二価の芳香族、−R−C
6H
4−R’]
m−{ここで、mは0又は1の整数で、R、R’は同一でも異なっていてもよく、炭素数2〜10のアルキレンもしくは炭素数5〜12のシクロアルキレンを示す。}、及び−C
6H
4−A−C
6H
4−{ここで、Aは、−CH
2−、−C(CH
3)2−、−CO−、−O−、もしくは−OC
6H
4C(CH
3)
2C
6H
4O−のいずれかを示す。}からなる群から選択されたいずれかの基を示す。]
【0038】
具体的には、特開昭59−80662号公報、特開昭60−178862号公報、及び特開昭63−170358号公報に記載されているビスアルケニル置換ナジイミドを用いることが出来る。
例えば、N、N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3−ジカルボキシイミド)、N、N’−p−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト5−エン−2、3−ジカルボキシイミド)、N、N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3−ジカルボキシイミド)、N、N’−(p−フェニレン)・エチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3−ジカルボキシイミド)、N、N’−(o−フェニレン)・メチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3−ジカルボキシイミド)、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、N、N’−(1−メチル−2、4−フェニレン)−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3−ジカルボキシイミド)等がある。このようなビスアルケニル置換ナジイミドは単独でも、複数種を混合して用いてもよい。
【0039】
ビスアルケニル置換ナジイミドは、硬化時にフェノール樹脂化合物と反応するわけではないが、それぞれが分かれて偏在せずに、3次元網目構造をとり、互いに絡み合って硬化する。そのため、非常に均一で200〜300℃程度では変質せず、耐熱性が良好で、優れた密着性を有する。また、導電性接着剤組成物としてみた場合、フェノール樹脂化合物とビスアルケニル置換ナジイミドは、溶剤との相溶性が良いため、保存安定性に優れており、かつ比較的低温でも短時間で硬化反応が進行する等の特徴を備えている。
【0040】
本発明において、ビスアルケニル置換ナジイミドの配合割合は、ビスアルケニル置換ナジイミドの効果が発揮される範囲であれば制限されないが、密着性、導電性をさらに向上させるには、ビスアルケニル置換ナジイミドを、全量に対して0.1〜5重量%配合することが好ましく、0.5〜4重量%配合することがより好ましい。0.1重量%未満では耐熱性が低下することがあり、また、5重量%を超えると硬化温度が上昇したり、導電性が悪化するなどの弊害が生じることがある。
【0041】
ビスアルケニル置換ナジイミドは、樹脂成分であるフェノール樹脂化合物に対して、重量比で0.01〜5倍含有させることが好ましく、0.05〜4倍含有することがより好ましい。重量比で0.01倍未満ではビスアルケニル置換ナジイミドの耐熱性効果が得られにくく、一方、5倍を越えると導電性接着剤の曳糸性が大きく、接着作業を困難にするだけでなく、導電性を低下させることがある。
【0042】
4.硬化剤(D)
また、硬化剤としては、60〜300℃に加熱すると、フェノール樹脂化合物と速やかに反応し、かつ室温で長期間の貯蔵安定性を満足できるものであれば特に問題なく使用できる。一般的にはテトラエチレンテトラミンが使用される。また、本発明の目的を損なわない範囲で、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール系の促進剤を適宜添加しても構わない。硬化剤は、全量に対して0.01〜5重量%配合することが好ましく、0.1〜2重量%配合することがより好ましい。
【0043】
5.溶剤(E)
本発明では、フェノール樹脂化合物及びビスアルケニル置換ナジイミドを溶剤に溶解させて使用する。溶剤としては、接着剤が硬化する際、溶剤成分が揮発・蒸発し、又は分解して飛散してしまう有機化合物が使用できる。沸点が200℃以下の有機化合物が好ましく、2−n−ブトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ブチルセロソルブ等が挙げられる。これらは単独でも、複数種を混合して使用してもよい。
【0044】
溶剤は、全量に対して1〜20重量%配合することが好ましく、3〜18重量%配合することがより好ましい。1重量%未満であると導電性接着剤の粘度が高くなって塗布性を悪化させる場合があり、逆に、20重量%を超えて配合すると粘度が低すぎて塗布性を悪化させたり、接着性に悪影響を与えることがある。
【0045】
II.電子素子
本発明の導電性接着剤組成物は、固体電解コンデンサなどの電子素子(チップ部品)の内部電極や端面電極として塗布した後、加熱・硬化させる。電子素子としては、固体電解コンデンサのほか、チップ抵抗器や積層セラミックスコンデンサなどを挙げることができる。
【0046】
固体電解コンデンサは、通常、タンタル等の弁作用金属を加圧成形し、焼結した焼結体からなる陽極体の表面を酸化して形成した誘電体酸化皮膜層、二酸化マンガンや導電性高分子等の導電性材料からなる固体電解質層、カーボン層、銀層を順次形成した後、陽極リードフレームと陽極リード線は抵抗溶接で、陰極リードフレームと銀層は、導電性接着剤を用いて接続し、外装樹脂で被覆することにより作製している。
