特許第5764841号(P5764841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5764841
(24)【登録日】2015年6月26日
(45)【発行日】2015年8月19日
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/222 20060101AFI20150730BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20150730BHJP
   G03B 17/56 20060101ALI20150730BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20150730BHJP
   F16M 13/02 20060101ALI20150730BHJP
【FI】
   H04N5/222 B
   F16F15/04 A
   G03B17/56 A
   H04N5/232 Z
   F16M13/02 T
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-273211(P2011-273211)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-126072(P2013-126072A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】武藤 一利
(72)【発明者】
【氏名】柿迫 榮一
【審査官】 村山 絢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−113989(JP,A)
【文献】 特開2000−87497(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3131172(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222−5/257
F16F 15/00−15/36
G03B 17/56−17/58
F16F 7/00−7/14
F16M 13/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影カメラを移動体に設置するときに介在して設けられ、開口を水平方向に向けたU字形の板ばね部と粘弾性体とを備える防振装置であって、
前記板ばね部は、
U字の一方の直線部分においてU字の外側にて前記撮影カメラを支持するように設けた支持部と、
U字の他方の直線部分において前記支持部と対向するように配置されU字の外側にて前記移動体に取り付けられるように設けた取付部と、
U字の曲線部分において前記支持部と前記取付部とを接続するように設けた円弧部とを備え、
前記粘弾性体は、前記支持部と前記取付部との間に亘って設けられていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記板ばね部は、前記円弧部を形成する板バネ材の一方の端部に、前記支持部を形成する支持板が所定の接続部材を介して固定され、かつ、前記板バネ材の他方の端部に、前記取付部を形成する取付板が所定の接続部材を介して固定されて設けられていることを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記粘弾性体は、柱状に形成され、前記開口に対して前記板ばね部の幅方向である左右対称となる位置に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記板ばね部は、前記撮影カメラの重量が付属品を含めて3kg以下であるものとして算出されたばね定数を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の防振装置。
【請求項5】
前記板ばね部のばね定数は、前記支持板を剛体とみなしたときに下記の式(1)のkyで表されるものとして設計されていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の防振装置。
【数1】
ただし、δyは撮影カメラの重心の位置における支持板の鉛直方向のたわみ、Pは撮影カメラの重心の位置における荷重、Rは板バネ材の円弧の半径、Lは板バネ材の円弧の中心から撮影カメラの重心の位置までの水平距離、Eは板バネ材のヤング率、Iは板バネ材の断面二次モーメント、bは板バネ材の幅、tは板バネ材の厚さを示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に係り、特に移動体に設置する撮影カメラの防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防振装置として、例えば弾性部材により振動を吸収する装置や、加速度計などの各種センサによって振動を計測して計測結果に基づいて電気回路や制御装置により防振する装置等が知られている。例えば、特許文献1には、クレーンのアームの先端に懸架するカメラにて撮影された映像には画像振れが発生してしまうことから、コイル状ばねにより上下方向の振動を抑制したり、ショックアブソーバーにより水平方向の振動も抑制したりすることで、アームからカメラに伝達される振動を抑制する防振装置が開示されている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、カメラに内蔵されたジャイロセンサにより検出した角速度に基づいて、手振れ方向と反対方向にこの手振れ量と同じ距離だけ移動させる防振機能(手振れ補正機能)付カメラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−263514号公報
【特許文献2】特開2007−171708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のサスペンションやショックアブソーバーなどを組み合わせた防振装置には、移動体に設けて使用するときにカメラ映像の振動ゆれを吸収できるレベルのものはない。
また、例えば加速度計などによって振動を計測して電気的に防振する装置は、振動量を計算してフィードバックするまでの遅延時間がどうしても生じてしまう。
また、各方式を複合的に組み合わせた場合には、機構が大型で複雑になるため、コスト面からも適さない。
【0006】
また、防振対象の撮影カメラを移動体に設置するときには、移動体の特性を考慮して防振対策を講じなければならない。移動体が例えば人が乗る車両の場合、タイヤがダンパとして機能することによる効果や、防振装置とは別に人に快適な乗り心地を提供するための専用の防振機構を有する効果や、路面から入ってくる振動の効果等が存在するため、それらの効果を適切に分離することが難しいため、振動解析が難しくなっている。
【0007】
また、振動の激しい一般的な自転車などの車両は、走行中に、路面走行に応じたロードノイズや、車両自体のタイヤノイズなどの影響によって、断続的または定常的に振動が発生する。また、路面の状態が悪い場合、例えば車両が道路上の穴の上を通過するときにタイヤが穴に落ちることで、突発的に衝撃が生じる。例えば穴に落ちた瞬間の波(第1衝撃波)の振動の大きさは非常に大きい。要するに、自転車などの車両に車載した撮影カメラの振動は、初期衝撃(第1衝撃波)の振動や、定常的に発生する振動など、広帯域に渡る振動成分であるため、これらの振動を同時に1つの防振装置で軽減および吸収することは、非常に困難である。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、移動体の移動に伴い定常的に発生する振動と突発的に発生する衝撃とを軽減することのできる防振装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載の防振装置は、撮影カメラを移動体に設置するときに介在して設けられ、開口を水平方向に向けたU字形の板ばね部と粘弾性体とを備える防振装置であって、前記板ばね部は、U字の一方の直線部分においてU字の外側にて前記撮影カメラを支持するように設けた支持部と、U字の他方の直線部分において前記支持部と対向するように配置されU字の外側にて前記移動体に取り付けられるように設けた取付部と、U字の曲線部分において前記支持部と前記取付部とを接続するように設けた円弧部とを備え、前記粘弾性体は、前記支持部と前記取付部との間に亘って設けられていることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、防振装置は、ばねとは特性が異なる粘弾性を有した粘弾性体が、板ばね部とは異なる帯域の振動成分を吸収することができる。すなわち、移動体からの振動が防振装置に伝わると、防振装置の板ばね部は、粘弾性体と比較すると、振動の揺れは長く続くものの、振動はゆっくり大きく揺れる。このとき、防振装置の粘弾性体は、板ばね部の伸縮方向の付勢力を吸収するように、振動は板ばね部と比較すると早く小さく揺れるものの、振動の揺れはすぐに止まる。
したがって、自転車などの移動体に設置された防振装置において、主として板ばね部によって、初期衝撃(第1衝撃波)の振動に対する瞬時の静振応答がなされ、かつ、主として粘弾性体によって、ロードノイズ(タイヤノイズを含む)に起因して定常的または断続的に発生する振動を吸収することができる。その結果、自転車などに設置する撮影カメラで取得された映像の振動ゆれを吸収することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の防振装置は、請求項1に記載の防振装置において、前記円弧部を形成する板バネ材の一方の端部に、前記支持部を形成する支持板が所定の接続部材を介して固定され、かつ、前記板バネ材の他方の端部に、前記取付部を形成する取付板が所定の接続部材を介して固定されて設けられていることとした。
【0012】
かかる構成によれば、防振装置は、板ばね部の円弧部を形成する板バネ材が支持板や取付板と別部材なので、移動体や撮影カメラに応じて、所望の板バネ材を選定することで所望のばね定数を有した板ばね部を適宜設計変更し易くなる。
【0013】
また、請求項3に記載の防振装置は、請求項1または請求項2に記載の防振装置において、前記粘弾性体は、柱状に形成され、前記開口に対して前記板ばね部の幅方向である左右対称となる位置に設けられていることとした。
【0014】