近年、情報通信機器やパーソナルコンピュータのCPUの高周波化に伴い、固体電解コンデンサには、低い等価直列抵抗(ESR)が要求されているが、銀層を形成するために用いる銀ペーストは、銀粉と結着剤である樹脂成分と硬化剤や溶剤の混合物であるため、硬化して形成される銀層は、銀粉と結着剤の混合層となり、銀単独よりもかなり抵抗が大きくなり、ESR増加の要因になっていた。特に、銀層表面の結着剤は、露出する銀粉の表面積を減少させ、導電性接着剤との界面抵抗値が増大するため、ESR増加の要因になっていた。
しかし、本発明では、前記のとおり、樹脂成分としてフェノール樹脂化合物を用い、銀粉末として、タップ密度が3〜6g/cm
3、かつその含有量が全量に対して60〜95重量%としたため、銀層表面の結着剤が露出する銀粉の表面積を減少させないので、ESRを増加させることがない。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び、比較例の各試料は混練後、下記に示す評価を行なった。
【0048】
(1)体積抵抗値の測定
アルミナ基板上に幅0.6mm、長さ60mmの長方形状に試料(導電性接着剤)を印刷し、200℃のオーブン中に60分間放置し、硬化した後、室温まで冷却し、導電性接着剤上の両端で抵抗値を測定した。続いて、印刷し硬化した熱導電性接着剤の膜厚を測定し、抵抗値と膜厚から体積抵抗率を求めた。
【0049】
(2)接着強度の測定
プラスチック基板上に試料(導電性接着剤)を滴下し、1.5mm角のシリコンチップを載せ、200℃のオーブン中に60分間放置して硬化させた。室温まで冷却した後、この基板に対し水平方向からシリコンチップに力を加え、該シリコンチップが剥がれた時の力を接着強度として測定した。なお、プラスチック基板として、カーボン粉とポリエステル樹脂と溶剤からなるカーボン樹脂ペーストを150℃で30分加熱して溶剤を除去したもの(カーボン硬化物)を用いた。
【0050】
(3)熱間強度の測定
銅基板上に試料(導電性接着剤)を滴下し、1.5mm角のシリコンチップを載せ、200℃のオーブン中に60分間放置して硬化させた。室温まで冷却した後、260℃に加熱されたホットプレート上に、この銅基板を20秒間放置し、その後、過熱したまま銅基板に対し、水平方向からシリコンチップに力を加え、このシリコンチップが剥がれたときの力を熱間強度として測定した。
【0051】
(4)塗布性の評価
試料(導電性接着剤)を用いて、400メッシュのスクリーンにて幅100μm、長さ20mmの直線を10本印刷し、印刷面に欠け、かすれ、ダレ等があるものは不可(×)、それらが確認されない場合は良(○)とした。
【0052】
(5)総合評価
上記の4項目において、体積抵抗値は200μΩ・cm以下、接着強度は18N以上、熱間強度は8N以上、印刷性については良(○)の条件を全て満たしたもののみ良(○)とし、1つでも条件に満たさないものがある場合は不可(×)とした。
【0053】
表1中、各成分の濃度は重量%で示している。球状銀粉Aはタップ密度が4.1g/mlの銀粉末、フレーク状銀粉末Bはタップ密度が2g/mlの銀粉末、フレーク状銀粉末Cはタップ密度が3.8g/mlの銀粉末である。
【0054】
また、フェノール樹脂化合物Aは、ノボラックフェノール樹脂化合物(明和化成株式会社製:MEHC−7800H)で、フェノール樹脂化合物Bはレゾールフェノール樹脂化合物(住友ベークライト株式会社:PR−50607B)である。また、ポリイミド樹脂化合物Aは、N、N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3ジカルボキシイミド)(丸善石油化学株式会社:BANI−M)で、ポリイミド樹脂化合物Bは4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイ・アイ化成株式会社:BMI)を用いた。エポキシ樹脂はビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学株式会社:jER828)を使用した。
【0055】
さらに硬化剤Aとして、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社:ヘキサミン)を、硬化剤Bとしてジシアンジアミド(三菱化学株式会社:DICY7)を用いた。硬化促進剤は2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成株式会社:キュアゾール2P4MHZ−PW)を使用した。
また、溶剤Aとしてエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(関東化学株式会社:2−n−ブトキシエタノール)を使用し、溶剤Bとしてフェニルグリシジルエーテル(阪本薬品工業株式会社:PGE)を使用した。
【0056】
(実施例1)
金属粉末成分として、タップ密度が3.8g/mlのフレーク状銀粉末C、樹脂成分としてフェノール樹脂化合物A:ノボラックフェノール樹脂化合物(明和化成株式会社製:MEHC−7800H)、硬化剤成分として、ポリイミド樹脂化合物A:N、N’−ヘキサメチレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2、3ジカルボキシイミド)(丸善石油化学株式会社:BANI−M)を用意し、溶剤成分のエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(関東化学株式会社:2−n−ブトキシエタノール)と混合して、接着剤組成物を調整し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の導電性接着剤を得た。