かかる構成によれば、防振装置は、粘弾性体が柱状に形成されることで、粘弾性体の強度を維持しつつ材料を削減し、支持部および取付部を板ばね部の幅方向にバランスよく支えながら板ばね部の伸縮方向の付勢力を吸収することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の防振装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の防振装置において、前記板ばね部が、前記撮影カメラの重量が付属品を含めて3kg以下であるものとして算出されたばね定数を有することとした。
【0016】
かかる構成によれば、防振装置は、例えば自転車などの比較的軽量で人力で走行する移動体に設置したとしても移動体やドライバへの負担を軽減することができる。
【0017】
また、請求項5に記載の防振装置は、請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載の防振装置において、前記板ばね部のばね定数が、前記支持板を剛体とみなしたときに下記の式(1)のkyで表されるものとして設計されていることとした。
【数1】
ただし、δyは撮影カメラの重心の位置における支持板の鉛直方向のたわみ、Pは撮影カメラの重心の位置における荷重、Rは板バネ材の円弧の半径、Lは板バネ材の円弧の中心から撮影カメラの重心の位置までの水平距離、Eは板バネ材のヤング率、Iは板バネ材の断面二次モーメント、bは板バネ材の幅、tは板バネ材の厚さを示す。
【0018】
かかる構成によれば、防振装置は、例えば自転車などの移動体に設置されたときに、板ばね部の設計された静的なばね定数kyに応じた板ばね部の固有振動とその振動伝達率とにしたがって、初期衝撃(第1衝撃波)の振動に対して瞬時の静振応答をすることができる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、防振装置は、移動体の移動に伴い定常的に発生する振動と突発的に発生する衝撃とを軽減することができる。
請求項2に記載の発明によれば、防振装置は、板ばね部の静的なばね定数を適宜設計変更し易くなる。
請求項3に記載の発明によれば、防振装置は、粘弾性体が支持部および取付部を板ばね部の幅方向にバランスよく支えながら板ばね部の伸縮方向の付勢力を吸収できる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、防振装置は、比較的軽量で人力で走行する移動体に設置したとしても移動体やドライバへの負担を軽減することができる。
請求項5に記載の発明によれば、防振装置は、初期衝撃(第1衝撃波)の振動に対する瞬時の静振応答の性能を適宜設計変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る防振装置を撮影カメラに取り付けた状態を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る防振装置を模式的に示す構成図であって、(a)は装置全体の斜視図、(b)は板ばね部の側面図である。
図3】本発明の実施形態に係る防振装置の構成を模式的に示す分解斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る防振装置の動作を説明するための模式図であって、(a)は突発的な振動が発生したときの振動の大きさの時間変化、(b)は(a)の場合に防振装置を用いたときの振動の大きさの時間変化を示している。
図5】本発明の実施形態に係る防振装置が搭載する撮影カメラから荷重を受けているときの状態を模式的に示す図であって、(a)は側面図、(b)は上面図を示している。
図6図5(a)に示す防振装置の状態から粘弾性体を取り外したときの仮想的な状態を示す側面図である。
図7図5に示す防振装置の状態から搭載物を取り外したときの状態を模式的に示す図であって、(a)は側面図、(b)は上面図を示している。
図8】本発明の実施形態に係る防振装置の性能として振動伝達率の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の防振装置を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面に示される部材等のサイズや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0023】
[防振装置の概要]
防振装置1は、撮影カメラ200を移動体に設置するときに介在して設けられる。
移動体については、本実施形態では、一例として自転車(サスペンションの無いもの)として説明する。図1に示す例では、防振装置1は、自転車100のフレーム101の前方にあるハンドルバー102に取り付けられた棒状の支持アーム103に設置される。
【0024】
撮影カメラ200については、一例として、民生用として市販されている一般的な小型カメラであるものとする。ここで、小型とは、カメラ付属品を含めても最大でも3kg以下、好ましくは1kg以下であるものを指す。
撮影カメラ200は、カメラレンズ201の向きを、自転車100の側に向けて防振装置1を介して自転車100に設置されていることとする。これにより、撮影カメラ200は、自転車のドライバを撮影することができる。
【0025】
[防振装置の構成]
防振装置1は、図2(a)に示すように、主として、U字形の板ばね部2と、粘弾性体3とを備えている。以下、形状が円柱状である粘弾性体を特に区別する場合には、粘弾性体3aと表記する。図2(a)では、撮影カメラ200を搭載していないため、板ばね部2においてU字の開口が外側にいくほど拡幅するが、防振装置1は、防振対象とする撮影カメラ200を水平になるように搭載した場合、U字の2本の直線部分が平行になるように設計されている。この設計どおりの板ばね部2の側面図を図2(b)に示す。なお、図2(b)において撮影カメラ200の図示を省略したが、搭載していることを設計の前提としている。
【0026】
<板ばね部>
板ばね部2は、防振装置1の使用条件に応じて、材質、厚み、幅、長さ、自由高さ、ばね定数等が決められている。なお、所定の使用条件におけるばね定数の設計値については後記する実施例にて説明する。
板ばね部2は、図2(b)に側面を示すように、U字を横に倒してU字の開口4を水平方向に向けた状態では、U字の直線部分5が上下に配置され、開口4に対向してU字の曲線部分6が配置される。
【0027】
板ばね部2は、図2(a)および図2(b)に示すように、U字の一方の(上側の)直線部分5に設けられた取付板7(取付部)と、取付板7に対向しU字の他方の(下側の)直線部分5に設けられた支持板8(支持部)と、U字の曲線部分6において支持板8と取付板7とを接続するように設けられた板バネ材9(円弧部)とを備えている。ここで、板バネ材9については、板ばね部2と区別するために片仮名で表記した。
なお、この実施形態では、開口4の配置される向き(図1において左)と、撮影カメラ200のカメラレンズ201の向きとは一致しているが、反対向きでも構わない。
【0028】
≪取付板(取付部)≫
取付板7は、U字の直線部分5においてU字の外側(図1において下側)にて自転車100に取り付けられるように設けられている。具体的には、取付板7には、図3に示すようにネジ孔11が穿設されている。この取付板7の外側の面(下面)に対向する支持アーム103の面(上面)にはネジ104が設けられている。これにより、取付板7のネジ孔11にネジ104が螺合することで、防振装置1が支持アーム103を介して自転車100に設置される。
【0029】
取付板7の材料は特に限定されない。本実施形態のように防振装置1が自転車100に設置される場合、屋外では風雨に晒されることがあるので、例えば、ステンレス等の耐食性のある材料であることが好ましい。取付板7の形状は特に限定されないが、例えば略正方形の平板状に形成されている。
【0030】
≪支持板(支持部)≫
支持板8は、U字の直線部分5においてU字の外側(図1において上側)にて撮影カメラ200を支持するように設けられている。本実施形態では、支持板8は、取付板7の上方に配置されている。具体的には、支持板8には、図3に示すようにネジ孔21が穿設されている。この支持板8の外側の面(上面)に対向する撮影カメラ200の面(下面)にはネジ202が設けられている。これにより、支持板8のネジ孔21にネジ202が螺合することで、撮影カメラ200が防振装置1を介して自転車100に設置される。
【0031】
支持板8の材料は特に限定されないが、取付板7と同様に、例えば、ステンレス等であることが好ましい。支持板8の形状は特に限定されないが、例えば略正方形の平板状に形成されている。なお、支持板8と取付板7とを同寸の同形状とし、板ばね部2を上下反転して使用できるように構成してもよい。
【0032】
≪板バネ材(円弧部)≫
板バネ材9は、取付板7および支持板8と、ネジ等の所定の接続部材により固定されて設けられている。具体的には、板バネ材9には、図3に示すように、所定の曲率の曲面部を間に挟む一方の端部(下側の平面部)にネジ孔31,32が穿設されており、かつ、他方の端部(上側の平面部)にネジ孔33,34が穿設されている。また、図3に示すように、取付板7にはネジ孔12,13が穿設されており、支持板8にはネジ孔22,23が穿設されている。これにより、板バネ材9の下側の平面部のネジ孔31,32および取付板7のネジ孔12,13にネジ41,42が螺合することで、板バネ材9に取付板7が固定される。また、板バネ材9の上側の平面部のネジ孔33,34および支持板8のネジ孔22,23にネジ51,52が螺合することで、板バネ材9に支持板8が固定される。
【0033】
板バネ材9の材料は、一般的な材料であって、例えば、ベリリウム銅や、りん青銅等のばね鋼やステンレス鋼等を挙げることができる。板バネ材9の幅の値は特に限定されないが、例えば取付板7や支持板8の幅の値と同程度であることが好ましい。本実施形態のように自転車100のハンドルバー102に防振装置1を設置するときには、ドライバが自転車のハンドルをきるときに横ぶれが生じるので、板バネ材9をこのように幅広にすることで、板バネ材9の幅方向のねじれを防止し位置決めすることができる。
【0034】
仮に、板バネ材9をコイルばねに置き換えて構成した場合には、板ばね部2のU字の曲線部分6に等間隔に複数のコイルばねを設けることが必要になるため構成部材が増加したり、幅方向のねじれ防止や位置決めが思い通りにできなくなったりする事態となる。これに対して、本実施形態では、板ばね部2のU字の曲線部分6に、所定幅を有した板バネ材9を設けたことでこのような事態を回避できる。
【0035】