この接着剤を用いて、アルミナ基板に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、銅基板に滴下し、硬化させてから、接着強度、熱間強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤をスクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表1に併記した。
【0057】
(実施例2〜5)
表1に記載したように金属粉末成分、樹脂成分、硬化剤成分、及び溶剤成分の配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、接着剤組成物を調整し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の導電性接着剤を得た。その後、この接着剤を用いて、アルミナ基板に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、銅基板に滴下し、硬化させてから、接着強度、熱間強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤をスクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表1に併記した。
【0058】
(実施例6〜8)
表1に記載したように金属粉末成分をタップ密度が4.1g/mlの球状銀粉A、又はタップ密度が2g/mlのフレーク状銀粉末Bに変えるか、樹脂成分をフェノール樹脂化合物B:レゾールフェノール樹脂化合物(住友ベークライト株式会社:PR−50607B)に変えた以外は実施例1と同様にして、接着剤組成物を調整し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の導電性接着剤を得た。その後、この接着剤を用いて、アルミナ基板に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、銅基板に滴下し、硬化させてから、接着強度、熱間強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤をスクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表1に併記した。
【0059】
(比較例1〜4)
表2に記載したように金属粉末成分と樹脂成分のフェノール樹脂化合物Aの配合量を変えるか、さらにポリイミド樹脂化合物Aの配合量を変えた以外は実施例1と同様にして、接着剤組成物を調整し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の導電性接着剤を得た。その後、この接着剤を用いて、アルミナ基板に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、銅基板に滴下し、硬化させてから、接着強度、熱間強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤をスクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表2に併記した。
【0060】
(比較例5〜6)
表2に記載したように、ポリイミド樹脂化合物Aの代わりにポリイミド樹脂化合物B:4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(ケイ・アイ化成株式会社:BMI)を用いたか、フェノール樹脂化合物Aの代わりにエポキシ樹脂:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学株式会社:jER828)を使用した以外は実施例1と同様にして、接着剤組成物を調整し、3本ロール型混練機を使用して混練し、本発明の導電性接着剤を得た。その後、この接着剤を用いて、アルミナ基板に印刷し、上記の条件で体積抵抗率を測定した。また、銅基板に滴下し、硬化させてから、接着強度、熱間強度を測定した。また、本発明の導電性接着剤をスクリーンにより基板へ印刷し、塗布性を評価した。この結果は表2に併記した。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
「評価」
上記結果を示す表1、2から明らかなように、実施例1〜5の導電性接着剤は、導電性、接着性、耐熱性、塗布性のいずれも優れていることが分かる。なお、実施例2は、やや熱間強度が弱いが、実用上問題の無いレベルである。実施例6,7は実施例1と比べると体積抵抗率がやや高めだが、実用上問題の無いレベルである。実施例8は実施例1と比べると接着強度がやや高めだが、実用上問題の無いレベルである。
【0064】
これに対し、比較例1はフェノール樹脂化合物が1重量部未満であるため、接着強度や熱間強度が弱く不可となった。比較例2はフェノール樹脂化合物が20重量部を超えているため体積抵抗率が高く不可となった。比較例3はポリイミド樹脂化合物A(ナジイミド)が0.1重量部未満であるため、熱間強度が弱く不可となった。比較例4はポリイミド樹脂化合物A(ナジイミド)が5重量部を超えているため体積抵抗率が高く不可となった。
比較例5はポリイミド樹脂化合物B(ビスマレイミド)を使用したため、熱間強度が弱く不可となった。比較例6は特許第3484957号を参考に評価したが、接着強度が弱く不可となった。
【0065】
本発明によれば、銀粉末、フェノール樹脂化合物、ビスアルケニル置換ナジイミド及び硬化剤を必須成分とし、特定したタップ密度の銀粉を特定量組合せて調整したため、200〜300℃程度で耐熱性があり、導電性、接着性、作業性を改善することができる。