<粘弾性体>
粘弾性体3は、支持板8と取付板7との間に亘って設けられている。
粘弾性体3は、防振装置1の使用条件に応じて、材料、形状、動ばね定数等が決められている。なお、所定の使用条件における動ばね定数の設計値については後記する実施例にて説明する。
【0036】
粘弾性体3は、粘性及び弾性両方をあわせた性質を持つものであり、所定の貯蔵せん断弾性率を有している。粘弾性体3は、プラスチックなどの高分子物質を柱状に形成することで構成されている。ここで、粘弾性体は、例えば、合成高分子として合成樹脂(プラスチック、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、フェノール樹脂など)、シリコン樹脂(シリコンゴム、シリコンオイル)、合成繊維(ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラートなど)、合成ゴムを柱状に形成したものが使用される。また、具体的な製品の一例として、粘弾性体3には、住友スリーエム株式会社が販売しているVEM構造用ダンパーに使用されている耐候性に優れるアクリル高分子からなる粘弾性体を使用することができる。
【0037】
なお、粘弾性体は、流体の様に流動性をもち、粘性抵抗により力を発揮する(変形速度に比例した力が発生する)特長と、バネの様に弾性的な性質を持ち、変形に比例した力を発揮する特長とを併せ持った力学的な挙動を示す高分子材料である。そして、粘弾性体は、変形の速度が遅い場合は、粘性抵抗が少なくバネの要素が支配的な挙動を示し、衝撃力の様に早い変形速度が加わった場合は、粘性抵抗の要素が大きくなり、大きな反力を発生するようになるものである。粘弾性体は、使用される高分子材料において、長い分子の鎖が絡み合った構造をしており、変形が加わるとその鎖が伸びたり縮んだりすることになり、その際の分子間の摩擦抵抗が振動エネルギーの吸収効果を発揮する。そして、粘弾性体は、分子間の摩擦抵抗が発生することで、結果として全体が若干発熟し、熱エネルギーヘと変換され振動を吸収している。
【0038】
本実施形態では、防振装置1は、一例として2本の円柱状の粘弾性体3a,3aを備えることとした。粘弾性体3a,3aは、支持板8および取付板7に溶着あるいは接着剤により接合するように設けられている。ここでは、粘弾性体3a,3aは、U字の開口4に対して板バネ材9の幅方向である左右対称となる位置に所定間隔をあけて設けられている。粘弾性体3a,3aをこのように配置することで、粘弾性体3a,3aが支持板8および取付板7を板ばね部2の幅方向にバランスよく支えながら板ばね部2の伸縮方向の付勢力を吸収できる。また、粘弾性体3a,3aは、板ばね部2の伸縮方向の付勢力を吸収させるためには、その樹脂の種類、設置面積、シート厚さにより調整され、支持板8に支持される撮影カメラ200の支持する重さの範囲に対応して、適宜予め設定することができる。粘弾性体3aの円柱の高さは、設計どおりの自然形状のときに、図2(b)に示す板ばね部2(カメラ搭載済)の上下の直線部分5,5の間隔と等しくなっている。円柱の断面積は、特に限定されないが、設計どおりの自然形状のときに例えば100mm2以上あると粘弾性体を加工し易いので好ましい。
【0039】
[防振装置の動作]
<前提>
撮影カメラ200が防振装置1を介在させて設置された自転車100には、走行中に断続的にロードノイズ(タイヤノイズを含む)が発生している。つまり、自転車100が通常の道路を走行しているときには、自転車100に定常的な振動が発生している。また、自転車100が例えば道路上で障害物に接触すると、突発的に衝撃が生じる。つまり、自転車100が通常の道路を走行しているときに、突発的に、通常よりも大きな振動が発生する。
【0040】
ここでは簡単のため、一例として、自転車100が道路上の1つの穴の上を通過するときを想定する。このときの振動の大きさの時間変化の一例を図4(a)に模式的に示す。なお、図4(a)に示す波形は振動の大きさを誇張して示している。図4(a)に示すように、自転車100のタイヤが道路上の穴に落ちた瞬間の波(第1衝撃波)の振動の大きさは非常に大きくなっている。波形の1周期を経た次回以降の波では、振動の大きさはある程度緩和されるが、振動し続けることが分かる。
【0041】
<比較参考例>
自転車100に防振装置1を介在させずに設置した撮影カメラ200で撮影した映像を比較参考例として想定する。ここで振動の1周期が、撮影カメラ200で撮影した映像のフレームと同程度であると仮定した場合、映像の1フレーム目では、第1衝撃波の振動に対応して大きくずれた映像が撮影される。そして、映像の2フレーム以降でも、振動し続ける映像が撮影されることとなる。
【0042】
車載した撮影カメラ200により取得した映像を放送する場合、放送を視聴する視聴者が感じるテレビ映像の違和感は、カメラの大きな揺れと、カメラの断続的な微振動とに起因して感ずることが多い。このようにして撮影された映像を視聴した視聴者は映像酔いを生じ易くなる。すなわち、振動の影響が例えば5フレーム以上続くような映像を視聴者が視聴した場合、気持ちが悪くなったり、目が疲れたり、ふらつき感を感じる場合があることが知られている。
【0043】
<防振装置の効果>
本実施形態の防振装置1は、前記したように所定のばね定数を有した板ばね部2と、所定の動ばね定数を有した粘弾性体3a,3aとを備えている。
板ばね部2は、粘弾性体3a,3aと比較すると、振動伝達率が大きいため振動の揺れは長く続くものの、固有振動数が低いため振動はゆっくり大きく揺れるという特性を有する。
粘弾性体3a,3aは、板ばね部2と比較すると、固有振動数が高いため振動は早く小さく揺れるものの、振動伝達率が小さいため振動の揺れはすぐに止まる、という特性を有する。
【0044】
本実施形態のように自転車100に防振装置1を介在させて撮影カメラ200を設置したときの振動の大きさの時間変化の一例を図4(b)に模式的に示す。図4(b)に示す破線は、図4(a)に示す波形と同じものであり、図4(b)に示す実線は、防振装置1の効果を示している。なお、図4(b)に示す波形は振動の大きさを誇張して示している。
【0045】
図4(b)に示すように、自転車100のタイヤが道路上の穴に落ちた瞬間の波(第1衝撃波)の振動の大きさは小さく抑制されている。これは、板ばね部2の振動がゆっくり大きく揺れるという作用によるものである。また、図4(b)に示すように、波形の1/2周期を経た後で、振動は収束していることが分かる。これは、粘弾性体3a,3aの振動の揺れがすぐに止まるという作用によるものである。
【0046】
そこで、比較参考例と同様に、自転車100に防振装置1を介在させて設置した撮影カメラ200で撮影した映像を想定する。ここで振動の1周期が、撮影カメラ200で撮影した映像のフレームと同程度であると仮定した場合、映像の1フレーム目では、第1衝撃波に関わらず振動が大きく抑制された映像が撮影される。そして、映像の2フレーム以降では、穴に落ちた衝撃による振動が収束した映像が撮影されることとなる。このようにして撮影された映像を視聴した視聴者は映像酔いを生じにくくなる。すなわち、振動の影響を5フレームよりも少なく抑えることができるので、視聴者が、気持ちが悪くなったり、目が疲れたり、ふらつき感を感じるといったことを予防することができる。
【0047】
[防振装置の設計例]
<ばね定数>
防振装置1の設計例について図5を参照して説明する。
図5(a)は、防振装置1の支持板8の上に、図示しない撮影カメラが搭載された場合の防振装置1の側面図、図5(b)はその上面図である。このときに、図5(a)に示すように、円柱状の粘弾性体3a,3aが設計どおりの自然形状になり、かつ、板ばね部2の支持板8と取付板7とが平行になってU字の円弧部が半円になったものとする。なお、板バネ材9の円弧の半径Rは、板バネ材9の外周面での半径を示す。
【0048】
図5(a)において、位置g1は支持板8において撮影カメラの重心の位置を示し、位置g2は取付板7において撮影カメラの重心の位置を示す。位置g1,g2を結ぶ仮想線は、荷重中心線を示す。位置g1,g2において、撮影カメラおよび付属品と、支持板8とによる荷重Pから、板ばね部2のばね定数(静的なばね定数)を計算することができる。
【0049】
図5(a)に示したように荷重Pとバランスがとれた平衡状態から、仮に円柱状の粘弾性体3a,3aを除去した場合の状態を図6に示す。ここで、支持板8を剛体とみなして支持板8自体はたわまないものとする。この場合、位置g1,g2を結ぶ仮想線における支持板8の鉛直方向のたわみをδyとする。
板ばね部2のばね定数は、荷重Pとたわみδyとを用いて下記の式(1)のkyで表されるものとして設計することができる。
【0050】
【数2】
ただし、δyは撮影カメラの重心の位置における支持板8の鉛直方向のたわみ、Pは撮影カメラの重心の位置における荷重、Rは板バネ材9の円弧の半径、Lは板バネ材9の円弧の中心Oから撮影カメラの重心の位置までの水平距離、Eは板バネ材9のヤング率、Iは板バネ材9の断面二次モーメント、bは板バネ材9の幅、tは板バネ材9の厚さを示す。
【0051】
<動ばね定数>
図5(a)に示したように荷重Pとバランスがとれた平衡状態から、搭載中の図示しない撮影カメラを仮に除去した場合の状態の側面図を図7(a)に示し、その上面図を図7(b)に示す。この場合、図7(a)に示すように、荷重Pから撮影カメラの重量が減少するので、板ばね部2が伸長し、板ばね部2の開口が外側にいくほど拡幅する。これに伴って、円柱状の粘弾性体3a,3aが柱の軸方向に引っ張られて伸長し、かつ、若干細くなる。
【0052】
粘弾性体3a,3aの動ばね定数は、粘弾性体の貯蔵せん断弾性率をG、粘弾性体3a,3aの総断面積をA、粘弾性体3aの内部の軸方向の中心部における長さをHとしたときに、下記の式(4)のkv′で表されるものとして設計することができる。
【0053】
【数3】
【0054】
ここで、粘弾性体3a,3aが伸長したために、粘弾性体3a,3aが上下の板7,8に付着した両端部と中心付近とでは断面積が等しくなくなる。この場合、粘弾性体3aの断面積とは、柱全体の断面積の平均値を示す。この例の場合、総断面積Aは、各粘弾性体3aの断面積を2倍した断面積となる。なお、粘弾性体3a,3aが伸長したために、図7(b)において透視した断面形状を略楕円の形状で示した。
【0055】
<防振装置の固有振動数>
防振装置1の固有振動数fnは、前記式(1)に示す板ばね部2のばね定数kyと、前記式(4)に示す粘弾性体3a,3aの動ばね定数kv′と、荷重Pと、重力加速度Gとから、下記の式(5)で算出することができる。
【0056】
【数4】
【0057】
以上説明したように、本実施形態の防振装置1によれば、主として板ばね部2によって、初期衝撃(第1衝撃波)の振動に対する瞬時の静振応答がなされ、かつ、主として粘弾性体3a,3aによって、ロードノイズ(タイヤノイズを含む)に起因して定常的または断続的に発生する振動を吸収することができる。また、本実施形態の防振装置1は、板ばね部2と粘弾性体3a,3aという比較的簡易な構成により上記防振機構が実現され、防振機構が大型化したり複雑化したりすることなく、コスト面からも有利な効果を奏する。
【0058】
また、本実施形態の防振装置1は、撮影カメラ200を自転車等の移動体に設置するときに介在することで、撮影カメラ200で取得された映像の振動ゆれを吸収することができる。例えばテレビ映像の違和感は、撮影カメラの大きな揺れと、断続的な微振動によって感ずることが多い。これに対して、本実施形態の防振装置1は、例えば、車載カメラの垂直方向に発生する振動成分(サスペンションの無い自転車の場合、10〜30Hz)の振動のうち、第1衝撃波を、板ばね部2が伸縮する反発作用によって5Hz以下のゆっくりした振動に抑制し、また、第1衝撃波に続く断続的な振動や定常的な振動を、粘弾性体3a,3aによって2Hz以下の振動に抑制することができる。したがって、本実施形態の防振装置1によれば、車載におけるカメラ撮影映像において、視聴者が映像酔いなどの違和感を感ずることなく臨場感あるカメラ撮影が実現できるという優れた効果を奏する。
【0059】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、防振装置1において、U字形の板ばね部2は、図3に示すように、板バネ材9を支持板8と取付板7とで挟む形態で説明したが、例えば、板バネ材9の下面側に支持板8が固定され、板バネ材9の上面側に取付板7が固定されて、板バネ材9が支持板8と取付板7とを挟む形態であってもよい。また、U字形の板ばね部2は、取付板7と、支持板8と、板バネ材9とを別部材として備えるものとして説明したが、一体の部材で形成してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、防振装置1において、円柱状の粘弾性体3aの本数は、2本であるものとしたが、1本または3本以上であってもよい。例えば2本の円柱の配置は、幅方向ではなく奥行方向であってもよい。また、円柱の間隔は適宜設計変更することができる。また、粘弾性体3の形状は円柱形状に限らず、柱の上面の形状が楕円、正方形、その他の多角形であってもよいし、円錐台や角錐台等の傾斜面を有する形状であってもよい。
【0061】
また、本実施形態では、撮影カメラ200を自転車のドライバを撮影する向きに設置したが、ドライバの前方の景色を撮影する向きに設置してもよい。
また、本実施形態では、移動体を自転車であるものとして説明したが、本発明が適用される移動体は、例えば、サスペンションの無い車両としては、自転車以外に乳母車や介護用車椅子等の人力で移動する移動体や電動駆動で移動する移動体でもよい。
【0062】
また、陸海空等を自走する移動体として、例えば、自動二輪車、ボート、ヘリコプター等に適用してもよいことは勿論である。また、本発明は、軽量な小型カメラに好適なので、人が搭乗する移動体に限らず、ラジオコントロール模型等に設置してもよい。
【0063】
また、本実施形態では、U字の板ばね部2において、撮影カメラ200を支持する支持板8は取付板7の上方に配置されているものとしたが、取付板7の下方に配置してもよい。この場合、図1に示す支持アーム103を、ハンドルバー102に対して180度回転させた配置で自転車100に取り付けることで、支持板8が撮影カメラ200を懸架(支持)した状態で、ドライバの前方の景色を撮影することができる。また、撮影カメラ200を支持する支持板8を取付板7の下方に配置する他の例として、ヘリコプター等の胴体底面部に対して直接または支持アーム等を介して取付板7をネジ止めしてもよい。
【0064】
また、本実施形態では、撮影カメラの防振装置として説明したが、視覚センサとしての撮影カメラ以外に、例えば各種センシングに用いる計測機器の防振や、支持板8に搭載する一般的な積載物の防振などに適用することも可能である。
【実施例】
【0065】
本発明の効果を確認するために本実施形態に係る防振装置の性能を測定した。
このために、机上の設計だけではなく、静的なばね定数kyを微調整により変更しながら、自転車100のドライバの走行中の顔を撮影した画像における振動の状態、すなわち、撮影カメラ200の振動状態を調査した。なお、以下ではSI換算値も併記する。
【0066】
一例として荷重Pが0.2[kgf/cm](=196[N/m])であるという条件を想定した。これは、撮影カメラ200およびその付属品と、防振装置1の支持板8との合計の重量が200[g](=0.2[kg])であることを示す。
この場合、撮影した画像における振動のゆれが低減されて映像酔いの生じない良好な映像が得られたのは、防振装置1において、前記式(2)および式(3)のパラメータのうちR,L,b,tを次の寸法としてU字形の板ばね部2を作製した場合であった。なお、粘弾性体3a,3aの設計値は後記する。このときの設計値を実施例と呼ぶ。
【0067】
R=1.0[cm](=1.0×10-2[m])
L=4.0[cm](=4.0×10-2[m])
b=4.0[cm](=4.0×10-2[m])
t=0.03[cm](=3.0×10-4[m])
【0068】
<ばね定数について>
実施例では板バネ材9の材料として、ステンレス鋼(SUS)を用いた。よって、板バネ材9のヤング率Eとしては、次の値を用いた。
E=2.1×106[kgf/cm2](=206[GPa])
前記式(3)の計算の結果、板バネ材9の断面二次モーメントIとして次の値が求められた。
I=bt2/12=9×10-6[cm4](=9×10-14[m4])
前記式(2)の計算の結果、撮影カメラの重心の位置における支持板8の鉛直方向のたわみδyとして次の値が求められた。
δy=0.72[cm](=7.2×10-3[m])
前記式(1)の計算の結果、板ばね部2のばね定数kyとして次の値が求められた。
y=0.28[kgf/cm](=270[N/m])
【0069】
なお、図示を省略するが、比較例として荷重P=0.2[kgf/cm]に対応させて、板ばね部2のばね定数を0.2[kgf/cm]、あるいはその2倍の値(0.4[kgf/cm])として設計して走行して撮影した映像は、満足のいくものとはならなかった。
【0070】
<動ばね定数について>
実施例では、防振装置1において粘弾性体3aの断面積の測定結果は0.7[cm2]であったため、前記式(4)のパラメータのうち総断面積はA=1.4[cm2]とした。また、前記式(4)のパラメータのうち、粘弾性体3aが伸長しているときの内部の軸方向の中心部における長さの測定結果は、H=2.5[cm]であった。
また、粘弾性体3aを構成する粘弾性体としては、所定温度および所定振動数条件の下(20℃、10Hz)、貯蔵せん断弾性率Gが次の値を有するものを用いた。
≒2.0[kgf/cm2
よって、前記式(4)の計算の結果、粘弾性体3a,3aの動ばね定数kv′として次の値が求められた。
v′=1.12[kgf/cm](=1100[N/m])
なお、ばね定数や動ばね定数は、経年劣化により初期設計値が変化する場合がある。
【0071】
<防振装置の固有振動数について>
防振装置1の固有振動数fnは、ばね定数kyと、動ばね定数kv′と、荷重Pと、重力加速度Gとから、前記式(5)により算出した結果、fn=13.2[Hz]であった。
このときの防振装置1の性能を図8に示す。図8のグラフの横軸は、防振装置1に入力する振動の振動数を示し、縦軸は、防振装置1の鉛直方向の振動伝達率を示す。ここで、振動伝達率とは、入力加速度に対する応答加速度の割合を示す。
【0072】
本実施例の防振装置1は、図8に示すように、およそ10〜30[Hz]程度の振動に対して防振効果を奏する。このうち共振周波数(13.2[Hz])のときに振動伝達率の値がおよそ1.5であった。
なお、図示を省略するが、従来の一般的な防振機構としてのコイルばねや防振ゴムの性能についても同様に測定した結果、コイルばねは共振周波数(4[Hz])のときに振動伝達率の値が10程度であり、防振ゴムは共振周波数(8[Hz])のとき振動伝達率の値が5程度であった。
【0073】
また、本実施例の防振装置1は、図8に示すように、振動数が20[Hz]のときに振動伝達率の値が1となり、30[Hz]のときに振動伝達率の値がおよそ0.5となったので、20〜30[Hz]程度の振動に対して効果的に防振できることが分かる。
なお、図示を省略するが、コイルばねは5〜10[Hz]程度の振動に対して防振効果を奏し、防振ゴムは11〜16[Hz]程度の振動に対して防振効果を奏した。
【0074】
本実施例の振動特性は、防振装置1の主として板ばね部2単独の特性によって、瞬間的な衝撃(第1衝撃波)の振動に対してゆっくり(例えば5[Hz]以下)大きく揺れることで、第1衝撃波の振動の大きさを低減する。よって、自転車が走行中に衝撃を受ける場合のように突発的に発生する衝撃の第1衝撃波を吸収する場合に好適である。
また、防振装置1の主として粘弾性体3a,3a単独の特性として、粘弾性体の振動伝達率が小さいために、瞬間的な衝撃(第1衝撃波)以降の波で振動の揺れがすぐに止まる(例えば2[Hz]以下でゆっくり振動して止まる)。よって、自転車のように比較的高い周波数の振動が断続的または定常的に発生する場合に好適である。
【0075】
以上のように、本実施例の防振装置1は、自転車等の移動体の移動に伴い定常的に発生する振動と突発的に発生する衝撃とを1つの防振機構によって同時に軽減することができることを確かめることができた。なお、自転車のように10〜30Hzの振動が断続的または定常的に発生する場合には、コイルばねや防振ゴムは不適であった。
【符号の説明】
【0076】
1 防振装置
2 板ばね部
3,3a 粘弾性体
4 開口
5 直線部分
6 曲線部分
7 取付板(取付部)
8 支持板(支持部)
9 板バネ材(円弧部)
11〜13,21〜23,31〜34 貫通孔
41,42,51,52 ネジ(接続部材)
100 自転車(移動体)
101 フレーム
102 ハンドルバー
103 支持アーム
104 ネジ
200 撮影カメラ
201 カメラレンズ
202 ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8